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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016237
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】活動性好酸球性食道炎を治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240130BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240130BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61P1/04
A61K39/395 N
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023192683
(22)【出願日】2023-11-13
(62)【分割の表示】P 2020505844の分割
【原出願日】2018-08-03
(31)【優先権主張番号】62/541,242
(32)【優先日】2017-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/561,593
(32)【優先日】2017-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18305252.1
(32)【優先日】2018-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(71)【出願人】
【識別番号】515337475
【氏名又は名称】サノフィ・バイオテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】アレン・ラディン
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー・ディー・ハミルトン
(72)【発明者】
【氏名】レーダ・マンネン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】活動性好酸球性食道炎を治療し、予防しまたはその重症度を軽減する方法、ならびに食道伸展性を増加させる方法を提供する。
【解決手段】本発明の方法は、抗IL-4R抗体などのインターロイキン-4/インターロイキン-13(IL-4/IL-13)経路阻害剤を含む治療用組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食道伸展性を増加させる方法であって、
(a)(i)患者が、治療前または治療時(「ベースライン」)に食道に高倍率視野(hpf)あたり15個以上の好酸球を有すること;
(ii)患者が、週に少なくとも2回の嚥下障害の発症を示すこと;および/または
(iii)患者が、2以上のシュトラウマン嚥下障害計測(Straumann Dysphagia Instrument)(SDI)スコアを有すること
からなる群から選択される少なくとも1つの特徴を有する患者を選択するステップ;ならびに
(b)治療有効量のインターロイキン-4/インターロイキン-13(IL-4/IL-13)経路阻害剤を含む医薬組成物を、それを必要とする患者に投与し、それにより、機能的な内腔画像化プローブによって測定した場合、食道伸展性を増加させるステップ
を含む前記方法。
【請求項2】
患者は中程度から重度の好酸球性食道炎(EoE)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
患者は18歳以上である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
患者は、プロトンポンプ阻害剤(PPI)で以前に治療されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
患者は少なくとも1回、以前に食道拡張を受けている、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
患者は、以下:
(1)PPI、食道拡張、コルチコステロイド、アレルゲン離脱、および/もしくは食事の変更の少なくとも1つによる以前の治療;
(2)患者が、PPIまたは食道拡張による以前の治療に応答しないかもしくは抵抗性であること;
(3)患者が、30以上、40以上、もしくは50以上である好酸球性食道炎の重症度および活動性指数(EEsAI)スコアを有すること;
(4)患者が、少なくとも3年間、EoEに罹患していること;
(5)患者が、IL-4/IL-13経路阻害剤の投与前もしくは投与時に、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎、および/もしくはアレルギー性結膜炎からなる群から選択される疾患もしくは障害を有するかもしくは診断されていること;ならびに/または
(6)患者が、エオタキシン-3、ペリオスチン、血清IgE(総およびアレルゲン特異的)、IL-13、IL-5、血清胸腺および活性化調節ケモカイン(TARC)、胸腺間質性リンホポエチン(TSLP)、血清好酸球性陽イオンタンパク質(ECP)、および/もしくは好酸球由来神経毒(EDN)からなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーのレベルが上昇していること
からなる群から選択される少なくとも1つの特徴を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
IL-4/IL-13経路阻害剤の投与は、以下:
(a)シュトラウマン嚥下障害計測(SDI)スコアで測定した場合、嚥下障害の頻度および重症度のベースラインから少なくとも40%の減少;
(b)SDIスコアのベースラインから3ポイントの減少;
(c)食道の近位、中間、および/もしくは遠位領域における上皮内好酸球数のピークの
ベースラインからの85%超の減少;
(d)インピーダンス面積測定法で測定した場合、食道伸展性のベースラインから少なくとも10%の増加;
(e)EoE組織学的スコアリングシステム(HSS)スコアによって測定した場合、疾患の重症度および程度のベースラインからの50%超の減少;ならびに/または
(f)好酸球性食道炎の重症度および活動性指数(EEsAI)スコアで測定した場合、嚥下障害のベースラインから30%超の減少
からなる群から選択される少なくとも1つのパラメータの改善をもたらす、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
IL-4/IL-13経路阻害剤は、約50~約600mgの用量で投与される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
IL-4/IL-13経路阻害剤は約300mgの用量で投与される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
IL-4/IL-13経路阻害剤は一次用量で投与され、その後、1回またはそれ以上の二次用量が投与され、各二次用量は、直前の用量の1~4週間後に投与される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
一次用量は、50~600mgのIL-4/IL-13経路阻害剤を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
各二次用量は、25~400mgのIL-4/IL-13経路阻害剤を含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
一次用量は、600mgのIL-4/IL-13経路阻害剤を含み、各二次用量は、300mgのIL-4/IL-13経路阻害剤を含む、請求項10~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
各二次用量は、直前の用量の1週間後に投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
各二次用量は、直前の用量の2週間後に投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
IL-4/IL-13経路阻害剤の投与は、食道の好酸球性炎症、食道の好酸球浸潤、食道壁の肥厚、拒食、嘔吐、腹痛、食物不耐性、下痢、体重減少、胸焼け、吐き戻し、嚥下障害、および/または食片圧入からなる群から選択されるEoEの少なくとも1つの症状または兆候の改善をもたらす、請求項2~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
患者は、食品に含有される食物アレルゲンに対してアレルギー反応を示し、該食品が乳製品、卵、小麦、大豆、トウモロコシ、魚、甲殻類、ピーナッツ、木の実、牛肉、鶏肉、オート麦、大麦、豚肉、インゲン、リンゴおよび/またはパイナップルからなる群から選択される、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
患者は、ダスト、花粉、カビ、植物、ネコ、イヌまたは昆虫に由来する非食物アレルゲンに対してアレルギー反応を示す、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
IL-4/IL-13経路阻害剤の投与が、対象におけるEoE関連バイオマーカーレベルの減少をもたらす、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
EoE関連バイオマーカーが、エオタキシン-3、ペリオスチン、(総およびアレルゲン特異的)血清IgE、IL-13、IL-5、血清TARC、TSLP、血清ECPおよび/またはEDNからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
IL-4/IL-13経路阻害剤は、第2の治療薬または療法と組み合わせて投与され、第2の治療薬または療法は、IL-1ベータ阻害剤、IL-5阻害剤、IL-9阻害剤、IL-13阻害剤、IL-17阻害剤、IL-25阻害剤、TNFアルファ阻害剤、エオタキシン-3阻害剤、IgE阻害剤、プロスタグランジンD2阻害剤、免疫抑制薬、局所コルチコステロイド、経口コルチコステロイド、全身コルチコステロイド、吸入コルチコステロイド、グルココルチコイド、プロトンポンプ阻害剤、NSAID、食道拡張、アレルゲン除去、および/または食事管理からなる群から選択される、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
IL-4/IL-13経路阻害剤は、抗IL-4抗体、抗IL-13抗体、抗IL-4/IL-13二重特異性抗体、IL-4受容体(IL-4R)阻害剤、および/または抗IL-4R抗体からなる群から選択される、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
IL-4/IL-13経路阻害剤はIL-4R阻害剤である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
IL-4/IL-13経路阻害剤は抗IL-4抗体である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
IL-4/IL-13経路阻害剤は抗IL-13抗体である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
IL-4/IL-13経路阻害剤は、IL-4およびIL-13に特異的に結合する二重特異性抗体である、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
IL-4/IL-13経路阻害剤が、IL-4Rαに結合し、IL-4および/またはIL-13の、1型もしくは2型IL-4R受容体との相互作用を阻害する抗体またはその抗原結合断片である、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
抗体またはその抗原結合断片が、IL-4の、1型と2型IL-4受容体の両方との相互作用を阻害する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
抗体およびその抗原結合断片が、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
抗体およびその抗原結合断片が、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)および3つのLCDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含み、HCDR1は配列番号3のアミノ酸配列を含み;HCDR2は配列番号4のアミノ酸配列を含み;HCDR3は配列番号5のアミノ酸配列を含み;LCDR1は配列番号6のアミノ酸配列を含み;LCDR2は配列番号7のアミノ酸配列を含み;およびLCDR3は配列番号8のアミノ酸配列を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
HCVRが配列番号1のアミノ酸配列を含み、およびLCVRが配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
抗体またはその抗原結合断片が、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖と配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、請求項29~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
IL-4/IL-13経路阻害剤がデュピルマブまたはその生物学的同等物である、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
IL-4R阻害剤は、AMG317またはMEDI9314である、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、PCT国際特許出願として2018年8月3日に出願され、それぞれの開示が全体として参照により本明細書に組み入れられる、2017年8月4日に出願された米国仮特許出願第62/541242号、2017年9月21日に出願された米国仮特許出願第62/561593号、および2018年3月8日に出願された欧州出願第18305252.1号に対する優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は、それを必要とする対象における活動性好酸球性食道炎を治療または予防するためのインターロイキン-4/インターロイキン-13経路阻害剤の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
食道狭窄(食道の狭窄(narrowing))は、食道の内層の損傷に起因し、とりわけ、嚥下困難(嚥下障害)、食物または液体の吐き戻し、胸焼けおよび意図しない体重減少をもたらす。食道狭窄の治療は、嚥下障害、体重減少、および栄養の不均衡による生活の質を低下させるため、非常に重要である。食道狭窄は、化学療法、放射線療法、食道がんまたは内視鏡手術、消化性潰瘍または胃食道逆流による合併症として、慢性潰瘍または慢性炎症により引き起こされる。食道狭窄はまた、好酸球性食道炎によっても引き起こされる。
【0004】
好酸球性食道炎(EoE)は、食道機能障害および食道の好酸球炎症によって特徴付けられる、新たな慢性の免疫/抗原媒介性疾患である(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。EoEの成人患者は、嚥下障害および食片圧入の起こり得る危険性により、生活の質(QOL)が大幅に損なわれている(非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7)。活動性疾患または中程度から重度のEoEを有する患者は、嚥下困難、食物または液体の吐き戻し、および体重減少につながる食道狭窄に苦しんでいる。長期にわたる食片圧入のための緊急の内視鏡検査は、重度の食道損傷の危険性に関連付けられる。EoEは、多数の患者における食物アレルギーに関連付けられることが判明している。一部の患者はまた、同時に起こる喘息またはアトピー性疾患、例えば、アトピー性皮膚炎、またはアレルギー性鼻炎を有する場合がある。EoEの症候的負担、例えば、食事の回避、食事の変更行動、ならびに社会的、感情的、経済的、仕事および学校、ならびに睡眠への影響はまた、EoE集団に重要であって、関連し、改善されれば、EoE患者の治療効果を反映し得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Liacourasら、2011年、The Journal of Allergy and Clinical Immunology.128巻:3~20 e6;quiz 1-2
【非特許文献2】Weinbrand-Goichbergら、2013年、Immunologic Research.56巻:249~60頁
【非特許文献3】Zhangら、2013年、Digestive Diseases and Sciences 58巻:1497~506頁
【非特許文献4】DeBrosseら、2011年、The Journal of Allergy and Clinical Immunology 128巻:132~8頁
【非特許文献5】Falkら、2014年、Gastroenterology Clinics of North America 43巻:231~42頁;
【非特許文献6】Straumann 2008年、Gastrointestinal Endoscopy Clinics of North America 18巻:99~118頁
