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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162404
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241114BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077881
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】池上 憲
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA21
5H770AA24
5H770DA03
5H770DA41
5H770HA02Y
5H770PA12
5H770PA26
5H770PA28
5H770PA42
5H770QA01
5H770QA06
5H770QA12
5H770QA14
5H770QA22
5H770QA28
(57)【要約】
【課題】製造コストの低減化、組み立て作業の低減化を図りながらパワー半導体モジュールに電気的に接続する平滑コンデンサ及び交流出力部の発熱部を確実に冷却することができる電力変換装置を提供する。
【解決手段】パワー半導体モジュール10及び平滑コンデンサ12を電気的に接続する第1電気接続部86と、パワー半導体モジュール及び交流出力部15を電気的に接続する複数の第2電気接続部87との少なくとも一方が、冷却端子台35,36を介して冷媒流路側の内壁4aに熱的に接続されており、筐体カバー5の内壁に、第1電気接続部及び第2電気接続部を、冷却端子台に向けて押し付ける凸部5d,5eが設けられている。
【選択図】図22
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却媒体が流れる冷媒流路を内部に設けて上部が開口している筐体ケースと、
前記冷媒流路側の内壁に密着して前記筐体ケースに収納されているパワー半導体モジュールと、
前記パワー半導体モジュールに電気的に接続されて前記筐体ケースに収納されている平滑コンデンサ及び交流出力部と、
前記パワー半導体モジュール、前記平滑コンデンサ及び前記交流出力部を覆った状態で前記筐体ケースの開口周縁に固定されて筐体を形成する筐体カバーと、を備え、
前記パワー半導体モジュール及び前記平滑コンデンサを電気的に接続する複数の第1電気接続部と、前記パワー半導体モジュール及び前記交流出力部を電気的に接続する複数の第2電気接続部との少なくとも一方が、冷却端子台を介して前記冷媒流路側の前記内壁に熱的に接続されており、
前記筐体カバーの内壁に、前記複数の第1電気接続部及び前記複数の第2電気接続部を、前記冷却端子台に向けて押し付ける凸部が設けられていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記パワー半導体モジュールを上方から覆った状態で前記パワー半導体モジュールを駆動制御する制御基板が配置されていることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記パワー半導体モジュールと前記制御基板との間に、前記筐体に固定されて前記制御基板を支持する固定板が配置されており、
前記固定板は、前記パワー半導体モジュールの一部を覆う形状とされ、前記パワー半導体モジュールから上方に突出する制御ピンが、前記固定板の外側を通過して前記制御基板に接続していることを特徴とする請求項2記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御基板は、前記筐体ケースに直接固定されていることを特徴とする請求項2記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記凸部には、前記複数の第1電気接続部及び前記複数の第2電気接続部に、前記冷却端子台に向けて弾性的に押圧する弾性押圧部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記冷却端子台は、
前記冷媒流路側の前記内壁に固定されている樹脂製の端子台本体と、
両端が外部に露出した状態で前記端子台本体に所定間隔をあけて埋め込まれている金属製の複数の冷却端子と、を備え、
前記複数の冷却端子の一端が前記第1電気接続部及び前記第2電気接続部に接触し、他端側が電気絶縁性の伝熱シートを介して前記筐体に接触していることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記冷却端子台は、
前記冷媒流路側の前記内壁に固定されている樹脂製の端子台本体と、
一端が外部に突出し、他端が突出せずに前記端子台本体に所定間隔をあけて埋め込まれている金属製の複数の冷却端子と、を備え、
前記複数の冷却端子の一端が前記第1電気接続部及び前記第2電気接続部に接触し、他端側が前記筐体に接触していることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記冷却端子台は、
前記筐体ケースの一部から前記第1電気接続部及び前記第2電気接続部に向けて立ち上がっている立上がり部と、
前記立上がり部の上部を覆った状態で前記筐体に固定され、前記第1電気接続部及び前記第2電気接続部に接触している絶縁カバーと、を備えていることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記パワー半導体モジュールは、モジュール本体の一側から突出した平板形状の第1モジュール側端子と、前記モジュール本体の他側から突出した複数の平板形状の第2モジュール側端子と、を備え、
前記平滑コンデンサは、コンデンサ本体から突出した複数の平板形状のコンデンサ側端子を備えており、
前記交流出力部は、出力部本体から突出した複数の平板形状の出力部側端子を備え、
前記第1電気接続部は、対応する前記第1モジュール側端子と前記コンデンサ側端子とを重ねて接合してなり、
前記第2電気接続部は、対応する前記第2モジュール側端子及び前記出力部側端子を重ねて接合してなることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記交流出力部は、前記平滑コンデンサの長尺方向に直交する方向に前記パワー半導体モジュールに並んで収納されていることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の電力変換装置。
【請求項11】
冷却媒体が流れる冷媒流路を内部に設けて上部が開口している筐体ケースと、
前記冷媒流路側の内壁に密着して前記筐体ケースに収納されているパワー半導体モジュールと、
