(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162415
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】打ち抜き刃のニック形成装置
(51)【国際特許分類】
B25D 1/00 20060101AFI20241114BHJP
B26F 1/00 20060101ALI20241114BHJP
B26F 1/18 20060101ALI20241114BHJP
B26F 1/44 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B25D1/00
B26F1/00 B
B26F1/18
B26F1/44 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077902
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】592190383
【氏名又は名称】株式会社黒岩
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【弁理士】
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【弁理士】
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【弁理士】
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】藤津 寛之
【テーマコード(参考)】
2D058
3C060
【Fターム(参考)】
2D058AA04
2D058BA11
3C060AA01
3C060AA04
3C060BA03
3C060BA08
3C060BB18
(57)【要約】
【課題】均一なサイズのニックを容易に形成することができる打ち抜き刃のニック形成装置を提供する。
【解決手段】
ニック形成装置1は、打ち抜き型に設けられる打ち抜き刃の刃先を変形可能な刃部を有し、前記刃部と共に前方に移動可能な可動部4と、可動部4を打撃して前方に移動させる打撃部6とを備えており、前記刃部が前記打ち抜き刃に当接された状態において、打撃部6が一定の力で可動部4を打撃し、それに伴って可動部4と共に前記刃部が前記打ち抜き刃側に移動して前記打ち抜き刃を変形させることにより前記打ち抜き刃にニックを形成する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打ち抜き型に設けられる打ち抜き刃にニックを形成するニック形成装置において、
前記打ち抜き刃の刃先を変形可能な刃部を有し、前記刃部と共に一の方向に移動可能な可動部と、
前記可動部を打撃して前記一の方向に移動させる打撃部と
を備え、
前記打ち抜き刃の刃先に対して一定の距離で前記刃部を保持した状態において、前記打撃部が一定の力で前記可動部を打撃し、それに伴って前記可動部と共に前記刃部が前記打ち抜き刃側に移動して前記打ち抜き刃の刃先の一部を変形させることにより前記打ち抜き刃にニックを形成する、
打ち抜き刃のニック形成装置。
【請求項2】
前記打撃部による打撃を制御し、手の指によって操作可能な操作レバー
をさらに備え、
前記打ち抜き刃の刃先に対して一定の距離で前記刃部を保持した状態において前記操作レバーが一定量操作されると、前記打撃部が一定の力で前記可動部を打撃する、
請求項1に記載の打ち抜き刃のニック形成装置。
【請求項3】
前記打撃部は、前記操作レバーと接続されるスプリングを有しており、前記スプリングに抗して前記操作レバーが一定量操作されると、前記スプリングの付勢力によって前記可動部を打撃する、
請求項2に記載の打ち抜き刃のニック形成装置。
【請求項4】
前記ニック形成装置はピストル型であり、
前記操作レバーは、手の指によって回動操作可能なトリガーであって、
前記打撃部は、前記操作レバーが一定量回動操作された場合に前記可動部を打撃する、
請求項2又は3に記載の打ち抜き刃のニック形成装置。
【請求項5】
前記刃部は、前記可動部の先端部に着脱自在に取り付けられる、
請求項1乃至3の何れかに記載の打ち抜き刃のニック形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打ち抜き型に用いられる打ち抜き刃にニックを形成するニック形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
