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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162368
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】歩行型作業機
(51)【国際特許分類】
   A01B 33/08 20060101AFI20241114BHJP
   B60K 26/02 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A01B33/08 A
B60K26/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077796
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】瀬崎 恵一
【テーマコード(参考)】
2B033
3D037
【Fターム(参考)】
2B033AA06
2B033AB02
2B033AB11
2B033AC04
2B033CA40
2B033ED14
2B033ED16
3D037EA01
3D037EA08
3D037EB03
3D037EC03
3D037EC08
(57)【要約】
【課題】不測の動きが生じた場合にデッドマン式のクラッチによらず対処が可能な歩行型作業機を提供する。
【解決手段】歩行型作業機は、機体と、機体の状態を検知するセンサと、センサの出力を取得する制御装置と、制御装置によって動作が制御される被操作装置と、を備える。制御装置は、センサの出力に基づいて機体の状態を判定すると共に、機体が通常の第1状態にあると判定したとき、通常時の制御である第1制御を被操作装置に対して実行し、機体が第1状態よりも異常の可能性が高い第2状態にあると判定したとき、警戒時の制御であって第1制御と異なる第2制御を被操作装置に対して実行し、第2状態が所定時間を超えて継続したとき、異常時の制御であって第1制御及び第2制御と異なる第3制御を被操作装置に対して実行する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
前記機体の状態を検知するセンサと、
前記センサの出力を取得する制御装置と、
前記制御装置によって動作が制御される被操作装置と、を備え、
前記制御装置は、前記センサの出力に基づいて前記機体の状態を判定すると共に、
前記機体が通常の第1状態にあると判定したとき、通常時の制御である第1制御を前記被操作装置に対して実行し、
前記機体が前記第1状態よりも異常の可能性が高い第2状態にあると判定したとき、警戒時の制御であって前記第1制御と異なる第2制御を前記被操作装置に対して実行し、
前記第2状態が所定時間を超えて継続したとき、異常時の制御であって前記第1制御及び前記第2制御と異なる第3制御を前記被操作装置に対して実行する歩行型作業機。
【請求項2】
作業装置を備え、
前記制御装置は、前記作業装置が作動している間は前記所定時間をより大きな値へ変更する請求項1に記載の歩行型作業機。
【請求項3】
前記制御装置は、前記機体が前記第2状態よりも異常の可能性が高い第3状態にあると判定したとき、前記所定時間をより小さな値へ変更する請求項1に記載の歩行型作業機。
【請求項4】
解除操作具を更に備え、
前記制御装置は、前記解除操作具が人為操作を受け付けたことに応じて前記第3制御を終了する請求項1に記載の歩行型作業機。
【請求項5】
前記センサは、作業装置の負荷の大きさを検知する負荷センサ、前記機体の加速度を検知する加速度センサ、及び前記機体の傾斜角度を検知する傾斜センサのうちの少なくとも一つを含む請求項1に記載の歩行型作業機。
【請求項6】
駆動源操作具と、
前記被操作装置としての駆動源と、を更に備え、
前記第1制御は、前記駆動源操作具が受け付けた指示量に応じた作動量での前記駆動源の作動であり、
前記第2制御は、前記第1制御よりも低い作動量での前記駆動源の作動であり、
前記第3制御は、前記駆動源の停止である請求項1から5のいずれか1項に記載の歩行型作業機。
【請求項7】
駆動源操作具と、
前記被操作装置としての駆動源及び報知装置と、を更に備え、
