(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162394
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、医用画像処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/46 20240101AFI20241114BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A61B6/03 360P
A61B6/03 377
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077851
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】舟迫 慎太郎
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA26
4C093CA21
4C093EE30
4C093FF11
4C093FF37
4C093FF50
(57)【要約】
【課題】焼灼の状況を精度よく把握できるようにする。
【解決手段】実施形態の医用画像処理装置は、取得部と、生成部と、位置合わせ部と、を持つ。取得部は、被検体を焼灼する前の焼灼前画像及び被検体を焼灼した後の焼灼後画像を取得する。生成部は、取得された前記焼灼後画像に基づいて、前記焼灼前画像を想定した仮想焼灼前画像を生成する。位置合わせ部は、前記焼灼前画像と前記仮想焼灼前画像の位置合わせを行い、位置合わせした際の位置合わせ情報を利用して焼灼後画像を変形し、位置合わせ済焼灼後画像を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を焼灼する前の焼灼前画像及び被検体を焼灼した後の焼灼後画像を取得する取得部と、
取得された前記焼灼後画像に基づいて、前記焼灼前画像を想定した仮想焼灼前画像を生成する生成部と、
前記焼灼前画像と前記仮想焼灼前画像の位置合わせを行い、位置合わせした際の位置合わせ情報を利用して焼灼後画像を変形し、位置合わせ済焼灼後画像を生成する位置合わせ部と、を備える、
医用画像処理装置。
【請求項2】
前記生成部は、前記焼灼後画像を利用した熱方程式シミュレーションにより前記仮想焼灼前画像を生成する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記取得部は、焼灼途中段階の焼灼途中画像を更に取得し、
前記焼灼途中画像と前記焼灼後画像に基づいて、前記仮想焼灼前画像を生成する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記生成部は、前記焼灼後画像に基づいて、前記焼灼に用いるプローブの位置を特定し、前記プローブに設定された電気プロファイルに更に基づいて、前記仮想焼灼前画像を生成する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記焼灼前画像及び前記焼灼後画像は、X線CT装置により撮像されたCT画像を含む、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記位置合わせ部は、前記焼灼の対象となる組織の境界線を追跡して前記位置合わせを行う、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
第1撮像装置により撮像された被検体に薬剤を投与する前の第1画像及び第2撮像装置により撮像された被検体に薬剤を投与した後の第2画像を取得する取得部と、
前記第2画像に基づいて、前記第1画像と同種の第3画像を生成し、前記第1画像に基づいて、前記第2画像を想定した仮想第3画像を生成する生成部と、
前記第1画像と前記仮想第3画像の位置合わせを行う位置合わせ部と、を備える、
医用画像処理装置。
【請求項8】
コンピュータが、
被検体を焼灼する前の焼灼前画像及び被検体を焼灼した後の焼灼後画像を取得し、
取得された前記焼灼後画像に基づいて、前記焼灼前画像を想定した仮想焼灼前画像を生成し、
前記焼灼前画像と前記仮想焼灼前画像の位置合わせを行い、位置合わせした際の位置合わせ情報を利用して焼灼後画像を変形し、位置合わせ済焼灼後画像を生成する、
医用画像処理方法。
【請求項9】
コンピュータに、
被検体を焼灼する前の焼灼前画像及び被検体を焼灼した後の焼灼後画像を取得し、
取得された前記焼灼後画像に基づいて、前記焼灼前画像を想定した仮想焼灼前画像を生成し、
前記焼灼前画像と前記仮想焼灼前画像の位置合わせを行い、位置合わせした際の位置合わせ情報を利用して焼灼後画像を変形し、位置合わせ済焼灼後画像を生成する、ことを行わせる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用画像処理装置、医用画像処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍領域の治療として、例えば、焼灼対象を焼灼する治療(以下焼灼治療)が行われることがある。焼灼治療とは、ラジオ波等を用いて焼灼対象となるがん細胞などの腫瘍領域を高温にすることで、腫瘍細胞を死滅させる治療法である。焼灼治療では、例えば、腫瘍領域が十分な温度まで加熱され、正常組織は必要以上に加熱されていないことがモニタリングされる。
【0003】