前記パワー半導体モジュールに電気的に接続されて前記筐体ケースに収納されている平滑コンデンサ及び交流出力部と、
前記パワー半導体モジュール、前記平滑コンデンサ及び前記交流出力部を覆った状態で前記筐体ケースの開口周縁に固定されて筐体を形成する筐体カバーと、を備え、
前記パワー半導体モジュールは、モジュール本体の一側に形成した複数の第1ねじ穴端子と、前記モジュール本体の他側に形成した複数の第2ねじ穴端子と、を備え、
前記平滑コンデンサは、コンデンサ本体から突出した複数の平板形状のコンデンサ側端子と、前記コンデンサ側端子に形成した第1貫通穴と、を備え、
前記交流出力部は、出力部本体から突出した複数の平板形状の出力部側端子と、前記出力部側端子に形成した第2貫通穴と、を備え、
前記パワー半導体モジュール及び前記平滑コンデンサを電気的に接続する複数の第1電気接続部と、前記パワー半導体モジュール及び前記交流出力部を電気的に接続する複数の第2電気接続部と、を備え、
前記第1電気接続部は、第1ねじを前記コンデンサ側端子の前記第1貫通穴を通過して対応する前記第1ねじ穴端子にねじ込むことで前記第1ねじ穴端子及び前記コンデンサ側端子を接続してなり、
前記第2電気接続部は、第2ねじを前記出力部側端子の第2貫通穴を通過して対応する前記第2ねじ穴端子にねじ込むことで、前記第2ねじ穴端子及び前記出力部側端子を接続してなり、
前記筐体カバーの内壁に、前記第1貫通穴以外の前記コンデンサ側端子の部分と、第2貫通穴以外の前記出力部側端子の部分を、前記冷媒流路側の前記内壁に熱的に接続されている冷却端子台に向けて押し付ける凸部が設けられていることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換用のパワー半導体モジュールと、パワー半導体モジュールを冷却する冷却器とを備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電力変換装置として、特許文献1,2に記載された装置が知られている。
特許文献1の電力変換装置は、冷媒流路を設けた筐体と、この筐体に収納された電力変換用のパワー半導体モジュールと、パワー半導体モジュールに接続する平滑コンデンサ及び交流出力部とを備えている。筐体の内部には、パワー半導体モジュールを覆った状態で筐体に固定された固定板が配置されており、この固定板に突起部が設けられている。そして、固定板の突起部は、パワー半導体モジュール及び平滑コンデンサを接続する第1電気接続部と、パワー半導体モジュール及び交流出力部を接続する第2電気接続部とを、冷媒流路を設けた筐体の内壁に押し付けることで、発熱部である第1電気接続部及び第2電気接続部を筐体の内壁に密着させて冷却している。
【0003】
また、特許文献2の電力変換装置は、半導体モジュールと、コンデンサと、半導体モジュールが載置されている冷却器とを備えており、半導体モジュールにはコンデンサに向けて半導体端子が突出し、コンデンサには半導体モジュールの半導体端子に重なるようにコンデンサ端子が突出している。そして、互いに重なって配置された半導体端子及びコンデンサ端子の下部に冷却器の固定部が設けられており、半導体端子、コンデンサ端子及び固定部をねじで締結することで、発熱部である半導体端子及びコンデンサ端子の接続部を固定部に密着させて冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6926638号公報
【特許文献2】特開2010-252460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の電力変換装置で使用される固定板は、少なくとも第1電気接続部及び第2電気接続部を覆う大面積のものとなる。また、筐体には、半導体モジュールを駆動する制御基板が収納され、半導体モジュールと制御基板との間に配置した固定板で制御基板を支持することで、固定板に、半導体パワー半導体の制御ピンを制御基板に通過させる開口部を設ける必要がある。このように、特許文献1は、第1電気接続部及び第2電気接続部を押し付ける突起部、半導体パワー半導体の制御ピンを通過させる開口部を設けた複雑な形状であり、大面積の固定板を必要とするので、製造コストの面で問題がある。
【0006】
また、特許文献2の電力変換装置は、半導体モジュールの半導体端子及びコンデンサのコンデンサ端子を冷却器の固定部に密着させるために、半導体端子及びコンデンサ端子をねじで固定部に締結する作業が必要となるので、組み立て作業の面で問題がある。
そこで、本発明は、製造コストの低減化、組み立て作業の低減化を図りながらパワー半導体モジュールに電気的に接続する平滑コンデンサ及び交流出力部の発熱部を確実に冷却することができる電力変換装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る電力変換装置は、冷却媒体が流れる冷媒流路を内部に設けて上部が開口している筐体ケースと、冷媒流路側の内壁に密着して筐体ケースに収納されているパワー半導体モジュールと、パワー半導体モジュールに電気的に接続されて筐体ケースに収納されている平滑コンデンサ及び交流出力部と、パワー半導体モジュール、平滑コンデンサ及び交流出力部を覆った状態で筐体ケースの開口周縁に固定されて筐体を形成する筐体カバーと、を備え、パワー半導体モジュール及び平滑コンデンサを電気的に接続する複数の第1電気接続部と、パワー半導体モジュール及び交流出力部を電気的に接続する複数の第2電気接続部との少なくとも一方が、冷却端子台を介して冷媒流路側の前記内壁に熱的に接続されており、筐体カバーの内壁に、複数の第1電気接続部及び複数の第2電気接続部を、冷却端子台に向けて押し付ける凸部が設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電力変換装置によれば、製造コストの低減化、組み立て作業の低減化を図りながらパワー半導体モジュールに電気的に接続する平滑コンデンサ及び交流出力部の発熱部を確実に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る第1実施形態の電力変換装置の外観を示す斜視図である。
図2】第1実施形態の電力変換装置を構成する部品の展開斜視図である。
図3】第1実施形態の筐体の底壁の内側を示す図である。
図4】第1実施形態の筐体の底壁を外側から示した図である。
図5】(a)が図3の要部を拡大して示した図であり、(b)が(a)のA-A線矢視図である。
図6】第1実施形態の筐体ケースの底壁の外側に流路カバーを装着した状態を示す図である。
図7】第1実施形態の筐体カバーの天井壁に設けた凸部を示す図である。
図8】第1実施形態の電力変換装置を構成するパワー半導体モジュールの表側を示す斜視図である。
図9】第1実施形態のパワー半導体モジュールの裏側を示す斜視図である。
図10】第1実施形態の電力変換装置を構成する平滑コンデンサを示す斜視図である。
