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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162372
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】電気機器
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/52 20200101AFI20241114BHJP
【FI】
G01R31/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077811
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100163315
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健二
(72)【発明者】
【氏名】大前 徳之
【テーマコード(参考)】
2G014
【Fターム(参考)】
2G014AA04
2G014AB01
2G014AB38
2G014AC18
2G014AC19
(57)【要約】
【課題】電気負荷に接続されたグランド線83が電気機器1の筐体5と導通するグランド地絡の発生を検出する。
【解決手段】電気機器の筐体に検出用電圧を印加した時の筐体の電位を検出して、検出用電圧を印加したことで筐体の電位が上昇するか否かを判断する。そして、筐体の電位が上昇する場合は、グランド線が筐体と導通した状態となるグランド地絡は発生していないと判断し、逆に、筐体の電位が上昇しない場合は、グランド地絡が発生したものと判断する。こうすれば、電気機器でグランド地絡の発生有無を容易に検出することが可能となる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力が供給されることによって動作する電気負荷と、前記電気負荷の動作を制御する制御部とが、筐体の内部に収容された電気機器において、
前記電気負荷には、前記電力を供給するための電線である電力線と、前記電力のグランド電位を示すための電線であるグランド線とが接続されており、
前記制御部は、
前記筐体に所定の検出用電圧が印加された状態と印加されない状態とに切り換える検出用電圧印加部と、
前記筐体の検出用電圧印加部の電位を検出する筐体電位検出部と、
前記筐体に前記検出用電圧が印加されることによって前記筐体の電位が上昇する場合は、前記グランド線と前記筐体とが導通するグランド地絡は発生していないと判断するが、前記検出用電圧が印加されても前記筐体の電位が上昇しない場合は、前記グランド地絡が発生したものと判断する地絡検出部と
を備える
ことを特徴とする電気機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電気機器において、
前記地絡検出部は、前記検出用電圧が印加された状態での前記筐体の電位が、前記グランド電位よりも所定の閾値電圧以上高い電位に上昇する場合は、前記グランド地絡は発生していないと判断するが、前記検出用電圧が印加された状態での前記筐体の電位が、前記グランド電位よりも所定の閾値電圧以上高い電位にならない場合は、前記グランド地絡が発生したものと判断する
ことを特徴とする電気機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電気機器において、
前記検出用電圧印加部は、
前記電気機器の運転開始時または運転終了時の少なくとも何れか一方で、前記検出用電圧が前記筐体に印加された状態に切り換えると共に、
前記地絡検出部で前記グランド地絡の発生有無が判断されると、前記検出用電圧が前記筐体に印加されない状態に切り換える
ことを特徴とする電気機器。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の電気機器において、
一端側が前記筐体に接続され、他端側が前記グランド電位に接続された検出抵抗を備え、
前記筐体電位検出部は、前記筐体に接続された側で前記検出抵抗の電位を検出しており、
前記検出抵抗の前記筐体に接続された側に、所定の点検用電圧が印加された状態と印加されない状態とに切り換える点検用電圧印加部と、
前記検出抵抗の前記筐体に接続された側に前記点検用電圧を印加することで、前記筐体電位検出部が検出する電位が上昇する場合は、前記地絡検出部で前記グランド地絡の発生有無を検出可能と判断するが、前記点検用電圧を印加しても、前記筐体電位検出部が検出する電位が上昇しない場合は、前記グランド地絡の発生有無を検出できない異常が発生したものと判断する異常判断部と
を備えることを特徴とする電気機器。
【請求項5】
請求項4に記載の電気機器において、
前記検出用電圧印加部は、
前記電気機器の運転開始時または運転終了時の少なくとも何れか一方で且つ前記点検用電圧が前記筐体に印加されていない状態の時に、前記検出用電圧が前記筐体に印加された状態に切り換えると共に、
前記地絡検出部で前記グランド地絡の発生有無が判断された後に、前記検出用電圧が前記筐体に印加されない状態に切り換え、
前記点検用電圧印加部は、
前記電気機器の運転開始時または運転終了時の少なくとも何れか一方で且つ前記検出用電圧が前記筐体に印加されていない状態の時に、前記検出抵抗の前記筐体に接続された側に前記点検用電圧が印加された状態に切り換えると共に、
前記異常判断部で前記異常の発生有無が判断された後に、前記点検用電圧が前記筐体電位検出部に印加されない状態に切り換える
ことを特徴とする電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力が供給されることによって動作する電気負荷と、電気負荷の動作を制御する制御部とが、筐体の内部に収容された電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器(例えば、給湯器や、ガスコンロ、ファンヒータなど)は、電気機器の外形形状を形成する筐体の内部に、電気負荷(例えば、モータや電磁弁などのアクチュエータや、各種のセンサや、ユーザによって操作される各種のスイッチなど)や、電気負荷の動作を制御する制御部などが収容された構造となっている。また、電気負荷は電力が供給されることによって動作しており、このため電気負荷には、電力を供給するための電線(以下、電力線)と、電力のグランド電位を示すための電線(以下、グランド線)とが接続されている。電力線やグランド線は絶縁性の被覆で覆われた状態となっている。
【0003】