【非特許文献7】Straumannら、2003年、Gastroenterology 125巻:1660~9頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在の治療的アプローチには、慢性食事除去(食物アレルゲン離脱を含む)、嚥下局所製剤コルチコステロイド(米国ではEoEの治療に承認されていない)、および食道拡張が含まれる。飲み込まれた局所コルチコステロイドは、部分的な臨床応答および組織学的寛解を誘導する臨床試験において報告されているが、それらは均一に効果的ではなく、真菌感染症、ならびに中止後の疾患再発に関連付けられる。現在、EoEの承認された薬物療法はない。したがって、好酸球性食道炎を予防または治療する有害な副作用を伴わない効果的な治療アプローチに対する満たされていない必要性が当該技術分野に存在する。食道狭窄は、胃酸分泌を阻害するプロトンポンプ阻害剤で治療される。内視鏡検査による食道拡張は、現在、食道狭窄を治療し、食道伸展性を増加させるために使用されている。しかしながら、侵襲的な外科手術であり、穿孔および出血などの合併症を引き起こす場合がある。したがって、食道伸展性を増加し、食道狭窄を治療する(例えば、好酸球性食道炎における)安全であり、効果的な治療法に対する満たされていない必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、食道の伸展性を増加させる方法が提供される。本方法は、この態様によれば、(a)中程度から重度の好酸球性食道炎(EoE)を有する患者を選択するステップであって、それを必要とする患者は、(i)患者が、治療前または治療時(「ベースライン」)に食道に高倍率視野(hpf)あたり15個以上の好酸球を有すること;(ii)患者が、週に少なくとも1回の嚥下障害の発症を示すこと;および(iii)患者が、2以上のシュトラウマン嚥下障害計測(Straumann Dysphagia Instrument)(SDI)スコアを有することからなる群から選択される属性を有するかまたは基準に基づいて選択されるステップ;ならびに(b)インターロイキン-4/インターロイキン-13(IL-4/IL-13)経路阻害剤を含む治療有効量の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与し、それにより、機能的内腔画像化プローブ(EndoFLIP(登録商標)、Crospon、Ireland)によって測定した場合、食道伸展性を増加させるステップを含む。一実施形態において、患者は活動性EoEを有する。一実施形態において、患者は18歳以上である。一実施形態において、患者は、プロトンポンプ阻害剤(PPI)で以前に治療されている。一実施形態において、患者は、少なくとも1回、以前に食道拡張を受けている。一実施形態において、患者は、(1)PPI、食道拡張、コルチコステロイド、アレルゲン離脱、および/または食事の変更の少なくとも1つによる以前の治療;(2)患者は、PPIまたは食道拡張による以前の治療に応答しないかまたは抵抗性であること;(3)患者が、30以上、40以上、または50以上である好酸球性食道炎の重症度および活動性指数(EEsAI)スコアを有すること;(4)患者が、少なくとも3年間、EoEに罹患していること;(5)患者が、IL-4/IL-13経路阻害剤の投与前または投与時に、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎、およびアレルギー性結膜炎からなる群から選択される疾患もしくは障害を有するかまたは診断されていること;ならびに(6)患者が、エオタキシン-3、ペリオスチン、血清IgE(総およびアレルゲン特異的)、IL-13、IL-5、血清胸腺および活性化調節ケモカイン(TARC)、胸腺間質性リンホポエチン(TSLP)、血清好酸球性陽イオンタンパク質(ECP)、および好酸球由来神経毒(EDN)からなる群から選択されるバイオマーカーのレベルが上昇していることからなる群から選択される特徴を有する。
【0008】
「からなる群から選択される少なくとも1つの」または単に「からなる群から選択される」の選択を特定する本発明の実施形態において、このような言葉などに続くリストの最後の2つの項目間の接続詞「および/または」の使用は、その順番の項目が互いに代替的であり、これらの項目の1つ(または複数)が選択されていることを示す。各項目が必ずしも選択されるという意味ではない。例えば、食道伸展性を増加させる方法については、患者は、以下:
(1)PPI、食道拡張、コルチコステロイド、アレルゲン離脱、および/もしくは食事の変更の少なくとも1つによる以前の治療;
(2)患者が、PPIまたは食道拡張による以前の治療に応答しないかまたは抵抗性であること;
(3)患者が、30以上、40以上、または50以上である好酸球性食道炎の重症度および活動性指数(EEsAI)スコアを有すること;
(4)患者が、少なくとも3年間、EoEに罹患していること;
(5)患者が、IL-4/IL-13経路阻害剤の投与前もしくは投与時に、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎、および/もしくはアレルギー性結膜炎からなる群から選択される疾患もしくは障害を有するかもしくは診断されていること;ならびに/または
(6)患者が、エオタキシン-3、ペリオスチン、血清IgE(総およびアレルゲン特異的)、IL-13、IL-5、血清胸腺および活性化調節ケモカイン(TARC)、胸腺間質性リンホポエチン(TSLP)、血清好酸球性陽イオンタンパク質(ECP)、および/もしくは好酸球由来神経毒(EDN)からなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーのレベルが上昇していることからなる群から選択される少なくとも1つの特徴を有し、
意味するのは、患者が、少なくとも特性(1)または特性(2)または特性(3)または特性(4)または特性(5)または特性(6)を有することである。患者はまた、このような言葉に基づいて、6つの特性(例えば、(1)および(2)、または(4)および(5)、または(1)、(2)および(6)など)のうちの1つ以上を有することができる。しかしながら、患者が、少なくとも特性(1)および特性(2)および特性(3)および特性(4)および特性(5)および特性(6)を有する必要があるということは意味しない。
【0009】
本発明の別の態様によれば、対象における活動性好酸球性食道炎(EoE)の少なくとも1つの症状または兆候を治療、予防または改善する方法が提供される。本発明のこの態様による方法は、中程度から重度のEoEを有する患者を選択するステップ、およびインターロイキン-4/インターロイキン-13(IL-4/IL-13)経路阻害剤を含む治療有効量の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与するステップを含む。特定の実施形態において、それを必要とする患者は、(1)患者が、治療前または治療時(「ベースライン」)に食道中に高倍率視野(hpf)あたり15個以上の好酸球を有すること;(2)高用量プロトンポンプ阻害剤(PPI)、食道拡張、コルチコステロイド、アレルゲン離脱および/または食事変更の少なくとも1つによる以前の治療;(3)患者が1週間に少なくとも1回の嚥下障害の発症を示すこと;(4)患者が、高用量PPIまたは食道拡張を用いた以前の治療に応答しないかまたは抵抗性があること;(5)患者が5以上のシュトラウマン嚥下障害計測(SDI)スコアを有する;(6)患者が、30以上、40以上、または50以上である好酸球性食道炎の重症度および活動性指数(EEsAI)スコアを有すること;(7)患者が、少なくとも3年間、EoEに罹患していること;(8)患者が、IL-4/IL-13経路阻害剤の投与前または投与時に、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎、およびアレルギー性結膜炎からなる群から選択される疾患もしくは障害を有するかまたは診断されていること;ならびに(9)患者は、エオタキシン-3、ペリオスチン、血清IgE(総およびアレルゲン特異的)、I
L-13、IL-5、血清胸腺および活性化調節ケモカイン(TARC)、胸腺間質性リンホポエチン(TSLP)、血清好酸球性陽イオンタンパク質(ECP)、および好酸球由来神経毒(EDN)からなる群から選択されるバイオマーカーのレベルが上昇していることからなる群から選択される属性または基準に基づいて選択される。
【0010】
本発明の別の態様によれば、嚥下障害を軽減する方法が提供され、本方法は、中程度から重度のEoEを有する患者を選択するステップであって、患者は、(i)週に1回以上の嚥下障害の発症を示し;(ii)以前に高用量プロトンポンプ阻害剤(PPI)で治療されていて;および/または(iii)少なくとも1回、以前に食道拡張を受けているステップ;ならびに(b)IL-4/IL-13経路阻害剤を含む治療有効量の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与するステップを含む。
【0011】
本発明の別の態様によれば、パラメータを改善する方法が提供され、本方法は、中程度から重度のEoEを有する患者を選択するステップ、およびIL-4/IL-13経路阻害剤を含む治療有効量の医薬組成物を投与するステップを含み、投与は、以下:(a)シュトラウマン嚥下障害計測(SDI)スコアで測定した場合、嚥下障害の頻度および重症度のベースラインから少なくとも40%の減少;(b)SDIスコアのベースラインから3ポイントの減少;(c)食道の近位、中間、および/もしくは遠位領域における上皮内好酸球数のピークのベースラインからの85%超の減少;(d)インピーダンス面積測定法で測定した場合、食道伸展性のベースラインから少なくとも10%の増加;(e)EoE組織学的スコアリングシステム(HSS)スコアによって測定した場合、疾患の重症度および程度のベースラインからの50%超の減少;ならびに(f)好酸球性食道炎の重症度および活動性指数(EEsAI)スコアで測定した場合、嚥下障害のベースラインから30%超の減少からなる群から選択されるパラメータの改善をもたらす。
【0012】
本発明の別の態様によれば、それを必要とする患者において、食道の好酸球浸潤を減少させるための方法が提供される。特定の実施形態において、食道における炎症を減少させる方法が提供される。本方法は、IL-4/IL-13経路阻害剤を含む治療有効量の医薬組成物を投与することを含む。特定の実施形態において、食道の好酸球浸潤は、それを必要とする対象の食道における高倍率視野あたり約15個を超えるまたはそれに等しい好酸球によって表される。特定の実施形態において、好酸球の数は、IL-4/IL-13経路阻害剤の投与後に85%以上減少する。特定の実施形態において、炎症(例えば、粘膜の炎症)は、内視鏡検査および特徴、例えば、食道浮腫、リング、滲出液、溝および狭窄(EREFS)によって同定される。特定の実施形態において、IL-4/IL-13経路阻害剤の投与により、EREFSスコアが8未満、7未満、6未満、5未満、4未満、3未満、または2未満に低下する(本明細書中の他の箇所に開示される)。
【0013】
本発明の別の態様によれば、対象におけるEoE関連バイオマーカーのレベルを減少させる方法が提供される。特定の実施形態において、EoE関連バイオマーカーは、例えば、循環または食道の好酸球、エオタキシン-3、ペリオスチン、(総およびアレルゲン特異的)血清IgE、IL-13、IL-5、血清胸腺および活性化制御ケモカイン(TARC;CCL17)、胸腺間質性リンホポエチン(TSLP)、血清好酸球カチオン性タンパク質(ECP)および好酸球由来神経毒(EDN)からなる群から選択される。本方法は、IL-4/IL-13経路阻害剤を含む治療有効量の医薬組成物を投与することを含む。
【0014】
特定の実施形態において、IL-4/IL-13経路阻害剤は、第2の治療薬または治療法と併用して投与される。
【0015】
特定の実施形態において、それを必要とする対象は、食物アレルギー、アトピー性皮膚
炎、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎および遺伝性結合組織障害からなる群から選択される同時に発生する疾患または障害を有する。
【0016】
本発明の方法との関連で使用することができる例示的なIL-4/IL-13経路阻害剤には、限定されないが、抗IL-4抗体、抗IL-13抗体、二重特異性抗IL-4/IL-13抗体およびIL-4受容体(IL-4R)阻害剤が含まれる。一実施形態において、IL-4/IL-13経路阻害剤は、IL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)である。
【0017】
本発明の方法との関連で使用することができる例示的なIL-4R阻害剤としては、例えば、IL-4Rもしくはそのリガンドの小分子化学阻害剤またはIL-4Rもしくはそのリガンド(IL-4および/もしくはIL-13)を標的にする生物学的作用物質が挙げられる。特定の実施形態によれば、IL-4R阻害剤は、IL-4Rα鎖に結合し、IL-4、IL-13またはIL-4とIL-13の両方によってシグナル伝達をブロックする抗体または抗原結合タンパク質である。特定の実施形態において、抗IL-4R抗体または抗原結合タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖CDRを含む。本発明の方法との関連で使用することができる抗原結合タンパク質のこのようなタイプの1つは、デュピルマブなどの抗IL-4Rα抗体である。
【0018】
特定の実施形態において、本発明は、ヒトを含む対象の活動性好酸球性食道炎を治療または阻害または予防するための医薬の製造におけるIL-4/IL-13経路阻害剤の使用を提供する。
【0019】
特定の実施形態において、本発明は、ヒトを含む対象における活動性好酸球性食道炎を治療または阻害または予防するための薬剤の製造における、IL-4Rに結合する抗体またはその抗原結合抗体断片の使用を提供する。
【0020】
特定の実施形態において、本発明は、ヒトを含む対象の食道伸展性を増加させるための医薬の製造におけるIL-4/IL-13経路阻害剤の使用を提供する。一実施形態において、対象は活動性EoEを有する。一実施形態において、対象は、中程度から重度のEoEを有する。
【0021】
特定の実施形態において、本発明は、ヒトを含む対象の食道伸展性を増加させるための医薬品の製造における、IL-4Rに結合する抗体またはその抗原結合断片の使用を提供する。一実施形態において、対象は活動性EoEを有する。一実施形態において、対象は中程度から重度のEoEを有する。
【0022】
本発明の他の実施形態は、次の詳細な説明の検討から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】毎週の好酸球性食道炎の重症度および活動性指数(EEsAI)スコアを含むコンポーネントを列挙する図である。
図2】週1回(qw)300mgデュピルマブ対プラセボを投与された患者における12週間の治療期間中のシュトラウマン嚥下障害計測(SDI)スコアのベースラインからの平均変化を示す図である。
図3】週1回(qw)300mgデュピルマブ対プラセボの投与時の10週目および12週目におけるシュトラウマン嚥下障害計測(SDI)スコアの嚥下障害頻度および重症度コンポーネントのベースラインからの変化パーセントの平均を示す図である。
図4】週1回(qw)300mgデュピルマブ対プラセボを投与された患者における12週間の治療期間中のEEsAIスコアのベースラインからの変化パーセントの平均を示す図である。
図5】週1回(qw)300mgデュピルマブ対プラセボを投与された患者における12週目での総EoE浮腫、リング、滲出液、溝および狭窄(EREFS)スコア、ならびにEREFSスコアのサブコンポーネントにおけるベースラインからの変化パーセントの平均を示す図である。
図6】週1回(qw)300mgデュピルマブ対プラセボを投与された患者における12週目での等級(重症度)サブコンポーネントの総EoE組織学スコアリングシステム(HSS)スコアのベースラインからの平均変化を示す図である。
図7図7は、週1回(qw)300mgデュピルマブ対プラセボを投与された患者における12週目でのステージ(範囲)サブコンポーネントの総EoE HSSスコアのベースラインからの平均変化を示す図である。
図8図8は、図8A、8B、8C、および8Dから構成される。図8Aは、基底部過形成のEoE HSS等級スコアのベースラインからの平均変化を示す。図8Bは、好酸球の表面層化のEoE HSS等級スコアのベースラインからの平均変化を示す。図8Cは、好酸球性炎症のEoE HSS等級スコアのベースラインからの平均変化を示す。図8Dは、週1回(qw)300mgデュピルマブ対プラセボを投与された患者から12週目にサンプリングされた食道の近位、中間、および遠位領域の好酸球性膿瘍のEoE HSS等級スコアのベースラインからの平均変化を示す。
図9図9は、図9A、9B、9C、および9Dから構成される。図9Aは、基底部過形成のEoE HSSステージスコアのベースラインからの平均変化を示す。図9Bは、好酸球性膿瘍のEoE HSSステージスコアのベースラインからの平均変化を示す。図9Cは、好酸球炎症のEoE HSSステージスコアのベースラインからの平均変化を示す。図9Dは、週1回(qw)300mgデュピルマブ対プラセボを投与された患者から12週目にサンプリングされた食道の近位、中間、および遠位領域の好酸球表面層のEoE HSSステージスコアのベースラインからの平均変化を示す。
図10図10は、図10A、10B、および10Cから構成される。図10Aは、拡張した細胞間空間のEoE HSS等級スコアのベースラインからの平均変化を示す。図10Bは、表面変化のEoE HSS等級スコアのベースラインからの平均変化を示し、図10Cは、週1回(qw)300mgデュピルマブ対プラセボを投与された患者から12週目にサンプリングされた食道の近位、中間、および遠位領域のアポトーシス上皮細胞のEoE HSS等級スコアのベースラインからの平均変化を示す。
図11図11は、図11A、11B、および11Cから構成される。図11Aは、拡張した細胞間空間のEoE HSSステージスコアのベースラインからの平均変化を示す。図11Bは、表面変化のEoE HSSステージスコアのベースラインからの平均変化を示し、図11Cは、週1回(qw)300mgデュピルマブ対プラセボを投与された患者から12週目にサンプリングされた食道の近位、中間、および遠位領域のアポトーシス上皮細胞のEoE HSSステージスコアのベースラインからの平均変化を示す。
図12】週1回(qw)300mgデュピルマブ対プラセボを投与された患者における12週目での伸展性プラトーのベースラインからの変化パーセントを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明について説明する前に、本発明は、記載されている特定の方法および実験条件に限定されるものではなく、これは、このような方法および条件が変化し得ることによることを理解すべきである。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明することを目的とし、限定することを意図するものではないことは理解すべきである。
【0025】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明
が属する技術分野の当業者によって、一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で使用されるとき、列挙された特定の数値に関して使用される場合、用語「約」とは、数値が、列挙された値から1%未満で変化し得ることを意味する。例えば、本明細書で使用するとき、表現「約100」には、99および101、ならびにその間の全ての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)が含まれる。
【0026】
本明細書に記載されている方法および材料に類似したまたは同等の任意の方法および材料が、本発明の実施に使用することができるが、好ましい方法および材料はここに記載されている。本明細書において言及される全ての刊行物は、全体として記載するために参照により本明細書に組み入れられる。
【0027】
好酸球性食道炎を治療、予防または改善する方法