図11】第1実施形態の平滑コンデンサの要部を示す図である。
図12】第1実施形態の電力変換装置を構成する直流入力部を示す斜視図である。
図13】第1実施形態の電力変換装置を構成する電流検出器を示す斜視図である。
図14】第1実施形態の電力変換装置を構成する交流出力コネクタを示す斜視図である。
図15】第1実施形態の筐体の底壁の内側に冷却端子台を装着した状態を示す図である。
図16図15のC-C矢視断面図である。
図17図15のD-D矢視断面図である。
図18】第1実施形態の筐体の内部に、電力変換装置の主要部品を配置した状態を示す図である。
図19】第1実施形態のパワー半導体モジュール及び交流出力部の電気的に接続されている箇所に配置されている冷却端子台を示す図である。
図20】第1実施形態のパワー半導体モジュール及び平滑コンデンサの電気的に接続されている箇所に配置されている冷却端子台を示す図である。
図21】第1実施形態の筐体の内部に配置した電力変換装置の主要部品の上部に樹脂シートを配置した状態を示す図である。
図22】第1実施形態の電力変換装置の横断面図である。
図23】本発明に係る第2実施形態の電力変換装置の横断面図である。
図24】本発明に係る第3実施形態の電力変換装置の横断面図である。
図25】本発明に係る第4実施形態のパワー半導体モジュールの冷却器が冷却水循環部に接続している状態を示す図である。
図26】本発明に係る第5実施形態の電力変換装置の電気的に接続されている箇所示す図である。
図27】本発明に係る第6実施形態の電力変換装置の電気的に接続されている箇所示す図である。
図28】本発明に係る第7実施形態の電力変換装置の電気的に接続されている箇所示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明の第1から第6実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0011】
また、以下に示す第1から第6実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明で記載されている「上」、「下」、「底」、「前」、「後」、「左右」等の方向を示す用語は、添付図面の方向を参照して用いられている。
【0012】
[第1実施形態の電力変換装置]
以下、本発明の一態様に係る第1実施形態の電力変換装置について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1に示すように、本発明に係る第1実施形態の電力変換装置1は、筐体2と、筐体2の底部に設けた冷却水循環部CLとを備えている。筐体2は、筐体ケース4及び筐体カバー5で構成されている。
筐体ケース4には、冷却水供給パイプ6a及び冷却水排出パイプ6bが接続しているとともに、外部入力接続口4eと外部出力接続口4fが開口している。
【0013】
筐体2の内部には、図2に示すように、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)モジュール10と、IGBTモジュール10を駆動する駆動回路等が実装された制御回路基板11と、平滑コンデンサ12と、直流入力コネクタ13と、交流出力コネクタ14と、電流検出器15とが収納される。なお、本発明に係るパワー半導体モジュールがIGBTモジュール10に対応し、本発明に係る交流出力部が電流検出器15に対応している。
【0014】
筐体2を構成する筐体ケース4及び筐体カバー5は、アルミニウム、又はアルミニウム合金を材料とした鋳造品である。
図3は筐体ケース4の内側を示し、図4は筐体ケース4を外側から示したものである。
図3に示すように、筐体ケース4は、長方形状の底壁4aと、底壁4aの全周から立ち上がる第1側壁~第4側壁4b1~4b4と、第1側壁~第4側壁4b1~4b4の上端で開口する開口部4cと、を備えている。なお、本発明に係る内壁が底壁4aに対応している。
【0015】
そして、第2側壁4b2に冷却水供給パイプ6a及び冷却水排出パイプ6bが圧入或いは溶接で接続されているとともに、第3側壁4b4に外部入力接続口4eと外部出力接続口4fが形成されている。
筐体ケース4の底壁4aの外側には、図4において左右方向に延在する入側溝7aと、入側溝7aより長尺に左右方向に延在する出側溝7bが形成されている。入側溝7aの左側端部は、冷却水供給パイプ6aに連通路8aを介して連通しているとともに、出側溝7bの左側端部も、冷却水排出パイプ6bに連通路8bを介して連通している。また、入側溝7aの右側端部側に底壁4aを貫通して入側開口部9aが形成され、出側溝7bの右側端部側に底壁4aを貫通して出側開口部9bが形成されている。
【0016】
図5(a),(b)に示すように、入側開口部9aの外側には周溝9a1が形成されており、この周溝9a1にOリング16が装着されている。また、出側開口部9bの外側にも周溝(不図示)が形成され、この周溝にOリング16が装着されている。
これらOリングは、必要に応じて周溝を増やして二重以上に装着してもよい。
そして、図6に示すように、筐体ケース4の底壁4aの外側に、入側溝7a及び出側溝7bの開口部を閉塞するように流路カバー17が固定されており、冷却水供給パイプ6a及び入側開口部9aに連通する入側流路18aと、冷却水排出パイプ6b及び出側開口部9bに連通する出側流路18bとが形成される。
【0017】
これにより、前述した冷却水循環部CLは、冷却水供給パイプ6a、連通路8a、入側流路18a、入側開口部9a、冷却水排出パイプ6b、連通路8b、出側流路18b及び出側開口部9bで構成されている。
図7は、筐体カバー5の内側を示すものである。筐体カバー5は、長方形状の天井壁5aと、天井壁5aの全周から立ち上がる第1側壁5b1~第4側壁~5b4と、第1側壁~第4側壁5b1~5b4の上端で開口する開口部5cと、を備えている。
【0018】
天井壁5aの内側には、開口部5cから突出するように2本の第1凸条5d及び第2凸条5eが一体に設けられている。これら2本の第1凸条5d及び第2凸条5eは、長尺方向の一端から他端まで同一高さで突出しているとともに、互いに平行に延在している。なお、本発明に係る凸部が第1凸条5d及び第2凸条5eに対応している。また、第1凸条5d及び第2凸条5eの形状は、図7に示されるような1本の凸条に限定されず、複数の突起が並んで配置されていてもよい。
【0019】
図8及び図9は、IGBTモジュール10を示すものであり、モジュール本体19と、モジュール本体19に一体に設けられ、筐体2に設けた冷却水循環部CLに接続して冷却水が循環する冷却器3と、を備えている。
モジュール本体19は、直方体形状の樹脂パッケージ19aと、樹脂パッケージ19aの底面に配置された金属ベース板(不図示)とを備え、金属ベース板側に冷却器3が一体に設けられている。
【0020】
