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特開2024-162429画像処理装置、画像処理方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162429
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/60 20060101AFI20241114BHJP
   H04N 1/409 20060101ALI20241114BHJP
   H04N 1/407 20060101ALI20241114BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20241114BHJP
   B41J 2/52 20060101ALI20241114BHJP
   B41J 21/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H04N1/60
H04N1/409
H04N1/407
G06T1/00 510
B41J2/52
B41J21/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077921
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 麻子
【テーマコード(参考)】
2C187
5B057
5C077
【Fターム(参考)】
2C187AD14
2C187AE01
2C187AE07
2C187CD12
2C187CD17
2C187GA05
2C187GA07
5B057AA11
5B057CA01
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA17
5B057CB02
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CE03
5B057CE17
5B057DC25
5C077LL19
5C077MP08
5C077PP03
5C077PP32
5C077PP33
5C077PP37
5C077PQ08
5C077RR05
5C077TT02
(57)【要約】
【課題】モノクロ画像におけるオブジェクトの弁別性を適切に向上させること。
【解決手段】
カラーの画像をモノクロで印刷するための画像処理装置は、PDLデータを取得する取得手段と、前記PDLデータにおいてオブジェクトごとに指定されている複数の色を表す複数の色値それぞれを、グレー値に変換する変換手段と、複数の前記変換されたグレー値をソートした場合に隣り合うグレー値の組み合わせの差分が、所定の値以上になるように、前記変換されたグレー値を調整する調整手段と、前記調整の結果、差分が小さくなった前記組み合わせに対応するオブジェクトのエッジを強調する処理をする処理手段と、を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーの画像をモノクロで印刷するための画像処理装置であって、
PDLデータを取得する取得手段と、
前記PDLデータにおいてオブジェクトごとに指定されている複数の色を表す複数の色値それぞれを、グレー値に変換する変換手段と、
複数の前記変換されたグレー値をソートした場合に隣り合うグレー値の組み合わせの差分が、所定の値以上になるように、前記変換されたグレー値を調整する調整手段と、
前記調整の結果、差分が小さくなった前記組み合わせに対応するオブジェクトのエッジを強調する処理をする処理手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記PDLデータに基づき、ラスタ画像を生成する生成手段をさらに有し、
前記処理手段は、
前記ラスタ画像に対して、前記エッジを強調する処理をする
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記生成手段は、
前記差分が小さくなった前記組み合わせに対応するオブジェクトについてはカラーでRIP処理し、前記差分が小さくなった前記組み合わせに対応するオブジェクト以外のオブジェクトについてはグレーでRIP処理して前記ラスタ画像を生成し、
前記処理手段は、
前記ラスタ画像のカラーを表す色値に対して前記エッジを強調する処理をする
ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記生成手段は、画素値がRGB値である前記ラスタ画像を生成し、
前記ラスタ画像のRGB値を、CMYKの各版の信号値に変換する第1の色変換手段をさらに有し、
前記処理手段は、CMYKの各版のうちの前記差分が小さくなった前記組み合わせに対応するオブジェクトの信号値が含まれる版に対してのみ前記エッジを強調する処理を行い、
前記エッジを強調する処理がされた後の信号値を、K版の信号値に変換する第2の色変換手段をさらに有する
ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記オブジェクトの信号値が含まれる版は、CMYの版であり、
前記処理手段は、CMYの版に対して前記エッジを強調する処理を行う
ことを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記調整されたグレー値は、RGBの信号値が等量であるRGB値で表され、
