(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162378
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】地山改良材の注入システム
(51)【国際特許分類】
E21D 9/04 20060101AFI20241114BHJP
E21D 9/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
E21D9/04 F
E21D9/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077820
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】591140813
【氏名又は名称】株式会社カテックス
(71)【出願人】
【識別番号】515217454
【氏名又は名称】ジオマシンエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】永田 潤一
(72)【発明者】
【氏名】塚田 純一
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AB07
2D054AC20
2D054FA02
2D054GA13
2D054GA25
(57)【要約】
【課題】注入の開始時と終了時のタンク残量を注入日報に容易に記入することができる地山改良材の注入システムを提供する。
【解決手段】本地山改良材の注入システムは、トンネル31の未掘削地山に複数の長尺鋼管32を打設し、長尺鋼管の内空を通じて長尺鋼管の外周に設けられた吐出孔から地山改良材を周辺地山の亀裂に浸透させ地山を補強する工法において、地山改良材を注入する注入機1に地山改良材を供給するタンク4A、4B内に投入された地山改良材の液面の高さを電子データの形式で測定することによりタンク内の前記地山改良材の量を算出し、注入を開始する時と注入が終了した時の地山改良材の量を記憶する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの未掘削地山に複数の長尺鋼管を打設し、前記長尺鋼管の内空を通じて前記長尺鋼管の外周に設けられた吐出孔から地山改良材を周辺地山の亀裂に浸透させ地山を補強する工法において、前記地山改良材を注入する注入機に前記地山改良材を供給するタンク内に投入された前記地山改良材の液面の高さを電子データの形式で測定することにより前記タンク内の前記地山改良材の量を算出し、注入を開始する時と注入が終了した時の前記地山改良材の量を記憶することを特徴とする地山改良材の注入システム。
【請求項2】
前記タンク内に投入された前記地山改良材の液面の高さを電子データの形式で測定する測定部と、前記液面の高さにより前記タンク内の前記地山改良材の量を算出する演算部と、注入を開始する時と注入が終了した時の前記地山改良材の量を記憶する記憶部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の地山改良材の注入システム。
【請求項3】
前記記憶部に記憶された前記地山改良材の量を注入日報に記入する記入部を備えることを特徴とする請求項2に記載の地山改良材の注入システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトンネル掘削時の先行地山補強工法に用いられる地山改良材の注入システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル掘削に際し、トンネルの周囲の前方地山に長尺鋼管を打設し、この長尺鋼管内から地山改良材を注入して地山を改良する、いわゆる長尺鋼管フォアパイリングが知られている。
【0003】
例えば特許文献1に示す工法では、3m程度の複数本の鋼管を接続することで10~20m程度の長尺鋼管をトンネルの外周に複数打設し、長尺鋼管の打設後に各長尺鋼管内に地山改良材を注入する。長尺鋼管内に注入された地山改良材は、長尺鋼管の外周に設けられた複数の吐出孔を通じて長尺鋼管周辺の地山の空隙や亀裂に浸透して固結することで、地山を補強する。この地山改良材としては改良効果や施工性の面からウレタン系地山改良材が広く用いられている。このウレタン系地山改良材においては、2液を混合して使用されるものが多く、ウレタン系地山改良材の注入機にはウレタン系地山改良材を供給する2つのタンクが付属している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
注入の開始時と終了時の2液の使用量(即ちタンク内の残量)を注入日報に記入することとなっており、従来は物差し106などでタンク104の上端から液面までの距離を測定し(
図6参照)、タンクの容積からタンク内の地山改良材の量を算出し、この算出した地山改良材の量を注入日報に記入していた。これらの作業は人力で行っており、地山改良材の量の算出や一旦印刷した注入日報に手書きで記入する必要があるなど手間がかかっていた。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みなされたものであり、注入の開始時と終了時のタンク残量を注入日報に容易に記入することができる地山改良材の注入システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の通りである。