樹脂パッケージ19aには、図示しない3個のIGBTの上アーム半導体チップ、上アーム用配線パターン部、上アーム配線用導体板、下アーム半導体チップ、下アーム用配線パターン部、下アーム配線用導体板及び接地用配線パターン部などが埋め込まれているとともに、上アーム半導体チップ及び下アーム半導体チップが金属ベース板に接触している。
【0021】
樹脂パッケージ19aには、長尺方向の一方の側面20aから平板形状の正極側端子21U,21V,21W及び負極側端子22U,22V,22Wが、互いの板幅方向の端部を対向させた状態で一列に突出して設けられているとともに、長尺方向の他方の側面20bから平板形状の出力端子23U,23V,23Wが、互いの板幅方向の端部を対向させた状態で一列に突出して設けられている。
【0022】
正極側端子21U,21V,21Wは、上アーム用配線パターン部を介して上アーム半導体チップのコレクタに接続しており、負極側端子22U,22V,22Wは、接地用配線パターン部と下アーム配線用導体板を介して下アーム半導体チップのエミッタに接続しており、出力端子23U,23V,23Wは、下アーム用配線パターン部と上アーム配線用導体板を介して上アーム半導体チップのエミッタ及び下アーム半導体チップのコレクタに接続している。
【0023】
また、樹脂パッケージ19aの上面には、上アーム用の複数の制御電極に接続する複数本の上アーム用リードフレーム24U,24V,24Wと、下アーム用の複数の制御電極に接続する複数本の下アーム用リードフレーム25U,25V,25Wが上方に突出して設けられている。なお、本発明に係る制御ピンが、上アーム用リードフレーム24U,24V,24W及び下アーム用リードフレーム25U,25V,25Wに対応している。
【0024】
冷却器3は、図9に示すように、樹脂パッケージ19aの底面に接合されている。
この冷却器3の底壁3aには、筐体ケース4の入側開口部9aに接続する入側開口部3eと、筐体ケース4の出側開口部9bに接続する出側開口部3fが形成されている。
平滑コンデンサ12は、直流入力コネクタ13から入力した直流電圧を平滑化する装置であり、図10に示すように、略直方体形状のコンデンサ本体12aと、コンデンサ本体12aの長尺方向(矢印B方向)に延在する側面12bから突出して設けられている複数の端子と、を備えている。
【0025】
平滑コンデンサ12の複数の端子は、側面12bの右側に寄った位置に設けられており、平板形状の正極側出力端子26U,26V,26W及び負極側出力端子27U,27V,27Wが、互いの板幅方向の端部を対向させた状態で長尺方向に沿って一列に突出して設けられている。
また、側面12bの左側に寄った位置には、図10及び図11に示すように、正極側入力端子28と、負極側入力端子29とが突出して設けられている。
【0026】
負極側入力端子29は平板形状の端子であり、平面方向が長尺方向に延在して突出して設けられている。
正極側入力端子28は、側面12bから長尺方向に直交した方向に平面方向が延在して突出している平板形状の基部28aと、この基部28aの先端側から長尺方向に折曲されて形成された接続部28bと、を備えた端子である。
【0027】
図12は、直流入力コネクタ13を示すものであり、樹脂モールド製の入力コネクタ本体13aと、入力コネクタ本体13aの内部に長尺方向に延在して配置されている2本の板状の正極側バスバー30及び負極側バスバー31と、を備えている。
正極側バスバー30の一端が平滑コンデンサ12の正極側入力端子28に接続するコンデンサ側端子30aであり、他端が外部入力コンバータ(不図示)の正極側端子に接続する外部入力側端子30bである。また、負極側バスバー31の一端が平滑コンデンサ12の負極側入力端子29に接続するコンデンサ側端子31aであり、他端が外部入力コンバータの負極側端子に接続する外部入力側端子31bである。
【0028】
電流検出器15は、IGBTモジュール10の交流出力電流を検出する装置であり、図13に示すように、直方体形状の検出器本体32と、検出器本体32の長尺方向に離間して配置されている3本の板状の検出器バスバー33U,33V,33Wと、を備えている。
そして、検出器バスバー33Uの一端がIGBTモジュール10の出力端子23Uに接続するIGBT側端子33Uaであり、検出器バスバー33Uの他端が交流出力コネクタ14の出力端子33Ubとなる。また、検出器バスバー33Vの一端がIGBTモジュール10の出力端子23Vに接続するIGBT側端子33Vaであり、検出器バスバー33Vの他端が交流出力コネクタ14の出力端子33Vbとなる。さらに、検出器バスバー33Wの一端がIGBTモジュール10の出力端子23Wに接続するIGBT側端子33Waであり、検出器バスバー33Wの他端が交流出力コネクタ14の出力端子33Wbとなる。
【0029】
図14は、交流出力コネクタ14を示すものであり、検出器バスバー33U,33V,33Wの出力端子33Ub,33Vb,33Wbが上部から差し込まれて装着される装着穴34a,34b、34cが形成されている。
次に、第1実施形態の電力変換装置1の組み立てについて説明する。
先ず、筐体ケース4に収納する部品の収納空間を図15に示す。
【0030】
図15に示すように、筐体ケース4内には、平滑コンデンサ12を収納する第1収納空間S1と、直流入力コネクタ13を収納する第2収納空間S2と、電流検出器15及び交流出力コネクタを収納する第3収納空間S3と、IGBTモジュール10を収納する第4収納空間S4と、が設けられている。
第1収納空間S1と第4収納空間S4との間の底壁4aには冷却端子台35が固定され、第3収納空間S3と第4収納空間S4との間の底壁4aには冷却端子台36が固定されている。
【0031】
冷却端子台35は、図15及び図16に示すように、底壁4a上に電気絶縁性の伝熱シート37を介して載置され、長尺方向の両端が固定ねじ38で底壁4aに固定された部材である。この冷却端子台35は、熱伝導性が良好な黄銅製で丸棒形状の6個の冷却端子39と、これら冷却端子39を、所定間隔を開けて上下端面を外部に露出させた状態でインサート成形している熱可塑性樹脂からなる端子台本体40と、を備えている。
【0032】
冷却端子台36も、図15及び図17に示すように、底壁4a上に電気絶縁性の伝熱シート41を介して載置され、長尺方向に離間した位置において固定ねじ38で底壁4aに固定された部材であり、黄銅製で丸棒形状の3個の冷却端子42と、これら冷却端子42を、所定間隔を開けて上下端面を外部に露出させた状態でインサート成形している熱可塑性樹脂からなる端子台本体43と、を備えている。
【0033】
これら冷却端子台35,36の冷却端子39,42は、端子台本体40,43からの抜けを防止するために軸方向中央部に縮径部39a,42aが形成されている。