モニタリングは、非侵襲的に行われるのが望ましく、非侵襲的にモニタリングする技術としては、例えばサーモCTを利用した技術がある。サーモCTにおけるCT値は温度依存性があり、温度が高くなるほどCT値が低下する特徴がある。サーモCTは、焼灼前および焼灼直後のCT値差を計算し換算係数を乗算することで腫瘍領域の温度変化値を求めることができる。
【0004】
従来の焼灼治療としては、例えば、異常組織に対する作用をシミュレーションすることにより焼灼が十分行われているかを確認するものがある。焼灼治療に要する焼灼時間の多くは5分間程度である。治療される患者は、通常は呼吸をしているが、焼灼前、焼灼中、焼灼直後のCT画像を取得する際には呼吸を停止して撮影する必要がある。したがって、それぞれのCT画像中の臓器、腫瘍組織の位置は移動し変形しているので非線形位置合わせを行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の非線形位置合わせ技術では、CT値の違いを利用して、臓器の輪郭や血管などの構造といった組織の形状の位置合わせを行っている。例えば、肝臓領域における腫瘍の焼灼では比較的均一な臓器かつ均一なCT値を有している。しかし、焼灼が行われている領域のCT値が変化してしまうと、正しく腫瘍形状の変形を捉えることが難しく、焼灼の状況を把握することが難しかった。
【0007】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題は、焼灼の状況を精度よく把握できるようにすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の医用画像処理装置は、取得部と、生成部と、位置合わせ部と、を持つ。取得部は、被検体を焼灼する前の焼灼前画像及び被検体を焼灼した後の焼灼後画像を取得する。生成部は、取得された前記焼灼後画像に基づいて、前記焼灼前画像を想定した仮想焼灼前画像を生成する。位置合わせ部は、前記焼灼前画像と前記仮想焼灼前画像の位置合わせを行い、位置合わせした際の位置合わせ情報を利用して焼灼後画像を変形し、位置合わせ済焼灼後画像を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】X線CT装置1の処理の一例を示すフローチャート。
【
図3】焼灼前画像及び焼灼後画像を取得した後、確認画像を生成するまで間における各CT画像のイメージを説明する図。
【
図4】焼灼前画像及び焼灼後画像を取得した後、確認画像を生成するまで間における各CT画像のイメージを説明する図。
【
図5】薬剤投与前CT画像及び薬剤投与後CT画像を取得した後、確認画像を生成するまで間における各CT画像のイメージを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、実施形態の医用画像処理装置、医用画像処理方法、及びプログラムについて説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係るX線CT装置1の構成図である。X線CT装置1は、例えば、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40と、を有する。
図1では、説明の都合上、架台装置10をZ軸方向から見た図とX軸方向から見た図の双方を掲載しているが、実際には、架台装置10は一つである。実施形態では、非チルト状態での回転フレーム17の回転軸または寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対して水平である軸をX軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対して垂直である方向をY軸方向とそれぞれ定義する。X線CT装置1は、医用画像処理装置の一例である。
【0012】
実施形態のX線CT装置1は、例えば、がんの治療として行われるCTガイド下でのラジオ焼灼による焼灼治療に利用される。焼灼は、例えば、がん細胞に焼灼針を刺入し、高周波を印加することでがん細胞をラジオ波により壊死させるために行われるものである。焼灼によりがん細胞を壊死させるためには、焼灼対象となるがん細胞が目標温度、例えば70℃に到達した時間が所定時間、例えば5分間以上となることが求められる。X線CT装置1では、焼灼対象を含む被検体のCT画像を撮像し、CT画像により得られるCT値に基づいて、焼灼対象の温度を検出する。医師は、X線CT装置1により検出された焼灼対象の温度を確認しながら焼灼対象を焼灼する。
【0013】
架台装置10は、例えば、X線管11と、ウェッジ12と、コリメータ13と、X線高電圧装置14と、X線検出器15と、データ収集システム(以下、DAS:Data Acquisition System)16と、回転フレーム17と、制御装置18とを有する。
【0014】
X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射することでX線を発生させる。X線管11は、真空管を含む。例えば、X線管11は、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管である。
【0015】
ウェッジ12は、X線管11から画像診断の対象となる被検体Pに照射されるX線量を調節するためのフィルタである。ウェッジ12は、X線管11から被検体Pに照射されるX線量の分布が予め定められた分布になるように、自身を透過するX線を減衰させる。ウェッジ12は、ウェッジフィルタ(wedge filter)、ボウタイフィルタ(bow-tie filter)とも呼ばれる。ウェッジ12は、例えば、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したものである。
