(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162389
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ギヤカップリング用リング、ギヤカップリング、搬送設備および搬送方法
(51)【国際特許分類】
F16D 3/18 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
F16D3/18 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077842
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】上阪 悠貴
(72)【発明者】
【氏名】加藤 俊麿
(72)【発明者】
【氏名】池宗 省三
(57)【要約】
【課題】ギヤカップリングの摩耗管理を簡便に行うこと、さらに、ギヤカップリングに摩耗が発生した際に、応急動力伝達を簡便に行うことを可能にしたギヤカップリング用リング、ギヤカップリング、搬送設備および該搬送設備を用いた搬送方法を提供すること。
【解決手段】筒本体部21Bおよび噛合部21Aが形成された内筒部21と、噛合部21Aを内包するとともに噛合部21Aに噛合可能な被噛合部22Aが形成された外筒部22と、を有し、筒軸方向に配置された2つの回転部材を連接し、筒周方向に回転可能であるギヤカップリング2に設けられたギヤカップリング用リングであって、筒本体部21Bの外周に設けられた内輪11と、外筒部22の筒軸方向端部に設けられ、内輪11を内包した外輪12と、を備える、ギヤカップリング用リング1。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒本体部および噛合部が形成された内筒部と、前記噛合部を内包するとともに前記噛合部に噛合可能な被噛合部が形成された外筒部と、を有し、筒軸方向に配置された2つの回転部材を連接し、筒周方向に回転可能であるギヤカップリングに設けられたギヤカップリング用リングであって、
前記筒本体部の外周に設けられた内輪と、
前記外筒部の筒軸方向端部に設けられ、前記内輪を内包した外輪と、
を備える、ギヤカップリング用リング。
【請求項2】
筒周方向の回転速度が、前記内筒部と前記外筒部とで異なる場合に、前記外輪の筒周方向の回転に伴い、前記内輪の筒周方向の回転が可能である、請求項1に記載のギヤカップリング用リング。
【請求項3】
前記内輪は、外表面に形成された凸部を有し、
前記外輪は、内表面に形成された凹部を有し、
前記凹部は、前記凸部を内包するとともに、前記凸部に当接可能である、請求項2に記載のギヤカップリング用リング。
【請求項4】
前記内輪は、外表面に形成された凹部を有し、
前記外輪は、内表面に形成された凸部を有し、
前記凹部は、前記凸部を内包するとともに、前記凸部に当接可能である、請求項2に記載のギヤカップリング用リング。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のギヤカップリング用リングと、
筒本体部および噛合部が形成された内筒部と、
前記噛合部を内包するとともに前記噛合部に噛合可能な被噛合部が形成された外筒部と、
を有し、
筒軸方向に配置された2つの回転部材を連接し、筒周方向に回転可能である、ギヤカップリング。
【請求項6】
請求項5に記載のギヤカップリングと、
前記2つの回転部材のうちの第1の回転部材を有する駆動装置と、
前記2つの回転部材のうちの第2の回転部材を有し、前記第1の回転部材の前記筒周方向の回転に伴い、前記筒周方向に回転可能である搬送ロールと、
を備える、搬送設備。
【請求項7】
請求項6に記載の搬送設備を用いて、搬送ロールにより鋼板の搬送を行う、搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギヤカップリング用リング、該ギヤカップリング用リングを有するギヤカップリング、該ギヤカップリング用リングを有する搬送設備および該搬送設備を用いた搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送設備における搬送ロールは、ギヤカップリングを介して駆動装置の動力により回転することができる。
