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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162371
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/00 20060101AFI20241114BHJP
   G01R 15/08 20060101ALI20241114BHJP
   G01R 27/02 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G01R19/00 L
G01R15/08
G01R27/02 R
G01R19/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077800
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 悟朗
【テーマコード(参考)】
2G025
2G028
2G035
【Fターム(参考)】
2G025BB00
2G028AA01
2G028BB01
2G028CG02
2G028DH03
2G028FK01
2G028GL07
2G028GL15
2G035AA08
2G035AA09
2G035AB01
2G035AB08
2G035AB09
2G035AC01
2G035AC02
2G035AD04
2G035AD12
2G035AD20
2G035AD22
2G035AD45
2G035AD54
2G035AD56
2G035AD65
(57)【要約】
【課題】測定可能な電流の上限値との関係に関わらず、ノイズ成分の除去を可能とすることを目的とする。
【解決手段】測定装置10は、測定対象物12に電圧V1を印加する電圧印加部20と測定対象物12に電圧V1を印加した状態で測定対象物12に流れる電流Iを検出する電流検出部24とを備える。測定装置10は、電流検出部24で検出される電流Iに含まれたノイズ成分を検出するノイズ成分検出部40とノイズ成分検出部40で検出されるノイズ成分に基づいてノイズ成分を減衰させるための打ち消し信号を生成する信号生成部400とを備える。測定装置10は、測定対象物12に印加される電圧V1に打ち消し信号を重畳する又は電流検出部24の基準電位として打ち消し信号を付与する打ち消し信号付与部を備える。測定装置10は、打ち消し信号付与部で打ち消し信号を付与した状態で測定対象物12に流れる電流Iの電流値を演算する演算制御部32を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に電圧を印加する電圧印加部と、
前記測定対象物に電圧を印加した状態で前記測定対象物に流れる電流を検出する電流検出部と、
前記電流検出部で検出される電流に含まれたノイズ成分を検出するノイズ成分検出部と、
前記ノイズ成分検出部で検出される前記ノイズ成分に基づいて当該ノイズ成分を減衰させるための打ち消し信号を生成する信号生成部と、
前記測定対象物に印加される電圧に前記打ち消し信号を重畳する又は前記電流検出部の基準電位として前記打ち消し信号を付与する打ち消し信号付与部と、
前記打ち消し信号付与部で前記打ち消し信号を付与した状態で前記測定対象物に流れる電流の電流値を演算する演算部と、
を備える測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測定装置であって、
前記ノイズ成分検出部は、前記ノイズ成分の周波数が予め想定された複数の周波数のうちのいずれかに近いかを判別し、
前記信号生成部は、判別した周波数に基づいて前記打ち消し信号を生成する、
測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の測定装置であって、
前記信号生成部は、前記打ち消し信号を求めるための仮信号を前記ノイズ成分検出部で判別した周波数に基づいて生成し、
前記ノイズ成分検出部は、前記測定対象物に印加する電圧に前記仮信号を重畳した状態又は前記仮信号を前記基準電位とした状態で前記測定対象物に流れる電流に含まれた付与時ノイズ成分を検出し、
前記信号生成部は、前記ノイズ成分検出部で検出された前記ノイズ成分及び前記付与時ノイズ成分に基づいて前記打ち消し信号を生成する、
測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の測定装置であって、
前記信号生成部は、前記ノイズ成分の振幅が小さくなるように前記打ち消し信号の振幅の大きさを調整する、
測定装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の測定装置であって、
前記演算部で演算した電流の電流値を報知する報知部を備える、
測定装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の測定装置であって、
前記測定対象物に印加される電圧及び前記測定対象物に流れる電流の電流値に基づいて前記演算部が演算した抵抗値を報知する報知部を備える、
測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、絶縁抵抗を測定する測定装置が開示されている。この測定装置は、ノイズの対策として電流経路にダイオードが直列に挿人されており、ノイズ成分を減衰する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-250831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような測定装置にあっては、電流測定回路の測定レンジにおいて測定可能な電流の上限値を超えるノイズ成分は除去することができない。このため、除去できるノイズ成分の大きさは、設定される測定レンジによって決まってしまう。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、測定可能な電流の上限値との関係に関わらず、ノイズ成分の除去を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の測定装置は、測定対象物に電圧を印加する電圧印加部と、測定対象物に電圧を印加した状態で測定対象物に流れる電流を検出する電流検出部と、を備える。測定装置は、電流検出部で検出される電流に含まれたノイズ成分を検出するノイズ成分検出部と、ノイズ成分検出部で検出されるノイズ成分に基づいて当該ノイズ成分を減衰させるための打ち消し信号を生成する信号生成部と、を備える。測定装置は、測定対象物に印加される電圧に打ち消し信号を重畳する又は電流検出部の基準電位として打ち消し信号を付与する打ち消し信号付与部を備える。測定装置は、打ち消し信号付与部で打ち消し信号を付与した状態で測定対象物に流れる電流の電流値を演算する演算部を備える。
【発明の効果】
【0007】
