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  • -レーザ加工方法及びレーザ加工装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162413
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】レーザ加工方法及びレーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20241114BHJP
【FI】
B23K26/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077900
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康裕
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 啓介
(72)【発明者】
【氏名】脇田 直治
(72)【発明者】
【氏名】二木 恒哉
(72)【発明者】
【氏名】永田 英憲
(72)【発明者】
【氏名】飯田 稔樹
(72)【発明者】
【氏名】今西 秀聡
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AA01
4E168CB07
(57)【要約】
【課題】描画表現の制限を抑制することができるレーザ加工方法及びレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】レーザ加工装置10は、レーザ装置11と、画像処理部21と、照射制御部23とを備える。レーザ装置11は、加工対象物の表面にレーザ光を照射する。画像処理部21は、加工対象物の表面に対する描画用の画像を複数の階調に分割して、複数の階調に応じた複数のレイヤーを作成する。照射制御部23は、複数のレイヤーの各々でレーザ光を単一方向に走査させつつ直線状に照射することで加工対象物の表面にレイヤーを描画する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物の表面にレーザ光を照射することによって画像を描画する電子機器が実行するレーザ加工方法であって、
前記電子機器が、
前記画像を複数の階調に分割する分割工程と、
前記複数の階調に応じた複数のレイヤーを作成する作成工程と、
前記複数のレイヤーの各々で前記レーザ光を単一方向に沿って走査させつつ直線状に照射する加工工程と
を含むレーザ加工方法。
【請求項2】
前記複数の階調のうちのいずれか1つは前記加工対象物の表面の色であり、
前記作成工程によって作成される前記複数のレイヤーは、前記複数の階調のうち前記加工対象物の表面の色である前記階調以外に対応するレイヤーである
請求項1に記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
前記加工工程での前記レーザ光の走査方向である前記単一方向は前記複数のレイヤーで互いに異なる
請求項1又は請求項2に記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
前記走査方向は前記複数のレイヤー毎に順次に所定角度ずつ回転する
請求項3に記載のレーザ加工方法。
【請求項5】
前記所定角度は、180度を前記階調の個数で除算して得られる角度である
請求項4に記載のレーザ加工方法。
【請求項6】
前記電子機器が、
前記画像での画素値の度数分布を示すヒストグラムを取得する取得工程と、
前記ヒストグラムからピークを抽出する抽出工程と
を含み、
前記分割工程での前記複数の階調は前記ピークを境界として設定される
請求項1又は請求項2に記載のレーザ加工方法。
【請求項7】
前記抽出工程での前記ピークは前記ヒストグラムで設定される下限閾値よりも大きい
請求項6に記載のレーザ加工方法。
【請求項8】
加工対象物の表面にレーザ光を照射するレーザ装置と、
画像を複数の階調に分割して、前記複数の階調に応じた複数のレイヤーを作成する画像処理部と、
前記複数のレイヤーの各々で前記レーザ光を単一方向に走査させつつ直線状に照射することで前記加工対象物の表面に前記レイヤーを描画する照射制御部と
を備える
レーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工方法及びレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光の照射によって基板表面上に回路パターンを描画する際に、パターン投影領域の全面に複数回オーバーラップさせて露光することによって、オーバーラップ回数分に相当する光量の階調を設定する描画装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-354415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レーザ光による描画装置では、例えばレーザの出力、速度、周波数及び集光径等の条件によって1ドット毎の濃淡を設定することで点描による描画を行うことができる。しかしながら、点描の場合、隣り合うドット間での描画を行うことができずに、例えば奥行き感等の表現が制限されてしまうことが課題である。
