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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162379
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】地山改良材の注入システム
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/04 20060101AFI20241114BHJP
   E21D 9/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
E21D9/04 F
E21D9/04 A
E21D9/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077821
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】591140813
【氏名又は名称】株式会社カテックス
(71)【出願人】
【識別番号】515217454
【氏名又は名称】ジオマシンエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】永田 潤一
(72)【発明者】
【氏名】塚田 純一
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AB07
2D054AC20
2D054FA02
2D054GA13
2D054GA24
2D054GA25
2D054GA65
2D054GA70
(57)【要約】
【課題】タンク内の地山改良材の残量をリアルタイムで計測することにより施工ミスを低減することができる地山改良材の注入システムを提供する。
【解決手段】本地山改良材の注入システムは、トンネル31の未掘削地山に複数の長尺鋼管32を打設し、長尺鋼管の内空を通じて長尺鋼管の外周に設けられた吐出孔から地山改良材を周辺地山の亀裂に浸透させ地山を補強する工法において、地山改良材を注入する注入機1に地山改良材を供給するタンク4A、4B内に投入された地山改良材の液面の高さを電子データの形式で測定することによりタンク内の地山改良材の量を算出し、タンク内の地山改良材の残量が規定された量より少なくなった時に警告を行う。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの未掘削地山に複数の長尺鋼管を打設し、前記長尺鋼管の内空を通じて前記長尺鋼管の外周に設けられた吐出孔から地山改良材を周辺地山の亀裂に浸透させ地山を補強する工法において、前記地山改良材を注入する注入機に前記地山改良材を供給するタンク内に投入された前記地山改良材の液面の高さを電子データの形式で測定することにより前記タンク内の前記地山改良材の量を算出し、前記タンク内の前記地山改良材の残量が規定された量より少なくなった時に警告を行うことを特徴とする地山改良材の注入システム。
【請求項2】
複数の前記タンク内に投入された前記地山改良材の液面の高さをそれぞれ電子データの形式で測定することにより、複数の前記タンク内の各前記地山改良材の量を算出し、注入作業の経過時間と複数の前記タンク内の各前記地山改良材の残量の比から前記地山改良材の減量バランスが規定の数値内にない場合に警告を行うことを特徴とする請求項1に記載の地山改良材の注入システム。
【請求項3】
前記タンク内に投入された前記地山改良材の液面の高さを電子データの形式で測定する測定部と、前記液面の高さにより前記タンク内の前記地山改良材の量を算出する演算部と、前記タンク内の前記地山改良材の残量の下限値を設定する設定部と、前記設定部で設定された前記下限値と前記タンク内の前記地山改良材の残量とを判定する判定部と、前記タンク内の前記地山改良材の残量が前記下限値より少なくなった時に警告を行う警告手段と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の地山改良材の注入システム。
【請求項4】
