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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162422
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】感熱記録体
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/333 20060101AFI20241114BHJP
   B41M 5/337 20060101ALI20241114BHJP
   B41M 5/42 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B41M5/333 220
B41M5/337 212
B41M5/42 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077910
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹村 尚
(72)【発明者】
【氏名】高野 俊
【テーマコード(参考)】
2H026
【Fターム(参考)】
2H026AA07
2H026BB02
2H026BB24
2H026DD02
2H026DD32
2H026DD34
2H026DD53
2H026FF01
2H026FF15
(57)【要約】
【課題】耐熱性、ヘッドマッチング性及び印刷適性に優れた感熱記録体を提供する。
【解決手段】支持体上に少なくとも、ロイコ染料、顕色剤及び増感剤を含有する感熱記録層を有する感熱記録体において、前記顕色剤としてN-(p-トルエンスルホニル)-N’-3-(p-トルエンスルホニルオキシフェニル)尿素を含有し、前記増感剤としてテレフタル酸ジメチルを含有することを特徴とする感熱記録体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に少なくとも、ロイコ染料、顕色剤及び増感剤を含有する感熱記録層を有する感熱記録体において、前記顕色剤としてN-(p-トルエンスルホニル)-N’-3-(p-トルエンスルホニルオキシフェニル)尿素を含有し、前記増感剤としてテレフタル酸ジメチルを含有することを特徴とする感熱記録体。
【請求項2】
前記感熱記録層がワックスとしてエチレンビスステアリン酸アミドを含有する、請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項3】
前記感熱記録層が無機顔料としてクレーを含有する、請求項1又は2に記載の感熱記録体。
【請求項4】
前記支持体と感熱記録層の間に下塗り層を有する、請求項1又は2に記載の感熱記録体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱記録体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無色又は淡色のロイコ染料と、フェノール類又は有機酸との加熱発色反応を利用して発色画像を記録する感熱記録体は、広く実用化されている。このような感熱記録体は、単に加熱するだけで発色画像が形成されるため、記録装置をコンパクトにでき、記録装置の保守も容易で、騒音の発生が少ないなどの利点を有している。そのため感熱記録体は、ラベルプリンタ等の発行機、自動券売機、CD・ATM、飲食店等の注文伝票出力機、科学研究用機器のデータ出力機等における各種情報記録材料として広範囲に使用されている。
【0003】
しかしながら、用途の拡大に伴って要求される性能及び品質も多様化しており、例えば、耐熱性、ヘッドマッチング性及び印刷適性に優れる感熱記録体が求められている。
【0004】
熱応答性及び地肌部、画像部の保存安定性に優れた感熱記録材料を得るための方法としては、電子受容性化合物として、サリチル酸誘導体又はその金属塩を少なくとも一種を使用し、且つ2-ベンジルオキシナフタレン、4-ベンジルビフェニル、アジピン酸ジフェニル、テレフタル酸ジメチル、1,2-ビス(3,4-ジメチルフェニル)エタン、蓚酸ビス(4-メチルベンジル)、1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタンの中から選ばれる少なくとも一種の化合物及び分子構成炭素数が18以上の脂肪族アミド化合物を使用することが提案されている(特許文献1)。しかしながら、特許文献1では、地肌部の耐熱性試験の条件は60℃の低温度であり、耐熱性の改善の余地がある。また、ヘッドマッチング性及び印刷適性については評価されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-108765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、耐熱性、ヘッドマッチング性及び印刷適性に優れた感熱記録体を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記従来技術に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、上記問題点を解決するに至った。即ち、本発明は、下記の感熱記録体に係る。
【0008】
項1:支持体上に少なくとも、ロイコ染料、顕色剤及び増感剤を含有する感熱記録層を有する感熱記録体において、前記顕色剤としてN-(p-トルエンスルホニル)-N’-3-(p-トルエンスルホニルオキシフェニル)尿素を含有し、前記増感剤としてテレフタル酸ジメチルを含有することを特徴とする感熱記録体。
項2:前記感熱記録層がワックスとしてエチレンビスステアリン酸アミドを含有する、項1に記載の感熱記録体。
項3:前記感熱記録層が無機顔料としてクレーを含有する、項1又は2に記載の感熱記録体。
項4:前記支持体と感熱記録層の間に下塗り層を有する、項1~3のいずれか一項に記載の感熱記録体。
【発明の効果】
【0009】
本発明の感熱記録体は、耐熱性、ヘッドマッチング性、及び印刷適性に優れる。その上、白紙保存性も実用上問題がないレベルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書中において、「含む」なる表現については、「含む」、「実質のみからなる」、及び「のみからなる」旨の概念を含む。
【0011】
本明細書中において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
本発明におけるラテックスは、分散媒体を乾燥させることにより形成されるゲル又は乾燥皮膜の状態を含む。
【0013】
本発明は、支持体上に少なくとも、ロイコ染料、顕色剤及び増感剤を含有する感熱記録層を有する感熱記録体において、前記顕色剤としてN-(p-トルエンスルホニル)-N’-3-(p-トルエンスルホニルオキシフェニル)尿素を含有し、前記増感剤としてテレフタル酸ジメチルを含有することを特徴とする。
【0014】
[支持体]
本発明における支持体は、種類、形状、寸法等に格別の限定はなく、例えば、上質紙(酸性紙、中性紙)、中質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、グラシン紙、樹脂ラミネート紙、ポリオレフィン系合成紙、合成繊維紙、不織布、合成樹脂フィルム等の他、各種透明支持体等の中から適宜選択して使用することができる。支持体の厚みは特に制限されず、通常、20~200μm程度である。また、支持体の密度は特に制限されず、0.60~0.85g/cm程度が好ましい。
