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特開2024-16241抗真菌特性を有する局所用ロフルミラスト製剤
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  • 特開-抗真菌特性を有する局所用ロフルミラスト製剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016241
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】抗真菌特性を有する局所用ロフルミラスト製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/44 20060101AFI20240130BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240130BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20240130BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20240130BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240130BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240130BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240130BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20240130BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240130BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240130BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240130BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
A61K31/44
A61P31/10
A61P17/00
A61K9/12
A61K9/107
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/10
A61K47/06
A61K47/14
A61K47/10
A61K47/24
A61K45/00
A61P17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023192959
(22)【出願日】2023-11-13
(62)【分割の表示】P 2022548455の分割
【原出願日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】63/121,299
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518194257
【氏名又は名称】アーキュティス・バイオセラピューティクス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(74)【代理人】
【識別番号】100220098
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 薫
(72)【発明者】
【氏名】バーク,デビッド・ルーベン
(72)【発明者】
【氏名】バーネット,パトリック・ユージーン
(72)【発明者】
【氏名】オズボーン,デビッド
(72)【発明者】
【氏名】加藤 沙織
(57)【要約】      (修正有)
【課題】真菌感染症を治療する方法を提供する。
【解決手段】真菌感染症の治療を必要とする対象に、抗真菌有効量のロフルミラストを局所的に投与することを含む、真菌感染症を治療する方法に関する。好ましくは、局所投与されるロフルミラストは、真菌感染症、真菌増殖および/または真菌マラセチア属菌種に対する過敏症を治療するために使用される。患者はまた、脂漏性皮膚炎、ふけ、デュピルマブ顔面発赤、癜風、連環状白癬、足白癬、爪白癬、手白癬、股部白癬、体部白癬、顔面白癬、頭部白癬、または異型白癬に罹患している可能性がある。局所投与されたロフルミラストは、迅速かつ効果的な抗真菌剤であり、現在の抗真菌治療の実行可能な代替手段を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真菌感染症の治療を必要とする対象において真菌感染症を治療する方法であって、治療有効量のロフルミラストまたはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与するステップを含み、前記真菌感染症がマラセチア属菌種によって引き起こされる、方法。
【請求項2】
前記ロフルミラストが局所的に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マラセチア属菌種がM.ファーファー(M.furfur)、M.レストリクタ(M.restricta)、およびM.グロボサ(M.globosa)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記マラセチア属菌種がM.ファーファーである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記真菌感染症が毛髪、皮膚、または爪の真菌の異常増殖を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記対象が、脂漏性皮膚炎、ふけ、デュピルマブ顔面発赤、癜風(tinea versicolor)、癜風(pityriasis versicolor)、連環状白癬(tinea circinata)、足白癬(tinea pedis)、爪白癬(tinea unguium)、手白癬(tinea manus)、股部白癬(tinea cruris)、体部白癬(tinea corporis)、顔面白癬(tinea faciei)、頭部白癬(tinea capitis)、または異型白癬(tinea incognito)に罹患している、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記対象が脂漏性皮膚炎に罹患している、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が局所投与に適した担体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、エアロゾル、フォーム、スプレー、エマルジョン、ゲル、液体、軟膏、ペースト、シャンプー、懸濁液、およびシステムからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物がフォームである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が0.3%w/wのロフルミラストを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物が、ロフルミラスト、白色ワセリン、パルミチン酸イソプロピル、セテアリルアルコール、リン酸ジセチル、リン酸セテス-10、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、メチルパラベン、プロピルパラベンおよび水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物が、
ロフルミラスト 0.3%w/w
白色ワセリン 10.0%w/w
パルミチン酸イソプロピル 5.0%w/w
セテアリルアルコール、リン酸ジセチル
およびリン酸セテス-10のブレンド 10.0%w/w
ヘキシレングリコール 2.0%w/w
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 25.0%w/w
メチルパラベン 0.2%w/w
プロピルパラベン 0.05%w/w
および
精製水 加えて100になる適量(47.45%)
からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
追加の抗真菌剤および/または抗炎症剤を投与するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記追加の抗真菌剤が、ミコナゾール、シクロピロキソラミン、クロトリマゾール、ブテナフィン、テルビナフィン、アモロルフィン、ナフチフィン、トルナフテート、ケトコナゾール、エフィナコナゾール、グリセオフルビン、イミダゾール、トリアゾール、ボリコナゾール、ベンズイミダゾール、エチルパラベン、フルシトシン、サリチル酸、硫化セレン、およびウンデシレン酸を含む各薬物からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記追加の抗炎症剤がコルチコステロイドまたはカルシニューリン阻害剤である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