ここで筐体は、部分的には樹脂材料などで形成される部分もあるが、基本的には板金などの導電性材料によって形成されている。このため、長期間に亘って電気機器を使用していると、電力線やグランド線を覆う被覆が破損して、内部の電線と筐体とが電気的に導通した状態となる「地絡」が発生することがある。あるいは、電気負荷に電力線やグランド線を接続する際に被覆が破損して地絡が発生することもある。更には、電気機器が熱機器である場合には、筐体に設けられた通気口にホコリが詰まる等して筐体の内部の温度が上昇し、電力線やグランド線の被覆が熔解あるいは破損することによって地絡が発生することもある。尚、以下では、電力線が筐体と導通する地絡を「電力地絡」と称し、グランド線が筐体と導通する地絡を「グランド地絡」と称する。
【0004】
電力地絡が発生すると、電気機器に異常な電流が流れたり、電気機器が誤動作したりする虞がある。そこで、電力地絡が発生したことを検出可能な地絡検出装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-179885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した提案されている地絡検出装置では、グランド地絡の発生は検出することができないという問題がある。グランド地絡が発生すると、制御部の入出力にノイズが侵入し易くなって、電気機器が誤動作し易くなってしまう。
【0007】
この発明は、従来の電気機器が有する上述した課題を解決するために成されたものであり、グランド地絡の発生を検出することが可能な電気機器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の電気機器は次の構成を採用した。すなわち、
電力が供給されることによって動作する電気負荷と、前記電気負荷の動作を制御する制御部とが、筐体の内部に収容された電気機器において、
前記電気負荷には、前記電力を供給するための電線である電力線と、前記電力のグランド電位を示すための電線であるグランド線とが接続されており、
前記制御部は、
前記筐体に所定の検出用電圧が印加された状態と印加されない状態とに切り換える検出用電圧印加部と、
前記筐体の検出用電圧印加部の電位を検出する筐体電位検出部と、
前記筐体に前記検出用電圧が印加されることによって前記筐体の電位が上昇する場合は、前記グランド線と前記筐体とが導通するグランド地絡は発生していないと判断するが、前記検出用電圧が印加されても前記筐体の電位が上昇しない場合は、前記グランド地絡が発生したものと判断する地絡検出部と
を備える
ことを特徴とする。
【0009】
このような本発明の電気機器では、筐体に所定の検出用電圧が印加された状態での筐体の電位と、印加されない状態での筐体の電位とを検出する。仮に、グランド地絡が発生していれば、グランド線と筐体とが導通状態となっているため、筐体に電圧を印加しても筐体の電位は上昇しない。逆に、筐体に電圧を印加することで筐体の電位が上昇するのであれば、グランド地絡は発生していないと考えてよい。そこで、筐体に検出用電圧を印加することによって筐体の電位が上昇する場合は、グランド地絡は発生していないと判断し、逆に、筐体の電位が上昇しない場合は、グランド地絡が発生したものと判断する。こうすれば、電気機器でグランド地絡の発生有無を容易に検出することが可能となる。
【0010】
また、上述した本発明の電気機器では、筐体に検出用電圧を印加した状態で、筐体の電位がグランド電位よりも所定の閾値電圧以上、高い電位になる場合は、グランド地絡は発生していないと判断し、逆に、検出用電圧を印加しても筐体の電位がグランド電位より所定の閾値電圧以上に高い電位にならない場合は、グランド地絡が発生したものと判断してもよい。
【0011】
こうすれば、予め閾値電圧を適切な電圧値に設定しておくことで、グランド地絡の発生有無を適切に検出することが可能となる。
【0012】
また、上述した本発明の電気機器では、電気機器の運転開始時または運転終了時の少なくとも何れか一方のタイミングで、筐体に検出用電圧を印加して筐体の電位を検出することによってグランド地絡の発生有無を検出し、グランド地絡の発生有無を判断したら、検出用電圧が筐体に印加されない状態に切り換えてもよい。
【0013】
電気機器の運転開始時にグランド地絡の発生有無を検出しておけば、グランド地絡が発生していることを知らないまま、電気機器を使用する事態を回避することができる。また、電気機器の運転終了時にグランド地絡の発生有無を検出しておけば、グランド地絡が発生していることを知らないまま、電気機器の運転を開始する事態を回避することができる。
【0014】
また、上述した本発明の電気機器では、検出抵抗の一端側を筐体に接続し、他端側をグランド電位に接続しておき、筐体に接続された側で検出抵抗の電位を検出することによって筐体の電位を検出してもよい。そして、検出抵抗の筐体に接続された側に所定の点検用電圧を印加可能としておき、点検用電圧を印加することで、検出される筐体の電位が上昇する場合はグランド地絡の発生有無を検出可能と判断するが、点検用電圧を印加しても、検出される筐体の電位が上昇しない場合は、グランド地絡の発生有無を検出できない異常が発生したものと判断してもよい。
【0015】
こうすれば、検出抵抗に点検用電圧を印加することによって、グランド地絡が発生したものと判断すべき状況を擬似的に発生させることができる。従って、擬似的に発生させた状況でグランド地絡の発生有無を検出しておけば、グランド地絡の発生有無を確実に検出することが可能となる。
【0016】
また、上述した本発明の電気機器では、電気機器の運転開始時または運転終了時の少なくとも何れか一方で、且つ点検用電圧が筐体に印加されていない状態の時には筐体に検出用電圧を印加して、グランド地絡の発生有無を判断した後は検出用電圧の印加を停止してもよい。更に、運転開始時または運転終了時の少なくとも何れか一方で、且つ検出用電圧が筐体に印加されていない状態の時には、検出抵抗の筐体に接続された側に、点検用電圧を印加して、グランド地絡の発生を検出できない異常の有無を判断した後は点検用電圧の印加を停止することとしてもよい。
【0017】
こうすれば、電気機器の運転開始時または運転終了時の何れか一方で、グランド地絡の発生有無を検出し、更に、電気機器の運転開始時または運転終了時の何れか他方では、グランド地絡の発生有無を検出可能であるか否かを点検することができる。このため、グランド地絡が発生した状態で、電気機器の運転が開始される事態を確実に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施例の給湯器1の全体構成を示す説明図である。
図2】本実施例の給湯器1に搭載されている制御ユニット100の内部を示した説明図である。
図3】地絡の発生有無を検出するために制御部110が備える機能を示した説明図である。
図4】は、本実施例の地絡検出回路110aが電力地絡の発生有無を検出する動作を示した説明図である。
図5】本実施例の地絡検出回路110aがグランド地絡の発生有無を検出する動作を示した説明図である。
図6】本実施例の地絡検出回路110aが正常に動作するか否かを点検する動作を示した説明図である。
図7】本実施例の給湯器1で行われる地絡検出処理の前半部分のフローチャートである。