【0015】
[感熱記録層]
(ロイコ染料)
本発明の感熱記録体における感熱記録層には、無色又は淡色の各種公知のロイコ染料を含有させることができる。そのようなロイコ染料の具体例を以下に挙げる。
【0016】
ロイコ染料の具体例としては、例えば、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)-3-(4-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、フルオラン等の青発色性染料、3-(N-エチル-N-p-トリル)アミノ-7-N-メチルアニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ジベンジルアミノフルオラン、ローダミンB-アニリノラクタム等の緑発色性染料、3,6-ビス(ジエチルアミノ)フルオラン-γ-アニリノラクタム、3-シクロヘキシルアミノ-6-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン等の赤発色性染料、3-(N-エチル-N-イソアミル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-メチル-N-シクロヘキシル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ(n-ブチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ(n-ペンチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-6-メチル-7-アリニノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-(N-イソアミル-N-エチルアミノ)-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-(N-エチル-N-2-テトラヒドロフルフリルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-n-ヘキシル-N-エチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-〔N-(3-エトキシプロピル)-N-エチルアミノ〕-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-〔N-(3-エトキシプロピル)-N-メチルアミノ〕-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(2-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジ(n-ブチルアミノ)-7-(2-クロロアニリノ)フルオラン、4,4’-ビス-ジメチルアミノベンズヒドリンベンジルエーテル、N-2,4,5-トリクロロフェニルロイコオーラミン、3-ジエチルアミノ-7-ブチルアミノフルオラン、3-エチル-トリルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-シクロヘキシル-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-(β-エトキシエチル)アミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-(γ-クロロプロピル)アミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-イソアミル-N-エチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-7-クロロアニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-クロロフェニルアミノ)フルオラン、3-(N-エチル-p-トルイジノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-p-トルイジノ)-6-メチル-7-(p-トルイジノ)フルオラン、3-(N-エチル-N-テトラヒドロフルフリルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジメチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、2,2-ビス{4-〔6’-(N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ)-3’-メチルスピロ〔フタリド-3,9’-キサンテン〕-2’-イルアミノ〕フェニル}プロパン、3-ジエチルアミノ-7-(3’-トリフルオロメチルフェニル)アミノフルオラン等の黒発色性染料、3,3-ビス〔1-(4-メトキシフェニル)-1-(4-ジメチルアミノフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3,3-ビス〔1-(4-メトキシフェニル)-1-(4-ピロリジノフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3-p-(p-ジメチルアミノアニリノ)アニリノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-p-(p-クロロアニリノ)アニリノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3,6-ビス(ジメチルアミノ)フルオレン-9-スピロ-3’-(6’-ジメチルアミノ)フタリド等の近赤外領域に吸収波長を有する染料等が挙げられる。もちろん、これらに制限されるものではなく、また必要に応じて2種以上の化合物を併用することもできる。
【0017】
かかるロイコ染料の含有割合は、特に制限されず、感熱記録層の全固形分量中、3~30質量%程度が好ましく、5~25質量%程度がより好ましく、7~25質量%程度が更に好ましい。3質量%以上とすることにより発色能力を高めて、印字濃度を向上できる。30質量%以下とすることにより、耐熱性を向上できる。
【0018】
(顕色剤)
本発明では顕色剤として、N-(p-トルエンスルホニル)-N’-3-(p-トルエンスルホニルオキシフェニル)尿素を含有する。当該化合物と増感剤であるテレフタル酸ジメチルとを組み合わせることにより、優れた耐熱性、ヘッドマッチング性及び印刷適性を発揮することができる。その上、白紙保存性も実用上問題ないレベルにすることができ、白紙の状態で長期保存した後であっても発色能力を保つことができる。
【0019】
N-(p-トルエンスルホニル)-N’-3-(p-トルエンスルホニルオキシフェニル)尿素の含有量は、特に制限されず、使用されるロイコ染料に応じて調整すればよく、一般にロイコ染料1質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、0.8質量部以上がより好ましく、1質量部以上が更に好ましく、1.2質量部以上がより一層好ましく、1.4質量部以上が特に好ましい。また、N-(p-トルエンスルホニル)-N‘-3-(p-トルエンスルホニルオキシフェニル)尿素の含有量はロイコ染料1質量部に対して、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、4質量部以下が更に好ましく、3.5質量部以下が特に好ましい。0.5質量部以上とすることにより、記録性能を高めることができる。一方、10質量部以下とすることにより、高温環境下での地肌カブリを効果的に抑えることができる。