従来、ギヤカップリングに形成されたギヤの歯の摩耗点検としては、(1)ギヤカップリングを分解し、清掃して直接歯厚を測定する方法、(2)ダイヤルゲージをギヤカップリングにセットしてギヤのギャップ量(ガタ量)を測定する方法があった。
しかしながら、上記(1)の方法では、ギヤカップリングを分解する作業を要し、また、上記(2)の方法では、測定者の技量を要し、いずれの方法であっても、多大な時間やコストが必要であった。
【0003】
これに対し、例えば、特許文献1に記載の方法が提案されている。しかしながら、この方法では、ギヤカップリング内部に設けられたギヤの歯の摩耗点検時にカップリングケースをスライドさせるという作業が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来のギヤカップリングのギヤの歯の摩耗管理に関する技術は、より簡便に行えるようにすることが希求されていた。
また、ギヤカップリングのギヤの歯に摩耗が生じた際、その直後しばらくの間の応急的な動力の伝達(以下、応急動力伝達と記す)を可能にすることも求められていた。
本発明は、上記問題点を鑑みなされたものであり、ギヤカップリングの摩耗管理を簡便に行うこと、さらに、ギヤカップリングに摩耗が発生した際に、応急動力伝達を簡便に行うことを可能にしたギヤカップリング用リング、該ギヤカップリング用リングを有するギヤカップリング、該ギヤカップリング用リングを有する搬送設備および該搬送設備を用いた搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]筒本体部および噛合部が形成された内筒部と、前記噛合部を内包するとともに前記噛合部に噛合可能な被噛合部が形成された外筒部と、を有し、筒軸方向に配置された2つの回転部材を連接し、筒周方向に回転可能であるギヤカップリングに設けられたギヤカップリング用リングであって、
前記筒本体部の外周に設けられた内輪と、
前記外筒部の筒軸方向端部に設けられ、前記内輪を内包した外輪と、
を備える、ギヤカップリング用リング。
[2]筒周方向の回転速度が、前記内筒部と前記外筒部とで異なる場合に、前記外輪の筒周方向の回転に伴い、前記内輪の筒周方向の回転が可能である、前記[1]に記載のギヤカップリング用リング。
[3]前記内輪は、外表面に形成された凸部を有し、
前記外輪は、内表面に形成された凹部を有し、
前記凹部は、前記凸部を内包するとともに、前記凸部に当接可能である、前記[2]に記載のギヤカップリング用リング。
[4]前記内輪は、外表面に形成された凹部を有し、
前記外輪は、内表面に形成された凸部を有し、
前記凹部は、前記凸部を内包するとともに、前記凸部に当接可能である、前記[2]に記載のギヤカップリング用リング。
[5]前記[1]~[4]のいずれかに記載のギヤカップリング用リングと、
筒本体部および噛合部が形成された内筒部と、
前記噛合部を内包するとともに前記噛合部に噛合可能な被噛合部が形成された外筒部と、
を有し、
筒軸方向に配置された2つの回転部材を連接し、筒周方向に回転可能である、ギヤカップリング。
[6]前記[5]に記載のギヤカップリングと、
前記2つの回転部材のうちの第1の回転部材を有する駆動装置と、
前記2つの回転部材のうちの第2の回転部材を有し、前記第1の回転部材の前記筒周方向の回転に伴い、前記筒周方向に回転可能である搬送ロールと、
を備える、搬送設備。
[7]前記[6]に記載の搬送設備を用いて、搬送ロールにより鋼板の搬送を行う、搬送方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ギヤカップリングの摩耗管理を簡便に行うことができ、さらに、ギヤカップリングに摩耗が発生した際に、応急動力伝達を簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の搬送設備を説明するための図である。
【
図2】
図2(a)は、ギヤカップリング用リングを有さない関連技術のギヤカップリングを説明するための図であり、