図8】地絡検出処理の後半部分のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
A.装置構成 :
A-1.給湯器1の構成 :
図1は、給湯器1の全体構成を示す説明図である。給湯器1は、板金製で箱型形状に形成された筐体5の内部に、後述する各種のアクチュエータ類(電磁弁、流量制御弁など)や、センサ類などが搭載されており、筐体5の底面からは後述する各種の配管が延設された構造となっている。尚、筐体5は一部が樹脂部材などで形成されていてもよい。また、筐体5の表面には図示しない各種のスイッチ類が搭載されており、筐体5の内部には、各種のモータや電磁弁などの動作を制御する制御ユニット100が搭載されている。更に、制御ユニット100の内部には、給湯器1の動作を制御する制御部110と、各種のモータや電磁弁を動作させるための電力を生成する電源部120とが搭載されている。尚、本実施例の給湯器1は、本発明の「電気機器」に対応する。
【0020】
また、図1に例示した給湯器1は、上水を加熱して温水を給湯栓に供給する給湯運転を実行可能であると共に、各部屋に設置された暖房端末に温水を循環させて暖房を行う暖房運転を実行することも可能となっている。このため、筐体5の内部には、上水を加熱して温水を生成する機能を実現する部分(給湯加熱部10)と、暖房端末に循環させる温水を加熱する機能を実現する部分(暖房加熱部20)とが収容されている。
【0021】
給湯加熱部10は、燃料ガスを燃焼させる給湯バーナ11や、給湯バーナ11の上方に搭載された給湯顕熱交換器12や、給湯顕熱交換器12の上方に搭載された給湯潜熱交換器13などを有している。また、本実施例の給湯バーナ11は、小火力用の小バーナ11aと、大火力用の大バーナ11bとによって形成されている。給湯顕熱交換器12は、給湯バーナ11での燃料ガスの燃焼によって生じた燃焼排気から顕熱を回収し、給湯潜熱交換器13は、燃焼排気から潜熱を回収する。また、給湯バーナ11の下方には燃焼ファン14が搭載されており、給湯バーナ11に燃焼用空気を供給する。
【0022】
暖房加熱部20は、燃料ガスを燃焼させる暖房バーナ21や、暖房バーナ21の上方に搭載された顕熱回収用の暖房顕熱交換器22や、暖房顕熱交換器22の上方に搭載された潜熱回収用の暖房潜熱交換器23を有している。暖房バーナ21に供給される燃焼用空気は、燃焼ファン14から供給される。
【0023】
給湯バーナ11および暖房バーナ21にはガス通路30から燃料ガスが供給される。ガス通路30には、ガス通路30を開閉する元弁31と、ガス通路30を流れる燃料ガスの流量を調節する比例弁32とが設けられている。また、ガス通路30は、比例弁32の下流側で3つに分岐して、分岐した通路の1つは給湯バーナ11を形成する小バーナ11aに接続され、残りの2つの通路は給湯バーナ11の大バーナ11bと、暖房バーナ21とに接続されている。そして、給湯バーナ11の小バーナ11aに接続された通路の途中には通路を開閉する給湯電磁弁33aが搭載されており、大バーナ11bに接続された通路の途中には給湯電磁弁33bが搭載されており、暖房バーナ21に接続された通路の途中には通路を開閉する暖房電磁弁34が搭載されている。
【0024】
給湯器1に上水を供給する給水通路40は、給湯潜熱交換器13に接続されており、給水通路40から給湯潜熱交換器13に上水が供給されるようになっている。給水通路40の途中には、給湯潜熱交換器13に給水される上水の流量(給水流量)を制御する流量制御弁42や、給水流量を検知する流量センサ41が搭載されている。また、給湯潜熱交換器13の下流側は、給湯連絡通路43を介して給湯顕熱交換器12の上流側と接続されており、給湯顕熱交換器12の下流側には出湯通路44が接続されている。
【0025】
出湯通路44には給湯栓2が接続されており、給湯栓2を開栓すると給水通路40内の上水が給湯栓2から流出し、流出した分の上水が給水通路40から給湯潜熱交換器13に補充される。そして、給水通路40を流れる給水流量が所定の点火流量以上になると、給湯バーナ11の小バーナ11aで燃料ガスの燃焼が開始され、給水流量が増加すると給湯バーナ11の大バーナ11bでも燃焼が開始される。給水通路40を通じて給湯加熱部10に供給される上水は、給湯潜熱交換器13で予備加熱された後に給湯顕熱交換器12で加熱され、温水となって出湯通路44に流出する。出湯通路44には、給湯顕熱交換器12から流出した直後の温水の温度を検知する缶体温度センサ45が取り付けられている。
【0026】
また、本実施例の給湯器1の給水通路40は、流量制御弁42よりも下流側(給湯潜熱交換器13に近い側)の位置でバイパス通路46が分岐しており、バイパス通路46は、缶体温度センサ45よりも下流側(給湯栓2に近い側)の接続位置44aで出湯通路44に接続されている。このため、給水通路40から給湯加熱部10に供給される上水の一部を、バイパス通路46を介して出湯通路44に供給して、出湯通路44を流れる温水と混合させることが可能である。また、給水通路40からバイパス通路46が分岐する位置には、バイパス制御弁47が搭載されており、バイパス制御弁47の開度を制御することによって、上水と温水との混合比を変更することが可能となっている。更に、出湯通路44には、バイパス通路46の接続位置44aよりも下流側(給湯栓2に近い側)に出湯温度センサ48が搭載されており、バイパス通路46からの上水と、出湯通路44の温水とが混合した後の温水の温度(出湯温度)を検出することができる。
【0027】
また、出湯通路44からは、出湯温度センサ48よりも下流側の位置から湯張通路60が分岐しており、湯張通路60を介して図示しない浴槽に温水を供給することが可能となっている。湯張通路60には、湯張通路60を開閉する湯張電磁弁61や、浴槽側からの温水の逆流を阻止する逆止弁62や、湯張通路60を流れる温水の流量を検知する湯張水量センサ63が搭載されている。
【0028】
以上では、給湯器1の給湯加熱部10で生成された温水が給湯栓2や図示しない浴槽に供給される経路について説明した。一方、給湯器1の暖房加熱部20で加熱された温水は、各部屋の暖房に使用される。このことに対応して、暖房加熱部20の暖房顕熱交換器22の下流側には暖房往通路70が接続されており、暖房顕熱交換器22で加熱された温水は、暖房往通路70を介して、図示しない暖房端末(床暖房パネルなど)に供給されるようになっている。暖房端末に供給された温水は放熱することによって温度が低下した後、暖房戻通路71を通って暖房潜熱交換器23に還流する。また、暖房潜熱交換器23の下流側と、暖房顕熱交換器22の上流側とは暖房連絡通路72によって接続されており、暖房連絡通路72の途中には、温水を貯留するシスターン73や、暖房ポンプ74が設けられている。
【0029】