この態様において、測定装置は、測定対象物に電圧を印加した状態で測定対象物に流れる電流を検出し、検出した電流に含まれるノイズ成分を検出する。そして、測定装置は、検出したノイズ成分に基づいて当該ノイズ成分を減衰させるための打ち消し信号を生成し、測定対象物に印加する電圧に生成した打ち消し信号を重畳する。又は、測定装置は、電流検出部の基準電位として生成した打ち消し信号を付与する。
【0008】
これにより、測定対象物には、電流を測定するための電圧と検出したノイズ成分に基づいて生成された打ち消し信号とが加えられるので、測定する電流の通過経路に混入するノイズ成分は、打ち消し信号によって減衰される。又は、測定対象物に流れる電流を検出する電流検出部の基準電位が打ち消し信号とされるので、測定する電流の通過経路に混入したノイズ成分は、基準電位との比較によって電流を検出する際に減衰される。
【0009】
したがって、例えば選択された測定レンジにおいて当該測定レンジで測定可能な電流の上限値を超えるノイズ成分は除去することができない場合と比較して、測定可能な電流の上限値との関係に関わらず、ノイズ成分の除去が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第一実施形態に係る測定装置の一例を示すブロック図である。
図2図2は、第一実施形態に係る測定装置のハードウエア構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、第一実施形態に係る測定処理の動作の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、図3に続く動作を示すフローチャートである。
図5図5は、図4に続く動作を示すフローチャートである。
図6図6は、図5に続く動作を示すフローチャートである。
図7図7は、検出したノイズ成分の一例を示す説明図である。
図8図8は、測定対象物に印加する電圧に重畳する信号の一例を示す説明図である。
図9図9は、第一実施形態に係る測定装置の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の各実施形態について説明する。
【0012】
<第一実施形態>
以下、添付図面を参照しながら第一実施形態について説明する。図1は、第一実施形態に係る測定装置10の一例を示すブロック図である。
【0013】
図1に示すように、測定装置10は、測定対象物12に流れる電流Iを測定するとともに、測定対象物12の抵抗値を測定する装置である。
【0014】
測定対象物12としては、高圧が加えられる送電線の電線又は配電装置の部品などの絶縁物が挙げられる。測定する抵抗は、絶縁抵抗であり、測定する電流Iは、測定対象物12を流れる漏れ電流が挙げられる。
【0015】
測定装置10は、電圧印加部20、ダイオード22、電流検出部24、電圧検出部26、電流用A/D変換部28、電圧用A/D変換部30、演算部としての演算制御部32、記憶部34、及び報知部36を備える。また、測定装置10は、ノイズ成分検出部40及び信号生成部400を備える。信号生成部400は、重畳制御部42、第一振幅発生部44、第一増幅部46、第二振幅発生部48、第二増幅部50、及び第一加算部100を備える。
【0016】
電圧印加部20は、演算制御部32によって制御され、測定対象物12の一方の端子12Aに印加する直流の電圧V1を生成して出力する。電圧印加部20が生成する電圧V1は、例えば250V以上15kV以下の範囲において測定対象物12の種類に応じて定められる。
【0017】
ダイオード22は、測定対象物12の他方の端子12Bと電流検出部24との間に設けられている。ダイオード22は、測定対象物12からの電流Iを電流検出部24へ流す。
【0018】
電流検出部24は、測定レンジを切替える機能を備える。電流検出部24は、演算増幅器60、第一直列回路62、第二直列回路64、第三直列回路66、抵抗器68、及びコンデンサ70を備える。第一直列回路62、第二直列回路64、第三直列回路66、抵抗器68、及びコンデンサ70は、互いに並列接続された状態で演算増幅器60の反転入力端子60Aと出力端子60Bとの間に設けられる。第一直列回路62、第二直列回路64、第三直列回路66、抵抗器68、及びコンデンサ70は、演算増幅器60の負帰還回路を構成する。
【0019】
演算増幅器60の非反転入力端子60Cは、グランドラインGに接続されており、非反転入力端子60Cには、基準電位が印加される。これにより、ダイオード22と、並列接続された第一直列回路62、第二直列回路64、第三直列回路66、抵抗器68、及びコンデンサ70とによって反転増幅回路が構成される。また、電流検出部24は、ダイオード22から供給される電流Iを電圧Viに変換して出力するI/V変換回路を構成する。なお、ダイオード22は、抵抗器で構成してもよい。
【0020】
第一直列回路62は、直列に接続された第一抵抗器80と第一スイッチ82とで構成されている。また、第二直列回路64は、直列に接続された第二抵抗器84と第二スイッチ86とで構成されている。また、第三直列回路66は、直列に接続された第三抵抗器88と第三スイッチ90とで構成されている。
【0021】
第三抵抗器88は、第二抵抗器84よりも抵抗値が大きい。第二抵抗器84は、第一抵抗器80よりも抵抗値が大きい。第一抵抗器80は、抵抗器68よりも抵抗値が大きい。また、各スイッチ82、86、90は、演算制御部32によってオン・オフ制御される。
【0022】
演算制御部32は、各スイッチ82、86、90をオン・オフ制御することで、複数の測定レンジを選択的に形成する。また、演算制御部32は、各スイッチ82、86、90をオン・オフ制御することで、所定の測定レンジを形成し、電圧V1が印加された測定対象物12に流れる電流Iを、設定された測定レンジに応じた変換率で電圧Viに変換する。
【0023】
電流検出部24は、各スイッチ82、86、90の総てがオフされた状態で、I/V変換率が最も大きい第一測定レンジとなる。電流検出部24は、第一スイッチ82のみがオンされた状態で、変換率が二番目に大きい第二測定レンジとなる。電流検出部24は、第二スイッチ86のみがオンされた状態で、変換率が三番目に大きい第三測定レンジとなる。電流検出部24は、第三スイッチ90のみがオンされた状態で、変換率が最も小さい第四測定レンジとなる。
【0024】
電圧検出部26は、当該電圧検出部26を構成する演算増幅器の非反転入力端子26Aにダイオード22のアノード端子22Aが接続される。また、電圧検出部26を構成する演算増幅器の出力端子26Bが反転入力端子26Cに接続される。これにより、電圧検出部26は、ボルテージフォロワで構成されたバッファ回路を構成する。
【0025】
ここで、電流検出部24の演算増幅器60の非反転入力端子60Cには、基準電位が印加されており、ダイオード22のカソード端子22Bは、演算増幅器60の特性によって基準電位となる。このため、電圧検出部26は、ダイオード22の順方向電圧Vdを検出して低インピーダンスで出力する。
【0026】
電流用A/D変換部28は、電流検出部24から出力される電圧Viの電圧値を第一デジタルデータDiに変換して演算制御部32に出力する。また、電圧用A/D変換部30は、電圧検出部26から出力される順方向電圧Vdの電圧値を第二デジタルデータDdに変換して演算制御部32に出力する。