本発明は、対象における活動性好酸球性食道炎(EoE)の少なくとも1つの症状または兆候を治療、予防または改善するための方法を含む。本発明のこの態様による方法は、それを必要とする対象にIL-4/IL-13経路阻害剤を含む治療有効量の医薬組成物を投与することを含む。本明細書で使用するとき、用語「治療する」、「治療すること」などは、症状を軽減し、一時的もしくは永続的のいずれかで症状の原因を取り除き、または食道における好酸球性炎症の症状の発症を予防もしくは遅らせることを意味する。特定の実施形態において、本発明の方法は、限定されないが、食道の好酸球浸潤、食道壁の肥厚、食道の炎症、食道における気管様のリングまたは突起部の出現、胸痛および腹痛、拒食、嘔吐、嚥下障害ならびに食片圧入を含む、EoEの少なくとも1つの症状または兆候の治療または改善に有用である。
【0028】
「好酸球性食道炎」(EoE)とは、本明細書で使用するとき、食道内の異常な好酸球性炎症および食道機能不全によって特徴付けられる炎症性疾患を意味する。EoEの主要な症状としては、限定されないが、胸痛および腹痛、嚥下障害、胸焼け、拒食、嘔吐ならびに食片圧入が含まれる。EoEの臨床病理学は、食道壁における突起部または気管様リングの存在、および食道粘膜における好酸球浸潤によって特徴付けられる。EoEは、食道の内視鏡検査、続く、食道粘膜内層の顕微鏡および生化学的分析によって診断される。EoEは、対象の状態に応じて、アレルギー性または非アレルギー性に分類することができる。本発明は、EoEのアレルギー性と非アレルギー性形態の両方を治療するための方法を含む。
【0029】
本明細書で使用するとき、用語「活動性EoE」とは、患者が、8週間のプロトンポンプ阻害剤(PPI)による治療後でさえ、食道生検において好酸球/高出力視野(hpf)が15以上である患者のEoE疾患を指す。この用語はまた、頻繁な嚥下障害を示す患者におけるEoE疾患も指し、例えば、患者は、1週間に2、3、4、5回、またはそれ以上の嚥下障害の発症を有する。「活動性EoE」という用語には、軽度のEoE、ならびに中程度から重度のEoEが含まれる。「中程度から重度」という用語は、好酸球増加症(例えば、食道粘膜における好酸球/hpfが15以上)および嚥下障害の頻繁な発症に加えて、SDIスコアが2以上および/またはEEsAIスコアが30以上を有し、少なくとも2年間、EoEの持続期間があり、および/または以前の治療(PPIまたは食道拡張を含む)に応答しないかまたは抵抗性がある患者のEoE疾患を指す。
【0030】
本明細書で使用するとき、表現「それを必要する対象」とは、好酸球性食道炎の1つまたはそれ以上の症状もしくは兆候を示し、および/または好酸球性食道炎(EoE)と診断されたヒトまたは非ヒト哺乳動物を意味する。本開示を通して、用語「対象」は、用語「患者」と互換的に使用される。また、用語「それを必要とする対象」としては、例えば、治療前に、EoEの1つまたはそれ以上の兆候、例えば、肥満細胞などの炎症誘発性メディエーターの食道における過剰発現、食道の好酸球浸潤、食道壁の肥厚、嚥下障害、食
片圧入、ならびに胸痛と腹痛、および/またはEoE関連バイオマーカーの上昇レベルを示す(または示した)患者が含まれる。この用語は詳細には、食道において高倍率視野あたり15個以上の好酸球の存在を示す対象を含む。特定の実施形態において、この用語には、末梢好酸球数の上昇(例えば、≧100、≧150、≧200、または≧300細胞/μl)または血清IgEの上昇(>150kU/L)を伴う被験者も含まれる。
【0031】
特定の実施形態において、本方法は、胃食道逆流症(GERD)を含む慢性食道炎を有する対象において観察される病理学および症状を示す患者を治療するために使用することができる。特定の実施形態において、用語「それを必要とする対象」は、抗GERD療法に非応答性または耐性である対象を含む。例えば、本方法は、プロトンポンプ阻害剤(PPI)に対して耐性である対象を治療するために使用することができる。
【0032】
本発明の文脈において、「それを必要とする対象」は、EoEに対してより感受性であるまたはEoE関連バイオマーカーの上昇レベルを示すことができる集団の一部を含み得る。例えば、「それを必要とする対象」は、アトピー性疾患または障害、例えば、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎およびアレルギー性結膜炎に罹患している対象を含むことができる。特定の実施形態において、用語「それを必要とする対象」は、IL-4/IL-13経路阻害剤の投与前または投与時に、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎およびアレルギー性結膜炎からなる群から選択される疾患もしくは障害を有するまたはそれと診断された患者を含む。特定の実施形態において、用語「それを必要とする対象」は、遺伝性結合組織障害を有する患者を含むことができる。このような対象集団は、例えば、IgE、エオタキシン-3、ペリオスチン、IL-5またはIL-13などのEoE関連バイオマーカーの上昇レベルを示すことができる。
【0033】
特定の実施形態において、「それを必要とする対象」は、アレルゲンに感受性の患者を含む。例えば、「それを必要とする対象」は、以下の特徴のうちの1つを示すことができる患者を含む:(a)1つまたはそれ以上のアレルゲンに曝露されたときにアレルギー反応または応答を起こしやすい;(b)以前に1つまたはそれ以上のアレルゲンに対するアレルギー応答または反応を示した;(c)アレルギーの既往歴を有する;および/または(d)アレルギー応答またはアナフィラキシーの徴候または症状を示す。特定の実施形態において、患者は、EoEに関連したアレルゲンまたは対象をEoEに感受性の状態にしおよび/もしくはEoEを発症しやすくするアレルゲンに対してアレルギーがある。
【0034】
用語「アレルゲン」には、本明細書で使用するとき、感受性の個体においてアレルギー応答を刺激することができる任意の物質、化学物質、粒子または組成物が含まれる。アレルゲンは、例えば、乳製品(例えば、牛乳)、卵、小麦、大豆、トウモロコシ、ライ麦、魚、甲殻類、ピーナッツおよび木の実などの食品内に含まれるまたは食品に由来することができる。あるいは、アレルゲンは、例えば、ダスト(例えば、イエダニを含む)、花粉、昆虫毒(例えば、ハチ、カリバチ、蚊の毒など)、カビ、動物の鱗屑、ラテックス、医薬、薬物、ブタクサ、草および白樺などの非食品内に含まれるまたは非食品に由来することができる。
【0035】
特定の実施形態において、用語「それを必要とする対象」は、食物アレルゲンに対してアレルギー反応を示す集団の一部を含む。例えば、「それを必要とする対象」は、限定されないが、乳製品、卵、小麦、大豆、トウモロコシ、ライ麦、魚、甲殻類、ピーナッツ、木の実、牛肉、鶏肉、オート麦、大麦、豚肉、インゲンおよび果物、例えば、リンゴおよびパイナップルを含む食品に含まれるアレルゲンに対するアレルギーを有する対象を含む。
【0036】
特定の実施形態において、この用語は、ダスト、カビ、昆虫、花粉を含む植物ならびにペット、例えばネコおよびイヌに由来するアレルゲンなどの非食品アレルゲンに対してアレルギー性である対象を含む。非食物アレルギー(環境アレルゲンまたは空気アレルゲンとして知られている)の例には、限定されないが、ハウスダストダニアレルゲン、花粉アレルゲン、動物の鱗屑アレルゲン、昆虫毒、草アレルゲンおよびラテックスが含まれる。
【0037】
本明細書で使用するとき、語句「アレルギー応答」、「アレルギー反応」、「アレルギー症状」などには、蕁麻疹(urticaria)(例えば、蕁麻疹(hives))、血管性浮腫、鼻炎、喘息、嘔吐、くしゃみ、鼻水、副鼻腔炎症、涙目、喘鳴、気管支痙攣、最大呼気流量(PEF)の減少、胃腸障害、フラッシング、腫れた唇、腫れた舌、血圧低下、アナフィラキシーおよび臓器機能障害/臓器不全からなる群から選択される1つまたはそれ以上の兆候または症状が含まれる。また、「アレルギー応答」、「アレルギー反応」、「アレルギー症状」などには、例えば、IgE産生の増加、アレルゲン特異的免疫グロブリン産生の増加および/または好酸球増多などの免疫学的応答および反応が含まれる。
【0038】
いくつかの実施形態において、本明細書の方法は、成人、青年、または子供の治療のためのものである。成人は、18歳以上、青年は12歳以上18歳以下、子供は12歳以下である。いくつかの実施形態において、本明細書の方法を使用して、3歳以下の子供のEoEを治療することができる。一実施形態において、IL-4/IL-13経路の阻害剤を使用して、標準治療処置(例えば、経口コルチコステロイド、拡張など)では適切に制御されない対象において中程度から重度のEoEを治療する。対象は、成人、青年または子供である。
【0039】
本発明はまた、食道伸展性を増加させる方法を含む。本発明のこの態様による方法は、IL-4/IL-13経路阻害剤を含む医薬組成物の1つまたはそれ以上の用量を、それを必要とする患者に投与し、それにより患者における食道の伸展性を増加させるステップを含む。
【0040】
本発明はまた、好酸球浸潤を減少させるための方法を含む。本発明のこの態様による方法は、例えば、食道粘膜において、好酸球数を減少または取り除くために、IL-4/IL-13経路阻害剤を含む医薬組成物の1回またはそれ以上の用量を、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0041】
本明細書で使用するとき、「好酸球浸潤」とは、対象の血液、食道、胃、十二指腸および回腸を含む臓器または組織中の好酸球の存在を意味する。本発明の文脈において、用語「好酸球浸潤」とは、限定されないが、食道および胃を含む胃腸管の領域の粘膜内層中の好酸球の存在を意味する。好酸球浸潤は、例えば、EoEに罹患している対象の食道組織生検において分析される。特定の実施形態によれば、「好酸球浸潤」とは、食道において高倍率視野あたり15個以上の好酸球の存在を意味する。用語「高倍率視野」とは、組織中の、例えば対象の食道由来の組織中の好酸球を観察するために使用される顕微鏡による400倍の標準的な総合倍率を意味する。特定の実施形態において、「好酸球の浸潤」には、白血球、例えば、リンパ球、好中球および肥満細胞による組織への浸潤が含まれる。例えば、食道組織への白血球浸潤は、好酸球特異的マーカー(例えば、CD11cLow/Neg、SiglecF、F4/80、EMR1、Siglec 8およびMBP2)、マクロファージ特異的マーカー(例えば、CD11b、F4/80、CD14、EMR1およびCD68)、好中球特異的マーカー(例えば、CD11b、Ly6G、Ly6C、CD11bおよびCD66b)ならびにT細胞特異的マーカー(例えば、CD3CD4CD8)などの細胞表面マーカーによって検出することができる。
【0042】
本明細書で使用するとき、食道好酸球の減少とは、EoEを有し、IL-4/IL-13経路阻害剤で治療された対象の食道において測定された好酸球と他の白血球の数が、IL-4/IL-13経路阻害剤で治療されていない同一または同様の対象において測定された食道好酸球よりも少なくとも5%、10%、20%、50%、70%、80%または90%低いことを意味する。特定の実施形態において、好酸球浸潤の減少とは、食道粘膜の生検において、高倍率視野あたり15個未満の好酸球、より好ましくは高倍率視野あたり10個未満の好酸球、9個未満の好酸球、8個未満の好酸球、7個未満の好酸球、6個未満の好酸球または5個未満の好酸球を検出することを意味する。特定の実施形態において、食道好酸球の減少とは、好酸球が対象の食道粘膜において検出されないことを意味する。
【0043】
本発明は、好酸球性食道炎を治療し、予防しまたはその重症度を減少させるための方法であって、IL-4/IL-13経路阻害剤を含む治療有効量の医薬組成物をそれを必要とする対象に投与することを含み、該医薬組成物が、例えば、特定の治療投薬レジメンの一部として、複数回投薬で対象に投与される、前記方法を含む。例えば、治療投薬レジメンは、1日に約1回、2日ごとに1回、3日ごとに1回、4日ごとに1回、5日ごとに1回、6日ごとに1回、1週間に1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、1カ月に1回、2カ月ごとに1回、3カ月ごとに1回、4カ月ごとに1回の頻度またはそれらよりも少ない頻度で対象に医薬組成物の複数の用量を投与することを含むことができる。
【0044】
本発明の方法は、特定の実施形態によれば、対象に第2の治療薬を併用して、IL-4/IL-13経路阻害剤を含む治療有効量の医薬組成物を投与することを含む。第二の治療薬は、例えば、IL-1ベータ阻害剤、IL-5阻害剤、IL-9阻害剤、IL-13阻害剤、IL-17阻害剤、IL-25阻害剤、TNFアルファ阻害剤、エオタキシン-3阻害剤、IgE阻害剤、プロスタグランジンD2阻害剤、免疫抑制剤、局所コルチコステロイド、経口コルチコステロイド(例えば、ブデソニド)、全身コルチコステロイド、吸入コルチコステロイド、グルココルチコイド、プロトンポンプ阻害剤、充血除去剤、抗ヒスタミン薬、および非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)からなる群から選択される薬剤であり得る。特定の実施形態において、本発明のIL-4/IL-13経路阻害剤は、食道拡張、アレルゲン除去および食事管理を含む治療法を併用して投与することができる。本明細書で使用するとき、語句「併用して」とは、IL-4/IL-13経路阻害剤を含む医薬組成物が、第2の治療薬の投与と同時に、投与直前にまたは投与直後に対象に投与されることを意味する。特定の実施形態において、第2の治療薬は、IL-4/IL-13経路阻害剤との共製剤として投与される。関連する実施形態において、本発明は、バックグラウンド抗アレルギー治療レジメン中である対象にIL-4/IL-13経路阻害剤を含む治療有効量の医薬組成物を投与することを含む方法を含む。バックグラウンド抗アレルギー治療レジメンは、例えば、ステロイド、抗ヒスタミン剤、充血除去剤、抗IgE剤などの投与経路を含んでもよい。IL-4/IL-13経路阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)は、バックグラウンド抗アレルギー治療レジメンに加えて追加することができる。いくつかの実施形態において、IL-4/IL-13経路阻害剤は「バックグラウンドステップダウン」スキームの一部として追加され、バックグラウンドの抗アレルギー療法は、経時的に(例えば、段階的に)対象から徐々に使用中止にされ、一方、IL-4/IL-13経路阻害剤は、対象に経時的に一定用量でまたは用量を増加してまたは用量を減少させて投与される。特定の実施形態において、IL-4/IL-13経路阻害剤は、単独療法として投与される。
【0045】
好酸球性食道炎関連バイオマーカー
本発明はまた、EoE関連バイオマーカーの使用、定量化および分析を伴う方法を含む
。本明細書で使用するとき、用語「EoE関連バイオマーカー」とは、非EoE患者に存在するまたは検出できるマーカーのレベルまたは量とは異なる(例えば、より大きいまたはより小さい)レベルまたは量でEoE患者に存在するまたは検出できる、任意の生物学的応答、細胞型、パラメータ、タンパク質、ポリペプチド、酵素、酵素活性、代謝産物、核酸、炭水化物または他の生体分子を意味する。例示的なEoE関連バイオマーカーには、限定されないが、例えば、食道好酸球、エオタキシン-3(CCL26)、ペリオスチン、血清IgE(総およびアレルゲン特異的)、血清IgG(総およびアレルゲン特異的)、IL-13、IL-5、血清胸腺および活性化調節ケモカイン(TARC;CCL17)、胸腺間質リンホポエチン(TSLP)、血清好酸球性陽イオンタンパク質(ECP)、カルパイン14、フィラグリン(FLG)、シグナルトランスデューサーおよび転写活性化因子6(STAT6)、インターロイキン4受容体(IL-4R)、および好酸球由来神経毒(EDN)が含まれる。用語「EoE関連バイオマーカー」はまた、EoEでない対象と比較して、EoEの対象において差異的に発現される、当該技術分野において公知の遺伝子または遺伝子プローブを含む。例えば、EoEの対象において有意に上方制御される遺伝子としては、限定されないが、Tヘルパー2(Th2)関連ケモカイン、例えば、CCL8、CCL23およびCCL26、ペリオスチン、カドヘリン様26およびTNFα誘導性タンパク質6(Blanchardら、2006年、J.Clin.Invest.116:536~547頁)が挙げられる。あるいは、「EoE関連バイオマーカー」はまた、末端分化タンパク質(例えば、フィラグリン)(Blanchardら、2006、J.Clin.Invest.116:536~547頁)などのEoEに起因して下方制御される遺伝子を含む。本発明の特定の実施形態は、IL-4/IL-13経路阻害剤の投与により、疾患逆転を監視するためのこれらのバイオマーカーの使用に関する。EoE関連バイオマーカーを検出および/または定量するための方法は当技術分野において公知である;このようなEoE関連バイオマーカーを測定するためのキットは、様々な商業的供給源から入手可能である;および様々な商業的診断研究室は、同様にこのようなバイオマーカーの測定を与えるサービスを提供する。
【0046】
本発明の特定の態様によれば、EoEを治療するための方法であって、(a)疾患状態を意味する、治療前または治療時の少なくとも1つのEoE関連バイオマーカーのレベルを示す対象を選択することと;(b)対象に治療有効量のIL-4/IL-13経路阻害剤を含む医薬組成物を投与することとを含む前記方法が提供される。本発明のこの態様の特定の実施形態において、対象は、IgEまたはエオタキシン-3の上昇レベルに基づいて選択される。
【0047】
本発明の他の態様によれば、対象に治療有効量のIL-4/IL-13経路阻害剤を含む医薬組成物を投与することを含む、EoEを治療するための方法であって、対象への該医薬組成物の投与が、投与前の対象におけるEoE関連バイオマーカーのレベルと比較して、医薬組成物の投与後の時点で少なくとも1つの該バイオマーカー(例えば、食道好酸球、エオタキシン-3、IgEなど)の減少をもたらす、前記方法が提供される。
【0048】
当業者に理解されるように、EoE関連バイオマーカーの増加または減少は、(i)IL-4/IL-13経路阻害剤を含む医薬組成物の投与後の所定時間点で対象において測定されるバイオマーカーのレベルと、(ii)IL-4/IL-13経路阻害剤を含む医薬組成物の投与前の患者において測定される該バイオマーカーのレベル(すなわち、「ベースライン測定」)を比較することによって決定することができる。バイオマーカーが測定される所定の時間点は、例えば、IL-4/IL-13経路阻害剤を含む医薬組成物の投与後約4時間、8時間、12時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、15日、20日、35日、40日、50日、55日、60日、65日、70日、75日、80日、85日またはそれ以上であり得る。
【0049】
