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特開2024-162382杭撤去用のケーシングと、杭撤去用の地盤解し装置及び地盤解し方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162382
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】杭撤去用のケーシングと、杭撤去用の地盤解し装置及び地盤解し方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 11/00 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
E02D11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077827
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山黒 寛矢
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050AA07
2D050CB05
2D050DA03
(57)【要約】
【課題】引き抜かれた既存杭の外周面に付着する付着地盤を落下させ易くでき、このことによって、埋戻し土の埋戻し量を精度よく特定することができ、さらには、埋戻し土の埋戻し量を必要以上に多くさせることのない、杭撤去用のケーシングと、杭撤去用の地盤解し装置及び地盤解し方法を提供すること。
【解決手段】地盤G内に残存する杭10を撤去する際に、杭10の外周面12に付着する付着地盤G1を解す、杭撤去用のケーシング50であり、杭10よりも大径のケーシング本体20と、ケーシング本体20の少なくとも下端22もしくは下端近傍の内面21に取り付けられて杭10を包囲する、環状でメッシュ状の面材30とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤内に残存する杭を撤去する際に、該杭の外周面に付着する付着地盤を解す、杭撤去用のケーシングであって、
前記杭よりも大径のケーシング本体と、
前記ケーシング本体の少なくとも下端もしくは下端近傍の内面に取り付けられて、前記杭を包囲する、環状でメッシュ状の面材とを有することを特徴とする、杭撤去用のケーシング。
【請求項2】
前記面材が、前記ケーシング本体の内部において、該ケーシング本体の長手方向に間隔を置いて複数設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の杭撤去用のケーシング。
【請求項3】
前記面材の環状の内側端と前記杭の外周面との間に隙間が設けられるように、該面材の寸法が設定されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の杭撤去用のケーシング。
【請求項4】
地盤内に残存する杭を撤去する際に、該杭の外周面に付着する付着地盤を解す、杭撤去用のケーシングであって、
前記杭よりも大径のケーシング本体と、
前記ケーシング本体の内面に取り付けられている突起とを有することを特徴とする、杭撤去用のケーシング。
【請求項5】
前記突起が板状を呈し、該突起が、前記ケーシング本体の内面に対して前記ケーシング本体の回転方向に傾斜した姿勢で取り付けられていることを特徴とする、請求項4に記載の杭撤去用のケーシング。
【請求項6】
前記突起が板状を呈し、該突起が、前記ケーシング本体の内面に対して前記ケーシング本体の回転方向と逆方向に傾斜した姿勢で取り付けられていることを特徴とする、請求項4に記載の杭撤去用のケーシング。
【請求項7】
複数の前記突起が、前記ケーシング本体の内面において、該ケーシング本体の長手方向に相互にずれた位置に取り付けられていることを特徴とする、請求項5又は6に記載の杭撤去用のケーシング。
【請求項8】
前記突起の下方の端面が、側面視で先鋭であることを特徴とする、請求項5又は6に記載の杭撤去用のケーシング。
【請求項9】
地盤内に残存する杭を撤去する際に、該杭の外周面に付着する付着地盤を解す、杭撤去用の地盤解し装置であって、
ベースマシンと、
前記ベースマシンに対して昇降自在に取り付けられている、オーガと、
前記オーガに対して、回転自在に取り付けられている、請求項1又は4に記載の杭撤去用のケーシングとを有することを特徴とする、杭撤去用の地盤解し装置。