【0016】
コリメータ13は、ウェッジ12を透過したX線の照射範囲を絞り込むための機構である。コリメータ13は、例えば、複数の鉛板の組み合わせによってスリットを形成することで、X線の照射範囲を絞り込む。コリメータ13は、X線絞りと呼ばれる場合もある。コリメータ13の絞り込み範囲は、機械的に駆動可能であってよい。
【0017】
X線高電圧装置14は、例えば、高電圧発生装置と、X線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器(トランス)および整流器などを含む電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧を発生させる。X線制御装置は、X線管11に発生させるべきX線量に応じて高電圧発生装置の出力電圧を制御する。高電圧発生装置は、上述した変圧器によって昇圧を行うものであってもよいし、インバータによって昇圧を行うものであってもよい。X線高電圧装置14は、回転フレーム17に設けられてもよいし、架台装置10の固定フレーム(不図示)の側に設けられてもよい。
【0018】
X線検出器15は、X線管11が発生させ、被検体Pを通過して入射したX線の強度を検出する。X線検出器15は、検出したX線の強度に応じた電気信号(光信号などでもよい)をDAS16に出力する。X線検出器15は、例えば、複数のX線検出素子列を有する。複数のX線検出素子列のそれぞれは、X線管11の焦点を中心とした円弧に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたものである。複数のX線検出素子列は、スライス方向(列方向、row方向)に配列される。
【0019】
X線検出器15は、例えば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有する。それぞれのシンチレータは、シンチレータ結晶を有する。シンチレータ結晶は、入射するX線の強度に応じた光量の光を発する。グリッドは、シンチレータアレイのX線が入射する面に配置され、散乱X線を吸収する機能を有するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドは、コリメータ(一次元コリメータまたは二次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、例えば、光電子増倍管(フォトマルチプライヤー:PMT)等の光センサを有する。光センサアレイは、シンチレータにより発せられる光の光量に応じた電気信号を出力する。X線検出器15は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であってもよい。
【0020】
DAS16は、例えば、増幅器と、積分器と、A/D変換器とを有する。増幅器は、X線検出器15の各X線検出素子により出力される電気信号に対して増幅処理を行う。積分器は、増幅処理が行われた電気信号をビュー期間に亘って積分する。A/D変換器は、積分結果を示す電気信号をデジタル信号に変換する。DAS16は、デジタル信号に基づく検出データをコンソール装置40に出力する。
【0021】
回転フレーム17は、X線管11、ウェッジ12、およびコリメータ13と、X線検出器15とを対向支持する円環状の部材である。回転フレーム17は、中央に円形の開口が形成された円形の両側面と、両側面の内側円同士を繋ぐ内側面と、両側面の外側円同士を繋ぐ外側面と、を備える円環状の部材である。回転フレーム17の両側面は平面であり、内側面及び外側面は曲面である。
【0022】
回転フレーム17は、不図示の固定フレームによって、内部に導入された被検体Pを中心として回転自在に支持される。回転フレーム17は、更にDAS16を支持する。DAS16が出力する検出データは、回転フレーム17に設けられた発光ダイオード(LED)を有する送信機から、光通信によって、架台装置10の非回転部分(例えば固定フレーム)に設けられたフォトダイオードを有する受信機に送信され、受信機によってコンソール装置40に転送される。なお、回転フレーム17から非回転部分への検出データの送信方法として、前述の光通信を用いた方法に限らず、非接触型の任意の送信方法を採用してよい。回転フレーム17は、X線管11などを支持して回転させることができるものであれば、円環状の部材に限らず、アームのような部材であってもよい。
【0023】
X線CT装置1は、例えば、X線管11とX線検出器15の双方が回転フレーム17によって支持されて被検体Pの周囲を回転するRotate/Rotate-TypeのX線CT装置(第3世代CT)であるが、これに限らず、円環状に配列された複数のX線検出素子が固定フレームに固定され、X線管11が被検体Pの周囲を回転するStationary/Rotate-TypeのX線CT装置(第4世代CT)であってもよい。
【0024】
制御装置18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを有する処理回路と、モータやアクチュエータなどを含む駆動機構とを有する。処理回路は、例えば、ハードウェアプロセッサが記憶装置(記憶回路)に記憶されたプログラムを実行することにより、これらの機能を実現するものである。
【0025】
ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit; ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device; SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device; CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array; FPGA)などの回路(circuitry)を意味する。記憶装置にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。記憶装置は、非一時的(ハードウェアの)記憶媒体でもよい。また、複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。
【0026】
制御装置18は、例えば、回転フレーム17を回転させたり、架台装置10の架台をチルトさせたり、寝台装置30の天板33を上下動動作などで移動させたり、X線管11からX線を放射(曝射)させたりする。制御装置18は、架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられてもよい。
【0027】
寝台装置30は、スキャン対象となる被検体Pを搭乗させて移動させ、架台装置10の回転フレーム17の内部に導入する装置である。寝台装置30は、例えば、基台31と、寝台上下動装置32と、天板33と、支持フレーム34と、を備える。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向(Y軸方向)に移動可能に支持する筐体を含む。
【0028】
コンソール装置40は、例えば、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路50とを有する。実施形態では、コンソール装置40は架台装置10とは別体として説明するが、架台装置10にコンソール装置40の各構成要素の一部または全部が含まれてもよい。
【0029】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ41は、例えば、検出データや投影データ、再構成画像データ、CT画像データ等を記憶する。これらのデータは、メモリ41ではなく(或いはメモリ41に加えて)、X線CT装置1が通信可能な外部メモリに記憶されてもよい。外部メモリは、例えば、外部メモリを管理するクラウドサーバが読み書きの要求を受け付けることで、クラウドサーバによって制御されるものである。
【0030】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路50によって生成された医用画像(CT画像)や、医師や技師などの操作者による各種操作を受け付けるGUI(Graphical User Interface)画像等を表示する。ディスプレイ42は、例えば、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等である。ディスプレイ42は、架台装置10に設けられてもよい。ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置40の本体部と無線通信可能な表示装置(例えばタブレット端末)でもよい。
【0031】
入力インターフェース43は、操作者による各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作の内容を示す電気信号を処理回路50に出力する。例えば、入力インターフェース43は、検出データまたは投影データを収集する際の収集条件、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件などの入力操作を受け付ける。
【0032】
入力インターフェース43は、例えば、マウスやキーボード、タッチパネル、ドラッグボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、ダイヤル、カメラ、赤外線センサ、マイク等により実現される。入力インターフェース43は、コンソール装置40の本体部と無線通信可能な表示装置(例えばタブレット端末)により実現されてもよい。
【0033】
入力インターフェース43は、更に、被検体Pの造影CT画像を撮影する際に、被検体Pの氏名や重量(体重)などの被検体Pの入力操作を受け付ける。入力インターフェース43は、ウィンドウレベル及びウィンドウ幅を設定する際に、ウィンドウレベル及びウィンドウ幅を調整するための入力情報の入力操作を受け付ける。以下の説明において、ウィンドウレベル及びウィンドウ幅の調整を輝度調整ということがある。輝度調整のための入力操作については、後にさらに説明する。
【0034】
なお、本明細書において入力インターフェースはマウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェースの例に含まれる。
【0035】
処理回路50は、X線CT装置1の全体の動作を制御する。処理回路50は、例えば、制御機能51と、前処理機能52と、再構成処理機能53と、画像処理機能54と、取得機能55と、生成機能56と、位置合わせ機能57と、表示制御機能58とを備える。処理回路50は、例えば、ハードウェアプロセッサが記憶装置(記憶回路)に記憶されたプログラムを実行することにより、これらの機能を実現するものである。