前記差分が小さくなった前記組み合わせに対応するオブジェクトの前記調整されたグレー値を表すRGB値を、信号値が非等量であるRGB値に修正する修正手段をさらに有し、
前記第1の色変換手段は、
前記信号値が等量のRGB値については、K版の信号値に変換されるように色変換を行い、前記信号値が非等量のRGB値については、CMYの版の信号値に変換されるように色変換を行う、
ことを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記信号値が非等量であるRGB値は、前記変換手段によって用いられる変換方法でグレー値に変換されると、前記調整されたグレー値となるRGB値である
ことを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記RGB値は輝度値であり、CMYKの各版の信号値は濃度値であり、
前記第1の色変換手段は、
前記信号値が等量であるRGB値については、RGB値を構成する何れかの信号値を反転することでK版の信号値に変換し、
前記信号値が非等量であるRGB値については、CMYの版の信号値を足すと前記調整されたグレー値を反転した値となるようなCMYの版の信号値へ変換する
ことを特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記PDLデータに基づき、前記オブジェクトごとの属性を示す値が含まれる属性情報を生成する属性情報生成手段と、
前記差分が小さくなった前記組み合わせに対応するオブジェクトの前記属性を示す値に所定の情報が含まれるように、前記属性を示す値を修正する修正手段と、をさらに有し、
前記処理手段は、
前記所定の情報が含まれる前記属性を示す値に対応するオブジェクトのエッジを強調する処理をする
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記調整が行われる前の前記組み合わせのグレー値差と、前記調整が行われた後の前記組み合わせのグレー値差と、の差を比較して、前記調整の結果、前記差分が小さくなった前記組み合わせがあるかを判定する判定手段を有し、
前記処理手段は、
前記判定手段によって、グレー値の差分が小さくなったと判定された前記組み合わせに対応するオブジェクトのエッジを強調する処理をする
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記調整手段は、
前記変換されたグレー値を昇順または降順でソートした場合に隣り合う2つのグレー値を前記組み合わせとして、前記変換されたグレー値を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記変換手段は、複数の色成分の信号値それぞれに重みづけをすることでグレー値に変換する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記処理手段は、
前記調整の結果、前記差分が閾値より小さくなった前記組み合わせに対応するオブジェクトのエッジを強調する処理をする
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項14】
カラーの画像をモノクロで印刷するための画像処理装置であって、
PDLデータを取得する取得ステップと、
前記PDLデータにおいてオブジェクトごとに指定されている複数の色を表す複数の色値それぞれを、グレー値に変換する変換ステップと、
複数の前記変換されたグレー値をソートした場合に隣り合うグレー値の組み合わせの差分が、所定の値以上になるように、前記変換されたグレー値を調整する調整ステップと、
前記調整の結果、差分が小さくなった前記組み合わせに対応するオブジェクトのエッジを強調する処理をする処理ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項15】
コンピュータに、請求項1から13のいずれか1項に記載の画像処理装置の各手段を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モノクロ画像の弁別性を向上させる処理に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なオフィスにおいて、文書作成アプリケーション等を用いて作成されるプレゼンテーション資料等の文書は、フルカラーで作成されるのが通常である。しかし、フルカラーで作成された文書画像であっても印刷する時にはモノクロ(黒単色)で印刷されるケースも少なくない。このようにフルカラーの文書画像(以下、「カラー画像」と表記)をモノクロで印刷する場合、カラー画像が持つ色値をモノクロ化するグレースケール変換処理が必要となる。
【0003】
例えば、RGB色空間の色値を持つカラー画像をモノクロで印刷する場合、RGB値に対しNTSC加重平均法などによる重み付け演算などを行って、輝度を表すグレー値に変換する処理が行われる。このとき、RGB値では全く異なる色が、変換後には同じまたは似たグレー値になることがある。この場合、カラー画像が有していた色の弁別性がグレースケール画像では低下してしまうことになる。
【0004】