【請求項10】
地盤内に残存する杭を撤去する際に、該杭の外周面に付着する付着地盤を解す、杭撤去用の地盤解し方法であって、
前記杭よりも大径のケーシング本体と、
前記ケーシング本体の少なくとも下端もしくは下端近傍の内面に取り付けられている環状でメッシュ状の面材とを有する、杭撤去用のケーシングを準備する、準備工程と、
平面視において前記面材の内側に前記杭を配置し、前記ケーシングを回転圧入して付着地盤を解す、解し工程とを有することを特徴とする、杭撤去用の地盤解し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭撤去用のケーシングと、杭撤去用の地盤解し装置及び地盤解し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
杭基礎で支持された構造物を撤去した後に新規の構造物を建設する施工において、旧構造物を支持する既存杭が新設杭の設計や施工に影響を与える場合には、既存杭を撤去し、地盤に生じた杭孔に対して、現地発生土や良質土、現地発生土とセメント系固化材等からなる流動化処理土といった埋戻し土を埋戻す施工が一般に行われる。
【0003】
杭の撤去方法には様々な方法があるが、一例を挙げると、既存杭よりも大径のケーシングを既存杭の周囲に回転圧入することにより既存杭と周囲の地盤の縁切りを行った後、クレーン等で杭を引き抜く方法が挙げられる。ケーシングの回転圧入の際には、ケーシングの先端から高圧水を噴射する等の補助工法を適用することにより、ケーシングの回転圧入性を良好にする方法が適用される場合もある。ケーシングが引き抜かれ、既存杭が引き抜かれて生じたケーシング径を備える杭孔(空洞)には、上記するように埋戻し土が埋戻されることになる。
【0004】
このように既存杭を引き抜いて撤去する際に、既存杭の外周面に付着した地盤(付着地盤)が完全に杭孔に落下する場合は、杭孔の体積と引き抜かれた杭の体積が略同一であると見なすことができるため、埋戻し土の埋戻し量を比較的高い精度で特定することができる。例えば、既存杭の周辺地盤が砂質系(礫質系を含む)の地盤である場合は、粘着性が低いことから既存杭の外周面に付着する地盤は落下し易い。
【0005】
これに対して、周辺地盤が粘着性を有する粘性土の場合は、引き抜かれた既存杭の外周面に付着する付着地盤が落下せず、既存杭とともに撤去されることになる。この際、どの程度の体積の付着地盤が既存杭とともに撤去されるかは定かでなく、従って、既存杭撤去後の杭孔の体積を特定することができない。そのため、埋戻し土を必要以上に多く準備することによって不経済な施工となり、逆に埋戻し土が不足する場合は追加の埋戻し土の準備に手間と時間を要し、施工時間を長期化させることに繋がる。
【0006】
以上のことから、既存杭の撤去に際して、杭の外周面に付着する付着地盤を解すことにより、杭の撤去の際に付着地盤が杭孔に効果的に落下し、埋戻し土の埋戻し量を精度よく特定できる技術が望まれる。
【0007】
ここで、特許文献1には、建造物の解体除去後、地中に残る基礎杭の周囲を掘って基礎杭を引き抜き易くする、杭周囲管状空間掘削用ケーシングが提案されている。この杭周囲管状空間掘削用ケーシングは、ケーシング本体の下端に掘削刃を備え、ケーシング本体の外周面に掘削土押上げ用の螺旋羽根を備える掘削用ケーシングにおいて、ケーシング本体の下方部分に排土用透孔を設け、透孔内側に掘削用ケーシングの回転方向から見て、前方へ向かって開き、かつ後方へ向かって閉じる鋤板を設け、掘削用ケーシングの回転に際して鋤板が杭周囲土を透孔を通して管状に排除するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10-298989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載される杭周囲管状空間掘削用ケーシングによれば、基礎杭を引き抜き易くできるとしている。ところで、この杭周囲管状空間掘削用ケーシングを適用した場合、ケーシング本体の外周面に螺旋羽根が取り付けられていることから、ケーシングによる掘削量が多くなる傾向にあり、このことに依拠して、杭が引き抜かれた後の杭孔も大きくなり、埋戻し土の埋戻し量が必要以上に多くなるといった課題がある。