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特開2024-162387超音波診断装置、情報処理装置、超音波診断システム及び超音波診断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162387
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】超音波診断装置、情報処理装置、超音波診断システム及び超音波診断方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077836
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】狩野 佑介
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601EE11
4C601GA18
4C601GA24
4C601GA25
4C601KK31
4C601KK38
(57)【要約】
【課題】過去の超音波検査における走査位置を再現して、検査者に対して、現在の被検体に対応するプローブ位置を提供すること。
【解決手段】実施形態の超音波診断装置は、特徴点位置取得部、プローブ位置取得部、特定部及び表示制御部を備える。特徴点位置取得部は、被検体の特徴部の位置を示す特徴点位置情報を取得する。プローブ位置取得部は、超音波プローブの位置を示す超音波プローブ位置情報を取得する。特定部は、現在の特徴点位置情報と、過去の超音波プローブ位置情報と過去の特徴点位置情報との相対位置を示す第1相対位置情報と、に基づいて、前記超音波プローブの走査に関する支援情報を特定する。表示制御部は、前記支援情報を表示するように制御を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の特徴部の位置を示す特徴点位置情報を取得する特徴点位置取得部と、
超音波プローブの位置を示す超音波プローブ位置情報を取得するプローブ位置取得部と、
現在の特徴点位置情報と、過去の超音波プローブ位置情報と過去の特徴点位置情報との相対位置を示す第1相対位置情報と、に基づいて、前記超音波プローブの走査に関する支援情報を特定する特定部と、
前記支援情報を表示するように制御を行う表示制御部と、
を備える超音波診断装置。
【請求項2】
前記特徴点位置取得部は、操作者により、前記被検体の特徴部に当てた場合、現在の超音波プローブ位置情報を、前記現在の特徴点位置情報として取得する、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記被検体に付されたマーカの位置を示すマーカ位置情報を取得するマーカ位置取得部と、を備え、
前記特定部は、過去のマーカ位置情報と前記過去の特徴点位置情報との相対位置を示す第2相対位置情報と、前記過去のマーカ位置情報と前記過去の超音波プローブ位置情報との相対位置を示す第3相対位置情報と、に基づいて、前記第1相対位置情報を特定する、
請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記マーカ位置取得部は、位置センサを備える、ウェアラブル端末又は前記マーカのうち、少なくとも1つから、前記過去のマーカ位置情報を取得する、
請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、位置センサを備えるウェアラブル端末に対して、前記支援情報を表示するように制御を行う、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記特徴点位置取得部は、ウェアラブル端末が画像処理により検出する前記特徴点位置情報を取得する、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記特徴部の位置とマーカの位置との相対距離が変化した場合、操作者に対して、再度、前記特徴部に前記超音波プローブを合わせることを要求する要求情報を表示するように制御を行い、
前記特徴点位置取得部は、前記操作者により、前記特徴部に前記超音波プローブを当てた場合、現在の超音波プローブ位置情報を、現在の特徴点位置情報として取得する、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記特定部は、ウェアラブル端末に搭載された複数のセンサを統合することにより、前記第1相対位置情報、前記第2相対位置情報、前記第3相対位置情報のうち、いずれか一つを特定する、
請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記複数のセンサは、位置、加速度、角速度、距離画像、画像に関するセンサのうち、いずれかを含む、
請求項8に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記支援情報は、過去の超音波プローブ位置情報と、前記被検体を撮像することで得られる超音波画像信号と、を含む情報である、
請求項5に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
被検体の特徴部の位置を示す特徴点位置情報を検出する特徴点位置検出部と、
現在の特徴点位置情報と、過去の超音波プローブ位置情報と過去の特徴点位置情報との相対位置を示す第1相対位置情報と、に基づいて、超音波プローブの走査に関する支援情報を表示する表示部と、
を備える、情報処理装置。
【請求項12】
被検体に対する超音波走査を行うことにより得られるエコー信号又は超音波データ及び前記超音波走査の位置情報を出力する超音波プローブと、
被検体の特徴部の位置を示す特徴点位置情報を検出する特徴点位置検出部と、
超音波プローブの位置を示す超音波プローブ位置情報を取得するプローブ位置取得部と、
現在の特徴点位置情報と、過去の超音波プローブ位置情報と過去の特徴点位置情報との相対位置を示す第1相対位置情報と、に基づいて、前記超音波プローブの走査に関する支援情報を特定する特定部と、
前記支援情報を表示するように制御を行う表示制御部と、
を備える、超音波診断システム。
【請求項13】
超音波診断装置による超音波診断方法であって、
被検体の特徴部の位置を示す特徴点位置情報を取得する特徴点位置取得ステップと、
超音波プローブの位置を示す超音波プローブ位置情報を取得するプローブ位置取得ステップと、
現在の特徴点位置情報と、過去の超音波プローブ位置情報と過去の特徴点位置情報との相対位置を示す第1相対位置情報と、に基づいて、前記超音波プローブの走査に関する支援情報を特定する特定ステップと、