【0027】
演算制御部32の機能は、後述するプロセッサ200(図2参照)によって実現される。演算制御部32は、電圧印加部20に制御信号を出力して電圧印加部20で生成する電圧V1を定める。
【0028】
また、演算制御部32は、各デジタルデータDd、Diに基づいて電流検出部24の動作を制御し、測定対象物12に流れる電流Iの大きさに適した測定レンジを設定する。
【0029】
さらに、演算制御部32は、第二デジタルデータDdに基づいて順方向電圧Vdを算出する。演算制御部32は、測定用の電圧V1から順方向電圧Vdを減算して測定対象物12の両端子12A、12B間に印加される電圧の電圧値を算出する。また、演算制御部32は、第一デジタルデータDiに基づいて電流Iの電流値を算出する。
【0030】
そして、演算制御部32は、測定対象物12の両端子12A、12B間に印加される電圧の電圧値と、算出した電流Iの電流値とに基づいて測定対象物12の絶縁抵抗である抵抗値を算出する。
【0031】
そして、演算制御部32は、算出した電流Iの電流値及び抵抗値を、報知部36を構成する液晶パネルに表示させる。また、演算制御部32は、算出した電流Iの電流値及び抵抗値を記憶部34に記憶させる。
【0032】
ノイズ成分検出部40の機能は、後述するプロセッサ200(図2参照)によって実現される。ノイズ成分検出部40は、電流用A/D変換部28から第一デジタルデータDiを取得する。ノイズ成分検出部40は、第一デジタルデータDiが示す電流波形に含まれる振幅したノイズ成分を検出するとともに、検出結果を信号生成部400の重畳制御部42に出力する。
【0033】
信号生成部400は、ノイズ成分検出部40で検出されるノイズ成分に基づいて当該ノイズ成分の一部又は全部を減衰させるための打ち消し信号を生成する。信号生成部400は、重畳制御部42、第一振幅発生部44、第一増幅部46、第二振幅発生部48、第二増幅部50、及び第一加算部100を備える。
【0034】
重畳制御部42の機能は、後述するプロセッサ200(図2参照)によって実現される。重畳制御部42は、第一振幅発生部44、第一増幅部46、第二振幅発生部48、及び第二増幅部50を制御して電圧V1に重畳する信号を生成させる。なお、重畳制御部42、第一振幅発生部44、第一増幅部46、第二振幅発生部48、第二増幅部50、及び第一加算部100の総ては、後述するプロセッサ200(図2参照)で実現してもよい。
【0035】
第一振幅発生部44は、重畳制御部42からの制御信号によって50Hz又は60Hzの振幅信号を生成して第一増幅部46に出力する。第一増幅部46は、重畳制御部42からの制御信号によって第一振幅発生部44からの振幅信号の振幅の大きさを変更する。
【0036】
第二振幅発生部48は、重畳制御部42からの制御信号によって50Hz又は60Hzの振幅信号を生成して第二増幅部50に出力する。第二振幅発生部48が生成する振幅信号は、第一振幅発生部44が生成する振幅信号よりも位相が90°進んでいる。第二増幅部50は、重畳制御部42からの制御信号によって第二振幅発生部48からの振幅信号の振幅の大きさを変更する。
【0037】
第一加算部100は、第一増幅部46の出力と第二増幅部50の出力とを加算する。第一加算部100で加算された信号は、第二加算部102において、電圧印加部20から出力された電圧V1に加算される。これにより、第一加算部100で加算された振幅信号は、電圧印加部20から出力された電圧V1に重畳される。第二加算部102は、第一加算部100からの打ち消し信号を、測定対象物12に印加される電圧V1に重畳する打ち消し信号付与部を構成する。
【0038】
(ハードウエア構成)
次に、測定装置10のハードウエア構成をブロック図に従って説明する。図2は、第一実施形態に係る測定装置10のハードウエア構成の一例を示すブロック図である。
【0039】
図2に示すように、測定装置10は、前述したプロセッサ200を備えている。プロセッサ200は、前述した演算制御部32、ノイズ成分検出部40、重畳制御部42として機能する。なお、第一実施形態の測定装置10は、一つのプロセッサ200によって演算制御部32、ノイズ成分検出部40、及び重畳制御部42の機能を実現する場合について説明するが、測定装置10は、この構成に限定されるものではない。例えば、測定装置10は、複数のプロセッサによって演算制御部32、ノイズ成分検出部40、及び重畳制御部42の機能を実現してもよい。
【0040】
プロセッサ200には、前述した電流用A/D変換部28、電圧用A/D変換部30、電圧印加部20、記憶部34、及び報知部36が接続されている。また、プロセッサ200には、入力部210、及び通信部214が接続されている。
【0041】
電流用A/D変換部28は、電流検出部24(図1参照)から出力される電圧Viの電圧値を第一デジタルデータDiに変換してプロセッサ200に出力する。プロセッサ200は、第一デジタルデータDiの変化から測定対象物12に流れる電流Iの電流波形を取得する。
【0042】
電圧用A/D変換部30は、電圧検出部26(図1参照)から出力される順方向電圧Vdの電圧値を第二デジタルデータDdに変換してプロセッサ200に出力する。プロセッサ200は、第二デジタルデータDdからダイオード22に生ずる順方向電圧Vdを取得する。
【0043】
電圧印加部20は、プロセッサ200からの制御信号に従って測定対象物12の一方の端子12A(図1参照)に印加される直流の電圧V1を生成して出力する。電圧印加部20は、プロセッサ200からの制御信号に従って例えば250V以上15kV以下の電圧値の電圧V1を生成する。生成する電圧V1は、例えば測定対象物12の種類に応じて定められる。
【0044】
記憶部34は、不揮発性メモリ(ROM:Read Only Memory)及び揮発性メモリ(RAM:Random Access Memory)などにより構成される。
【0045】
記憶部34は、データを読み出し可能に記憶する。記憶部34には、測定装置10の動作を制御する処理プログラムが格納される。記憶部34は、測定装置10の機能を実現する処理プログラムを格納する記憶媒体として機能する。
【0046】
また、記憶部34には、処理プログラムで使用するデータが読み出し可能に記憶される。記憶部34に記憶されるデータとしては、例えば測定した電流値又は抵抗値が挙げられる。
【0047】
入力部210は、複数の操作ボタン及び数字ボタン、又はタッチパネルで構成される。
【0048】
入力部210は、利用者によって入力された内容をプロセッサ200に送る。入力部210は、利用者の入力操作を受け付ける入力インターフェースとして機能する。
【0049】
報知部36は、利用者に表示によって報知するための発光ダイオード又は液晶パネル(LCD:Liquid Crystal Display)等の表示パネルで構成されれる。また、報知部36は、利用者に音によって報知する圧電ブザー又はスピーカ等で構成される。第一実施形態の報知部36は、一例として液晶パネルで構成される。
【0050】
報知部36は、プロセッサ200からのデータに従って表示及び音声出力を行う。報知部36は、一例として、測定結果等を利用者に表示したり、音声で出力したりする。