暖房戻通路71を通って暖房潜熱交換器23に戻された温水は、暖房潜熱交換器23で潜熱を回収することによって加熱された後、シスターン73に流入する。そして、暖房ポンプ74によって暖房顕熱交換器22に供給され、暖房顕熱交換器22で更に加熱された後に暖房往通路70を介して再び暖房端末に供給される。また、暖房往通路70には、暖房端末に供給される温水の温度を検知する暖房高温度センサ76が搭載されている。更に、暖房ポンプ74と暖房顕熱交換器22との間の暖房連絡通路72には、暖房ポンプ74から暖房顕熱交換器22に供給される温水の温度を検出する暖房低温度センサ75が搭載されている。
【0030】
制御ユニット100の制御部110には、マイクロコンピュータMCが内蔵されており、給湯器1を動作させるための各種の制御が実行される。また、制御ユニット100の電源部120は電源ケーブル130を介して商用電源に接続されており、商用電源から受け取った電力を直流に変換することによって、マイクロコンピュータMCなどを動作させるための電力を生成する。また、各種のアクチュエータ類(燃焼ファン14や、元弁31、比例弁32、給湯電磁弁33a,33b,34、流量制御弁42、バイパス制御弁47、湯張電磁弁61、暖房ポンプ74など)や、各種のセンサ類(流量センサ41や、缶体温度センサ45、出湯温度センサ48、湯張水量センサ63、暖房低温度センサ75、暖房高温度センサ76など)や、図示しないスイッチ類を動作させるためにも電力が必要となる。
【0031】
そこで電源部120は、商用電源から受け取った電力を直流に変換することによって、これらのアクチュエータ類や、センサ類や、スイッチ類を動作させるための電力も生成する。そして、生成した電力を、電力線およびグランド線を介してアクチュエータ類や、センサ類や、スイッチ類のそれぞれに供給する。電力線およびグランド線は、絶縁性の被覆膜で覆われており、電気信号を送信するための電線(以下、信号線)などと共に電源ハーネス80として纏められている。信号線も絶縁性の被覆膜で覆われている。尚、マイクロコンピュータMCなどを動作させるためにも電力を供給する必要があるが、各種アクチュエータ類および各種センサ類、スイッチ類などに供給する電力の電圧は、マイクロコンピュータMCなどに供給する電力の電圧と同じ電圧としてもよく、更には、同じ電源部120で生成してもよい。尚、本実施例では、アクチュエータ類や、センサ類や、スイッチ類が本発明における「電気負荷」に対応する。
【0032】
ここで給湯器1は、図1に示したように筐体5の内部に多数の部品(例えば、給湯バーナ11や、給湯顕熱交換器12、流量センサ41、シスターン73など)が搭載されており、更には、各種の配管(例えば、ガス通路30や、給水通路40、出湯通路44など)も配設されている。このため電源ハーネス80は、これらの部品や配管などに干渉することを避けるため、出来るだけ筐体5の内壁に沿わせた状態で配設される。その結果、給湯器1を使用していると、電源ハーネス80として纏めた電力線やグランド線の被覆が破損して、被覆内部の電力線やグランド線が筐体5と導通する状態となる「地絡状態」が発生することがある。地絡状態が発生すると、給湯器1が正常に動作しなくなる虞があるため、専用回路を設けることによって、地絡状態の発生を検出する技術が知られている。
【0033】
しかし、この従来の技術では、電源ハーネス80内の電力線が筐体5と導通する地絡状態(電力地絡)は検出することができるが、電源ハーネス80内のグランド線が筐体5と導通する地絡状態(グランド地絡)は検出することができなかった。グランド地絡が発生した場合も、電力地絡の場合と同様に給湯器1が正常に動作しなくなる虞があるため、グランド地絡の発生も検出することが望ましい。これに対して本実施例の給湯器1では、制御ユニット100内に以下のような地絡検出回路が組み込まれており、電力地絡だけでなくグランド地絡も検出することが可能となっている。
【0034】
A-2. 制御ユニット100の構成 :
図2は、本実施例の給湯器1に搭載されている制御ユニット100の内部を示した説明図である。制御ユニット100は、主に板金によって形成されたユニットケース100aの内部に収容された図示しない回路基板の上に、制御部110や電源部120が搭載された構造となっている。
【0035】
電源部120には、トランスや整流回路などが搭載されており、電圧値が12Vの電力や、電圧値が5Vの電力を生成する。電源部120が搭載された図示しない回路基板上には、12Vの電力や5Vの電力を配電するための電源通路が形成されており、電源部120で生成された12Vの電力および5Vの電力は、それぞれの電源通路を介して、回路基板上の様々な箇所に配電される。尚、電圧値が12Vの電力は、前述したアクチュエータ類(元弁31や比例弁32や給湯電磁弁33a,33bなど)を動作させるために使用され、電圧値が5Vの電力は、前述したセンサ類(流量センサ41や缶体温度センサ45や出湯温度センサ48など)や、図示しないスイッチ類などを動作させるために使用される。
【0036】
また、電源部120からは、12Vや5Vの電圧値の基準となる0Vの電位(グランド電位)も出力されており、グランド電位も、回路基板上に形成されたグランド通路を介して回路基板上の様々な箇所に供給される。図2中で矩形の中に「12V」と表示した記号は、回路基板上に形成された12Vの電源通路を表しており、矩形の中に「5V」と表示した記号は5Vの電源通路を表している。また、トラック形状の枠の中に「GND」と表示した記号は、回路基板上に形成されたグランド通路を表している。
【0037】
また、本実施例では、制御部110が電源部120と同じ回路基板上に搭載されている。このため、制御部110には回路基板上に形成された12Vおよび5Vの電源通路やグランド通路を介して電力やグランド電位が供給される。これに対して、前述したアクチュエータ類(元弁31や比例弁32など)や、センサ類(流量センサ41や缶体温度センサ45など)や、スイッチ類は、制御ユニット100の外部に搭載されている。このため、アクチュエータ類やセンサ類やスイッチ類などには、電源ハーネス80を介して電力が供給される。例えば、図2に示した電源ハーネス80aは、12Vの電力を供給する電線(以下、電力線82)や、0Vのグランド電位を示す電線(以下、グランド線83)や、電気信号を送信するための信号線84を含む複数本の電線がまとめられて、両端にコネクタ81が取り付けられた形状となっている。また、電力線82やグランド線83や信号線84は、それぞれが絶縁性の被覆で覆われている。そして、一端側のコネクタ81をユニットケース100aに接続すると、電源ハーネス80a内の電力線82が回路基板上に形成された12Vの電源通路と導通し、電源ハーネス80a内のグランド線83が回路基板上のグランド通路と導通する。このため、電源ハーネス80aの図示しない他端側のコネクタを、元弁31や給湯電磁弁33a,33bなどの電磁弁に接続することで、12Vの電力を供給することができる。
【0038】