例えば上記した従来技術の描画装置では、パターンのオーバーラップによって濃淡を設定することでドットサイズは均一化されるが、隣り合うドット間は描画されずに表現が制限されてしまうという問題が生じる。
【0005】
本発明は、描画表現の制限を抑制することができるレーザ加工方法及びレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1):本発明の一態様に係るレーザ加工方法は、加工対象物の表面にレーザ光を照射することによって画像を描画する電子機器(例えば、実施形態での処理装置13)が実行するレーザ加工方法であって、前記電子機器が、前記画像を複数の階調(例えば、実施形態での各階調T1,T2,T3,T4,T5,T6,T7,T8)に分割する分割工程(例えば、実施形態でのステップS04)と、前記複数の階調に応じた複数のレイヤー(例えば、実施形態での各レイヤーL1,L2,L3,L4,L5,L6,L7)を作成する作成工程(例えば、実施形態でのステップS05)と、前記複数のレイヤーの各々で前記レーザ光を単一方向に沿って走査させつつ直線状に照射する加工工程(例えば、実施形態でのステップS13)とを含む。
【0007】
(2):上記(1)に記載のレーザ加工方法では、前記複数の階調のうちのいずれか1つは前記加工対象物の表面の色であり、前記作成工程によって作成される前記複数のレイヤーは、前記複数の階調のうち前記加工対象物の表面の色である前記階調以外に対応するレイヤーであってもよい。
【0008】
(3):上記(1)又は(2)に記載のレーザ加工方法では、前記加工工程での前記レーザ光の走査方向である前記単一方向は前記複数のレイヤーで互いに異なってもよい。
【0009】
(4):上記(3)に記載のレーザ加工方法では、前記走査方向は前記複数のレイヤー毎に順次に所定角度ずつ回転してもよい。
【0010】
(5):上記(4)に記載のレーザ加工方法では、前記所定角度は、180度を前記階調の個数で除算して得られる角度であってもよい。
【0011】
(6):上記(1)又は(2)に記載のレーザ加工方法では、前記電子機器が、前記画像での画素値の度数分布を示すヒストグラムを取得する取得工程(例えば、実施形態でのステップS02)と、前記ヒストグラムからピークを抽出する抽出工程(例えば、実施形態でのステップS03)とを含み、前記分割工程での前記複数の階調は前記ピークを境界として設定されてもよい。
【0012】
(7):上記(6)に記載のレーザ加工方法では、前記抽出工程での前記ピークは前記ヒストグラムで設定される下限閾値よりも大きくてもよい。
【0013】
(8):本発明の一態様に係るレーザ加工装置(例えば、実施形態でのレーザ加工装置10)は、加工対象物の表面にレーザ光を照射するレーザ装置(例えば、実施形態でのレーザ装置11)と、画像を複数の階調(例えば、実施形態での各階調T1,T2,T3,T4,T5,T6,T7,T8)に分割して、前記複数の階調に応じた複数のレイヤー(例えば、実施形態での各レイヤーL1,L2,L3,L4,L5,L6,L7)を作成する画像処理部(例えば、実施形態での画像処理部21)と、前記複数のレイヤーの各々で前記レーザ光を単一方向に走査させつつ直線状に照射することで前記加工対象物の表面に前記レイヤーを描画する照射制御部(例えば、実施形態での照射制御部23)とを備える。
【発明の効果】
【0014】
上記(1)によれば、各レイヤーでレーザ光を単一方向に沿って走査させつつ直線状に照射することにより、例えば1ドット毎の照射で点描する場合に比べて、シームレスな描画を行うことができる。レーザ光の照射のオンとオフとを切り換えながら単一方向に沿って直線状に走査することで各レイヤーの描画を行うことができ、例えば1ドット毎の照射で点描する場合に比べて、照射制御に要するデータの増大を抑制することができる。
【0015】
上記(2)の場合、加工対象物の表面の色に対応する階調に対してレイヤーを作成しないので、例えば全ての階調に対応するレイヤーを作成する場合に比べて、適正な描画を維持しつつ照射制御に要するデータの増大を抑制することができる。
【0016】
上記(3)の場合、複数のレイヤーの各々の走査方向が互いに異なるので、例えば異なるレイヤー同士で同一の走査方向が設定される場合に比べて、直線状の描画の境界が明確になることを抑制し、シームレスな描画を行うことができる。
【0017】