複数の前記タンク内に投入された前記地山改良材の液面の高さをそれぞれ電子データの形式で測定する測定部と、前記液面の高さにより複数の前記タンク内の各前記地山改良材の量を算出する演算部と、複数の前記タンク内の各前記地山改良材の残量の下限値を設定する第1設定部と、複数の前記タンク内の前記地山改良材の減量バランスの規定値を設定する第2設定部と、前記第1設定部で設定された前記下限値と複数の前記タンク内の各前記地山改良材の残量とを判定するとともに、前記第2設定部で設定された前記規定値と前記地山改良材の減量バランスとを判定する判定部と、前記タンク内の前記地山改良材の残量が前記下限値より少なくなった時および前記地山改良材の減量バランスが前記規定の数値内にない場合に警告を行う警告手段と、を備えたことを特徴とする請求項2に記載の地山改良材の注入システム。
【請求項5】
トンネルの未掘削地山に複数の長尺鋼管を打設し、前記長尺鋼管の内空を通じて前記長尺鋼管の外周に設けられた吐出孔から地山改良材を周辺地山の亀裂に浸透させ地山を補強する工法において、前記地山改良材を注入する注入機に前記地山改良材を供給する複数のタンク内に投入された前記地山改良材の液面の高さをそれぞれ電子データの形式で測定することにより、複数の前記タンク内の各前記地山改良材の量を算出し、注入作業の経過時間と複数の前記タンク内の各前記地山改良材の残量の比から前記地山改良材の減量バランスが規定の数値内にない場合に警告を行うことを特徴とする地山改良材の注入システム。
【請求項6】
複数の前記タンク内に投入された前記地山改良材の液面の高さをそれぞれ電子データの形式で測定する測定部と、前記液面の高さにより複数の前記タンク内の各前記地山改良材の量を算出する演算部と、複数の前記タンク内の前記地山改良材の減量バランスの規定値を設定する設定部と、前記設定部で設定された前記規定値と前記地山改良材の減量バランスとを判定する判定部と、前記地山改良材の減量バランスが前記規定の数値内にない場合に警告を行う警告手段と、を備えたことを特徴とする請求項5に記載の地山改良材の注入システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトンネル掘削時の先行地山補強工法に用いられる地山改良材の注入システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル掘削に際し、トンネルの周囲の前方地山に長尺鋼管を打設し、この長尺鋼管内から地山改良材を注入して地山を改良する、いわゆる長尺鋼管フォアパイリングが知られている。
【0003】
例えば特許文献1に示す工法では、3m程度の複数本の鋼管を接続することで10~20m程度の長尺鋼管をトンネルの外周に複数打設し、長尺鋼管の打設後に各長尺鋼管内に地山改良材を注入する。長尺鋼管内に注入された地山改良材は、長尺鋼管の外周に設けられた複数の吐出孔を通じて長尺鋼管周辺の地山の空隙や亀裂に浸透して固結することで、地山を補強する。この地山改良材としては改良効果や施工性の面からウレタン系地山改良材が広く用いられている。このウレタン系地山改良材においては、2液を混合して使用されるものが多く、ウレタン系地山改良材の注入機にはウレタン系地山改良材を供給する2つのタンクが付属している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08-121073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地山改良材を供給する2つのタンクには開閉自在の蓋が付いており、通常の注入作業中にはトンネル内の湧水や塵埃がタンク内の地山改良材に混入することを避けるためにこの蓋は締められており、注入機を操作する作業員が地山改良材の注入量に応じて地山改良材のタンクへの投入時期を判断し、地山改良材をタンクに補充している。
【0006】
しかしながら、この方式では地山改良材のタンクへの補充は作業者の判断に委ねられており、補充を忘れた場合には2液の地山改良材のいずれか片方が地山内に注入されないことなり、所定の地山改良効果が得られないという施工ミスが発生する。
また、注入機の配管の閉塞や注入機に設置されたポンプの不具合により2液の地山改良材の配合バランスが所定の配合比から逸脱したまま地山内に注入され、その結果所定の地山改良効果が得られないという施工ミスが発生する。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みなされたものであり、タンク内の地山改良材の残量をリアルタイムで計測することにより施工ミスを低減することができる地山改良材の注入システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の通りである。