【0020】
本発明の効果を損なわない限り、その他の顕色剤を含有してもよい。その他の顕色剤の具体例としては、例えば、4-tert-ブチルフェノール、4-アセチルフェノール、4-tert-オクチルフェノール、4,4’-sec-ブチリデンジフェノール、4-フェニルフェノール、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’-イソプロピリデンジフェノール、4,4’-シクロヘキシリデンジフェニル、4,4’-シクロヘキシリデンジフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、4,4’-ビス(p-トリルスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2’-ビス〔4-(4-ヒドロキシフェニル)フェノキシ〕ジエチルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-n-プロポキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-アリルオキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-ベンジルオキシジフェニルスルホン、3,3’-ジアリル-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(p-ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、4-ヒドロキシ-4’-メチルジフェニルスルホン、4-アリルオキシ-4’-ヒドロキシジフェニルスルホン、3,4-ジヒドロキシフェニル-4’-メチルフェニルスルホン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシフタル酸ジメチル、4-ヒドロキシ安息香酸メチル、4-ヒドロキシ安息香酸プロピル、4-ヒドロキシ安息香酸-sec-ブチル、4-ヒドロキシ安息香酸フェニル、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジルエステル、4-ヒドロキシ安息香酸トリル、4-ヒドロキシ安息香酸クロロフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル等のフェノール性化合物、又は安息香酸、p-クロロ安息香酸、p-tert-ブチル安息香酸、トリクロル安息香酸、テレフタル酸、サリチル酸、3-tert-ブチルサリチル酸、3-イソプロピルサリチル酸、3-ベンジルサリチル酸、3-(α-メチルベンジル)サリチル酸、3,5-ジ-tert-ブチルサリチル酸、4-〔2-(p-メトキシフェノキシ)エチルオキシ〕サリチル酸、4-〔3-(p-トリルスルホニル)プロピルオキシ〕サリチル酸、5-〔p-(2-p-メトキシフェノキシエトキシ)クミル〕サリチル酸、4-〔3-(p-トリルスルホニル)プロピルオキシ〕サリチル酸亜鉛等の芳香族カルボン酸、及びこれらフェノール性化合物、芳香族カルボン酸と例えば亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、チタン、マンガン、スズ、ニッケル等の多価金属との塩、更にはチオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体、テレフタルアルデヒド酸と他の芳香族カルボン酸との複合亜鉛塩等の有機酸性物質、N-p-トルエンスルホニル-N’-p-ブトキシカルボニルフェニルウレア、N-p-トリルスルホニル-N’-フェニルウレア、4,4’-ビス(p-トルエンスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、4,4’-ビス[(4-メチル-3-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホン等のウレア化合物、N,N’-ジ-m-クロロフェニルチオウレア等のチオ尿素化合物、N-(p-トルエンスルホニル)カルバモイル酸p-クミルフェニルエステル、N-(p-トルエンスルホニル)カルバモイル酸p-ベンジルオキシフェニルエステル、N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミド、N-(o-トルオイル)-p-トルエンスルホアミド等の分子内に-SONH-結合を有する有機化合物、活性白土、アタパルジャイト、コロイダルシリカ、珪酸アルミニウム等の無機酸性物質等が挙げられる。
【0021】
さらに、下記一般式(1)で表される4,4’-ビス〔(4-メチル-3-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホン、4,4’-ビス〔(2-メチル-5-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホン、4-(2-メチル-3-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド-4’-(4-メチル-5-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイドジフェニルスルホン等のウレアウレタン誘導体、下記一般式(2)で表されるジフェニルスルホン誘導体、5-(N-3-メチルフェニル-スルフォニルアミド)-(N’,N’’-ビス-(3-メチルフェニル)-イソフタル酸ジアミド、3-[(フェニルカルバモイル)アミノ]フェニル-4-メチルベンゼンスルフォネート、N,N’-ジ[3-(p-トルエンスルホニル)オキシ]フェニル尿素等が挙げられる。もちろん、これらに制限されるものではなく、また必要に応じて2種以上の化合物を併用することもできる。
【0022】
【化1】
【0023】
【化2】
(式中、nは1~6の整数を表す。)
【0024】
(増感剤)
本発明では、感熱記録層中に増感剤としてテレフタル酸ジメチルを含有する。これにより、記録感度を高めることができる上に耐熱性も向上させることができる。
【0025】
増感剤としてのテレフタル酸ジメチルの含有量は、特に制限されず、通常は、感熱記録層の全固形分量中、2~40質量%程度が好ましく、5~25質量%程度がより好ましい。2質量%以上とすることにより、記録感度を高めることができる。一方、40質量%以下とすることにより、耐熱性を向上させることができる。
【0026】
テレフタル酸ジメチルの含有量は、特に制限されず、使用されるロイコ染料に応じて調整すればよく、一般にロイコ染料1質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上が更に好ましい。また、テレフタル酸ジメチルの含有量はロイコ染料1質量部に対して、5質量部以下が好ましく、4質量部以下がより好ましく、3質量部以下が更に好ましく、2.5質量部以下が特に好ましい。0.1質量部以上とすることにより、記録性能を高めることができる。一方、5質量部以下とすることにより、高温環境下での地肌カブリを効果的に抑えることができる。
【0027】