前記第1制御は、前記駆動源操作具が受け付けた指示量に応じた作動量での前記駆動源の作動であり、
前記第2制御は、前記報知装置の作動であり、
前記第3制御は、前記駆動源の停止である請求項1から5のいずれか1項に記載の歩行型作業機。
【請求項8】
前記被操作装置としてのクラッチと、
前記クラッチの状態を監視する前記被操作装置としてのクラッチ監視装置と、を備え、
前記第1制御は、前記クラッチの状態監視の非実行であり、
前記第2制御は、前記クラッチの状態監視の実行であり、
前記第3制御は、前記クラッチの切り操作である請求項1から5のいずれか1項に記載の歩行型作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行型作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、歩行型作業機が記載されている。この歩行型作業機では、操縦ハンドルに備えたクラッチレバーがいわゆるデッドマン式に構成され、クラッチレバーから手を離せばクラッチ切りとなるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-170654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
デッドマン式のクラッチは、手を離せばクラッチ切りとなるが、手を離さない限りクラッチが切れない。従って、急発進や急停車など歩行型管理機に不測の動きが生じた場合に、デッドマン式のクラッチによらず対処が為されると好ましい。
【0005】
本発明の目的は、不測の動きが生じた場合にデッドマン式のクラッチによらず対処が可能な歩行型作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決する手段として、本発明の歩行型作業機は、機体と、前記機体の状態を検知するセンサと、前記センサの出力を取得する制御装置と、前記制御装置によって動作が制御される被操作装置と、を備え、前記制御装置は、前記センサの出力に基づいて前記機体の状態を判定すると共に、前記機体が通常の第1状態にあると判定したとき、通常時の制御である第1制御を前記被操作装置に対して実行し、前記機体が前記第1状態よりも異常の可能性が高い第2状態にあると判定したとき、警戒時の制御であって前記第1制御と異なる第2制御を前記被操作装置に対して実行し、前記第2状態が所定時間を超えて継続したとき、異常時の制御であって前記第1制御及び前記第2制御と異なる第3制御を前記被操作装置に対して実行することを特徴とする。
【0007】
上記の特徴によれば、センサの出力に基づいて、通常の第1状態、及び異常の可能性が高い第2状態が判定される。そして第2状態では警戒時の制御である第2制御が実行され、第2状態が所定時間を超えて継続したとき、異常時の制御である第3制御が実行される。このように、センサの出力に基づいて被制御装置に対して3種類の制御が為されるので、デッドマン式のクラッチによらず異常への対処が可能となる。また、警戒時の制御である第2制御を予備的に実行することにより、異常時の制御である第3制御への移行をスムースに行うことができる。
【0008】
本発明において、作業装置を備え、前記制御装置は、前記作業装置が作動している間は前記所定時間をより大きな値へ変更すると好ましい。
【0009】
上記の特徴によれば、より大きな値へ所定時間が変更されることにより、作業装置が作動している間は第3制御へ移行しにくくなる。例えば第3制御がエンジンや作業装置の停止である場合、第3制御が実行されると作業を中断する必要がある。上記の特徴によれば、作業の中断が発生しにくくなり、作業効率の低下が抑制される。
【0010】
本発明において、前記制御装置は、前記機体が前記第2状態よりも異常の可能性が高い第3状態にあると判定したとき、前記所定時間をより小さな値へ変更すると好ましい。
【0011】
上記の特徴によれば、より小さな値へ所定時間が変更されることにより、第3状態と判定されたときは第3制御へ移行しやすくなる。これにより、異常への対処が更に適切に実行される。
【0012】
本発明において、解除操作具を更に備え、前記制御装置は、前記解除操作具が人為操作を受け付けたことに応じて前記第3制御を終了すると好ましい。