本発明の特定の実施形態によれば、対象は、IL-4/IL-13経路阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)を含む医薬組成物の投与後に、IgEおよび/またはエオタキシン-3の1つまたはそれ以上のレベルの減少を示すことができる。例えば、約75mg~約600mgの抗IL-4R抗体(例えば、デュピルマブ)を含む、第1、第2、第3または第4の用量の医薬組成物の投与後約1日目、4日目、8日目、15日目、22日目、25日目、29日目、36日目、43日目、50日目、57日目、64日目、71日目または85日目に、対象は、本発明によれば、ベースラインから約1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれを超えるエオタキシン-3の減少を示すことができる(「ベースライン」は、第1の投与直前の対象におけるエオタキシン-3のレベルとして定義される)。同様に、約75mg~約600mgの抗IL-4R抗体(例えば、デュピルマブ)を含む、第1、第2、第3または第4の用量の医薬組成物の投与後約1日目、4日目、8日目、15日目、22日目、25日目、29日目、36日目、43日目、50日目、57日目、64日目、71日目または85日目に、対象は、本発明によれば、ベースラインから約1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれを超えるIgEの減少を示すことができる(「ベースライン」は、第1の投与直前の対象におけるIgEのレベルとして定義される)。
【0050】
本発明はまた、対象が、IL-4/IL-13経路アンタゴニストを含む医薬組成物の投与が有益である適切な対象であるか否かを決定するための方法を含む。例えば、個体が、IL-4/IL-13経路アンタゴニストを含む医薬組成物を受け入れる前に、疾患状態を表すEoE関連バイオマーカーのレベルを示す場合、したがって、個体は、本発明の医薬組成物(抗IL-4R抗体を含む組成物)の投与が有益である適切な患者として特定される。関連する実施形態において、本発明は、適切な対象を治療するための方法を含み、適切な対象は、例えば、食物アレルギーまたはアトピー性疾患に起因して、EoEに対してより影響を受けやすい場合がある。例えば、本発明は、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎またはアレルギー性結膜炎を有する対象にIL-4/IL-13経路アンタゴニストを投与することを含む方法を含む。別の例において、本発明は、メンデル遺伝性結合組織障害、例えば、マルファン症候群、ロイス・ディーツ症候群、移動性エーラス・ダンロス症候群(EDS)または関節過度可動性症候群(JHS)を有する対象にIL-4/IL-13経路アンタゴニストを投与することを含む方法を含む。このような対象集団は、EoE関連バイオマーカーのレベルが上昇している可能性がある。
【0051】
特定の例示的な実施態様によれば、個体が、以下:(i)約30pg/mlより大きい、約40pg/mlより大きい、約50pg/mlより大きい、約100pg/mlより大きい、約150pg/mlより大きい、約200pg/mlより大きい、約250pg/mlより大きい、約300pg/mlより大きい、約350pg/mlより大きい、約400pg/mlより大きい、約450pg/mlより大きいもしくは約500pg/mlより大きいエオタキシン-3レベル;または(ii)約114kU/Lより大きい、約150kU/Lより大きい、約500kU/Lより大きい、約1000kU/Lより大きい、約1500kU/Lより大きい、約2000kU/Lより大きい、約2500kU/Lより大きい、約3000kU/Lより大きい、約3500kU/Lより大きい、約4000kU/Lより大きい、約4500kU/Lもしくは約5000kU/Lより大きい血清IgEレベル;または(iii)対象の食道において高倍率視野あたり15個以上の好酸球、の1つまたはそれ以上を示す場合、個体は抗IL-4/IL-13療法に対して良好な候補として特定することができる。追加の基準、例えば、EoEの他の臨床指標(例えば、EoEを示す嚥下障害、食道壁の肥厚および食物アレルギー)は、本明細書の他の
箇所に記載される抗IL-4/IL-13療法に適した候補として個体を特定するために、前述のEoE関連バイオマーカーのいずれかを併用して使用することができる。
【0052】
好酸球性食道炎関連のパラメータ
本発明は、それを必要とする対象における1つまたはそれ以上の好酸球性食道炎(EoE)関連パラメータを改善する方法を含み、本方法は、IL-4/IL-13経路阻害剤を含む医薬組成物を対象に投与するステップを含む。
【0053】
「EoE関連パラメータ」の例には、(a)シュトラウマン嚥下障害計測(SDI);(b)好酸球性食道炎活動指数(EEsAI);(c)好酸球性食道炎浮腫 リング 滲出液 溝および狭窄(EoE-EREFS);(d)好酸球性食道炎組織スコアリングシステム(EoE-HSS);(e)食道上皮内好酸球;および(f)食道伸展性が挙げられる。「EoE関連パラメータの改善」とは、SDI、EEsAI、EoE-EREFS、EoE-HSS、または食道上皮内好酸球の1つまたはそれ以上のベースラインからの減少を意味する。食道伸展性の改善は、ベースラインからの増加を意味する。本明細書で使用するとき、EoE関連パラメータに関する用語「ベースライン」とは、本発明の医薬組成物の投与前または投与時の対象のEoE関連パラメータの数値を意味する。
【0054】
EoE関連パラメータが「改善」されたかどうかを決定するために、パラメータは、ベースラインおよび本発明の医薬組成物の投与後の1つまたはそれ以上の時間点で定量化される。例えば、EoE関連のパラメータは、本発明の医薬組成物による初期治療後の1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、14日目、15日目、22日目、25日目、29日目、36日目、43日目、50日目、57日目、64日目、71日目、85日目に、または、1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、11週、12週、13週、14週、15週、16週、17週、18週、19週、20週、21週、22週、23週、24週の終わりに、またはそれより長期で測定される。治療開始後の特定の時間点でのパラメータの値とベースラインでのパラメータの値との差を使用して、EoE関連パラメータに「改善」(例えば、減少)があったかどうかを確認する。
【0055】
シュトラウマン嚥下障害計測(SDI)。SDIは、嚥下障害の頻度および強度を決定するための臨床研究で使用されている検証されていない患者により報告された結果(PRO)である(Straumann 2010年)。SDIには、1週間のリコール期間がある。嚥下障害イベントの頻度は、5点スケールで等級付けされる:0=なし、1=週に1回、2=週に数回、3=1日に1回、および4=1日に数回。ならびに嚥下障害イベントの強度は、6点スケールで等級付けされる:0=制限なしの嚥下、1=僅かな抵抗感、2=通過の遅れを伴う僅かなレッチング、3=介入(例えば、飲料、呼吸)を必要とする短期間の閉塞塞、4=嘔吐によってのみ除去可能な長期の持続閉塞、および5=内視鏡的介入を必要とする長期にわたる完全閉塞。合計SDIスコアは、0~9の範囲である。本発明の特定の実施形態によれば、患者へのIL-4/IL-13経路阻害剤の投与は、ベースラインから3ポイントのSDIスコアの減少をもたらす。例えば、本発明は、SDIのベースラインから1、2、3、4、5、6またはそれ以上の減少のSDIスコアのベースラインからの減少をもたらす治療方法を含む。特定の例示的な実施形態において、患者へのIL-4/IL-13経路阻害剤の投与は、IL-4/IL-13経路阻害剤の投与後(例えば、約300mgの抗IL-4R抗体またはその抗原結合断片の皮下投与後)の4、8、15、22、25、29、36、43、50、57、64、71、85日目に、またはそれ以降に少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれ以上の減少をもたらす。本発明の特定の例示的な実施形態において、対象へのIL-4/IL-13経路阻害剤の投与は、少なくとも40%のSDIのベースラインからの減少をもたらす。
【0056】
好酸球性食道炎活性指数(EEsAI)。EEsAIは、国際的なEEsAI研究グループの一部である大学病院インセルスピタル(Berne、Switzerland)(Schoepfer 2014年)で開発中の検証されていないマルチモジュラー指数である。この研究で使用されるEEsAI PROモジュール(問診票)には、嚥下障害の強度および頻度、嚥下障害症状における特定の食品グループの影響、ならびに飲食に依存しない他の症状(すなわち、胸焼け、酸の吐き戻し、および胸痛)に関連する項目が含まれる。総EEsAI PROスコアは、0~100の範囲であり(図1)、スコアが高いほど症状が悪化する。スコアは5つの部分からなる:嚥下困難の頻度、嚥下困難の持続時間、嚥下時の疼痛、視覚嚥下障害の質問、回避、修正、および遅食(AMS)。本発明の特定の実施形態によれば、患者へのIL-4/IL-13経路阻害剤の投与は、EEsAIスコアの減少をもたらす。例えば、本発明は、IL-4/IL-13経路阻害剤の投与後(例えば、約300mgの抗IL-4R抗体またはその抗原結合断片の皮下投与後)の4、8、15、22、25、29、36、43、50、57、64、71、85日目に、またはそれ以降に少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、またはそれ以上のEEsAIスコアのベースラインからの減少をもたらす治療方法を含む。本発明の特定の例示的な実施形態において、対象へのIL-4/IL-13経路阻害剤の投与は、投与後少なくとも30%のEEsAIスコアのベースラインからの減少をもたらす。
【0057】
好酸球性食道炎浮腫 リング 滲出液 溝および狭窄(EoE-EREFS)。EoE-EREFS(浮腫、リング、滲出液、溝、狭窄)を使用して、内視鏡的に同定されたEoE食道粘膜の炎症およびリモデリングの特徴を測定した。この機器には、食道機能の存在および重症度に関連する合計17の項目が含まれる。特定の食道の特徴には、以下が含まれる:リング(食道周囲の同心円状リング-欠如、軽度、中程度、重度、該当なし);狭窄(食道の狭窄-はい、いいえ、該当なし);狭窄の直径(該当する場合);滲出液(白い斑点を参照-欠如、軽度、重度)、溝(食道の垂直線-欠如、存在);浮腫(粘膜の血管マーキングの喪失-不存在、存在);クレープ紙食道(不存在、存在);内視鏡で同定されたすべてのEoE所見(すなわち、固定されたリング、狭窄、白っぽい滲出液、溝、浮腫、およびクレープ紙粘膜)を組み込んだ全体的な外観。さらに、胃食道逆流症に関連付けられる粘膜の変化はまた、侵食に関するロサンジェルス分類システムを使用して記録された(侵食なしまたはLA分類A、B、C、D)。EoE食道特性は、EoE-EREFSに基づいて分析され、EoE-EREFSは、全体的なスコアと各々個人の特性のスコアの両方を使用して、疾患の炎症およびリモデリング特徴の検証されたスコアリングシステムである(Hirano 2014年)。本発明の特定の実施形態によれば、患者へのIL-4/IL-13経路阻害剤の投与は、EoE-EREFSスコアの減少をもたらす。例えば、本発明は、IL-4/IL-13経路阻害剤の投与後(例えば、約300mgの抗IL-4R抗体またはその抗原結合断片の皮下投与後)の4、8、15、22、25、29、36、43、50、57、64、71、85日目に、またはそれ以降に少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%またはそれ以上のEREFSスコアのベースラインからの減少をもたらす治療方法を含む。
【0058】
好酸球性食道炎組織学的スコアリングシステム(EoE-HSS)。EoE-HSSは、別個の重症度(等級)および範囲(ステージ)疾患スコアを生じさせた。スコアを使用して、食道の3つの異なる領域(近位、中間および遠位)からEoEの8つの組織学的特徴(パラメータ)を測定した(Collinsら、2017年)。8つのパラメータには、好酸球密度、基底部過形成、好酸球膿瘍、好酸球表面の層化、細胞間空間の拡張、表面上皮の変化、角化異常細胞、および固有層線維症が含まれる。等級とステージの両方で、各パラメータについて0~3のスケールを使用した(0は最小の炎症、正常)。本発明の
特定の実施形態によれば、患者へのIL-4/IL-13経路阻害剤の投与は、EoE-HSSスコアの減少をもたらす。例えば、本発明は、IL-4/IL-13経路阻害剤の投与後(例えば、約300mgの抗IL-4R抗体またはその抗原結合断片の皮下投与後)の4、8、15、22、25、29、36、43、50、57、64、71、85日目に、またはそれ以降に少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%またはそれ以上のEoE-HSSのベースラインからの減少をもたらす治療方法を含む。本発明の特定の例示的な実施形態において、対象へのIL-4/IL-13経路阻害剤の投与は、少なくとも50%のEoE-HSSスコアのベースラインからの減少をもたらす。
【0059】
食道上皮内好酸球。食道生検において高倍率視野(hpf)あたり好酸球が15個以上を指す。ピーク上皮内好酸球とは、サンプリングされた3つの食道領域のうち少なくとも2つにおいて、高倍率視野あたり15個以上の好酸球を指す。本発明の特定の実施形態によれば、患者へのIL-4/IL-13経路阻害剤の投与は、上皮内好酸球のピークの減少をもたらす。例えば、本発明は、IL-4/IL-13経路阻害剤の投与後(例えば、約300mgの抗IL-4R抗体またはその抗原結合断片の皮下投与後)の4、8、15、22、25、29、36、43、50、57、64、71、85日目に、またはそれ以降に少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%またはそれ以上の上皮内好酸球のベースラインからの減少をもたらす治療方法を含む。本発明の特定の例示的な実施形態において、対象へのIL-4/IL-13経路阻害剤の投与は、上皮内好酸球のベースラインから少なくとも85%の減少をもたらす。
【0060】
食道伸展性。食道伸展性は、食道内腔の直径および圧力を測定するために、管腔内機能性内腔画像化プローブ(EndoFLIP,Crospon、Ireland)を使用して評価される。EndoFLIPデバイスは、食道の体積膨張中に同時に管腔内圧力を記録しながら、食道に沿った複数の部位で断面積を測定するカテーテルベースの手順である。食道の断面積対圧力の関係の分析により、食道のコンプライアンス、ならびに伸展性プラトー(DP)の判定が可能になる。DPは、健康な対照と比較して、EoEを有する患者において有意に減少することが示されている(Kwiatek 2011年)。本発明の特定の実施形態によれば、患者へのIL-4/IL-13経路阻害剤の投与は、食道伸展性の増加をもたらす。例えば、本発明は、IL-4/IL-13経路阻害剤の投与後(例えば、約300mgの抗IL-4R抗体またはその抗原結合断片の皮下投与後)の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12週目の終わりに、またはそれ以降に少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%またはそれ以上の食道伸展性のベースラインからの増加をもたらす治療方法を含む。本発明の特定の例示的な実施形態において、対象へのIL-4/IL-13経路阻害剤の投与は、インピーダンス面積測定法で測定した場合、食道伸展性のベースラインから少なくとも10%の増加をもたらす。
【0061】
成人好酸球性食道炎の生活の質(EoE-QoL-A)問診票。EoE-QOL-A問診票は、EoE患者の健康に関連する生活の質の検証された疾患特異的尺度である(Taft 2011年)。この研究で使用した機器であるEoE-QOL-A v.3.0には、社会的機能、感情的機能、日常生活の経験の病気の影響などの確立されたドメインに関連する30の項目が含まれる。EoE-QOL-Aには、1週間のリコール期間がある。項目は、「全くない」、「僅か」、「中程度」、「かなり」、および「非常に」の5点スケールで等級付けされる。特定の実施形態によれば、患者へのIL-4/IL-13経路阻害剤の投与は、患者の生活の質のパラメータの増加をもたらす。
【0062】
IL-4/IL-13経路阻害剤
本発明の方法は、IL-4/IL-13経路阻害剤を含む治療用組成物を、それを必要
とする対象に投与するステップを含む。
【0063】
本明細書で使用するとき、「IL-4/IL-13経路阻害剤」(本明細書では「IL-4/IL-13経路アンタゴニスト」、「IL-4/IL-13経路ブロッカー」などとも呼ばれる)は、(i)IL-4および/もしくはIL-13のそれぞれの受容体への結合;(ii)IL-4および/もしくはIL-13のシグナル伝達および/もしくは活性;ならびに/または(iii)IL-4および/またはIL-13のそれぞれの受容体への結合から生じる下流のシグナル伝達/活性、のうち少なくとも1つを阻害または減衰する任意の薬剤である。例示的なIL-4/IL-13経路阻害剤には、限定されないが、抗IL-4抗体(例えば、米国特許第7740843号および米国特許出願公開第2010/0297110号、同第2016/0207995号に開示される抗体)、抗IL-13抗体(例えば、米国特許第7501121号、同第7674459号、同第7807788号、同第7910708号、同第7915388号、同第7935343号、同第8088618号、同第8691233号、同第9605065号、米国特許出願公開第2006/0073148号、同第2008/0044420号、および欧州特許第2627673B1号に開示されている抗体)、IL-4およびIL-13に結合する二重特異性抗体(例えば、米国特許第8388965号、米国特許出願公開第2011/0008345号、同第2013/0251718号、同第2016/0207995号に開示されている抗体)、およびIL-4受容体(IL-4R)阻害剤(後述)が含まれる。
【0064】
本明細書で使用するとき、「IL-4R阻害剤」(本明細書では「IL-4/IL-13経路阻害剤」、「IL-4Rαアンタゴニスト」、「IL-4Rブロッカー」、「IL-4Rαブロッカー」などと称する。)は、IL-4RαもしくはIL-4Rリガンドに結合するまたはそれと相互作用し、1型および/もしくは2型のIL-4受容体の正常な生物学的シグナル伝達機能を阻害または減衰させる任意の薬物である。ヒトIL-4Rは、配列番号11のアミノ酸配列を有する。1型のIL-4受容体は、IL-4Rα鎖とγc鎖を含む二量体受容体である。2型のIL-4受容体は、IL-4Rα鎖およびIL-13Rα1鎖を含む二量体受容体である。1型のIL-4受容体はIL-4と相互作用し、IL-4によって刺激され、一方、2型のIL-4受容体はIL-4とIL-13の両方によって刺激される。したがって、本発明の方法において使用することができるIL-4R阻害剤は、IL-4媒介性シグナル伝達、IL-13媒介性シグナル伝達またはIL-4とIL-13媒介性シグナル伝達の両方をブロックすることによって機能することができる。このようにして、本発明のIL-4R阻害剤は、1型または2型受容体とのIL-4および/IL-13の相互作用を妨げることができる。
【0065】
IL-4R阻害剤のカテゴリーの非制限的な例としては、IL-4突然変異タンパク質(例えば、ピトラキンラ)、小分子IL-4R阻害剤、抗IL-4Rアプタマー、ペプチドベースのIL-4R阻害剤(例えば、「ペプチボディ」分子)、「受容体ボディ」(例えば、IL-4R成分のリガンド結合ドメインを含む遺伝子操作された分子)およびヒトIL-4Rαに特異的に結合する抗体または抗体の抗原結合断片が挙げられる。本明細書で使用するとき、IL-4R阻害剤はまた、IL-4および/またはIL-13に特異的に結合する抗原結合タンパク質を含む。