本発明の効果を損なわない限り、その他の増感剤を含有してもよい。その他の増感剤の具体例としては、ステアリン酸アミド、メトキシカルボニル-N-ステアリン酸ベンズアミルド、N-ベンゾイルステアリン酸アミド、N-エイコサン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、N-メチロールステアリン酸アミド、テレフタル酸ジベンジル、テレフタル酸ジオクチル、ジフェニルスルホン、p-ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸フェニル、2-ナフチルベンジルエーテル、m-ターフェニル、p-ベンジルビフェニル、シュウ酸ジ-p-クロロベンジルエステル、シュウ酸ジ-p-メチルベンジルエステル、シュウ酸ジベンジルエステル、p-トリルビフェニルエーテル、ジ(p-メトキシフェノキシエチル)エーテル、1,2-ジ(3-メチルフェノキシ)エタン、1,2-ジ(4-メチルフェノキシ)エタン、1,2-ジ(4-メトキシフェノキシ)エタン、1,2-ジ(4-クロロフェノキシ)エタン、1,2-ジフェノキシエタン、1-(4-メトキシフェノキシ)-2-(3-メチルフェノキシ)エタン、p-メチルチオフェニルベンジルエーテル、1,4-ジ(フェニルチオ)ブタン、p-アセトトルイジド、p-アセトフェネチジド、N-アセトアセチル-p-トルイジン、1,2-ジフェノキシメチルベンゼン、ジ(β-ビフェニルエトキシ)ベンゼン、p-ジ(ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、1-イソプロピルフェニル-2-フェニルエタン、アジピン酸ジ-o-クロルベンジル、1,2-ビス(3,4-ジメチルフェニル)エタン、1,3-ビス(2-ナフトキシ)プロパン、ジフェニル、ベンゾフェノン等が挙げられる。これらは支障のない範囲で併用できる。
【0028】
(保存性改良剤)
本発明では、感熱記録層中に、主に発色像の保存性をより一層高めるために、保存性改良剤を更に含有させることができる。このような保存性改良剤としては、例えば、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,1-ビス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、4,4’-〔1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)〕ビスフェノール、4,4’-〔1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)〕ビスフェノール等のフェノール化合物;4-ベンジルオキシフェニル-4’-(2-メチル-2,3-エポキシプロピルオキシ)フェニルスルホン、4-(2-メチル-1,2-エポキシエチル)ジフェニルスルホン、4-(2-エチル-1,2-エポキシエチル)ジフェニルスルホン等のエポキシ化合物;並びに1,3,5-トリス(2,6-ジメチルベンジル-3-ヒドロキシ-4-tert-ブチル)イソシアヌル酸等のイソシアヌル酸化合物から選ばれる少なくとも1種以上を用いることができる。もちろん、これらに制限されるものではなく、また必要に応じて2種以上の化合物を併用することもできる。
【0029】
保存性改良剤を使用する場合、その使用量は、保存性改良のために有効な量とすればよく、通常は、感熱記録層の全固形分量中、1~30質量%程度が好ましく、5~20質量%程度がより好ましい。
【0030】
(ワックス類)
本発明における感熱記録層中には、ワックス類を含有させることができる。これによりスティッキングを改良しヘッドマッチング性を向上させることができる。ワックス類としては、例えば、パラフィンワックス、カルナバワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリオレフィンワックス、ポリエチレンワックス等のワックス;例えば、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、及びその誘導体;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸亜鉛等の高級脂肪酸多価金属塩等を挙げることができる。これらの中でも耐熱性を損なわずにヘッドマッチング性に向上させることができるという観点から、エチレンビスステアリン酸アミドが好ましい。ワックス類の含有割合は、ヘッドマッチング性のために有効な量とすればよく、通常は、感熱記録層の全固形分量中、1~20質量%程度が好ましく、2~15質量%程度がより好ましい。
【0031】
(顔料)
本発明における感熱記録層中には、顔料を含有させることもできる。これにより印刷適性を向上させることができる。顔料としては、例えば、クレー、焼成クレー、珪藻土、タルク、カオリン、焼成カオリン、軽質又は重質炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、無定形シリカ、非晶質珪酸カルシウム、コロイダルシリカ等の無機顔料、メラミン樹脂、尿素-ホルマリン樹脂、ポリエチレン、ナイロン、スチレン、アクリル、炭化水素等からなる有機顔料を挙げることができる。これらの中でも印刷適性に特に優れるという観点から、クレーが好ましい。顔料の含有割合は、印刷適性のために有効な量とすればよく、通常は、感熱記録層の全固形分量中、10~40質量%程度が好ましく、15~35質量%程度がより好ましい。
【0032】
感熱記録層を構成する他の成分材料としては接着剤を用い、更に必要により、架橋剤、耐水化剤、分散剤、有色染料、蛍光染料等の助剤を用いることができる。
【0033】
(接着剤)
感熱記録層用塗液に使用される接着剤としては、例えば、水溶性接着剤及び水分散性接着剤のいずれの水性接着剤を使用できる。水溶性接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール、澱粉及びその誘導体、メトキシセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ジイソブチレン-無水マレイン酸共重合体塩、スチレン-アクリル酸共重合体塩、スチレン-無水マレイン酸共重合体塩、エチレン-無水マレイン酸共重合体塩、アクリルアミド-アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド-アクリル酸エステル-メタクリル酸共重合体、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン、アラビアガム等が挙げられる。水分散性接着剤としては、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のエマルジョン、又はスチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン-アクリル系共重合体等の水不溶性重合体のラテックス等が挙げられる。接着剤は、1種単独又は2種以上を併用して使用することができる。接着剤の含有割合は、広い範囲から選択できるが、一般には感熱記録層の全固形分量中、好ましくは5~30質量%程度、より好ましくは10~20質量%程度の範囲で配合される。
【0034】
(架橋剤)
感熱記録層又はその他の層の接着剤を硬化させる架橋剤を感熱記録層中に含有させることができる。これにより、感熱記録層の耐水性を向上させることができる。架橋剤としては、例えば、グリオキザール等のアルデヒド系化合物、ポリエチレンイミン等のポリアミン系化合物、エポキシ系化合物、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、グリオキシル酸塩、ジメチロールウレア化合物、アジリジン化合物、ブロックイソシアネート化合物;過硫酸アンモニウム、塩化第二鉄、塩化マグネシウム、四硼酸ソーダ、四硼酸カリウム等の無機化合物;硼酸、硼酸トリエステル、硼素系ポリマー、ヒドラジド化合物、グリオキシル酸塩等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。架橋剤の使用量は、感熱記録層の全固形分量100質量部に対し、1~10質量部程度の範囲が好ましい。これにより、感熱記録層の耐水性を向上させることができる。