【0013】
上記の特徴によれば、第3制御は人為操作を受け付けたことに応じて終了するので、オペレータが意図しない第3制御の終了が抑制され好ましい。
【0014】
本発明において、前記センサは、作業装置の負荷の大きさを検知する負荷センサ、前記機体の加速度を検知する加速度センサ、及び前記機体の傾斜角度を検知する傾斜センサのうちの少なくとも一つを含むと好ましい。
【0015】
上記の特徴によれば、機体の状態が適切に判定される。
【0016】
本発明において、駆動源操作具と、前記被操作装置としての駆動源と、を更に備え、前記第1制御は、前記駆動源操作具が受け付けた指示量に応じた作動量での前記駆動源の作動であり、前記第2制御は、前記第1制御よりも低い作動量での前記駆動源の作動であり、前記第3制御は、前記駆動源の停止であると好ましい。
【0017】
上記の特徴によれば、センサの出力に基づいて駆動源の制御が行われ、第2状態のときに低い作動量での作動、第2状態が継続したときに駆動源の停止が行われるので、デッドマン式のクラッチによらず異常への対処が可能となる。また、警戒時の制御として低い作動量での作動が予備的に実行されることにより、異常時の制御である駆動源の停止をスムースに行うことができる。
【0018】
本発明において、駆動源操作具と、前記被操作装置としての駆動源及び報知装置と、を更に備え、前記第1制御は、前記駆動源操作具が受け付けた指示量に応じた作動量での前記駆動源の作動であり、前記第2制御は、前記報知装置の作動であり、前記第3制御は、前記駆動源の停止であると好ましい。
【0019】
上記の特徴によれば、センサの出力に基づいて駆動源の制御が行われ、第2状態のときに報知装置の作動、第2状態が継続したときに駆動源の停止が行われるので、デッドマン式のクラッチによらず異常への対処が可能となる。また、警戒時の制御として報知装置の作動が実行されることにより、オペレータに異常への対処や心構えを促すことが出来る。
【0020】
本発明において、前記被操作装置としてのクラッチと、前記クラッチの状態を監視する前記被操作装置としてのクラッチ監視装置と、を備え、前記第1制御は、前記クラッチの状態監視の非実行であり、前記第2制御は、前記クラッチの状態監視の実行であり、前記第3制御は、前記クラッチの切り操作であると好ましい。
【0021】
上記の特徴によれば、センサの出力に基づいてクラッチの制御が行われ、第2状態のときにクラッチの状態監視、第2状態が継続したときにクラッチの切り操作が行われるので、デッドマン式のクラッチによらず異常への対処が可能となる。また、警戒時の制御としてクラッチの状態監視が予備的に実行されることにより、異常時の制御であるクラッチの切り操作をスムースに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】歩行型作業機の右側面図である。
図2】歩行型作業機の平面図である。
図3】動力伝達系統、操作系統、及び制御系統を示す図である。
図4】制御装置で行われる処理を示すフローチャートである。
図5】動力伝達系統、操作系統、及び制御系統を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係る歩行型作業機の一例である歩行型管理機について、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0024】
尚、本実施形態での説明における前後方向及び左右方向は、特段の説明がない限り、次のように記載している。つまり、歩行型管理機の作業走行時における前進側の進行方向(図1,2における矢印FR参照)が「前」、後進側への進行方向(図1,2における矢印BK参照)が「後」、その前後方向での前向き姿勢を基準としての右側に相当する方向(図2における矢印RH参照)が「右」、同様に左側に相当する方向(図2における矢印LH参照)が「左」である。「上」及び「下」は、図1,2において矢印UP及び矢印DWで示されている。
【0025】
〔全体構成〕
図1に示すように、歩行型管理機の機体1には、機体フレーム1aの一部を構成するエンジンフレーム10上に、動力源となるエンジン11が搭載されている。
【0026】