また、この杭周囲管状空間掘削用ケーシングでは、上記する課題、すなわち、引き抜かれた既存杭の外周面に付着する付着地盤が落下せず、既存杭撤去後の杭孔の体積を特定することができないといった課題を解消することはできない。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、引き抜かれた既存杭の外周面に付着する付着地盤を落下させ易くでき、このことによって、埋戻し土の埋戻し量を精度よく特定することができ、さらには、埋戻し土の埋戻し量を必要以上に多くさせることのない、杭撤去用のケーシングと、杭撤去用の地盤解し装置及び地盤解し方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成すべく、本発明による杭撤去用のケーシングの一態様は、
地盤内に残存する杭を撤去する際に、該杭の外周面に付着する付着地盤を解す、杭撤去用のケーシングであって、
前記杭よりも大径のケーシング本体と、
前記ケーシング本体の少なくとも下端もしくは下端近傍の内面に取り付けられて、前記杭を包囲する、環状でメッシュ状の面材とを有することを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、ケーシング本体の少なくとも下端もしくは下端近傍の内面に、杭を包囲する環状でメッシュ状の面材が取り付けられていることにより、ケーシングの回転圧入の際に環状でメッシュ状の面材が杭の外周面に付着する付着地盤を解し、杭が引き抜かれた際に付着地盤を杭の外周面から落下し易くできる。このことにより、杭の外周面に付着している付着地盤の殆どを杭孔に戻すことができ、杭の周辺地盤が粘着性のある粘性土等である場合においても、埋戻し土の埋戻し量を精度よく特定することが可能になる。さらに、ケーシング本体の外周面に螺旋羽根等が取り付けられていないことから、杭孔を必要以上に大きくすることがなく、従って、埋戻し土の埋戻し量が必要以上に多くなるといった問題も生じない。
【0013】
また、「ケーシング本体の少なくとも下端もしくは下端近傍」とは、1つの面材がケーシング本体の下端もしくは下端近傍に取り付けられている形態の他に、それ以外の面材が例えばケーシング本体の下端近傍よりも上方に取り付けられている形態を含む意味である。ケーシング本体の下端もしくは下端近傍に面材が取り付けられていることにより、ケーシング本体の回転圧入の際に、ケーシング本体の圧入深度までの付着地盤を解すことができる。
【0014】
ここで、本明細書において「解す」とは、文字通り地盤(付着地盤)を解すことの他に、付着地盤の掻き取り等も含む意味であり、杭の外周面から付着地盤の付着が解除されて落下し易い状態を形成する動作の全般を含んでいる。付着地盤を解す作用を奏する環状でメッシュ状の面材としては、鋼製のワイヤメッシュを環状に加工した部材を一例として挙げることができる。メッシュ状の面材では、複数のメッシュの網目を付着地盤が通過する過程で付着地盤が細粒化され、杭の外周面に対する付着地盤の付着が解除される。
【0015】
また、本発明による杭撤去用のケーシングの他の態様は、
前記面材が、前記ケーシング本体の内部において、該ケーシング本体の長手方向に間隔を置いて複数設けられていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、複数の面材が、ケーシング本体の内部において該ケーシング本体の長手方向に間隔を置いて設けられていることにより、付着地盤の解し効果をより一層高めることができる。
【0017】
また、本発明による杭撤去用のケーシングの他の態様は、
前記面材の環状の内側端と前記杭の外周面との間に隙間が設けられるように、該面材の寸法が設定されていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、面材の環状の内側端と杭の外周面との間に隙間(平面視で環状の隙間)が設けられていることにより、ケーシング本体の回転圧入の際の振動を隙間で吸収することができるため、杭の外周面と回転圧入される面材の内側端が摺接することに起因する、面材の摩耗による破損や、ケーシングの回転圧入の阻害といった問題の発生を防止できる。
【0019】
また、本発明による杭撤去用のケーシングの他の態様は、
地盤内に残存する杭を撤去する際に、該杭の外周面に付着する付着地盤を解す、杭撤去用のケーシングであって、
前記杭よりも大径のケーシング本体と、