マラセチア感染、マラセチア感染の治療および/またはマラセチア過敏症による、顔面発赤または炎症を軽減するための方法であって、そのような治療を必要とする患者に有効量のロフルミラストを局所投与するステップを含む方法。
【請求項18】
前記マラセチア過敏症がデュピルマブでの治療による、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ロフルミラストが、エタノール、イソプロピルアルコールまたは変性アルコールを含有しない組成物で投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物が、ロフルミラスト、白色ワセリン、パルミチン酸イソプロピル、セテアリルアルコール、リン酸ジセチル、リン酸セテス-10、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、メチルパラベン、プロピルパラベンおよび水を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記マラセチア過敏症が、M.ファーファー、M.リストリクタ、および/またはM.グロボサによって引き起こされる、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
抗炎症剤を投与するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
真菌感染症、真菌の異常増殖および/またはマラセチア属菌種に対する過敏症の治療を、必要とする対象において行う方法であって、治療有効量のロフルミラストまたはその薬学的に許容される塩を前記対象に局所投与するステップを含み、前記真菌感染症または前記異常増殖がマラセチア属菌種によって引き起こされる、方法。
【請求項24】
中等度から重度のアトピー性皮膚炎の治療により引き起こされる顔面発赤および炎症を軽減するための方法であって、そのような治療を必要とする対象に、治療有効量のロフルミラストまたはその薬学的に許容される塩を局所投与するステップを含み、前記顔面発赤および炎症がマラセチア属菌種の感染症によって引き起こされる、方法。
【請求項25】
前記マラセチア属菌種の感染症がデュピルマブを用いて治療されたか、または現在治療中である、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真菌感染症、真菌感染症により引き起こされる炎症を治療するための抗真菌特性を有するPDE4阻害剤の使用、または真菌感染症および毛髪、皮膚もしくは爪の真菌の異常増殖の治療に関する。より具体的には、本発明は、局所投与されたロフルミラストを使用して真菌感染症を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚、爪、および毛髪の真菌感染症
細菌、ウイルス、真菌はすべて、健康な人間および動物の皮膚における微生物叢の一部である。マラセチア属菌種は微視的な単細胞真菌(または酵母)の属であり、これは皮膚表面に自然に見られる最も一般的な真菌の1つである。マラセチア属で最も一般的でよく知られた種は、マラセチア・ファーファー(「M.furfur」)、マラセチア・グロボサ(Malassezia globosa)、マラセチア・レストリクタ(Malassezia restricta)、およびマラセチア・パキデルマティス(Malassezia pachydermatis)である。
【0003】
マラセチア属菌種は一般に真皮の表層に生息し、主に体幹、顔、頭皮、耳、額、豊齢線、眉間、および顎髭エリアなどの皮脂が豊富な領域に生息する。これは皮膚微生物叢の共生生物であり、一般に身体の防御を強化し、危険な病原体から免疫系を保護するのに役立つことで知られている。具体的には、マラセチア種は免疫系を刺激し、他のサイトカイン類の中でも、サイトカインであるインターロイキン-17を産生してこれら病原体の制御に関与して、皮膚における真菌の異常増殖を防ぐ炎症性分子の誘導を媒介することが実証されている。しかし、この免疫学的プロセスが崩壊して、例えば、サイトカインが放出されなかったり、インターロイキン-17を産生する免疫細胞が失われたりすると、マラセチア属菌種が増殖して皮膚に寄生する。この真菌は効果的に皮膚に対するアレルゲンになり、皮膚の細菌叢の不均衡を生じさせ、最終的には炎症に関して免疫系の過剰反応を引き起こす。マラセチア属菌種はまた、その生涯の間で、未知の分子変化を通して酵母から菌糸形態(分岐した糸状菌構造)へと変化するときに、制御不能に増殖して病原性の能力を獲得する可能性がある。
【0004】
真菌の片利共生と疾患の発現との因果関係は不完全なままであるが、病原性マラセチア属菌種は、脂漏性皮膚炎、ふけ、ピチロスポルム濾胞炎、アトピー性皮膚炎、癜風(tinea versicolor)、癜風(pityriasis versicolor)を含むさまざまな皮膚疾患と関連しており、一般には、さまざまな紅斑を伴った低色素性もしくは高色素性の斑点、パッチ、または鱗状の丘疹またはプラークの形態での皮膚病変として臨床的に現れる。脂漏性皮膚炎の場合、異常な免疫応答または真菌活性に加えて、マラセチア属菌種は過剰な皮脂産生の結果として疾患の病因に関与している可能性があり、これが親油性酵母の異常増殖を引き起こし得ると考えられている。マラセチア属菌種に対する反応を引き起こす可能性のある他の潜在的な病理学的メカニズムおよび潜在的な疾患要因には、皮膚バリア機能の欠陥、ホルモンの変動(特に皮脂産生に影響を与えるもの)、神経学的要因、および日光不足や摂食障害のような外因性の要因が含まれる。
【0005】
病原性マラセチア属菌種は、デュピルマブ顔面発赤(dupilumab facial redness:DFR)および炎症にも関連している。デュピルマブは、IL-4受容体αを遮断することによってIL-4およびIL-13を阻害するものであり、中等度から重度のアトピー性皮膚炎の最初の生物学的治療法である。デュピルマブ治療の既知の副作用の1つは、デュピルマブ治療の開始から数ヶ月後の湿疹性顔面皮疹の発症である
。DFRは、実際にデュピルマブで治療された患者のおよそ5~10%を冒すこと、およびデュピルマブの継続投与によって悪化することが分かっている。患者のアトピー性皮膚炎が大幅に改善したため、患者はデュピルマブ治療を中止することに消極的であることがよくある。文献(de Beerら JAAD CASE REPORTS Vol5(10) pages888-891(2019))において、マラセチア過敏症は、DFRの考えられる原因として示唆されたが、これはM.ファーファーが、(アトピー性皮膚炎の結果として)障害のある皮膚バリア機能に容易に浸透して局所的に損傷を生じ、またケラチノサイトを活性化し、それによって炎症を増強し得るからである(Strong,Colby,Oral and Topical Antifungals Beneficial for Dupilumab Facial Redness in Atopic Dermatitis(アトピー性皮膚炎のデュピルマブ顔面発赤に有益な経口および局所抗真菌剤)、Dermatology Advisor,Published online Oct.27,2021;dermatologyadvisor.com/home/topics/dermatitis/oral-and-topical-antifungals-beneficial-for-dupilumab-facial-redness-in-ad/も参照のこと)。デュピルマブ顔面発赤は、コルチコステロイドおよび局所カルシニューリン阻害剤で治療されている。最近の皮膚科治療の記事では、経口および局所抗真菌剤が、デュピルマブ治療を受けた後にデュピルマブ顔面発赤(DFR)および炎症を発症するアトピー性皮膚炎(atopic dermatitis:AD)の患者に有効であることが分かった(Ordonez-Rubiano MF,Casas M,Balaguera-Orjuela Vら Dupilumab facial redness:Clinical characteristics and proposed treatment in a cohort(デュピルマブの顔面発赤:コホートにおける臨床的特徴および提案された治療)、Dermatol Ther.Published online September 21,2021.doi:10.1111/dth.15140)。これらの結果は、病原性マラセチア属菌種とDFRとの間のより強い関連性を提供する。
【0006】