エンジンフレーム10の後方側に、エンジンフレーム10とともに機体フレーム1aを構成するミッションケース2が一体に連結されている。エンジン11とミッションケース2はベルト伝動機構を介して動力伝達可能に連動連結されている。
【0027】
本実施形態では、エンジン11は、電子制御燃料噴射装置FI(図3)を備えている。電子制御燃料噴射装置FIは、アクチュエータによって燃料を強制的に燃焼シリンダ内へ噴射供給するものであって、気温等の外部環境の影響低減、エンジン11の作動の安定化、詳細な制御の実現等の利点がある。
【0028】
ミッションケース2は、下方に延出された前部ケース2Aと、斜め後方下方に延出された後部ケース2Bとを備えて二股状に形成されている。
【0029】
前部ケース2Aの下部に、車軸20を介して、左右の走行装置13が支持されている。
本実施形態では、走行装置13は車輪である。走行装置13が、クローラ走行装置など、他の形態の装置であってもよい。
【0030】
後部ケース2Bに、駆動軸21を介して、作業装置14が支持されている。本実施形態では、作業装置14はロータリ耕耘装置である。作業装置14が、畝立て機や播種機など、他の形態の装置であってもよい。
【0031】
エンジン11の動力は、ベルト伝動機構を経てミッションケース2の内部のギヤ変速機構へ伝達される。ベルト伝動機構は、クラッチ操作アームによって動力伝達を入切可能に構成されている。このベルト伝動機構とクラッチ操作アームによって、走行駆動系及び作業駆動系への動力伝達を断続する主クラッチ24(図3)が構成されている。
【0032】
ミッションケース2の内部には、作業クラッチ25、走行クラッチ26、及びデフ機構27が備えられている(図3参照)。主クラッチ24からの動力が、分岐されて、作業クラッチ25及び走行クラッチ26へ伝達される。
【0033】
作業クラッチ25は、作業装置14への動力伝達を入切する。走行クラッチ26は、デフ機構27を介した走行装置13への動力伝達を入切する。デフ機構27は、左右の走行装置13の差動を規制可能である。
【0034】
ミッションケース2の上部から斜め後方上方に向けて主変速レバー15が延出されている。この主変速レバー15を操作することにより、走行装置13の変速操作及び正逆転操作、並びに作業装置14の正逆転操作を行うことができる。
【0035】
ミッションケース2の後部から機体後方に向けて操縦ハンドル16が延出されている。
操縦ハンドル16の右側部分に旋回レバー17、停止スイッチ18、及びスロットルレバー19が配設されている。操縦ハンドル16の後端側に主クラッチレバー3が配設されている。
【0036】
旋回レバー17は、歩行型管理機の状態を、直進しながら作業を行う状態と、作業を停止してターンを容易にする状態と、に切り換えるための人為操作具である。旋回レバー17は、作業クラッチ25及びデフ機構27に接続されている。
【0037】
旋回レバー17が切り位置にあるとき、作業クラッチ25は動力伝達する状態(クラッチ入り)であり、デフ機構27は走行装置13の差動を規制する状態(ロック状態)である。
【0038】
旋回レバー17が入り位置にあるとき、作業クラッチ25は動力伝達しない状態(クラッチ切り)であり、デフ機構27は走行装置13の差動を規制しない状態(アンロック状態)である。
【0039】
停止スイッチ18は、エンジン11の停止操作用としてエンジン11の制御系に配線されている。
【0040】
スロットルレバー19は、エンジン11の回転数を操作するためのものである。本実施形態では、スロットルレバー19は、オペレータが手を離したとしても操作位置で保持されるように構成されている。なおスロットルレバー19が、オペレータが手を離すと自動的に初期位置に戻るように構成されてもよい。
【0041】
エンジン11から作業クラッチ25及び走行クラッチ26への動力伝達を入切する主クラッチ24が備えられている。主クラッチレバー3は、主クラッチ24の入切操作用として主クラッチ24に接続されている。
【0042】
以上のように構成された歩行型管理機では、オペレータは、操縦ハンドル16を持って歩行型管理機を操縦すると共に、走行する歩行型管理機と共に歩行する。旋回は、オペレータが操縦ハンドル16を左右に向けて、歩行型管理機の走行方向を変化させることにより行われる。