前記ケーシング本体の内面に取り付けられている突起とを有することを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、ケーシング本体の内面に、面材に代わって突起が取り付けられていることにより、杭の外周面とケーシング本体の内面との間の隙間が比較的少ない場合で、ケーシング本体の内面に面材を取り付ける十分なスペースがない場合であっても、ケーシング本体の内面から内側へ張り出す張り出し長を容易に調整可能な突起によって付着地盤を解すことが可能になる。
【0021】
ここで、突起には、鋼板等の板状の部材や、鋼製ブロック等のブロック状の部材、鋼棒等の軸状の部材等が含まれる。
【0022】
また、本発明による杭撤去用のケーシングの他の態様は、
前記突起が板状を呈し、該突起が、前記ケーシング本体の内面に対して前記ケーシング本体の回転方向に傾斜した姿勢で取り付けられていることを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、板状の突起がケーシング本体の内面に対してケーシング本体の回転方向に傾斜した姿勢で取り付けられていることにより、突起が付着地盤に突き刺さり易くなり、突起による付着地盤の解し効果を高めることができる。
【0024】
また、本発明による杭撤去用のケーシングの他の態様は、
前記突起が板状を呈し、該突起が、前記ケーシング本体の内面に対して前記ケーシング本体の回転方向と逆方向に傾斜した姿勢で取り付けられていることを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、板状の突起がケーシング本体の内面に対してケーシング本体の回転方向と逆方向に傾斜した姿勢で取り付けられていることにより、回転する突起と付着地盤との抵抗が大きくなり、突起による付着地盤の解し効果を高めることができる。
【0026】
また、本発明による杭撤去用のケーシングの他の態様は、
複数の前記突起が、前記ケーシング本体の内面において、該ケーシング本体の長手方向に相互にずれた位置に取り付けられていることを特徴とする。
【0027】
本態様によれば、複数の突起が、ケーシング本体の長手方向に相互にずれた位置に取り付けられていることにより、突起による付着地盤の解し効果をより一層高めることができる。
【0028】
また、本発明による杭撤去用のケーシングの他の態様は、
前記突起の下方の端面が、側面視で先鋭であることを特徴とする。
【0029】
本態様によれば、突起の下方の端面が側面視で先鋭であることにより、突起が付着地盤に突き刺さり易くなり、突起による付着地盤の解し効果を高めることができる。
【0030】
また、本発明による杭撤去用の地盤解し装置の一態様は、
地盤内に残存する杭を撤去する際に、該杭の外周面に付着する付着地盤を解す、杭撤去用の地盤解し装置であって、
ベースマシンと、
前記ベースマシンに対して昇降自在に取り付けられている、オーガと、
前記オーガに対して、回転自在に取り付けられている、前記杭撤去用のケーシングとを有することを特徴とする。
【0031】
本態様によれば、本発明の杭撤去用のケーシングを、ベースマシンに昇降自在に取り付けられているオーガにて回転圧入することにより、杭の外周面に付着した付着地盤を効果的に解し、杭が引き抜かれた際に付着地盤を杭の外周面から落下し易くできる。尚、杭撤去施工においては、地盤解し装置によって付着地盤が解された後、地盤解し装置がケーシングを地上へ退避させ、次いでクレーン等により杭が引き抜かれて撤去されることになる。
【0032】
また、本発明による杭撤去用の地盤解し方法の一態様は、
地盤内に残存する杭を撤去する際に、該杭の外周面に付着する付着地盤を解す、杭撤去用の地盤解し方法であって、
前記杭よりも大径のケーシング本体と、
前記ケーシング本体の少なくとも下端もしくは下端近傍の内面に取り付けられている環状でメッシュ状の面材とを有する、杭撤去用のケーシングを準備する、準備工程と、
平面視において前記面材の内側に前記杭を配置し、前記ケーシングを回転圧入して付着地盤を解す、解し工程とを有することを特徴とする。
【0033】
本態様によれば、ケーシング本体の少なくとも下端もしくは下端近傍の内面に、杭を包囲する環状でメッシュ状の面材が取り付けられているケーシングを杭の周辺地盤内に回転圧入することにより、ケーシングの回転圧入の際に環状でメッシュ状の面材が杭の外周面に付着する付着地盤を解し、杭が引き抜かれた際に付着地盤を杭の外周面から落下し易くできる。尚、上記するように、面材に代わり、ケーシング本体の内面に突起が設けられているケーシングを回転圧入する地盤解し方法が適用されてもよい。