打ち抜き型でシートを打ち抜く場合、打ち抜いた後の製品部分とシートの不要な部分とが容易に散けてしまうと、機械を停止させる必要が生じる等の問題が起きる。そのため、これらの製品部分と不要な部分とを一時的に繋ぎ止めておくために、打ち抜き刃にニックが形成されることがある。ニックは、打ち抜き刃の刃先の一部を刃として機能しないように変形させることにより形成される。具体的には、その刃先の一部を切削したり研削したりして欠落させることによりニックが形成される。また、当該刃先の一部を折り曲げたり潰したりしたりする場合でも、その一部が刃として機能しなくなることがあるため、ニックの形成に該当する。このニックによって、製品部分と不要な部分とは一部が繋がった状態となるため、容易に散ける事態を回避することができる。
【0003】
ニックの形成は、打ち抜き型を製作するとき、またはその製作後に打ち抜きを行うときに行われる。前者の場合、グラインダー等の専用の装置を用いてニックが形成されることが多い。特許文献1には、その専用の装置の一例であるニック製作機械が開示されている。これに対し、後者の場合、グラインダー等を用いることは困難であるため、簡易な器具を用いて手動でニックが形成されることが多い。例えば、小型の刃物の刃先を打ち抜き刃に当てた上で、その刃物のグリップエンドなどをハンマーで叩くことなどによってニックの形成が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、簡易な器具を用いて手動でニックを形成する場合、作業者によってニックの幅及び深さがばらついたり、同じ作業者であっても力の入れ具合等が異なるためにその都度異なるサイズのニックが形成されたりする等の不具合を招く。その結果、製品の美観が損なわれる等の問題が生じる。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、上記課題を解決することができる打ち抜き刃のニック形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の打ち抜き刃のニック形成装置は、打ち抜き型に設けられる打ち抜き刃にニックを形成するニック形成装置において、前記打ち抜き刃の刃先を変形可能な刃部を有し、前記刃部と共に一の方向に移動可能な可動部と、前記可動部を打撃して前記一の方向に移動させる打撃部とを備え、前記打ち抜き刃の刃先に対して一定の距離で前記刃部を保持した状態において、前記打撃部が一定の力で前記可動部を打撃し、それに伴って前記可動部と共に前記刃部が前記打ち抜き刃側に移動して前記打ち抜き刃の刃先の一部を変形させることにより前記打ち抜き刃にニックを形成する。
【0008】
この態様において、前記打撃部による打撃を制御し、手の指によって操作可能な操作レバーをさらに備え、前記打ち抜き刃の刃先に対して一定の距離で前記刃部を保持した状態において前記操作レバーが一定量操作されると、前記打撃部が一定の力で前記可動部を打撃するように構成されていてもよい。
【0009】
また、前記態様において、前記打撃部は、前記操作レバーと接続されるスプリングを有しており、前記スプリングに抗して前記操作レバーが一定量操作されると、前記スプリングの付勢力によって前記可動部を打撃するように構成されていてもよい。
【0010】
また、前記態様において、前記ニック形成装置はピストル型であり、前記操作レバーは、手の指によって回動操作可能なトリガーであって、前記打撃部は、前記操作レバーが一定量回動操作された場合に前記可動部を打撃するように構成されていてもよい。
【0011】
また、前記態様において、前記刃部は、前記可動部の先端部に着脱自在に取り付けられてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る打ち抜き刃のニック形成装置によれば、均一なサイズのニックを容易に形成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態に係るニック形成装置の構成を示す側面図。
【
図2】実施の形態に係るニック形成装置の構成を示す正面図。
【
図4A】実施の形態に係るニック形成装置の構成要素をスケルトンで示す側面図。
【
図4B】実施の形態に係るニック形成装置の構成要素をスケルトンで示す側面図。
【
図5】実施の形態に係るニック形成装置の構成要素をスケルトンで示す側面図。
【
図6】実施の形態に係るニック形成装置の使用方法を説明するための図。
【
図7A】打ち抜き刃に形成されるニックを説明するための平面図。
【
図7B】打ち抜き刃に形成されるニックを説明するための側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0015】
本実施の形態に係る打ち抜き刃のニック形成装置は、打ち抜き型に設けられる打ち抜き刃にニックを手動で形成するための装置である。以下、このニック形成装置の構成及び使用方法について説明する。
【0016】
(ニック形成装置の構成)
図1及び
図2はそれぞれ、本実施の形態に係るニック形成装置の構成を示す側面図及び正面図である。また、
図3A乃至
図3Cはそれぞれ、ニック形成装置が備える可動部の構成を示す斜視図、側面図、及び平面図である。また、