マラセチア属菌種などの真菌類は、皮膚および毛髪の最外層に限定された感染症(表在性真菌症)を引き起こすが、他の真菌類は、皮膚、毛髪、爪の角質化層に浸透して、宿主の病理学的変化を引き起こすことにより皮膚真菌症を引き起こす。例えば、皮膚糸状菌と称する真菌類は、角質細胞層に寄生して、皮膚糸状菌症を引き起こす可能性がある。
【0007】
皮膚糸状菌は、トリコフィトン(Trichophyton)、ミクロスポルム(Microsporum)、およびエピダーモフィトン(Epidermophyton)の3つの属に分けられる。トリコフィトン属には、紅色白癬菌(T.rubrum)、毛瘡白癬菌(T.mentagrophytes)、牛白癬菌(T.verrucosum)、黄色白癬菌(T.violaceum)、シェンライン白癬菌(T.schoenleinii)、断髪性白癬菌(T.tonsurans)、渦状白癬菌(T.concentricum)、およびエクイヌム白癬菌(T.equinum)の種が含まれる。ミクロスポルム属には、犬小胞子菌(M.canis)、石膏状小胞子菌(M.gypseum)、オーズアン小胞子菌(M.audouinii)、クーケイ小胞子菌(M.cookei)、エクイヌム小胞子菌(M.equinum)、錆色小胞子菌(M.ferrugineum)、ガリネ小胞子菌(M.gallinae)、およびナヌム小胞子菌(M.nanum)の種が含まれる。エピダーモフィトン属には、フロッコスム表皮菌(E.floccosum)種が含まれる。最も一般的な皮膚糸状菌は、紅色白癬菌、トリコフィトン・トンズランス(T.tonsurans)、および毛瘡白癬菌(T.mentagrophytes)である。皮膚糸状菌はケラチンを摂食するため、通常、表皮の角質細胞層、爪、および毛包に感染し、表在性病変を引き起こす。皮膚糸状菌症(真菌性皮膚病)の名称は場所によって異なる。疾患名を、括弧内にそれら疾患に関連する一般名を付
して列記すると、足白癬(水虫)、白癬菌または爪真菌症、手白癬(tinea manus)、股部白癬(tinea cruris、頑癬)、体部白癬(tinea corporis、ふく行疹)、顔面白癬(tinea faciei)、頭部白癬(tinea capitis、白雲頭)および異型白癬(tinea incognito)である。
【0008】
上記の真菌および酵母によって引き起こされる真菌感染症の具体的な例は、爪真菌症である(主に、トリコフィトン属、エピダーモフィトン属、およびミクロスポルム属を含む皮膚糸状菌による)。爪真菌症は、爪床および爪板の慢性的かつ持続性の真菌、酵母、および/またはカビの感染症であり、爪の肥厚および変色を引き起こし、時には痛みおよび障害を伴う。爪や頭皮を冒す真菌感染症は、毛包の根や爪自体の下の真菌感染症のため、治療するのが非常に困難である。爪真菌症はまた、爪が成長するのに要する時間の長さおよび爪板の不浸透性のために、治療するのが特に難しい。同様の状況は、頭皮および毛幹が感染している頭部白癬でも生じる。したがって、爪真菌症および頭部白癬では、症状の根絶が非常に遅く、数ヶ月または最大1年以上かかる場合がある。
【0009】
真菌感染症の従来の治療法
真菌感染症は現在、局所抗真菌剤、角質溶解剤(薄片化および鱗屑化を低減し得る剥離剤)、および/または経口薬を使用して管理されている。しかし、これらの治療法はしばしば失敗し、あるいはそれらの使用を制限する安全上の懸念を有する。例えば、一般に、局所的ではなく全身的に作用するため、経口投与された薬剤は局所投与された薬剤よりも効果的であるが、経口投与された薬剤の副作用ははるかに深刻になる可能性がある。既知の副作用は非常に深刻であり、ほんの数例を挙げると、肝臓および/または心臓の毒性、頭痛、めまい、極度の倦怠感、エネルギー不足、インフルエンザのような症状、呼吸困難または嚥下困難、発作、胸焼け、うつ病、胃のむかつき、および有害な薬物相互作用が含まれる。同様に、局所コルチコステロイドは効果的な抗炎症剤であるが、中効能から高効能のコルチコステロイドの長期使用は、灼熱感、刺痛、腫れ、発赤、変色、および皮膚過敏症を引き起こすことが知られており、にきび、酒さ、口囲皮膚炎、毛細血管拡張症(小さな壊れた血管)、および脈理(ストレッチマーク)などの他の皮膚障害を引き起こすかまたは悪化させる可能性がある。
【0010】
一般的な局所抗真菌治療には、シクロピロックスを含有する薬剤、ミコナゾールを含有する薬剤(ダクタリン(Daktarin)(登録商標)、ミカチン(Micatin)(登録商標)およびモニスタット(Monistat)(登録商標))、クロトリマゾールを含有する薬剤(カネステン(Canesten)(登録商標)、ハイドロゾール(Hydrozole)(登録商標))、ブテナフィンを含有する薬剤(ロトリミン・ウルトラ(Lotrimin Ultra)(登録商標)、メンタックス(Mentax)(登録商標))、テルビナフィンを含有する薬剤(ラミシール(Lamisil)(登録商標))、アモロルフィンを含有する薬剤(クラネイル(Curanail)(登録商標)、ロセリル(Loceryl)(登録商標)、ロセタール(Locetar)(登録商標)およびオデニル(Odenil)(登録商標))、ナフチフィンを含有する薬剤(ナフチン(Naftin)(登録商標))、トルナフテートを含有する薬剤(チナクチン(Tinactin)(登録商標))、エフィナコナゾールを含有する薬剤(ジュブリア(Jublia)(登録商標))、およびケトコナゾールを含有する薬剤(ニゾラール(Nizoral)(登録商標))が含まれる。真菌感染症を除去するためにも使用できる他のものは、エチルパラベン、フルシトシン、サリチル酸、硫化セレン、およびウンデシレン酸である。
【0011】
シクロピロックスオラミン(バトラフェン(Batrafen)(登録商標)、ロプロックス(Loprox)(登録商標)、ペンラック(Penlac)(登録商標)、およ
びスティプロックス(Stieprox)(登録商標)とも呼ばれる)は、3価の金属カチオンに対して高い親和性を持つ局所皮膚科用の合成抗真菌剤である。シクロピロックスは通常、頭皮、爪、および爪のすぐ周囲でかつ爪の直下の皮膚に塗布するための溶液として提供される。しかし、シクロピロックスは爪の状態を改善し得るが、爪真菌を完全に治癒するわけではない。さらに、感染した爪が改善している兆候が現れるまでに6ヶ月以上かかる場合がある。さらに、シクロピロックス局所溶液は可燃性であり、塗布部位の発赤、刺激、かゆみ、灼熱感、水膨れ、腫れ、または塗布部位でのにじみ、患部の爪または周辺領域の痛み、爪の変色または形の変化、および陥入爪などの副作用が含まれる場合がある。
【0012】
ケトコナゾールクリーム(ニゾラール(Nizoral)(登録商標))は、一般的に体部白癬(白癬:身体のさまざまな部分に赤い鱗状の発疹を引き起こす真菌性皮膚感染症)、股部白癬、足白癬、癜風(胸、背中、腕、脚、または首に茶色または明るい色の斑点を生じる真菌感染症)、および皮膚の酵母感染症の治療に使用される。癜風の治療には、処方ケトコナゾールシャンプーが使用される。しかし、ケトコナゾールは、毛髪の質感の変化、頭皮の水膨れ、乾燥肌、かゆみ、油性もしくは乾燥した毛髪または頭皮、塗布部位における刺激、かゆみ、もしくは刺痛、発疹、じんましん、呼吸困難または嚥下困難、および塗布部位における発赤、圧痛、腫れ、痛み、または熱感などの副作用を引き起こす可能性がある。
【0013】
したがって、当技術分野においては、爪、毛髪、および皮膚の真菌感染症を含む真菌感染症に罹患した患者のための、改善された治療選択肢が必要とされている。具体的には、a)爪、毛髪、および皮膚の真菌感染症を迅速かつ完全に根絶し、b)マラセチア感染症、マラセチア感染症の治療、および/または中等度から重度のアトピー性皮膚炎の治療によって引き起こされるマラセチア過敏症による、顔面発赤または炎症を軽減する、非常に効果的な殺菌剤が顕著に必要とされている。本発明は、現在の抗真菌治療に対する実行可能かつ上首尾の代替物として、局所投与のロフルミラストを提供する。
【0014】
局所投与されるロフルミラスト
ロフルミラストは、炎症性疾患の治療に適することが知られている。ロフルミラストを含有する組成物は、ヒトおよび獣医学において使用されており、炎症性およびアレルゲン誘発性の気道障害(例えば、気管支炎、喘息、COPD)、皮膚病(例えば、増殖性、炎症性およびアレルゲン誘発性の皮膚障害)、および胃腸領域の全身性炎症(例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎)を含むが、これらに限定されない疾患の治療および予防のために提案されている。
【0015】
ロフルミラストおよびその合成は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,712,298号(「’298特許」)に記載されている。ロフルミラストのようなホスホジエステラーゼ(PDE)阻害特性を有する医薬化合物は、乾癬およびアトピー性皮膚炎(’298特許、第11欄第52~61行)、ならびにその他の慢性炎症性およびアレルゲン誘発性皮膚炎の治療に有用であることが長い間認識されてきた。そのような皮膚病を治療するために、局所適用のためのロフルミラストのエマルジョン、懸濁液、ゲルまたは溶液が記載されている(’298特許、第12欄第37~64行)。