【発明の効果】
【0034】
以上の説明から理解できるように、本発明の杭撤去用のケーシングと、杭撤去用の地盤解し装置及び地盤解し方法によれば、引き抜かれた既存杭の外周面に付着する付着地盤を落下させ易くでき、このことによって、埋戻し土の埋戻し量を精度よく特定することができ、さらに、埋戻し土の埋戻し量を必要以上に多くさせないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】第1実施形態に係る杭撤去用のケーシングの一例を、撤去対象の杭とともに示す側面図である。
図2図1のII方向矢視図であって、環状でメッシュ状の面材がケーシング本体の内面に取り付けられている状態を示す平面図である。
図3】第1実施形態に係る杭撤去用のケーシングを回転圧入しながら、杭の外周面に付着した付着地盤を解している状態を示す図である。
図4】第2実施形態に係る杭撤去用のケーシングの一例の側面図である。
図5図4のV方向矢視図であって、板状の突起がケーシング本体の内面に取り付けられている状態を示す平面図である。
図6】実施形態に係る杭撤去用の地盤解し装置の一例の全体構成図であって、杭の外周面に付着した付着地盤を解している状態を示す図である。
図7】杭を引き抜く際に、造成された杭孔に付着地盤が落下して堆積している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、実施形態に係る杭撤去用のケーシングと、杭撤去用の地盤解し装置及び地盤解し方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0037】
[第1実施形態に係る杭撤去用のケーシング]
はじめに、図1乃至図3を参照して、第1実施形態に係る杭撤去用のケーシングの一例について説明する。ここで、図1は、第1実施形態に係る杭撤去用のケーシングの一例を、撤去対象の杭とともに示す側面図であり、図2は、図1のII方向矢視図であって、環状でメッシュ状の面材がケーシング本体の内面に取り付けられている状態を示す平面図である。また、図3は、第1実施形態に係る杭撤去用のケーシングを回転圧入しながら、杭の外周面に付着した付着地盤を解している状態を示す図である。
【0038】
ケーシング50は、地盤G内に残存して撤去対象である杭10の外径φ1よりもその内径φ3が大径のケーシング本体20と、ケーシング本体20の下端22の内面21に取り付けられて、地盤G内に圧入された際に杭10を包囲する、環状でメッシュ状の面材30とを有する。図示例では、環状の面材30の内径がφ4(>φ1)であり、ケーシング本体20の外径がφ2である。
【0039】
尚、図示例は、ケーシング本体20の内面21の下端22に、1つの面材30が取り付けられている形態であるが、内面21において、下端22よりも上方に別途の1つもしくは複数の面材がさらに取り付けられている形態であってもよい。
【0040】
また、ケーシング本体20には、その先端から高圧水が噴射される機構が装備されていてもよく、ケーシング本体20の先端から高圧水を噴射して地盤を破砕しながら回転圧入することにより、ケーシング本体20の回転圧入性が良好になる。
【0041】
ここで、撤去対象の杭10は、鉄筋コンクリート製の場所打ち杭の他、鋼管杭、PHC杭、SC杭等の既製杭が含まれる。地盤Gが粘着性のある粘性土等である場合は、杭10を地上へ引き抜くに際して、杭10の外周面12に付着した付着地盤G1が杭10とともに地上に引き上げられることになる。
【0042】
図2に示すように、面材30の外周端31は、ケーシング本体20の内面21に対して複数(図示例は4箇所)の溶接部25を介して取り付けられている。
【0043】
メッシュ状の面材30は例えばワイヤメッシュであり、面材30の内側端32と撤去対象の杭10の外周面12の間に所定幅の隙間28が形成されるように面材30の寸法(内径φ4)が設定されている。この隙間28の幅は、例えばケーシング本体20を回転圧入する際の振動幅よりも大きくなるように設定される。
【0044】