特許文献1には、グレースケール画像におけるオブジェクトの弁別性を向上させる方法として、カラー画像のRGB値から変換されたグレー値を、グレー値どうしの差が大きくなるように修正する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2023-33978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、グレー値を修正した後の方が、グレー値差が小さくなってしまうグレー値の組み合わせが存在してしまう。この場合、グレー値を修正したことにより小さくなったグレー値差に対応するオブジェクトの弁別性が低下したように感じられてしまうことがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の画像処理装置は、カラーの画像をモノクロで印刷するための画像処理装置であって、PDLデータを取得する取得手段と、前記PDLデータにおいてオブジェクトごとに指定されている複数の色を表す複数の色値それぞれを、グレー値に変換する変換手段と、複数の前記変換されたグレー値をソートした場合に隣り合うグレー値の組み合わせの差分が、所定の値以上になるように、前記変換されたグレー値を調整する調整手段と、前記調整の結果、差分が小さくなった前記組み合わせに対応するオブジェクトのエッジを強調する処理をする処理手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、モノクロ画像におけるオブジェクトの弁別性を適切に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】画像処理システムの構成の一例を示す図。
図2】画像形成装置およびホストPCの機能構成を説明する図。
図3】描画コマンド、カラーのラスタ画像、及び属性情報を説明するための図。
図4】エッジ強調処理について説明するための図。
図5】プリント処理の流れを示すフローチャートである。
図6】プリント処理で実行される処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
図7】色値リストを説明するための図。
図8】モノクロ画像の一例を示す図。
図9】弁別性低下判定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付図面を参照して本開示の技術の実施形態の詳細を説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る技術を限定するものではなく、また以下の実施形態で説明されている特徴の組み合わせのすべてが本開示の技術の解決手段に必須のものとは限らない。以下の実施形態では、画像処理装置の一例として画像形成装置を用いて説明する。
【0011】
<実施形態1>
本実施形態では、カラーページをモノクロで印刷するため、カラーの色値をグレーの色値(グレー値)へ変換した場合、異なるカラーの色値から変換されたグレー値が似たグレーを示すことになることによる弁別性が低下することを抑制する方法を説明する。
【0012】
[画像処理システムの構成について]
図1は、本実施形態に係る画像処理システム117の構成の一例を示す図である。画像処理システム117は、画像形成装置101、およびホストPC119を有する。また、画像処理システム117は、画像処理を行うサーバーまたはクラウドを含む外部のPC127と接続している。
【0013】
本実施形態の画像形成装置101は、画像処理装置の機能を含み、他にも例えば、スキャン機能、およびプリンタ機能等の複数の機能が一体化された複合機(MFP:Multi-Function Peripheral)である。画像形成装置101は、制御部110、操作部118、画像出力部109、画像読取部108、プレビュー表示部125、および画像送信部126を有する。
【0014】
制御部110は、画像形成装置101を統括的に制御する。制御部110は、CPU105、ROM106、RAM107、HDD111、操作部I/F112、プリンタI/F113、スキャナI/F114、ネットワークI/F115、プレビュー表示I/F124を有する。
【0015】
CPU105は、ROM106に保存されているプログラムをRAM107に展開して実行することにより画像形成装置101の動作を制御する。RAM107は、一時記憶メモリであり、画像データ、およびプログラム等を一時的に保存することが可能である。ROM106には、画像形成装置101を制御するためのパラメータ、本実施形態に係る制御を実現するためのアプリケーション、プログラム、およびOSなどが保存されている。HDD111には、画像読取部108がスキャンして得られた画像データが保存される。
【0016】
HDD111に保存された画像データは、プレビュー表示I/F124を介し、プレビュー表示部125に出力され、画像をプレビュー表示することができる。また、保存された画像データをネットワークI/F115を介して画像送信部126からLAN116を通してホストPC119などに送信することができる。
【0017】
制御部110は、操作部I/F112を介して操作部118を制御する。操作部118は例えば、タッチパネルである。同様に、制御部110は、プリンタI/F113を介して画像出力部109を制御する。画像出力部109は例えばプリンタである。また、制御部110は、スキャナI/F114を介して画像読取部108を制御する。画像読取部108は、例えばスキャナである。
【0018】
制御部110は、ネットワークI/F115を介して画像送信部126を制御する。制御部110は、LAN116を通してホストPC119から画像などの受信および、ホストPC119へ画像などの送信を行う。
【0019】
CPU105がROM106に保存されているプログラムをRAM107に展開して実行することにより、画像読取部108が原稿を読み取るスキャン機能、画像出力部109を介して画像を用紙等の記録媒体などへ出力するプリンタ機能が実現される。