図2(b)は、本発明のギヤカップリング用リングを有するギヤカップリングを説明するための図である。
【
図3】
図3は、本発明のギヤカップリングおよびギヤカップリング用リングの分解斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明のギヤカップリング用リングの構成およびその機能を説明するための図である。
【
図5】
図5は、本発明のギヤカップリング用リングの構成およびその機能を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0010】
<搬送設備10>
図1は、本発明の搬送設備を説明するための図である。
本発明の搬送設備10は、鋼板等を搬送するための設備である。
図1に示すように、搬送設備10は、ギヤカップリング2を有し、後述するように、ギヤカップリング2がギヤカップリング用リング1を有することを特徴とする。
搬送設備10は、回転部材(第1の回転部材)を有する駆動装置4を有する。また、搬送設備10は、搬送ロール5を有し、搬送ロール5は、回転部材(第2の回転部材、中間軸3)を有し、第1の回転部材の筒周方向の回転に伴い、筒周方向に回転可能である。
【0011】
本発明の搬送設備10は、搬送ロール5を、例えば、圧延機前面単独ロールとし、厚板粗圧延用の搬送設備であってもよい。また、搬送ロール5は、各種設備に鋼板を搬送するための搬送テーブルに備えるローラー等であってもよい。
【0012】
本発明の搬送設備10は、モーター等を有する駆動装置4の動力による第1の回転部材の回転に伴い、第1の回転部材に連結されたギヤカップリング2を介して、ギヤカップリング2と連結した搬送ロール5の第2の回転部材(中間軸3)を回転させられる。これにより、搬送ロール5が回転して、鋼板を搬送することができる。
本発明では、ギヤカップリング2がギヤカップリング用リング1を有するため、ギヤカップリング2の摩耗管理を簡便に行うこと、さらに、ギヤカップリング2に摩耗が発生した際に、応急動力伝達を簡便に行うことが可能になる。
【0013】
ここで、
図2を参照しながら、ギヤカップリング用リング1が設けられたギヤカップリング2について説明する。
図2(a)は、ギヤカップリング用リングを有さない関連技術のギヤカップリング20を説明するための図であり、
図2(b)は、本発明のギヤカップリング用リング1を有するギヤカップリング2を説明するための図である。
【0014】
図2(a)に示すように、関連技術のギヤカップリング20は、筒本体部および噛合部が形成された内筒部21と、噛合部を内包するとともに噛合部に噛合可能な被噛合部が形成された外筒部22とを有する。
内筒部21は、搬送ロール5が有する回転部材(中間軸3)に連結され、外筒部22は、駆動装置4(
図2中は図示せず。
図1再参照。)が有する回転部材に連結される。駆動装置4の動力により、駆動装置4の回転部材が回転し、ギヤカップリング20の内筒部21と外筒部22とが噛合していることから、搬送ロール5の回転部材も回転する。これにより、回転部材(中間軸3)を備えた搬送ロール5も回転することができる。
【0015】
一方、
図2(b)に示す本発明のギヤカップリング2は、内筒部21と、外筒部22とを有するのみならず、さらにギヤカップリング用リング1を有する点を特徴とする。
ギヤカップリング2がギヤカップリング用リング1を有することで、ギヤカップリング20において前述したように、駆動装置4の動力により搬送ロール5の回転を可能にさせるのみならず、ギヤカップリング2の応急動力伝達を可能にする。また、ギヤカップリング2の摩耗管理を簡便に行うことも可能になる。
ギヤカップリング2の噛合部および/または被噛合部(内部ギヤ)の歯が摩耗して、駆動装置4の動力を伝達できなくなると、搬送ロール5による鋼板の搬送ができなくなる。そのために、鋼板を次工程に進ませられず、生産ラインを停止させなければならなくなり、当該鋼板を製品にすることができない。しかしながら、ギヤカップリング2がギヤカップリング用リング1を有していることで、駆動装置4の動力を応急的に伝達することができ、生産ラインを停止させることもなく、当該鋼板を製品にすることができる。