面材30の環状の内側端32と杭10の外周面12との間に、平面視で環状の隙間28が設けられていることにより、ケーシング本体20の回転圧入の際の振動を隙間28で吸収することができる。このことにより、杭10の外周面12と回転圧入される面材30の内側端32が摺接することに起因する、面材30の摩耗による破損や、ケーシング50の回転圧入が摺接にて阻害されるといった問題の発生を防止することができる。
【0045】
図3に示すように、地中に残存する杭10の外周にケーシング50を位置決めし、ケーシング50をX1方向に回転させながら下方へX2方向に圧入し、ケーシング50にて杭10とその周辺地盤Gとを縁切りし、杭10を引き上げ撤去し易くする。このケーシング50の回転圧入の際に、杭10の外周面12の周囲を、環状でメッシュ状の面材30が回転しながら下方へ移動する過程で、外周面12に付着している付着地盤G1が面材30にて解され、付着地盤G1が面材30のメッシュをY1方向に通過する過程で付着地盤G1が細粒化され、外周面12との付着が解消される。
【0046】
杭10の下方までケーシング50が回転圧入されることにより、杭10の外周面の全域における付着地盤G1が面材30にて解される。そのため、ケーシング50を地上へ退避させ、杭10を地上へ引き抜いて撤去する際に、杭10の外周面12に付着していた付着地盤G1の殆どを、ケーシング50と杭10を引き抜いてできた杭孔G3(図7参照)に落下させる(戻す)ことができる。
【0047】
例えば、地盤Gが粘着性のない砂質系や礫質系の地盤である場合は、杭10の引き抜きの際に付着地盤G1が杭10とともに引き上げられる可能性は極めて低い。対して、周辺地盤が粘着性のある粘性土等である場合は、杭10の外周面12に付着した付着地盤G1が杭10とともに引き上げられることになるが、この付着地盤G1の体積を特定もしくは予測することは不可能である。そのため、ケーシングを引き抜き、杭10を引き抜いた際にできる杭孔(空洞)の体積を特定することができない。
【0048】
造成された杭孔には、現地発生土とセメント系固化材等からなる流動化処理土等の埋戻し土を埋戻す施工が一般に行われるが、杭孔の体積が特定できないことから埋戻し土の埋戻し量を設定することができない。仮に、用意した埋戻し土の埋戻し量が過剰である場合は不経済な施工となり、逆に用意した埋戻し土が不足する場合は追加の埋戻し土の準備に手間と時間を要し、施工時間を長期化させることに繋がる。
【0049】
このように、従来の杭の撤去に際しては、埋戻し土の埋戻し量を特定できないことに起因する様々な課題があった。これに対し、杭撤去用のケーシング50を適用することにより、杭10の周辺地盤が粘性土であっても、杭10に付着した付着地盤G1を解して杭孔に落下させることにより、杭孔の体積を撤去された杭10の体積程度であると同定することができ、埋戻し土の埋戻し量を精度よく特定(予測)することが可能になる。
【0050】
また、ケーシング50は、ケーシング本体20の内部に面材30を備えている構成であり、ケーシング本体20の外周面に螺旋羽根等が取り付けられていないことから、杭孔を必要以上に大きくすることがなく、従って、埋戻し土の埋戻し量が必要以上に多くなるといった問題も生じない。
【0051】
[第2実施形態に係る杭撤去用のケーシング]
次に、図4図5を参照して、第2実施形態に係る杭撤去用のケーシングの一例について説明する。ここで、図4は、第2実施形態に係る杭撤去用のケーシングの一例の側面図であり、図5は、図4のV方向矢視図であって、板状の突起がケーシング本体の内面に取り付けられている状態を示す平面図である。
【0052】
ケーシング50Aは、面材30に代わり、複数の板状の突起40がケーシング本体20の内面21に取り付けられている点において、図1等に示すケーシング50と相違する。
【0053】
板状の突起40は鋼板により形成され、その下方の端面42は側面視で先鋭に加工されている。
【0054】
また、突起40は、ケーシング本体20の内面21に対して、ケーシング本体20の回転方向であるX1方向に対して角度θの傾斜した姿勢で取り付けられている。
【0055】
さらに、複数の突起40が、ケーシング本体20の長手方向に相互にずれた位置に取り付けられている。
【0056】
このように、板状の突起40がケーシング本体20の内面21に対してケーシング本体20の回転方向に傾斜した姿勢で取り付けられ、さらに、突起40の下方の端面42が側面視で先鋭に加工されていることにより、回転した突起40が付着地盤G1に突き刺さり易くなり、突起40による付着地盤G1の解し効果を高めることができる。また、複数の突起40がケーシング本体20の長手方向に相互にずれた位置に取り付けられていることにより、付着地盤G1の解し効果をより一層高めることができる。