【0036】
ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU、GPU、特定用途向け集積回路、プログラマブル論理デバイスまたは複合プログラマブル論理デバイス、フィールドプログラマブルゲートアレイなどの回路を意味する。記憶装置にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。記憶装置は、非一時的(ハードウェアの)記憶媒体でもよい。また、複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。
【0037】
コンソール装置40または処理回路50が有する各構成要素は、分散化されて複数のハードウェアにより実現されてもよい。処理回路50は、コンソール装置40が有する構成ではなく、コンソール装置40と通信可能な処理装置によって実現されてもよい。処理装置は、例えば、一つのX線CT装置と接続されたワークステーション、或いは、複数のX線CT装置に接続され、以下に説明する処理回路50と同等の処理を一括して実行する装置(例えばクラウドサーバ)である。処理回路50に含まれる各機能は、複数の回路に分散されていてもよいし、メモリ41に記憶されたアプリケーションソフトを起動させることで利用可能となるようにしてもよい。
【0038】
制御機能51は、入力インターフェース43が受け付けた入力操作に基づいて、処理回路50の各種機能を制御する。例えば、制御機能51は、X線高電圧装置14、DAS16、制御装置18および寝台上下動装置32を制御することで、架台装置10における検出データの収集処理等を実行する。
【0039】
前処理機能52は、DAS16により出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を行い、投影データを生成し、生成した投影データをメモリ41に記憶させる。
【0040】
再構成処理機能53は、前処理機能52によって生成された投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等による再構成処理を行って、CT画像(CT画像データ)を生成する。再構成処理機能53は、生成したCT画像をメモリ41に記憶させる。CT画像は、X線検出器15の検出結果に基づく画像である。被検体の焼灼前に撮像されたCT画像は焼灼前画像であり、被検体の焼灼後に撮像されたCT画像は、焼灼後画像である。
【0041】
画像処理機能54は、入力インターフェース43が受け付けた入力操作に基づいて、CT画像データを公知の方法により、三次元画像データや任意断面の断面画像データに変換する。三次元画像データへの変換は、前処理機能52によって行われてもよい。画像処理機能54は、例えば、再構成処理機能53により生成されたCT画像における複数の断面に相当する断面画像を複数生成する。
【0042】
取得機能55は、再構成処理機能53により生成され、またはメモリ41に記憶された焼灼対象を焼灼する前の焼灼前画像及び焼灼対象を焼灼した後の焼灼後画像を取得する。焼灼前画像及び焼灼後画像としては、再構成処理機能53や画像処理機能54により生成されたCT画像が用いられてもよい。取得機能55は、取得部の一例である。
【0043】
生成機能56は、取得機能55により取得された焼灼後画像に基づいて、焼灼前画像を想定した仮想焼灼前画像を生成する。生成機能56は、例えば、焼灼後熱画像を利用した熱方程式シミュレーションにより仮想焼灼前画像を生成する。生成機能56は、その他の方式で仮想焼灼前熱画像を生成してもよい。生成機能56は、取生成得部の一例である。
【0044】
位置合わせ機能57は、取得機能55により取得された焼灼前画像と、生成機能56により生成された仮想焼灼前画像の位置合わせを行う。生成機能56により生成された仮想焼灼前画像は、焼灼後画像により生成されるので、焼灼前画像と形状及び大きさが異なることが多い。位置合わせ機能57は、仮想焼灼前画像の形状及び大きさが焼灼前画像と同様となるように仮想焼灼前画像の形状及び大きさを調整することにより、焼灼前画像と仮想焼灼前画像を位置合わせする。位置合わせ機能57は、位置合わせ部の一例である。
【0045】
位置合わせ機能57は、焼灼前画像と仮想焼灼前画像を位置合わせする際に、仮想焼灼前画像を調整した際の情報(以下、位置合わせ情報)を取得する。位置合わせ機能57は、取得した位置合わせ情報を利用して焼灼後画像を変形し、位置合わせ済焼灼後画像を生成する。
【0046】
位置合わせ機能57は、取得機能55により取得した焼灼前画像と生成した位置合わせ済焼灼後画像を用いてサーモCT計算を行う。サーモCT計算では、CT画像におけるCT値に基づいて、被検体の各部位の温度を算出する。位置合わせ機能57は、サーモCT計算の結果に基づいて、焼灼対象の温度及び焼灼対象以外の部位の温度に関する情報を取得する。
【0047】
表示制御機能58は、画像処理機能54により変換された三次元画像データや断面画像データ等をディスプレイ42に表示させる。ディスプレイ42に表示される断面画像は、ウィンドウレベル及びウィンドウ幅が調整された画像であり、例えば、医師等の診断に利用される画像(以下、診断画像)である。断面画像は、再構成処理機能53により、CT撮影データから再構成された2次元断面画像である。
【0048】
表示制御機能58は、さらに、位置合わせ機能57により取得された焼灼対象の温度及び焼灼対象以外の部位の温度に関する情報に基づいて、被検体の各部位の温度分布を示す確認画像を生成する。表示制御機能58は、生成した確認画像をディスプレイ42に表示させる。