【0016】
他に指示がない限り、参照により本明細書に組み込まれる参照は、すべての目的で、その全体が組み込まれる。
皮膚病を治療するためにロフルミラストのような強力な薬理作用剤を局所適用することは、患者に優れた送達、より低い全身曝露、およびより優れた使いやすさを提供することが見出された。化合物の分子構造は、最終的には、製品が適用される組織の上皮を通過する薬剤の能力を決定する。皮膚への局所適用の場合、製剤の成分の選択は、調合者が達成
できる最大の皮膚浸透を決定する。クリーム、ローション、ゲル、軟膏、およびフォームは、皮膚に塗布するための医薬品有効成分(API)を含有した、より身近な局所製品の形態のほんの一部である。
【発明の概要】
【0017】
本発明によれば、局所投与されたロフルミラストは、PDE4阻害剤としてのその既知の抗炎症特性に加えて、抗真菌特性を示すことが発見された。これらの特徴により、局所ロフルミラストは、真菌感染症、毛髪、皮膚または爪の真菌の異常増殖、および真菌過敏症による炎症を治療するための最適な治療法となる。局所ロフルミラストは、マラセチア菌の有意かつ迅速な減少および脂漏性皮膚炎治療の高い成功率を示し、8週目での治験責任医師のグローバル評価成功率は、ビヒクルのフォーム剤での割合が40.9%であるのに対して、0.3%ロフルミラストでは73.8%であった。この迅速かつ成功裏の治療結果は、局所投与されたロフルミラストが効果的な抗真菌剤であり、現在の抗真菌治療の実行可能な代替法を提示することを示している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ロフルミラストの抗真菌活性を試験するためのインビトロ微量希釈感受性アッセイの結果を示している。図1および表Bに示すように、ロフルミラストは、マラセチア属菌種に対して抗真菌活性を示すことが示されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ロフルミラストは、式(I)の化合物である:
【0020】
【化1】
【0021】
ここで、R1はジフルオロメトキシ、R2はシクロプロピルメトキシ、およびR3は3,5-ジクロロピリド-4-イルである。
この化合物の化学名は、N-(3,5-ジクロロピリド-4-イル)-3-シクロプロピルメトキシ-4-ジフルオロメトキシベンズアミド(INN:ロフルミラスト)である。
【0022】
ヘキシレングリコール(医薬等級 USP/NF)は、式(II)の2-メチル-2,4-ペンタンジオールである。
【0023】
【化2】
【0024】
セテアリルアルコール(CAS 67762 30 0)、リン酸ジセチル(CAS 2197 63 9)、およびリン酸セテス-10(CAS 50643-20-4)の
乳化剤ブレンドは、クロダ(Croda)によって、CRODAFOS(商標)CESの商品名で製造されている。CRODAFOS(商標)CES PHARMAは、同じ出発材料およびプロセスを使用して製造されているが、強化された品質管理と放出テストを受けており、医薬品賦形剤の命名の標準的な慣行に従って、セテアリルアルコール、リン酸セテアリル、およびリン酸セテアレス-10という命名法を使用している。この商業的に入手可能な乳化剤ブレンドは、主にワックス状物質であるセテアリルアルコール(セチルアルコール(C1634O)およびステアリルアルコール(C1838O)の混合物)と、10~20%のリン酸ジセチル(リン酸セテアリル)および10~20%のリン酸セテス-10(リン酸セテアレス-10)とを組み合わせた自己乳化型ワックスである。自己乳化型ワックスは、水とブレンドするとエマルジョンを形成する。CRODAFOS(商標)CESを水に加えると、それは自然にpHが約3のエマルジョンを形成する。水酸化ナトリウム溶液を加えて、pHを所望の値まで上げる。
【0025】
【化3】
【0026】
真菌感染症または真菌の異常増殖を治療するために使用できる局所ロフルミラスト製品製剤には、エアロゾル、フォーム、スプレー、エマルジョン(クリーム、ローション、または軟膏とも呼ばれ得る)、ゲル(二相または単相)、液体、軟膏、ペースト、シャンプー、懸濁液、およびシステムが含まれるが、これらに限定されない。これらは、医薬品有効成分を含む剤形(US Pharmacopeia<1151>)の大要分類法における第2段階の用語である。好ましい実施形態において、局所ロフルミラスト製品製剤にはフォームが含まれる。より好ましくは、局所ロフルミラスト製品製剤には、ARQ154フォームが含まれる。
【0027】
ロフルミラストは、当技術分野で公知の方法により調製できる(例えば、’298特許および米国出願番号14/075,035を参照のこと)。ロフルミラスト製剤は、米国特許第9,884,050号、米国出願番号15/712,900、米国出願番号16/426,492、米国出願番号16/426,492、米国出願番号16/563,435および米国出願番号16/778,845にも開示されており、それらの開示の全体が本明細書に組み込まれる。
【0028】
好ましくは、真菌感染症を治療するための当該局所製剤には、0.005~2.0%、好ましくは0.3%のロフルミラストを含有する組成物が含まれ、これは以下の形態のうちの1つであり得る。
【0029】
水中油型エマルジョン:この製品は、ヘキシレングリコール、リン酸ジセチルとリン酸セテス-10との自己乳化型ワックスブレンド、および/または溶媒が、疎水性成分の離散相と、水および任意選択で1つまたは複数の極性親水性賦形剤、ならびに追加の溶媒、共溶媒、塩、界面活性剤、乳化剤、および他の成分を含む連続水相を含むエマルジョンに添加された製剤であり得る。これらのエマルジョンは、当該エマルジョンの安定化を助ける水溶性または水膨潤性ポリマーを含んでいてもよい。好ましくは、当該乳化剤は、リン酸ジセチルとリン酸セテス-10の自己乳化型ワックスブレンドである。
【0030】
エアロゾルフォーム:この製品は、水中油型エマルジョン製品濃縮物が液体推進剤と混合され、当該推進剤が当該エマルジョンの内部油相と混合されたときに製造され得る。水中油型エマルジョンの乳化剤は、発泡剤としても機能する。急速破砕フォームは、容器から放出されるとフォームを形成するが、フォームは比較的短時間で崩壊する。このタイプのフォームは、製品を手でこすったり広げたりすることなく、製品濃縮物を広い領域に塗布するために使用される。また、フォームがすぐに崩壊するので、活性薬剤はより迅速に利用可能である。有機相と水相の両方で溶解度が制限される乳化剤を使用すると、安定したフォームが生成される。乳化剤または乳化ワックスは、推進剤/油相と水相との間の界面に集中して、「ラメラ」と呼ばれる薄膜を形成する。当該フォームの構造強度および一般的特性を決定するのは、このラメラの特定の組成である。厚くかつ緊密に層状になっているラメラは、自重を支えることができる非常に構造化されたフォームを生成する。1つまたは複数の極性親水性賦形剤、ならびに追加の溶媒、共溶媒、塩、界面活性剤、乳化剤、および他の成分を、当該エマルジョン製品濃縮物に加えることができる。これらのエマルジョンは、当該エマルジョンの安定化を助ける水溶性または水膨潤性ポリマーを含むことができる。好ましくは、当該乳化剤は、リン酸ジセチルおよびリン酸セテス-10の自己乳化型ワックスブレンドである。
【0031】
増粘された水性ゲル:これらのシステムには、以下に説明するような適切な天然の、変性された天然の、または合成の増粘剤により増粘された水相が含まれる。あるいは、増粘された水性ゲルは、適切なポリエトキシレートアルキル鎖界面活性剤、または他の非イオン性、カチオン性、もしくはアニオン性システムを使用して増粘することができる。
【0032】
増粘された水性アルコールゲル:これらのシステムには、極性相としての水およびアルコールのブレンドが含まれ、以下に説明するような適切な天然の、変性された天然の、または合成のポリマーによって増粘されている。あるいは、増粘された水性アルコールゲルは、適切なポリエトキシレートアルキ鎖界面活性剤または他の非イオン性、カチオン性、もしくはアニオン性システムを使用して増粘することができる。当該アルコールは、エタノール、イソプロピルアルコールまたは他の薬学的に許容されるアルコールであり得る。
【0033】
親水性ゲル:これらは、連続相が水以外の少なくとも1つの水溶性または水分散性の親
水性成分を含むシステムである。この製剤はまた、任意選択で、最大60重量%の水を含み得る。いくつかの組成物では、より高いレベルが適切である可能性がある。適切な親水性成分には、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)などのポリオールのような1つまたは複数のグリコール、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、および/またはブチレンオキシドのランダムまたはブロックコポリマー、分子当たり1つまたは複数の疎水性部分を有するポリアルコキシル化界面活性剤、シリコーンコポリオール、セテアレス-6およびステアリルアルコールのブレンド、ならびにそれらの組合せ等が含まれる。