【0051】
通信部214は、USB(Universal Serial Bus)、Bluetooth(登録商標)、無線LANなどで構成される。通信部214は、プロセッサ200と外部装置との間でデータの送受信を可能とする。通信部214は、データを送受信するためのインターフェースを構成する。
【0052】
前述した処理プログラムが外部装置から供給される場合、通信部214は、外部装置から処理プログラムを受信してプロセッサ200に送る。プロセッサ200は、受信した処理プログラムを記憶部34に格納する。
【0053】
プロセッサ200は、一例として、中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)で構成される。プロセッサ200は、記憶部34に格納された処理プログラムを読み出すとともに、読み出した処理プログラムに従って動作する。これにより、プロセッサ200は、測定装置10の各部を制御して測定を行う。
【0054】
また、プロセッサ200は、測定結果等を、通信部214を介して外部装置へ送信することができる。
【0055】
演算制御部32、ノイズ成分検出部40、及び重畳制御部42は、プロセッサ200が記憶部34から処理プログラムとして読み出したソフトウエアプログラムを実行することで実現される。
【0056】
[演算制御部]
演算制御部32は、例えば入力部210からの入力に従って電圧印加部20に制御信号を出力することで、測定対象物12の一方の端子12Aに印加する直流の電圧V1を電圧印加部20で生成させて出力させる。演算制御部32は、測定対象物12の種類に応じて例えば250V以上15kV以下の範囲内で定めた電圧値の電圧V1を電圧印加部20で生成させて出力させる。電圧印加部300は、測定対象物12に電圧V1を印加する。
【0057】
また、演算制御部32は、電圧印加部20が測定対象物12に直流の電圧V1を印加した状態において、電流用A/D変換部28から出力される第一デジタルデータDiを取得する。そして、演算制御部32は、取得した第一デジタルデータDiに基づいて測定対象物12に流れる電流Iを演算し、測定対象物12に流れる電流Iを検出する。
【0058】
また、演算制御部32は、前述と同様の手順によって、測定対象物12に印加される電圧V1に前述した打ち消し信号を重畳して付与した状態において、測定対象物12に流れる電流Iの電流値を演算する。そして、演算制御部32は、演算した電流Iの電流値を報知部36によって報知させる。また、演算制御部32は、測定対象物12に印加される電圧及び演算した電流Iの電流値に基づいて測定対象物12の抵抗値を演算し、演算した抵抗値を報知部36によって報知させる。
【0059】
[ノイズ成分検出部]
ノイズ成分検出部40は、電流検出部24で検出される電流Iに含まれたノイズ成分を電流用A/D変換部28を介して検出する。このノイズ成分は、振幅する信号成分である。
【0060】
具体的に説明すると、ノイズ成分検出部40は、電圧印加部20で直流の電圧V1を測定対象物12に印加した状態において、電流検出部24で検出した電流Iの変化に基づいて、電流波形を取得する。そして、ノイズ成分検出部40は、取得した電流波形に含まれるノイズ成分を検出する。
【0061】
また、ノイズ成分検出部40は、ノイズ成分の周波数が予め想定された複数の周波数のうちのいずれかに近いかを判別する。
【0062】
具体的に説明すると、電流波形に含まれるノイズ成分は、商用電源から生ずるノイズ成分が多い。国内における商用電源の商用周波数は、50Hz又は60Hzである。このため、ノイズ成分検出部40は、検出したノイズ成分の周波数が、予め想定される50Hz又は60Hzのいずれかに近いかを判別する。
【0063】
ノイズ成分の周波数が50Hz又は60Hzのいずれかに近いかの判別は、例えばノイズ成分に含まれた振幅する成分において、50Hzの振幅成分又は60Hzの振幅成分のどちらが多く含まれるかよって判別することができる。
【0064】
ノイズ成分検出部40は、測定対象物12に印加する電圧V1に仮信号を重畳した状態又は仮信号を電流検出部24の基準電位とした状態で測定対象物12に流れる電流Iに含まれた付与時ノイズ成分を検出する。ここで、仮信号は、前述した打ち消し信号を求めるために仮に生成された信号であり、詳細は後述する。
【0065】
具体的に説明すると、第一実施形態のノイズ成分検出部40は、測定対象物12に印加される電圧V1に仮信号を重畳した状態において、測定対象物12に流れる電流Iに含まれたノイズ成分を付与時ノイズ成分として検出する。付与時ノイズ成分の検出には、例えばIQ検波(同期検波)が用いられる。検出した付与時ノイズ成分は、複素数で表される。
【0066】
第一実施形態において、ノイズ成分検出部40は、測定対象物12に印加する電圧V1に仮信号を重畳した状態で測定対象物12に流れる電流Iに含まれた付与時ノイズ成分を検出する場合を例に挙げて説明する。なお、ノイズ成分検出部40は、この構成に限定されるものではない。ノイズ成分検出部40は、仮信号を電流検出部24の基準電位とした状態で、測定対象物12に流れる電流Iに含まれた付与時ノイズ成分を検出してもよい。詳細については第二実施形態で説明する。
【0067】
[重畳制御部]
重畳制御部42は、信号生成部400(図1参照)の一部を構成する。重畳制御部42は、第一振幅発生部44、第一増幅部46、第二振幅発生部48、及び第二増幅部50を制御して信号生成部400を動作させる。
【0068】
重畳制御部42は、第一振幅発生部44、第一増幅部46、第二振幅発生部48、及び第二増幅部50に制御信号を出力して、ノイズ成分検出部40で検出したノイズ成分に基づいて当該ノイズ成分を減衰させるための打ち消し信号を生成させる。
【0069】
具体的に説明すると、重畳制御部42は、電流波形に含まれたノイズ成分の周期及び大きさに基づいて打ち消し信号を生成させる。生成される打ち消し信号は、例えばノイズ成分の周波数と同じ周波数を有する。生成される打ち消し信号の詳細については後述する。
【0070】
これにより、信号生成部400は、ノイズ成分検出部40で検出されるノイズ成分に基づいて当該ノイズ成分を減衰させるための打ち消し信号を生成する。
【0071】
また、重畳制御部42は、第一振幅発生部44、第一増幅部46、第二振幅発生部48、及び第二増幅部50に制御信号を出力して、ノイズ成分検出部40において判別したノイズ成分の周波数に基づいて打ち消し信号を生成させる。
【0072】
これにより、信号生成部400は、判別した周波数に基づいて打ち消し信号を生成する。
【0073】
重畳制御部42は、第一振幅発生部44、第一増幅部46、第二振幅発生部48、及び第二増幅部50に打ち消し信号を生成させることによって、第二加算部102(図1参照)を介して測定対象物12に印加する電圧V1に打ち消し信号を重畳させる。又は、重畳制御部42は、打ち消し信号を測定対象物12に流れる電流Iを検出する際に基準となる電流検出部24の基準電位とする。
【0074】