【0066】
抗IL-4Rα抗体およびその抗原結合断片
本発明の特定の例示的な実施形態によれば、IL-4/IL-13経路阻害剤は、抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合断片である。用語「抗体」は、本明細書で使用するとき、ジスルフィド結合によって内部連結された2つの重(H)鎖と2つの軽(L)鎖の4つのポリペプチド鎖を含む免疫グロブリン分子、ならびにそのマルチマー(例えば、IgM)を含む。典型的な抗体において、各々の重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてHCVRまたはVと省略される)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのド
メインであるC1、C2およびC3を含む。各々の軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてLCVRまたはVと略記される)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(C1)を含む。VおよびV領域は、さらに、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分することができ、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存されている領域が散在する。各々のVおよびVは、以下のFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順でアミノ末端からカルボキシ末端に配置された3つのCDRと4つのFRで構成される。本発明の異なる実施形態において、抗IL-4R抗体(またはその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖細胞系配列と同一であってもよく、または天然もしくは人工的に改変することができる。アミノ酸コンセンサス配列は、2つまたはそれを超えるCDRの比較分析に基づいて定義することができる。
【0067】
用語「抗体」はまた、本明細書で使用するとき、完全な抗体分子の抗原結合断片を含む。抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合断片」などの用語は、本明細書で使用するとき、抗原と特異的に結合し、複合体を形成する、任意の天然に存在する、酵素的に得られる、合成の、もしくは遺伝子操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合断片は、例えば、タンパク分解または抗体可変ドメインおよび場合により定常ドメインをコードするDNAの操作および発現を伴う組換え遺伝子操作技術などの任意の適した標準技術を用いて完全な抗体分子から誘導することができる。このようなDNAは、公知でありおよびもしくは、例えば、商業的供給源、DNAライブラリー(例えば、ファージ抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であり、または合成することができる。DNAを配列決定し、化学的にまたは分子生物学的技術を用いて操作し、例えば、適切な構成に1もしくはそれ以上の可変領域および/または定常領域を配置することができ、あるいはコドンを導入し、システイン残基を作成し、アミノ酸を改変、付加または削除することができる。
【0068】
抗原結合断片の非限定的な例としては、(i)Fab断片;(ii)F(ab’)2断片;(iii)Fd断片;(iv)Fv断片;(v)一本鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAb断片;および(vii)抗体の超可変領域(例えば、CDR3ペプチドなどの単離された相補性決定領域(CDR))または制約されたFR3-CDR3-FR4ペプチドを模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位が挙げられる。他の遺伝子操作された分子、例えば、ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小モジュール免疫医薬(SMIP)およびサメ可変IgNARドメインは、本明細書で使用される「抗原結合断片」という表現に包含される。
【0069】
抗体の抗原結合断片は、典型的には、少なくとも1つの可変ドメインを含む。可変ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成であることができ、一般には、1つまたはそれ以上のフレームワーク配列に隣接してまたはそれとインフレームである少なくとも1つのCDRを含む。Vドメインに関連付けられたVドメインを有する抗原結合断片において、VおよびVドメインは、任意の適切な配置で互いに関連して配置することができる。例えば、可変領域は、二量体であってもよく、V-V、V-VまたはV-V二量体を含有することができる。あるいは、抗体の抗原結合性断片は、単量体VまたはVドメインを含むことができる。
【0070】
特定の実施形態において、抗体の抗原結合断片は、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合された少なくとも1つの可変ドメインを含むことができる。本発明の抗体の抗原結合断片内に見出すことができる可変ドメインおよび定常ドメインの非限定的な例示的構成は、(i)V-C1;(ii)V-C2;(iii)V-C3;(iv)V
-C1-C2;(v)V-C1-C2-C3;(vi)V-C2-C3;(vii)V-C;(viii)V-C1;(ix)V-C2;(x)V-C3;(xi)V-C1-C2;(xii)V-C1-C2-C3;(xiii)V-C2-C3;および(xiv)V-Cを含む。上記の例示的構成のいずれかを含む可変ドメインおよび定常ドメインのいずれかの構成において、可変ドメインおよび定常ドメインは、互いに直接結合することができ、あるいは完全もしくは部分的なヒンジまたはリンカー領域によって連結することができる。ヒンジ領域は、単一のポリペプチド分子において隣接する可変ドメインおよび/または定常ドメインの間の可撓性または半可撓性連結をもたらす、少なくとも2個(例えば、5、10、15、20、40、60個またはそれを超える)のアミノ酸から構成することができる。さらに、本発明の抗体の抗原結合性断片は、互いに非共有結合でおよび/または1つもしくはそれ以上の単量体のVまたはVドメインと(例えば、ジスルフィド結合(単数もしくは複数)による)非共有結合で、上記で列挙された可変ドメインと定常ドメインの構成のいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含むことができる。
【0071】
また、用語「抗体」とは、本明細書で使用するとき、多重特異的(例えば、二重特異性)抗体を含む。多重特異的抗体または抗体の抗原結合断片は、典型的には、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含み、各々の可変ドメインは、異なる抗原または同一の抗原上の異なるエピトープに特異的に結合することができる。任意の多重特異的抗体フォーマットは、当該技術分野で利用可能な日常的な技術を用いて、本発明の抗体または抗体の抗原結合断片との関連で使用するために適合させることができる。例えば、本発明は、二重特異的抗体の使用を含む方法を含み、免疫グロブリンの一方のアームは、IL-4Rαまたはその断片に特異的であり、免疫グロブリンの他方のアームは、第2の治療標的に特異的でありまたは治療部分にコンジュゲートされる。本発明との関連で使用することができる例示的な二重特異的フォーマットとしては、限定されないが、例えば、scFvベースまたはダイアボディ二重特異的フォーマット、IgG-scFv融合体、二重可変ドメイン(DVD)-Ig、クアドローマ、ノブ-イントゥ-ホール(knob-into-hole)、共通の軽鎖(例えば、ノブ-イントゥ-ホールを有する共通の軽鎖など)、CrossMab、CrossFab、(SEED)ボディ、ロイシンジッパー、デュオボディ、IgG1/IgG2、二重作用Fab(DAF)-IgGおよびMab二重特異的フォーマット(例えば、上記フォーマットの概要について、Kleinら、2012年、mAbs 4:6、1~11頁およびそこに引用されている参考文献を参照されたい。)が挙げられる。二重特異的抗体はまた、ペプチド/核酸コンジュゲーションを用いて構築することができ、例えば、直交化学反応性を有する非天然アミノ酸を用いて、部位特異的抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲートを生じさせ、次に、所定の組成、原子価および形状(geometry)を有する多量体複合体へと自己集合する(例えば、Kazaneら、J.Am.Chem.Soc.[Epub:Dec.4,2012年]を参照されたい)。
【0072】
本発明の方法において使用される抗体はヒト抗体であり得る。用語「ヒト抗体」は、本明細書で使用するとき、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むことが意図される。本発明のヒト抗体は、それにもかかわらず、例えば、CDR、特にCDR3において、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロにおいてランダムもしくは部位特異的突然変異誘発によってまたはインビボにおいて体細胞変異によって誘導される変に)を含むことができる。しかしながら、用語「ヒト抗体」は、本明細書で使用するとき、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことを意図するものではない。
【0073】
本発明の方法において使用される抗体は、組換えヒト抗体であってもよい。用語「組換
えヒト抗体」は、本明細書で使用するとき、組換え手段によって調製され、発現され、作製されまたは単離される全てのヒト抗体、例えば、宿主細胞内にトランスフェクトされる組換え発現ベクターを用いて発現される抗体(以下に詳細に記載されている)、組換え、組み合わせヒト抗体から単離される抗体(以下に詳細に記載されている)、ヒト免疫グロブリン遺伝子を導入した動物(例えば、マウス)から単離される抗体(例えば、Taylorら(1992年)Nucl.Acids Res.20:6287~6295頁)または他のDNA配列へのヒト免疫グロブリン遺伝子配列のスプライシングを伴う任意の他の手段によって調製され、発現され、作製されもしくは単離される抗体を含むことが意図される。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する。しかしながら、特定の実施形態において、このような組換えヒト抗体は、インビトロでの突然変異誘発(またはヒトIg配列について遺伝子導入された動物が使用された場合は、インビボでの体細胞突然変異誘発)に供され、したがって、組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト抗体生殖系列VおよびV配列に由来し、それらに関連する一方、インビボでのヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然に存在しない可能性がある配列である。
【0074】
特定の実施形態によれば、本発明の方法において使用される抗体は、IL-4Rαに特異的に結合する。用語「特異的に結合する」などは、抗体またはその抗原結合断片が生理学的条件下で比較的安定である抗原と複合体を形成することを意味する。抗体が抗原に特異的に結合するかどうかを決定するための方法は当該技術分野において周知であり、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などが挙げられる。例えば、IL-4Rαに「特異的に結合する」抗体は、本発明との関連で、表面プラズミン共鳴アッセイにおいて測定した場合、約500nM未満、約300nM未満、約200nM未満、約100nM未満、約90nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約4nM未満、約3nM未満、約2nM未満、約1nM未満または約0.5nM未満のKでIL-4Rαまたはその部分に結合する抗体を含む。しかしながら、ヒトIL-4Rαに特異的に結合する単離された抗体は、他の(非ヒト)種由来のIL-4Rα分子などの他の抗原に対して交差反応性を有することができる。
【0075】
本発明の特定の例示的な実施形態によれば、IL-4/IL-13経路阻害剤は、抗IL-4Rα抗体、または米国特許第7,608,693号に記載されている、重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)および/もしくは抗IL-4R抗体のアミノ酸配列のいずれかを含む相補性決定領域(CDR)、を含む上記抗体の抗原結合断片である。特定の例示的な実施形態において、本発明の方法との関連で使用することができる抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む。特定の実施形態によれば、抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合断片は、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)と3つのLCDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含み、HCDR1は配列番号3のアミノ酸配列を含み;HCDR2は配列番号4のアミノ酸配列を含み;HCDR3は配列番号5のアミノ酸配列を含み;LCDR1は配列番号6のアミノ酸配列を含み;LCDR2は配列番号7のアミノ酸配列を含み;およびLCDR3は配列番号8のアミノ酸配列を含む。なお他の実施形態において、抗IL-4R抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1を含むHCVRと配列番号2を含むLCVRを含む。特定の実施形態において、本発明の方法は、抗IL-4R抗体の使用を含み、該抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗IL-4R抗体は、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖と配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む例示的な抗体は、デュピルマブとして知られている完全なヒト抗IL-4R抗体である。特定の例示的な
実施形態によれば、本発明の方法は、デュピルマブまたはその生物学的同等物の使用を含む。用語「生物学的に同等な」とは、本明細書で使用するとき、同様の実験条件下で単回投薬または複数回投薬のいずれかで同じモル用量で投与した場合、吸収の速度および/または程度が、デュピルマブのそれと比較して有意な差を示さない医薬同等物または医薬代替物である抗IL-4R抗体もしくはIL-4R結合タンパク質またはそれらの断片を意味する。本発明との関連で、この用語は、安全性、純度および/または効力においてデュピルマブと比較して臨床的に意味のある差がない、IL-4Rに結合する抗原結合タンパク質を意味する。
【0076】
本発明の方法との関連で使用することができる他の抗IL-4Rα抗体は、例えば、AMG317と称し、AMG317として当該技術分野において公知である抗体(Correnら、2010年、Am J Respir Crit Care Med.、181(8):788~796)またはMEDI 9314または米国特許第7,186,809号、米国特許第7,605,237号、米国特許第7,638,606号または米国特許第8,092,804号、米国特許第8,679,487号または米国特許第8,877,189号に記載されている抗IL-4Rα抗体のいずれかを含む。
【0077】
本発明の方法との関連で使用される抗IL-4Rα抗体は、pH依存的な結合特性を有することができる。例えば、本発明の方法において使用するための抗IL-4Rα抗体は、中性pHと比較して酸性pHにおいて減少したIL-4Rαに対する結合を示し得る。あるいは、本発明の抗IL-4Rα抗体は、中性pHと比較して、酸性pHにおいてその抗原に対して増強した結合を示すことができる。表現「酸性pH」は、約6.2未満のpH値、例えば、約6.0、5.95、5.9、5.85、5.8、5.75、5.7、5.65、5.6、5.55、5.5、5.45、5.4、5.35、5.3、5.25、5.2、5.15、5.1、5.05、5.0、またはそれ未満を含む。本明細書で使用されるとき、表現「中性pH」は、約7.0から約7.4のpHを意味する。表現「中性pH」は、約7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35および7.4のpH値を含む。
【0078】
特定の例において、「中性pHと比較して酸性pHにおいて減少したIL-4Rαに対する結合」は、中性pHにおいてIL-4Rαに結合する抗体結合のK値に対する酸性pHにおいてIL-4Rαに結合する抗体のK値(または逆)によって表される。例えば、抗体またはその抗原結合抗体が約3.0またはそれを超える酸性/中性K比を示す場合、抗体またはその抗原結合断片は、本発明の目的で、「中性pHと比較して酸性pHにおいて減少したIL-4Rαに対する結合」を示すものとしてみなされる場合がある。特定の例示的な実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片に関する酸性/中性K比は、約3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、20.0、25.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、100.0またはそれを超えるものであり得る。
【0079】
pH依存的な結合特性を有する抗体は、例えば、中性pHと比較して、酸性pHで特定の抗原に対する減少(または増強)した結合について抗体集団をスクリーニングすることによって取得することができる。加えて、アミノ酸レベルでの抗原結合ドメインの修飾は、pH依存的特性を有する抗体を得ることができる。例えば、抗原結合ドメイン(例えば、CDR内)の1つまたはそれ以上のアミノ酸をヒスチジン残基で置換することによって、中性pHと比較して酸性pHで抗原結合が減少した抗体を得ることができる。本明細書で使用されるとき、表現「酸性pH」とは、6.0またはそれ未満のpHを意味する。
【0080】
医薬組成物
