(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162380
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】温水熱源機
(51)【国際特許分類】
F24H 4/02 20220101AFI20241114BHJP
F24H 15/231 20220101ALI20241114BHJP
F24H 15/232 20220101ALI20241114BHJP
F24H 15/38 20220101ALI20241114BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20241114BHJP
F25B 49/02 20060101ALI20241114BHJP
F24H 15/12 20220101ALI20241114BHJP
F24H 15/242 20220101ALI20241114BHJP
F24H 15/269 20220101ALI20241114BHJP
F28D 9/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
F24H4/02 D
F24H15/231
F24H15/232
F24H15/38
F25B1/00 399Y
F25B49/02 570B
F24H15/12
F24H15/242
F24H15/269
F28D9/00
F25B1/00 371F
F25B1/00 371Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077823
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】谷垣 慶一郎
【テーマコード(参考)】
3L103
3L122
【Fターム(参考)】
3L103AA33
3L103BB42
3L103CC02
3L103CC17
3L103DD52
3L103DD70
3L122AA23
3L122AA62
3L122BC05
3L122BC12
3L122BC18
3L122DA11
3L122DA22
3L122EA21
3L122GA06
(57)【要約】
【課題】圧力差及び温度差の繰り返しによるストレスによって熱交換器のプレートに亀裂が発生することを抑制した温水熱源機を得ること。
【解決手段】温水熱源機21は、圧縮機3で圧縮された冷媒が流入する温水熱交換器4の一次流路4aを有する冷媒循環回路30と、水熱媒の流路である温水熱交換器4の二次流路4bを有する温水循環回路40と、温水熱交換器4から流出する水熱媒の温度である往き水温が目標値である目標往き水温となるように圧縮機3の運転周波数を調整する制御部9とを備え、温水熱交換器4は、一次流路4aが形成されたプレートと二次流路4bが形成されたプレートとを交互に積層したプレート式であり、制御部9は、温水熱交換器4が故障する可能性があると判断した場合に、目標往き水温及び圧縮機3の運転周波数の少なくとも一方の上限値を低く制限する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機、前記圧縮機で圧縮された前記冷媒が流入する温水熱交換器の一次流路、前記温水熱交換器を通過した前記冷媒を減圧する減圧装置、及び前記減圧装置によって減圧された前記冷媒を蒸発させる熱源側熱交換器を有する冷媒循環回路と、
水熱媒の流路である前記温水熱交換器の二次流路と、前記温水熱交換器において前記冷媒と熱交換された前記水熱媒が流入する室内放熱器とを有する温水循環回路と、
前記温水熱交換器へ流入する前記冷媒の圧力が予め設定された圧力よりも高くなったことを検知する高圧検知センサと、
前記温水熱交換器から流出する前記水熱媒の温度である往き水温を検知する往き水温検知センサと、
前記熱源側熱交換器から流出する前記冷媒の温度を検出する霜取温度センサと、
前記往き水温が目標値である目標往き水温となるように前記圧縮機の運転周波数を調整する制御部とを備え、
前記温水熱交換器は、前記一次流路が形成されたプレートと前記二次流路が形成されたプレートとを交互に積層したプレート式であり、
前記制御部は、前記温水熱交換器が故障する可能性があるか否かを前記高圧検知センサ及び前記霜取温度センサの検知結果を用いて判断し、前記温水熱交換器が故障する可能性があると判断した場合に、前記目標往き水温及び前記圧縮機の運転周波数の少なくとも一方の設定範囲の上限値を下げることを特徴とする温水熱源機。
【請求項2】
前記制御部は、