【0034】
油中水型エマルジョン:当該組成物は、疎水性成分の連続相と、水および任意選択で1つまたは複数の極性親水性担体、並びに塩または他の成分を含む水相を含んだエマルジョンに、ロフルミラストが組み込まれた製剤であり得る。これらのエマルジョンは、油溶性または油膨潤性ポリマー、ならびにエマルジョンの安定化を助ける1つまたは複数の乳化剤を含み得る。好ましくは、この乳化剤は、リン酸ジセチルとリン酸セテス-10の自己乳化型ワックスブレンドである。
【0035】
親水性または疎水性軟膏:当該組成物には、疎水性ベース(例えば、ワセリン、増粘またはゲル化された水不溶性油など)が配合され、任意選択で少量の水溶性相を有する。親水性軟膏は、一般に、1つまたは複数の界面活性剤または湿潤剤を含有する。
【0036】
溶媒
本発明による組成物は、局所製品における所望のレベルの活性成分溶解性を得るために、1つまたは複数の溶媒または共溶媒を含み得る。溶媒はまた、皮膚透過性または製剤に含有される他の賦形剤の活性を改変し得る。溶媒には、アセトン、エタノール、ベンジルアルコール、ブチルアルコール、セバシン酸ジエチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、アジピン酸ジイソプロピル、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、N-メチルピロリジノン、ポリエチレングリコール、グリセロール、プロピレングリコールおよびSDアルコールが含まれるが、これらに限定されない。炎症状態の患者を治療する場合、溶媒は、エタノール、イソプロピルアルコール、または変性アルコールではないことが好ましい。
【0037】
保湿剤
本発明による組成物は、水和レベルを高めるための保湿剤を含み得る。保湿剤は、湿潤剤を含む親水性材料であり得るか、または皮膚軟化剤を含む疎水性材料であり得る。適切な保湿剤には、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、ブチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール200-8000、ステアリン酸ブチル、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、セチルエステルワックス、パルミチン酸セチル、ココアバター、ココナッツオイル、シクロメチコン、ジメチコン、ドコサノール、ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシル、脂肪酸、イソステアリン酸グリセリル、ラウリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、オレイン酸グリセリル、パルミチン酸グリセリル、ジステアリン酸グリコール、ステアリン酸グリコール、イソステアリン酸、イソステアリルアルコール、ラノリン、ミネラルオイル、リモネン、中鎖トリグリセリド、メントール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、オレイン酸、オレイルアルコール、オレイルオレエート、オリーブオイル、パラフィン、ピーナッツオイル、ペトロラタム、プラスチベース-50W、白色ワセリン、パルミチン酸イソプロピル、およびステアリルアルコールが含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
界面活性剤および乳化剤
本発明による組成物は、任意選択で、組成物を乳化し、また活性剤または賦形剤の表面
を濡らすのを助けるために、1つまたは複数の界面活性剤を含むことができる。本明細書で使用する場合、用語「界面活性剤」は、水の表面張力および/または水と非混和性液体との間の界面張力を低下させ得る両親媒性物質(共有結合される極性および非極性領域の両方を有する分子)を意味する。界面活性剤には、アルキルアリールナトリウムスルホネート、アメルコール-CAB、ラウリル硫酸アンモニウム、アプリコットカーネルオイルPEG-6エステル、アラセル、塩化ベンザルコニウム、セテアレス-6、セテアレス-12、セテアレス-15、セテアレス-30、セテアリルアルコール/セテアレス-20、エチルヘキサン酸セテアリル、セテス-10、セテス-2、セテス-20、セテス-23、コレス-24、硫酸コカミドエーテル、コカミンオキシド、ココベタイン、ココジエタノールアミド、ココモノエタノールアミド、ココカプリレート/キャプレート、ココアンフォ二酢酸二ナトリウム、ラウレススルホコハク酸二ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸二ナトリウム、ラウリルスルホコハク酸二ナトリウム、オレアミドモノエタノールアミンスルホコハク酸二ナトリウム、ドクサートナトリウム、ラウレス-2、ラウレス-23、ラウレス-4、ラウリックジエタノールアミド、レシチン、メホキシPEG-16、メチルグルセス-10、メチルグルセス-20、セスキステアリン酸メチルグルコース、オレト-2、オレト-20、ステアリン酸PEG6-32、ステアリン酸PEG-100、グリセリルラウリン酸PEG-12、二オレイン酸PEG-120メチルグルコース、PEG-15コカミン、二ステアリン酸PEG-150、ステアリン酸PEG-2、セスキステアリン酸PEG-20メチルグルコース、PEG-22メチルエーテル、ステアリン酸PEG-25プロピレングリコール、二ラウリン酸PEG-4、ラウリン酸PEG-4、PEG-45/ドデシルグリコールコポリマー、オレイン酸PEG-5、ステアリン酸PEG-50、PEG-54水素化ヒマシ油、イソステアリン酸PEG-6、PEG-60水素化ヒマシ油、PEG-7メチルエーテル、PEG-75ラノリン、ラウリン酸PEG-8、ステアリン酸PEG-8、ステアリン酸ペゴキソール7、ヤシ油脂肪酸ペンタエリスリトール、ポロキサマー124、ポロキサマー181、ポロキサマー182、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー407、オレイン酸ポリグリセリル-3、ポリオキシエチレンアルコール、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシル20セトステアリルエーテル、ポリオキシル40水素化ヒマシ油、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシル6およびポリオキシル32、ステアリン酸ポリオキシルグリセリル、ステアリン酸ポリオキシル、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、オレイン酸PPG-26、PROMULGEN(商標)12、二酢酸プロピレングリコール、二カプリン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、キシレンスルホン酸ナトリウム、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、ステアレス-2、ステアレス-20、ステアレス-21、ステアレス-40、獣脂グリセリド、および乳化ワックスが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、当該乳化剤は、リン酸ジセチルとリン酸セテス-10との自己乳化型ワックスブレンドである。
【0039】
ポリマーおよび増粘剤
特定の用途では、天然および合成ポリマーのような可溶性、膨潤性、または不溶性の有機ポリマー増粘剤、またはアクリレートコポリマー、カルボマー1382、カルボマーコポリマータイプB、カルボマーホモポリマータイプA、カルボマーホモポリマータイプB、カルボマーホモポリマータイプC、カルボキシビニルコポリマー、カルボキシメチルセルロース、カルボキシポリメチレン、カラゲナン、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶ワックス、およびメチルセルロースのような無機増粘剤で増粘された製品を処方することが望ましい場合がある。
【0040】
追加の成分
本発明による組成物には、化粧品および医薬品の局所用製品に従来見られる充填剤、担体および賦形剤などの追加の成分を配合することができる。好ましい実施形態において、
当該充填剤、担体、および賦形剤は局所投与に適している。安定性または美観を改善するために、消泡剤、防腐剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸エステル、ベンジルアルコール、フェニル水銀塩、クロロクレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン)、抗酸化剤、金属イオン封鎖剤、安定剤、緩衝液、pH調整液、皮膚浸透促進剤、フィルム形成剤、染料、顔料、希釈剤、増量剤、香料および他の賦形剤を含むがこれらに限定されない追加の成分を、当該組成物に添加することができる。