【0043】
〔動力伝達系統、操作系統、及び制御系統〕
図3に、本実施形態の歩行型管理機の動力伝達系統、操作系統、及び制御系統が示されている。
【0044】
動力伝達系統について説明する。作業装置14へのエンジン11からの動力伝達は、主クラッチ24及び作業クラッチ25を経由して行われる。走行装置13へのエンジン11からの動力伝達は、主クラッチ24、走行クラッチ26、及びデフ機構27を経由して行われる。
【0045】
操作系統及び制御系統について説明する。
【0046】
旋回レバー17と作業クラッチ25及びデフ機構27が、操作ワイヤ17aにより接続されている。旋回レバー17が旋回位置へ操作されて操作ワイヤ17aが引き操作されると、作業クラッチ25が切り状態となり、デフ機構27がアンロック状態となる。旋回レバー17が作業位置へ操作されて操作ワイヤ17aが戻り操作されると、作業クラッチ25が入り状態となり、デフ機構27がロック状態となる。
【0047】
主クラッチレバー3と主クラッチ24とが、操作ワイヤ3aにより接続されている。主クラッチ24が握られて操作ワイヤ3aが引き操作されると、主クラッチ24が入り状態となる。主クラッチ24から手が離されて操作ワイヤ3aが戻り操作されると、主クラッチ24が切り状態となる。
【0048】
スロットルレバー19と制御装置CUとが、操作ワイヤ19aにより接続されている。
【0049】
制御装置CUは、所謂ECUであって、記憶装置ME及びCPU(図示省略)を備える。記憶装置MEは、HDDや不揮発性RAMなどを備え、歩行型管理機を制御するプログラム、恒常的なデータ、一時的なデータが記憶される。プログラムがCPUにより実行されることにより、以下述べる制御装置CUの機能が実現される。
【0050】
制御装置CUは、スロットルレバー19が受け付けた操作に基づいて、電子制御燃料噴射装置FIを制御して、エンジン11の回転数を制御する。
【0051】
本実施形態の歩行型管理機は、センサS、報知装置AL、及び解除操作具ULを備える。
【0052】
センサSは、機体1の状態を検知して、出力を制御装置CUへ送る。
【0053】
センサSは、例えば負荷センサS1である。負荷センサS1は、作業装置14の負荷の大きさを検知する。具体的には、負荷センサS1は、作業装置14を駆動するPTO軸の回転数やトルク、ひずみ等を検知する。負荷センサS1は、作業装置14に設けられてもよいし、作業クラッチ25に設けられてもよい。
【0054】
センサSは、例えば加速度センサS2である。加速度センサS2は、機体1の加速度を検知する。加速度センサS2は、機体1の前後方向の加速度を検知するものであってもよいし、機体1の左右方向の加速度を検知するものであってもよいし、機体1の上下方向の加速度を検知するものであってもよいし、全方向の加速度を検知するもの(いわゆる3軸加速度センサ)であってもよい。
【0055】
センサSは、例えば傾斜センサS3である。傾斜センサS3は、機体1の傾斜角度を検知する。傾斜センサS3は、例えばジャイロセンサである。
【0056】
センサSが、負荷センサS1、加速度センサS2、及び傾斜センサS3のうちの1種のみ含んでもよいし、2種を含んでもよいし、3種を含んでもよい。センサSが他の種類のセンサを含んでもよい。センサSは単数でもよいし複数でもよい。
【0057】
報知装置ALは、制御装置CUに制御されて作動し、オペレータに対する報知を実行する。報知装置ALは、例えば、ブザー、スピーカー、ランプ、ディスプレイ装置などである。報知装置ALは、単数でもよいし、複数でもよいし、単一種類でもよいし、複数種類でもよい。
【0058】
解除操作具ULは、オペレータからの解除操作を受け付ける。解除操作具ULは、制御装置CUに接続されている。解除操作具ULは、形態は任意であるが、例えば押しボタン式のスイッチである。
【0059】
〔制御装置による制御の態様〕
制御装置CUは、センサSの出力を取得し、センサSの出力に基づいて機体1の状態を判定する。そして制御装置CUは、判定結果に基づいて、被操作装置Dに対して第1制御、第2制御、第3制御を選択的に実行する。
【0060】
〔機体の状態の判定〕