【0020】
一方、ホストPC119は、情報処理装置であり、CPU120、ROM121、RAM122、HDD123を有する。CPU120は、ROM121に保存されているプログラムをRAM122に展開して実行することによりホストPC119の動作を制御する。RAM122は、一時記憶メモリであり、画像、およびプログラム等を一時的に保存することが可能である。
【0021】
[プリント処理に係わる機能構成について]
図2は、画像処理システム117におけるプリント処理時の画像形成装置101およびホストPC110の機能構成を説明する図である。
【0022】
ホストPC110は、アプリケーション201、プリンタドライバ202を有する。アプリケーション201、プリンタドライバ202はホストPC119のROM121に搭載されており、CPU105がROM121に保存されているプログラムをRAM122に展開し実行することにより制御される。
【0023】
アプリケーション201は、ドキュメント文書、プレゼンテーション文書等の電子データを生成するために使用されるアプリケーションである。アプリケーションによって、ドキュメント文書やプレゼンテーション文書などの電子データが作成される。
【0024】
プリンタドライバ202は、ドキュメント文書、プレゼンテーション文書等に基づく印刷データを、画像形成装置101に送信して、印刷データに基づき画像を画像形成装置101に印刷させるためのドライバである。
【0025】
そして、この印刷データは、画像形成装置101のコマンド処理部207でラスタ画像に変換され、画像蓄積部210ではそのラスタ画像が保存される。その後、画像処理部220では画像処理が行われる。以下、順に説明する。
【0026】
次に、画像形成装置101の画像処理に係る機能構成を説明する。画像形成装置101は、コマンド処理部207、画像蓄積部210、画像処理部220を有する。コマンド処理部207は、コマンド判別部203、コマンド解析部204、画像処理部205、およびコマンド実行部206を有する。
【0027】
コマンド判別部203は、画像形成装置101の制御部110が印刷データとして取得した画像を表すPDL(Print Description Language)データの種別を判別する。このPDLデータの種別は、PostScript(PS)やPrinterCommandLanguage(PCL)などを含む。
【0028】
コマンド解析部204は、コマンド判別部203で特定されたPDL種別のコマンドの抽出及び解析を実行する。
【0029】
画像処理部205は、コマンド解析部204の解析結果に応じた画像処理として、所定の属性のオブジェクトに対する色変換処理、線またはオブジェクト等の太さの調整処理などを行う。
【0030】
コマンド実行部206は、コマンド解析部204の解析結果と画像処理部205の処理結果とに基づき描画を行うRIP(ラスターイメージプロセッサー)処理(ラスタライズ)を実行することでラスタ画像データを生成する。また、コマンド実行部206は、オブジェクトごとの属性を示す属性情報を生成する。
【0031】
次に、画像蓄積部210の処理について説明する。画像蓄積部210は、コマンド実行部206が生成したラスタ画像データおよび属性情報をHDD111内に蓄積する。また、画像蓄積部210は画像蓄積部210からプレビュー表示部125または画像送信部126へ印刷データを出力するための出力制御を行う。
【0032】
画像処理部220は、コマンド実行部206が生成したラスタ画像データおよび属性情報、または画像蓄積部210にて蓄積されたラスタ画像データおよび属性情報を用いて様々な画像処理を行う。
【0033】
色変換処理部211は、RGB色空間からCMYK色空間への色変換、カラーからグレーへの色変換、またはRGB色空間からRGB色空間への色変換を行う。
【0034】
フィルタ処理部212はエッジ強調やスムージングなどのシャープネス処理を行う。フィルタ処理部212の処理の詳細については、後述する。
【0035】
トラッピング処理部213は色版同士のずれによる白抜けを防ぐため、隣接する画素へ色版を潜り込ませるトラッピング処理を行う。
【0036】
ガンマ処理部214はプリンタの特性に応じて1次元のLUT(ルックアップテーブル)を用いたガンマ処理を行う。その他、ガンマ処理された画像に対して行うディザ処理等も画像処理部に含まれる。
【0037】
図2に示す画像形成装置101のコマンド処理部、画像蓄積部210、画像処理部220の機能は、CPU105がROM106に保存されているプログラムコードをRAM107に展開し実行することにより実現される。または、図2の各部の一部または全部の機能をASICまたは電子回路等のハードウェアで実現してもよい。例えば、少なくとも画像処理部220の各部の機能をASICまたは電子回路等のハードウェアで実現してもよい。
【0038】
[描画コマンドについて]
図3は、コマンド実行部206がコマンド解析部204の解析結果に応じて、RIP(ラスターイメージプロセッサー)を介して描画することでラスタ画像および属性情報を生成する処理の一例を説明するための図である。
【0039】
図3(a)は、画像形成装置101が印刷データとして取得した、PDLで記述されたコマンドが含まれる画像データ(PDLデータ)における描画コマンド300である。図3(b)は、コマンド解析部204による描画コマンド300の解析に応じてコマンド実行部206がRIP処理することで生成されたカラーのラスタ画像310である。印刷データに含まれるコマンドには、描画コマンドおよび制御コマンドがある。