【0035】
また、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、感熱記録層中に、更に撥油剤、消泡剤、粘度調節剤等の各種助剤を添加することができる。
【0036】
感熱記録層は、一般に水を分散媒体とし、ロイコ染料と顕色剤と増感剤、必要により保存性改良剤を一緒に、又は別々にボールミル、コボールミル、アトライター、縦型及び横型のサンドミル等の各種撹拌・湿式粉砕機によりポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、スチレン-無水マレイン酸共重合体塩等のような水溶性合成高分子化合物、その他界面活性剤と共に分散して分散液とした後、平均粒子径が2μm以下となるように分散して得た分散液を用いて、必要により接着剤、ワックス、顔料、助剤等を混合することにより調製された感熱記録層用塗液を塗布した後、原紙上に形成される。感熱記録層の塗布量は、特に制限されず、乾燥質量で1~12g/m程度が好ましく、2~10g/mがより好ましく、2.5~8g/mが更に好ましく、3~5.5g/mが特に好ましい。なお、感熱記録層は必要に応じて2層以上に分けて形成することができ、各層の組成と塗布量は、同一であってもよく、また異なっていてもよい。
【0037】
[下塗り層]
本発明の感熱記録体は、支持体と感熱記録層との間に必要に応じて下塗り層を備えることもできる。下塗り層は、接着剤を含有することが好ましい。
【0038】
(接着剤)
接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール及びその誘導体、澱粉及びその誘導体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド-アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド-アクリル酸エステル-メタアクリル酸エステル共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体、カゼイン、ゼラチン及びそれらの誘導体等の水溶性高分子材料、並びにポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のエマルジョン、又はスチレン-ブタジエン系共重合体、スチレン-ブタジエン-アクリル系共重合体等の水不溶性重合体のラテックス等を挙げることができる。これらの中でも、ラテックスを含有する接着剤を用いることが好ましい。接着剤の含有割合は、広い範囲から選択できるが、一般には下塗り層の全固形分量中、10~70質量%程度が好ましく、15~60質量%程度がより好ましい。
【0039】
接着剤には、ガラス転移温度(Tg)が-10℃以下である結着剤樹脂が含まれることが好ましい。ガラス転移温度が-10℃以下となることにより、低エネルギー域でも画質を向上させることができる。ガラス転移温度は、低エネルギー域において画質をさらに向上させることができるため、-30℃以下であることがより好ましい。一方、-50℃以下ではベタツキが生じて好ましくないことから、-40℃以上が好ましい。
【0040】
(中空粒子)
下塗り層は、中空粒子を含むことができる。中空粒子は、クッション性を向上する観点から有機樹脂からなることが好ましい。中空粒子を含有することによって高い断熱性を有する下塗り層は、感熱記録層に加えられた熱の拡散を防ぎ、感熱記録体としての感度を高めることができる。
【0041】
有機樹脂からなる中空粒子は、その製造方法の違いによって、発泡タイプと非発泡タイプとに分けることができる。これら二種のうち、発泡タイプの中空粒子は、一般に、非発泡タイプの中空粒子より平均粒子径が大きく中空率も高い。そのため、発泡タイプの中空粒子は、非発泡タイプの中空粒子より良好な感度、画質が得られる。
【0042】
非発泡タイプの中空粒子は、溶液中でシードを重合させた後に、シードを包むように他の樹脂を重合させ、その後内部のシードを膨潤及び溶解させて除去することにより、内部に空洞を形成することで製造できる。内部のシードを膨潤及び溶解させて除去するときには、アルカリ水溶液等が用いられる。アルカリ膨潤性を有するコア粒子を、アルカリ膨潤性を有しないシェル層で被覆したコア-シェル粒子をアルカリ膨潤処理することにより、平均粒子径が比較的大きい非発泡タイプの中空粒子を得ることもできる。
【0043】
発泡タイプの中空粒子は、樹脂の内部に揮発性液体を封じ込めた粒子を作製し、加熱により前記樹脂を軟化させると共に、前記粒子の内部の液体を気化及び膨張させることで製造できる。
【0044】
発泡タイプの中空粒子は、製造過程で内部の液体を加熱膨張させることにより、中空率が大きくなり、高い断熱性が得られるため、感熱記録体の感度を高め、記録濃度を向上させることができる。感度の向上は、特に、感熱記録層に加えられる熱エネルギーが小さい中間調領域を発色させる場合に重要である。また、断熱性の高い下塗り層を介して感熱記録層を形成すれば、感熱記録層に加えられた熱の拡散を防ぐことで、画像均一性に優れ、画質を向上させることもできる。
【0045】
発泡タイプの中空粒子に用いることができる樹脂には、スチレン-アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアセタール樹脂、塩素化ポリエーテル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリロニトリルを構成成分とするアクリル系樹脂)、スチレン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリ塩化ビニリデンとアクリロニトリルとを主体とする共重合体樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。発泡タイプの中空粒子の内部に含まれる気体としては、プロパン、ブタン、イソブタン、空気等が一般的である。中空粒子に用いる樹脂には、上記の種々の樹脂の中でも発泡粒子の形状を維持する強度の観点からアクリロニトリル樹脂及びポリ塩化ビニリデンとアクリロニトリルとを主体とする共重合体樹脂が好ましい。
【0046】
本発明における中空粒子の最大粒子径は、好ましくは10~30μm、より好ましくは10~25μmである。最大粒子径は、D100とも呼称される。中空粒子の最大粒子径が10μm以上であると下塗り層のクッション性が向上するため、印字時における感熱記録体のサーマルへッドへの密着性が向上し、高画質の感熱記録体が得られる。この高画質は、最大記録濃度(Dmax)を与えるより低いエネルギーで発色させる中間調における記録濃度の向上をもたらすことができる。一方、中空粒子の最大粒子径が30μm以下であると下塗り層の平滑性が向上するため、下塗り層を介して設ける感熱記録層を均一化することができ、画像の白抜けの起こりづらい感熱記録体が得られる。
【0047】