前記支援情報を表示するように制御を行う表示制御ステップと、
を含む超音波診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断装置、情報処理装置、超音波診断システム及び超音波診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置を用いた超音波検査において、超音波プローブのプローブ位置と、超音波診断装置が撮像した超音波画像との位置関係が直感的に把握することが難しく、効率的かつ効果的に検査を行うためには、検査者の技量に左右される場合がある。
【0003】
従来、超音波診断の対象である被検体の体表には、被検体の位置を検出するための印が付され、また、超音波プローブには、超音波プローブの位置を検出するための印が付され、超音波画像上の関心領域に対応する被検体の体表上の位置を把握する技術が提案されている。
【0004】
ここで、異なる検査間においては、被検体の位置を検出するための印を付される位置がずれる(異なる)場合、過去の超音波検査での操作位置を再現することが難しくなることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-255658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、過去の超音波検査における走査位置を再現して、検査者に対して、現在の被検体に対応するプローブ位置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の超音波診断装置は、特徴点位置取得部、プローブ位置取得部、特定部及び表示制御部を備える。特徴点位置取得部は、被検体の特徴部の位置を示す特徴点位置情報を取得する。プローブ位置取得部は、超音波プローブの位置を示す超音波プローブ位置情報を取得する。特定部は、現在の特徴点位置情報と、過去の超音波プローブ位置情報と過去の特徴点位置情報との相対位置を示す第1相対位置情報と、に基づいて、前記超音波プローブの走査に関する支援情報を特定する。表示制御部は、前記支援情報を表示するように制御を行う。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る超音波診断システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、第1実施形態に係る超音波診断装置が算出する相対位置情報を説明するための一例を示す模式図である。
図3図3は、第1実施形態に係る超音波診断装置が特定する支援情報を説明するための一例を示す模式図である。
図4図4は、第1実施形態に係る超音波診断装置が出力する支援情報の一例を示す模式図である。
図5図5は、第1実施形態に係る超音波診断システムによる処理の手順を説明するための一例を示すシーケンスである。
図6図6は、第1実施形態に係る超音波診断システムによる処理の手順を説明するための一例を示すシーケンスである。
図7図7は、変形例1に係る超音波診断装置が算出する相対位置情報を説明するための一例を示す模式図である。
図8図8は、変形例2に係る超音波診断装置が算出する相対位置情報を説明するための一例を示す模式図である。
図9図9は、第2実施形態に係る超音波診断システムの構成の一例を示すブロック図である。
図10図10は、第2実施形態に係る撮像装置が被検体を撮像する一例を示す模式図である。
図11図11は、変形例6に係る超音波診断装置が出力する支援情報の一例を示す模式図である。
図12図12は、変形例7に係る超音波診断装置が出力する支援情報の一例を示す模式図である。
図13図13は、変形例8に係る超音波診断装置が出力する支援情報の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願に係る超音波診断装置、情報処理装置、超音波診断システム及び超音波診断方法の実施形態を詳細に説明する。なお、本願に係る超音波診断装置、情報処理装置、超音波診断システム及び超音波診断方法は、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。また、以下の説明において、同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態における超音波診断システムについて説明する。図1は、第1実施形態に係る超音波診断システム1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、第1実施形態に係る超音波診断システム1は、超音波プローブ2、ディスプレイ3、入力インターフェース4、超音波診断装置5、トランスミッタ7及びウェアラブル端末8を備える。超音波診断装置5は、超音波プローブ2、ディスプレイ3、入力インターフェース4、トランスミッタ7及びウェアラブル端末8と、通信可能に接続される。
【0011】
超音波プローブ2は、超音波診断装置5に含まれる送受信回路51に接続される。超音波プローブ2は、例えば、プローブ本体に複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、送受信回路51から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ2は、被検体Sからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ2は、プローブ本体において、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。なお、超音波プローブ2は、超音波診断装置5と着脱自在に接続される。
【0012】
超音波プローブ2から被検体Sに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Sの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ2が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0013】
超音波プローブ2は、被検体に対する超音波走査を行うことにより得られるエコー信号又は超音波データ及び超音波走査の位置情報を出力する。なお、超音波プローブ2は、複数の圧電振動子が一列で配置された1次元超音波プローブの複数の圧電振動子を機械的に揺動する超音波プローブや、複数の圧電振動子が格子状に2次元で配置された2次元超音波プローブである超音波プローブであり、被検体Sを3次元でスキャンすることが可能である。