【0049】
次に、実施形態のX線CT装置1の動作について説明する。ここでは、焼灼治療に用いた場合のX線CT装置1の処理について説明する。焼灼治療を行う際には、焼灼対象を焼灼する前に焼灼前画像を撮像し、焼灼対象の焼灼が終了した後に焼灼後画像を撮像する。撮像した焼灼前画像及び焼灼後画像は、メモリ41に格納しておく。この状態に続くX線CT装置1の処理について説明する。
【0050】
図2は、X線CT装置1の処理の一例を示すフローチャートである。まず、X線CT装置1は、取得機能55により、焼灼前画像を取得する(ステップS101)。ここでは、取得機能55は、焼灼治療を開始する直前に撮像(再構成)され、メモリ41に格納された焼灼前画像を取得する。
【0051】
続いて、取得機能55は、焼灼後画像を取得する(ステップS103)。取得機能55は、ここでは、焼灼治療を行っている最中であり、焼灼対象を焼灼した後、焼灼対象の焼灼が十分に行われたか否かが判定される直前に取得された焼灼後画像を取得する。ここでの焼灼後画像は、再構成処理機能53により再構成されたCT画像をそのまま取得してもよいし、再構成処理機能53により再構成され、または画像処理機能54により生成されてメモリ41に格納されたCT画像を取得してもよい。
【0052】
続いて、生成機能56は、取得機能55により取得された焼灼後画像に基づいて、焼灼前画像を想定した仮想焼灼前画像を生成する(ステップS105)。
図3は、焼灼前画像及び焼灼後画像を取得した後、確認画像を生成するまで間における各CT画像のイメージを説明する図である。例えば、
図3の第1画像IM11に示す焼灼前画像において、臓器Zに腫瘍領域(焼灼対象である腫瘍が占める領域)Kが存在し、第2画像IM12に示す焼灼後画像では腫瘍領域Kの周囲における第1加熱領域Hが表示される。
【0053】
仮想焼灼前画像を生成するにあたり、生成機能56は、例えば熱方程式シミュレーションを利用する。熱方適式シミュレーションを実行するにあたり、生成機能56は、まず、焼灼後画像に基づいて、プローブの位置及び臓器Zや腫瘍領域Kの形状や大きさを特定する。さらに、生成機能56は、腫瘍領域Kを焼灼した際の焼灼プローブの位置や焼灼プローブで電力を印加した際の電気プロファイルを特定する。電気プロファイルには、例えば、電力及び時間が含まれる。
【0054】
続いて、生成機能56は、焼灼プローブから放射される熱がどのように拡散するかをシミュレーションすることにより予測する。このとき、生成機能56は、臓器Zや腫瘍領域Kにおける血管走行血流状態を取得して、血管走行血流状態によって温度変化が少なくなるいわゆるラジエータ効果を考慮して熱方程式シミュレーションを行ってもよい。生成機能56は、このような熱方程式シミュレーションを行うことで、例えば
図3の第3画像IM13に示す仮想焼灼前画像を生成する。
【0055】
生成機能56は、焼灼後画像のみに基づいて熱方程式シミュレーションにより仮想焼灼前画像を生成するほか、焼灼後画像を撮像した時間と焼灼前画像を撮像した時間の間に撮像した焼灼中画像を利用した熱方程式シミュレーションを用いてもよい。熱方程式シミュレーションは、予め想定したモデル関数を用いて行ってもよいし、深層学習を用いて行ってもよい。焼灼前画像や焼灼後画像は、CT画像でなくてもよく、例えば、CT画像に基づいて作成した腫瘍領域境界線を示す図形を示す画像を用いてもよい。
【0056】
続いて、位置合わせ機能57は、取得機能55により取得された焼灼前画像と、生成機能56により生成された仮想焼灼前画像との位置合わせを行い、
図3の第4画像IM14に示す位置合わせイメージ画像を生成する。第4画像IM14に示す画像は、仮想焼灼前画像を生成するイメージを示すものであるので、仮想焼灼前画像自体は生成しなくてもよい。腫瘍の焼灼にはある程度の時間がかかるので、腫瘍領域Kを含む臓器Zは、脈動等により時間の経過に伴って形状及び大きさが変化する。
【0057】
このため、第1画像IM11における焼灼前画像に含まれる臓器Zと、第2画像IM12における焼灼後画像における臓器Zとでは形状及び大きさが変化していることが多い。この場合には、焼灼前画像を焼灼後画像との比較が難しくなる。そこで、位置合わせ機能57により、形状および大きさ異なる焼灼前画像と仮想焼灼前画像の位置合わせを行う。ここでの位置合わせとしては、例えば、非線形位置合わせが行われる。
【0058】
位置合わせ機能57は、焼灼前画像に対して仮想焼灼前画像を非線形位置合わせ処理し、その際に得られたX,Y,Z方向の移動量の情報を位置合わせ情報として取得する(ステップS107)。非線形位置合わせは、どのように行ってもよい。例えば、位置合わせ機能57は、
図3の第4画像IM14に示すように、CT画像(焼灼前画像と仮想焼灼前画像)の濃度領域が類似している領域を追跡する方法を用いてもよいし、画像中における組織(腫瘍や臓器など)の境界線を追跡する方法を用いてもよい。
【0059】
さらに、焼灼前画像は、焼灼プローブが被検体に挿入される前に撮像され、焼灼後画像は、焼灼プローブが被検体に挿入された後に撮像されることがある。この場合には、焼灼中の焼灼プローブと臓器の全体形状の位置関係に基づいて、焼灼前画像に仮想的なプローブの位置を設定し、非線形位置合わせ処理に利用して位置合わせの精度向上を図ってもよい。
【0060】
続いて、位置合わせ機能57は、取得した位置合わせ情報を利用して、焼灼後画像の形状及び大きさを調整し(ステップS109)、焼灼後画像を逆変換させるように変形させる。