また、図2に示した電源ハーネス80bは、5Vの電力を供給する電力線82やグランド線83や信号線84を含む複数本の電線がまとめられて、両端にコネクタ81が取り付けられた形状となっており、電力線82やグランド線83や信号線84は、それぞれが絶縁性の被覆で覆われている。そして、一端側のコネクタ81をユニットケース100aに接続すると、電源ハーネス80b内の電力線82が回路基板上に形成された5Vの電源通路と導通し、電源ハーネス80b内のグランド線83が回路基板上のグランド通路と導通する。このため、一端側のコネクタ81をユニットケース100aに接続し、他端側の図示しないコネクタを流量センサ41や、缶体温度センサ45、出湯温度センサ48などのセンサ類に接続することで、5Vの電力を供給することができる。
【0039】
更に、図2に示した電源ハーネス80cは、12Vの電力線82およびグランド線83や、信号線84に加えて、5Vの電力線82を含む複数本の電線がまとめられて、両端にコネクタ81が取り付けられた形状となっている。尚、図2では、電力線82については12V用および5V用のそれぞれに設けられているのに対して、グランド線83は12V用および5V用が共用されているものとして表示している。しかし、グランド線83についても、12V用および5V用のそれぞれに設けておいてもよい。また、これらの電力線82やグランド線83や信号線84も、それぞれ絶縁性の被覆で覆われている。そして、一端側のコネクタ81をユニットケース100aに接続し、他端側の図示しないコネクタを比例弁32や流量制御弁42などに接続することで、12Vの電力および5Vの電力を供給することができる。尚、電源ハーネス80cの他端側は、電源ハーネスの途中から分岐して各種電気負荷に応じてそれぞれ個別にコネクタを設けて接続してもよい。
【0040】
尚、図2では、電源ハーネス80aや、電源ハーネス80bや、電源ハーネス80cが1本ずつしか表示されていないが、給湯器1には複数のアクチュエータ類やセンサ類やスイッチ類が搭載されており、各々のアクチュエータ類やセンサ類やスイッチ類に対して、対応する何れかの電源ハーネス80a,80b,80cを接続する必要がある。従って、ユニットケース100aには複数本の電源ハーネス80a,80b,80cが接続されており、ユニットケース100aから各々のアクチュエータ類やセンサ類やスイッチ類に対して複数本の電源ハーネス80が接続されている。また、図2では、電力線82やグランド線83や信号線84が電源ハーネス80として纏められているものとして説明しているが、電力線82やグランド線83や信号線84は、必ずしも電源ハーネス80として纏められていなくても構わない。
【0041】
また、制御部110には、給湯器1の動作を制御するためのマイクロコンピュータMCや、複数の小さな電気部品(抵抗やトランジスタなど)が搭載されているが、本実施例の制御部110には、地絡状態を検出するための地絡検出回路110aも搭載されている。尚、図2では、図面が見にくくなることを避けるため、地絡検出回路110aに対応する部分のみを表示し、その他の部分の図示が省略されている。
【0042】
本実施例の地絡検出回路110aは、大まかに分けると、電力地絡(電源ハーネス80中の電力線82が筐体5と導通する地絡状態)の発生有無を検出するための回路と、グランド地絡(電源ハーネス80中のグランド線83が筐体5と導通する地絡状態)の発生有無を検出するための回路と、地絡検出回路110aが正常に動作するか否かを点検するための回路とを備えている。
【0043】
電力地絡の発生有無を検出するための回路は、地絡検出抵抗R1と、2つの分圧抵抗R2,R3と、2つのノイズフィルタNF1,Nf2と、バッファBFなどによって形成されている。地絡検出抵抗R1の一端側はノイズフィルタNF1を介して筐体5に接続されており、地絡検出抵抗R1の他端側は回路基板のグランド通路に接続されている。また、筐体5は、太い銅線で形成されたアース線101を介して大地に接続されている。更に、2つの分圧抵抗R2,R3は直列に接続されており、それらが地絡検出抵抗R1に対して並列に接続されている。そして、分圧抵抗R2と分圧抵抗R3との間の電圧が、ノイズフィルタNF2およびバッファBFを介してマイクロコンピュータMCに入力されている。尚、本実施例の地絡検出抵抗R1は、本発明における「検出抵抗」に対応する。また、図2に示した地絡検出回路110aでは、分圧抵抗R2と分圧抵抗R3との間から電線が引き出されて、ダイオードTDを介して5Vの電源通路に接続されている。これは、5Vを超える電圧がマイクロコンピュータMCに入力されないように保護するためである。電力地絡の発生有無を検出する動作については後述する。
【0044】
グランド地絡の発生有無を検出するための回路は、上述した電力地絡を検出するための回路に、スイッチSW1や保護抵抗R4を追加した回路となっている。スイッチSW1は3つの端子を備えたトランジスタである。トランジスタの1つの端子はマイクロコンピュータMCに接続されており、マイクロコンピュータMCからの出力OUT1に応じて、残りの2つの端子が導通した状態(ON状態)と、切断した状態(OFF状態)とに切り換わる。また、ON状態とOFF状態とに切り換わる2つの端子の一方は、保護抵抗R4を介して12Vの電源通路に接続され、他方の端子は筐体5に接続されている。グランド地絡の発生有無を検出する動作については後述する。
【0045】
地絡検出回路110aが正常に動作するか否かを点検するための回路は、上述した電力地絡を検出するための回路に、スイッチSW2や保護抵抗R5を追加した回路となっている。スイッチSW2も3つの端子を備えたトランジスタである。トランジスタの1つの端子はマイクロコンピュータMCに接続されており、マイクロコンピュータMCからの出力OUT2に応じて、残りの2つの端子が導通した状態(ON状態)と、切断した状態(OFF状態)とに切り換わる。ON状態とOFF状態とに切り換わる2つの端子の一方は、保護抵抗R5を介して12Vの電源通路に接続されており、他方の端子は、地絡検出抵抗R1に接続されている。地絡検出回路110aが正常か否かを点検する動作については後述する。尚、本実施例ではスイッチSW1やスイッチSW2にはトランジスタを使用しているが、これに限らずFET(電界効果トランジスタ)などの半導体素子を使用してもよいし、リレーなどの機械式接点を用いてもよい。
【0046】
また、制御部110が地絡状態を検出する機能に着目すると、図3に示すように制御部110は、検出用電圧印加部111と、筐体電位検出部112と、地絡検出部113と、点検用電圧印加部114と、異常判断部115とを有すると考えることができる。尚、これらの「部」は、地絡状態を検出する目的で制御部110が備える機能を表した抽象的な概念であり、制御部110の内部がこれらの「部」に区分されていることや、これらの「部」に対応する部品などが制御部110の内部に搭載されていることを示すわけではない。これらの「部」は、制御部110に内蔵されたマイクロコンピュータで実行されるソフトウェアプログラムとして実現することもできるし、制御部110に搭載されたLSIやICなどによるハードウェアとして実現することもできる。更には、ソフトウェアプログラムとハードウェアとを組み合わせることによって実現しても良い。