図4A及び
図4Bは、ニック形成装置の構成要素をスケルトンで示す側面図であって、トリガーが引かれる前及び引かれた後の状態をそれぞれ示している。さらに、
図5は、同じく構成要素を示す側面図であって、トリガーが引かれる前後の状態を重ね合わせて示している。
【0017】
なお、
図2では、引張コイルばね等の構成部材の図示が便宜上省略されている。また、
図4A及び
図4B並びに
図5では、ねじ部材及び刃部等の構成部材の図示が便宜上省略されている。また、
図5では、トリガーが引かれる前の状態が破線で、引かれた後の状態が実線で、それぞれ示されている。また、各図面において、引張コイルばねのばね部分は、簡略化のために長方形状で示している。
【0018】
以下で説明するニック形成装置の各構成部材はすべて金属製である。但し、その構成部材の一部又は全部がそれ以外の材質、例えば樹脂製などであってもよい。
【0019】
図1に示すとおり、ニック形成装置1は、ピストル型の装置であって、筐体2と、グリップ部21と、操作レバーであるトリガー3と、前後方向に可動する可動部4と、可動部4に取り付けられる刃部5とを備えている。
【0020】
筐体2は、同一形状の2つの板状部材2a,2bにより構成される。板状部材2a,2bは、複数の組ねじ22で固定される。組ねじ22は、雄ねじ22a及び雌ねじ22bで構成され、これらの雄ねじ22a及び雌ねじ22bによって板状部材2a,2bを外側から挟み込むように締結される。板状部材2a,2bは左右方向に一定の距離隔てられており、これらの板状部材2a,2b間の空間に、トリガー3及び可動部4等の構成部材の少なくとも一部が収容されている。
【0021】
上記の組ねじ22のうち、筐体2の前後方向中央から少し後方側に取り付けられる組ねじ221の軸部25(
図4A及び
図4Bを参照)は、後述するように、トリガー3の回動軸として機能する。
【0022】
板状部材2a,2bの中間部分には、上記の組ねじ22よりも小径の組ねじ23が取り付けられる。後述するように、組ねじ23の軸部26(
図4A及び
図4Bを参照)には、引張コイルばね8のフックが係止される。
【0023】
グリップ部21は、筐体2の後方部分に相当し、作業者の手で把持可能な程度に下方に突出している。このように、本実施の形態ではグリップ部21が筐体2と一体的に形成されているが、グリップ部21及び筐体2は別体であってもよい。
【0024】
トリガー3は、筐体2と同様、2つの板状部材3a,3bにより構成される。板状部材3a,3bの下端部近傍は、雄ねじ31a及び雌ねじ31bで構成される組ねじ31で固定される。また、板状部材3a,3bの上端部近傍には貫通孔が形成されており、この貫通孔に組ねじ221の軸部25が挿通される。これにより、トリガー3は、当該軸部25を回動軸として回動可能となる。
【0025】
トリガー3及びトリガー3と連結される打撃部6のより詳細な構成について
図4A及び
図4B並びに
図5を参照しながら説明すると、トリガー3の上端部近傍には板状部材3a,3bを連結する連結軸33が、その上下方向中央から少し上方側には同じく連結する連結軸34が、それぞれ設けられている。トリガー3は、これらの連結軸33,34を介して打撃部6と連結される。
【0026】
打撃部6は、トリガー3を構成する板状部材3a,3b間に配設されており、前後方向に延びる細長い板状をなし、上下方向に延びるトリガー3と交差して設けられる。トリガー3と打撃部6との間には引張コイルばね(スプリング)7が介装されている。より詳しく説明すると、打撃部6の後端部には、上方に延びる爪部61が形成されており、引張コイルばね7の一端のフックはこの爪部61に係止される。また、引張コイルばね7の他端のフックは、上述したトリガー3の連結軸33に係止される。
【0027】
打撃部6の前後方向中央から少し後方側には、下方に窪む長方形状の第1凹部62が設けられ、その第1凹部62の前側には、第1凹部62よりもさらに下方に窪む半円形状の第2凹部63が設けられている。
図4Aに示すように、トリガー3が引かれる前の状態においては、トリガー3の連結軸34が第2凹部63に嵌合される。また、
図4Bに示すように、トリガー3が引かれた後の状態では、その連結軸34が第2凹部63から第1凹部62へ移動する。
【0028】
トリガー3が引かれると、すなわち引張コイルばね7の復元力に抗してトリガー3が図中時計回り方向に回動操作されると、トリガー3の連結軸34が第2凹部63の内周面に沿って後方に摺動するとともに、その連結軸33が打撃部6の爪部61から離反する方向に移動する。そして、トリガー3が一定量回動操作されると、連結軸34が第2凹部63から第1凹部62へ移動し、第1凹部62の表面に沿って後方に摺動する(
図5を参照)。このとき、引張コイルばね7の復元力(付勢力)が働き、打撃部6の爪部61が前方に引っ張られる。これにより、打撃部6が前方に移動し、その前端部が可動部4の後端部を一定の力で打撃する。