【0016】
<ギヤカップリング2およびギヤカップリング用リング1>
次に、本発明のギヤカップリング2およびギヤカップリング用リング1の構成について説明する。
前述したように、本発明のギヤカップリング2は、第1の回転部材および第2の回転部材(中間軸3)の夫々に連結し、第1の回転部材の回転に伴い、第2の回転部材の回転を可能にする。
なお、本発明のギヤカップリング2は、駆動装置4の動力により搬送ロール5の回転を可能にする搬送設備に用いられる場合を例に説明するが、駆動装置4の動力を利用して稼働させる装置であればどのような装置に用いられてもよい。
【0017】
図3は、本発明のギヤカップリング2およびギヤカップリング用リング1の分解斜視図である。
本発明のギヤカップリング2は、内輪11および外輪12を有するギヤカップリング用リング1と、噛合部21Aおよび筒本体部21Bが形成された内筒部21と、噛合部21Aを内包するとともに噛合部21Aに噛合可能な被噛合部22Aが形成された外筒部22とを有し、筒軸方向(X軸正方向およびX軸負方向)に配置された2つの回転部材(第1の回転部材、第2の回転部材)を連接し、筒周方向に回転可能である。
【0018】
内筒部21が有する筒本体部21Bは、少なくとも一部が外筒部22に内包されていない。筒本体部21Bの外筒部22に内包されていない部位の外周に、後述するように、ギヤカップリング用リング1の内輪11が設けられる。また、筒本体部21Bは、搬送ロール5に設けられた回転部材(中間軸3、第2の回転部材)を連結可能な構成を有する。特に限定されないが、筒本体部21Bは円柱形状であることが好ましい。
【0019】
内筒部21が有する噛合部21Aは、例えば、筒本体部21Bの筒軸方向端部に形成されており、被噛合部22Aと噛合可能であれば、形状等は特に限定されず、筒周方向に形成された複数の歯を有する通常公知のギヤの部材であってよい。
【0020】
外筒部22が有する被噛合部22Aは、例えば、筒軸方向端部に外筒部内部に形成されており、噛合部21Aと噛合可能であれば、形状等は特に限定されず、筒周方向に形成された複数の歯を有する通常公知のギヤの部材であってよい。
【0021】
また、外筒部22は、連結部22Bを有していてもよく、連結部22Bは駆動装置4に設けられた回転部材(第1の回転部材)と連結することが可能である。
【0022】
本発明のギヤカップリング用リング1は、上記のギヤカップリング2に設けられており、筒本体部21Bの外周に設けられた内輪11と、外筒部22の筒軸方向(図中、X軸方向)端部に設けられ、内輪11を内包した外輪12と、を有する追設リングである。
【0023】
また、本発明のギヤカップリング用リング1は、筒周方向の回転速度が、ギヤカップリング2の内筒部21と外筒部22とで異なる場合に、外輪12の筒周方向の回転に伴い、内輪11の筒周方向の回転が可能であることが好ましい。
具体的には、ギヤカップリング2に摩耗、摩滅等(以下、単に摩耗等とも記す。)が発生して、筒周方向の回転速度が、ギヤカップリング2の内筒部21と外筒部22とで異なった場合に、内輪11と外輪12とが当接することが好ましい。この内輪11と外輪12との接触により、外輪12の筒周方向の回転に伴い、内輪11の筒周方向の回転が可能であり、また、ギヤカップリング2の摩耗等を内輪11と外輪12の接触により把握することができ、ギヤカップリング2の摩耗管理は非常に簡便になる。
また、ギヤカップリング2に摩耗等が発生した際、内筒部21と外筒部22との回転速度が異なることで、内輪11と外輪12の特定の領域のすき間の大きさに変化が生じる。この特定の領域のすき間の大きさの変化を把握し、変化量に基づいてギヤカップリング2の摩耗管理を行ってもよい。
【0024】
さらに、ギヤカップリング2に摩耗等が発生し、内筒部21と外筒部22との噛み合わせに異常が生じても、内輪11と外輪12とが接触することで、引き続き、ギヤカップリング2の内筒部21と外筒部22とを同じ回転速度で回転させることが可能になる。