本発明における中空粒子の平均粒子径は、好ましくは4.0~15μm、より好ましくは4.5~15μmである。ここで、平均粒子径は、粒子径で2つに分けたとき、大きい側の粒子と小さい側の粒子の占める容積が等量となる径、つまり50体積%頻度の粒子径であるメジアン径であり、D50とも呼称される。中空粒子の平均粒子径が4.0μm以上であると下塗り層のクッション性が向上するため、印字時における感熱記録体のサーマルへッドへの密着性が向上し、高画質の感熱記録体が得られる。この高画質は、最大記録濃度(Dmax)を与えるより低いエネルギーで発色させる中間調における記録濃度の向上をもたらすことができる。一方、中空粒子の平均粒子径が15μm以下であると下塗り層の平滑性が向上するため、下塗り層を介して設ける感熱記録層を均一化することができ、画像の白抜けの起こりづらい感熱記録体が得られる。
【0048】
中空粒子の最大粒子径(D100)及び平均粒子径(D50)は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定することができる。また、電子顕微鏡を使用し、粒子画像(SEM画像)から粒子径をそれぞれ測定し、10個の平均値で示しても構わない。
【0049】
中空粒子の最大粒子径(D100)と平均粒子径(D50)との比D100/D50は、粒度分布の程度を示す指標である。この比D100/D50は、好ましくは1.8~3.0、より好ましくは2.0~2.8である。中空粒子のD100/D50が1.8以上であると、中空粒子が十分に発泡し、最大粒子径が十分大きくなり、中空率が高くなり、下塗り層の断熱性を向上させることができる。一方、中空粒子のD100/D50が3.0以下であると中空粒子の大きさが揃うため、下塗り層の平滑性が高まり、画像の白抜けを抑制できる。
【0050】
レーザー回折式粒度分布測定装置によって求められる粒度分布において、粒子径2.0μm以下の中空粒子の体積%は1%以下であることが好ましい。また、粒子径2.0μm以下の中空粒子は、体積%が0.5%以下であることが好ましく、含有されないことがより好ましい。粒子径2μm以下の中空粒子は、十分な中空領域を備えるには粒子径が小さすぎるため、断熱性への寄与が極めて小さいと考えられる。下塗り層における粒子径2μm以下の中空粒子の体積%を1%以下とすることにより、記録濃度、画質等を向上させることができる。
【0051】
中空粒子は、中空率が80~98%であることが好ましく、90~98%であることがより好ましい。中空粒子の中空率が80%以上であると、中空粒子を含有する下塗り層に高い断熱性を付与することができる。一方、中空粒子の中空率が98%以下であると、中空部をくるむ膜の強度を向上することにより、下塗り層形成時にも潰れない中空粒子とすることができる。
【0052】
中空粒子の中空率は、IPA法により真比重を測定し、真比重値から以下のようにして求められる。
(1)サンプルの前処理
・サンプルを60℃で一昼夜乾燥してサンプルとする。
(2)試薬
・イソプロピルアルコール(IPA:試薬一級)
(3)測定法
・メスフラスコを精秤する(W1)。
・メスフラスコに乾燥済サンプルを約0.5g取り精秤する(W2)。
・IPAを約50mg加え、十分に振とうして完全にカプセル外の空気を除去する。
・IPAを標線まで加えて精評する(W3)。
・ブランクとしてメスフラスコにIPAのみを標線まで加え精評する(W4)。
(4)真比重の算出
真比重={(W2-W1)×((W4-W1)/100)}/{(W4-W1)-(W3-W2)}
(5)中空率の算出
中空率(%)={1-1/(1.1/真比重)}×100
【0053】
また、中空率は、次式(d/D)×100でも求められる値である。該式中、dは中空粒子の内径を示し、Dは中空粒子の外径を示す。
【0054】
中空粒子の含有割合は、下塗り層の全固形分量中、5~40質量%であることが好ましく、5~35質量%であることがより好ましい。中空粒子の含有割合が5質量%以上であると、下塗り層の断熱性を向上させることができる。一方、中空粒子の含有割合が40質量%以下であると、塗工性等の面でも問題が生じづらく、均一な下塗り層を形成し易く、記録濃度を向上できる。また、下塗り層の塗膜強度を高めることができる。
【0055】
下塗り層は、顔料として吸油量が70ml/100g以上、特に80~150ml/100g程度の吸油性顔料及び/又は熱膨張性粒子を含むことができる。ここで、上記吸油量はJIS K 5101の方法に従い、求められる値である。
【0056】
上記吸油性顔料としては、各種のものが使用できるが、具体例としては、焼成カオリン、無定形シリカ、軽質炭酸カルシウム、タルク等の無機顔料が挙げられる。これら吸油性顔料の一次粒子の平均粒子径は0.01~5μm程度、特に0.02~3μm程度であるのが好ましい。吸油性顔料の使用量は、広い範囲から選択できるが、一般に下塗り層の全固形分量中、20~80質量%程度が好ましく、25~75質量%程度がより好ましい。
【0057】
下塗り層は、例えば、水を媒体として、接着剤、中空粒子、顔料、助剤等を混合することにより調製された下塗り層用塗液を塗布した後、乾燥されて支持体上に形成される。下塗り層用塗液の塗布量は、特に限定するものではないが、乾燥質量で2~20g/m程度が好ましく、2~12g/m程度がより好ましい。
【0058】
下塗り層用塗液中に含有される助剤としては、例えば、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム、脂肪酸金属塩等の分散剤、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレンワックス、カルナバロウ、パラフィンワックス、エステルワックス等のワックス類、ヒドラジド化合物、硼酸、ジアルデヒド澱粉、グリオキシル酸塩、エポキシ化合物等の耐水化剤、消泡剤、着色染料、蛍光染料等が挙げられる。
【0059】
[保護層]
感熱記録体では、樹脂層とは反対側の感熱記録層上に必要に応じて保護層を備えることもできる。保護層は、主に接着剤を含有することが好ましい。さらに保護層には、サーマルヘッドに対するスティッキングを防止する目的で、ポリオレフィンワックス、ステアリン酸亜鉛のような滑剤を含有させることが好ましく、紫外線吸収剤及び顔料を含有させることもできる。また、光沢を有する保護層を設けることにより、製品の付加価値を高めることもできる。
【0060】
保護層に含有される顔料としては、特に限定されず、例えば無定形シリカ、カオリン、クレー、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、焼成カオリン、酸化チタン、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、コロイダルシリカ、合成層状雲母等の無機顔料、尿素-ホルマリン樹脂フィラー等のプラスティックピグメント等が挙げられる。
【0061】
保護層に含有される接着剤としては、特に制限されず、水溶性又は水分散性の水性接着剤を使用できる。接着剤は、感熱記録層に使用できるものの中から適宜選択することができる。これらの接着剤のうち、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール等の各種変性ポリビニルアルコールがより好ましく用いられる。
【0062】
保護層は、例えば、水を分散媒体とし、顔料と接着剤、必要により助剤等を混合することにより調製された保護層用塗液を塗布した後、乾燥されて感熱記録層上に形成される。保護層用塗液の塗布量は、特に制限されず、乾燥質量で0.3~15g/m程度が好ましく、0.3~10g/m程度がより好ましく、0.5~8g/m程度がさらに好ましく、1~8g/m程度が特に好ましく、1~5g/m程度がより一層好ましい。なお、保護層は、必要に応じて2層以上に分けて形成することができ、各層の組成と塗布量とは、同一であってもよく、また異なっていてもよい。