【0014】
ディスプレイ3は、超音波診断システム1の操作者が入力インターフェース4を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、超音波診断装置5において生成された超音波画像や表示情報等を表示したりする。また、ディスプレイ3は、超音波診断装置5の処理状況や処理結果を操作者に通知するために、各種のメッセージや表示情報を表示する。また、ディスプレイ3は、スピーカーを有し、音声を出力することもできる。
【0015】
入力インターフェース4は、所定の位置(例えば、関心領域等)の設定や、画像の表示方向の設定、数値の入力、モードの切り替え等を行うための操作を受け付ける。例えば、入力インターフェース4は、トラックボール、スイッチ、ボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチモニタ、光学センサを用いた非接触入力回路及び音声入力回路等によって実現される。
【0016】
入力インターフェース4は、後述する処理回路55に接続されており、操作者から受け付けた入力操作を電気信号へ変換し処理回路55へと出力する。なお、本明細書において入力インターフェース4は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路55へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェースの例に含まれる。
【0017】
第1位置センサ6は、超音波プローブ2の位置を示す位置情報を取得するための装置である。トランスミッタ7は、超音波プローブ2の位置を示す超音波プローブ位置情報及びウェアラブル端末8の位置を示す端末位置情報を取得するための装置である。トランスミッタ7は、自装置を中心として外側に向かって磁場を形成する装置である。トランスミッタ7は、超音波診断装置5の本体の近傍の任意の位置に配置される。
【0018】
第1位置センサ6は、例えば、磁気センサである。第1位置センサ6は、超音波プローブ2に取り付けられる。第1位置センサ6は、トランスミッタ7によって形成された3次元の磁場の強度及び傾きを検出する。第1位置センサ6は、検出した磁場の情報に基づいて、トランスミッタ7を原点とする空間における自装置の位置(座標及び角度)を算出し、算出した位置を超音波診断装置5に送信する。これにより、第1位置センサ6は、超音波プローブ2の位置を示す超音波プローブ位置情報を超音波診断装置5に送信する。
【0019】
ウェアラブル端末8は、例えば、ヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display:HMD)や、VR、MR又はAR用のゴーグル等によって実現される。ウェアラブル端末8は、情報処理装置の一例である。ウェアラブル端末8は、超音波診断装置5において生成された超音波画像や表示情報等を表示したりする。また、ウェアラブル端末8は、超音波診断装置5の処理状況や処理結果を操作者に通知するために、各種のメッセージや表示情報を表示しても良い。
【0020】
さらに、ウェアラブル端末8は、第2位置センサ9を備える。第2位置センサ9は、例えば、磁気センサである。第2位置センサ9は、トランスミッタ7によって形成された3次元の磁場の強度及び傾きを検出する。第2位置センサ9は、検出した磁場の情報に基づいて、トランスミッタ7を原点とする空間における自装置の位置(座標及び角度)を算出し、算出した位置を超音波診断装置5に送信する。これにより、第2位置センサ9は、ウェアラブル端末8の位置を示す端末位置情報を超音波診断装置5に送信する。
【0021】
ウェアラブル端末8は、特徴点位置検出機能、マーカ位置検出機能及び表示機能を備える。特徴点位置検出機能は、特徴点位置検出部の一例である。マーカ位置検出機能は、マーカ位置検出部の一例である。表示機能は、表示部の一例である。特徴点位置検出機能は、被検体の特徴点の位置を示す特徴点位置情報を検出する。マーカ位置検出機能は、被検体に付されたマーカの位置を示すマーカ位置情報を検出する。表示機能は、超音波プローブ2の走査に関する支援情報を表示する。詳細について、後述する。
【0022】
超音波診断装置5は、送受信回路51、Bモード処理回路52、ドプラ処理回路53、メモリ54及び処理回路55を有する。図1に示す超音波診断システム1においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ54へ記憶されている。送受信回路51、Bモード処理回路52、ドプラ処理回路53及び処理回路55は、メモリ54からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の各回路は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0023】
送受信回路51は、パルス発生器、送信遅延回路及びパルサ等を有し、超音波プローブ2に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、送信遅延回路は、超音波プローブ2から発生される超音波をビーム状に集束し、かつ、送信指向性を決定するために必要な圧電振動子毎の遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサは、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ2に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、送信遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面から送信される超音波の送信方向を任意に調整する。
【0024】
なお、送受信回路51は、後述する処理回路55の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0025】
また、送受信回路51は、プリアンプ、A/D(Analog/Digital)変換器、受信遅延回路及び加算器等を有し、超音波プローブ2が受信した反射波信号に対して各種処理を行って反射波データを生成する。プリアンプは、反射波信号をチャネル毎に増幅する。A/D変換器は、増幅された反射波信号をA/D変換する。受信遅延回路は、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器は、受信遅延回路によって処理された反射波信号の加算処理を行って反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