【0029】
打撃部6の前方側には長円形孔64が形成されており、この長円形孔64には、筐体2の前後方向中央付近に取り付けられる組ねじ222の軸部27(
図4A及び
図4Bを参照)が挿通される。この軸部27によって、打撃部6の前方への移動量が規制される。
【0030】
次に、可動部4の構成について説明する。
図3A乃至
図3Cに示すように、可動部4は、可動部本体42と、可動部本体42の前方側に設けられた先端部41とを有している。可動部本体42及び先端部41は何れも細長い板状をなし、先端部41の方が可動部本体42よりも幅が小さくなっている。
【0031】
先端部41は、可動部本体42と一体的に形成される第1部材41a、及び第1部材41a上に設けられる第2部材41bで構成される。これらの第1部材41a及び第2部材41bは、その間に刃部5を狭持した状態で、2つのねじ43によりねじ止めされる。
【0032】
刃部5は、打ち抜き刃の刃先を変形可能な刃で構成されている。後述するように、この刃部5によって打ち抜き刃の刃先の一部を変形させることにより、ニックが形成される。
【0033】
上記のとおり、刃部5は、ねじ止めによって先端部41に着脱自在に取り付けられる。そのため、刃部5が傷んだ場合などに、容易に新たな刃部5に取り替えることができるため、長期にわたってニック形成装置1を使用することができる。なお、本実施の形態の場合、刃部5は筐体2の外部で取り付けられるため、より一層容易に取り替えを行うことが可能である。
【0034】
可動部本体42には、2つの円形孔44及び2つの長円形孔45が、前側から交互に一列に並んで形成されている。円形孔44には、組ねじ47(
図1を参照)が取り付けられる。この組ねじ47は、筐体2の板状部材2a,2bに形成されている長円形孔24に挿通されている。また、長円形孔45には、筐体2の板状部材2a,2bを固定する組ねじ22の軸部が挿通される。当該軸部によって、可動部4の前方への移動量が規制される。
【0035】
可動部本体42の後端部には、上方に延びる爪部46が形成されており、引張コイルばね8の一端のフックはこの爪部46に係止される。他方、引張コイルばね8の他端のフックは、上述した組ねじ23の軸部26に係止される。この引張コイルばね8によって、可動部4は後方に付勢されている。
【0036】
上述したようにして可動部4の後端部が打撃部6によって打撃されると、可動部4は、引張コイルばね8の付勢力に抗して前方に移動した後、その付勢力によって後方に戻される。
【0037】
(ニック形成装置の使用方法)
次に、以上のように構成されるニック形成装置1の使用方法を説明する。ここでは、打ち抜き型の製作後、その打ち抜き型が備える打ち抜き刃にニックを形成する場合の使用方法を説明する。但し、ニック形成装置1は、打ち抜き型の製作前に打ち抜き刃にニックを形成する場合でも同様に使用することができる。
【0038】
図6は、ニック形成装置1の使用方法を説明するための図である。
図6において、打ち抜き型110の構成は断面で示されている。この図に示すとおり、打ち抜き型110は、基台111を備えている。基台111の表面は、平坦面であり、この表面にレーザ加工によって打ち抜くべき形状の溝(図示せず)が形成され、当該溝に、帯状の刃を環状に折り曲げて形成された打ち抜き刃112が嵌合される。打ち抜き刃112は、表側に刃先が位置づけられるように、刃先と反対側の端部が基台111の溝に嵌入される。
【0039】
打ち抜き刃112の外周側及び内周側には、基台111に取り付けられた弾性部材113a及び113bがそれぞれ設けられている。弾性部材113a及び113bは、ウレタン製のスポンジで構成されている。これらの弾性部材113a及び113bは、打ち抜きの際に打ち抜き刃112に加工対象のシート材が付着して離れにくくなることなどを防止する目的で用いられる。
【0040】
基台111の中央部分には、所定形状の貫通孔114が設けられている。この貫通孔114は、シート材を切断加工する際にそのシート材から打ち抜かれる製品の底部分を収容するための空間となる。
【0041】
上記のように構成された打ち抜き型110の打ち抜き刃112にニックを形成する場合、作業者は、ニック形成装置1のグリップ部21を手で把持してその指をトリガー3に掛けた上で、弾性部材113a及び113bの上から刃部5を押し込み、打ち抜き刃112の刃先に刃部5を当接させる(
図6を参照)。このとき、刃部5と打ち抜き刃112の刃先とが略直角に交差するように配置されることが望ましい。
【0042】