【0063】
[その他の層]
本発明では、支持体の少なくとも一方面に粘着層を有することが好ましい。これにより、感熱記録体の付加価値を高めることができる。粘着層としては、例えば、一方面に粘着剤、再湿接着剤、ディレードタック型の粘着剤等による塗布加工を施すことにより粘着紙、再湿接着紙、ディレードタック紙等とすることができる。また、支持体の感熱記録層とは逆側の面を利用して、これに熱転写用紙、インクジェット記録用紙、ノーカーボン用紙、静電記録用紙、ゼオグラフィー用紙等としての機能を付与し、両面記録が可能な記録紙とすることもできる。もちろん、両面感熱記録体とすることもできる。また、感熱記録体裏面からの油及び可塑剤の浸透を抑制したり、カールコントロールしたり、帯電防止したりするためにバック層を設けることもできる。保護層上にシリコーンを含有した剥離層を塗布加工し、一方面に粘着剤を塗布加工することにより、剥離紙を必要としないライナーレスラベルとすることも可能である。
【0064】
[感熱記録体]
感熱記録体は、支持体上に上記各層を形成することにより製造することができる。樹脂層上に上記各層を形成する方法としては、エアナイフ法、ブレード法、グラビア法、ロールコーター法、スプレー法、ディップ法、バー法、カーテン法、スロットダイ法、スライドダイ法、エクストルージョン法等の既知の塗布方法のいずれを利用してもよい。また、各塗料は1層ずつ塗布及び乾燥して各層を形成してもよく、同一の塗料を2層以上に分けて塗布してもよい。さらに、2つ以上の層を同時に塗布する同時多層塗布を行ってもよい。また、各層を形成し終えた後、又は全ての層を形成し終えた後の任意の過程で、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー等の既知の方法を用いて平滑化処理することができる。
【0065】
本発明の感熱記録体に画像記録する方法としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。画像記録方法としては、例えば、サーマルヘッドプリンタ、レーザー光(例えば、炭酸ガスレーザー、UVレーザー、半導体レーザー光、YAGレーザー光、ファイバーレーザー光、固体レーザー光、色素レーザー光など)等を用いることができる。レーザー光を用いる場合のレーザー光の波長としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【実施例0066】
本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、特に断わらない限り、「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0067】
(実施例1)
(1)下塗り層用塗液の調製
中空粒子(商品名:ローペイクSN-1055、ダウ社製、固形分濃度26.5%)52.8部、焼成カオリン(商品名:アンシレックス93、BASF社製)67部、スチレン-ブタジエン系共重合体ラテックス(商品名:L-1571、旭化成社製、固形分濃度48%)31.3部、酸化澱粉(商品名:ペトロコートC-8、日澱化学社製)の25%溶液12部、ポリビニルアルコール(商品名:クラレポバール5-98、クラレ社製)の20%溶解液5部、及び水200部を混合撹拌して、下塗り層用塗液を得た。
【0068】
(2)ロイコ染料分散液(A液)調製
3-ジ-(n-ブチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、サンドミル(アイメックス社製、サンドグラインダー)を用いて、レーザー回折式粒径測定器SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が0.5μmになるまで粉砕してロイコ染料分散液(A液)を得た。
【0069】
(3)顕色剤分散液(B液)調製
N-p-トリルスルホニル-N’-3-(p-トリルスルホニルオキシ)フェニルウレア40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、サンドミル(アイメックス社製、サンドグラインダー)を用いて、レーザー回折式粒径測定器SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が1.0μmになるまで粉砕して呈色剤分散液(B液)を得た。
【0070】
(4)増感剤分散液(C液)調製
テレフタル酸ジメチル(日本曹達社製)40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、サンドミル(アイメックス社製、サンドグラインダー)を用いて、レーザー回折式粒径測定器SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が1.0μmになるまで粉砕して増感剤分散液(C液)を得た。
【0071】
(5)感熱記録層用塗液の調製
A液40.9部、B液50.0部、C液18.2部、ポリビニルアルコール(商品名:クラレポバール22-88、クラレ社製)の10%水溶液30部、ポリビニルアルコール(商品名:クラレポバール11-98、クラレ社製)の15%水溶液46.7部、酸化澱粉(商品名:ペトロコートC-8、日澱化学社製)の25%溶液8部、パラフィンワックス(商品名:ハイドリンP-7、中京油脂社製、固形分濃度30%)3.3部、ポリエチレンワックス(商品名:ケミパールW-400、三井化学社製、固形分濃度40%)8.8部、ステアリン酸亜鉛(商品名:ハイドリンZ-9、中京油脂社製、固形分濃度36%)16.7部、水酸化アルミニウム(商品名:ハイジライトH-42、レゾナック社製)16.5部、シリカ(商品名:ニップシールE-743、東ソー・シリカ社製)13部、及び水180部を混合撹拌して感熱記録層用塗液を得た。
【0072】
(6)感熱記録体の作製
坪量60g/mの上質紙の片面上に、下塗り層用塗液、及び感熱記録層用塗液を乾燥後の塗布量がそれぞれ4.5g/m、4.0g/mになるように塗布及び乾燥して、下塗り層、及び感熱記録層を順次形成した後、スーパーカレンダーで表面を平滑化して感熱記録体を得た。
【0073】
(実施例2)
実施例1の感熱層用塗液の調製において、エチレンビスステアリン酸アミド(商品名:ハイミクロンG-110、中京油脂社製、固形分濃度27%)18.5部を添加し、水酸化アルミニウム(商品名:ハイジライトH-42、レゾナック社製)の量を16.5部に代えて13.5部とし、シリカ(商品名:ニップシールE-743、東ソー・シリカ社製)の量を13部に代えて11部とした以外は、実施例1と同様に感熱記録体を得た。
【0074】
(実施例3)
実施例1の感熱層用塗液の調製において、エチレンビスステアリン酸アミド(商品名:ハイミクロンG-110、中京油脂社製、固形分濃度27%)18.5部、及びクレー(商品名:HG90、カミン社製)4部を添加し、水酸化アルミニウム(商品名:ハイジライトH-42、レゾナック社製)の量を16.5部に代えて11.5部とし、シリカ(商品名:ニップシールE-743、東ソー・シリカ社製)の量を13部に代えて9部とした以外は、実施例1と同様に感熱記録体を得た。
【0075】
(比較例1)
(7)増感剤分散液(D液)調製
シュウ酸ジ-p-メチルベンジルエステル(商品名:HS-3520、DIC社製)40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、サンドミル(アイメックス社製、サンドグラインダー)を用いて、レーザー回折式粒径測定器SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が1.0μmになるまで粉砕して増感剤分散液(D液)を得た。