よって、ギヤカップリング2に摩耗等が発生しても、応急的に内筒部21と外筒部22とを同じ回転速度で回転させることができ、摩耗等が発生していない場合と同様に、駆動装置4の動力による搬送ロール5の回転が可能になる。
【0025】
(内輪11および外輪12)
内輪11は、ギヤカップリング2の内筒部21における筒本体部21Bの外周に設けられる。内輪11は、溶接等の接合により、内筒部21Bに固定されていることが好ましい。筒本体部21Bは、円柱形状であることが好ましく、内輪11の筒軸方向視で円形状の中空部に筒本体部21Bが嵌合される。
また、外輪12は、外筒部22の筒軸方向(X軸負方向)の端部に設けられ、内輪11を内包する。外輪12は、溶接等の接合により、外筒部22の筒軸方向端部(底部)に固定されていることが好ましい。
【0026】
図4は、本発明のギヤカップリング用リング1の構成およびその機能を説明するための図であり、筒軸方向(X軸方向)に視た場合のギヤカップリング用リング1の一例を示す。
【0027】
内輪11および外輪12の具体的形状等については、特に限定されないが、内輪11は、外表面に形成された凸部を有していてよい。具体的には、内輪11は、リング状の本体部の外表面に、周方向に形成された1または複数の凸部11Aを有していてもよい。
このとき、外輪12は、内表面に形成された凹部を有していてもよい。具体的には、外輪12は、リング状の本体部の内表面に、周方向に形成された1または複数の凹部12Bを有していてもよい。
この凹部12Bが、凸部11Aを内包するとともに、凸部11Aに当接可能であることが好ましい。
図4に示す例では、外輪12は、6個の凹部12Bを有しており、内輪11は、6個の凸部11Aを有しているが、凸部11Aと凹部12Bとの個数が同じであれば、個数は特に限定されない。
【0028】
また、内輪11は、外表面に形成された凹部を有していてよい。具体的には、内輪11は、リング状の本体部の外表面に、周方向に形成された1または複数の凹部11Bを有していてもよい。
このとき、外輪12は、内表面に形成された凸部を有していてもよい。具体的には、外輪12は、リング状の本体部の内表面に、周方向に形成された1または複数の凸部12Aを有していてもよい。
この凹部11Bが、凸部12Aを内包するとともに、凸部12Aに当接可能であることが好ましい。
図4に示す例では、内輪11は、6個の凹部11Bを有しており、外輪12は、6個の凸部12Aを有しているが、凸部12Aと凹部11Bとの個数が同じであれば、個数は特に限定されない。
【0029】
トルク伝達型等の応急動力伝達の精度をより高め、また摩耗管理の精度をより高めるという点から、内輪11を構成する凸部11Aおよび/または凹部11Bは、周方向に等間隔に設けられていることが好ましい。
同様に、応急動力伝達の精度をより高め、また摩耗管理の精度をより高めるという点から、外輪12を構成する凸部12Aおよび/または凹部12Bは、周方向に等間隔に設けられていることが好ましい。
【0030】
また、ギヤカップリング2の歯車に異常がなく正常に回転している際、すなわち、内筒部21の回転速度と外筒部22の回転速度とが同じである場合、内輪11の凸部11Aと外輪12の凹部12Bとは接触していないことが好ましい。すなわち、凸部11Aと凹部12Bとには特定位置ですき間が形成されていることが好ましい。
内筒部21の回転速度と外筒部22の回転速度とが異なる場合に、内輪11の凸部11Aと外輪12の凹部12Bとが当接し、外輪12の筒周方向の回転に伴い、内輪11の筒周方向の回転が可能となることが好ましい。
また、内筒部21の回転速度と外筒部22の回転速度とが異なる場合に、上記のすき間の大きさを感知し、このすき間の大きさの変化に基づいて、ギヤカップリング2の摩耗を把握できることが好ましい。
【0031】
また、ギヤカップリング2の歯車に異常がなく正常に回転している際、すなわち、内筒部21の回転速度と外筒部22の回転速度とが同じである場合、内輪11の凹部11Bと外輪12の凸部12Aとは接触していないことが好ましい。すなわち、凸部12Aと凹部11Bとには特定位置ですき間が形成されていることが好ましい。
内筒部21の回転速度と外筒部22の回転速度とが異なる場合に、内輪11の凹部11Bと外輪12の凸部12Aとが当接し、外輪12の筒周方向の回転に伴い、内輪11の筒周方向の回転が可能となることが好ましい。