本発明は、対象にIL-4/IL-13経路阻害剤を投与することを含む方法を含み、IL-4/IL-13経路阻害剤は医薬組成物内に含有される。本発明の医薬組成物は、適切な担体、賦形剤、および適切な転写、送達、耐性などを提供する他の薬剤とともに製剤化することができる。多数の適切な製剤は、薬剤師に公知の処方において見出すことができる:Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、PA。これらの製剤としては、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、ベシクルを含む脂質(カチオン性またはアニオン性)(例えば、LIPOFECTIN(商標))、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油および油中水エマルジョン、エマルジョンカーボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲルならびにカーボワックスを含む半固体混合物が挙げられます。また、Powellら 「Compendium of excipients for parenteral formulations」PDA(1998年)J Pharm Sci Technol 52:238~311を参照されたい。
【0081】
様々な送達系が公知であり、本発明の医薬組成物を投与するために使用することができ、例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセル、変異ウイルスを発現することができる組換え細胞への封入、受容体媒介性エンドサイトーシスが挙げられる(例えば、Wuら、1987年、J.Biol.Chem.262:4429~4432頁を参照されたい)。投与方法には、限定されないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外および経口経路が含まれる。組成物は、任意の便利な経路によって、例えば、点滴またはボーラス注射によって、上皮または粘膜皮膚内壁(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)を介した吸収によって投与することができ、他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与することができる。
【0082】
本発明の医薬組成物は、標準的な針およびシリンジで皮下または静脈内に送達することができる。さらに、皮下送達に関して、ペン型送達デバイスは、容易に、本発明の医薬組成物を送達するという用途を有する。このようなペン型送達デバイスは、再利用可能または使い捨てであり得る。再利用可能なペン型送達デバイスは、一般に、医薬組成物を含有する交換可能なカートリッジを利用する。カートリッジ内の医薬組成物の全てが投与され、カートリッジが空になると、空のカートリッジは容易に破棄され、医薬組成物を含む新しいカートリッジと交換することができる。ペン型送達デバイスは、再利用することができる。使い捨てのペン型送達デバイスでは、交換可能なカートリッジはない。むしろ、使い捨てのペン型送達デバイスは、デバイス内のリザーバ内に保持された医薬組成物で予め充填する。リザーバにおいて医薬組成物が空になると、デバイス全体が廃棄される。
【0083】
特定の状況において、医薬組成物は、制御放出システムで送達することができる。一実施形態において、ポンプを使用することができる。別の実施形態において、ポリマー材料を使用することができる;Medical Applications of Controlled Release、LangerおよびWise(編集)、1974年、CRC Pres.、Boca Raton、Floridaを参照されたい。さらに別の実施形態において、放出制御システムは、組成物の標的の近傍に配置することができ、したがって、全身投薬の一部のみを必要とする(例えば、Goodson、1984年、in Medical Applications of Controlled Release、上述、vol.2、pp.115~138を参照されたい)。他の放出制御システムは、Langer、1990、Science 249:1527~1533頁による概説において検討されている。
【0084】
注射用調製剤は、静脈内、皮下、皮内および筋肉内注射剤、点滴剤などを含むことがで
きる。これらの注射調製剤は、公知の方法によって調製することができる。例えば、注射用調製剤は、例えば、無菌の水性媒体または通常、注射剤に用いられる油性媒体中で上述した抗体またはその塩を溶解し、懸濁しまたは乳化することによって調製することができる。注射用の水性媒体として、例えば、生理食塩水、グルコースおよび他の補助剤を含有する等張液があり、これらは、アルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(水素化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50モル)付加物)]などの適切な可溶化剤と併用することができる。油性媒体として、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、これは、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどの可溶化剤を併用することができる。このようにして調製された注射剤は、好ましくは、適切なアンプル中に充填される。
【0085】
有利には、上述の経口または非経口用の医薬組成物は、有効成分の用量を適合するように適した単位用量の投薬形態に調製される。単位用量のこのような投薬形態には、例えば、錠剤、丸剤、カプセル、注射剤(アンプル)、坐剤が含まれる。
【0086】
本発明との関連で使用することができる抗IL-4R抗体を含む例示的な医薬組成物は、例えば、米国特許第8,945,559号に開示されている。
【0087】
投与レジメン
本発明は、対象にIL-4/IL-13経路阻害剤を週に約4回、週に2回、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、5週間に1回、6週間に1回、8週間に1回、12週間に1回、または治療応答が達成される限りはそれほど頻繁ではない投与頻度で投与するステップを含む方法を含む。IL-4/IL-13経路阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)の投与を伴う特定の実施形態において、約25mg、50mg、100mg、150mg、200mg、または300mgの量での週1回の投薬が採用される。抗IL-4R抗体の投与を伴う特定の実施形態において、約25mg、50mg、100mg、150mg、200mg、または300mgの量での2週間に1回の投薬が採用される。
【0088】
本発明の特定の実施形態によれば、複数用量のIL-4/IL-13経路阻害剤は、所定の時間経過にわたって対象に投与される。本発明のこの態様による方法は、複数用量のIL-4/IL-13経路阻害剤を対象に連続的に投与するステップを含む。本明細書で使用するとき、「連続的に投与する」とは、各用量のIL-4/IL-13経路阻害剤が異なる時間点、例えば、所定の間隔(例えば、数時間、数日、数週間または数か月)で区切られた異なる日に対象に投与されることを意味する。本発明は、単一の一次用量のIL-4/IL-13経路阻害剤、続いて、1回またはそれ以上の二次用量のIL-4/IL-13経路阻害剤、場合によりその後、1回またはそれ以上の三次用量のIL-4/IL-13経路阻害剤を患者に連続的に投与するステップを含む方法を含む。
【0089】
「一次用量」、「二次用量」、および「三次用量」という用語は、IL-4/IL-13経路阻害剤の投与の時間的順序を指す。したがって、「一次用量」は、治療レジメンの開始時に投与される用量であり(「ベースライン用量」とも呼ばれる);「二次用量」は、一次用量の後に投与される用量であり;「三次用量」は、二次用量の後に投与される用量である。一次、二次、および三次用量はすべて同じ量のIL-4/IL-13経路阻害剤を含み得るが、一般的には、投与頻度の点で互いに異なることができる。しかしながら、特定の実施形態において、一次、二次および/または三次用量に含まれるIL-4/IL-13経路阻害剤の量は、治療の過程で互いに変化する(例えば、必要に応じて上下に調整される)。特定の実施形態において、一次用量は、抗体またはその抗原結合断片の第1の量を含み、1つまたはそれ以上の二次用量は各々、抗体またはその抗原結合断片の第
2の量を含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその断片の最初の量(一次用量)は、抗体またはその抗原結合断片の第二の量(二次用量)の1.5×、2×、2.5×、3×、3.5×、4×、または5×である。特定の実施形態において、1つまたはそれ以上(例えば、1、2、3、4、または5)の用量が、治療レジメンの開始時に「負荷用量」として投与され、その後、より低頻度の基準で投与される後続の用量(例えば、「維持用量」)が投与される。例えば、IL-4/IL-13経路阻害剤は、約300mg~約600mgの負荷用量で、その後、約25mg~約400mgの1つまたはそれ以上の維持用量で、それを必要とする患者に投与される。一実施形態において、一次用量および1つまたはそれ以上の二次用量は各々、10mg~600mgのIL-4/IL-13経路阻害剤、例えば、100mg~400mgのIL-4/IL-13経路阻害剤、例えば、10mg、25mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、400mgまたは500mgのIL-4/IL-13経路阻害剤を含む。一実施形態において、一次用量は、二次用量の2×である。
【0090】
本発明の例示的な一実施形態において、各二次および/または三次用量は、直前の用量の後、1~14(例えば、1、1と1/2、2、2と1/2、3、3と1/2、4、4と1/2、5、5と1/2、6、6と1/2、7、7と1/2、8、8と1/2、9、9と1/2、10、10と1/2、11、11と1/2、12、12と1/2、13、13と1/2、14、14と1/2、またはそれ以上)週で投与される。本明細書で使用される「直前の用量」という語句は、一連の複数回投与において、介入用量を伴わない順番で、すぐ次の用量の投薬前に患者に投与されるIL-4/IL-13経路阻害剤の用量を意味する。
【0091】
本発明のこの態様による方法は、任意の数の二次および/または三次用量のIL-4/IL-13経路阻害剤を患者に投与するステップを含み得る。例えば、特定の実施形態において、単一の二次用量のみが患者に投与される。他の実施形態において、2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上)の二次用量が患者に投与される。同様に、特定の実施形態において、単一の三次用量のみが患者に投与される。他の実施形態において、2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上)の三次用量が患者に投与される。
【0092】
複数の二次用量を伴う実施形態において、各二次用量は、他の二次用量と同じ頻度で投与される。例えば、各二次用量は、直前の用量の1~6週間後に患者に投与される。同様に、複数の三次用量を伴う実施形態において、各三次用量は、他の三次用量と同じ頻度で投与される。例えば、各三次用量は、直前の用量の2~4週間後に患者に投与される。あるいは、二次および/または三次用量が患者に投与される頻度は、レジメンの過程にわたって変化し得る。
【0093】
本発明の方法は、特定の実施形態によれば、IL-4/IL-13経路阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)と組み合わせてコルチコステロイド(CS)を対象に投与するステップを含む。本明細書で使用するとき、「と組み合わせて」という表現は、CSがIL-4/IL-13経路阻害剤の前、後、または同時に投与されることを意味する。また、「と組み合わせて」という用語には、IL-4/IL-13経路阻害剤およびCSの連続投与または同時投与も含まれる。
【0094】
例えば、IL-4/IL-13経路阻害剤の「前」に投与される場合、CSは、IL-4/IL-13経路阻害剤の投与の72時間超前、約72時間、約60時間、約48時間、約36時間、約24時間、約12時間、約10時間、約8時間、約6時間、約4時間、約2時間、約1時間、約30分、約15分または約10分前に投与される。IL-4/IL-13経路阻害剤の「後」に投与される場合、CSは、IL-4/IL-13経路阻害
剤の投与の約10分、約15分、約30分、約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約8時間、約10時間、約12時間、約24時間、約36時間、約48時間、約60時間、約72時間後、または72時間超後に投与される。IL-4/IL-13経路阻害剤との「同時」投与は、CSが、IL-4/IL-13経路阻害剤の投与の5分未満(前、後、または同時に)に別個の剤形で対象に投与されるか、またはCSとIL-4/IL-13経路阻害剤の両方を含む単一の組み合わせ投薬製剤として対象に投与されることを意味する。
【0095】
用量
本発明の方法による、対象に投与されるIL-4/IL-13経路阻害剤(例えば、抗IL-4Rα抗体)の量は、一般に、治療有効量である。本明細書で使用するとき、「治療有効量」という語句は、以下:(a)好酸球性食道炎の症状の重症度または持続期間の減少;(b)食道の好酸球数の減少;(c)食道伸展性の増加;(d)嚥下障害の発症の減少;(e)アレルギー反応の予防または緩和;(f)従来のアレルギー治療の使用または必要性の減少(例えば、抗ヒスタミン薬、充血除去剤、鼻もしくは吸入ステロイド、抗IgE治療、エピネフリンなどの使用の減少または排除)のうちの1つまたはそれ以上をもたらすIL-4/IL-13経路阻害剤の量を意味する。
【0096】
抗IL-4Rα抗体の場合において、治療有効量は、抗IL-4R抗体の約0.05mgから約600mg、例えば、約0.05mg、約0.1mg、約1.0mg、約1.5mg、約2.0mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mg、約400mg、約410mg、約420mg、約430mg、約440mg、約450mg、約460mg、約470mg、約480mg、約490mg、約500mg、約510mg、約520mg、約530mg、約540mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mgまたは約600mgであり得る。特定の実施形態において、300mgの抗IL-4R抗体を投与する。
【0097】
個々の用量に含有されるIL-4/IL-13経路阻害剤の量は、患者の体重の1kgあたりの抗体ミリグラム(すなわち、mg/kg)を単位として表される。例えば、IL-4/IL-13経路阻害剤(例えば、抗IL-4Rα抗体)は、患者の体重の約0.0001から約100mg/kgの用量で患者に投与することができる。
【0098】
選択された実施形態
実施形態1では、本発明は、嚥下障害を軽減する方法を含み、(a)以下の特徴:(i)患者が、1週間に1回以上の嚥下障害の発症を示すこと;(ii)患者が、以前に高用量プロトンポンプ阻害剤(PPI)で治療されていること;および(iii)患者が、少なくとも1回、以前に食道拡張を受けていることの少なくとも1つを有する患者を選択するステップ;ならびに(b)インターロイキン-4/インターロイキン-13(IL-4/IL-13)経路阻害剤を含む治療有効量の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与するステップを含む。
【0099】
実施形態2では、本発明は、食道伸展性を増加させる方法を含み、(a)以下の特徴:(i)患者が、1週間に1回以上の嚥下障害の発症を示すこと;(ii)患者が、以前に高用量PPIで治療されていること;および(iii)患者が、以前に少なくとも1回は
食道拡張を受けていることの少なくとも1つを有する患者を選択するステップ;ならびに(b)IL-4/IL-13経路阻害剤を含む治療有効量の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与するステップを含む。
【0100】
実施形態3では、本発明は、患者が中程度から重度のEoEを有する、実施形態1または2の方法を含む。
【0101】
実施形態4では、本発明は、IL-4/IL-13経路阻害剤を含む治療有効量の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、活動性好酸球性食道炎(EoE)の少なくとも1つの症状または兆候を治療、予防または改善する方法を含む。
【0102】
実施形態5では、本発明は、患者が以下:(1)患者が、治療前または治療時(「ベースライン」)に食道に高倍率視野(hpf)あたり15個以上の好酸球を有すること;(2)高用量PPI、食道拡張、コルチコステロイド、アレルゲン離脱および/または食事の変更の少なくとも1つによる以前の治療;(3)患者が、1週間に1回以上の嚥下障害の発症を示すこと;(4)患者が、高用量PPIまたは食道拡張による以前の治療に応答しないかまたは抵抗性があること;(5)患者が2以上のシュトラウマン嚥下障害計測(SDI)スコアを有すること;(6)患者が、30以上、40以上、または50以上である好酸球性食道炎の重症度および活動性指数(EEsAI)スコアを有すること;(7)患者が、少なくとも3年間、EoEに罹患していること;(8)患者が、IL-4/IL-13経路阻害剤の投与前または投与時に、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎、およびアレルギー性結膜炎からなる群から選択される疾患もしくは障害を有するかまたは診断されていること;ならびに(9)患者が、エオタキシン-3、ペリオスチン、血清IgE(総およびアレルゲン特異的)、IL-13、IL-5、血清胸腺および活性化調節ケモカイン(TARC)、胸腺間質性リンホポエチン(TSLP)、血清好酸球性陽イオンタンパク質(ECP)、および好酸球由来神経毒(EDN)からなる群から選択されるバイオマーカーのレベルが上昇していることからなる群から選択される1つまたはそれ以上の特徴を有する、実施形態1~4のいずれか1つの方法を含む。
【0103】
実施形態6では、本発明は、実施形態1~5のいずれか1つの方法を含み、IL-4/IL-13経路阻害剤の投与は、以下:(a)シュトラウマン嚥下障害計測(SDI)スコアで測定した場合、嚥下障害の頻度および重症度のベースラインから少なくとも40%の減少;(b)SDIスコアのベースラインから3ポイントの減少;(c)食道の近位、中間、および/または遠位領域における上皮内好酸球数のピークのベースラインからの85%超の減少;(d)インピーダンス面積測定法で測定した場合、食道伸展性のベースラインから少なくとも10%の増加;(e)EoE組織学的スコアリングシステム(HSS)スコアによって測定した場合、疾患の重症度および程度のベースラインからの50%超の減少;および(f)好酸球性食道炎の重症度および活動性指数(EEsAI)スコアで測定した場合、嚥下障害のベースラインから30%超の減少
からなる群から選択されるEoE関連パラメータの改善をもたらす。
【0104】
実施形態7では、本発明は、IL-4/IL-13経路阻害剤がIL-4受容体(IL-4R)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である、実施形態1~6のいずれか1つの方法を含む。
【0105】
実施形態8では、本発明は、IL-4/IL-13経路阻害剤が約50~600mgの用量で投与される、実施形態1~7のいずれか1つの方法を含む。