【0040】
制御コマンドには、A4およびA3のような紙サイズ指定、1枚の出力紙に2ページ分を納める2in1設定、両面に印刷する指定などのフィニッシング情報を指定するコマンドが含まれる。また、制御コマンドには、印刷データが示す画像をカラーからモノクロに変換する指定、画像蓄積部210に画像データをHDDに蓄積させるか否かを指定するコマンドなども含まれる。
【0041】
次に、図3(a)に記載されている描画コマンド300の内容を簡単に説明する。描画コマンド300に含まれる色値は、三次元のRGB空間の8bitの信号値で規定されているものとする。描画コマンド300の2番目のコマンドであるカラーモード設定コマンド301はジョブのカラーモードを示すコマンドである。「Set Page Color(CL)」は、以下のコマンドはカラーで展開されることを示している。なお、色値は、複数次元の色成分値で指定されていればよく、RGB空間の色値に限定されない。
【0042】
3番目のコマンドである文字サイズ設定コマンド302は、文字のサイズを指定するコマンドであり、「SetText Size(20)」は文字のサイズが20ポイントであることを示している。4番目のコマンドであるフォント設定コマンド303は、文字のフォントを指定するコマンドであり、「Set Font (Arial)」は文字のフォントがArialであることを示している。5番目の色設定コマンド307の「Set Color(255,50,255)」は、RGBの各成分値がR=255、G=50、B=255のピンクであることを示している。本明細書では、カラーの色値であるRGB空間の色値(RGB値)を、(R成分の信号値,G成分の信号値,B成分の信号値)で表すことがある。6番目のコマンドであるオブジェクト描画コマンド304は、文字を描画するコマンドであり、「Draw Text("A")」は文字「A」を描画すること示す。3番目~6番目のコマンドは、「A」の文字オブジェクトがArialフォント、文字サイズが20ポイント、色がピンクで描画されることを示している。
【0043】
その結果、図3(b)に示すように、ページのラスタ画像310内には「A」の文字オブジェクト311がピンクで描画される。図3(a)中の符号「311」が示す領域は、図3(b)の文字オブジェクト311を描画するための領域であることを示しており、他のコマンドも同様である。
【0044】
7~8番目のコマンドは、ラスタ画像310に文字オブジェクト312として「B」を描画することを示している。9~10番目のコマンドは、ラスタ画像310に文字オブジェクト313として「C」を描画することを示している。
【0045】
11番目のコマンドである色設定コマンド305の「Set Color(255,192,0)」は、描画する色を示している。12番目のコマンドであるオブジェクト描画コマンド306の「Draw Polygon」は、座標値に基づいて図形を描画することを示す。座標値は、図3(a)では省略して図示している。その結果、図3(b)に示すように、ラスタ画像310内には、丸の図形オブジェクト314が黄色で描画される。
【0046】
13番目~20番目のコマンドは、4つの扇形の図形オブジェクトが異なるカラーの色で描画されることを示している。その結果、図3(b)に示すように、ラスタ画像310内には、円グラフを構成する扇形の図形オブジェクト315が(153,204,255)で描画されている。また、扇形の図形オブジェクト316が(133,240,133)で、扇形の図形オブジェクト317が(255,176,150)で、扇形の図形オブジェクト318が(200,200,200)で描画されている。
【0047】
この他にも、座標や線の太さを設定するコマンド、写真等のイメージを描画するコマンド等も含まれるがそれらは図3(a)では省略している。本実施形態では、イメージを除く、文字、および図形をグラフィックと呼ぶ。
【0048】
図3(c)は属性情報を説明するための図である。属性情報320は、1チャネルで8bitの属性値が画素値であり、ラスタ画像310と同じ主福の画素数をもつ画像である。属性情報320において、文字「A」、文字「B」、文字「C」の各文字オブジェクト311~313の領域に対応する画素の画素値として「00100111」の文字属性322を示すビットが立った属性値が生成される。丸の図形オブジェクト314および円グラフを構成する扇形の図形オブジェクト315~318の領域に対応する画素の画素値は、「00100011」の図形属性321を示すビットが立った属性値が生成される。
【0049】
[エッジ強調処理について]
図4は、フィルタ処理部212がラスタ画像に対して行うフィルタ処理の1つであるエッジ強調処理(シャープネス処理)について説明するための図である。ここで、CMYK色空間のラスタ画像におけるCMYKの各色版のうちのC(シアン)の色版であるC版についての処理を例に、エッジ強調処理の説明をする。
【0050】
図4(a)の画像401における斜線部の画素は、濃度を表す信号値が50である画素を表す。また、画像401の白の画素は、信号値が0である画素であることを表している。図4(b)の部分画像402は、画像401におけるオブジェクトのエッジ部を含む3×3の画素の部分画像を表している。エッジ強調処理では、処理対象の画素ごとに処理が行われ、処理対象の画素の信号値が修正される。図4(b)のエッジ部の部分画像402を構成する3×3の画素のうち、処理対象の画素となるのは太線の矩形で表されている中心の画素である。図4(c)は、処理対象の画素の画素値を修正するための、処理対象の画素を含む3×3の各画素の重みを示している。