【0041】
本発明による組成物には、治療される他の症状に応じて追加の活性剤を配合することができる。追加の活性剤には、NSAID(例えば、アスピリン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン)、アプレミラスト、JAK阻害剤(例えば、トファシチニブ、ルキソリチニブ、オクラシット)、ロイコトリエン阻害剤(例えば、ジリュートン、ザフィルカスト、モンテルカスト)、肥満細胞安定剤(例えば、ネドクロミル、クロモリンナトリウム、ケトチフェン、ペミロラスト)、アントラリン(ジスラノール)、アザチオプリン、タクロリムス、ピメクロリムス、石炭タール、メトトレキサート、メトキサレン、サリチル酸、乳酸アンモニウム、尿素、ヒドロキシ尿素、5-フルオロウラシル、プロピルトウラシル、6-チオグアニン、スルファサラジン、マイコフェノラートモフェチル、フマル酸エステル、コルチコステロイド(例えば、アクロメタゾン、アムシノニド、ベタメタゾン、クロベタソル、クロコトロン、モメタゾン、トリアムシノロン、フルオシノロン、フルオシノニド、フルランドレノリド、ジフロラソン、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、ハルシノニド、ハロベタソル、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニカルベート、プレドニゾン)、コルチコトロピン、ビタミンD類似体(例えば、カルシポトリエン、カルシトリオール)、アシトレチン、タザロテン、シクロスポリン、レゾルシノール、タピナロフ、コルチシン、気管支拡張薬(例えば、ベータアゴニスト、抗コリン作用薬、テオフィリン)、および抗生物質(例えば、エリスロマイシン、シプロフロキサシン、メトロニダゾール)が含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
本発明による組成物には、治療される特定の真菌感染症に応じて、追加の抗真菌剤を配合することができる。追加の抗真菌剤には、ミコナゾール(ダクタリン(Daktarin)、ミカチン(Micatin)およびモニスタット(Monistat))、シクロピロックスオラミン(バトラフェン(Batrafen)、ロプロックス(Loprox)、ペンラック(Penlac)、およびスティエプロックス(Stieprox))、クロトリマゾール(カネステン(Canesten)、ハイドロゾール(Hydrozole))、ブテナフィン(ロトリミン(Lotrimin)、ウルトラ(Ultra)、メンタックス(Mentax))、テルビナフィン(ラミシル、テルビシル、ザベル)、アモロルフィン(キュラネイル、ロセリル、ロセタール、およびオデニル)、ナフチフィン(ナフチン)、トルナフテート(チナクチン)、ケトコナゾール(ニゾラール)、グリセオフルビン、イミダゾール(ビフォナゾール、クロミダゾール、エコナゾール、フェンチコナゾール、イソコナゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、チオコナゾール)、トリアゾール(フルコナゾール、イトラコナゾール、ポサコナゾール(ノキサフィル)、ボリコナゾール(Vフェンド(Vfend))、ベンズイミダゾール(チアベンダゾール)、エチルパラベン、フルシトシン、サリチル酸、硫化セレン、およびウンデシレン酸を含む薬剤が含まれるが、これらに限定されない。あるいは、追加の抗真菌剤を別個の組成物として投与することができる。
【0043】
本発明による組成物には、一般的な局所抗炎症剤を配合することができ、それには吉草酸ジフルコルトロン、フルオシノニド、フルランドレノリド、プロピオン酸ハロベタソル、アムシノニド、デソキシメタゾン、ジフロラソン、ハルシノニド、吉草酸ベタメタゾン、二酢酸ジフロラゾン、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸モメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、ピバル酸クロコルトロン、フルオシノロンアセトニド、プロピオン酸フルチカゾン、吉草酸ヒドロコルチゾン、フロ酸モメタゾン、デソニド、酪酸ヒドロコルチゾ
ン、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン、吉草酸ヒドロコルチゾン、プレドニカルベート、二プロピオン酸ベタメタゾン増強プロピオン酸クロベタソル、二プロピオン酸アルクロメタゾン、ヒドロコルチゾン(塩基、≧2%)、ヒドロコルチゾン(塩基、<2%)、カルシネウリン阻害剤、および酢酸ヒドロコルチゾンを含むがこれらに限定されない。あるいは、抗炎症剤は別個の組成物として投与することができる。
【0044】
投与および投与量
本発明による組成物は、任意の適切な投与経路によって投与することができ、それには経口、直腸、非経口(例えば、皮内、皮下、筋肉内、静脈内、髄内、動脈内、髄腔内、硬膜外)、眼、吸入、噴霧、皮膚(局所)、皮内、および粘膜(例えば、舌下、頬側、鼻腔内)が含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、当該組成物は局所的に投与される。
【0045】
適切な医薬剤形には、乳濁液、懸濁液、スプレー、油、軟膏、脂肪軟膏、クリーム、ペースト、ゲル、フォーム、経皮パッチおよび溶液(例えば、注射可能、経口)が含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
当該組成物は、好ましくは、ロフルミラスト、ロフルミラストの塩、ロフルミラストのN-オキシドまたはそれらの塩を、投与単位当たり、0.005~2%w/w、より好ましくは0.05~1%w/w、最も好ましくは0.1~0.5%w/wの量で含む。
【0047】
当該組成物は、好ましくは、0.1%~20%w/wの間、より好ましくは0.25%~8%w/wの間、最も好ましくは0.5%~2%w/wの間の量のヘキシレングリコールを含む。
【0048】
当該組成物は、好ましくは、均一な小球サイズを有する安定なエマルジョンを生成するのに十分な量の、リン酸エステル界面活性剤を当該製剤中に含有する。このリン酸エステル界面活性剤の濃度は、一般に、1.0%~25%w/wの間の任意の濃度であることができる。好ましい濃度は、さまざまな投与形態によって異なってよい。好ましい実施形態において、製剤がクリームまたは軟膏である場合、リン酸エステル界面活性剤の濃度は2.5%~20%の間であり、より好ましい濃度範囲は5%~15%の間であり、最も好ましい濃度は約10%w/wである。当該製剤がフォームの形態である場合、その濃度は、好ましくは1.0%~10%の間、より好ましくは1.0%~10%の間、最も好ましくは2%である。好ましくは、リン酸エステル界面活性剤は、リン酸ジセチルとリン酸セテス-10の自己乳化型ワックスブレンドで提供される。
【0049】
当該組成物は、好ましくは、製剤中において所望のレベルの活性成分溶解度を得るのに十分な量の溶媒を含有する。溶媒は、好ましくは10~30%(w/w)の量である。溶媒と水の比率は、好ましくは1:10~20:1である。好ましくは、この溶媒はジエチレングリコールモノエチルエーテル(DEGEE)である。
【0050】
ロフルミラストを含有する局所製剤は、所望の薬理学的効果(典型的には真菌感染症の徴候および/または症状を改善することである)を得るのに十分な量で皮膚に塗布される。塗布される製剤の量は、製剤内に含有されるロフルミラストの量、製剤内のロフルミラストの濃度、および製剤の適用が意図される頻度に応じて変化し得る。一般に、当該製剤は、毎週1回から1日数回、好ましくは1日おきから1日3回、最も好ましくは1日1回または2回の頻度で適用される。
【0051】
当該組成物は、皮膚、爪、および毛髪の真菌感染症の治療および予防のために、獣医学および人間医学にいて使用することができる。好ましくは、当該組成物は、真菌感染症ま
たは真菌マラセチア属菌種、トリコフィトン属菌種、エピダーモフィトン属菌種、またはミクロスポルム属菌種の真菌の異常増殖を治療するために使用される。マラセチア属菌種は、好ましくはマラセチア・ファーファー、マラセチア・グロボサ、マラセチア・レストリクタおよび/またはマラセチア・パキデルマティスである。より好ましくは、当該組成物は、増殖性および炎症性の真菌感染症、例えば脂漏性皮膚炎、ふけ、デュピルマブ顔面発赤、癜風(tinea versicolor)、癜風(pityriasis versicolor)、連環状白癬、ならびに足白癬(水虫)、白癬菌または爪真菌症、手白癬(tinea manus)、股部白癬(tinea cruris、頑癬)、体部白癬(tinea corporis、ふく行疹)、顔面白癬(tinea faciei)、頭部白癬(tinea capitis、鱗状頭)および異型白癬(tinea incognito)を含む皮膚糸状菌症を治療するために使用される。