図18に示すように、筐体ケース4内の第2収納空間S2に直流入力コネクタ13を収納し、第3収納空間S3に交流出力コネクタ14及び電流検出器15を収納し、第4収納空間S4にIGBTモジュール10を収納し、第1収納空間S1に平滑コンデンサ12を収納し、これらの部品を底壁4aに固定する。
【0034】
ここで、図1で示した筐体ケース4の外部入力接続口4eの内部に直流入力コネクタ13の外部入力側端子30b,31bが位置し、筐体ケース4の外部出力接続口4fの内部に、交流出力コネクタ14に一体に装着した電流検出器15の出力端子33Ub,33Vb,Wbが位置する。
IGBTモジュール10を第4収納空間S4に収納して固定すると、冷却水循環部CLの冷却水供給パイプ6aから供給された冷却水が冷却器3の入側開口部3e、9aを通過してIGBTモジュール10の冷却器3の内部に供給され、冷却器3から排出された水が出側開口部3f、9bを通過して冷却水排出パイプ6bから外部に排出可能とされる。
【0035】
次いで、図18に示すように、直流入力コネクタ13の平滑コンデンサ12側で突出しているコンデンサ側端子30aと、平滑コンデンサ12の正極側入力端子28の接続部28bとが重なり、直流入力コネクタ13のコンデンサ側端子31aと、平滑コンデンサ12の負極側入力端子29も重なるので、これらの重なっている部分を溶接することで電気的に接続する。なお、上記の重なっている部分の接合方法は、溶接に限定されず、例えば、超音波等を用いてもよい。
【0036】
図19に示すように、電流検出器15のIGBT側端子33Ua,33Va,33Waと、IGBTモジュール10の出力端子23U,23V,23Wも重なるので、これらの重なっている部分を溶接することで電気的に接続する。これら電気的に接続した部分の下面は、冷却端子台36の冷却端子39が熱的に接触する。ここで、本発明に係る第2電気接続部が、電流検出器15のIGBT側端子33Ua,33Va,33Waと、IGBTモジュール10の出力端子23U,23V,23Wとの接続部に対応しており、以下の説明では第2電気接続部87と称する。
【0037】
さらに、図20に示すように、平滑コンデンサ12の正極側出力端子26U,26V,26W、負極側出力端子27U,27V,27Wと、IGBTモジュール10の正極側端子21U,21V,21W、負極側端子22U,22V,22Wも重なるので、これらの重なっている部分を溶接することで電気的に接続する。そして、これら電気的に接続した部分の下面は、冷却端子台35の冷却端子39が熱的に接触する。ここで、本発明に係る第1電気接続部が、平滑コンデンサ12の正極側出力端子26U,26V,26W、負極側出力端子27U,27V,27Wと、IGBTモジュール10の正極側端子21U,21V,21W、負極側端子22U,22V,22Wとの接続部に対応しており、以下の説明では第1電気接続部86と称する。
【0038】
次いで、図21に示すように、IGBTモジュール10及び平滑コンデンサ12が電気的に接続している部位の上部と、電流検出器15及びIGBTモジュール10が電気的に接続している部位の上部と、直流入力コネクタ13及び平滑コンデンサ12が電気的に接続している部位の上部を樹脂シート44,45,46で覆う。
次いで、図22に示すように、IGBTモジュール10の上部を覆う固定板47を筐体ケース4に固定した後、図2で示す絶縁紙48aを固定板47の上面に貼る。次いで、固定板47から上方に突出する基板支持部材47aに支持された状態で、固定板47の上方に制御回路基板11を配置する。
【0039】
固定板47は、金属板の略全域を熱可塑性樹脂で被覆した部材であり、IGBTモジュール10の一部の上部を覆う形状でいる。そして、IGBTモジュール10の上面から突出している上アーム用リードフレーム24U,24V,24W、下アーム用リードフレーム25U,25V,25Wは、固定板47の外側を通過して制御回路基板11のランドを有するスルーホール(不図示)に挿通される。そして、各リードフレームとスルーホールの間が半田付けされる。
【0040】
そして、図22に示すように、筐体カバー5の天井壁5aの内壁に絶縁紙48b(図2参照)を貼った後、筐体カバー5の開口部5cの周縁を筐体ケース4の開口部4cの周縁に固定して筐体2を形成する。これにより、筐体2に収納されたIGBTモジュール10、制御回路基板11、平滑コンデンサ12、直流入力コネクタ13、交流出力コネクタ14及び電流検出器15に対して、外気との液密封止が施される。
【0041】
ここで、筐体カバー5を筐体ケース4に固定すると、図22に示すように、筐体カバー5の天井壁5aから突出する第1凸条5dの先端部が、IGBTモジュール10と平滑コンデンサ12との第1電気接続部86を、樹脂シート44を介して冷却端子台35に押し付ける。また、筐体カバー5を筐体ケース4に固定することで、筐体カバー5の天井壁5aから突出する第2凸条5eの先端部が、IGBTモジュール10と電流検出器15との第2電気接続部87を、樹脂シート45を介して冷却端子台36に押し付ける。
【0042】
上記構成の電力変換装置1によると、外部の入力コンバータ(図示せず)から直流入力コネクタ13を介して直流電力が供給された平滑コンデンサ12は、入力した直流電圧の平滑化を行ってIGBTモジュール10に出力する。そして、制御回路基板11から例えばパルス幅変調信号からなるゲート信号がIGBTモジュール10に供給されることで6個のIGBTに対して120度ずれたゲート信号でオン・オフ制御されると、IGBTモジュール10からU相、V相及びW相の3相交流が、電流検出器15及び交流出力コネクタ14を介して負荷に出力される。
【0043】
IGBTモジュール10の6つのIGBTが動作状態となると、樹脂パッケージ19aに埋め込まれている6つのIGBTの上アーム半導体チップ、下アーム半導体チップが発熱状態となる。
また、IGBTモジュール10の樹脂パッケージ19aに埋め込まれている上アーム半導体チップ、下アーム半導体チップの発熱とともに、直流電圧の平滑化を行っている平滑コンデンサ12及びIGBTモジュール10の3相交流の出力電流を検出している電流検出器15も発熱状態となる。
【0044】
IGBTモジュール10の上アーム半導体チップ、下アーム半導体チップの発熱は、IGBTモジュール10のモジュール本体19に一体に設けた冷却器3に熱伝導される。
IGBTモジュール10の冷却器3に伝熱された熱は、冷却器3を循環する冷却水によって移動するので、IGBTモジュール10の上アーム半導体チップ、下アーム半導体チップは、効率良く冷却されていく。
【0045】
一方、筐体カバー5の天井壁5aから突出する第1凸条5dに底壁4a側に押し付けられているIGBTモジュール10及び平滑コンデンサ12の第1電気接続部86は、図20で示したように、第1電気接続部86の下部に冷却端子39の上端が熱的に接触した状態で冷却端子台35が配置されている。このため、第1電気接続部86の発熱は、冷却端子39の下部に配置した伝熱シート37を介して筐体ケース4の底壁4aに熱伝導される。