【0051】
エッジ強調処理では、図4(b)に示す処理対象の画素を含む3×3の画素の部分画像402に、図4(c)に示す3×3の重みを画素ごと掛けて、その結果得られた値を足し合わせることで処理対象である中心画素の修正後の信号値を得る。従って、部分画像402の場合、次式のように、修正後の画素値として、100が得られる。
【0052】
(中心画素の信号値)=50×0+50×(-1)+0×0+50×(-1)+50×5+0×(-1)+50×0+50×(-1)+0×0=100
この結果、部分画像402の中心画素の信号値は、エッジ強調処理を行う前の50から100に修正される。エッジ強調処理の結果、図4(d)の部分画像403が示すように、エッジ部を示す部分画像の中心画素は濃くなるように修正される。この処理を、処理対象の画素値が画像401内の全ての画素になるように行うことで、図4(a)の画像401を、図4(e)の画像404に示すようなエッジ部を濃くなるようにエッジを強調することができる。
【0053】
C版のエッジ強調処理と同様に、M版、Y版、K版の各色版についても処理することができる。また、RGBデータなど別の色空間に対しても同様に処理することができる。
【0054】
[プリント処理]
カラーページの画像をモノクロで印刷する指定は、プリンタドライバ202によってホストPC119の表示部(不図示)に表示されるUI画面を介してユーザによって指定される。また、モノクロ印刷が選択された場合、ユーザは、弁別性を向上させるモノクロ画像への変換をするか否かを、UI画面を介して選択することができる。
【0055】
ホストPC119のプリンタドライバ202においてモノクロ印刷が指定された場合、アプリケーション201またはプリンタドライバ202でカラーからグレーへの変換が行われてもよい。しかし、弁別性向上させるモノクロ印刷が指定された場合、画像形成装置101へはカラー画像を表すPDLデータが入力される。理由としては、弁別性向上させる処理を画像形成装置101で行わせるためである。
【0056】
弁別性向上させる処理では、画像内の文字、図形に用いられるカラーの色値、例えば、R、G、Bの信号値(RGB値)を全て抽出する。抽出されたカラーの色値から変換されたグレー値を、グレー値として取りうる値の中で所定の間隔をあけて割り当てる処理が行われる。画像全体のRGB値を全て抽出するには、RIP処理実行後のラスタ画像に対して画素ごとにRGB値を取得していくよりも、RIP処理実行前のPDLで記述されているコマンドから、オブジェクト単位にRGB値を抽出する方が効率がよい。さらに、RGB値に対応するグレー値への変換も画素単位で行うよりもPDLで記述されているオブジェクト単位で該当するRGB値を所望のグレー値に一括で変換する方が効率よく処理できる。
【0057】
このように、本実施形態では、モノクロ画像でのオブジェクトの弁別性が向上するように、色変換後のグレー値の差が所定値以上となるようにグレー値を修正する調整を行う。しかしながら、グレー値調整の結果、グレー値調整前よりもグレー値の差が小さくなることがあり、その結果弁別性が低下してしまうオブジェクトが存在してしまうことがある。
【0058】
そこで本実施形態では、弁別性向上のためのグレー値調整の結果、グレー値の差が小さくなることによる弁別性が低下したオブジェクトがあるかを判定する弁別性低下判定処理が行われる。弁別性低下判定処理において弁別性が低下したと判定されなかったオブジェクトに対してはRIP処理時に調整されたグレー値でカラーからグレーへの変換が行われる。一方、弁別性が低下したと判定されたオブジェクトに対しては、カラーでRIP処理を行い、エッジ強調後にグレー化を行う方法を説明する。弁別性向上処理が適用されない写真のようなイメージのオブジェクトについては、カラーのオブジェクトとしてRIP処理され、エッジ強調前にグレーへ変換される。
【0059】
図5は、本実施形態に係る画像形成装置101内でのプリント処理の流れを示すフローチャートである。図5のフローチャートは、弁別性向上させるモノクロ出力への変換が指定された場合のプリント処理について説明するものである。
【0060】
図5に示すフローチャートが示す一連の処理は、CPU105がROM106に記憶されたプログラムをRAM107に展開し実行することによって実現される。また、図5におけるステップの一部または全部の機能をASICや電子回路等のハードウェアで実現してもよい。なお、各処理の説明における記号「S」は、当該フローチャートにおけるステップであることを意味し、以後のフローチャートにおいても同様とする。
【0061】
S501においてコマンド判別部203は、ネットワークI/F115を介してホストPC119からPDLデータを印刷データとして取得する。
【0062】
S502においてコマンド解析部204は、S501で取得されたPDLデータに含まれる描画コマンドおよび制御コマンドを解析する。例えば、コマンド解析部204は、制御コマンドから、カラーモードの指定の有無、弁別性向上処理の指定の有無などの情報を取得する。また、コマンド解析部204は、描画コマンドから印刷データ内の各オブジェクトの属性などを取得する。本ステップの結果、印刷時のカラーモードはモノクロモードであり、弁別性向上させるモノクロ印刷が指定されていることが取得されたものとする。
【0063】