【0026】
Bモード処理回路52は、送受信回路51から反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理等を行って、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
【0027】
ドプラ処理回路53は、送受信回路51から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。第1実施形態の移動体は、血管内を流動する血液や、リンパ管内を流動するリンパ液等の流体である。
【0028】
なお、Bモード処理回路52及びドプラ処理回路53は、2次元の反射波データ及び3次元の反射波データの両方について処理可能である。すなわち、Bモード処理回路52は、2次元の反射波データから2次元のBモードデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のBモードデータを生成する。また、ドプラ処理回路53は、2次元の反射波データから2次元のドプラデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のドプラデータを生成する。
【0029】
3次元のBモードデータは、3次元走査範囲の各走査線上で設定された複数の点(サンプル点)それぞれに位置する反射源の反射強度に応じた輝度値が割り当てられたデータとなる。また、3次元のドプラデータは、3次元走査範囲の各走査線上で設定された複数の点(サンプル点)それぞれに、血流情報(速度、分散、パワー)の値に応じた輝度値が割り当てられたデータとなる。
【0030】
メモリ54は、処理回路55が生成した表示用の超音波画像を記憶する。また、メモリ54は、Bモード処理回路52やドプラ処理回路53が生成したデータを記憶する。さらに、メモリ54は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行うための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディマーク等の各種データを記憶する。
【0031】
処理回路55は、超音波診断装置5の処理全体を制御する。具体的には、処理回路55は、図1に示す制御機能551、画像生成機能552、表示制御機能553、プローブ位置取得機能554、特徴点位置取得機能555、マーカ位置取得機能556、算出機能557、及び特定機能558に対応するプログラムをメモリ54から読み出して実行することで、種々の処理を行う。ここで、制御機能551は、制御部の一例である。また、画像生成機能552は、画像生成部の一例である。さらに、プローブ位置取得機能554は、プローブ位置取得部の一例である。特徴点位置取得機能555は、特徴点位置取得部の一例である。また、マーカ位置取得機能556は、マーカ位置取得部の一例である。さらに、算出機能557は、算出部の一例である。特定機能558は、特定部の一例である。
【0032】
制御機能551は、入力インターフェース4を介して操作者から入力された各種設定要求や、メモリ54から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信回路51、Bモード処理回路52、ドプラ処理回路53の処理を制御する。
【0033】
画像生成機能552は、Bモード処理回路52及びドプラ処理回路53が生成したデータから超音波画像を生成する。すなわち、画像生成機能552は、Bモード処理回路52が生成した2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度にて表したBモード画像データを生成する。Bモード画像データは、超音波走査された領域内の組織形状が描出されたデータとなる。また、画像生成機能552は、ドプラ処理回路53が生成した2次元のドプラデータから移動体情報を表すドプラ画像データを生成する。ドプラ画像データは、速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又は、これらを組み合わせた画像データである。ドプラ画像データは、超音波走査された領域内を流動する流体に関する流体情報を示すデータとなる。
【0034】
ここで、画像生成機能552は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像を生成する。具体的には、画像生成機能552は、超音波プローブ2による超音波の走査形態に応じて座標変換を行うことで、表示用の超音波画像を生成する。
【0035】
また、画像生成機能552は、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行う。また、画像生成機能552は、超音波画像に、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディマーク等を合成する。
【0036】
すなわち、Bモードデータ及びドプラデータは、スキャンコンバート処理前の超音波画像データであり、画像生成機能552が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の超音波画像である。なお、Bモードデータ及びドプラデータは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。
【0037】
さらに、画像生成機能552は、Bモード処理回路52が生成した3次元のBモードデータに対して座標変換を行うことで、3次元のBモード画像データを生成する。また、画像生成機能552は、ドプラ処理回路53が生成した3次元のドプラデータに対して座標変換を行うことで、3次元のドプラ画像データを生成する。3次元のBモードデータ及び3次元のドプラデータは、スキャンコンバート処理前のボリュームデータとなる。すなわち、画像生成機能552は、「3次元のBモード画像データや3次元のドプラ画像データ」を「3次元の超音波画像データであるボリュームデータ」として生成する。
【0038】
さらに、画像生成機能552は、ボリュームデータをディスプレイ3にて表示するための各種の2次元画像データ(超音波画像)を生成するために、ボリュームデータに対してレンダリング処理を行うことができる。
【0039】
表示制御機能553は、メモリ54が記憶する表示用の超音波画像をディスプレイ3にて表示するように制御する。また、表示制御機能553は、各機能による処理結果をディスプレイ3にて表示するように制御する。例えば、表示制御機能553は、表示情報をディスプレイ3にて表示するように制御する。