【0047】
検出用電圧印加部111は、筐体5に地絡検出用の電圧(検出用電圧)が印加された状態と、印加されない状態とを切り換える機能を有しており、図2のマイクロコンピュータMCやスイッチSW1によって主に実現される。尚、本実施例の検出用電圧の電圧値は12Vとなっているが、5Vであってもよい。
【0048】
筐体電位検出部112は、筐体5の電位を検出する機能を有しており、図2ではマイクロコンピュータMCや、地絡検出抵抗R1や、分圧抵抗R2,R3や、ノイズフィルタNF1,NF2や、バッファBFや、これらを接続する配線によって主に実現されている。尚、本実施例では、筐体5の電位を地絡検出抵抗R1で確定し、マイクロコンピュータMCが読み込み可能となるように2つの分圧抵抗R2,R3で分圧した後の電位を検出することで、間接的に筐体5の電位を検出しているが、分圧しない電位(分圧抵抗R2の上流側の電位)を検出してもよい。
【0049】
地絡検出部113は、筐体電位検出部112で検出した電位に基づいて、電力地絡あるいはグランド地絡を検出する機能を有しており、図2ではマイクロコンピュータMCによって主に実現されている。
【0050】
点検用電圧印加部114は、検出用電圧印加部111が正常に動作するか否かを点検するための電圧(点検用電圧)を、地絡検出抵抗R1に印加した状態と、印加しない状態とに切り換える機能を有している。本実施例の点検用電圧印加部114は、図2のマイクロコンピュータMCやスイッチSW2によって主に実現されている。尚、本実施例の点検用電圧の電圧値は12Vとなっているが、5Vであってもよい。
【0051】
異常判断部115は、点検用電圧印加部114で地絡検出抵抗R1に点検用電圧を印加した状態で、筐体電位検出部112によって検出された電位に基づいて、検出用電圧印加部111が正常に動作するか否かを点検する機能を有している。本実施例の異常判断部115は、図2のマイクロコンピュータMCによって主に実現されている。
【0052】
B.地絡検出動作 :
B-1.電力地絡検出動作 :
図4は、電力地絡が発生している場合に、本実施例の制御部110内に搭載された地絡検出回路110aが電力地絡の発生有無を検出する動作を示した説明図である。図面を見易くするために、図4では、電力地絡の発生有無を検出する動作と無関係な部分は、細い破線で表示されている。電力地絡が発生すると、電源ハーネス80中の12Vあるいは5Vの電力線82が筐体5と導通する結果、筐体5の電位が12Vあるいは5Vの高電位状態となる。図4中で筐体5が太い実線で表示されているのは、筐体5が高電位状態となっていることを表している。ここで、図2を用いて前述したように、筐体5はアース線101で大地に接続されている。それにも拘らず、電力地絡が発生すると筐体5が高電位状態となるのは、次のような理由による。
【0053】
仮に、電源部120が大地の電位(以下、アース電位と称する)を知り得ない状態で商用電源に接続すると、電源部120は、成り行きで決まるグランド電位を0Vとして、12Vや5Vの電圧を生成する。また、電源部120と制御部110とはグランド通路で接続されているのでグランド電位を共用しており、その状態で、電源部120で生成された12Vあるいは5Vの電圧が制御部110に供給される。この場合のグランド電位は、アース電位とは一致していない。
【0054】
次に、図2に示した回路図では、ノイズフィルタNF1の一端側は筐体5に接続されており、他端側は地絡検出抵抗R1を介してグランド通路に接続されている。更に、筐体5はアース線101によって大地に接続されている。従って、グランド通路の電位(グランド電位)は筐体5の電位(アース電位)と一致している。このため、電源部120に商用電源を接続すると、電源部120はアース電位をグランド電位として、12Vあるいは5Vの電圧を生成する。このように、電源部120のグランド電位(0V)は、必ずしもアース電位と一致しているとは限らず、アース電位とは異なる電位を取り得るものとなっている。
【0055】
ここで、例えば12Vの電力線82が筐体5と導通して電力地絡が発生したとする。すると、電力線82内から流出した電流が筐体5を伝わって、ノイズフィルタNF1および地絡検出抵抗R1を経由して、グランド通路に流入する。従って、筐体5よりもグランド通路の電位の方が低くなる。更に、筐体5はアース線101で大地に接続されているため、アース電位となっているから、アース電位から見てグランド通路の電位(グランド電位)はマイナスの電位となる。実際には、電源部120はグランド電位を基準として12V(または5V)の電圧を発生させるから、アース電位から見たグランド電位は、-12Vとなる。そして、このグランド電位は、グランド通路によって制御部110でも共用されている。すなわち、電力地絡が発生すると、12Vの電力線82で発生した場合は12Vだけ、5Vの電力線82で発生した場合は5Vだけ、グランド通路の電位(グランド電位)がマイナス側にシフトすることになる。そして、マイクロコンピュータMCは、マイナス側にシフトしたグランド電位を基準の電圧(すなわち0V)として筐体5の電位を検出するので、筐体5が高電位状態にあると検出するのである。
【0056】
このように筐体5が高電位状態になると、地絡検出抵抗R1の一端側も高電位状態となり、その一方で地絡検出抵抗R1の他端側はグランド通路に接続されているので、地絡検出抵抗R1には電流が流れるようになる。図4中で地絡検出抵抗R1の他端側の配線が細い実線で表示されているのは、この部分の電位がグランド電位(0V)であることを表している。また、地絡検出抵抗R1の一端側に掛かる電圧は、2つの分圧抵抗R2,R3で分圧された状態でマイクロコンピュータMCに入力される。
【0057】
これに対して、電力地絡が発生していない場合は、筐体5の電位はグランド電位(0V)のままなので、地絡検出抵抗R1の両端に電位差が発生することはなく、マイクロコンピュータMCで検出される電圧も0Vのままとなっている。従って、マイクロコンピュータMCは、検出した電圧が0Vであれば電力地絡は発生していないが、検出した電圧が所定の閾値電圧以上に高くなった場合は、電力地絡が発生したものと判断することができる。尚、所定の閾値電圧は、高電位状態に対応する電圧値(本実施例では12Vまたは5V)や、分圧抵抗R2と分圧抵抗R3との比率に応じて、適切な値に設定しておく。
【0058】
B-2.グランド地絡検出動作 :
上述したように電力地絡が発生したか否かの判断は、電源ハーネス80内の電力線82が筐体5と導通して、筐体5が高電位状態となったことを検出することによって行っている。しかし、電源ハーネス80中のグランド線83が筐体5と導通するグランド地絡が発生しても、筐体5の電位はグランド電位(0V)のままなので、グランド地絡が発生したか否かを判断することはできない。そこで、本実施例の地絡検出回路110aでは、図4を用いて前述した電力地絡を検出するための回路に対して、スイッチSW1および保護抵抗R4を追加することで、グランド地絡の発生有無が検出可能となっている。