【0046】
また、筐体カバー5の天井壁5aから突出する第2凸条5eに底壁4a側に押し付けられているIGBTモジュール10及び電流検出器15の第2電気接続部87の下部も、図19で示したように、冷却端子42の上端が熱的に接触した状態で冷却端子台36が配置されている。このため、第2電気接続部87の発熱は、冷却端子42の下部に配置した伝熱シート41を介して筐体ケース4の底壁4aに熱伝導される。
【0047】
そして、筐体ケース4の底壁4aは、図6で示したように冷却水が循環する冷却水循環部CLの入側流路18a、出側流路18bが設けられているので底壁4aの放熱性が高い。したがって、冷却端子台35,36を介して伝達された熱は、放熱性が高い底壁4aに移動していくので、IGBTモジュール10及び平滑コンデンサ12の接続端子及びIGBTモジュール10及び電流検出器15の接続端子は、効率良く冷却されていく。
【0048】
次に、第1実施形態の電力変換装置1の効果について説明する。
IGBTモジュール10及び平滑コンデンサ12の第1電気接続部と、IGBTモジュール10及び電流検出器15の第2電気接続部とが電力損失により発熱状態となると、第1電気接続部及び第2電気接続部の下部に配置した冷却端子台35,36が熱を底壁4aに伝導していくが、筐体カバー5の第1凸条5dが第1電気接続部86を冷却端子台35に押し付け、筐体カバー5の第2凸条5eが第2電気接続部87を冷却端子台36に押し付けることで、第1電気接続部86及び冷却端子台35が密着し、第2電気接続部87及び冷却端子台36も密着して第1電気接続部86及び第2電気接続部87から冷却端子台35,36への熱伝導性が高くなるので、第1電気接続部86及び第2電気接続部87を効率よく冷却することができる。
【0049】
また、IGBTモジュール10の上部を覆った状態で筐体ケース4に固定され、制御回路基板11を支持している固定板47は、IGBTモジュール10の一部の上部を覆った状態で配置される小面積の部材である。また、IGBTモジュール10から制御回路基板11に接続される上アーム用リードフレーム24U,24V,24W、下アーム用リードフレーム25U,25V,25Wは、固定板47の外側を通過して制御回路基板11に延在しており、固定板47には、上記リードフレームを通過させる開口部を設ける必要がない。したがって、固定板47を、単純な平板形状で、小面積の小型形状で形成することができるので、製造コストの低減化を図ることができる。また、上アーム用リードフレーム24U,24V,24W、下アーム用リードフレーム25U,25V,25Wは、固定板47を通過しないため、上記リードフレームが曲げる可能性を低減することができる。
【0050】
さらに、図18に示すように、筐体ケース4に収納されている直流入力コネクタ13及びIGBTモジュール10は、平滑コンデンサ12の長尺方向に並んで配置されているが、平滑コンデンサ12の長尺寸法以下で並んで配置されている。また、電流検出器15は、平滑コンデンサ12の長尺方向に直交する方向にIGBTモジュール10に並んで配置されている。これにより、電力変換装置1を構成する部品の中で一番大型の部品である平滑コンデンサ12の長尺方向以下に他の部品を並べて配置することで、底壁4aの小面積化を図ることができる。
【0051】
[第2実施形態の電力変換装置]
次に、図23に示すものは、第2実施形態の電力変換装置の要部を示すものである。なお、第1実施形態と同一構成部分には、同一符号を付してその説明は省略する。
本実施形態の電力変換装置は、筐体カバー5の天井壁5aから突出する第1凸条5dの先端部に第1弾性押圧部5d1が形成されている。第1弾性押圧部5d1は、第1凸条5dの基端側より薄肉に形成された弾性変形可能な薄肉部5d2と、薄肉部5d2より先端側に設けた当接部5d3とで構成されている。また、第2凸条5eの先端部にも第2弾性押圧部5e1が形成されている。第2弾性押圧部5e1は、第2凸条5eの基端側より薄肉に形成された弾性変形可能な薄肉部5e2と、薄肉部5e2より先端側に設けた当接部5e3とで構成されている。なお、本発明に係る弾性押圧部が、第1弾性押圧部5d1及び第2弾性押圧部5e1に対応している。
【0052】
本実施形態は、筐体カバー5を筐体ケース4に固定すると、第1凸条5dの第1弾性押圧部5d1の当接部5d3が、樹脂シート44を介して第1電気接続部86を冷却端子台35に押し付ける。このとき、当接部5d3が第1電気接続部86を押し付けることで薄肉部5d2が弾性変形していき、弾性変形した薄肉部5d2の弾性復元力が当接部5d3に加わることで押し付け力が増大する。
【0053】
また、第2凸条5eの第2弾性押圧部5e1の当接部5d3も、樹脂シート45を介して第2電気接続部87を冷却端子台36に押し付ける。そして、当接部5e3が第2電気接続部87を押し付ける際に薄肉部5e2が弾性変形していき、弾性変形した薄肉部5e2の弾性復元力が当接部5e3に加わることで押し付け力が増大する。
本実施形態によると、第1凸条5dに第1弾性押圧部5d1を設け、第2凸条5eに第2弾性押圧部5e1を設けて冷却端子台35,36への押し付け力を増大させたことで、第1電気接続部86及び冷却端子台35がさらに密着し、第2電気接続部87及び冷却端子台36もさらに密着するので、第1電気接続部86及び第2電気接続部87の冷却効率を高めることができる。
【0054】
なお、本実施形態は、第1凸条5dの先端部に第1弾性押圧部5d1を形成し、第2凸条5eの先端部に第2弾性押圧部5e1を形成したが、第1凸条5dの平坦な先端部にゴム等の弾性部材を接合し、第2凸条5eの平坦な先端部にゴム等の弾性部材を接合しても、本発明に係る弾性押圧部を構成することができる。この場合、ゴム等の弾性部材で絶縁を確保できるのであれば、樹脂シート44,45は設けられなくてもよい。
【0055】
[第3実施形態の電力変換装置]
次に、図24に示すものは、第3実施形態の電力変換装置の要部を示すものである。
本実施形態の電力変換装置は、第1実施形態で使用していた固定板47を使用せず、筐体ケース4を構成している第2側壁4b2及び第4側壁4b4に、制御回路基板11の端部が固定されることで、IGBTモジュール10の上方に制御回路基板11が配置されている。そして、IGBTモジュール10の上面から突出している上アーム用リードフレーム24U,24V,24W、下アーム用リードフレーム25U,25V,25Wが、制御回路基板11のランドを有するスルーホールに挿通され、各リードフレームとスルーホールの間が半田付けされている。
【0056】
本実施形態によると、固定板47を使用せず、筐体ケース4に制御回路基板11を直接取り付けることで組み立て工数が減少するので、電力変換装置1の製造コストの低減化を図ることができる。