まず機体1の状態の判定について説明する。制御装置CUは、センサSの出力に基づいて、機体1が第1状態、第2状態、及び第3状態のうちの何れの状態にあるかを判定する。第1状態は、通常の状態である。第2状態は、第1状態よりも異常の可能性が高い状態である。第3状態は、第2状態よりも異常の可能性が高い状態である。
【0061】
センサSが負荷センサS1である場合の判定について説明する。制御装置CUは、負荷センサS1が検出したPTO軸の回転数やトルク、ひずみ等から作業装置14の負荷を示す量(以下「負荷量」と称する。)を算出する。負荷量は、作業装置14が圃場の大きな石に接触した場合や、機体1が急激に加速・減速した場合に、大きく変動する場合がある。
【0062】
制御装置CUは、負荷量の変動幅(絶対値)が所定の第1負荷閾値よりも小さい場合、機体1が通常の第1状態にあると判定する。制御装置CUは、負荷量の変動幅が第1負荷閾値を超えた場合(例えば負荷量が急激に減少(または増加)した場合)、機体1が第2状態にあると判定する。制御装置CUは、負荷量の変動幅が所定の第2負荷閾値(第1負荷閾値よりも大きな値)を超えた場合、機体1が第3状態にあると判定する。
【0063】
判定は、負荷量の変動幅(絶対値)に基づいて行われてもよいし、負荷量の増減(変動の正負)を考慮して行われてもよい。
【0064】
センサSが加速度センサS2である場合の判定について説明する。加速度センサS2が検知する機体1の加速度は、作業装置14が圃場の大きな石に接触した場合や、機体1が急激に加速・減速した場合に、大きく変動する場合がある。
【0065】
制御装置CUは、加速度の大きさ(絶対値)が所定の第1加速度閾値よりも小さい場合、機体1が通常の第1状態にあると判定する。制御装置CUは、加速度の大きさが第1加速度閾値を超えた場合、機体1が第2状態にあると判定する。制御装置CUは、加速度の大きさが所定の第2加速度閾値(第1加速度閾値よりも大きな値)を超えた場合、機体1が第3状態にあると判定する。
【0066】
判定は、加速度の大きさ(絶対値)に基づいて行われてもよいし、加速度の増減(変動の正負)を考慮して行われてもよいし、加速度の正負を考慮して行われてもよい。
【0067】
また、判定が、加速度センサS2の位置を考慮して行われてもよい。例えば、作業装置14の近傍に設けられた加速度センサS2に関して、垂直方向の加速度に大きな重み付けを付して判定が行われてもよい。
【0068】
センサSが傾斜センサS3である場合の判定について説明する。傾斜センサS3が検知する機体1の傾斜角度は、作業装置14が圃場の大きな石に接触した場合や、機体1が急激に加速・減速した場合に、大きく変動する場合がある。
【0069】
制御装置CUは、傾斜角度が所定の第1傾斜閾値よりも小さい場合、機体1が通常の第1状態にあると判定する。制御装置CUは、傾斜角度が第1傾斜閾値を超えた場合、機体1が第2状態にあると判定する。制御装置CUは、傾斜角度が所定の第2傾斜閾値(第1傾斜閾値よりも大きな値)を超えた場合、機体1が第3状態にあると判定する。
【0070】
判定は、傾斜角度の大きさ(絶対値)に基づいて行われてもよいし、正負を加味した傾斜角の大きさ(例えば、通常の作業姿勢を基準とする)に基づいて行われてもよいし、傾斜角度の増減(変動の正負)を考慮して行われてもよい。
【0071】
制御装置CUによる判定は、歩行型管理機が備える全ての種類のセンサSの出力に基づいて平行して行われてもよいし、歩行型管理機が備える一部の種類のセンサSの出力に基づいて行われてもよい。制御装置CUが、複数のセンサSの出力に基づいて異なる判定が行われたときに、最も厳しい判定を採用するように構成されてもよいし、最も緩い判定を採用するように構成されてもよい。
【0072】
〔被操作装置に対する制御〕
被操作装置Dに対して行われる第1制御、第2制御、及び第3制御について説明する。まず、被操作装置Dがエンジン11である例を説明する。
【0073】
第1制御は、通常時の制御である。本実施形態では、第1制御は、スロットルレバー19(駆動源操作具の一例)が受け付けた指示量に応じた作動量でのエンジン11(駆動源の一例)の作動である。具体的には、制御装置CUは、スロットルレバー19が受け付けた指示量(操作量)を取得して、その指示量に応じた作動量(エンジン回転数)で作動するように、エンジン11の電子制御燃料噴射装置FIを制御する。