【0052】
ロフルミラストを含有する局所適用用の製剤は、局所適用用の医薬製剤の製造の分野で一般的に使用されるプロセスによって調製することができる。液体のような単相製剤を製造するためには、製剤の成分を組み合わせて、有効成分の均質な溶液または懸濁液が得られるまで混合することができる。例えば、エマルジョンのような多相製剤を作製するためには、水相と油相の成分を別々に組み合わせ、均質な溶液が得られるまで混合し、次に水溶液と油溶液を組み合わせて、剪断混合などにより混合して製剤を形成することができる。1つまたは複数の薬物活性物質は、溶解(分子分散)させ、賦形剤もしくは他の活性物質と複合体形成もしくは会合させることができ、または粒子状(アモルファスもしくは結晶性)であってもよい。油相を水相に加えることもでき、または水相を油相に加えることもできる。これらの相は、例えば、50~90℃の高温で、または20~30℃の間の室温で、または室温と高温との間の温度で組み合わせて混合することができる。
【0053】
以下の例は、当業者が本発明の方法および組成物を製造および使用することを可能にするために提供されるものである。これらの例は、本発明者が彼らの発明と見なす範囲を制限することを意図するものではない。追加の利点および変更は、当業者には容易に明らかになるであろう。
本明細書は以下の発明の態様を包含する。
1] 真菌感染症の治療を必要とする対象において真菌感染症を治療する方法であって、治療有効量のロフルミラストまたはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与するステップを含み、前記真菌感染症がマラセチア属菌種によって引き起こされる、方法。
[2] 前記ロフルミラストが局所的に投与される、[1]に記載の方法。
[3] 前記マラセチア属菌種がM.ファーファー(M.furfur)、M.レストリクタ(M.restricta)、およびM.グロボサ(M.globosa)からなる群から選択される、[1]に記載の方法。
[4] 前記マラセチア属菌種がM.ファーファーである、[3]に記載の方法。
[5] 前記真菌感染症が毛髪、皮膚、または爪の真菌の異常増殖を含む、[1]に記載の方法。
[6] 前記対象が、脂漏性皮膚炎、ふけ、デュピルマブ顔面発赤、癜風(tinea
versicolor)、癜風(pityriasis versicolor)、連環状白癬(tinea circinata)、足白癬(tinea pedis)、爪白癬(tinea unguium)、手白癬(tinea manus)、股部白癬(tinea cruris)、体部白癬(tinea corporis)、顔面白癬(
tinea faciei)、頭部白癬(tinea capitis)、または異型白癬(tinea incognito)に罹患している、[1]に記載の方法。
[7] 前記対象が脂漏性皮膚炎に罹患している、[6]に記載の方法。
[8] 前記組成物が局所投与に適した担体を含む、[1]に記載の方法。
[9] 前記組成物が、エアロゾル、フォーム、スプレー、エマルジョン、ゲル、液体、軟膏、ペースト、シャンプー、懸濁液、およびシステムからなる群から選択される、[1]に記載の方法。
[10] 前記組成物がフォームである、[9]に記載の方法。
[11] 前記組成物が0.3%w/wのロフルミラストを含む、[1]に記載の方法。
[12] 前記組成物が、ロフルミラスト、白色ワセリン、パルミチン酸イソプロピル、セテアリルアルコール、リン酸ジセチル、リン酸セテス-10、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、メチルパラベン、プロピルパラベンおよび水を含む、[1]に記載の方法。
[13] 前記組成物が、
ロフルミラスト 0.3%w/w
白色ワセリン 10.0%w/w
パルミチン酸イソプロピル 5.0%w/w
セテアリルアルコール、リン酸ジセチル
およびリン酸セテス-10のブレンド 10.0%w/w
ヘキシレングリコール 2.0%w/w
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 25.0%w/w
メチルパラベン 0.2%w/w
プロピルパラベン 0.05%w/w
および
精製水 加えて100になる適量(47.45%)
からなる、[1]に記載の方法。
[14] 追加の抗真菌剤および/または抗炎症剤を投与するステップをさらに含む、[1]に記載の方法。
[15] 前記追加の抗真菌剤が、ミコナゾール、シクロピロキソラミン、クロトリマゾール、ブテナフィン、テルビナフィン、アモロルフィン、ナフチフィン、トルナフテート、ケトコナゾール、エフィナコナゾール、グリセオフルビン、イミダゾール、トリアゾール、ボリコナゾール、ベンズイミダゾール、エチルパラベン、フルシトシン、サリチル酸、硫化セレン、およびウンデシレン酸を含む各薬物からなる群から選択される、[14]に記載の方法。
[16] 前記追加の抗炎症剤がコルチコステロイドまたはカルシニューリン阻害剤である、[14]に記載の方法。
[17] マラセチア感染、マラセチア感染の治療および/またはマラセチア過敏症による、顔面発赤または炎症を軽減するための方法であって、そのような治療を必要とする患者に有効量のロフルミラストを局所投与するステップを含む方法。
[18] 前記マラセチア過敏症がデュピルマブでの治療による、[17]に記載の方法。
[19] 前記ロフルミラストが、エタノール、イソプロピルアルコールまたは変性アルコールを含有しない組成物で投与される、[17]に記載の方法。
[20] 前記組成物が、ロフルミラスト、白色ワセリン、パルミチン酸イソプロピル、セテアリルアルコール、リン酸ジセチル、リン酸セテス-10、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、メチルパラベン、プロピルパラベンおよび水を含む、[19]に記載の方法。
[21] 前記マラセチア過敏症が、M.ファーファー、M.リストリクタ、および/またはM.グロボサによって引き起こされる、[17]に記載の方法。
[22] 抗炎症剤を投与するステップをさらに含む、[17]に記載の方法。
[23] 真菌感染症、真菌の異常増殖および/またはマラセチア属菌種に対する過敏症の治療を、必要とする対象において行う方法であって、治療有効量のロフルミラストまたはその薬学的に許容される塩を前記対象に局所投与するステップを含み、前記真菌感染症または前記異常増殖がマラセチア属菌種によって引き起こされる、方法。
[24] 中等度から重度のアトピー性皮膚炎の治療により引き起こされる顔面発赤および炎症を軽減するための方法であって、そのような治療を必要とする対象に、治療有効量のロフルミラストまたはその薬学的に許容される塩を局所投与するステップを含み、前記顔面発赤および炎症がマラセチア属菌種の感染症によって引き起こされる、方法。
[25] 前記マラセチア属菌種の感染症がデュピルマブを用いて治療されたか、または現在治療中である、[24]に記載の方法。
【0054】
例1
0.3%w/wの濃度のロフルミラストおよびビヒクル(0.2%MP、0.05%PP)を含むARQ154フォームのサンプルを使用して、本発明の製剤を作製した。以下、製剤1と称する。製剤1を、6.5×10CFU/gのM.ファーファー菌に投与した。下の表に示すように、製剤1を局所投与してから24時間後、残留しているM.ファーファー菌の量は5.3×10CFU/gであり、対数減少は2.1であった。このデータは、局所投与されたロフルミラスト製剤(製剤1)が、M.ファーファー菌の量を低減することに成功したことを示している。
【0055】
【表1】
【0056】
例2
ビヒクル(0.2%MP、0.05%PP)(ロフルミラストなし)のみを含むARQ
154フォームのサンプルを使用して、比較製剤を作製した。以下、比較製剤1と称す
る。比較製剤1を、6.5×10CFU/gのM.ファーファー菌に局所投与した。下の表に示すように、比較製剤1を局所投与してから24時間後に、残留しているM.ファーファー菌の量は5.6×10CFU/gであり、対数減少は1.1であった。このデータは、局所投与された比較製剤1が、ロフルミラスト製剤(製剤1)ほどには、M.ファーファー菌の量を減らすことに成功しなかったことを示している。
【0057】
【表2】
【0058】
例3
ビヒクル(防腐剤およびロフルミラストを含まない)のみを含むARQ 154フォームのサンプルを使用して、比較製剤を作製した。以下、比較製剤2と称する。比較製剤2を、6.5×10CFU/gのM.ファーファー菌に局所投与した。下の表に示すように、比較製剤2を局所投与してから24時間後に、残留しているM.ファーファー菌の量は3.2×10CFU/gであり、対数減少は1.3であった。このデータは、局所投与された比較製剤2が、ロフルミラスト製剤(製剤1)ほどにはM.ファーファー菌の量を減らすことに成功しなかったことを示している。