【0057】
[第4実施形態の電力変換装置]
次に、図25に示すものは、第4実施形態の電力変換装置の要部を示すものである。
第4実施形態のIGBTモジュール10は、モジュール本体19の長尺方向の一方の側面に正極側ねじ穴端子55U,55V,55W及び負極側ねじ穴端子56U,56V,56Wが長尺方向に所定間隔をあけて形成されているとともに、長尺方向の他方の側面に、出力ねじ穴端子57U,57V,57Wが長尺方向に所定間隔をあけて形成されている。
平滑コンデンサ12は、長尺方向の一側に、先端が直角に折り曲げられた平板形状の正極側出力端子58U,58V,58W及び負極側出力端子59U,59V,59Wが設けられている。
【0058】
電流検出器15は、先端が直角に折り曲げられた板状の検出器バスバー60U,60V,60Wが設けられている。
平滑コンデンサ12の正極側出力端子58U,58V,58W及び負極側出力端子59U,59V,59Wの先端に形成した貫通穴に固定ねじ61を貫通し、それら固定ねじ61を、IGBTモジュール10の正極側ねじ穴端子55U,55V,55W及び負極側ねじ穴端子56U,56V,56Wにねじ込むことで、正極側出力端子58U,58V,58W及び負極側出力端子59U,59V,59Wを正極側ねじ穴端子55U,55V,55W及び負極側ねじ穴端子56U,56V,56Wを電気的に接続する。これら電気的に接続した部分の下面は、冷却端子台35の冷却端子39が熱的に接触する。
【0059】
また、電流検出器15の検出器バスバー60U,60V,60Wの先端に形成した貫通穴に固定ねじ62を貫通し、これら固定ねじ62を、IGBTモジュール10の出力ねじ穴端子57U,57V,57Wねじ込むことで、出力ねじ穴端子57U,57V,57W及び検出器バスバー60U,60V,60Wを電気的に接続する。これら電気的に接続した部分の下面は、冷却端子台36の冷却端子42が熱的に接触する。
【0060】
そして、筐体カバー5を筐体ケース4に固定することで、筐体カバー5の天井壁5aから突出する第1凸条5dが、正極側出力端子58U,58V,58W及び負極側出力端子59U,59V,59を、樹脂シート44を介して冷却端子台35に押し付けている。また、筐体カバー5の第2凸条5eも、検出器バスバー60U,60V,60Wを、樹脂シート45を介して冷却端子台36に押し付けている。なお、本発明に係る第1貫通穴以外のコンデンサ側端子の部分が、正極側出力端子58U,58V,58W及び負極側出力端子59U,59V,59に対応し、本発明に係る第2貫通穴以外の出力部側端子の部分が、検出器バスバー60U,60V,60Wに対応している。
【0061】
第4実施形態の電力変換装置によると、IGBTモジュール10及び平滑コンデンサ12の接続端子とIGBTモジュール10及び電流検出器15の接続端子とを、固定ねじ61,62を使用したねじ止めで簡単に固定することができる。
また、筐体カバー5の第1凸条5dが平滑コンデンサ12の接続部(正極側出力端子58U,58V,58W及び負極側出力端子59U,59V,59)を冷却端子台35に押し付け、筐体カバー5の第2凸条5eが、電流検出器15の接続部(検出器バスバー60U,60V,60W)を冷却端子台36に押し付けることで、平滑コンデンサ12の接続部及び電流検出器15の接続部から冷却端子台35,36への熱伝導性が高くなるので、平滑コンデンサ12の接続部及び電流検出器15の接続部を効率よく冷却することができる。
【0062】
なお、IGBTモジュール10の正極側ねじ穴端子55U,55V,55W及び負極側ねじ穴端子56U,56V,56Wは、先端が直角に折り曲げられた平板形状でもよい。この場合、平滑コンデンサ12の正極側出力端子58U,58V,58W及び負極側出力端子59U,59V,59Wは、平滑コンデンサ12の長尺方向の側面に形成され、電流検出器15の検出器バスバー60U,60V,60Wは、電流検出器15の側面に形成される。よって、筐体カバー5の第1凸条5d及び筐体カバー5の第2凸条5eがIGBTモジュール10の正極側ねじ穴端子55U,55V,55W及び負極側ねじ穴端子56U,56V,56Wを、冷却端子台35,36へ押し付ける。
【0063】
また、IGBTモジュール10の正極側ねじ穴端子55U,55V,55W及び負極側ねじ穴端子56U,56V,56Wは、モジュール本体19の上面のモジュール本体19の長尺方向の一方の側面側に設けられてもよく、出力ねじ穴端子57U,57V,57Wは、モジュール本体19の上面のモジュール本体19の長尺方向の他方の側面側に設けられてもよい。この場合、平滑コンデンサ12の正極側出力端子58U,58V,58W及び負極側出力端子59U,59V,59W及び電流検出器15の検出器バスバー60U,60V,60Wは、先端の折り曲げが無い。
【0064】
[第5実施形態の電力変換装置]
次に、図26に示すものは、第5実施形態の電力変換装置の要部を示すものである。
第1電気接続部86(平滑コンデンサ12の正極側出力端子26U,26V,26W、負極側出力端子27U,27V,27Wと、IGBTモジュール10の正極側端子21U,21V,21W、負極側端子22U,22V,22W)が溶接により電気的に接続されている箇所の下面に、第5実施形態の冷却端子台75が接触している。
この冷却端子台75は、第1実施形態の冷却端子台35,36と同様に長尺方向の両端が固定ねじ38で底壁4aに固定された部材である。
【0065】
冷却端子台75は、熱伝導性が良好な黄銅製であり、横断面U字形状の6個の冷却端子76と、これら冷却端子76を長尺方向に所定間隔をあけてインサート成形している熱可塑性樹脂からなる端子台本体77と、を備えている。
6個の冷却端子76は、逆U字形状に配置され、端子台本体77の上端から平坦部76aが外部に露出し、一対の対向片部76b,76cが端子台本体77内に埋め込まれている。
【0066】
第5実施形態によると、IGBTモジュール10及び平滑コンデンサ12の第1電気接続部86が発熱状態となると、冷却端子台75の冷却端子76から端子台本体77を介して筐体ケース4の底壁4aに熱伝導されていき、底壁4aが冷却水循環部CLの入側流路18a、出側流路18bが設けられて冷却水循環により放熱性が高くなっているので、IGBTモジュール10及び平滑コンデンサ12の接続部を効率良く冷却することができる。
【0067】
また、筐体カバー5の第1凸条5dが第1電気接続部86を冷却端子台75に押し付けることで、第1電気接続部86及び冷却端子台75が密着して第1電気接続部86から冷却端子台75への熱伝導性が高くなり、第1電気接続部86を効率よく冷却することができる。
【0068】
[第6実施形態の電力変換装置]
次に、図27に示すものは、第6実施形態の電力変換装置の要部を示すものである。