【0040】
プローブ位置取得機能554は、超音波プローブ2が送信した超音波プローブ位置情報を取得する。例えば、プローブ位置取得機能554は、操作者により、被検体Sの特徴点に当てた場合、超音波プローブ2が送信した超音波プローブ位置情報を取得する。また、例えば、プローブ位置取得機能554は、操作者により、被検体Sの体表に当て、走査する場合、超音波プローブ2が送信した超音波プローブ位置情報を取得する。この場合の超音波プローブ位置情報は、操作者により走査が行われていることから、プローブ位置取得機能554は、走査位置情報として取得する。
【0041】
特徴点位置取得機能555は、超音波プローブ2が送信した超音波プローブ位置情報を取得する。例えば、特徴点位置取得機能555は、操作者により、被検体Sの特徴点に当てた場合、超音波プローブ2が送信した超音波プローブ位置情報を、被検体Sの特徴点位置を示す特徴点位置情報として取得する。
【0042】
マーカ位置取得機能556は、ウェアラブル端末8が検出したマーカの位置を示すマーカ位置情報を取得する。例えば、マーカ位置取得機能556は、ウェアラブル端末8が被検体Sに付したマーカを検出した場合、ウェアラブル端末8が検出したマーカの位置を示すマーカ位置情報を取得する。
【0043】
算出機能557は、超音波プローブ2の位置と特徴点の位置との相対位置を示す第1相対位置情報を算出する。例えば、算出機能557は、プローブ位置取得機能554が取得した超音波プローブ位置情報と、特徴点位置取得機能555が取得した特徴点位置情報と、に基づいて、超音波プローブの位置と特徴点の位置との相対位置を示す第1相対位置情報を算出する。また、算出機能557は、特徴点の位置とマーカの位置との相対位置を示す第2相対位置情報を算出する。例えば、算出機能557は、特徴点位置取得機能555が取得した特徴点位置情報と、マーカ位置取得機能556が取得したマーカ位置情報と、に基づいて、特徴点の位置とマーカの位置との相対位置を示す第2相対位置情報を算出する。
【0044】
さらに、算出機能557は、マーカの位置と超音波プローブ2の位置の相対位置を示す第3相対位置情報を算出する。例えば、算出機能557は、マーカ位置取得機能556が取得したマーカ位置情報と、プローブ位置取得機能554が取得した超音波プローブ位置情報と、に基づいて、マーカの位置と超音波プローブの位置の相対位置を示す第3相対位置情報を算出する。なお、第1相対位置情報、第2相対位置情報及び第3相対位置情報を総称して、以後、相対位置情報ともいう。
【0045】
ここで、算出機能557が算出する相対位置情報について、図2を用いて説明する。図2は、第1実施形態に係る超音波診断装置5が算出する相対位置情報を説明するための一例を示す模式図である。図2には、ウェアラブル端末8を装着し、超音波プローブ2を操作する操作者D及び体表にマーカを付す被検体Sを示す。マーカは、ウェアラブル端末8に表示するための基準点となる印である。
【0046】
マーカは、検査毎に位置を変更しても良く、マーカの位置は、例えば、走査の妨げになる場所を避けるようにして位置すると良い。また、被検体Sは、超音波プローブ2と位置合わせをするための特徴点を設定する。特徴点は、操作者Dが認識しやすい、かつ、位置の変化がない場所に設定することが好ましく、例えば、被検体Sの臍や乳頭等に設定することが好ましい。また、特徴点は、操作者Dが認識しやすい、かつ、位置の変化がない場所に設定するため、特徴部ともいう。図2において、特徴点は、被検体Sの臍として説明する。
【0047】
図2に示すH、F、M、P及びTは、それぞれ、ウェアラブル端末8の位置情報、特徴点の位置情報、マーカの位置情報、超音波プローブ位置情報及びトランスミッタ7の位置情報に対応するものである。
【0048】
算出機能557は、プローブ位置取得機能554が取得した超音波プローブ位置情報Pと、特徴点位置取得機能555が取得した特徴点位置情報Fと、に基づいて、超音波プローブ2の位置と特徴点位置との相対位置を示す第1相対位置情報を算出する。ここで、第1相対位置情報を、例えば、ベクトルFで示した場合、以下の式(1)で表すことができる。
【0049】
【数1】
【0050】
なお、ベクトルF及びベクトルMの詳細は後述する。
【0051】
また、算出機能557は、特徴点位置取得機能555が取得した特徴点位置情報と、マーカ位置取得機能556が取得したマーカ位置情報と、に基づいて、特徴点の位置とマーカの位置との相対位置を示す第2相対位置情報を算出する。ここで、第2相対位置情報を、例えば、ベクトルFで示した場合、以下の式(2)で表すことができる。
【0052】
【数2】
【0053】
ここで、Pは、操作者により、被検体Sの特徴点に当てた場合、第1位置センサ6から送信される超音波プローブ位置情報とする。また、ベクトルPTは、超音波プローブ2の位置情報である。さらに、ベクトルTHは、トランスミッタ7を基準とするウェアラブル端末8の位置情報である。ベクトルHMは、ウェアラブル端末8を基準とするマーカの位置情報である。
【0054】
さらに、算出機能557は、マーカ位置取得機能556が取得したマーカ位置情報と、プローブ位置取得機能554が取得した超音波プローブ位置情報と、に基づいて、マーカの位置と超音波プローブの位置の相対位置を示す第3相対位置情報を算出する。ここで、第3相対位置情報を、例えば、ベクトルMで示した場合、以下の式(3)で表すことができる。
【0055】
【数3】
【0056】
ここで、ベクトルMHは、マーカ位置を基準とするウェアラブル端末8の位置情報である。また、ベクトルHTは、ウェアラブル端末8の位置を基準とする、トランスミッタ7の位置である。さらに、ベクトルTPは、トランスミッタ7の位置を基準とする、超音波プローブ2の位置である。
【0057】
図1に戻る。特定機能558は、現在の特徴点位置情報と、過去の超音波プローブ位置情報と過去の特徴点位置情報との相対位置を示す第1相対位置情報と、に基づいて、超音波プローブ2の走査に関する支援情報を特定する。具体的には、特定機能558は、特徴点位置取得機能555が取得した現在の特徴点位置情報と、算出機能557が算出した、過去の超音波プローブ位置情報と過去の特徴点位置情報との相対位置を示す第1相対位置情報と、に基づいて、支援情報を特定する。支援情報は、例えば、過去の超音波プローブ位置情報と、被検体Sを撮像することで得られる超音波画像信号と、を含む情報である。
【0058】