これにより、信号生成部400は、測定対象物12に印加される電圧V1に第二加算部102を介して打ち消し信号を重畳する又は電流検出部24の基準電位として打ち消し信号を付与する打ち消し信号付与部を構成する。第一実施形態において、打ち消し信号付与部は、第二加算部102によって構成される。
【0075】
第一実施形態において、重畳制御部42は、測定対象物12に印加する電圧V1に打ち消し信号を重畳させる場合を例に挙げて説明するが、重畳制御部42は、この構成に限定されるものではない。重畳制御部42は、打ち消し信号を測定対象物12に流れる電流Iを検出する際に基準となる電流検出部24の基準電位としてもよい。詳細については、第二実施形態で説明する。
【0076】
また、重畳制御部42は、第一振幅発生部44、第一増幅部46、第二振幅発生部48、及び第二増幅部50に制御信号を出力して、打ち消し信号を求めるための仮信号をノイズ成分検出部40で判別した周波数に基づいて生成させる。
【0077】
これにより、信号生成部400は、打ち消し信号を求めるための仮信号をノイズ成分検出部40で判別した周波数に基づいて生成する。
【0078】
また、重畳制御部42は、第一振幅発生部44、第一増幅部46、第二振幅発生部48、及び第二増幅部50に制御信号を出力して、ノイズ成分検出部40で検出したノイズ成分及び前述した付与時ノイズ成分に基づいて打ち消し信号を生成させる。
【0079】
これにより、信号生成部400は、ノイズ成分検出部40で検出されたノイズ成分及び付与時ノイズ成分に基づいて打ち消し信号を生成する。
【0080】
重畳制御部42は、第一振幅発生部44、第一増幅部46、第二振幅発生部48、及び第二増幅部50に制御信号を出力して、ノイズ成分の振幅が小さくなるように打ち消し信号の振幅の大きさを調整する。
【0081】
具体的に説明すると、重畳制御部42は、測定対象物12に流れる電流Iに含まれたノイズ成分の振幅が小さくなるように、電圧V1に重畳する打ち消し信号の振幅の大きさを大きく又は小さくして調整を行う。これにより、信号生成部400は、ノイズ成分の振幅が小さくなるように打ち消し信号の振幅の大きさを調整する。
【0082】
打ち消し信号の振幅の大きさを調整する際に重畳制御部42は、例えば打ち消し信号の振幅の大きさを微小量大きく又は微小量小さくして、電流Iに含まれたノイズ成分の振幅を小さくするための調整工程を繰り返す。そして、重畳制御部42は、ノイズ成分の振幅が予め定めれた値以下となった際に調整工程を終了する。
【0083】
これにより、信号生成部400は、ノイズ成分の振幅が小さくなるように打ち消し信号の振幅の大きさを調整する。
【0084】
(動作説明)
次に、図3から図8を用いて、測定装置10の動作をプロセッサ200が実行する処理手順に従って説明する。
【0085】
図3は、第一実施形態に係る測定装置10の動作の一例を示すフローチャートである。図4は、図3に続く動作を示すフローチャートである。図5は、図4に続く動作を示すフローチャートである。図6は、図5に続く動作を示すフローチャートである。図7は、検出したノイズ成分の一例を示す説明図である。図8は、測定対象物12に印加する電圧V1に重畳する信号の一例を示す説明図である。
【0086】
測定装置10のプロセッサ200が記憶部34に記憶された処理プログラムを実行すると、プロセッサ200は、電圧印加部20に制御信号を出力して直流の測定用の電圧V1を生成させる。これにより、プロセッサ200は、電圧V1を測定対象物12の一方の端子12Aに印加させる(ステップS10)。また、プロセッサ200は、電流用A/D変換部28から入力する第一デジタルデータDiから測定対象物12に流れる電流Iの電流波形を取得する(ステップS12)。また、プロセッサ200は、電流波形に含まれる振幅する成分からノイズ成分の周波数を検出して記憶部34に記憶する(ステップS14)。
【0087】
そして、プロセッサ200は、検出したノイズ成分の周波数が商用周波数である50Hz又は60Hzのうちのどちらに近いかを判別する(ステップS16)。
【0088】
ステップS16においてノイズ成分の周波数が50Hzに近い場合、プロセッサ200は、ノイズ対策の対象とする対象周波数を50Hzに設定して例えば記憶部34に記憶する(ステップS18)。ステップS16においてノイズ成分の周波数が50Hzに近くない場合、ノイズ成分の周波数は60Hzに近いこととなる。ノイズ成分の周波数が60Hzに近い場合、プロセッサ200は、ノイズ対策の対象とする対象周波数を60Hzに設定して例えば記憶部34に記憶し(ステップS20)、ステップS22へ移行する。
【0089】
ステップS22においてプロセッサ200は、ノイズ成分の振幅及び位相を検出する。具体的に説明すると、プロセッサ200は、ノイズ成分を同相成分(I)と直交位相成分(Q)とに分けた複素数として取得する。取得方法としては、一般的な方法が利用でき、例えば対象周波数に設定された信号を乗算して同相成分(I)を求めるとともに、当該信号の位相を90°進めた信号を乗算して直交位相成分(Q)を求める方法が挙げられる。
【0090】
図7において、ステップS22で取得したノイズ成分Aは、一例として同相成分(I)と直交位相成分(Q)とが実数及び虚数からなる複素数である「3+2i」で示されている。ノイズ成分Aを示す「3+2i」は、一例としてノイズ成分Aの振幅が3.6、位相が33.7°を示す。
【0091】
そして、プロセッサ200は、電流Iに含まれたノイズ成分Aを減衰させる打ち消し信号を求めるための仮信号K(図8参照)を、判別して設定した対象周波数に基づいて生成する(ステップS24)。
【0092】
具体的に説明すると、プロセッサ200は、第一振幅発生部44に制御信号を出力することで、第一振幅発生部44に対象周波数の仮信号K(図8参照)を生成させる。また、プロセッサ200は、第一増幅部46に制御信号を出力することで、第一振幅発生部44で生成した仮信号の振幅を所定の大きさにする。
【0093】
図8において、ステップS24で生成された仮信号Kは、一例として同相成分(I)と直交位相成分(Q)とが「1+0i」で示されている。仮信号Kを示す「1+0i」は、一例として仮信号Kの振幅が1.0、位相が0.0°を示す。
【0094】
また、プロセッサ200は、第一振幅発生部44及び第一増幅部46に制御信号を出力して仮信号Kを生成させることで、仮信号Kを、各加算部100、102を介して、測定対象物12に印加する電圧V1に重畳させる(ステップS26)。なお、プロセッサ200は、第一振幅発生部44及び第一増幅部46に制御信号を出力して仮信号Kを生成させるとともに、仮信号Kを、測定対象物12に流れる電流Iを検出する際の基準となる基準電位としてもよい。
【0095】
電圧V1に仮信号Kを付与して重畳させた状態において、プロセッサ200は、電流用A/D変換部28から入力する第一デジタルデータDiから測定対象物12に流れる電流Iの電流波形を形成する(ステップS28)。そして、プロセッサ200は、電流波形に含まれる振幅する成分から付与時ノイズ成分B(図7参照)の振幅及び位相を検出して記憶部34に記憶する(ステップS30)。
【0096】
具体的に説明すると、プロセッサ200は、付与時ノイズ成分Bを同相成分(I)と直交位相成分(Q)とに分けた複素数として取得する。