暖房運転を行った暖房運転時間と、前記熱源側熱交換器に着霜した霜を溶かす霜取り動作を行った回数である霜取動作回数とを記憶する記憶部を備え、
前記霜取動作回数が、前記暖房運転時間の長さに応じて予め設定された回数以上である場合、前記温水熱交換器が故障する可能性があると判断し、前記目標往き水温の設定範囲の上限値を下げることを特徴とする請求項1に記載の温水熱源機。
【請求項3】
前記制御部は、
暖房運転を行った暖房運転時間と、前記冷媒の圧力が予め設定された圧力よりも高くなったことを前記高圧検知センサが検知した回数である高圧検知回数とを記憶する記憶部を備え、
前記高圧検知回数が、前記暖房運転時間の長さに応じて予め設定された回数以上である場合、前記温水熱交換器が故障する可能性があると判断し、前記目標往き水温の設定範囲の上限値を下げることを特徴とする請求項1に記載の温水熱源機。
【請求項4】
前記制御部は、
暖房運転を行った暖房運転時間と、前記熱源側熱交換器に着霜した霜を溶かす霜取り動作を行った回数である霜取動作回数とを記憶する記憶部を備え、
前記霜取動作回数が前記暖房運転時間の長さに応じて予め設定された回数以上である場合、前記温水熱交換器が故障する可能性があると判断し、前記圧縮機の運転周波数の設定範囲の上限値を下げることを特徴とする請求項1に記載の温水熱源機。
【請求項5】
前記制御部は、
暖房運転を行った暖房運転時間と、前記冷媒の圧力が予め設定された圧力よりも高くなったことを前記高圧検知センサが検知した回数である高圧検知回数とを記憶する記憶部を備え、
前記高圧検知回数が、前記暖房運転時間の長さに応じて予め設定された回数以上である場合、前記温水熱交換器が故障する可能性があると判断し、前記圧縮機の運転周波数の設定範囲の上限値を下げることを特徴とする請求項1に記載の温水熱源機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒートポンプを用いて温水を生成して暖房を行う温水熱源機に関する。
【背景技術】
【0002】
温水熱源機は、冷媒を圧縮する圧縮機、水冷媒である温水を加熱する温水熱交換器の一次流路、冷媒を減圧する減圧機、冷媒を蒸発させる熱源側熱交換器、及び熱源側熱交換器に送風する送風機を備えた冷媒循環回路と、温水を貯留するバッファタンク、温水を循環させる循環ポンプ及び温水熱交換器の二次流路を有する温水循環回路とを備えている。
【0003】
温水熱源機は、室内放熱器から温水熱交換器へ戻る温水である戻り温水の温度の目標値である目標戻り水温又は温水熱交換器から室内放熱器へ送る温水である往き温水の温度の目標値である目標往き水温に応じて目標冷媒吐出温度を設定するとともに、圧縮機から吐出する冷媒の温度である冷媒吐出温度が、冷媒吐出温度の目標値である目標冷媒吐出温度となるように減圧装置の開度を調整し、かつ、戻り温水の温度である戻り水温が目標戻り水温となるように又は往き温水の温度である往き水温が目標往き水温となるように圧縮機の運転周波数を調整する。
【0004】
温水熱源機の温水熱交換器には、冷媒の流路である一次流路が形成されたプレートと水熱媒の流路である二次流路が形成されたプレートとを交互に積層したプレート式熱交換器が一般的に使用される。
【0005】
温水熱源機は、低外気温度の環境下で運転を継続すると、熱源側熱交換器の表面に着霜が発生するため、霜を除去するために霜取運転を行う必要がある。
【0006】
特許文献1には、エネルギー消費効率を向上させるために、往き水温に応じた目標冷媒吐出温度の関係を予め記憶し、暖房運転の安定時に往き水温検知センサで検出した往き水温に応じた目標冷媒吐出温度を再設定し、さらに往き水温と戻り水温との温度差により目標冷媒吐出温度を再設定する温水熱源機が開示されている。特許文献1に係る温水熱源機において、目標冷媒吐出温度は、往き水温と戻り水温との温度差が小さくなるほど目標冷媒吐出温度が高くなる関係となるように設定されており、低負荷時以外でもエネルギー消費効率を向上させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示される温水熱源機は、プレート式熱交換器が、圧力及び温度のいずれに対しても問題が発生することがない耐力を有することを前提としているが、実際には通常の動作範囲を超えた想定外の環境負荷が発生する可能性もある。例えば、特許文献1に開示される温水熱源機は、通常の動作範囲を超えた想定外の低外気温度の環境下で運転を継続した際、往き水温検知センサで検知した往き水温が目標往き水温へ到達しないことがあるが、この場合には、目標冷媒吐出温度が高い状態が継続するため、圧縮機が高い周波数で運転され続けることになる。このため、特許文献1に開示される温水熱源機は、通常の動作範囲を超えた想定外の低外気温度の環境下で運転を継続すると、高い運転周波数での圧縮機の運転の継続と着霜した熱源側熱交換器の霜取運転により、圧力差及び温度差の繰り返しによるストレスが温水熱交換器であるプレート式熱交換器へ加わり、熱交換器のプレートに亀裂が発生し、早期の故障及び冷媒漏洩の原因となるという問題があった。