【0074】
第2制御は、警戒時の制御であって第1制御と異なる制御である。本実施形態では、第2制御は、第1制御よりも低い作動量でのエンジン11の作動である。具体的には、制御装置CUは、スロットルレバー19の指示量よりも低い作動量(エンジン回転数)で作動するように、エンジン11の電子制御燃料噴射装置FIを制御する。例えば、制御装置CUは、スロットルレバー19の指示量に所定の係数(例えば、0.5)を乗じ、その量に対応する作動量で作動するように、エンジン11を制御する。制御装置CUが、第2制御において、予め設定された作動量でエンジン11を作動させるように構成されてもよい。上述の係数や設定値は、人為操作に基づいて変更可能であってもよい。
【0075】
第3制御は、異常時の制御であって第1制御及び第2制御と異なる制御である。本実施形態では、第3制御は、エンジン11の停止である。具体的には、制御装置CUは、電子制御燃料噴射装置FIを制御してエンジン11を停止させる。
【0076】
続いて、被操作装置Dがエンジン11及び報知装置ALである例を説明する。この例の第1制御及び第3制御は、上述の例と同じである。
【0077】
本例の第2制御は、報知装置ALの作動である。なお、第2制御において、報知装置ALの作動に併せて、第1制御よりも低い作動量でのエンジン11の作動(上述の例の第2制御)が行われてもよい。
【0078】
〔制御装置による制御フロー〕
図4のフローチャートを参照しながら、制御装置CUが行う制御フローについて説明する。この制御フローは、歩行型管理機の起動中に繰り返し実行される。
【0079】
制御装置CUが、スロットルレバー19の指示量を取得する(ステップ#201)。
【0080】
制御装置CUが、センサSの出力を取得する(ステップ#202)。
【0081】
制御装置CUが、センサSの出力に基づいて、機体1の状態が第1状態及び第2状態のいずれであるかを判定する(ステップ#203)。
【0082】
第1状態と判定された場合(ステップ#203:第1状態)、制御装置CUは第1制御を実行する(ステップ#204)。そしてステップ#201の処理に戻る。
【0083】
第2状態と判定された場合(ステップ#203:第2状態)、制御装置CUは第2制御を実行する(ステップ#205)。
【0084】
第2制御が開始されると、制御装置CUは、作業装置14が作動しているか否かを判定する(ステップ#206)。
【0085】
作業装置14が作動している場合(ステップ#206:Yes)、制御装置CUは、所定時間(ステップ#210の判定に用いられる、予め設定された時間、例えば、初期値は2秒)をより大きな値へ変更する(ステップ#207)。例えば、制御装置CUは、所定時間を1.5倍に変更する。
【0086】
作業装置14が作動していない場合(ステップ#206:No)、またはステップ#207の終了後、制御装置CUは、機体1が第3状態にあるか否かを判定する(ステップ#208)。
【0087】
機体1が第3状態にある場合(ステップ#208:Yes)、制御装置CUは、所定時間をより小さな値へ変更する(ステップ#209)。例えば、制御装置CUは、所定時間を0.2倍に変更する。
【0088】
機体1が第3状態にない場合(ステップ#208:No)、またはステップ#209の終了後、制御装置CUは、第2状態が所定時間を超えて継続したか否かを判定する(ステップ#210)。
【0089】
第2状態が所定時間を超えて継続していないと判定されると(ステップ#210:No)、ステップ#201の処理に戻る。
【0090】
機体1が第3状態にあると判定された場合(ステップ#210:Yes)、制御装置CUは第3制御を実行する(ステップ#211)。
【0091】
第3制御が開始されると、制御装置CUは、解除操作具ULがオペレータから解除操作を受け付けたか否かを判定する(ステップ#212)。解除操作を受け付けていない場合(ステップ#212:No)、ステップ#212の処理が繰り返される。
【0092】
解除操作を受け付けると(ステップ#212:Yes)、制御装置CUは第3制御を終了する(ステップ#213)。なおステップ#213において、機体1の状態の判定が行われ、第3状態ではないことを条件に第3制御を終了するよう、制御装置CUが構成されてもよい。