【0059】
図5は、グランド地絡が発生している場合に、本実施例の地絡検出回路110aがグランド地絡の発生有無を検出する動作を示した説明図である。図面を見易くするために、図5でも、グランド地絡の発生有無を検出する動作と無関係な部分は、細い破線で表示されている。グランド地絡の発生有無を検出するためには、図5(a)に示すように、スイッチSW1をOFFにした状態でマイクロコンピュータMCに入力される電圧を検出しておく。電力地絡が発生していなければ、筐体5はグランド電位(0V)になっている。このため、マイクロコンピュータMCで検出される電圧も0Vのままとなる。図5(a)中で筐体5が細い実線で表示されているのは、筐体5がグランド電位であることを表している。もっとも、グランド地絡が発生している場合も筐体5はグランド電位(0V)になっているので、この状態では、グランド地絡が発生しているか否かは分からない。そこで、スイッチSW1をON状態に切り換える。
【0060】
図5(b)には、スイッチSW1をONに切り換えた状態が示されている。スイッチSW1がONになると、スイッチSW1を介して12Vの電圧が筐体5に印加されるので、マイクロコンピュータMCで検出される電圧が上昇する筈である。しかし、グランド地絡が発生していると、筐体5が電源ハーネス80中のグランド線83と導通した状態となっているため、スイッチSW1をONにしても地絡検出抵抗R1を通らず、マイクロコンピュータMCで検出される電圧が上昇することはない。このことから、スイッチSW1をON状態とした時に、マイクロコンピュータMCで検出される電圧が所定の閾値電圧以上に上昇する場合は、グランド地絡は発生していないが、所定の閾値電圧以上に上昇しない場合は、グランド地絡が発生していると判断することができる。
【0061】
B-3.地絡検出回路110aの点検動作 :
上述したように本実施例の地絡検出回路110aでは、スイッチSW1をOFFにした状態で、マイクロコンピュータMCが検出した筐体5の電圧が所定の閾値電圧以上であれば、電力地絡が発生しているものと判断する。また、スイッチSW1をONにした時に、マイクロコンピュータMCが検出した筐体5の電圧が所定の閾値電圧以上に上昇しなかった場合は、グランド地絡が発生しているものと判断する。しかし、マイクロコンピュータMCが筐体5の電圧を検出するための経路(すなわち、ノイズフィルタNF1と地絡検出抵抗R1との間の位置からマイクロコンピュータMCまでの経路)の一部が断線していたり、グランド通路と短絡したりしていると、筐体5の電圧を検出することができなくなり、電力地絡やグランド地絡の発生有無を検出することができなくなる。そこで、本実施例の地絡検出回路110aでは、図5を用いて前述した電力地絡およびグランド地絡の発生有無を検出するための回路に対して、点検用のスイッチSW2および保護抵抗R5が追加されている。
【0062】
図6は、本実施例の地絡検出回路110aが正常に動作するか否かを点検する動作を示した説明図である。尚、図6でも、地絡検出回路110a中で、点検動作と無関係な部分は、細い破線で表示されている。地絡検出回路110aが正常に動作するか否かを点検するためには、マイクロコンピュータMCの出力OUT2からスイッチSW2に信号を出力することによって、スイッチSW2をON状態に切り換える。すると、12Vの電圧がスイッチSW2を介して地絡検出抵抗R1に印加されるようになる。
【0063】
尚、図4図5を用いて前述したように、電力地絡やグランド地絡の発生有無を検出する場合は、筐体5が高電位状態となったことで、間接的に、地絡検出抵抗R1に掛かる電圧が上昇することを検出している。これに対して、図6では直接、地絡検出抵抗R1に高電位(ここでは12V)の電圧を印加していることになる。そして、地絡検出回路110aが正常に動作していれば、マイクロコンピュータMCで検出される電圧が上昇する筈である。これに対して、地絡検出抵抗R1に高電位(ここでは12V)の電圧を印加しているにも拘らず、マイクロコンピュータMCで検出される電圧がグランド電位から上昇しない場合は、地絡検出抵抗R1に係る電圧を検出するための回路の何処かで、断線が生じているか、グランド通路と短絡していると考えてよい。
【0064】
このことから、点検用のスイッチSW2をON状態に切り換えた時に、図6(a)に示すように、マイクロコンピュータMCで検出される電圧が所定の閾値電圧以上に上昇すれば、地絡検出回路110aが正常に動作しているものと判断することができる。これに対して、図6(b)に示すように、点検用のスイッチSW2をON状態に切り換えてもマイクロコンピュータMCで検出される電圧がグランド電位(0V)のままの場合は、地絡検出回路110aが正常に動作していないと判断することができる。
【0065】
C.地絡検出処理 :
図7および図8は、本実施例の給湯器1で行われる地絡検出処理のフローチャートである。この処理は、制御部110に搭載されたマイクロコンピュータMCによって実行される。
【0066】
地絡検出処理では、先ず始めに、給湯器1の運転を開始するか否かを判断する(STEP10)。そして、運転を開始しない場合は(STEP10:no)、同じ判断を繰り返すことによって待機状態となるが、運転を開始すると判断すると(STEP10:yes)、スイッチSW1をONにする(STEP11)。続いて、図5を用いて前述したように、マイクロコンピュータMCに入力される電圧値を検出する(STEP12)。
【0067】
続いて、グランド地絡が発生しているか否かを判断する(STEP13)。図5を用いて前述したように、グランド地絡が発生していなければ、スイッチSW1をONにすることによって、マイクロコンピュータMCで検出される電圧は所定の閾値電圧より高くなるが、グランド地絡が発生していれば、スイッチSW1をONにしても、マイクロコンピュータMCで検出される電圧が閾値電圧を超えることはない。その結果、グランド地絡が発生していると判断した場合は(STEP13:yes)、スイッチSW1をOFFにして(STEP15)、グランド地絡の発生を報知した後(STEP16)、給湯器1の運転を終了する(図8のSTEP26)。
【0068】
これに対して、グランド地絡が発生していないと判断した場合は(STEP13:no)、スイッチSW1をOFFにした後(STEP17)、今度は電力地絡の発生有無を検出するために、マイクロコンピュータMCに入力される電圧値を検出する(STEP18)。検出した電圧値が所定の閾値電圧を超えていれば、電力地絡が発生していると判断して(STEP19:yes)、電力地絡の発生を報知した後(STEP20)、給湯器1の運転を終了する(図8のSTEP26)。
【0069】