1.トンネルの未掘削地山に複数の長尺鋼管を打設し、前記長尺鋼管の内空を通じて前記長尺鋼管の外周に設けられた吐出孔から地山改良材を周辺地山の亀裂に浸透させ地山を補強する工法において、前記地山改良材を注入する注入機に前記地山改良材を供給するタンク内に投入された前記地山改良材の液面の高さを電子データの形式で測定することにより前記タンク内の前記地山改良材の量を算出し、前記タンク内の前記地山改良材の残量が規定された量より少なくなった時に警告を行うことを特徴とする地山改良材の注入システム。
2.複数の前記タンク内に投入された前記地山改良材の液面の高さをそれぞれ電子データの形式で測定することにより、複数の前記タンク内の各前記地山改良材の量を算出し、注入作業の経過時間と複数の前記タンク内の各前記地山改良材の残量の比から前記地山改良材の減量バランスが規定の数値内にない場合に警告を行うことを特徴とする上記1.に記載の地山改良材の注入システム。
3.前記タンク内に投入された前記地山改良材の液面の高さを電子データの形式で測定する測定部と、前記液面の高さにより前記タンク内の前記地山改良材の量を算出する演算部と、前記タンク内の前記地山改良材の残量の下限値を設定する設定部と、前記設定部で設定された前記下限値と前記タンク内の前記地山改良材の残量とを判定する判定部と、前記タンク内の前記地山改良材の残量が前記下限値より少なくなった時に警告を行う警告手段と、を備えたことを特徴とする上記1.に記載の地山改良材の注入システム。
4.複数の前記タンク内に投入された前記地山改良材の液面の高さをそれぞれ電子データの形式で測定する測定部と、前記液面の高さにより複数の前記タンク内の各前記地山改良材の量を算出する演算部と、複数の前記タンク内の各前記地山改良材の残量の下限値を設定する第1設定部と、複数の前記タンク内の前記地山改良材の減量バランスの規定値を設定する第2設定部と、前記第1設定部で設定された前記下限値と複数の前記タンク内の各前記地山改良材の残量とを判定するとともに、前記第2設定部で設定された前記規定値と前記地山改良材の減量バランスとを判定する判定部と、前記タンク内の前記地山改良材の残量が前記下限値より少なくなった時および前記地山改良材の減量バランスが前記規定の数値内にない場合に警告を行う警告手段と、を備えたことを特徴とする上記2.に記載の地山改良材の注入システム。
5.トンネルの未掘削地山に複数の長尺鋼管を打設し、前記長尺鋼管の内空を通じて前記長尺鋼管の外周に設けられた吐出孔から地山改良材を周辺地山の亀裂に浸透させ地山を補強する工法において、前記地山改良材を注入する注入機に前記地山改良材を供給する複数のタンク内に投入された前記地山改良材の液面の高さをそれぞれ電子データの形式で測定することにより、複数の前記タンク内の各前記地山改良材の量を算出し、注入作業の経過時間と複数の前記タンク内の各前記地山改良材の残量の比から前記地山改良材の減量バランスが規定の数値内にない場合に警告を行うことを特徴とする地山改良材の注入システム。
6.複数の前記タンク内に投入された前記地山改良材の液面の高さをそれぞれ電子データの形式で測定する測定部と、前記液面の高さにより複数の前記タンク内の各前記地山改良材の量を算出する演算部と、複数の前記タンク内の前記地山改良材の減量バランスの規定値を設定する設定部と、前記設定部で設定された前記規定値と前記地山改良材の減量バランスとを判定する判定部と、前記地山改良材の減量バランスが前記規定の数値内にない場合に警告を行う警告手段と、を備えたことを特徴とする上記5.に記載の地山改良材の注入システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、地山改良材を供給するタンク内に投入された地山改良材の液面の高さを電子データの形式で測定することによりタンク内の地山改良材の量をリアルタイムで算出することが可能となり、タンク残量が規定された量より少なくなった場合に警告を発することで地山改良材をタンク内に補充することを忘れることがない。その結果、地山改良材を所定の配合バランスで地山内に注入することができ、確実な地山改良効果が発揮される。
【0010】