【0097】
図7において、ステップS30で取得した付与時ノイズ成分Bは、一例として同相成分(I)と直交位相成分(Q)とが「1-i」で示されている。付与時ノイズ成分Bを示す「1-i」は、一例として付与時ノイズ成分Bの振幅が1.4、位相が-45.0°を示す。
【0098】
次に、プロセッサ200は、ステップS22で取得したノイズ成分A及びステップS30で取得した付与時ノイズ成分Bに基づいて打ち消し信号C(図8参照)を生成する(ステップS32)。
【0099】
具体的に説明すると、プロセッサ200は、-A/(B-A)の複素数の演算式によって打ち消し信号C(図8参照)を演算する。
【0100】
図7において、(-A)は、ノイズ成分Aを相殺するために必要と想定される信号を示す。(B-A)は、直流の電圧V1に仮信号Kを重畳した際にノイズ成分Aに生じた影響量を示す。そして、(-A)と(B-A)とに基づいて、電流Iに含まれるノイズ成分Aを減衰する為の振幅及び位相の打ち消し信号C(図8参照)が演算される。
【0101】
ここで、ノイズ成分Aは、「3+2i」で示され、付与時ノイズ成分Bは、「1-i」で示される。このため、打ち消し信号Cは、-(3+2i)/{(1-i)-(3+2i)}≒0.923-0.385iとなる(図8参照)。
【0102】
図8において、ステップS32で演算した打ち消し信号Cは、一例として同相成分(I)と直交位相成分(Q)とが「0.923-0.385i」で示されている。打ち消し信号Cを示す「0.923-0.385i」は、一例として打ち消し信号Cの振幅が1.0、位相が-22.6°を示す。
【0103】
そして、プロセッサ200は、第一振幅発生部44及び第一増幅部46又は第二振幅発生部48及び第二増幅部50に制御信号を出力して打ち消し信号Cを生成させる。これにより、プロセッサ200は、生成した打ち消し信号Cを、各加算部100、102を介して、測定対象物12に印加する電圧V1に重畳させる(ステップS36)。なお、プロセッサ200は、生成した打ち消し信号Cを、測定対象物12に流れる電流Iを検出する際に基準となる基準電位としてもよい。
【0104】
電圧V1に打ち消し信号Cを重畳させた状態において、プロセッサ200は、電流用A/D変換部28から入力する第一デジタルデータDiに基づいて測定対象物12に流れる電流Iの電流波形を形成する(ステップS40)。また、プロセッサ200は、電流波形に含まれる振幅する成分からノイズ成分Aが残存するか否かを判断する(ステップS42)。ノイズ成分Aが残存するか否かの判断は、例えば電流波形にノイズ成分Aが含まれかつノイズ成分Aの振幅の大きさが予め定めた所定値以上であるか否かによって判断する。
【0105】
ステップS42において、電流波形にノイズ成分Aが残存しない場合、プロセッサ200は、ステップS80を実行する。
【0106】
ステップS42において、電流波形にノイズ成分Aが残存する場合、プロセッサ200は、第一振幅発生部44及び第一増幅部46に制御信号を出力して打ち消し信号Cの「0°成分」が示す振幅を微小量増大する(ステップS44)。「0°成分」は、例えば打ち消し信号Cを示す複素数において実数部分を示す実部が挙げられる。そして、プロセッサ200は、電流用A/D変換部28からの入力に基づいて、電流波形に含まれるノイズ成分Aの振幅が減少したか否かを判断する(ステップS46)。
【0107】
ステップS46において、ノイズ成分Aの振幅が減少していた場合、プロセッサ200は、第一振幅発生部44及び第一増幅部46に制御信号を出力して打ち消し信号Cの「0°成分」が示す振幅を微小量増大する(ステップS48)。また、プロセッサ200は、電流用A/D変換部28からの入力に基づいて電流波形を取得する(ステップS50)。
【0108】
そして、プロセッサ200は、取得した電流波形に含まれたノイズ成分Aの振幅が予め定めた所定値以下であるか否かを判断し(ステップS52)、ノイズ成分Aの振幅が所定値以下になるまで、ステップS48からステップS52を繰り返す。
【0109】
ステップS46において、ノイズ成分Aの振幅が減少していない場合、プロセッサ200は、第一振幅発生部44及び第一増幅部46に制御信号を出力して打ち消し信号Cの「0°成分」が示す振幅を微小量減少する(ステップS54)。また、プロセッサ200は、電流用A/D変換部28からの入力に基づいて電流波形を取得する(ステップS56)。
【0110】
そして、プロセッサ200は、取得した電流波形に含まれたノイズ成分Aの振幅が予め定めた所定値以下であるか否かを判断し(ステップS58)、ノイズ成分Aの振幅が所定値以下になるまで、ステップS54からステップS58を繰り返す。
【0111】
ステップS52又はステップS58においてノイズ成分Aの振幅が所定値以下の場合、プロセッサ200は、第二振幅発生部48及び第二増幅部50に制御信号を出力して打ち消し信号Cの「90°成分」が示す振幅を微小量増大する(ステップS60)。「90°成分」は、例えば打ち消し信号Cを示す複素数において虚数部分を示す虚部が挙げられる。そして、プロセッサ200は、電流用A/D変換部28からの入力に基づいて、電流波形に含まれるノイズ成分Aの振幅が減少したか否かを判断する(ステップS62)。
【0112】
ステップS62において、ノイズ成分Aの振幅が減少していた場合、プロセッサ200は、第二振幅発生部48及び第二増幅部50に制御信号を出力して打ち消し信号Cの「90°成分」が示す振幅を微小量増大する(ステップS64)。また、プロセッサ200は、電流用A/D変換部28からの入力に基づいて電流波形を取得する(ステップS66)。
【0113】
そして、プロセッサ200は、取得した電流波形に含まれたノイズ成分Aの振幅が予め定めた所定値以下であるか否かを判断し(ステップS68)、ノイズ成分Aの振幅が所定値以下になるまで、ステップS64からステップS68を繰り返す。
【0114】
ステップS62において、ノイズ成分Aの振幅が減少していない場合、プロセッサ200は、第二振幅発生部48及び第二増幅部50に制御信号を出力して打ち消し信号Cの「90°成分」が示す振幅を微小量減少する(ステップS70)。また、プロセッサ200は、電流用A/D変換部28からの入力に基づいて電流波形を取得する(ステップS72)。
【0115】
そして、プロセッサ200は、取得した電流波形に含まれたノイズ成分Aの振幅が予め定めた所定値以下であるか否かを判断し(ステップS74)、ノイズ成分Aの振幅が所定値以下になるまで、ステップS70からステップS74を繰り返す。
【0116】
ステップS68又はステップS74においてノイズ成分Aの振幅が所定値以下の場合、プロセッサ200は、電流用A/D変換部28からの入力に基づいて電流波形を取得する。また、プロセッサ200は、取得した電流波形から例えばIQ検波(同期検波)等によって直流成分を抽出し、測定対象物12に流れる電流Iの電流値を取得する(ステップS80)。そして、プロセッサ200は、取得した電流値を、報知部36を構成する液晶パネルに表示して電流値を利用者に報知する(ステップS82)。
【0117】