【0057】
ここで、図示を省略するが、図示例とは反対に、板状の突起40が、ケーシング本体20の内面21に対してケーシング本体20の回転方向と逆方向に傾斜した姿勢で取り付けられている形態であってもよい。この形態によれば、回転する板状の突起40と付着地盤G1との抵抗が大きくなり、突起40による付着地盤G1の解し効果を抵抗によって高めることができる。
【0058】
また、図示例の回転方向に傾斜した板状の突起40と、不図示の回転方向と逆方向に傾斜した板状の突起40が混在した形態であってもよい。さらに、突起40は図示例の板状の形態の他に、ブロック状や軸状等であってもよい。
【0059】
図2図5を比較すると明らかであるが、環状の面材30は、比較的広い平面寸法を有し、対して、突起40は、その平面寸法も比較的小さく、ケーシング本体20の内面21からの張り出し長さを短く設定できる。すなわち、ケーシング本体20と杭10の径差が大きな場合は、環状の面材30を備えたケーシング50を適用するのがよく、径差が小さな場合は、突起40を備えたケーシング50Aを適用するのがよい。
【0060】
[実施形態に係る杭撤去用の地盤解し装置と地盤解し方法]
次に、図6図7を参照して、実施形態に係る杭撤去用の地盤解し装置と地盤解し方法の一例について説明する。ここで、図6は、実施形態に係る杭撤去用の地盤解し装置の一例の全体構成図であって、杭の外周面に付着した付着地盤を解している状態を示す図である。また、図7は、杭を引き抜く際に、造成された杭孔に付着地盤が落下して堆積している状態を示す図である。
【0061】
地盤解し装置70は、ベースマシン61と、ベースマシン61に装備されるリーダ63と、リーダ63に対して昇降自在に取り付けられているオーガ65と、オーガ65に対して回転自在に取り付けられているケーシング50、50Aとを有する。ここで、ケーシング本体20の全長は、例えば撤去対象の杭10の全長に相当する長さに設定されている。
【0062】
実施形態に係る地盤解し方法では、杭撤去用のケーシング50を備えた地盤解し装置70を準備する(準備工程)。
【0063】
次に、平面視において、ケーシング50を撤去対象の杭10の周囲に位置決めした後、オーガ65を回転駆動させながらリーダ63に沿って下方へX3方向に移動させることにより、ケーシング50は、撤去対象の杭10の周囲の地盤G内において、X1方向に回転しながら下方へX2方向に圧入される。
【0064】
ケーシング50の回転圧入の際に、杭10の外周面12の周囲を、環状でメッシュ状の面材30や複数の板状の突起40が回転しながら下方へ移動する過程で、外周面12に付着している付着地盤G1が面材30や突起40にて解され、外周面12との付着が解消される。
【0065】
杭10の下方までケーシング50が回転圧入されることにより、杭10の外周面12の全域における付着地盤G1が面材30にて解される(解し工程)。
【0066】
図7に示すように、ケーシング50を地上へ退避させ、杭10を不図示のクレーン等で地上へ引き抜いて撤去した際に、杭10の外周面12に付着していて解された付着地盤G1の殆どは、ケーシング50と杭10を引き抜いてできた杭孔G3に落下し、杭孔G3の下方に堆積する。
【0067】
従って、杭孔G3の空洞の体積V3は、引き抜かれた杭10の体積と同程度であると特定することができる。すなわち、杭10の体積に相当する体積V3の埋戻し量の埋戻し土を予め準備しておくことで、過不足のない量の埋戻し土にて杭孔G3が埋戻されることになる。
【0068】
上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0069】
10:杭(既存杭)
12:外周面
20:ケーシング本体
21:内面
22:下端
25:溶接部
28:隙間
30:面材
31:外周端
32:内側端
40:突起(板状の突起)
42:下方の端面
50,50A:杭撤去用のケーシング(ケーシング)
61:ベースマシン
63:リーダ
65:オーガ
70:杭撤去用の地盤解し装置(地盤解し装置)
G:地盤
G1:付着地盤
G3:杭孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7