他の本発明によれば、地山改良材を供給する複数のタンク内に投入された地山改良材の液面の高さを電子データの形式で測定することにより各タンク内の地山改良材の量をリアルタイムで算出することが可能となり、各タンク内の地山改良材の減量バランスが規定の数値内にない場合に警告を発することで減量バランスの異常の有無を確認することができる。その結果、地山改良材を所定の配合バランスで地山内に注入することができ、確実な地山改良効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部材を示す。
図1】実施形態に係る注入システムの注入機の模式図である。
図2】注入機のタンクの模式図である。
図3】注入機の制御ユニットのブロック図である。
図4】実施形態に係る残量警告処理のフローチャート図である。
図5】実施形態に係るバランス警告処理のフローチャート図である。
図6】実施形態に係る地山補強工法を説明するための説明図であり、(a)はトンネルの軸方向に略直交する横断面を示し、(b)はトンネルの軸方向に沿う縦断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0013】
以下、図面を用いて実施形態により本発明を具体的に説明する。
【0014】
本実施形態の地山改良材の注入システムはトンネル掘削時の先行地山補強工法に用いられる。先行地山補強工法は、図6に示すように、トンネル31の未掘削地山に複数(図6(b)中で17本)の長尺鋼32管を打設し、長尺鋼管32の内空を通じて長尺鋼管32の外周に設けられた吐出孔(図示省略)から地山改良材を周辺地山の亀裂に浸透させ地山を補強する工法である。
【0015】
先行地山補強工法では、タンク4a、4b内に投入された地山改良材を注入機1に供給し(図1参照)、注入機1により鋼管32内に地山改良材を注入する。地山改良材としては、例えばシリカレジン等のウレタン系発泡樹脂が用いられる。この場合、2種類のA液とB液が混合されて発泡しながら地山に注入されて硬化することでトンネル周辺の地山が改良される。ただし、ウレタン系の地山改良材の代わりに無機系(例えばセメント系、水ガラス系など)の地山改良材を採用してもよい。なお、施工管理上、複数の鋼管32には、アーチ部に沿う方向の配列順に注入番号が付されている。
【0016】
注入機1は、図1に示すように、地山改良材を圧送するポンプユニット2、ポンプユニット2が接続された制御ユニット3およびポンプユニット2に地山改良材を供給するタンク4A、4Bから構成されている。
【0017】
ポンプユニット2は鋼管32ごとに2種類のA液及びB液を圧送して混合するために一対の注入ポンプ5A、5Bを複数組(図1中で3組)有している。A液用の注入ポンプ5Aの供給ポートにはA液が投入されるタンク4Aが接続されており、B液用の注入ポンプ5Bの供給ポートにはB液が投入されるタンク4Bが接続されている。
【0018】
タンク4A、4Bの上端には地山改良材35の液面までの距離を測定するセンサー15としてレーザーセンサーが設置され(図2参照)、制御ユニット3と接続されている。ただし、地山改良材35の液面の高さを測定するセンサー15としては、レーザーセンサーに限定されるものではなく、例えば浮子によるレベルセンサーなど、液面の高さを演算処理が可能なデータとして測定できるものであれば既知の技術を使用できる。
【0019】
制御ユニット3は注入中の注入量や注入圧力を表示する管理画面7と各ポンプ5A、5Bの起動・停止や流量調整を行う制御盤8を備えている。さらに制御ユニット3は注入に先立って注入量および注入圧力の設定値を入力するタッチパネル等の入力部9および後述する残量警告処理とバランス警告処理を行う処理部10を備えている。
【0020】
制御ユニット3(具体的に制御盤8)には、図3に示すように、処理部10に対してタンク4A、4B内の地山改良材の液面までの距離の測定を指示する測定スイッチ11が設置されている。なお、スイッチ11は入力部9により構成されていてもよいし、注入機1の制御ユニット3以外の部分に備えられていてもよい。
【0021】
制御ユニット3はタンク4A、4B内の地山改良材の残量の警告値(具体的に下限値)を設定する残量警告値設定部(第1設定部)17を備えている。さらに制御ユニット3は各タンク4A、4B内の地山改良材の減量バランス(配合バランス)の警告値(具体的に規定値)を設定するバランス警告値設定部(第2設定部)18を備えている。ただし、第1及び第2設定部17、18は同じ設定部(例えば入力部9)で構成されていてもよい。さらに第1及び第2設定部17、18は注入機1の制御ユニット3以外の部分に備えられていてもよい。