これに対して、マイクロコンピュータMCで検出した電圧値が所定の閾値電圧を超えていない場合は、電力地絡は発生していないと判断する(STEP19:no)。そして、この場合は、グランド地絡および電力地絡の何れも発生していないことになるので、給湯器1を正常に運転することができる。続いて、給湯器1の運転を終了するか否かを判断し(STEP21)、運転を終了しない場合は(STEP21:no)、STEP18に戻って、再び、マイクロコンピュータMCに入力される電圧値を検出する(STEP18)。そして、電力地絡が発生しているか否かを判断して(STEP19)、電力地絡が発生している場合は(STEP19:yes)、電力地絡の発生を報知して(STEP20)、給湯器1の運転を終了するが(図8のSTEP26)、電力地絡が発生していない場合は(STEP19:no)、上述したSTEP17~STEP19の動作を繰り返す。
【0070】
また、このような処理を繰り返している間に、給湯器1の運転を終了すると判断した場合は(STEP21:yes)、実際に給湯器1の運転を終了する前に、以下のようにして、地絡検出回路110a(図2参照)が正常に動作していることを確認する。先ず、スイッチSW2をONにする(STEP22)。図6を用いて前述したように本実施例の制御部110は、スイッチSW2をONにすることによって、地絡検出回路110aが正常に動作しているか否かを判断することが可能となっている。
【0071】
そして、マイクロコンピュータMCに入力される電圧を検出する(STEP23)。図6を用いて前述したように、スイッチSW2をONにすると、地絡検出抵抗R1に高電位の電圧(本実施例では12V)が掛かるので、地絡検出抵抗R1の上流側からマイクロコンピュータMCまでの経路上で断線やグランド通路との短絡などが発生していなければ、マイクロコンピュータMCが検出する電圧値は上昇する。逆に、マイクロコンピュータMCが検出する電圧値が上昇しない場合は、断線や短絡などの異常が発生して地絡検出回路110aが正常に動作していないと考えられる。そこで、マイクロコンピュータMCで検出した電圧値と所定の閾値電圧とを比較することによって、地絡検出回路110aが正常に動作しているか否かを判断する(STEP24)。
【0072】
その結果、検出した電圧値が閾値電圧以上であった場合は、地絡検出抵抗R1に係る電圧をマイクロコンピュータMCが正しく検出しており、地絡検出回路110aは正常に動作しているものと判断する(STEP24:yes)。そして、この場合は、スイッチSW2をOFFにした後(STEP25)、給湯器1の運転を終了する(STEP26)。これに対して、検出した電圧値が閾値電圧以下であった場合は、マイクロコンピュータMCは地絡検出抵抗R1に係る電圧を正しく検出できておらず、地絡検出回路110aでは何らかの異常が発生していると判断する(STEP24:no)。そして、この場合は、スイッチSW2をOFFにした後(STEP27)、地絡検出回路110aで異常が発生している旨を報知する(STEP28)。その後、給湯器1の運転を終了して(STEP26)、地絡検出処理を終了する。
【0073】
以上に詳しく説明したように、本実施例の給湯器1では、電源ハーネス中の電力線が筐体と導通する電力地絡の発生有無だけでなく、電源ハーネス中のグランド線が筐体と導通するグランド地絡の発生有無も検出することができる。このため、電力地絡やグランド地絡が発生して電気機器が誤動作する事態を防止することが可能となる。加えて、電力地絡やグランド地絡の発生を検出できない故障となっているか否かを点検することもできるので、電力地絡やグランド地絡が発生したことを確実に検出することが可能となる。
【0074】
尚、上述した地絡検出処理では、給湯器1の運転開始時にグランド地絡の発生有無を検出し、給湯器1の運転中には電力地絡の発生有無を検出し、給湯器1の運転終了時には地絡検出回路での異常の発生有無を検出するものとして説明した。しかし、給湯器1の運転開始時に地絡検出回路での異常の発生有無を検出し、給湯器1の運転終了時にはグランド地絡の発生有無を検出してもよい。あるいは、グランド地絡の発生有無と、地絡検出回路での異常の発生有無とを、給湯器1の運転開始時または運転終了時に続けて検出してもよく、更には、運転開始時および運転終了時の両方で、グランド地絡の発生有無および地絡検出回路での異常の発生有無を続けて検出してもよい。
【0075】
また、上述した本実施例では、スイッチSW1およびスイッチSW2は、マイクロコンピュータMCから制御されることによって、ON状態またはOFF状態に切り換わるものとして説明した。しかし、手動によって、ON状態またはOFF状態に切り換えるようにしても構わない。
【0076】
また、上述した本実施例では、地絡検出抵抗R1の一端側はノイズフィルタNF1を介して筐体5に接続されているものとして説明した。しかし、筐体5と地絡検出抵抗R1の一端側とが正常時において同電位であれば、必ずしも地絡検出抵抗R1の一端側がノイズフィルタNF1を介して筐体5に接続されていなくてもよい。例えば、ユニットケース100aの内部の回路基板内にアース線を配線して引き込み接続してもよい。更には、筐体5はアース線を介して大地に接続されていなくてもよい。
【0077】
以上、本実施例の給湯器1について説明したが、本発明は上記の実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1…給湯器、 2…給湯栓、 5…筐体、 10…給湯加熱部、
11…給湯バーナ、 11a…小バーナ、 11b…大バーナ、
12…給湯顕熱交換器、 13…給湯潜熱交換器、 14…燃焼ファン、
20…暖房加熱部、 21…暖房バーナ、 22…暖房顕熱交換器、
23…暖房潜熱交換器、 30…ガス通路、 31…元弁、 32…比例弁、
33a,33b…給湯電磁弁、 34…暖房電磁弁、 40…給水通路、
41…流量センサ、 42…流量制御弁、 43…給湯連絡通路、
44…出湯通路、 44a…接続位置、 45…缶体温度センサ、
46…バイパス通路、 47…バイパス制御弁、 48…出湯温度センサ、
60…湯張通路、 61…湯張電磁弁、 62…逆止弁、
63…湯張水量センサ、 70…暖房往通路、 71…暖房戻通路、
72…暖房連絡通路、 73…シスターン、 74…暖房ポンプ、
75…暖房低温度センサ、 76…暖房高温度センサ、 80…電源ハーネス、
80a~80c…電源ハーネス、 81…コネクタ、 82…電力線、
83…グランド線、 84…信号線、 100…制御ユニット、
100a…ユニットケース、 101…アース線、 110…制御部、
110a…地絡検出回路、 111…検出用電圧印加部、
112…筐体電位検出部、 113…地絡検出部、
114…点検用電圧印加部、 115…異常判断部、 120…電源部、
130…電源ケーブル、 R1…地絡検出抵抗、 R2,R3…分圧抵抗、
R4,R5…保護抵抗、 MC…マイクロコンピュータ、
NF1,NF2…ノイズフィルタ、 SW1,SW2…スイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8