ここで、図3を用いて、特定機能558が特定する支援情報について、図3を用いて説明する。図3は、第1実施形態に係る超音波診断装置5が特定する支援情報を説明するための一例を示す模式図である。図3において、図2と同様の内容について説明は省略する。図3には、図2に加え、現在のマーカ位置M、現在の超音波プローブ位置情報P及び現在の特徴点位置情報Fを示す。なお、図3においては、マーカ位置情報M及び超音波プローブ位置情報Pは、過去に検査(走査)したときの位置情報である。また、被検体Sの特徴点は臍であり、大きく位置の変化がないため、過去と現在の特徴点位置は、変化がないものとする。
【0059】
図3において、特定機能558は、プローブ位置取得機能554が取得した、現在の特徴点位置情報Fと、過去の超音波プローブ位置情報Pと過去の特徴点位置情報Fとの相対位置を示す第1相対位置情報と、に基づいて、超音波プローブの走査に関する支援情報を特定する。この場合、支援情報は、以下の式(4)で表すことができる。
【0060】
【数4】
【0061】
特定機能558は、現在の特徴点位置情報Fと、過去の超音波プローブ位置情報Pと、過去の特徴点位置情報Fと、を合わせることで、支援情報を特定することができる。
【0062】
また、特定機能558は、過去のマーカ位置情報Mと過去の特徴点位置情報Fとの相対位置を示す第2相対位置情報と、過去のマーカ位置情報Mと過去の超音波プローブ位置情報Pとの相対位置を示す第3相対位置情報と、に基づいて、第1相対位置情報を特定しても良い。この場合、支援情報は、式(4)に対して、式(1)を代入することにより、以下の式(5)で表すことができる。
【0063】
【数5】
【0064】
図1に戻る。表示制御機能553は、位置センサを備えるウェアラブル端末8に対して、特定機能558が特定した支援情報を表示するように制御を行う。ここで、図4を用いて、表示制御機能553が、第2位置センサ9を備えるウェアラブル端末8に対して、特定機能558が特定した支援情報を表示するように制御を行う形態について説明する。図4は、第1実施形態に係る超音波診断装置5が出力する支援情報の一例を示す模式図である。
【0065】
図4には、操作者Dが超音波プローブ2を被検体Sの体表に当て、超音波プローブ2を操作している状態を示す。例えば、表示制御機能553は、過去の検査の走査軌跡及び超音波プローブ2の姿勢を含む支援情報を体表面上に表示させるよう制御を行う。また、支援情報は、超音波画像撮像の部位を含んでも良い。さらに、表示制御機能553が表示させる支援情報は、過去の検査に重ねて、現在の検査の各種ガイド情報を含んでも良い。
【0066】
次に、図5及び図6を用いて、第1実施形態に係る超音波診断システム1による処理の手順を説明する。図5及び図6は、第1実施形態に係る超音波診断システム1による処理の手順を説明するための一例を示すシーケンスである。
【0067】
操作者Dは、被検体Sの特徴点Fに超音波プローブ2を当てる(ステップS101)。続いて、超音波プローブ2は、超音波診断装置5に対して、超音波プローブ位置情報を送信する(ステップS102)。続いて、処理回路55のプローブ位置取得機能554は、超音波プローブ2が送信した超音波プローブ位置情報を取得する(ステップS103)。続いて、処理回路55の特徴点位置取得機能555は、超音波プローブ2が送信した超音波プローブ位置情報を取得する(ステップS104)。
【0068】
続いて、ウェアラブル端末8は、被検体Sに付したマーカの位置を検出する(ステップS105)。続いて、ウェアラブル端末8は、超音波診断装置5に対して、検出したマーカ位置情報を送信する(ステップS106)。続いて、処理回路55のマーカ位置取得機能556は、ウェアラブル端末8が検出したマーカの位置を示すマーカ位置情報を取得する(ステップS107)。
【0069】
続いて、ウェアラブル端末8は、超音波診断装置5に対して、ウェアラブル端末8の端末位置情報を送信する(ステップS108)。続いて、超音波プローブ2は、超音波診断装置5に対して、超音波プローブ位置情報を送信する(ステップS109)。続いて、処理回路55のプローブ位置取得機能554は、超音波プローブ2が送信した超音波プローブ位置情報(走査位置情報)を取得する(ステップS110)。
【0070】
続いて、処理回路55の算出機能557は、ステップS110において、プローブ位置取得機能554が取得した超音波プローブ位置情報(走査位置情報)と、ステップS104において、特徴点位置取得機能555が取得した特徴点位置情報と、に基づいて、超音波プローブの位置と特徴点の位置との相対位置を示す第1相対位置情報を算出する(ステップS111)。
【0071】
続いて、処理回路55の算出機能557は、ステップS104において、特徴点位置取得機能555が取得した特徴点位置情報と、ステップS107において、マーカ位置取得機能556が取得したマーカ位置情報と、に基づいて、特徴点の位置とマーカの位置との相対位置を示す第2相対位置情報を算出する(ステップS112)。
【0072】
続いて、処理回路55の算出機能557は、ステップS107において、マーカ位置取得機能556が取得したマーカ位置情報と、ステップS110において、プローブ位置取得機能554が取得した超音波プローブ位置情報と、に基づいて、マーカの位置と超音波プローブの位置の相対位置を示す第3相対位置情報を算出する(ステップS113)。本処理が終了すると、操作者Dによる、超音波プローブ2の検査は終了する。
【0073】
図6は、図5において、検査した被検体Sを再度検査するものとして説明する。つまり、図6における超音波診断システム1の処理は、過去の高音波プローブの走査に関する情報があるものとする。
【0074】
操作者Dは、被検体Sの特徴点Fに超音波プローブ2を当てる(ステップS121)。続いて、超音波プローブ2は、超音波診断装置5に対して、超音波プローブ位置情報を送信する(ステップS122)。続いて、処理回路55のプローブ位置取得機能554は、超音波プローブ2が送信した超音波プローブ位置情報を取得する(ステップS123)。続いて、処理回路55の特徴点位置取得機能555は、超音波プローブ2が送信した超音波プローブ位置情報を取得する(ステップS124)。
【0075】
続いて、処理回路55の特定機能558は、ステップS124において、特徴点位置取得機能555が取得した現在の特徴点位置情報と、ステップS111において、算出機能557が算出した、過去の超音波プローブ位置情報と過去の特徴点位置情報との相対位置を示す第1相対位置情報と、に基づいて、支援情報を特定する(ステップS125)。続いて、処理回路55の表示制御機能553は、ウェアラブル端末8に対して、特定機能558が特定した支援情報を表示するように制御を行う(ステップS126)。ステップS126の処理が終了すると、操作者Dは、支援情報を確認しながら、超音波プローブ2による検査を開始する。