次に、作業者は、上記のとおり打ち抜き刃112の刃先に刃部5を当接させた状態で、トリガー3を引く。これにより、引張コイルばね7の復元力に抗してトリガー3が回動し、その回動量が所定値を超えると、上述したようにして引張コイルばね7の復元力により打撃部6が前方に移動し、打撃部6の前端部が可動部4の後端部を一定の力で打撃する。この打撃を受けた可動部4は、引張コイルばね8の付勢力に抗して前方に移動する。このとき、可動部4と共に前方に移動した刃部5によって打ち抜き刃112の刃先が変形し、ニックが形成される。
【0043】
上記のようにしてニックが形成された後、トリガー3が原位置に戻されると、ニック形成装置1の各構成部材は
図4Aに示す状態(
図5において破線で示す状態)に戻る。そのため、作業者は、上記の操作、すなわち刃部5を打ち抜き刃112の刃先に当接させ、トリガー3を引き、トリガー3を戻すという操作を繰り返すことによって、打ち抜き刃112に複数のニックを容易に形成することができる。
【0044】
図7A及び
図7Bはそれぞれ、上記のようにしてニック形成装置1によって打ち抜き刃112に形成されるニックを説明するための平面図及び側面図であり、
図7Cは、
図7Bの破線部分の部分拡大図である。これらの図に示すとおり、打ち抜き刃112の刃先部112aは両側が傾斜しており、先端に向かって細くなるように形成されている。打ち抜き刃112は、このように両側が傾斜した刃先部112aと、厚さが実質的に均一な板状部112bとを有している。符号112cは、刃先部112aと板状部112bとの間の稜線を示している。このように、ここでは打ち抜き刃112として両刃の打ち抜き刃を例示しているが、片刃の打ち抜き刃であってもよい。
【0045】
ニック201は、打ち抜き刃112の刃先部112aに形成される。但し、ニック201が板状部112bまで到達していても構わない。本実施の形態のニック形成装置1によれば、作業者が誰であっても、幅w及び深さdが同程度のニック201を形成することができる。
【0046】
なお、ニック201の幅wは、ニック形成装置1が備える刃部5の厚みで制御可能である。厚みが異なる刃部5を適宜使い分けることにより、所望の幅wを得ることができる。また、ニック201の深さdは、引張コイルばね7の復元力、ニック201を形成する際の刃部5と打ち抜き刃112の刃先との間の距離、又は可動部4の長円形孔45とその長円形孔45に挿通される組ねじ22の軸部との位置関係などで制御可能である。
【0047】
上記のとおり、打撃部6は一定の力で可動部4を打撃するため、この可動部4に取り付けられた刃部5により形成されるニックは常に同程度のサイズとなる。このように、本実施の形態のニック形成装置1の場合、作業者が誰であっても、均一なサイズのニックを形成することができる。
【0048】
(その他の実施の形態)
上記の実施の形態では、引張コイルばね7の作用によって打撃部6が可動部4を打撃しているが、これに限定されるわけではなく、打撃部6が可動部4を一定の力で打撃することができるのであれば、他の構成を採用することが可能である。例えば、引張コイルばね以外のスプリングを用いる構成であってもよい。
【0049】
また、上記の実施の形態では、ニック形成装置1がピストル型であるが、これに限定されるわけではなく、ニック形成装置1が他の形状であっても構わない。
【0050】
また、上記の実施の形態では、ニック形成装置1の刃部5を打ち抜き刃112の刃先に当接させた状態でトリガー3が引かれるが、これに限定されるわけではない。打ち抜き刃112の刃先に対して刃部5が一定の距離で保持された状態であれば、均一なニックを形成することが可能であるため、刃部5と当該刃先とが当接されていなくてもよい。例えば、刃部5と当該刃先との間の距離を一定に保つための保持具を用いて、その距離を保持させた上で、トリガー3が引かれてもよい。なお、上記の実施の形態のように、刃部5を打ち抜き刃112の刃先に当接させた状態は、刃部5と当該刃先との間の距離がゼロで保持されている状態に相当するため、打ち抜き刃112の刃先に対して刃部5が一定の距離で保持された状態に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の打ち抜き刃のニック形成装置は、各種の打ち抜き型に用いられる打ち抜き刃にニックを形成する装置として有用である。
【符号の説明】
【0052】
1 ニック形成装置
2 筐体
2a,2b 板状部材
21 グリップ部
22,23 組ねじ
22a 雄ねじ
22b 雌ねじ
24 長円形孔
25,26,27 軸部
3 トリガー
3a,3b 板状部材
31 組ねじ
31a 雄ねじ
31b 雌ねじ
33,34 連結軸
4 可動部
41 先端部
41a 第1部材
41b 第2部材
42 可動部本体
43 ねじ
44 円形孔
45 長円形孔
46 爪部
47 組ねじ
5 刃部
6 打撃部
61 爪部
62 第1凹部
63 第2凹部
64 長円形孔
7,8 引張コイルばね
110 打ち抜き型
111 基台
112 打ち抜き刃
113a、113b 弾性部材
13a、13b 弾性部材
114 貫通孔