【0009】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、圧力差及び温度差の繰り返しによるストレスによって熱交換器のプレートに亀裂が発生することを抑制した温水熱源機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る温水熱源機は、冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮機で圧縮された冷媒が流入する温水熱交換器の一次流路、温水熱交換器を通過した冷媒を減圧する減圧装置、及び減圧装置によって減圧された冷媒を蒸発させる熱源側熱交換器を有する冷媒循環回路と、水熱媒の流路である温水熱交換器の二次流路と、温水熱交換器において冷媒と熱交換された水熱媒が流入する室内放熱器とを有する温水循環回路と、温水熱交換器へ流入する冷媒の圧力が予め設定された圧力よりも高くなったことを検知する高圧検知センサと、温水熱交換器から流出する水熱媒の温度である往き水温を検知する往き水温検知センサと、熱源側熱交換器から流出する冷媒の温度を検出する霜取温度センサと、往き水温が目標値である目標往き水温となるように圧縮機の運転周波数を調整する制御部とを備える。温水熱交換器は、一次流路が形成されたプレートと二次流路が形成されたプレートとを交互に積層したプレート式である。制御部は、温水熱交換器が故障する可能性があるか否かを高圧検知センサ及び霜取温度センサの検知結果を用いて判断し、温水熱交換器が故障する可能性があると判断した場合に、目標往き水温及び前記圧縮機の運転周波数の少なくとも一方の設定範囲の上限値を下げる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、圧力差及び温度差の繰り返しによるストレスによって熱交換器のプレートに亀裂が発生することを抑制した温水熱源機を得られるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る温水熱源機を用いた暖房装置の構成を示す図
【
図2】実施の形態1に係る温水熱源機の動作の流れを示すフローチャート
【
図3】実施の形態1に係る温水熱源機の高圧検知回数又は霜取動作回数の保護判定条件と暖房運転時間との関係を示す図
【
図4】実施の形態2に係る温水熱源機の動作の流れを示すフローチャート
【
図5】実施の形態2に係る温水熱源機の保護判定条件として設定された回数と圧縮周波数との関係を示す図
【
図6】実施の形態1又は実施の形態2に係る温水熱源機の制御部のハードウェア構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、実施の形態に係る温水熱源機を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る温水熱源機を用いた暖房装置の構成を示す図である。暖房装置50は、温水熱源機21と室内放熱器22とを備える。暖房装置50は、例えば、温水式の床暖房又はふく射放熱器で暖房する温水による暖房システムである。
【0015】
温水熱源機21は、冷媒の流路である一次流路が形成されたプレートと、水熱媒である温水の流路である二次流路が形成されたプレートとを交互に積層したプレート式の温水熱交換器4を備えており、ヒートポンプ方式の冷媒循環回路30により採熱した熱を利用して、暖房に使う温水を温水熱交換器4で加熱する。
【0016】
冷媒循環回路30は、室外空気から熱を採熱する熱源側熱交換器2と、冷媒循環回路30内を循環し熱を搬送する冷媒を圧縮する圧縮機3と、冷媒の流量を調整する減圧装置10と、水冷媒である温水と冷媒との熱交換をする温水熱交換器4の一次流路4aとで構成された熱媒循環閉路である。
【0017】
また、温水熱源機21は、温水を貯留するバッファタンク5と、温水を循環させる循環ポンプ6と、温水熱交換器4の二次流路4bとを有する温水循環回路40を備える。さらに、温水熱源機21は、戻り水温を検知する戻り水温検知センサ8と、往き水温を検知する往き水温検知センサ7とを備える。なお、戻り水温は、室内放熱器22から温水熱交換器4へ流入する温水である戻り温水の温度である。また、往き水温は、温水熱交換器4から流出する温水である往き温水の温度である。