また、プロセッサ200は、電圧印加部20で生成した電圧V1から電圧用A/D変換部30からの入力で得られる順方向電圧Vdを減算して測定対象物12の両端子12A、12B間に印加される電圧を算出する。また、プロセッサ200は、測定対象物12の両端子12A、12B間に印加される電圧の電圧値と取得した電流Iの電流値とに基づいて測定対象物12の絶縁抵抗である抵抗値を演算する(ステップS84)。そして、プロセッサ200は、演算した抵抗値を、報知部36を構成する液晶パネルに表示して利用者に抵抗値を報知して(ステップS86)、当該処理を終了する。
【0118】
なお、プロセッサ200は、取得した電流値及び抵抗値を、報知部36を構成するスピーカから音声で出力して利用者に報知してもよい。
【0119】
(作用及び効果)
次に、第一実施形態による作用効果について説明する。
【0120】
第一実施形態における測定装置10は、測定対象物12に電圧V1を印加する電圧印加部20と、測定対象物12に電圧V1を印加した状態で測定対象物12に流れる電流Iを検出する電流検出部24と、を備える。測定装置10は、電流検出部24で検出される電流Iに含まれたノイズ成分Aを検出するノイズ成分検出部40を備える。測定装置10は、ノイズ成分検出部40で検出されるノイズ成分Aに基づいて当該ノイズ成分Aを減衰させるための打ち消し信号Cを生成する信号生成部400を備える。測定装置10は、測定対象物12に印加される電圧V1に打ち消し信号Cを重畳する打ち消し信号付与部(第二加算部102)を備える。測定装置10は、打ち消し信号付与部(第二加算部102)で打ち消し信号Cを付与した状態で測定対象物12に流れる電流Iの電流値を演算する演算制御部32を備える。なお、測定装置10は、電流検出部24の基準電位として打ち消し信号Cを付与する打ち消し信号付与部を備える構成であってもよい。
【0121】
この構成において、測定装置10は、測定対象物12に電圧V1を印加した状態で測定対象物12に流れる電流Iを検出し、検出した電流Iに含まれるノイズ成分Aを検出する。そして、測定装置10は、検出したノイズ成分Aに基づいて当該ノイズ成分Aを減衰させるための打ち消し信号Cを生成し、測定対象物12に印加する電圧V1に生成した打ち消し信号Cを重畳する。なお、測定装置10は、生成した打ち消し信号Cを測定対象物12に流れる電流Iを検出する際に基準となる電流検出部24の基準電位としてもよい。
【0122】
これにより、測定対象物12には、電流Iを測定するための電圧V1と検出したノイズ成分Aに基づいて生成された打ち消し信号Cとが加えられる。このため、測定する電流Iの通過経路に混入するノイズ成分Aは、打ち消し信号Cによって減衰される。
【0123】
又は、測定対象物12に流れる電流Iを検出する電流検出部24の基準電位は、打ち消し信号Cとされる。これにより、測定する電流Iの通過経路に混入したノイズ成分Aは、基準電位との比較によって電流Iを検出する際に減衰される。
【0124】
ここで、ノイズ成分Aを減衰する打ち消し信号Cは、検出されたノイズ成分Aに基づいて生成されるので、検出されたノイズ成分Aの大きさに応じた打ち消し信号Cを生成することができる。このため、測定感度を変更する為の測定レンジの状態に関わらず、ノイズ成分Aを減衰するための打ち消し信号Cの大きさを定めることが可能となる。
【0125】
したがって、例えば選択された測定レンジにおいて当該測定レンジで測定可能な電流の上限値を超えるノイズ成分Aは除去することができない場合と比較して、測定可能な電流の上限値との関係に関わらず、ノイズ成分Aの除去が可能となる。
【0126】
そして、測定装置10は、測定対象物12に印加する電圧V1に打ち消し信号Cを重畳した状態で測定対象物12に流れる電流Iを演算制御部32で演算して取得する。
【0127】
また、第一実施形態の測定装置10において、ノイズ成分検出部40は、ノイズ成分Aの周波数が予め想定された複数の周波数のうちのいずれかに近いかを判別し、信号生成部400は、判別した周波数に基づいて打ち消し信号Cを生成する。
【0128】
この構成によれば、ノイズ成分Aの周波数が予め想定された複数の周波数のうちのいずれかに近いかを判別し、判別された周波数に基づいて打ち消し信号Cが生成される。このため、ノイズ成分Aに複数の周波数成分が含まれた場合であっても、目的としたノイズ成分Aの減衰を効率的に行うことが可能となる。
【0129】
例えば、高圧線の絶縁抵抗を測定する環境では、周囲の変電所等から商用周波数である50Hz又は60Hzのノイズ成分Aが混入し易い。このため、測定装置10は、ノイズ成分Aの周波数が50Hzなのか60Hzなのかを判別することで、混入する可能性の高い周波数のノイズ成分Aを効率的に減衰することが可能となる。よって、商用電源を供給する高圧線の漏れ電流又は絶縁抵抗を測定する際には顕著な効果を得ることができる。
【0130】
また、第一実施形態の測定装置10において、信号生成部400は、打ち消し信号Cを求めるための仮信号Kをノイズ成分検出部40で判別した周波数に基づいて生成する。ノイズ成分検出部40は、測定対象物12に印加する電圧V1に仮信号Kを重畳した状態で測定対象物12に流れる電流Iに含まれた付与時ノイズ成分Bを検出する。なお、ノイズ成分検出部40は、仮信号Kを基準電位とした状態で測定対象物12に流れる電流Iに含まれた付与時ノイズ成分Bを検出してもよい。そして、信号生成部400は、ノイズ成分検出部40で検出されたノイズ成分A及び付与時ノイズ成分Bに基づいて打ち消し信号Cを生成する。
【0131】
この構成によれば、例えば測定対象物12に直流電圧を印加した状態で検出した電流Iから得られるノイズ成分Aのみに基づいて打ち消し信号Cを生成する場合と比較して、ノイズ成分Aの減衰効果を高めることが可能となる。
【0132】
また、第一実施形態の測定装置10において、信号生成部400は、ノイズ成分Aの振幅が小さくなるように打ち消し信号Cの振幅の大きさを調整する。
【0133】
この構成によれば、例えばノイズ成分検出部40で検出したノイズ成分A及び付与時ノイズ成分Bに基づいて生成された打ち消し信号Cによってノイズ成分Aを減衰する場合と比較して、残存するノイズ成分Aの振幅を小さくすることが可能となる。これにより、測定精度の向上が可能となる。
【0134】
ここで、測定する電流Iの通過経路に混入するノイズ成分Aと打ち消し信号Cとは、ほぼ同周波数とすることが可能であるが、同期させることは難しい。このため、ノイズ成分Aの振幅と打ち消し信号Cの振幅とに生ずるずれによってノイズ成分Aの減衰状態を維持することは難しい。
【0135】
そこで、ノイズ成分Aの振幅が小さくなるように打ち消し信号Cの振幅の大きさを調整することで、ノイズ成分Aの減衰状態の維持か可能となる。
【0136】
また、第一実施形態の測定装置10は、演算制御部32で演算した電流Iの電流値を報知する報知部36を備える。
【0137】
この構成によれば、利用者は、測定対象物12に流れる電流Iを知ることができる。これにより、利用者は、測定装置10を電流測定装置として利用することができる。
【0138】