図3に示す第5画像IM15は、位置合わせ情報に基づいて焼灼後画像を調整した位置合わせ済焼灼後画像を示す。
【0061】
第5画像IM15には、臓器Z及び腫瘍領域Kの画像に対する重畳画像として、第1加熱領域H及び第2加熱領域Mが表示されている。第1加熱領域Hは、70度以上の温度で所定時間以上加熱された領域であり、第2加熱領域Mは、70度以上の温度で加熱されている領域が所定時間未満の領域である。
【0062】
位置合わせ機能57は、焼灼後画像の形状及び大きさを調整することにより、焼灼前画像及び焼灼後画像の臓器Z及び腫瘍領域Kの形状及び大きさを合わせた位置合わせ済焼灼後画像を生成する。焼灼途中段階の焼灼途中画像を生成した場合には、この焼灼途中画像に基づいて位置合わせ情報を取得し、焼灼後画像を調整してもよい。
【0063】
その後、位置合わせ機能57は、焼灼前画像と位置合わせ済焼灼後画像との間でサーモCT計算を行う(ステップS111)。サーモCT計算では、焼灼前画像と位置合わせ済焼灼後画像の差分を計算し、所定の換算係数を乗算することにより臓器Z及び腫瘍領域Kの温度を算出する。
【0064】
続いて、表示制御機能58は、焼灼前画像または焼灼後画像にサーモCT計算の計算結果に応じた情報(以下、重畳表示情報)を重畳表示させる(ステップS113)。
図3に示す第6画像IM16は、重畳表示情報が含まれる確認画像を示す。確認画像では、臓器Z及び腫瘍領域Kに対して、第1加熱領域H及び第2加熱領域Mが重畳表示される。第1加熱領域H及び第2加熱領域Mが重畳表示情報である。第1加熱領域Hに腫瘍領域Kが含まれることにより、腫瘍領域Kが十分加熱されたことが認識される。
【0065】
表示制御機能58は、例えば、サーモCT計算の計算結果(温度)をピクセルごとに算出し、重畳表示情報として、算出された温度をピクセルごとに色を変えて表示したり、数値として表示したりしてもよいし、温度の等高線を生成して表示してもよい。重畳表示される重畳情報では、例えば、十分焼灼された範囲、例えば、70度以上の温度が所定時間以上加えられた範囲を示す領域を表示してもよい。こうして、X線CT装置1は、
図2に示す処理を終了する。
【0066】
実施形態の医用画像処理装置は、焼灼後画像に基づいて仮想焼灼前画像を生成し、生成した仮想焼灼前画像と焼灼前画像の位置合わせを行うことで、位置合わせ情報を取得し、位置合わせ情報に基づいて、焼灼後画像を調整することより、焼灼対象に対する焼灼の影響(温度分布)を精度よく取得することができる。したがって、焼灼対象の焼灼の状態を精度よく確認することができる。その結果、焼灼対象に必要量の加熱を行うとともに、焼灼対象以外の部位に対する余分な加熱を抑制することができる。
【0067】
(変形例1)
次に、実施形態の変形例1について説明する。上記の実施形態では、焼灼後画像に基づいて、仮想焼灼前画像を生成し、仮想焼灼前画像と焼灼前画像を位置合わせした位置合わせ情報に基づいて焼灼後画像を調整した。これに対して、変形例1では、焼灼前画像に基づいて仮想焼灼後画像を生成する。
【0068】
図4は、焼灼前画像及び焼灼後画像を取得した後、確認画像を生成するまで間における各CT画像のイメージを説明する図である。例えば、取得機能55は、第1画像IM21に示す焼灼前画像及び第2画像IM22に示す焼灼後画像を取得する。焼灼前画像及び焼灼後画像を取得することは、上記の実施形態と同様である。
【0069】
続いて、生成機能56は、焼灼前画像に基づいて、第3画像IM23に示す仮想焼灼後画像を生成する。ここでは、生成機能56は、上記の実施形態において、熱方程式シミュレーションにより焼灼後画像から仮想焼灼前画像を生成した手順と同様にして、熱方程式シミュレーションにより焼灼前熱画像から仮想焼灼後熱画像を生成する。
【0070】
続いて、位置合わせ機能57は、生成機能56により生成された仮想焼灼後画像を、取得機能55により取得された焼灼後画像に非線形位置合わせすることにより、第4画像IM24に示す位置合わせ済焼灼後画像を取得する。位置合わせ済焼灼後画像に表示される第1加熱領域H及び第2加熱領域Mは、仮想焼灼後画像に基づくものである。変形例1において、焼灼後画像に第1加熱領域H及び第2加熱領域Mが含まれるが、焼灼後画像に第1加熱領域H及び第2加熱領域Mは含まれなくてもよい。
【0071】
その後、位置合わせ機能57は、上記の実施形態と同様にして、取得機能55により取得した焼灼後画像と、生成機能56により生成した位置合わせ済焼灼後画像を用いてサーモCT計算を行う。以後の処理は、上記の実施形態と同様であり、最終的に、第5画像IM25に示す確認画像を生成する。
【0072】
変形例1の医用画像処理装置は、上記実施形態の医用画像処理装置と同様の作用効果を奏する。変形例1の医用画像処理装置では、焼灼前画像に基づいて仮想焼灼後画像を生成し、仮想焼灼後画像に基づいて位置合わせ済焼灼後画像を生成する。このように、焼灼前画像を用いて仮想焼灼後画像を生成することもできる。
【0073】
(変形例2)
続いて、変形例2について説明する。上記の実施形態では、焼灼前画像及び焼灼後画像としていずれもCT画像を利用していた。これに対して、変形例2では、焼灼前画像または焼灼後画像、例えば焼灼後画像として、CT画像以外の画像、例えばPET(Positron Emission Tomography)画像を用いる。PET画像は、PET-CTにより撮像された画像である。
【0074】