上記(4)の場合、走査方向は複数のレイヤー毎に順次に所定角度ずつ回転するので、より一層、シームレスな描画を行うことができるとともに、照射制御が複雑になることを抑制することができる。
【0018】
上記(5)の場合、所定角度は、180度を階調の個数で除算して得られる角度であることにより、レイヤーの個数に応じて走査方向を回転させる場合での描画の滑らかさを最大限に向上させることができる。
【0019】
上記(6)の場合、ヒストグラムのピークによって階調を分割するので、鮮明な描画を行うことができる。
【0020】
上記(7)の場合、ヒストグラムで下限閾値が設定されることにより、鮮明な描画を維持しつつ照射制御に要するデータの増大を抑制することができる。
【0021】
上記(8)によれば、各レイヤーでレーザ光を単一方向に沿って走査させつつ直線状に照射することにより、例えば1ドット毎の照射で点描する場合に比べて、シームレスな描画を行うことができる。レーザ光の照射のオンとオフとを切り換えながら単一方向に沿って直線状に走査することで各レイヤーの描画を行うことができ、例えば1ドット毎の照射で点描する場合に比べて、照射制御に要するデータの増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態でのレーザ加工装置の機能構成を示すブロック図。
図2】本発明の実施形態のレーザ加工装置での画像処理部の動作を示すフローチャート。
図3】本発明の実施形態のレーザ加工装置での照射制御部の動作を示すフローチャート。
図4】本発明の実施形態のレーザ加工装置により取得されるグレースケール画像での画素値の度数分布を示すヒストグラムと、抽出されるピーク及び設定される階調との一例を示す図。
図5】本発明の実施形態のレーザ加工装置により取得される複数のレイヤーの描画の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係るレーザ加工装置について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態でのレーザ加工装置10の機能構成を示すブロック図である。
図1に示すように、レーザ加工装置10は、例えば、レーザ装置11と、処理装置13と、記憶部15とを備える。
レーザ装置11は、例えば、レーザ発振器、光学系及び駆動ステージ等を備える。
レーザ発振器は、各種のレーザ光を発振する。光学系は、レーザ発振器から発生したレーザ光を伝送及び集光して加工対象物へ照射する。駆動ステージは、加工対象物を固定するとともに、例えば、3次元の直交座標系での各軸方向に沿った並進と、所定の回転軸及び傾斜軸の各軸周りの回転とによって、加工対象物の位置及び姿勢を設定する。
【0024】
処理装置13は、例えばCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサによって所定のプログラムが実行されることにより機能するソフトウェア機能部である。ソフトウェア機能部は、CPUなどのプロセッサ、プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)及びタイマーなどの電子回路を備えるECUである。なお、処理装置13の少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)などの集積回路であってもよい。
【0025】
処理装置13は、例えば、画像処理部21と、照射制御部23とを備える。
画像処理部21は、加工対象物の表面に描画する画像を処理する。例えば、画像処理部21は、記憶部15に記憶されている画像に基づいてグレースケール画像を取得する。画像処理部21は、例えば、予め作成されているグレースケール画像の記憶部15からの読み込み又は記憶部15のカラー画像に対する階調化等の減色処理によって、グレースケール画像を取得する。画像処理部21は、グレースケール画像での画素値(色の濃淡)の度数分布を示すヒストグラムを取得する。画像処理部21は、ヒストグラムでの所定の下限閾値よりも大きい範囲から抽出するピークに基づいてグレースケール画像を複数の階調に分割する。画像処理部21は、複数の階調に応じた複数のレイヤーを作成することによって、グレースケール画像を複数のレイヤーに基づいて構成する。画像処理部21は、例えば、複数の階調のうちのいずれか1つを加工対象物の表面の色として設定する。画像処理部21は、加工対象物の表面の色である階調に対応するレイヤーは作成せずに、加工対象物の表面の色である階調以外の階調に対応するレイヤーのみを作成する。
【0026】