【0018】
冷媒循環回路30の冷媒と温水循環回路40の水熱媒とは相互に独立し、混じり合うことはないが、温水熱交換器4により熱的には接続されている。
【0019】
また、温水熱源機21は、熱源側熱交換器2に外気を送風するための送風機1と、圧縮機3から吐出する冷媒の温度である冷媒吐出温度を検知する冷媒吐出温度検知センサ11とを備える。また、温水熱源機21は、温水熱交換器4に流入する冷媒の圧力が予め設定された圧力よりも高くなったことを検知するための高圧検知センサ12を備える。また、温水熱源機21は、熱源側熱交換器2から流出する冷媒の温度を測定する霜取温度センサ14を備える。温水熱源機21の各構成要素は、単一のケーシングに納められている。温水熱源機21は、室外に設置される。
【0020】
また、室内には温水熱源機21から供給される温水により暖房運転を行う室内放熱器22とコントローラ23とが設置される。室内放熱器22には、床下に設置されて輻射暖房を行う床暖房パネル、室内壁面に設置され輻射暖房を行うパネルヒーター、又は室内空気循環用の送風機と、室内空気と水熱媒との間で熱交換をする熱交換器とを備え、強制対流により暖房を行うファンコンベクターなどを適用可能であるが、これらに限定はされない。
【0021】
コントローラ23は、温水熱源機21の運転の入切を設定する運転操作部231と、往き水温を設定する往き水温設定部232とを備え、任意の往き水温を設定した上で温水熱源機21を運転することが可能となっている。
【0022】
制御部9は、室内に設置されたコントローラ23と通信可能に接続されている。制御部9には、コントローラ23からの運転入切及び設定水温の情報、往き水温検知センサ7で検知した往き水温の情報及び戻り水温検知センサ8で検知した戻り水温の情報が、循環ポンプ6、圧縮機3、減圧装置10及び送風機1等を制御するための制御情報として取込まれる。なお、
図1においては、往き水温検知センサ7、戻り水温検知センサ8、冷媒吐出温度検知センサ11、高圧検知センサ12及び霜取温度センサ14と制御部9とを接続する配線の図示を省略している。
【0023】
制御部9は、熱源側熱交換器2から流出する冷媒の温度が予め設定された温度よりも低い状態が予め設定された時間以上継続した場合には、熱源側熱交換器2に着霜が発生したと判断し、霜取り動作を行う。霜取り動作は、熱源側熱交換器2の近くに設置された不図示のヒータを通電することによって行われる。なお、霜取り動作は、ヒータへの通電以外の方法で行われてもよい。制御部9は、霜取り動作の開始後、熱源側熱交換器2から流出する冷媒の温度が予め設定された温度以上の状態が予め設定された時間以上継続した場合に霜取りが完了したと判断し、霜取り動作を終了する。
【0024】
制御部9は、記憶部13を備えている。記憶部13は、制御部9の一部として設置されており、暖房運転時間冷媒の圧力が予め設定された圧力よりも高くなったことを、高圧検知センサ12が検知した回数である高圧検知回数、及び暖房時の霜取動作回数といった保護動作回数を記憶することが可能となっている。
【0025】
実施の形態1に係る温水熱源機21の動作について説明する。
図2は、実施の形態1に係る温水熱源機の動作の流れを示すフローチャートである。ステップS1において、制御部9は、コントローラ23から運転を入にする操作が行われたことを示す情報を取得する。ステップS2において、制御部9は、コントローラ23に対する入力操作によって設定された、往き水温の目標値である目標往き水温の情報を取得する。
【0026】
ステップS3において、制御部9は、コントローラ23から取得した目標往き水温の情報に基づいて冷媒吐出温度の目標値の初期値を設定する。ステップS4において、制御部9は、冷媒循環回路30及び温水循環回路40の運転を開始する。この際、制御部9は、循環ポンプ6を運転するとともに、往き水温検知センサ7で検知する往き水温が目標往き水温となり、かつ冷媒吐出温度検知センサ11で検知する冷媒吐出温度が、冷媒吐出温度の目標値である目標冷媒吐出温度となるように、送風機1のファン回転数、圧縮機3の運転周波数及び減圧装置10の開度を調整する。
【0027】
ステップS5において、制御部9は、冷媒循環回路30及び温水循環回路40の運転を開始してから予め設定した時間T1が経過したか否かを判断する。冷媒循環回路30及び温水循環回路40の運転を開始してから予め設定した時間T1が経過していれば、ステップS5でYesとなり、制御部9は、処理をステップS6に進める。冷媒循環回路30及び温水循環回路40の運転を開始してから予め設定した時間T1が経過していなければ、ステップS5でNoとなり、制御部9は処理をステップS5に戻す。