1.トンネルの未掘削地山に複数の長尺鋼管を打設し、前記長尺鋼管の内空を通じて前記長尺鋼管の外周に設けられた吐出孔から地山改良材を周辺地山の亀裂に浸透させ地山を補強する工法において、前記地山改良材を注入する注入機に前記地山改良材を供給するタンク内に投入された前記地山改良材の液面の高さを電子データの形式で測定することにより前記タンク内の前記地山改良材の量を算出し、注入を開始する時と注入が終了した時の前記地山改良材の量を記憶することを特徴とする地山改良材の注入システム。
2.前記タンク内に投入された前記地山改良材の液面の高さを電子データの形式で測定する測定部と、前記液面の高さにより前記タンク内の前記地山改良材の量を算出する演算部と、注入を開始する時と注入が終了した時の前記地山改良材の量を記憶する記憶部と、を備えることを特徴とする上記1.に記載の地山改良材の注入システム。
3.前記記憶部に記憶された前記地山改良材の量を注入日報に記入する記入部を備えることを特徴とする上記2.に記載の地山改良材の注入システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、地山改良材を供給するタンク内に投入された地山改良材の液面の高さを電子データの形式で測定することによりタンク内の地山改良材の量を自動で算出することが可能となり、従来の手計算による算出作業を省くことができる。
さらに注入を開始する時と注入が終了した時のタンク内の地山改良材の量を記憶することで、注入の開始時と終了時のタンク残量を注入日報に容易に記入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部材を示す。
【
図1】実施形態に係る注入システムの注入機の模式図である。
【
図4】実施形態に係る注入日報を説明するための説明図である。
【
図5】実施形態に係る地山補強工法を説明するための説明図であり、(a)はトンネルの軸方向に略直交する横断面を示し、(b)はトンネルの軸方向に沿う縦断面を示す。
【
図6】従来のタンク内の液面レベルの測定方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0011】
以下、図面を用いて実施形態により本発明を具体的に説明する。
【0012】
本実施形態の地山改良材の注入システムはトンネル掘削時の先行地山補強工法に用いられる。先行地山補強工法は、
図5に示すように、トンネル31の未掘削地山に複数(
図5(b)中で17本)の長尺鋼32管を打設し、長尺鋼管32の内空を通じて長尺鋼管32の外周に設けられた吐出孔(図示省略)から地山改良材を周辺地山の亀裂に浸透させ地山を補強する工法である。
【0013】
先行地山補強工法では、タンク4a、4b内に投入された地山改良材を注入機1に供給し(
図1参照)、注入機1により鋼管32内に地山改良材を注入する。地山改良材としては、例えばシリカレジン等のウレタン系発泡樹脂が用いられる。この場合、2種類のA液とB液が混合されて発泡しながら地山に注入されて硬化することでトンネル周辺の地山が改良される。ただし、ウレタン系の地山改良材の代わりに無機系(例えばセメント系、水ガラス系など)の地山改良材を採用してもよい。なお、施工管理上、複数の鋼管32には、アーチ部に沿う方向の配列順に注入番号が付されている。
【0014】
注入機1は、
図1に示すように、地山改良材を圧送するポンプユニット2、ポンプユニット2が接続された制御ユニット3およびポンプユニット2に地山改良材を供給するタンク4A、4Bから構成されている。
【0015】
ポンプユニット2は鋼管32ごとに2種類のA液及びB液を圧送して混合するために一対の注入ポンプ5A、5Bを複数組(
図1中で3組)有している。A液用の注入ポンプ5Aの供給ポートにはA液が投入されるタンク4Aが接続されており、B液用の注入ポンプ5Bの供給ポートにはB液が投入されるタンク4Bが接続されている。
【0016】
タンク4A、4Bの上端には地山改良材35の液面までの距離を測定するセンサー15としてレーザーセンサーが設置され(
図2参照)、制御ユニット3と接続されている。ただし、地山改良材35の液面の高さを測定するセンサー15としては、レーザーセンサーに限定されるものではなく、例えば浮子によるレベルセンサーなど、液面の高さを演算処理が可能なデータとして測定できるものであれば既知の技術を使用できる。
【0017】
制御ユニット3は注入中の注入量や注入圧力を表示する管理画面7と各ポンプ5A、5Bの起動・停止や流量調整を行う制御盤8を備えている。さらに制御ユニット3は注入に先立って注入量および注入圧力の設定値を入力するタッチパネル等の入力部9および後述するタンク残量の算出処理などを行う処理部10を備えている。
【0018】
制御ユニット3(具体的に制御盤8)には、
図3に示すように、処理部10に対してタンク4A、4B内の地山改良材の液面までの距離の測定を指示する測定スイッチ11と、処理部10に対して算出されたタンク残量の記憶を指示する記憶スイッチ12が設置されている。さらに制御ユニット3には処理部10に対して記憶されたタンク残量の注入日報27(
図4参照)への入力などを指示するトータルボタン13が設置されている。なお、スイッチ11、12及びボタン13は入力部9により構成されていてもよいし、注入機1の制御ユニット3以外の部分に備えられていてもよい。
【0019】