図5は、薬剤投与前CT画像及び薬剤投与後CT画像を取得した後、確認画像を生成するまで間における各CT画像のイメージを説明する図である。例えば、取得機能55は、第1画像IM31に示す薬剤投与前CT画像及び第2画像IM32に示すPET画像を取得する。PET画像は、例えば、図示しないPET-CTにより撮像された画像である。PET画像には、臓器Z及び腫瘍領域Kのほか、薬剤領域Yが含まれる。薬剤領域Yは、治療に対する薬剤がいきわたった領域である。
【0075】
さらに、取得機能55は、X線CT装置1により、薬剤投与前CT画像を撮像した後に撮像された薬剤投与後画像生成用CT画像を取得する。取得機能55により取得された薬剤投与後画像生成用CT画像は、薬剤投与後CT画像を生成するために撮像されたCT画像である。X線CT装置1は、第1撮像装置の一例である。薬剤投与前CT画像は、第1画像の一例である。
【0076】
続いて、生成機能56は、被検体に薬剤が投与された後、PET-CTにより撮像され取得機能55により取得されたPET画像に基づいて、PET画像の撮像時に被検体に投与されPET画像に含まれる薬剤の分布の画像を抽出する。生成機能56は、抽出した薬剤領域Yを、取得機能55により取得された薬剤投与後画像生成用CT画像に重畳させることにより、第3画像IM33に示す薬剤投与後CT画像を生成する。PET-CTは、第2撮像装置の一例である。PET画像は、第2画像の一例である。薬剤投与後画像生成用CT画像は、薬剤投与前CT画像と同種の画像であり、第3画像の一例である。
【0077】
さらに、生成機能56は、取得機能55により取得された薬剤投与前CT画像に基づいて、第4画像IM34に示す仮想薬剤投与後CT画像を生成する。ここでは、生成機能56は、上記の実施形態における熱方程式シミュレーションに類似する薬剤投与シミュレーションにより薬剤投与前CT画像から仮想薬剤投与後CT画像を生成する。仮想薬剤投与後CT画像は、薬剤投与前CT画像を想定した画像であり、仮想第3画像の一例である。
【0078】
続いて、位置合わせ機能57は、生成機能56により生成された仮想薬剤投与後CT画像を、薬剤投与後CT画像に非線形位置合わせすることにより、位置合わせ済薬剤投与後CT画像を取得する。焼灼後画像を薬剤投与後CT画像、位置合わせ済焼灼後画像を位置合わせ済薬剤投与後CT画像に代えて、上記の実施形態と同様の処理を行う。
【0079】
変形例2の医用画像処理は、上記実施形態の医用画像処理と同様の作用効果を奏する。変形例2の医用画像処理では、薬剤投与前CT画像に基づいて仮想薬剤投与後CT画像を生成する。このため、複数種類の撮像装置により撮像された画像を用いた場合に、薬剤の分布などの状況を知ることができる。
【0080】
このような薬剤投与の状況を確認する処理は、例えば、焼灼の状況を確認する処理と同一の装置により実行できるようにしてもよい。要は、薬剤を投与し、焼灼を実行するまでの処理を一の装置で実行できるようにしてよい。薬剤投与や焼灼以外の同様の処理についても、一の装置により実行できるようにしてよい。
【0081】
上記の実施形態において、焼灼前画像及び焼灼後画像は、CT画像であるが、焼灼前画像及び焼灼後画像は他の画像でもよい。焼灼前画像及び焼灼後画像は、例えば、MRI画像でもよいし、超音波画像でもよいし、PET画像でもよい。上記の実施形態において、焼灼前画像及び焼灼後画像は、同種の画像であるが、焼灼前画像及び焼灼後画像は、異なる種類の画像でもよい。例えば、焼灼前画像はCT画像、焼灼後画像がMRI画像でもよい。
【0082】
上記の実施形態では、被検体の温度変化に基づいて焼灼の状況を確認するが、被検体の温度変化以外の情報に基づいて、焼灼の状況を確認してもよい。例えば、被検体に投与された造影剤の濃淡に基づくCT値の濃度変化に基づいて、焼灼の状況を確認するようにしてもよい。さらに、上記の実施形態では、熱方程式シミュレーションに基づいて画像を生成するが、熱方程式シミュレーション以外に基づいて画像を生成してもよい。例えば、造影剤の変化を見る場合には、Perfusionモデル(例えばコンパートメントモデルを用いて画像を生成してもよい。
【0083】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、被検体を焼灼する前の焼灼前画像及び被検体を焼灼した後の焼灼後画像を取得する取得部と、取得された前記焼灼後画像に基づいて、前記焼灼前画像を想定した仮想焼灼前画像を生成する生成部と、前記焼灼前画像と前記仮想焼灼前画像の位置合わせを行い、位置合わせした際の位置合わせ情報を利用して焼灼後画像を変形し、位置合わせ済焼灼後画像を生成する位置合わせ部と、を持つことにより、焼灼の状況を精度よく把握することができる。
【0084】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0085】
1…X線CT装置
10…架台装置
11…X線管
12…ウェッジ
13…コリメータ
14…X線高電圧装置
15…X線検出器
16…DAS
17…回転フレーム
18…制御装置
30…寝台装置
31…基台
32…寝台上下動装置
33…天板
34…支持フレーム
40…コンソール装置
41…メモリ
42…ディスプレイ
43…入力インターフェース
50…処理回路
51…制御機能
52…前処理機能
53…再構成処理機能
54…画像処理機能
55…取得機能
56…生成機能
57…位置合わせ機能
58…表示制御機能
H…第1加熱領域
K…腫瘍領域
M…第2加熱領域
P…被検体
Y…薬剤領域