【0076】
実施例1の感熱層用塗液の調製において、C液に代えてD液を使用した以外は、実施例1と同様に感熱記録体を得た。
【0077】
(比較例2)
(8)増感剤分散液(E液)調製
シュウ酸ジ-p-クロロベンジルエステル(商品名:HS-3519、DIC社製)40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、サンドミル(アイメックス社製、サンドグラインダー)を用いて、レーザー回折式粒径測定器SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が1.0μmになるまで粉砕して増感剤分散液(E液)を得た。
【0078】
実施例1の感熱層用塗液の調製において、C液18.2部に代えてD液13.6部、E液4.5部を使用した以外は、実施例1と同様に感熱記録体を得た。
【0079】
(比較例3)
(9)増感剤分散液(F液)調製
1,2-ジ(3-メチルフェノキシ)エタン(商品名:KS-232、三光社製)40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、サンドミル(アイメックス社製、サンドグラインダー)を用いて、レーザー回折式粒径測定器SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が1.0μmになるまで粉砕して増感剤分散液(F液)を得た。
【0080】
実施例1の感熱層用塗液の調製において、C液に代えてF液を使用した以外は、実施例1と同様に感熱記録体を得た。
【0081】
(比較例4)
(10)増感剤分散液(G液)調製
ジフェニルスルホン(商品名:DPS、日華化学社製)40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、サンドミル(アイメックス社製、サンドグラインダー)を用いて、レーザー回折式粒径測定器SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が1.0μmになるまで粉砕して増感剤分散液(G液)を得た。
【0082】
実施例1の感熱層用塗液の調製において、C液に代えてG液を使用した以外は、実施例1と同様に感熱記録体を得た。
【0083】
(比較例5)
実施例1の感熱層用塗液の調製において、C液18.2部に代えてステアリン酸アミド(製品名:ハイミクロンL-271、中京油脂社製、固形分濃度25%)32部を使用した以外は、実施例1と同様に感熱記録体を得た。
【0084】
(比較例6)
実施例1の感熱層用塗液の調製において、C液18.2部に代えてD液13.6部、E液4.5部を使用し、パラフィンワックス(商品名:ハイドリンP-7、中京油脂社製、固形分濃度30%)の量を3.3部に代えて15部とし、水酸化アルミニウム(商品名:ハイジライトH-42、レゾナック社製)の量を16.5部に代えて14.5部とし、シリカ(商品名:ニップシールE-743、東ソー・シリカ社製)の量を13部に代えて11.5部とした以外は、実施例1と同様に感熱記録体を得た。
【0085】
(比較例7)
実施例1の感熱層用塗液の調製において、C液18.2部に代えてD液13.6部、E液4.5部を使用し、ポリエチレンワックス(商品名:ケミパールW-400、三井化学社製、固形分濃度40%)の量を8.8部に代えて17.5部とし、水酸化アルミニウム(商品名:ハイジライトH-42、レゾナック社製)の量を16.5部に代えて14.5部とし、シリカ(商品名:ニップシールE-743、東ソー・シリカ社製)の量を13部に代えて11.5部とした以外は、実施例1と同様に感熱記録体を得た。
【0086】
(比較例8)
実施例1の感熱層用塗液の調製において、C液18.2部に代えてD液13.6部、E液4.5部を使用し、ステアリン酸亜鉛(商品名:ハイドリンZ-9、中京油脂社製、固形分濃度36%)の量を16.7部に代えて26.4部とし、水酸化アルミニウム(商品名:ハイジライトH-42、レゾナック社製)の量を16.5部に代えて14.5部とし、シリカ(商品名:ニップシールE-743、東ソー・シリカ社製)の量を13部に代えて11.5部とした以外は、実施例1と同様に感熱記録体を得た。
【0087】
上記の実施例及び比較例について、以下の方法で評価を行った。その結果は、表1に示す通りであった。
【0088】
[90℃耐熱性]
白紙の各感熱記録体のサンプルを、90℃のチャンバーにて1時間静置し、処理した後の白紙部の光学濃度を分光濃度計(X-Rite504、X-Rite社製)で測定した。評価基準を下記とした。
処理後の白紙部の濃度0.20以下:実用上問題ない。
処理後の白紙部の濃度0.20超:地肌カブリが強く、実用上問題がある。
【0089】
[白紙保存性]
未処理の各感熱記録体のサンプル、及び白紙の各感熱記録体のサンプルを、40℃90%RHのチャンバーにて3日間静置処理したサンプルを、感熱記録評価機(商品名:TH-PMD、大倉電機社製)を用い、印加エネルギー:0.16mJ/dot(中間~高階調発色濃度)にて各感熱記録体を記録し、得られた印字部を分光濃度計(X-Rite504、X-Rite社製)で測定した。そして、以下の式により記録濃度差を求めて、評価基準を下記とした。マイナス側に大きい感熱記録体は、長期保存において発色能力の低下が問題となる。
式:(記録濃度差)=(処理後の記録濃度)-(未処理の記録濃度)
記録濃度差≧-0.10:白紙保存性が高く、非常に優れている。
-0.10>記録濃度差≧-0.20:白紙保存性が高く、優れている。
-0.20>記録濃度差≧-0.30:やや感度が低くなっているが、実用上問題ない。
-0.30>記録濃度差:白紙保存性が低く、実用上問題がある。
【0090】
[ヘッドマッチング性]
(ヘッド粕)
感熱プリンター(商品名:レスプリT-408v-ex、サトー社製)を用い、印加エネルギー5Aにて、黒ベタ18cmを6回印字し、サーマルヘッドに付着したヘッド粕の量を以下の基準で判定した。
【0091】
(スティック)
環境温度5℃にて、感熱プリンター(商品名:レスプリT-408v-ex、サトー社製)を用い、印加エネルギー3Aにて、8ドットの黒ベタと8ドットの非印字を繰返し印字し、印字長さ10cmにおける印字飛びを以下の基準で判定した。
◎:ヘッド粕量が非常に少なく、印字飛びなどのスティッキングも生じないレベル。
○:ヘッド粕が僅かに付着するか、僅かな印字飛びが生じるが実使用上問題ないレベル。
×:ヘッド粕が由来の印字障害、又は明確な印字飛び生じ実使用上問題になるレベル。
【0092】
[オフセット印刷適性]
各感熱記録体のオフセット印刷適性を、RI印刷機を用いて評価を行った。インキは、UVインク(商品名:ベストキュアーUV NVR 紅、T&K社製)0.25gを、インキ練りローラーで1分間練った後に印刷試験を行い、UV照射後に印刷部のベタ均一性を以下のように評価した。
◎:印刷濃度が高く、白抜けやピッキングなどの欠陥がなくきれいに印刷されている。
○:印刷濃度が僅かに低く、極小さな白抜けが生じているが、実用上問題ない。
×:印刷部に大きな白抜けやピッキングが生じ、実用上問題である。
【0093】
【表1】
【0094】
表1からわかるように、実施例1~3の感熱記録体は、他の増感剤である比較例1~5と比較して90℃耐熱性に優れる。また、ワックスとしてエチレンビスステアリン酸アミドを用いることで、耐熱性を損なわずにヘッドマッチング性を改善できた(実施例2)。更に無機顔料にクレーを用いることで印刷適性も改善できた(実施例3)。