【0028】
ステップS6において、制御部9は、記憶部13に記憶された暖房運転時間、高圧検知回数又は霜取動作回数に基づき、高圧検知回数又は霜取動作回数が、暖房運転時間の長さに応じて保護判定条件として予め設定された回数以上であるか否かを判断する。記憶部13に記憶された高圧検知回数又は霜取動作回数が、保護判定条件として予め設定された回数以上である場合は、ステップS6でYesとなり、制御部9は、処理をステップS7に進める。記憶部13に記憶された冷媒の高圧検知回数及び霜取動作回数が、保護判定条件として予め設定された回数未満であれば、ステップS6でNoとなり、制御部9は、処理をステップS6に戻す。
【0029】
制御部9は、高圧検知回数又は霜取動作回数が保護判定条件として設定された回数以上である場合は、温水熱交換器4に圧力差又は温度差の繰り返しストレスが加わることで温水熱交換器4が故障する可能性があると判断することになる。
【0030】
ステップS7において、制御部9は、目標往き水温の設定可能範囲の上限値を下げる。保護判定条件として設定される回数と目標往き水温の設定可能範囲の上限値との関係は、記憶部13に予め記憶されており、制御部9は、暖房運転時間の長さに応じて保護判定条件として予め設定された回数に応じて目標往き水温の設定可能範囲の上限値を異なる値に設定する。
【0031】
ステップS8において、制御部9は、目標往き水温の設定可能範囲の上限値を下げてから予め設定した時間T2が経過したか否かを判断する。目標往き水温の設定可能範囲の上限値を下げてから予め設定した時間T2が経過していれば、ステップS8でYesとなり、制御部9は、処理をステップS6に戻す。目標往き水温の設定可能範囲の上限値を下げてから予め設定した時間T2が経過していなければ、ステップS8でNoとなり、制御部9は処理をステップS8に戻す。
【0032】
図3は、実施の形態1に係る温水熱源機の高圧検知回数又は霜取動作回数の保護判定条件と暖房運転時間との関係を示す図である。
図3に示すように、暖房運転時間が長くなるほど高圧検知回数又は霜取動作回数の保護判定条件となる回数が増加する関係としており、予め設定されたある暖房運転時間以上では判定の保護判定条件となる回数を一定としている。これにより、暖房運転時間が予め設定されたある暖房運転時間よりも短い早期においては、高圧検知回数又は霜取動作回数が少ない段階で目標往き水温の設定可能範囲の上限値を下げることによって繰り返しストレスによるプレート熱交換器の故障を予防することができる。また、暖房運転時間が予め設定されたある暖房運転時間以上の場合は、高圧検知回数及び霜取動作回数が保護判定条件となる一定の回数以上の場合に目標往き水温の設定可能範囲の上限値を下げることによって繰り返しストレスによるプレート熱交換器の故障を抑制することができる。
【0033】
図3には、暖房運転時間が予め設定されたある暖房運転時間よりも短い時間帯では、暖房運転時間と保護判定条件となる回数とが線形の関係である例を示したが、暖房運転時間と保護判定条件となる回数とが非線形の関係にあってもよい。
【0034】
また、ステップS7で設定する目標往き水温の設定可能範囲の上限値は、高圧検知回数又は霜取動作回数が保護判定条件として予め設定された回数以上となった時点での暖房運転時間によって、目標往き水温の設定可能範囲の上限値が異なる関係としてもよいし、高圧検知回数及び霜取動作回数が保護判定条件として予め設定された回数以上となった時点での暖房運転時間によらず目標往き水温の設定可能範囲の上限値が予め設定した値だけ低くなる関係としてもよい。
【0035】
また、ステップS7で設定する目標往き水温の設定可能範囲の上限値は、保護判定条件として予め設定された回数が多いほど、目標往き水温の設定可能範囲の上限値が低くなる関係としてもよいし、保護判定条件として予め設定された回数によらず目標往き水温の設定可能範囲の上限値が予め設定した値だけ低くなる関係としてもよい。
【0036】
実施の形態1に係る温水熱源機21は、高圧検知回数又は霜取動作回数が、暖房運転時間の長さに応じて保護判定条件として予め設定された回数よりも多い過負荷の状態である場合には、目標往き水温の設定可能範囲の上限値を下げるため、温水熱交換器4の破壊を抑制し部品寿命を確保するとともに、冷媒漏洩を抑制することが可能となる。
【0037】
実施の形態2.