そして、S503ではカラーの色値をグレー値へ変換して、変換されたグレー値を調整する処理が行わる。そして、S504では、弁別性低下判定処理が実行される。
【0064】
[グレー値への変換及びグレー値の調整について]
図6(a)は、S503で実行される処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【0065】
S601において画像処理部205は、S501で取得されたPDLデータに含まれる描画コマンドから、図形属性および文字属性のオブジェクトに対応する色設定コマンドで指定されている異なるカラーの色値(RGB値)を抽出する。そして、画像処理部205は、抽出したRGB値を、色値リストに追加する。
【0066】
図7(a)は、色値リスト700を示す図である。色値リスト700は、抽出されたRGB値を識別するためのindexを保持する列701と、抽出されたRGB値(入力輝度値)を保持する列703を有する。また、抽出されたRGB値に対応するオブジェクトの名称を保持する列702がある。indexの値は「i」で示すものとする。
【0067】
S601では、最暗色である黒を表すRGB値(0,0,0)が色値リスト700の0番目(i=0)の色値として追加される。このため、列701に「0」が、列703の入力輝度値として(0,0,0)が、追加される。
【0068】
そして、図3(a)の描画コマンド300の場合、画像処理部205は、まず「A」の文字オブジェクト311のRGB値として(255,50,255)を抽出する。そして、抽出されたRGB値は、1番目(i=1)の入力輝度値として、色値リスト700の行311の列703に追加される。図7(a)の色値リスト700では、オブジェクトに対応する行には、そのオブジェクトの符号と同一の符号を付している。
【0069】
同様に、「B」の文字オブジェクト312、「C」の文字オブジェクト313、丸の図形オブジェクト314、円グラフを構成する扇型の図形オブジェクト315~318のRGB値が、入力輝度値として色値リストに追加される。最後に、背景色として白を表すRGB値(255,255,255)が9番目(i=9)の色値として追加される。全ての色値が追加された色値リスト700はRAM107に保存される。以上の処理により、ページ内の異なる色の数の合計が9個である色値リスト700が生成される。このように色値リスト700は、描画対象のページ毎に生成される。
【0070】
S602において画像処理部205は、RAM107に保存された色値リスト700の列703に保持されている入力輝度値を読み出して、NTSC変換により、輝度値をグレー値として算出する。なお、グレー値は輝度値に限られない。
【0071】
NTSC変換では、式1に示すように、RGB値における各色成分に重みづけすることで、RGB値からグレー値が算出される。RはR成分の信号値、GはG成分の信号値、BはB成分の信号値である。
【0072】
輝度値=0.299×R+0.587×G+0.114×B(式1)
例えば、indexが「1」(i=1)の入力輝度値をNTSC変換すると、
0.299×255+0.587×50+0.114×255=135
と算出される。i番目の入力輝度値(RGB値)から算出された輝度値は、NTSC輝度値ntsc[i]として色値リスト700の列704に追加される。列703に保持されている全ての入力輝度値に対して同様の演算を行い、NTSC輝度値ntsc[i]が算出される。
【0073】
図8(a)は、図3(a)の描画コマンド300の色値を全てNTSC輝度値に変換してから生成されたモノクロの画像801を示している。円グラフを構成する扇形の図形オブジェクト315~318のグレー値の差が小さいため、図3(b)のカラーのラスタ画像310に比べて、オブジェクトどうしを弁別できない画像となっている。また、「C」の文字オブジェクト313、「A」の文字オブジェクト311、および「B」の文字オブジェクト312どうしも、グレー値の差が小さいため、グレーでの弁別できていない画像となっている。
【0074】
S603において画像処理部205は、RAM107に保存された色値リスト700を読み出す。そして色値リスト700を、列704に保持されたNTSC輝度値を基準に昇順(または降順)にソートして並び変える。そして、ソート後の色値リストでは新たにindexを割り当てる。ソート後のindexは、「0」から順に、暗い(濃い)グレーを表す輝度値に対応付けるように割り当てるものとして説明する。
【0075】
画像処理部205は、ソート前のindexとソート後のindexを紐づける不図示のデータを生成し、RAM107に保存する。図7(a)の色値リスト700は、列704においてNTSC輝度値がすでに昇順で保持されているため、ソート前後でデータの並び順に変化は無い。以下の説明では、列701に保持されているindexは、ソート後およびソート前のindexの値を表すものとする。また、列704に保持されているNTSC輝度値ntsc[i]は、ソート処理後のindex「i」に対応するNTSC輝度値であるものとして説明する。
【0076】
S604において画像処理部205は、RAM107に保存された色値リスト700における、indexの値が小さい方から順に列704に保持されているNTSC輝度値ntsc[i]を読み出す。そして、読み出されたNTSC輝度値ntsc[i]と、次のindexに対応付けられたNTSC輝度値ntsc[i+1]と、の隣り合う輝度値どうし差分値であるNTSC輝度差diffb[i]を式2に基づき算出する。NTSC輝度差diffb[i]は、色値リスト700の列705に保持される。