第6実施形態の冷却端子台78は、第4実施形態と同様に、IGBTモジュール10及び平滑コンデンサ12の第1電気接続部86の下面に長尺方向に延在して設けた部材である。
冷却端子台78は、筐体ケース4の底壁4aから突出している長尺な立上がり部79と、この立上がり部79全体を覆う長尺な合成樹脂性の絶縁カバー80と、を備えている。
【0069】
この第6実施形態に冷却端子台78によると、IGBTモジュール10及び平滑コンデンサ12の第1電気接続部86が発熱状態となると、冷却端子台78の絶縁カバー80を介して立上がり部79に熱伝導されていき、底壁4aが冷却水循環部CLの入側流路18a、出側流路18bが設けられて冷却水循環により放熱性が高くなっているので、IGBTモジュール10及び平滑コンデンサ12の接続部を効率良く冷却することができる。
【0070】
また、筐体カバー5の第1凸条5dが第1電気接続部86を冷却端子台78に押し付けることで、第1電気接続部86及び冷却端子台78が密着して第1電気接続部86から冷却端子台78への熱伝導性が高くなり、第1電気接続部86を効率よく冷却することができる。
【0071】
[第7実施形態の電力変換装置]
さらに、図28に示すものは、第7実施形態の電力変換装置の要部を示すものである。
第7実施形態の冷却端子台81も、IGBTモジュール10及び平滑コンデンサ12の第1電気接続部86の下面に長尺方向に延在して設けた部材である。
冷却端子台81は、筐体ケース4の底壁4aから突出している立上がり部82と、この立上がり部82の上側の外周を覆う合成樹脂性の絶縁カバー83と、を備えている。
立上がり部82の長尺方向の両端側には、高さ方向の略中間位置に係合凹部84が形成されている。
【0072】
絶縁カバー83の長尺方向の両端側にはスナップフィット部85が設けられており、スナップフィット部85が弾性変形しながら係合凹部84に嵌まり込むことで、立上がり部82の上側の外周に絶縁カバー83が装着される。
第7実施形態によると、IGBTモジュール10及び平滑コンデンサ12の第1電気接続部86が発熱状態となると、冷却端子台81の絶縁カバー83を介して立上がり部82に熱伝導されていき、底壁4aが冷却水循環部CLの入側流路18a、出側流路18bが設けられて冷却水循環により放熱性が高くなっているので、IGBTモジュール10及び平滑コンデンサ12の第1電気接続部86を効率良く冷却することができる。
【0073】
また、第7実施形態の冷却端子台81は、筐体ケース4の底壁4aから突出している長尺な立上がり部82に、スナップフィット部85を使用して長尺な絶縁カバー83を装着するという簡便な作業なので、製造コストの低減化を図ることができる。
また、筐体カバー5の第1凸条5dが第1電気接続部86を冷却端子台81に押し付けることで、第1電気接続部86及び冷却端子台81が密着して第1電気接続部86から冷却端子台81への熱伝導性が高くなり、第1電気接続部86を効率よく冷却することができる。
【0074】
なお、第5~第7実施形態は、IGBTモジュール10及び平滑コンデンサ12の第1電気接続部86に接触する冷却端子台75,78,81について説明したが、IGBTモジュール10及び電流検出器15の第2電気接続部87に接触する冷却端子台に適用しても同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 電力変換装置
2 筐体
3 冷却器
3a 底壁
3e 入側開口部
3f 出側開口部
4 筐体ケース
4a 底壁
4b1~4b4 第1側壁~第4側壁
4c 開口部
4e 外部入力接続口
4f 外部出力接続口
5 筐体カバー
5a 天井壁
5b1~5b4 第1側壁~第4側壁
5c 開口部
5d 第1凸条
5d1 第1弾性押圧部
5d2薄肉部
5d3 当接部
5e 第2凸条
5e1 第2弾性押圧部
5e2薄肉部
5e3 当接部
6a 冷却水供給パイプ
6b 冷却水排出パイプ
7a 入側溝
7b 出側溝
8a 連通路
8b 連通路
9a 入側開口部
9a1 周溝
9b 出側開口部
10 IGBTモジュール
11 制御回路基板
12 平滑コンデンサ
12a コンデンサ本体
12b 側面
13 直流入力コネクタ
13a 入力コネクタ本体
14 交流出力コネクタ
15 電流検出器
16 Oリング
17 流路カバー
18a 入側流路
18b 出側流路
19 モジュール本体
19a 樹脂パッケージ
20a 一方の側面
20b 他方の側面
21U,21V,21W 正極側端子
22U,22V,22W 負極側端子
23U,23V,23W 出力端子
24U,24V,24W 上アーム用リードフレーム
25U,25V,25W 下アーム用リードフレーム
26U,26V,26W 正極側出力端子
27U,27V,27W 負極側出力端子
28 正極側入力端子
28a 平板形状の基部
28b 接続部
29 負極側入力端子
30 正極側バスバー
31 負極側バスバー
30a コンデンサ側端子
30b 外部入力側端子
31a コンデンサ側端子
31b 外部入力側端子
32 検出器本体
33U,33V,33W 検出器バスバー
33Ua,33Va,33Wa IGBT側端子
33Ub,33Vb,33Wb 出力端子
34a,34b、34c 装着穴
35,36 冷却端子台
37、41 伝熱シート
38 固定ねじ
39、42 冷却端子
39a,42a 縮径部
40,43 端子台本体
44,45、46 樹脂シート
47 固定板
47a 基板支持部材
48a,48b 絶縁紙
49 金属板
50 被覆部
50a,50b,50c 突起部
51 リードフレーム通過穴
55U,55V,55W 正極側ねじ穴端子
56U,56V,56W 負極側ねじ穴端子
57U,57V,57W 出力ねじ穴端子
58U,58V,58W 正極側出力端子
59U,59V,59W 負極側出力端子
60U,60V,60W 検出器バスバー
61,62 固定ねじ
71a 入側パイプ
71b 出側パイプ
72 Oリング
75 冷却端子台
76 冷却端子
77 端子台本体
76a 平坦部
76b,76c 一対の対向片部
78 冷却端子台
79 立上がり部
80 絶縁カバー
81 冷却端子台
82 立上がり部
83 絶縁カバー
84 係合凹部
85 スナップフィット部
86 第1電気接続部
87 第2電気接続部
CL 冷却水循環部
S1 第1収納空間
S2 第2収納空間
S3 第3収納空間
S4 第4収納空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12
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図16
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図20
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