【0022】
ここで、タンク4A、4B内について地山改良材の減量する量が地山に対する地山改良材の吐出量となる。吐出量のバランス(即ち地山改良材の減量バランス)は規定の数値範囲(例えば第2設定部18で設定した規定値の±10%;規定値により決められる数値範囲)内にあれば正常とすることができる。なお、本実施形態では、第2設定部18で規定値を設定するようにしたが、第2設定部18で規定の数値範囲(例えば規定値の±10%)を設定するようにしてもよい。
【0023】
制御ユニット3はタンク4A、4B内の地山改良材の残量が下限値より少なくなった時およびタンク4A、4B内の地山改良材の減量バランスが規定の数値(例えば規定値±10%)内にない場合に警告を行う警告ブザー(警告手段)19を備えている。ただし、警告手段としては警告ブザー19に限定されるものではなく、例えば注入機1に設置したランプの点滅など、現場作業員が警告を確認できるものであれば既知の技術を使用できる。さらに残量警告とバランス警告を異なる警告手段で行うようにしてもよい。さらに警告手段は注入機1の制御ユニット3以外の部分に備えられていてもよい。
【0024】
処理部10は、タンク4A、4B内に投入された地山改良材の液面の高さを電子データの形式で測定する測定部21と、液面の高さによりタンク4A、4B内の地山改良材の量(即ちタンク残量)を算出する演算部22と、残量警告値設定部17で設定された警告値とタンク残量とを判定するとともに、バランス警告値設定部18で設定された警告値と地山改良材の減量バランスとを判定する判定部23と、を備えている。
【0025】
処理部10としては、例えば演算部22がタンク残量を算出し、判定部23が注入作業の経過時間とタンク残量から地山改良材の減量バランスを算出して規定値と判定する形態であってもよいし、演算部22がタンク残量を算出するとともに注入作業の経過時間とタンク残量から地山改良材の減量バランスを算出し、判定部23が地山改良材の減量バランスと規定値を判定する形態であってもよい。
【0026】
処理部10は残量警告処理を行う(図4参照)。残量警告処理では、タンク4A、4B内の地山改良材の液面の高さが測定され(ステップS1)、測定された液面の高さによりタンク4A、4B内の地山改良材の量(即ちタンク残量)が算出され(ステップS2)、算出されたタンク残量と残量警告値とが比較判定され(ステップS3)、タンク残量が残量警告値より小さくなったときに警告が発せられる(ステップS4)。図4中のステップS5は残量警告値の設定ステップを示す。
【0027】
処理部10はバランス警告処理を行う(図5参照)。バランス警告処理では、タンク4A、4B内の地山改良材の液面の高さが測定され(ステップP1、P1’)、測定された液面の高さによりタンク4A、4B内の地山改良材の量(即ちタンク残量)が算出され(ステップP2、P2’)、タイマーなどで計測される注入作業の経過時間と算出されたタンク残量とから単位時間当たりの減少量が算出され(ステップP3、P3’)、各単位時間当たりの減少量の比である減量バランスが算出される(ステップP4)。さらに減量バランスとバランス警告値とが比較判定され(ステップP5)、減量バランスが規定の数値内にないときに警告が発せられる(ステップP6)。図5中のステップP7はバランス警告値の設定ステップを示す。
【0028】
なお、処理部10による処理は、ハードウェア、ソフトウェアのいずれによって実現されてもよく、好適にはCPU、記憶装置(ROM、RAM等)、入出力回路等を備えるマイクロコントローラ(マイクロコンピュータ)を中心に、入出力インターフェース等周辺回路を備えることにより構成できる。
【0029】
次に上記構成の地山改良材の注入システムの作用効果について説明する。地山改良材の注入開始前に注入機1の制御盤8の測定スイッチ11を入れ、2つのタンク4A、4Bに入っている地山改良材の液面の高さを測定部21で測定する。測定したデータは演算部22に送られる。演算部22では各タンク4A、4Bに入っている各地山改良材の体積を計算し、さらに各地山改良材の比重を乗じることで重量を算出する。次に制御ユニット3にタンク4A、4B内の各地山改良材の残量警告値(下限値)およびバランス警告値(規定値)を設定入力する。ただし、各警告値の設定入力は測定スイッチ11を入れる前に行われてもよい。