【0106】
実施形態9では、本発明は、IL-4/IL-13経路阻害剤が約300mgの用量で投与される、実施形態1~8のいずれか1つの方法を含む。
【0107】
実施形態10では、本発明は、IL-4/IL-13経路阻害剤が一次用量で投与され、続いて、1つまたはそれ以上の二次用量が投与され、各二次用量は、直前の用量の1~4週間後に投与される、実施形態1~7のいずれか1つの方法を含む。
【0108】
実施形態11では、本発明は、一次用量が50~600mgのIL-4/IL-13経路阻害剤を含む、実施形態10の方法を含む。
【0109】
実施形態12では、本発明は、各二次用量が25~400mgのIL-4/IL-13経路阻害剤を含む、実施形態10または11の方法を含む。
【0110】
実施形態13では、本発明は、一次用量が600mgのIL-4/IL-13経路阻害剤を含み、各二次用量が300mgのIL-4/IL-13経路阻害剤を含む、実施形態10~12のいずれか1つの方法を含む。
【0111】
実施形態14では、本発明は、各二次用量が、直前の用量の1週間後に投与される、実施形態13の方法を含む。
【0112】
実施形態15では、本発明は、各二次用量が、直前の用量の2週間後に投与される、実施形態13の方法を含む。
【0113】
実施形態16では、本発明は、EoEの症状または兆候が、
食道の好酸球浸潤、食道壁の肥厚、拒食、嘔吐、腹痛、胸焼け、吐き戻し、嚥下障害、食片圧入からなる群から選択される、実施形態4~15のいずれか1つの方法を含む。
【0114】
実施形態17では、本発明は、患者が、乳製品、卵、小麦、大豆、トウモロコシ、魚、貝、ピーナッツ、木の実、牛肉、鶏肉、オート麦、大麦、豚肉、インゲン、リンゴ、およびパイナップルからなる群から選択される食品に含まれる食物アレルゲンに対してアレルギー反応を示す、実施形態1~16のいずれか1つの方法を含む。
【0115】
実施形態18では、本発明は、患者が、塵、花粉、カビ、植物、ネコ、イヌまたは昆虫のうちの1つに由来する非食物アレルゲンに対してアレルギー反応を示す、実施形態1~17のいずれか1つの方法を含む。
【0116】
実施形態19では、本発明は、IL-4/IL-13経路阻害剤の投与が、対象におけるEoE関連バイオマーカーレベルの低下をもたらす、実施形態1~18のいずれか1つの方法を含む。
【0117】
実施形態20では、本発明は、EoE関連バイオマーカーが、エオタキシン-3、ペリオスチン、血清IgE(総およびアレルゲン特異的)、IL-13、IL-5、血清TARC、TSLP、血清ECP、およびEDNからなる群から選択される、実施形態19の方法を含む。
【0118】
実施形態21では、本発明は、IL-4/IL-13経路阻害剤が、第2の治療薬または療法と組み合わせて投与され、第2の治療薬または療法は、IL-1ベータ阻害剤、IL-5阻害剤、IL-9阻害剤、IL-13阻害剤、IL-17阻害剤、IL-25阻害剤、TNFアルファ阻害剤、エオタキシン-3阻害剤、IgE阻害剤、プロスタグランジンD2阻害剤、免疫抑制薬、局所コルチコステロイド、経口コルチコステロイド、全身コルチコステロイド、吸入コルチコステロイド、グルココルチコイド、プロトンポンプ阻害剤、NSAID、食道拡張、アレルゲン除去、および食事管理からなる群から選択される
、実施形態1~20のいずれか1つの方法を含む。
【0119】
実施形態22では、本発明は、IL-4/IL-13経路阻害剤が、抗IL-4抗体、抗IL-13抗体、抗IL-4/IL-13二重特異性抗体、IL-4受容体(IL-4R)阻害剤、および抗IL-4R抗体からなる群から選択される、実施形態1~21のいずれか1つの方法を含む。
【0120】
実施形態23では、本発明は、IL-4/IL-13経路阻害剤がIL-4R阻害剤である、実施形態22の方法を含む。
【0121】
実施形態24では、本発明は、IL-4/IL-13経路阻害剤が抗IL-4抗体である、実施形態22の方法を含む。
【0122】
実施形態25では、本発明は、IL-4/IL-13経路阻害剤が抗IL-13抗体である、実施形態22の方法を含む。
【0123】
実施形態26では、本発明は、IL-4/IL-13経路阻害剤がIL-4およびIL-13に特異的に結合する二重特異性抗体である、実施形態22の方法を含む。
【0124】
実施形態27では、本発明は、IL-4/IL-13経路阻害剤が、IL-4Rαに結合し、IL-4および/またはIL-13と1型または2型IL-4受容体との相互作用を妨げる抗体またはその抗原結合断片である、実施形態1~23のいずれか1つの方法を含む。
【0125】
実施形態28では、本発明は、抗体またはその抗原結合断片が、IL-4と1型および2型IL-4受容体の両方との相互作用を妨げる、実施形態27の方法を含む。
【0126】
実施形態29では、本発明は、抗体またはその抗原結合断片が、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)、および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む、実施形態28の方法を含む。
【0127】
実施形態30では、本発明は、抗体またはその抗原結合断片が、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)および3つのLCDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含み、HCDR1は配列番号3のアミノ酸配列を含み;HCDR2は配列番号4のアミノ酸配列を含み;HCDR3は配列番号5のアミノ酸配列を含み;LCDR1は配列番号6のアミノ酸配列を含み;LCDR2は配列番号7のアミノ酸配列を含み;およびLCDR3は配列番号8のアミノ酸配列を含む、実施形態28の方法を含む。
【0128】
実施形態31では、本発明は、HCVRが配列番号1のアミノ酸配列を含み、LCVRが配列番号2のアミノ酸配列を含む、実施形態30の方法を含む。
【0129】
実施形態32では、本発明は、抗体またはその抗原結合断片が、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、実施形態29~31のいずれか1つの方法を含む。
【0130】
実施形態33では、本発明は、IL-4/IL-13経路阻害剤がデュピルマブまたはその生物学的同等物である、実施形態1~31のいずれか1つの方法を含む。
【0131】
実施形態34では、本発明は、IL-4R阻害剤がAMG317またはMEDI9314である、実施形態23の方法を含む。
【実施例0132】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物をどのように作製し、使用するかについて完全な開示および記載を当業者に提供するように記載され、発明者らがそれらの発明としてみなす範囲を限定することを意図しない。使用されている数量(例えば、量、温度など)の精度を確実にするために注力がなされたが、いくらかの実験誤差および偏差は考慮されなければならない。特に断らない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧または大気圧付近である。
【実施例0133】
活動性の中程度から重度の好酸球性食道炎(EoE)の成人患者におけるデュピルマブを皮下投与する臨床試験
この研究は、活動性EoEを患っている成人患者におけるデュピルマブの有効性、安全性、忍容および免疫原性を調査するために、32週間の二重盲検、無作為化、プラセボ対照とした試験である。デュピルマブは、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖と配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖;配列番号1/2を含むHCVR/LCVRアミノ酸配列対;および配列番号3~8を含む重鎖と軽鎖CDR配列を含む完全ヒト抗IL-4R抗体である。
【0134】
研究の目的
この研究の主な目的は、活動性の、中程度から重度のEoEを有する成人患者の症状を緩和するために、プラセボと比較した、デュピルマブの皮下(SC)反復投与の臨床効果を評価することであった。
【0135】
この研究の二次的な目的は、(1)活動性の、中程度から重度のEoEを有する成人患者におけるデュピルマブのSC用量の安全性、忍容性、および免疫原性を評価すること;(2)食道の好酸球浸潤におけるデュピルマブの効果を評価すること;および(3)EoEを有する成人患者におけるデュピルマブの薬物動態(PK)を評価することであった。
【0136】
研究の探索的目的は、EoEに関連付けられる他の食道生検病理学的特徴におけるデュピルマブの効果を評価することであった。
【0137】
研究設計
これは、EoEを有する成人患者におけるデュピルマブの有効性、安全性、忍容性、PK、および免疫原性を調査する、多施設の二重盲検無作為化プラセボ対照試験であった。
【0138】
インフォームドコンセントを提供した後、スクリーニング来院時に患者の適格性を評価した(-35日目から-1日目までに起こる)。適格基準を満たした患者は、1日目のベースライン評価を受けた。患者は、12週間の二重盲検治療段階中にデュピルマブまたはプラセボの投与を受けるために1:1の比率で無作為化された。12週間の二重盲検治療段階の後、患者はさらに16週間、治験薬の投与を中止された。
【0139】
患者は、研究治療を継続しながら、必要に応じて併用薬(禁止薬物[以下を参照]を除く)を受けた。有効性、安全性、および検査室での評価、デュピルマブ濃度およびデュピルマブに対する潜在的な抗薬物抗体(ADA)応答の試料、ならびに研究試料は、研究全体の特定の時間点で実施または回収された。
【0140】
研究集団
標的集団には、活動性EoEを有する成人(18~65歳)の男性または女性患者が含まれた。
【0141】
包含基準:患者は、研究への包含に適格であるためには、以下の基準を満たさなければならなかった:
(1)男性または女性、18~65歳;
(2)スクリーニング前またはスクリーニング時の内視鏡検査によるEoEの文書化された診断。注釈:高用量(または1日2回投薬)プロトンポンプ阻害剤(PPI)による少なくとも8週間の治療後、2週間以内に実施された内視鏡検査による食道生検標本からの上皮内好酸球浸潤の実証(ピーク細胞数≧15好酸球/高倍率視野[eos/hpf][400×])を含める必要がある;
(3)(患者報告による)スクリーニング前の4週間に週に平均少なくとも2回の嚥下障害の発症(抗炎症療法から固形物を摂取した場合)、およびスクリーニングとベースラインの間の週において週に平均少なくとも2回の記録された嚥下障害の発症の履歴;嚥下障害は、患者報告によると、固形食品を嚥下する、または固形食品スティックを摂取する障害として定義される;
(4)スクリーニング前の少なくとも6週間および研究過程中、安定した食事を維持しなければならない;安定した食事は、単一または複数の除去食の開始がないか、または以前に除去された食品グループの再導入として定義される;
(5)スクリーニング時およびベースラインでのSDI PROスコアが5以上である;(6)以下のいずれか1つ以上の既往歴または存在:アレルギー性疾患(例えば、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、AD、または食物アレルギー)、末梢好酸球数≧0.25GI/L、血清総免疫グロブリンE(IgE)≧100kU/L;
(7)すべての来院および研究関連手順を喜んで順守できる;研究関連の問診票を理解して記入することができる;署名されたインフォームドコンセントを提供する;ならびに
(8)スクリーニング時に行われた写真付き内視鏡検査と、3つの生検食道領域(近位、中間、または遠位)のうち少なくとも2つにおける上皮内好酸球浸潤(ピーク細胞数≧15eos/hpf)の実証を伴う。
【0142】
除外基準:以下の基準のいずれかを満たす患者は、この研究に参加する資格がなかった:(1)デュピルマブ(抗IL-4R)臨床試験への以前の参加;(2)食道好酸球増加症または以下の疾患の他の原因:好酸球増加症候群、チャーグ-ストラウス血管炎、および好酸球性胃腸炎;(3)アカラシア、活動性ヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)感染、クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病、およびスクリーニング前の以前の食道手術の履歴;(4)標準の診断用成人(9~10mm)上部内視鏡、またはスクリーニング時に拡張を必要とする任意の重大な食道狭窄では通過することができない食道狭窄;(5)出血障害または食道静脈瘤の既往;(6)スクリーニング前の2週間以内に慢性アスピリン、非ステロイド剤、または抗凝固剤の使用。患者は、この研究への参加資格を得るためだけにこれらの薬剤を停止すべきではない;(7)2か月以内または5半減期(公知の場合)以内のいずれか長い方、スクリーニング前の治験薬による治療;(8)スクリーニング前の3カ月以内の全身コルチコステロイド、または6週間以内に飲み込む局所コルチコステロイドの使用;(9)スクリーニング前の3カ月以内および研究中の吸入または鼻コルチコステロイドの使用。ただし、研究中に変更することができないスクリーニング生検前の少なくとも3か月間の安定した投薬を除く;(10)スクリーニング前の6か月以内の経口免疫療法(OIT)による治療;(11)アレルゲン免疫療法(舌下免疫療法[SLIT]および/または皮下免疫療法[SCIT]、ただし、スクリーニング前の少なくとも1年間、安定な投薬がされていない場合;(12)スクリーニング来院前の3か月以内の以下の治療、または治験責任医師の意見で、3ヶ月の研究治療中にこのような治療を必要とする可能性が高い状態:全身免疫抑制/免疫調節薬(例えば、オマリズマブ、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、インターフェ
ロン-ガンマ[IFN-γ]、ヤヌスキナーゼ阻害剤、アザチオプリン、メトトレキサート、ロイコトリエン阻害剤[スクリーニング前の少なくとも3ヶ月間の安定な投薬を除く]など);(13)活動性寄生虫感染と診断された;臨床的および(必要な場合)検査室以外の寄生虫感染の疑い評価では、無作為化前の活動性感染は除外されている;(14)スクリーニング前の1か月以内に全身抗生物質、抗ウイルス薬、または抗真菌薬による治療を必要とする慢性または急性の感染;(15)スクリーニング前の2週間以内の経口抗生物質/抗感染薬の使用;(16)免疫抑制が知られまたは疑いがある。治験責任医師が判断したように、感染が解決しているにもかかわらず侵襲的な日和見感染の履歴(例えば、結核、非結核性マイコバクテリア感染、ヒストプラスマ症、リステリア症、コクシジオイデス症、肺嚢胞症、アスペルギルス症)、または他には、異常な頻度の反復感染、または免疫不全状態を示唆する長期の感染を含む;(17)ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の既往歴;(18)スクリーニング時のB型肝炎表面抗原(HBsAg)またはC型肝炎抗体の陽性または不確定;(19)スクリーニング時のトランスアミナーゼの上昇(アラニンアミノトランスフェラーゼ[ALT]および/またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ[AST])が正常の上限の3倍超(>3×正常の上限[ULN]);(20)スクリーニング前の5年以内の悪性腫瘍の病歴。ただし、子宮頸部の完全に治療されたインサイチュの癌腫、および完全に治療および解消した、皮膚の非転移性扁平上皮または基底細胞癌を除く;(21)スクリーニング前の6か月以内に患者が報告したアルコールまたは薬物乱用の病歴;(22)治験責任医師の意見では、新規および/または十分に理解されていない疾患を示唆し、この臨床試験における研究患者の参加の結果として、研究患者に不合理な危険性をもたらす可能性があり、患者の参加の信頼性を低下させる可能性があり、または研究評価の妨げになる可能性がある、スクリーニング時の関連検査室異常を含む他の医学的または心理的状態。この基準の下で除外された患者の具体的な正当性は、研究文書(チャートノート、症例報告書[CRF]など)に記載される;(23)治験責任医師の判断において、研究への患者の参加に悪影響を与える重篤な付随疾患;(24)研究治療中のいずれもの禁止薬物および手順(下記参照)の計画的または予想される使用;(25)スクリーニング前の3か月以内の生(弱毒化)ワクチンによる治療;(26)患者またはその家族は調査チームのメンバーである;(27)妊娠中もしくは授乳中の女性、または研究中に妊娠もしくは授乳を予定している女性;(28)生殖能力があり、性的に活発な場合、適切な避妊を使用したくない女性。
【0143】
研究治療
治験薬:デュピルマブSC、1日目に600mgの負荷用量、その後、1週から11週まで300mgの毎週の用量。
【0144】
プラセボ:プラセボ(活性物質を含まないデュピルマブと同じ製剤、抗IL-4Rモノクローナル抗体)SC、1日目のデュピルマブ負荷用量に一致する体積、その後、1週から11週までのデュピルマブの毎週用量の体積に一致する毎週の用量。
【0145】
患者は、12週間の二重盲検治療段階の間にSCデュピルマブ300mgまたは一致するプラセボqwを受けた。患者は、1日目に2回の注射(300mgの一次用量、続いて300mgの負荷用量)を受け、その後、毎週注射を受けた。
【0146】
許可された(併用)薬
研究中、併用薬による治療が許可された。これには、避妊薬、安定用量のプロトンポンプ阻害剤(PPI)(スクリーニング時にPPIを使用していた患者は、治療終了[EOT]来院前に投薬レジメンを中止または変更しなかった);安定用量の全身ロイコトリエン阻害剤、局所、経鼻、および/または吸入コルチコステロイド(スクリーニング時の少なくとも3か月前);任意の期間の経口抗ヒスタミン剤;および最大2週間までの経口抗生物質による治療が含まれた。
【0147】
制限された薬および手順
研究期間中に制限された薬には、以下が含まれる:(1)EoEの治療に使用される薬(これらはレスキュー薬とみなされた):嚥下局所コルチコステロイド、全身コルチコステロイド、全身ロイコトリエン阻害剤の開始または用量変更、局所、経鼻、および/または吸入コルチコステロイド、および免疫抑制/免疫調節物質(限定されないが、オマリズマブ、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、メトトレキサート、IFN-γ、またはその他の生物製剤を含む)によるEoEの全身治療;(2)アレルゲン免疫療法(用量が1年以上安定している場合は、SCITおよびSLITが許可されたが、OITは禁止された);(3)スクリーニング前の8週間にPPIを使用していなかった患者は、EOT来院前にPPI療法を開始することを禁止された;(4)生(弱毒化)ワクチン(水痘(Chickenpox)(水痘(varicella))、FluMist-インフルエンザ、鼻内インフルエンザ、麻疹(風疹)、麻疹-おたふく風邪-風疹の組み合わせ、麻疹-おたふく風邪-風疹-水痘の組み合わせ、おたふく風邪、口内ポリオ(セービン(Sabin))、経口腸チフス、風疹、天然痘(ワクシニア)、黄熱病、カルメット・ゲラン桿菌(Bacille Calmette-Guerin)、水痘帯状ヘルペス(帯状疱疹)、ロタウイルス)による治療;ならびに(5)治験薬(デュピルマブ以外)による治療。