実施の形態2に係る温水熱源機21は、実施の形態1に係る温水熱源機21と構成が同様であるが、動作が異なっている。
図4は、実施の形態2に係る温水熱源機の動作の流れを示すフローチャートである。ステップS11からステップS16それぞれの動作は、実施の形態1に係る温水熱源機21のステップS1からステップS6の動作と同様である。
【0038】
ステップS17において、制御部9は、圧縮機の運転周波数の設定可能範囲の上限値を下げる。保護判定条件と圧縮機の運転周波数の設定可能範囲の上限値との関係は、記憶部13に予め記憶されており、制御部9は、暖房運転時間の長さに応じて設定される保護判定条件に応じて圧縮機の運転周波数の設定可能範囲の上限値を異なる値に設定する。
【0039】
ステップS18において、制御部9は、圧縮機の運転周波数の設定可能範囲の上限値を下げてから予め設定した時間T2が経過したか否かを判断する。圧縮機の運転周波数の設定可能範囲の上限値を下げてから予め設定した時間T2が経過していれば、ステップS18でYesとなり、制御部9は、処理をステップS16に戻す。圧縮機の運転周波数の設定可能範囲の上限値を下げてから予め設定した時間T2が経過していなければ、ステップS18でNoとなり、制御部9は処理をステップS18に戻す。
【0040】
図5は、実施の形態2に係る温水熱源機の保護判定条件として予め設定される回数と圧縮周波数との関係を示す図である。
図5に示すように、保護判定条件として予め設定される回数が多いほど、圧縮機の運転周波数の設定可能範囲の上限値が低くなる関係となっている。これにより、冷媒圧力及び冷媒温度が高くなることと、それにより熱源側熱交換器2に霜が付く量とを抑制することで霜取動作回数が増えることを抑制し、圧力差と温度差とによる繰り返しストレスがプレート熱交換器に継続してかかることを避け、プレート熱交換器の故障を抑制することができる。
【0041】
ステップS17で設定する圧縮機の運転周波数の設定可能範囲の上限値は、保護判定条件として予め設定された回数以上となった時点での暖房運転時間によって、圧縮機の運転周波数の設定可能範囲の上限値が異なる関係としてもよいし、保護判定条件として予め設定された回数以上となった暖房運転時間によらず圧縮機の運転周波数の設定可能範囲の上限値が予め設定した値だけ低くなる関係としてもよい。
【0042】
また、ステップS17で設定する圧縮機の運転周波数の設定可能範囲の上限値は保護判定条件をとして予め設定された回数によらず、圧縮機の運転周波数の設定可能範囲の上限値が予め設定した値だけ低くなる関係としてもよい。
【0043】
実施の形態2に係る温水熱源機21は、暖房運転時間に対し、過負荷の状態である場合には圧縮機の運転周波数の設定可能範囲の上限値を下げることで、温水熱交換器4の破壊を抑制し部品寿命を確保するとともに、冷媒漏洩を抑制することが可能となる。
【0044】
図6は、実施の形態1又は実施の形態2に係る温水熱源機の制御部のハードウェア構成の一例を示す図である。
図6に示すように、制御部9は、プロセッサ91と、メモリ92と、記憶装置93と、インタフェース回路94とを備える。プロセッサ91、メモリ92、記憶装置93及びインタフェース回路94は、バス95によって互いにデータの送受信が可能である。
【0045】
プロセッサ91は、記憶装置93に記憶された処理プログラムをメモリ92に読み出して実行することによって、制御部9の機能を実行する。プロセッサ91は、往き水温検知センサ7、戻り水温検知センサ8、冷媒吐出温度検知センサ11、高圧検知センサ12及び霜取温度センサ14との情報の送受信を、インタフェース回路94を用いて実行する。なお、制御部9の一部又は全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)及びFPGA(Field Programmable Gate Array)に代表されるハードウェアで構成することもできる。すなわち、制御部9の一部又は全部を実現する処理回路は、専用のハードウェアであってもよい。
【0046】
また、プロセッサ91は、磁気ディスク、USB(Universal Serial Bus)メモリ、光ディスク、コンパクトディスク及びDVD(Digital Versatile Disc)のうち一つ以上の記憶媒体から不図示のインタフェースを介して処理プログラムを読み出し記憶装置93に記憶して実行することもできる。
【0047】
以上の実施の形態に示した構成は、内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 送風機、2 熱源側熱交換器、3 圧縮機、4 温水熱交換器、4a 一次流路、4b 二次流路、5 バッファタンク、6 循環ポンプ、7 往き水温検知センサ、8 戻り水温検知センサ、9 制御部、10 減圧装置、11 冷媒吐出温度検知センサ、12 高圧検知センサ、13 記憶部、14 霜取温度センサ、21 温水熱源機、22 室内放熱器、23 コントローラ、30 冷媒循環回路、40 温水循環回路、50 暖房装置、91 プロセッサ、92 メモリ、93 記憶装置、94 インタフェース回路、95 バス、231 運転操作部、232 往き水温設定部。