【0076】
以上のように、第1実施形態に係る超音波診断装置5は、現在の特徴点位置情報と、過去の超音波プローブ位置情報と過去の特徴点位置情報との相対位置を示す第1相対位置情報と、に基づいて、超音波プローブ2の走査に関する支援情報を特定し、支援情報を表示するように制御を行う。
【0077】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、例えば、操作者Dが過去に超音波プローブ2による検査を行った被検体Sに対して、再度超音波プローブ2による検査を行う場合、超音波診断装置5は、過去の超音波プローブ2の走査に関する支援情報を操作者Dが装着するウェアラブル端末8に表示するよう制御を行う。
【0078】
これにより、超音波診断装置5は、過去の超音波プローブ2による検査での走査位置を再現して、操作者Dに対して、超音波プローブ2の位置をガイドすることができる。
【0079】
(変形例1)
上述した第1実施形態では、被検体Sに付したマーカは、ウェアラブル端末8により、マーカの位置を特定する形態について説明したが、これに限定されない。例えば、被検体Sに付したマーカは、位置付きセンサを備えても良い。図7は、図2に示すマーカに対して、位置センサを備えた形態の一例を示す模式図である。なお、図7に示すMは、位置センサを備えるマーカの位置情報に対応するものである。
【0080】
変形例1の場合、マーカ位置取得機能556は、位置センサを備えるマーカが送信したマーカ位置情報を取得する。また、算出機能557が算出する第2相対位置情報を、例えば、ベクトルFで示した場合、以下の式(6)で表すことができる。
【0081】
【数6】
【0082】
ここで、ベクトルTMは、トランスミッタ7を基準とするマーカの位置情報である。
【0083】
また、変形例1の場合、算出機能557が算出する第3相対位置情報を、例えば、ベクトルMで示した場合、以下の式(7)で表すことができる。
【0084】
【数7】
【0085】
ここで、ベクトルMTは、マーカ位置を基準とするトランスミッタ7の位置である。これにより、位置センサを備えるマーカである場合でも、超音波診断装置5は、第2相対位置情報及び第3相対位置情報を算出することができる。
【0086】
(変形例2)
上述した超音波プローブ2は、例えば、マーカをさらに備えても良い。図8は、図2に示す超音波プローブ2に対して、マーカを備えた形態の一例を示す模式図である。なお、図8に示すMは、位置センサを備える超音波プローブ2の位置情報に対応するものである。この場合、超音波プローブ22の位置情報を示すPとMは、略同じ位置である。
【0087】
変形例2の場合、算出機能557が算出する第1相対位置情報を、例えば、ベクトルFで示した場合、以下の式(8)で表すことができる。
【0088】
【数8】
【0089】
ここで、ベクトルMは、被検体Sに付したマーカを基準とする、マーカを備えた超音波プローブ2の位置情報であり、第3相対位置情報である。
【0090】
また、変形例2の場合、例えば、算出機能557が算出する第3相対位置情報である、ベクトルMを、以下の式(9)で表すことができる。
【0091】
【数9】
【0092】
さらに、特定機能558が特定する支援情報を、例えば、ベクトルHMで示した場合、支援情報は、以下の式(10)で表すことができる。
【0093】
【数10】
【0094】
これにより、位置センサを備える超音波プローブ2である場合でも、超音波診断装置5は、第1相対位置情報を算出し、支援情報を特定することができる。
【0095】
(第2実施形態)
第2実施形態における超音波診断システムは、上述した第1実施形態に加え、撮像装置を備える形態について説明する。図9は、第2実施形態に係る超音波診断システム11の構成の一例を示すブロック図である。
【0096】
図9に示すように、第2実施形態に係る超音波診断システム11は、超音波プローブ2、ディスプレイ3、入力インターフェース4、超音波診断装置5、トランスミッタ7、ウェアラブル端末8及び撮像装置10を備える。超音波診断装置5は、超音波プローブ2、ディスプレイ3、入力インターフェース4、トランスミッタ7、ウェアラブル端末8及び撮像装置10と、通信可能に接続される。なお、図9について、図1で示す同様の構成は、説明を省略する。
【0097】
図10は、撮像装置10が被検体Sを撮像する一例を示す模式図である。具体的には、撮像装置10は、被検体Sを撮像する。撮像装置10は、例えば、検査室内に固定されたカメラでも良いし、検査室内を移動可能な移動機構を備えたカメラでも良い。また、撮像装置10は、撮像した撮像画像から、画像処理を用いて、被検体Sの特徴点F(特徴点位置情報)を検出する。
【0098】
なお、画像処理は、例えば、同一の物体の検出及び追跡を行うアルゴリズムによって処理させる。アルゴリズムは、例えば、SIFT (Scale Invariant Feature Transform)、SURF (Speeded-Up Robust Features)、SORT (Simple Online and Realtime Tracking)等である。
【0099】
そして、撮像装置10は、処理回路55に対して、検出した特徴点位置情報を送信する。例えば、図10において、撮像装置10の位置は、撮像装置10が備える位置センサ(図示せず)が、検出した磁場の情報に基づいて、トランスミッタ7を原点とする空間における自装置の位置(座標及び角度)を算出し、算出した位置を超音波診断装置5に送信する。なお、撮像装置10の位置は、予め定められた位置を計測し、計測した計測位置(固定値)を用いてもよい。これにより、超音波診断システム11は、撮像装置10から被検体Sの特徴点Fを取得することができる。
【0100】
(変形例3)
上述した第2実施形態では、被検体Sの特徴点Fについて、撮像装置10が撮像した撮像画像に基づいて、被検体Sの特徴点Fを検出する形態について説明したが、これに限定されない。例えば、ウェアラブル端末8は、撮像した撮像画像から、画像処理を用いて、被検体Sの特徴点Fを検出する形態でも良い。これにより、超音波診断システム11は、ウェアラブル端末8から被検体Sの特徴点Fを取得することができる。
【0101】
(変形例4)