また、第一実施形態の測定装置10は、測定対象物12に印加される電圧V1及び測定対象物12に流れる電流Iの電流値に基づいて演算制御部32が演算した抵抗値を報知する報知部36を備える。
【0139】
この構成によれば、利用者は、測定対象物12の抵抗値を知ることができる。これにより、利用者は、測定装置10を抵抗測定装置として利用することができる。
【0140】
<第二実施形態>
以下、添付図面を参照しながら第二実施形態について説明する。第二実施形態では、第一実施形態と同一又は同等部分については、同符号を付して説明を割愛するとともに、異なる部分についてのみ説明する。図9は、第二実施形態に係る測定装置500の一例を示すブロック図である。
【0141】
図9に示すように、第二実施形態に係る測定装置500は、第一実施形態と比較して、打ち消し信号が付与される箇所が異なる。
【0142】
この測定装置500は、電流検出部24の基準電位として打ち消し信号を付与する打ち消し信号付与部(接続線410)を備える。なお、打ち消し信号又は仮信号は、例えば図7及び図8で説明したものが使用される。
【0143】
また、測定装置500のノイズ成分検出部40は、仮信号を電流検出部24の基準電位とした状態で測定対象物12に流れる電流Iに含まれた付与時ノイズ成分を検出する。
【0144】
具体的に説明すると、測定装置500の電流検出部24において反転増幅回路を構成する演算増幅器60の非反転入力端子60Cは、グランドラインGから切り離されている。そして、この非反転入力端子60Cには、第一増幅部46の出力と第二増幅部50の出力とを加算する第一加算部100が接続線410によって接続されている。この接続線410は、打ち消し信号又は仮信号を電流検出部24の基準電位として付与する打ち消し信号付与部を構成する。
【0145】
これにより、測定装置500は、測定対象物12に流れる電流Iを検出する反転増幅回路である演算増幅器60にて、反転入力端子60Aに入力される電流Iを検出する際に基準とする非反転入力端子60Cの基準電位が前述した打ち消し信号又は仮信号とされる。
【0146】
また、ダイオード22のカソード端子22Bに接続された電流検出部24の抵抗器68の一方の端子68Aは、検出用演算増幅器510の反転入力端子510Bに接続されている。また、演算増幅器60の出力端子60Bに接続された抵抗器68の他方の端子68Bは、検出用演算増幅器510の非反転入力端子510Aに接続されている。
【0147】
そして、検出用演算増幅器510の出力端子510Cからの出力は、電流用A/D変換部28に入力される。また、検出用演算増幅器510から出力される電圧Viの電圧値は、電流用A/D変換部28で第一デジタルデータDiに変換され演算制御部32に出力される。これにより、検出用演算増幅器510は、抵抗器68の両端子68A、68B間に生ずる電位差を電流用A/D変換部28に出力する増幅器として機能する。
【0148】
(作用及び効果)
第二実施形態による作用効果について説明する。
【0149】
第二実施形態において第一実施形態と同一又は同等部分については、第一実施形態と同様の作用効果を奏する。そして、第一実施形態と異なる作用効果のみについて説明する。
【0150】
第二実施形態における測定装置500は、測定対象物12に電圧V1を印加する電圧印加部20と、測定対象物12に電圧V1を印加した状態で測定対象物12に流れる電流Iを検出する電流検出部24と、を備える。測定装置500は、電流検出部24で検出される電流Iに含まれたノイズ成分を検出するノイズ成分検出部40と、ノイズ成分検出部40で検出されるノイズ成分に基づいて当該ノイズ成分を減衰させるための打ち消し信号を生成する信号生成部400と、を備える。測定装置500は、電流検出部24の基準電位として打ち消し信号を付与する打ち消し信号付与部(接続線410)を備える。測定装置500は、打ち消し信号付与部(接続線410)で打ち消し信号を付与した状態で測定対象物12に流れる電流Iの電流値を演算する演算制御部32を備える。
【0151】
この構成において、測定装置500は、測定対象物12に電圧V1を印加した状態で測定対象物12に流れる電流Iを検出し、検出した電流Iに含まれるノイズ成分を検出する。そして、測定装置500は、検出したノイズ成分に基づいて当該ノイズ成分を減衰させるための打ち消し信号を生成し、生成した打ち消し信号を測定対象物12に流れる電流Iを検出する際に基準となる電流検出部24の基準電位とする。
【0152】
これにより、測定対象物12に流れる電流Iを検出する反転増幅回路を構成する演算増幅器60において、非反転入力端子60Cに入力される基準電位が打ち消し信号とされる。このため、測定する電流Iの通過経路に混入したノイズ成分は、基準電位との比較によって電流Iを検出する際に減衰される。
【0153】
ここで、ノイズ成分を減衰する打ち消し信号は、検出されたノイズ成分に基づいて生成されるので、検出されたノイズ成分の大きさに応じた打ち消し信号を生成することができる。このため、測定感度を変更する為の測定レンジの状態に関わらず、ノイズ成分を減衰するための打ち消し信号の大きさを定めることが可能となる。
【0154】
したがって、例えば選択された測定レンジにおいて当該測定レンジで測定可能な電流の上限値を超えるノイズ成分は除去することができない場合と比較して、測定可能な電流の上限値との関係に関わらず、ノイズ成分の除去が可能となる。
【0155】
また、第二実施形態における測定装置500は、信号生成部400は、打ち消し信号を求めるための仮信号をノイズ成分検出部40で判別した周波数に基づいて生成する。ノイズ成分検出部40は、仮信号を基準電位とした状態で測定対象物12に流れる電流Iに含まれた付与時ノイズ成分を検出する。信号生成部400は、ノイズ成分検出部40で検出されたノイズ成分及び付与時ノイズ成分に基づいて打ち消し信号を生成する。
【0156】
この構成によれば、例えば測定対象物12に直流の電圧V1を印加した状態で検出された電流Iから得られるノイズ成分のみに基づいて打ち消し信号を生成する場合と比較して、ノイズ成分の減衰効果を高めることが可能となる。
【0157】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0158】
例えば、電流検出部24は、測定レンジを切換える構成を備えたものでなくてもよく、単一のレンジで構成されたものであってもよい。
【0159】
また、測定装置10、500は、電圧検出部26及び電圧用A/D変換部30を省略しても上記実施形態の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0160】
10、500 測定装置
12 測定対象物
20 電圧印加部
24 電流検出部
32 演算制御部(演算部)
36 報知部
40 ノイズ成分検出部
42 重畳制御部
60 演算増幅器
60C 非反転入力端子
102 第二加算部(打ち消し信号付与部)
200 プロセッサ
400 信号生成部
410 接続線(打ち消し信号付与部)
A ノイズ成分
B 付与時ノイズ成分
C 打ち消し信号
I 電流
K 仮信号
V1 電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9