【0148】
以下の付随する手順は、研究治療中(12週目まで)禁止された:(1)主要な選択的外科治療;(2)食道拡張(レスキュー手順を考慮した);ならびに(3)食事の変更(患者は、スクリーニング前の少なくとも6週間および研究過程中、安定した食事を維持することであった;安定した食事は、1回もしくは複数回の除去食事の開始はなく、または以前に除去された食品群の再導入はなかった)。
【0149】
研究評価項目
有効性の主要評価項目は、ベースラインから10週までのシュトラウマン嚥下障害計測(SDI)患者による報告された結果(PRO)スコアの変化であった。
【0150】
二次評価項目は、以下の通りであった:ベースラインから10週までの毎週の好酸球性食道炎活動指数(EEsAI)PROスコアの変化パーセント;ベースラインから10週までの毎週のEEsAI PROスコアの変化;ベースラインから12週までの毎週のEEsAI PROスコアの変化パーセント;ベースラインから12週までの毎週のEEsAI PROスコアの変化;ベースラインから10週までのSDI PROスコアの変化パーセント;ベースラインから12週までのSDI PROスコアの変化パーセント;ベースラインから12週までのSDI PROスコアの変化;ベースラインから12週までの成人好酸球性食道炎の生活の質(EoE-QOL-A)(問診票)PROスコアの変化;10週の時点でのSDI PRO応答を有する患者の割合;応答は、ベースラインと比較したSDIの少なくとも3ポイントの減少として定義される;ベースラインから10週までのEEsAIスコアにおいて40%以上の改善が達成した患者の割合;ベースラインから12週までの全体的なピーク食道上皮内eos/hpf(400X)の変化パーセント;ベースラインから12週までの好酸球性食道炎-内視鏡参照スコア(EoE-EREF)(内視鏡視覚解剖学的スコア)の変化;12週までのレスキュー薬または手順(例えば、食道拡張)を使用した患者の割合;および治療により発生した有害事象(TEAE)の発生率。
【0151】
探索的有効性評価項目は、以下の通りであった:ベースラインから12週までの平均食道上皮内好酸球数(eos/hpf)の変化[各食道部位のピーク数を使用して計算された];12週目に食道上皮内好酸球数<1のeos/hpfを達成する患者の割合;ベースラインから12週までのコリンズ組織スコアの変化;およびベースラインから12週ま
での機能的内腔画像化により測定した場合の食道伸展性プラトーの変化。
【0152】
手順および評価
スクリーニング/ベースライン手順:以下の手順は、研究適格性の判定またはベースライン集団の特徴付けのみを目的として、スクリーニング時および/またはベースライン来院時にのみ実施した:血清FSH(閉経状態の確認用)、血清総IgE、HBsAg、およびC型肝炎抗体。
【0153】
有効性手順:有効性は、シュトラウマン嚥下障害計測(SDI)、好酸球性食道炎活動指数(EEsAI)、および好酸球性食道炎の生活の質(EoE)-QOL-A)問診票、ならびに食道生検および写真(内視鏡検査手順)を含む、患者により報告された結果(PRO)を用いて、特定の来院時に研究中に評価された。好酸球性食道炎浮腫 リング 滲出液 溝および狭窄(EoE-EREFS)スコアに基づく炎症性およびリモデリング食道の特徴の測定は、内視鏡検査手順の一部として含まれた。食道伸展性を測定するための内視鏡機能的内腔イメージングプローブ(EndoFLIP)手順は、内視鏡検査手順中に実行された。EoE組織学的スコアリングシステム(HSS)を使用して、EoEの8つの組織学的特徴を測定した。
【0154】
シュトラウマン嚥下障害計測-患者により報告された結果
SDIは、嚥下障害の頻度および強度を決定するための臨床研究で使用されている検証されていないPROである(Straumann 2010年)。SDIには1週間のリコール期間がある。嚥下障害イベントの頻度は、5点スケールで等級付けされる:0=なし、1=週に1回、2=週に数回、3=1日に1回、4=1日に数回。嚥下障害イベントの強度は、6点スケールで等級付けされる:0=制限なしの嚥下、1=僅かな抵抗感、2=通過の遅れを伴う僅かなレッチング、3=介入(例えば、飲料、呼吸)を必要とする短期間の閉塞、4=嘔吐によってのみ除去可能な長期の持続閉塞、および5=内視鏡的介入を必要とする長期にわたる完全閉塞。総SDIスコアは、0~9の範囲である。シュトラウマン研究では、臨床応答(改善)は、ベースラインから少なくとも3ポイントのSDIスコアの減少として定義された。
【0155】
この評価は、スクリーニングの開始から研究の終了または早期終了までの問診票において、患者によって毎週電子的に完了された。SDIの定量化に利用される項目は、EEsAI/SDIに含まれた。
【0156】
好酸球性食道炎の活動指標-患者により報告される結果
EEsAIは、国際的なEEsAI研究グループの一部である大学病院インセルスピタル(Berne、Switzerland)(Schoepfer 2014年)で開発中の検証されていないマルチモジュラー指数である。この研究で使用されるEEsAI PROモジュール(問診票)には、嚥下障害の強度および頻度、嚥下障害症状における特定の食品グループの影響、ならびに飲食に依存しない他の症状(すなわち、胸焼け、酸の吐き戻し、および胸痛)に関連する項目が含まれる。総EEsAI PROスコアは、0~100の範囲であり(図1)、スコアが高いほど症状が悪化する。スコアは5つの部分からなる:嚥下困難の頻度、嚥下困難の持続時間、嚥下時の疼痛、視覚嚥下障害の質問、回避、修正、および遅食(AMS)。EEsAI PROは、24時間および1週間のリコール期間を利用する。
【0157】
この評価は、スクリーニングの開始から研究の終了または早期終了までの問診票において、毎日および毎週、電子的に患者によって完了された。
【0158】
成人好酸球性食道炎の生活の質の問診票-患者により報告される結果
EoE-QOL-A問診票は、EoE患者の健康に関連する生活の質の検証された疾患特異的尺度である(Taft 2011年)。この研究で使用した機器であるEoE-QOL-A v.3.0には、社会的機能、感情的機能、日常生活の経験の病気の影響などの確立されたドメインに関連する30の項目が含まれる。EoE-QOL-Aには、1週間のリコール期間がある。項目は、「まったくない」、「僅か」、「中程度」、「かなり」、および「非常に」の5点スケールで評価される。
【0159】
この評価は、ベースライン時およびその後、研究の終了または早期終了まで毎月、問診票で患者によって記録された。
【0160】
食道生検および写真による内視鏡検査
食道生検は、スクリーニング時および12週目の来院時に内視鏡検査により得られた。スクリーニング期間中にスクリーニング内視鏡検査を実施し、-1日前に適格性の評価に結果を利用できるようにした。合計9つの粘膜ピンチ生検は、3つの食道領域:3つの近位、3つの中間、および3つの遠位から各時点で回収された。各領域からの2つの試料を組織学に使用した(研究の包含基準、および二次評価項目に必要である)。この研究に参加するには、患者は、サンプリングされた3つの食道領域のうち少なくとも2つで15eos/hpf(400X)以上の上皮内好酸球数のピークを示さなければならなかった。ベースラインから12週までのピーク食道eos/hpf(400X)の変化は、二次評価項目であった;これは、各時間点でサンプリングされた各食道領域の最も炎症を起こしている領域の好酸球をカウントし、12週で得られたカウントと比較して、ベースラインで得られた各部位のピークカウントの変化を計算することにより決定された。探索的目的として、3つすべてのピークカウントの平均、すなわち、各時間点(スクリーニングおよび12週目)での各患者の3つの食道領域のそれぞれでのピークカウントの平均の変化が計算された。組織学的評価後に残った組織ブロックは、探索的研究のために保管された。
【0161】
EoE-EREFS(浮腫、リング、滲出液、溝、狭窄)を使用して、内視鏡的に同定されたEoE食道粘膜の炎症およびリモデリングの特徴を測定した。この機器には、食道機能の存在および重症度に関連する合計17の項目が含まれる。特定の食道の特徴には、以下が含まれる:リング(食道周囲の同心円状リング-欠如、軽度、中程度、重度、該当なし);狭窄(食道の狭窄-はい、いいえ、該当なし);狭窄の直径(該当する場合);滲出液(白い斑点を参照-欠如、軽度、重度)、溝(食道の垂直線-欠如、存在);浮腫(粘膜の血管マーキングの喪失-不存在、存在);クレープ紙食道(不存在、存在);内視鏡で同定されたすべてのEoE所見(すなわち、固定されたリング、狭窄、白っぽい滲出液、溝、浮腫、およびクレープ紙粘膜)を組み込んだ全体的な外観。さらに、胃食道逆流症に関連付けられる粘膜の変化はまた、侵食に関するロサンジェルス分類システムを使用して記録された(侵食なしまたはLA分類A、B、C、D)。EoE食道特性は、EoE-EREFSに基づいて分析され、EoE-EREFSは、全体的なスコアと各々個人の特性のスコアの両方を使用して、疾患の炎症およびリモデリング特徴の検証されたスコアリングシステムである(Hirano 2014年)。この研究の修正されたEREFSスコアは、0~8の総スコア範囲に基づいた。スコアが高いほど、障害が大きいことを示す。各スコアは、浮腫:0~1;リング:0~3;滲出液:0~2;溝:0~1;および狭窄:0~1を含み、合計8の可能なスコアを与えた。
【0162】
内視鏡機能性内腔画像化プローブ(EndoFLIP,Crospon、Ireland)を利用した食道伸展性の評価はまた、食道内腔の直径および圧力(例えば、食道硬直)を測定するために行われ、測定値は、スクリーニング時および12週目で行われた内視鏡検査の一部として採用された。EndoFLIPデバイスは、食道の体積膨張中に同時に管腔内圧力を記録しながら、食道に沿った複数の部位で断面積を測定するカテーテルベースの手順である。食道の断面積と圧力の関係の分析により、食道のコンプライアンス、
ならびに伸展性プラトー(DP)の判定が可能になる。DPは、健康な対照と比較して、EoEを有する患者において有意に減少することが示されている(Kwiatek 2011年)。さらに、食道伸展性は、食片圧入と食道拡張の必要性の両方の結果と関連付けられている(Nicodeme 2013年)。
【0163】
EoE-HSSは、別個の重症度(等級)および範囲(ステージ)疾患スコアを生じさせた。スコアを使用して、食道の3つの異なる領域(近位、中間および遠位)からEoEの8つの組織学的特徴(パラメータ)を測定した(Collinsら、2017年)。8つのパラメータには、好酸球密度、基底部過形成、好酸球膿瘍、好酸球表面の層化、細胞間空間の拡張、表面上皮の変化、角化異常細胞、および固有層線維症が含まれる。等級とステージの両方で、各パラメータについて0~3のスケールを使用した(0は最小の炎症、正常)。この研究の各領域の総スコア範囲は0~21であった(固有層パラメータを除く)。ピンチ生検の50%が固有層の評価に十分な深さではないため、固有層の評価は除外された。患者あたりの総スコアは、(0-21スコア×3領域=時間点ごとの63の合計可能なスコア)のように計算された。各時間点で患者ごとに2つのスコアが生じた。等級(重症度)およびステージ(程度)について各々1つである。
【0164】
内視鏡処置および生検回収の一部として、その部位で写真を撮影した。
【0165】
安全手順:AEは、治験薬を投与された患者における不都合な医学的発生であり、治験薬との因果関係がある場合とない場合がある。したがって、AEは、治験薬に関連すると見なされるかどうかにかかわらず、治験薬の使用に一時的に関連する、任意の好ましくなく、意図しない兆候(異常な検査所見を含む)、症状、または疾患である。また、AEには、治験薬の使用に一時的に関連する既存の状態の任意の悪化(すなわち、頻度および/または強度の臨床的に有意な変化)も含まれる。
【0166】
重篤な有害事象(SAE)は、任意の用量で死をもたらし、生命を脅かし、患者の入院を必要とし、永続的または重大な障害/無能力をもたらし、先天性異常/出生障害であり、および/または重大な医学的出来事である(例えば、このような出来事は、患者を危うくするか、または上記で列挙された他の重大な結果の1つを防ぐために介入を必要とする場合がある)不利な医学的発生である。
【0167】
安全性および認容性は、身体検査、バイタルサイン、心電図(ECG)、臨床検査室試験、および臨床評価によって評価された。患者は、インフォームドコンセントの時間から最後の試験来院までに経験したすべてのAEを監視するように求められた。
【0168】
薬物動態および抗体手順:デュピルマブレベルのアッセイのために血清試料を回収し、デュピルマブ濃度データを使用してPKパラメータを計算した。ADAのアッセイおよび探索的分析のために、血清試料が回収された。
【0169】
結果
ベースライン特性:12週間の二重盲検治療期間中に、皮下(SC)600mgデュピルマブまたはSCプラセボ負荷用量を受け、その後、毎週SC300mgデュピルマブまたはSCプラセボを受けるために、患者を1:1比で無作為化した。無作為化は、シュトラウマン嚥下障害計測(SDI)PROスコアのベースラインによって層別化された(≧5および≦7対>7)。ベースラインの人口統計学的および疾病の特徴は、平均総IgE(デュピルマブ217.8kU/L、プラセボ468.2kU/L)を除いて、一般的に2つのグループ間でバランスが取れていた(表1~2)。
【0170】
【表1】
【0171】
【表2】
【0172】
両方のグループは、高レベルのアトピー性疾患を示した(表3)。
【0173】
【表3】
【0174】
有効性結果:表4は、一次および二次評価項目の結果を要約する。デュピルマブは、プラセボと比較して、嚥下障害に反映されるEoEの主観的測定値、ならびにEoEの疾患の客観的な組織学的および内視鏡的測定値を有意に改善した。12週間の二重盲検治療期間中にレスキュー薬/手順を受けた患者はいなかった。
【0175】
【表4】
【表5】
【0176】
デュピルマブは、10週目で、プラセボと比較してシュトラウマン嚥下障害計測(SDI)スコアを改善した(-3対-1.3、P=0.0304;45.05%対18.59%、P=0.0312)(表4、図2)。デュピルマブで治療された患者の39%は、10週目で、プラセボ群の12.5%と比較してSDIにおいて3以上の減少を達成した。10週目と12週目の両方で、デュピルマブは、SDIスコアの嚥下障害の頻度と重症度の両方の要素を改善した(図3)。
【0177】
デュピルマブは、10週を通して、プラセボに対してEEsAIスコアを数値的に低下させた(-34.6%対-11.3%、P=0.085)(表4、図4)。
【0178】
デュピルマブは、12週目までに、プラセボと比較して、ピーク好酸球数(eos/hpf)をベースラインから有意に減少させた[-94.1(-91.8%)対-7.4(+15.1%)、P<0.0001](表4および6)。好酸球組織浸潤の減少は、デュピルマブ群のすべての患者において観察された(表5)。デュピルマブ効果は、食道の近位部、中間部、および遠位部で同様であった。
【0179】
【表6】
【0180】
デュピルマブは、12週目にプラセボと比較して、EREFSを有意に減少させた(LS平均変化p=0.0006、LS平均変化パーセントp=0.0004)(表4)。デュピルマブは、総EREFSスコア、ならびに滲出液および溝のサブコンポーネントを大幅に低下させ、浮腫、リング、および狭窄のサブコンポーネントで傾向が観察された(図
5)。
【0181】
デュピルマブは、プラセボと比較して、12週までにEoE-HSSの総等級とステージスコアの両方をベースラインから有意に低下させた(P<0.001対プラセボ)(表6;図6および7)。デュピルマブは、近位、中間、および遠位領域において、基底部過形成(BZH)、好酸球炎症(EI)、好酸球表面層化(SL)および好酸球膿瘍(EA)の等級(重症度)とステージ(範囲)スコアの両方を大幅に減少させた(図8および9)。また、デュピルマブは、すべての領域および遠位のアポトーシス上皮細胞における、拡張した細胞内空間と表面変化の等級およびステージスコアを減少させた(図10および11)。
【0182】
デュピルマブは、プラセボと比較して、12週目で食道伸展性を有意に改善した(表6)。伸展性プラトーの増加(改善)は、プラセボよりもデュピルマブで治療された患者において多く観察された(図12)。
【0183】
表6は、嚥下障害の主観的な患者による報告結果、および臨床医が評価した客観的測定におけるデュピルマブの効果を要約する。
【0184】
【表7】
【表8】
【0185】
安全性の結果:デュピルマブは、EoE患者において十分に耐容された。最も一般的な治療により発生した有害事象(TEAE)は、注射部位の紅斑(デュピルマブ34.8%、プラセボ8.3%)および鼻咽頭炎(デュピルマブ17.4%、プラセボ4.2%)であった。
【0186】
結論
プラセボと比較して、デュピルマブは、主要評価項目の統計的に有意な減少、10週目でのシュトラウマン嚥下障害計測(SDI)のベースラインからの変化を実証した。デュピルマブグループとプラセボグループの間の10週目のベースラインからの変化におけるLS平均差は-1.7(p=0.0304)であった。EEsAI(10週目)およびEOE-QOL(12週目)を含む他の主観的な嚥下障害測定値の改善もまた認められた。最後に、疾患活動性の組織学的および視覚的内視鏡の客観的評価の両方で、顕著な統計的改善があった。これには、好酸球のピーク時のベースラインからの変化パーセント、12週目の好酸球性食道炎浮腫、リング、滲出液、溝および狭窄(EoE-EREFS)スコアのベースラインからの絶対変化が含まれる。デュピルマブ治療は、一般的に、安全であり、良好に忍容性であった。最も一般的なTEAEは、軽度のISR、ならびにウイルス性上気道感染症および鼻咽頭炎であった。
【0187】
本発明は、本明細書に記載されている特定の実施形態によって範囲が限定されるものではない。実際に、本明細書に記載されている変更に加えて、本発明の様々な変更は、前述の説明および添付の図面から当業者に明らかになる。このような変更は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
2024016237000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-11-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食道伸展性を増加させる方法であって、
(a)(i)患者が、治療前または治療時(「ベースライン」)に食道に高倍率視野(hpf)あたり15個以上の好酸球を有すること;
(ii)患者が、週に少なくとも2回の嚥下障害の発症を示すこと;および/または
(iii)患者が、2以上のシュトラウマン嚥下障害計測(Straumann Dysphagia Instrument)(SDI)スコアを有すること
からなる群から選択される少なくとも1つの特徴を有する患者を選択するステップ;ならびに
(b)治療有効量のインターロイキン-4/インターロイキン-13(IL-4/IL-13)経路阻害剤を含む医薬組成物を、それを必要とする患者に投与し、それにより、機能的な内腔画像化プローブによって測定した場合、食道伸展性を増加させるステップ
を含む前記方法。
【外国語明細書】