【0059】
【表3】
【0060】
したがって、例1~3は、局所投与されたロフルミラストが迅速かつ効果的な抗真菌剤であり、従来の局所抗真菌製剤の実行可能な代替物を提示することを示している。
例4
以下の処方に従って、ロフルミラストクリームを調製した。
【0061】
製剤A
ロフルミラスト 0.3%w/w
白色ワセリン 10.0%w/w
パルミチン酸イソプロピル 5.0%w/w
クロダフォス(Crodafos)CES 10.0%w/w
(セテアリルアルコール、リン酸ジセチル、リン酸セテス-10のブレンド)
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 25%w/w
(トランスキュートール(Transcutol)P)
メチルパラベン 0.2%w/w
プロピルパラベン 0.05%w/w
精製水 適量加えて100にする(49.45%)
製剤B
ロフルミラスト 0.3%w/w
白色ワセリン 10.0%w/w
パルミチン酸イソプロピル 5.0%w/w
クロダフォスCES 10.0%w/w
(セテアリルアルコール、リン酸ジセチル、リン酸セテス-10のブレンド)
ヘキシレングリコール 2.0%w/w
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 25.0%w/w
(トランスキュートールP)
メチルパラベン 0.2%w/w
プロピルパラベン 0.05%w/w
精製水 適量加えて100にする(47.45%)
例5
ロフルミラストに対するマラセチア種のインビトロ感受性
ロフルミラストに対するマラセチア種のインビトロ感受性が、すべての試験における内部対照分離株として3つのカンジダ種を利用して決定された。これらの3つの分離株は、C.アルビカンス(アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)90028)、C.クルセイ(ATCC6258)、およびC.パラプシロシス(parapsilosis:ATCC22019)であった。ロフルミラストの試験に加えて、すべての感受性アッセイは、陽性および陰性対照化合物としてケトコナゾールおよびヒドロコルチゾンをそれぞれ使用して実施された。すべてのアッセイは、32℃に設定された加湿インキュベーター内に合計7日間置かれた。各アッセイは、12時間のインキュベーションの後、およびインキュベーション後24時間ごとに合計7日間評価された。アッセイは、無処置対照における各病原体の視覚的成長、および最小発育阻止濃度(MIC)値の決定について評価された。0日目のベースラインからの真菌負荷の3log10CFU/mLの減少を提供する濃度が、最小殺真菌濃度(MFC)として定義され、7日目にマイクロプレートで見つかった真菌負荷を定量化することによって決定された。
【0062】
ロハスの方法(Rojas FDら「マラセチア・ファーファー、マラセチア・シンポディアリス(sympodialis)、およびマラセチア・グロボース(globose)のアゾール薬およびアムホテリシンBに対する抗真菌薬感受性を、ブロス微量希釈法を使用して評価した」、2014. Medical Mycology. 52:641-646)を使用した。ここでの液体ブロス培地は、1.8%グルコース、1%ペプトン、0.5%オックスバイル、0.5%モルト抽出物、1%グリセロール、0.5%Tween40、0.05%Tween80を添加したRPMI1640であった。丸底96ウェルマイクロプレートを使用した。接種物は滅菌生理食塩水で調製され、補充されたRPMIで0.5×10~2.5×10CFU/mLの最終目標濃度に希釈された。ケトコナゾール陽性対照およびヒドロコルチゾン陰性対照のデータを表Aに示す。改変液体ブロス培地が内部対照分離株のケトコナゾール感受性を有意に変化させなかったことを確認するために、臨床検査標準協会(CLSI)によって公表された期待値を、表Aの値と比較することができる。CLSIの期待値は、内部対照分離株C.クルセイ(ATCC6258)で0.12~1(24時間)および0.25~1(48時間)であった。表Aに見られるように、ケトコナゾールは、C.クルセイ(ATCC6258)分離株に対して、CLSIガイドラインに基づいて予想されるよりも僅かに効果が低かった。内部対照分離株C.パラプシロシス(ATCC22019)の場合、ケトコナゾールの予想CLSI値0.03~0.25(24時間)および0.06~0.5(48時間)は、2日値(表A)0.5と一致した。陰性対照のヒドロコルチゾンは抗真菌活性を示さなかった。
【0063】
インビトロ微量希釈感受性アッセイ
表A ケトコナゾール陽性対照およびヒドロコルチゾン陰性対照を試験するためのロハスの方法論を使用した、インビトロ微量希釈感受性アッセイの結果
【0064】
【表4】
【0065】
表Bに示すように、ロフルミラストは、ヒドロコルチゾン陰性対照と比較した場合、マラセチア種に対する抗真菌活性を提供する。ロフルミラストのMIC値は、2日目で32~128mg/Lの間の範囲であった。ロフルミラストは、ロハスの方法を使用した場合に、試験されたカンジダ種に対して抗真菌活性を示さなかった。
【0066】
表B ロフルミラストを試験するための、ロハスの方法論を使用したインビトロ微量希釈感受性アッセイの結果
【0067】
【表5】
【0068】
例6
マラセチアのレベル決定
脂漏性皮膚炎は、紅斑性で、鱗状のプラークを特徴とし、しばしば黄色がかった、油性の、湿った、および/または脂っこい外観を伴う一般的な慢性炎症性皮膚疾患であり、皮脂腺が豊富な領域を冒す。頻繁に関与する部位には、頭皮(耳介後部を含む)、眉毛、耳、ほうれい線、まぶた、体幹、および間質領域が含まれる。
【0069】
局所ロフルミラストを、脂漏性皮膚炎を罹患している10人の被験者に対して、0.3%フォーム製剤の形態で1日1回2週間投与した。サンプルは、4つの皮膚スワブを使用して、各参加者の2つの採取部位から取得した。2つの時点において、2つの皮膚スワブは治療領域から採取され、2つは未治療の領域から採取された。最初の時点はベースラインを確立するための治療の1日目であり、2番目の時点は15日後であった。サンプルは、皮膚の2cm×2cmまたは3cm×3cmの表面積を2~4分間スワブ(ZymoR1109のDNA/RNA採取チューブw/スワブ)し、採取部位ごとに、2つのスワブ(2つのスワブを一緒に保持)をまた回転させながら採取した。未治療部位については、肩/三角筋後領域からサンプルを採取した。治療領域については、脂漏性皮膚炎(SD)があった場合、顔の翼状のしわ部分からサンプルを採取した。この領域にSDが存在しない場合は、SD疾患プロセスを最も代表する体内領域からサンプルを採取した。サンプルは、Microbacラボラトリーズに出荷されるまでは-80℃で現場に保管され、ドライアイスと共に出荷された。サンプルは、処理するまで-80℃でMicrobacラボラトリーズに保管された。
【0070】
qPCRに適したマラセチア・ファーファー、マラセチア・グロボサ、マラセチア・レストリクタおよびマラセチア属菌種のプライマー/プローブが、2017年に、現代微生物学(Current Microbiology)74巻671~677頁に掲載された査読記事「6個のマラセチア属種のリアルタイムPCR同定」において特定された。対照は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から調達したマラセチア・ファーファー、マラセチア・グロボサ、マラセチア・レストリクタの細胞と、インテグレーテッドDNAテクノロジーズ(IDT)から調達した合成DNAを介して確立された。
【0071】
予備的な試験および検証が、次の方法で行われた。
a.各既知濃度の標的を使用することによる応答曲線の作成。
b.この応答曲線は、アッセイの検出限界(LOD)および定量限界(LOQ)を決定するためにも使用された。
【0072】
qPCR分析は、社内の標準的操作手順で微生物を使用して実行された。DNA抽出は、Qiagen社のDNEasyキット(変更あり)を使用して実行され、その後、被験者の各スワブから抽出されたDNAについて、各ターゲットの単一分析としてqPCRが実行された。最初の分析では、遺伝子コピー(gc)数とサイクル閾値(Ct)の両方が分析された。結果は、未治療のベースラインと15日目のサンプル同士がほぼ同等であったのに対し、治療されたベースラインと治療された15日目のサンプル間では1桁の減少を示した。治療された部位について統計的有意性が見出された。マラセチア・ファーファー、マラセチア・グロボサ、マラセチア・レストリクタ、および全体的なマラセチア属菌種に適したqPCRプローブを使用した場合に、10人の被験者のうち7人が、時間とともに、治療領域でのマラセチア遺伝子数(マラセチア・ファーファー、マラセチア・グロボサ、および/またはマラセチア・レストリクタ)の大幅な減少を経験した。9人の被験者は、未治療領域においてマラセチア遺伝子数の変化を示さなかったが、1人の参加した被験者は減少を示した。
図1