【0093】
〔第2実施形態〕
図5を参照しながら第2実施形態について説明する。以下の説明では、上述の実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0094】
本実施形態では、歩行型管理機はクラッチ監視装置MDを備える。クラッチ監視装置MDは、制御装置CUに制御されて、主クラッチ24及び作業クラッチ25の状態を監視する。なお、クラッチ監視装置MDが、主クラッチ24及び作業クラッチ25の一方の状態を監視するよう構成されてもよい。以下、主クラッチ24と作業クラッチ25とを「クラッチ」と総称する場合がある。
【0095】
〔被操作装置に対する制御〕
被操作装置Dに対して行われる第1制御、第2制御、及び第3制御について説明する。まず、被操作装置Dがクラッチ監視装置MD、主クラッチ24、及び作業クラッチ25である例を説明する。
【0096】
第1制御は、通常時の制御である。本実施形態では、第1制御は、クラッチの状態監視の非実行である。具体的には、制御装置CUは、クラッチ監視装置MDにクラッチの状態監視を実行させない。
【0097】
第2制御は、警戒時の制御であって第1制御と異なる制御である。本実施形態では、第2制御は、クラッチの状態監視の実行である。具体的には、制御装置CUは、クラッチ監視装置MDにクラッチの状態監視を実行させる。例えば、制御装置CUは、所定の時間間隔(例えば、0.5秒)でクラッチ監視装置MDにクラッチの状態を監視させ、クラッチの状態を取得する。
【0098】
第3制御は、異常時の制御であって第1制御及び第2制御と異なる制御である。本実施形態では、第3制御は、クラッチの切り操作である。具体的には、制御装置CUは、主クラッチ24及び作業クラッチ25を切り操作して作業装置14を停止させる。制御装置CUが、主クラッチ24及び作業クラッチ25のうちの一方を切り操作するよう構成されてもよい。制御装置CUが、第2制御で取得したクラッチの状態に基づいて、入り状態にあるクラッチに対して切り操作するよう構成されてもよい。
【0099】
被操作装置Dに報知装置ALが含まれてもよい。上述した第2制御において、クラッチ監視装置MDによるクラッチの状態監視と併せて、制御装置CUが報知装置ALを作動させてもよい。
【0100】
本実施形態では、制御装置CUは、上述の実施形態と同様の制御フロー(図4)を実行する。
【0101】
〔別実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではない。以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
【0102】
(1)エンジン11が、電子制御燃料噴射装置FIを備えないものであってもよい。すなわち、エンジン11が、機械式のキャブレター等によって回転数(作動量)が調整されるものであってもよい。
【0103】
(2)歩行型管理機が、エンジン11に代えて、駆動源として電動モータを備えてもよい。この場合、制御装置CUは被操作装置Dとしての電動モータに対して第1制御、第2制御、及び第3制御を実行する。
【0104】
(3)上述の実施形態では、デフ機構27を備える例が説明された。しかしながらこれに限定されず、デフ機構を備えない歩行型管理機であってもよい。デフ機構を備えない歩行型管理機としては例えばサイドクラッチ機構を備えるものがあり、ハンドルの左右それぞれにクラッチレバーを備え、左右どちらかのクラッチレバーを握ることで握られた側の作業装置への動力伝達が停止されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、歩行型作業機に適用可能である。例えば、歩行型田植機、歩行型野菜移植機などに適用可能である。
【符号の説明】
【0106】
1 :機体
11 :エンジン(駆動源)
14 :作業装置
19 :スロットルレバー(駆動源操作具)
24 :主クラッチ(クラッチ)
25 :作業クラッチ(クラッチ)
AL :報知装置
CU :制御装置
D :被操作装置
MD :クラッチ監視装置
S :センサ
S1 :負荷センサ
S2 :加速度センサ
S3 :傾斜センサ
UL :解除操作具
図1
図2
図3
図4
図5