例えば、超音波診断装置5は、異なる方法で特定された同一位置の差が大きい場合に、ユーザに警告したり、位置補正のためのアクションを操作者Dに要求したりしてもよい。上述の第1実施形態において、被検体Sの体表面のマーカを1つだけを用いるため、特徴点FとマーカMの距離が一定(被検体が剛体)であることを想定している。しかしながら、実際には、検査中に被検体Sは、体を折り曲げたりする場合等、体表面は変形することも想定される。
【0102】
そこで、例えば、超音波診断装置5は、超音波プローブ2の位置と距離画像を組み合わせて、相対距離を取得し、体表面が変形していることを検出することができる。
【0103】
具体的には、超音波診断装置5は、超音波プローブ2の位置から推定される体表面の位置と、距離画像から推定される体表面の位置を比較し、その差が許容レベルを超えた場合は、特徴点FとマーカMとの距離が変化したと判断して、操作者Dに対して、再度位置合わせ(特徴点Fに超音波プローブ2を合わせる(当てる)操作)を要求することで、再度位置合わせした相対距離を取得する。
【0104】
すなわち、処理回路55の表示制御機能553は、特徴点FとマーカMとの距離が変化した場合、操作者Dに対して、再度、特徴点Fに超音波プローブ2を合わせることを要求する要求情報を表示するように制御を行う。また、処理回路55の特徴点位置取得機能555は、特徴点FとマーカMとの距離に変化が生じ、操作者Dにより、被検体Sの特徴点に当てた場合、現在の超音波プローブ位置情報を、現在の特徴点位置情報として取得する。また、処理回路55の算出機能557は、特徴点Fに超音波プローブ2を合わせした相対距離を取得し、現在の特徴点の位置と現在のマーカの位置との相対位置を示す第2相対位置情報を算出する。
【0105】
(変形例5)
例えば、処理回路55の特定機能558は、ウェアラブル端末8に搭載された複数のセンサを統合することにより、第1相対位置情報、第2相対位置情報、第3相対位置情報のうち、いずれか一つを特定する。複数のセンサは、位置、加速度、角速度、距離画像、画像に関するセンサのうち、いずれかを含む。
【0106】
また、例えば、カルマンフィルタ等を用いたセンサーフュージョンの技術を用いる場合、超音波診断装置5は、加速度・角速度からの推定誤差を補正するために、ユーザに特定のマーカを視界に入れることを要求する。その際には、超音波診断装置5は、位置推定精度が低下していることを操作者Dに対して警告する表示を行ってもよい。
【0107】
(変形例6)
例えば、超音波診断装置5は、ウェアラブル端末8に対して、超音波画像や外観カメラ映像を含む支援情報について、被検体Sの体表面位置に対応させて表示させる形態でも良い。図11は、変形例6に係る超音波診断装置5が出力する支援情報の一例を示す模式図である。図11に示す支援情報62は、操作者Dが操作する超音波プローブ2を被検体Sの体表に当て、当てている部位に対応する超音波画像をウェアラブル端末8に出力される形態である。
【0108】
(変形例7)
例えば、超音波診断装置5は、ウェアラブル端末8に対して、過去の検査における超音波プローブ2の走査軌跡、画像撮像場所、超音波プローブ2の姿勢を含む支援情報について、人体の体内の臓器の位置に対応させて表示させる形態でも良い。図12は、変形例7に係る超音波診断装置5が出力する支援情報の一例を示す模式図である。図12に示す支援情報63は、操作者Dが操作する超音波プローブ2を被検体Sの体表に当て、当てている部位をウェアラブル端末8に出力される形態である。
【0109】
(変形例8)
また、図13は、変形例8に係る超音波診断装置5が出力する支援情報の一例を示す模式図である。図13に示す支援情報64は、人体の模式図C、超音波プローブ2の位置P及び心臓111を示す。支援情報64は、模式図Cに対して、心臓111に超音波プローブ2を操作している状態を出力される形態である。
【0110】
また、図1及び図9では、上述した各処理機能が単一の処理回路55によって実現される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、処理回路55は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路55が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0111】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはメモリに保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0112】
なお、メモリにプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサ毎に単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。
【0113】
なお、上記の実施形態の説明で図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示の形態に限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0114】
また、上述した実施形態で説明したスキャン制御方法は、予め用意されたスキャン制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。このスキャン制御プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、このスキャン制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD、USBメモリ及びSDカードメモリ等のFlashメモリ等のコンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に記録され、コンピュータによって非一時的な記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0115】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0116】
1 超音波診断システム
2 超音波プローブ
3 ディスプレイ
4 入力インターフェース
5 超音波診断装置
6 第1位置センサ
7 トランスミッタ
8 ウェアラブル端末
9 第2位置センサ
10 撮像装置
55 処理回路
551 制御機能
552 画像生成機能
553 表示制御機能
554 プローブ位置取得機能
555 特徴点位置取得機能
556 マーカ位置取得機能
557 算出機能
558 特定機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13