照射制御部23は、レーザ装置11の動作を制御する。例えば、照射制御部23は、画像処理部21によって作成された複数のレイヤーの各々に応じて加工対象物の表面にレーザ光を照射する。照射制御部23は、複数のレイヤーの各々でレーザ光を互いに異なる単一方向に沿って走査させつつ直線状に照射する。照射制御部23は、単一方向に沿ったレーザ光の走査時に照射のオンとオフとを切り換えることによって各レイヤーに応じた描画を行う。照射制御部23は、例えば、レーザ光の走査方向を複数のレイヤーの各々毎に順次に所定角度θずつ回転させる。所定角度θは、例えば、180度を階調の個数で除算して得られる角度である。
【0027】
記憶部15は、加工対象物の表面に描画する画像を記憶する。
【0028】
以下に、実施形態でのレーザ加工装置10の動作例、つまりレーザ加工方法について説明する。
図2は、実施形態のレーザ加工装置10での画像処理部21の動作を示すフローチャートである。図3は、実施形態のレーザ加工装置10での照射制御部23の動作を示すフローチャートである。図4は、実施形態のレーザ加工装置10により取得されるグレースケール画像での画素値の度数分布を示すヒストグラムと、抽出されるピーク及び設定される階調との一例を示す図である。図5は、実施形態のレーザ加工装置10により取得される複数のレイヤーの描画の例を示す図である。
【0029】
図2に示すように、先ず、画像処理部21は、記憶部15に記憶されている画像に基づいて、加工対象物の表面に対する描画用のグレースケール画像を取得する(ステップS01)。
次に、画像処理部21は、グレースケール画像での画素値(色の濃淡)の度数分布を示すヒストグラムを取得する(ステップS02)。図4に示すように、グレースケール画像のヒストグラムHは、最も色が淡い白色から最も色が濃い黒色までの間での各明るさに応じたドット数の分布を示す。
【0030】
次に、画像処理部21は、ヒストグラムHでのドット数に対する所定の下限閾値TLよりも大きい範囲から、既定の階調数に応じた数のピークを抽出する(図2に示すステップS03)。予め設定されている階調数は、例えば8ビットに対応する256階調、4ビットに対応する16階調及び2ビットに対応する8階調等である。既定の階調数に応じたピーク数は、例えば階調数から1を減算して得られる数(=階調数-1)である。
【0031】
次に、画像処理部21は、ヒストグラムから抽出したピークに基づいて、グレースケール画像の画素値(色の濃淡)を複数の階調に分割する(図2に示すステップS04)。画像処理部21は、例えば、各ピークのピーク値(極大値)の位置を境界として複数の階調を設定する。図4に示すように、例えば2ビットの8階調に対応して白色から黒色に向かって順次に第1ピーク値P1から第7ピーク値P7までの7個のピーク値(各ピーク値P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7)が抽出されている場合、白色から黒色に向かって順次に第1階調T1から第8階調T8までの8個の階調(各階調T1,T2,T3,T4,T5,T6,T7,T8)が設定される。
【0032】
次に、画像処理部21は、複数の階調に応じた複数のレイヤーを作成することによって、グレースケール画像を複数のレイヤーによって構成する(図2に示すステップS05)。そして、画像処理部21は処理をエンドに進める。画像処理部21は、例えば、8個の階調のうち最も色が濃い黒色を含む第8階調T8を加工対象物の表面の色として設定する。画像処理部21は、加工対象物の表面の色である第8階調T8に対応するレイヤーは作成せずに、第8階調T8以外の第1階調T1から第7階調T7までの7個の階調(各階調T1,T2,T3,T4,T5,T6,T7)に対応するレイヤーのみを作成する。画像処理部21は、7個の階調に対応する7個のレイヤー(各レイヤーL1,L2,L3,L4,L5,L6,L7)に基づいて新たにグレースケール画像を再構成する。
【0033】
図3に示すように、先ず、照射制御部23は、画像処理部21によって作成された複数のレイヤーの各々を順次に取得する(ステップS11)。
次に、照射制御部23は、各レイヤーに対してレーザ光の走査方向の角度位相を設定する(ステップS12)。角度位相は、複数のレイヤーの各々毎に順次に所定角度ずつ加算されることによって設定される。所定角度は、例えば、180度をレイヤーの個数で除算して得られる角度である。
【0034】
次に、照射制御部23は、レーザ光を各レイヤーに設定した角度位相に応じた走査方向に沿って直線状に走査させつつ加工対象物の表面に照射する(ステップS13)。照射制御部23は、各レイヤーの単一の走査方向に沿ったレーザ光の走査時に照射のオンとオフとを切り換えることによって各レイヤーに応じた描画を行う。
【0035】
図5に示すように、例えば、先ず、8個の階調のうち最も色が淡い白色を含む第1階調T1に対応する第1レイヤーL1に対して、照射制御部23は、角度位相を「ゼロ」とすることによって走査方向(第1走査方向D1)を基準方向に設定する。基準方向は、例えば、グレースケール画像の横方向等である。照射制御部23は、第1レイヤーL1に応じて照射のオンとオフとを切り換えつつ第1走査方向D1に沿った直線状の走査を行うとともに、第1レイヤーL1の境界位置等で第1走査方向D1の直交方向に沿って順次にレーザ光を移動させることで、第1レイヤーL1の全域に亘ってレーザ光を照射する。