また、内筒部21の回転速度と外筒部22の回転速度とが異なる場合に、上記のすき間の大きさを感知し、このすき間の大きさの変化に基づいて、ギヤカップリング2の摩耗を把握できることが好ましい。
【0032】
次に、
図5を参照しながら、本発明のギヤカップリング2に異常が発生した場合について説明する。
図5は、本発明のギヤカップリング用リング1の構成およびその機能を説明するための図であり、特には、本発明のギヤカップリング2に異常(内部ギヤ異常)が発生した場合を説明するための図である。
【0033】
ここで、ギヤカップリング2に異常が発生するとは、ギヤカップリング2の内筒部21の噛合部21Aおよび/または外筒部22の被噛合部22Aの摩耗等により、内筒部21と外筒部22が同じ回転速度で回転しなくなることをいう。この異常には、噛合部21Aおよび/または被噛合部22Aの摩耗の程度が大きく、ギヤカップリング2の外筒部22が回転しても内筒部21が回転しない場合も含まれる。
【0034】
このようなギヤカップリング2の異常が発生した際、
図5に示すように、内筒部21と外筒部22が同じ回転速度で回転しないため、ギヤカップリング用リング1の内輪11の凸部11Aと外輪12の凹部12Bとが当接する(図中、符号α参照)。
また、このとき、
図5に示すように、ギヤカップリング用リング1の内輪11の凹部11Bと外輪12の凸部12Aとが当接してもよい。
この凸部11Aと凹部12Bの当接および/または凹部11Bと凸部12Aの当接により、応急動力伝達が可能になり、再び、ギヤカップリング2における内筒部21と外筒部22との回転速度を同じにすることができる。
【0035】
また、この凸部11Aと凹部12Bの当接および/または凹部11Bと凸部12Aの当接を感知することで、搬送設備10の点検者は、ギヤカップリング2の内筒部21の噛合部21Aおよび/または外筒部22の被噛合部22Aの摩耗を簡便に把握することができる。
なお、ギヤカップリング用リング1には、上記の感知を可能にするためのセンサ等が設けられていてもよく、搬送設備10には、上記センサからの情報を処理する情報処理装置が設けられていてもよい。
【0036】
また、ギヤカップリング2に摩耗等が発生した際、内筒部21と外筒部22との回転速度が異なることで、内輪11と外輪12の特定の領域のすき間の大きさに変化が生じる。上記の情報処理装置は、この特定の領域のすき間の大きさの変化を把握し、変化量に基づいてギヤカップリング2の摩耗管理を行ってもよい。
【0037】
以上説明したように、本発明では、搬送設備が有するギヤカップリングにギヤカップリング用リングが設けられている。そのため、ギヤカップリングに摩耗等が発生した際、ギヤカップリング用リングの内輪と外輪の当接や、内輪と外輪の特定位置のすき間の大きさの変化を把握することにより、ギヤカップリングの摩耗管理を簡便に行うことができる。これにより、ギヤカップリングを分解して摩耗管理を点検することが不要になる。また、搬送設備の点検者の技量によらず、ギヤカップリングの摩耗管理を簡便に行うことができる。
【0038】
さらに、ギヤカップリングに摩耗等が発生した際、噛合部と被噛合部とが噛み合わなくても、ギヤカップリング用リングの内輪と外輪とが当接することで、すなわち噛合することで、応急動力伝達を可能にする。これにより、ギヤカップリングの噛合部と被噛合部との空転による搬送設備の停止が発生することを抑制できる。
【0039】
本発明では、上述したようなギヤカップリング用リング1を有するギヤカップリング2を備えた搬送設備10を用いて、搬送ロール5により鋼板の搬送を行う搬送方法も提供される。
【符号の説明】
【0040】
1 ギヤカップリング用リング
11 内輪
11A 凸部
11B 凹部
12 外輪
12A 凸部
12B 凹部
2 ギヤカップリング
21 内筒部
21A 噛合部
21B 筒本体部
22 外筒部
22A 被噛合部
22B 連結部
20 ギヤカップリング(関連技術)
3 中間軸(回転部材)
4 駆動装置
5 搬送ロール
10 搬送設備
α 凸部と凹部との当接部