【0030】
注入作業を開始すると演算部22が各タンク4A、4B内の地山改良材の量をリアルタイムで算出し、判定部23に送られる。判定部23では演算部22から送られた各タンク4A、4B内の地山改良材の量(即ちタンク残量)と制御ユニット3で入力された残量警告値とを判定し、各タンク残量が残量警告値より少なくなったときに警告ブザー19を作動させる(図4参照)。さらに判定部23では注入開始からの経過時間と演算部22から送られた各タンク4A、4B内の地山改良材の量(即ちタンク残量)により地山改良材の減量バランスとバランス警告値とを判定し、地山改良材の減量バランスが規定の数値を超えた場合に警告ブザー19を作動させる(図5参照)。
【0031】
以上より、本実施形態の地山改良材の注入システムによると、地山改良材を注入する注入機1に地山改良材を供給するタンク4A、4B内に投入された地山改良材の液面の高さを電子データの形式で測定(具体的にセンサー15を用いて測定)することによりタンク4A、4B内の地山改良材の量(即ちタンク残量)をリアルタイムで算出することが可能となり、タンク残量が規定された量より少なくなった場合に警告を発することで、地山改良材をタンク4A、4B内に補充することを忘れることがない。さらに各タンク4A、4B内の地山改良材の減量バランスが規定の数値内にない場合に警告を発することで、減量バランスの異常の有無を確認することができる。その結果、地山改良材を所定の配合バランスで地山内に注入することができ、確実な地山改良効果が発揮される。
【0032】
尚、本発明においては、上記実施形態に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施形態では、残量警告処理およびバランス警告処理を行う処理部10を備える形態を例示したが、これに限定されず、残量警告処理およびバランス警告処理のうちの一方の処理のみを行う処理部10を備える形態としてもよい。
【0033】
より具体的に、残量警告処理のみを行う処理部10は、例えばタンク4A、4B内に投入された地山改良材の液面の高さを電子データの形式で測定する測定部21と、液面の高さによりタンク4A、4B内の地山改良材の量(即ちタンク残量)を算出する演算部22と、タンク4A、4B内の地山改良材の残量の下限値を設定する設定部17と、設定部17で設定された下限値とタンク残量とを判定する判定部23と、タンク残量が下限値より少なくなった時に警告を行う警告手段19と、を備えることができる。
【0034】
一方、バランス警告処理のみを行う処理部10は、例えば複数のタンク4A、4B内に投入された地山改良材の液面の高さをそれぞれ電子データの形式で測定する測定部21と、液面の高さにより複数のタンク4A、4B内の各地山改良材の量(即ちタンク残量)を算出する演算部22と、複数のタンク4A、4B内の地山改良材の減量バランスの規定値を設定する設定部18と、設定部18で設定された規定値とタンク残量に基づく地山改良材の減量バランスとを判定する判定部23と、地山改良材の減量バランスが規定値内にない場合に警告を行う警告手段19と、を備えることができる。
【0035】
さらに上記実施形態では、注入機1の制御ユニット3に処理部10を備える注入システムを例示したが、これに限定されず、例えば注入機1の制御ユニット3と接続可能な端末(例えばスマートフォンなどの移動型端末、パーソナルコンピュータなど)に処理部10を備える注入システムを採用してもよい。
【0036】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明はトンネル掘削時の先行地山補強工法における地山改良材の注入に関する技術として広く利用される。
【符号の説明】
【0038】
1;注入機、4A,4B;タンク、10;処理部、17;残量警告値設定部(第1設定部)、18;バランス警告値設定部(第2設定部)、19;警告ブザー(警告手段)、21;測定部、22;演算部、23;判定部、31;トンネル、32;鋼管、35;地山改良材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6