処理部10は、タンク4A、4B内に投入された地山改良材の液面の高さを電子データの形式で測定する測定部21と、液面の高さによりタンク4A、4B内の地山改良材の量(即ちタンク残量)を算出する演算部22と、注入を開始する時と注入が終了した時のタンク残量を記憶する記憶部23と、を備えている。さらに処理部10は記憶部23に記憶されたタンク残量を注入日報27に記入する記入部24を備えている。
【0020】
なお、処理部10による処理は、ハードウェア、ソフトウェアのいずれによって実現されてもよく、好適にはCPU、記憶装置(ROM、RAM等)、入出力回路等を備えるマイクロコントローラ(マイクロコンピュータ)を中心に、入出力インターフェース等周辺回路を備えることにより構成できる。
【0021】
次に上記構成の地山改良材の注入システムの作用効果について説明する。地山改良材の注入開始前に注入機1の制御盤8の測定スイッチ11を入れ、2つのタンク4A、4Bに入っている地山改良材の液面の高さを測定部21で測定する。測定したデータは演算部22に送られる。演算部22では各タンク4A、4Bに入っている各地山改良材の体積を計算し、さらに各地山改良材の比重を乗じることで重量を算出する。算出された各地山改良材の重量は管理画面7に表示される。次に制御盤8の記憶スイッチ12を入れ、管理画面7に表示された各地山改良材の重量を記憶部23で記憶する。この注入開始前に測定した数値を注入前残量C1と呼ぶ。
【0022】
地山改良材の所定の注入が終了した時点で、再度注入機1の制御盤8の測定スイッチ11を入れ、2つのタンク4A、4Bに入っている地山改良材の液面の高さを測定部21で測定する。測定したデータは演算部22に送られる。演算部22では各タンク4A、4Bに入っている各地山改良材の体積を計算し、さらに各地山改良材の比重を乗じることで重量を算出する。算出された各地山改良材の重量は管理画面7に表示される。次に制御盤8の記憶スイッチ12を入れ、管理画面7に表示された各地山改良材の重量を記憶部23で記憶する。この注入終了後に測定した数値を注入後残量C2と呼ぶ。
【0023】
記憶部23では注入前残量C1と注入後残量C2をともに記憶する。注入機1の制御盤8のトータルボタン13を押すことで、注入箇所(即ち鋼管32)ごとの注入量と注入圧力、断面の総注入量とともに各タンク4A、4Bの注入前残量C1と注入後残量C2が注入日報27に入力される(
図4参照)。注入日報27(即ち画像データ)は有線または無線の通信やUSBメモリなどの記録媒体を介して利用される。
【0024】
なお、
図4において、注入日報27の投入量Dはタンク4A、4Bに入れた薬液の量である。薬液は一斗缶(18kgか20kgなど)で投入するので、投入量Dは投入した一斗缶の数量×入り目となる。そのため、投入量Dは一斗缶の空数を数えて手計算で算出される。さらに注入日報27の使用量Eは、注入前残量C1+投入量D-注入後残量C2で求められる。
【0025】
以上より、本実施形態の地山改良材の注入システムによると、地山改良材を注入する注入機1に地山改良材を供給するタンク4A、4B内に投入された地山改良材の液面の高さを電子データの形式で測定(具体的にセンサー15を用いて測定)することによりタンク4A、4B内の地山改良材の量を算出し、注入を開始する時と注入が終了した時の地山改良材の量を記憶する。このように、地山改良材を供給するタンク4A、4B内に投入された地山改良材の液面の高さを電子データの形式で測定することによりタンク4A、4B内の地山改良材の量を自動で算出することが可能となり、従来の手計算による算出作業を省くことができる。さらに注入を開始する時と注入が終了した時のタンク4A、4B内の地山改良材の量を記憶し、注入の開始時と終了時のタンク残量を注入日報27に自動で記入(具体的に注入前残量C1および注入後残量C2を注入日報27の画像データに自動で入力)することで、従来の注入日報に転記する手間を省くことができる。
【0026】
さらに本実施形態では、記憶スイッチ12(記憶指示操作部)を操作することで、注入を開始する時(具体的に注入開始前)と注入が終了した時(具体的に注入終了後)にタンク残量を記憶部23に確実に記憶させることができる。
【0027】
尚、本発明においては、上記実施形態に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施形態では、記入部24によりタンク残量を注入日報27に自動で記入する形態を例示したが、これに限定されず、例えば記入部24を備えず、管理画面7に表示されたタンク残量を作業者が注入日報に記入(例えば印刷された注入日報への手書き記入、注入日報の画像データへのデータ入力など)する形態としてもよい。
【0028】
さらに上記実施形態では、注入機1の制御ユニット3に処理部10を備える注入システムを例示したが、これに限定されず、例えば注入機1の制御ユニット3と接続可能な端末(例えばスマートフォンなどの移動型端末、パーソナルコンピュータなど)に処理部10を備える注入システムを採用してもよい。
【0029】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明はトンネル掘削時の先行地山補強工法における地山改良材の注入に関する技術として広く利用される。
【符号の説明】
【0031】
1;注入機、4A,4B;タンク、10;処理部、21;測定部、22;演算部、23;記憶部、24;記入部、27;注入日報、31;トンネル、32;鋼管、35;地山改良材。