【0036】
次に、第1階調T1に隣接する第2階調T2に対応する第2レイヤーL2に対して、照射制御部23は、角度位相を所定角度θだけ増加させることによって走査方向(第2走査方向D2)を第1走査方向D1から所定角度θだけ回転した方向に設定する。照射制御部23は、第2レイヤーL2に応じて照射のオンとオフとを切り換えつつ第2走査方向D2に沿った直線状の走査を行うとともに、第2レイヤーL2の境界位置等で第2走査方向D2の直交方向に沿って順次にレーザ光を移動させることで、第2レイヤーL2の全域に亘ってレーザ光を照射する。
以下、他のレイヤーに対して、順次に角度位相を所定角度θだけ増加させつつ、各レイヤーに応じたレーザ光の照射を行う。
【0037】
次に、照射制御部23は、全てのレイヤーの描画が完了したか否かを判定する(ステップS14)。
この判定結果が「NO」の場合、照射制御部23は処理をステップS11に戻す。
一方、この判定結果が「YES」の場合、照射制御部23は処理をエンドに進める。
【0038】
上述したように、実施形態のレーザ加工装置10及びレーザ加工方法によれば、各レイヤーでレーザ光を単一方向に沿って走査させつつ直線状に照射することにより、例えば1ドット毎の照射で点描する場合に比べて、シームレスな描画を行うことができる。レーザ光の照射のオンとオフとを切り換えながら単一方向に沿って直線状に走査することで各レイヤーの描画を行うことができ、例えば1ドット毎の照射で点描する場合に比べて、照射制御に要するデータの増大を抑制することができる。
複数の階調に応じた複数のレイヤーの各々で直線状の照射を行うことにより、例えば奥行き感のある濃淡表現を実現することができる。
【0039】
加工対象物の表面の色に対応する階調に対してレイヤーを作成しないので、例えば全ての階調に対応するレイヤーを作成する場合に比べて、適正な描画を維持しつつ照射制御に要するデータの増大を抑制することができる。
複数のレイヤーの各々の走査方向が互いに異なるので、例えば異なるレイヤー同士で同一の走査方向が設定される場合に比べて、直線状の描画の境界が明確になることを抑制し、シームレスな描画を行うことができる。
走査方向は複数のレイヤー毎に順次に所定角度θずつ回転するので、より一層、シームレスな描画を行うことができるとともに、照射制御が複雑になることを抑制することができる。
所定角度θは、180度を階調の個数で除算して得られる角度であることにより、レイヤーの個数に応じて走査方向を回転させる場合での描画の滑らかさを最大限に向上させることができる。
【0040】
ヒストグラムのピークによって階調を分割するので、鮮明な描画を行うことができる。
ヒストグラムHで下限閾値TLが設定されることにより、鮮明な描画を維持しつつ照射制御に要するデータの増大を抑制することができる。
【0041】
(変形例)
以下、実施形態の変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同一部分については、同一符号を付して説明を省略又は簡略化する。
上述した実施形態では、ヒストグラムで抽出される各ピークのピーク値(極大値)の位置を境界として複数の階調を設定するとしたが、これに限定されない。例えば、隣り合うピークの境界等の各ピークに関するピーク値以外のパラメータに基づいて複数の階調を設定してもよい。
上述した実施形態では、白から黒に向かう色の濃淡等の画素値に応じて順次に設定される複数のレイヤーの順序で走査方向の角度位相が所定角度θずつ変化するとしたが、これに限定されない。例えば、ヒストグラムで抽出されるピークのピーク値又はピーク面積の大小等の他のパラメータに応じた複数のレイヤーの順序で走査方向の角度位相が所定角度θずつ変更されてもよい。
上述した実施形態では、レーザ光の走査方向を複数のレイヤーの各々毎に順次に所定角度θずつ回転させるとしたが、これに限定されない。例えば、ヒストグラムで抽出されるピークのピーク値又はピーク面積の大小等の各種パラメータに応じた重み付けで各レイヤー毎に設定される角度によって走査方向を回転させてもよい。
【0042】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0043】
10…レーザ加工装置、11…レーザ装置、13…処理装置(電子機器)、15…記憶部、21…画像処理部、23…照射制御部、D1…第1走査方向(単一方向、走査方向)、D2…第2走査方向(単一方向、走査方向)、L1…第1レイヤー(レイヤー)、L2…第2レイヤー(レイヤー)、L3~L7…レイヤー、T1~L8…階調、TL…下限閾値、θ…所定角度。
図1
図2
図3
図4
図5