【0077】
diffb[i]=ntsc[i+1]-ntsc[i] (式2)
図7(a)の色値リスト700の場合、列704に保持されているNTSC輝度値から、diffb[0]およびdiffb[1]は次のように算出される。
【0078】
diffb[0]=ntsc[1]-ntsc[0]=135-0=135
diffb[1]=ntsc[2]-ntsc[1]=138-135=3
色値リスト700の列701に保持されているindexがN番目(i=N)まである場合には、diffb[N-1]までNTSC輝度差が算出される。
【0079】
S605において画像処理部205は、色値リスト700に保持されているindexに対応する弁別性調整後輝度値bw[i]を算出する。本ステップの説明は、図7(b)の弁別調整リスト710を用いて説明する。弁別調整リスト710における列701および列705は、色値リスト700の列701および列705と同じデータが保持されている。
【0080】
はじめに、画像処理部205は、RAM107に保存されているNTSC輝度差diffb[i]を、indexが小さい値に対応付けられているものから順に読み出す。そして、読み出したNTSC輝度差と予め定められROM106に保存された弁別閾値thresとを比較する。弁別閾値thresは、ある輝度値と値が最も近い輝度値と弁別性を確保するために設定された値であり、NTSC輝度値が0から255の値を取り得る場合、例えば、弁別閾値thresは「17」として設定される。
【0081】
画像処理部205は、NTSC輝度差diffb[i]と弁別閾値thresとの差である余剰不足left[i]を、式3を用いて算定する。
【0082】
diffb[i]-thres=left[i](式3)
diffb[i]が弁別閾値thresよりも大きければ、余剰不足left[i]として正の値が得られる。余剰不足left[i]が正の値の場合は余剰とよぶ。弁別閾値thresよりも小さければ余剰不足left[i]として負の値が得られる。余剰不足left[i]が負の値の場合は不足とよぶ。次に、余剰と不足の調整を行うため、余剰の和margin_sumと不足の和shоrt_sumを求める。
【0083】
色値リスト700では、Indexの「0」に対応するNTSC輝度差diffb[0]は「135」であり弁別閾値thresの「17」より大きい。このため、left[0]=135―17=118として余剰が算出される。同様に、left[3]=49-17=32、left[8]=55-17=38により余剰が算出される。この結果、余剰の和margin_sumは、
diffb[0]+left[3]+left[8]=118+32+38=188
と求められる。
【0084】
一方、不足の和shоrt_sumは、
left[1]+left[2]+left[4]+left[5]+left[6]+left[7]
=(-14)+(-15)+(-11)+(-16)+(-16)+(-14)
=-86
と求められる。
【0085】
次に、画像処理部205は、余剰不足left[i]が弁別閾値thres以上となるように、余剰から不足へ輝度差を割り当てる処理を行う。余剰から不足への割り当て量は、次の式4に基づき、余剰の比率に応じて決定する。
【0086】
割り当て量[i]=-shоrt_sum×left[i]/margin_sum
(式4)
left[0]からは、86×118/188=54により54を割り当てると決定される。left[3]からは、86×32/188=15により54を割り当てると決定される。left[8]からは、86×38/188=17により17を割り当てると決定される。
【0087】
このように決定された割り当て量に基づき、調整後の余剰不足lefta[i]を算出する。画像処理部205は、余剰不足left[i]が正の値(余剰)であった場合の調整後の余剰不足lefta[i]を次の式5に基づき算出する。
【0088】
lefta[i]=diffb[i]-割り当て量[i] (式5)
図7(b)の弁別調整リスト710で、正の値であった余剰不足left[i]に対応するindexは「0」、「3」、「8」であるため、それぞれの調整後の余剰不足lefta[i]は、
lefta[0]=135―54=81、
lefta[3]=49―15=34
lefta[8]=55―17=38
となる。
【0089】
さらに、画像処理部205は、余剰不足left[i]が負の値(不足)であった場合の調整後の余剰不足lefta[i]を次の式6に基づき算出する。
【0090】
lefta[i]=thres (式6)
図7(b)の弁別調整リスト710では、負の値であった余剰不足left[i]に対応するindexは、「1」、「2」、「4」、「5」、「6」、「7」である。このため、調整後の余剰不足lefta[1]、lefta[2]、lefta[4]、lefta[5]、lefta[6]、lefta[7]はそれぞれ、lefta[i]=17と算出される。
【0091】
そして、画像処理部205は、弁別性を向上させるための輝度値である弁別性調整後輝度値bw[i]を算出する。
【0092】
i=0の場合は、式7に基づき弁別性調整後輝度値bw[0]が算出される。
【0093】
bw[0]=ntsc[0](式7)
その他の弁別性調整後輝度値bw[i]は、式8を用いて算出される。
【0094】
bw[i]=bw[i―1]+lefta[i](式8)
図7(b)の弁別調整リスト710に保持されている値の場合、例えば、bw[1]およびbw[2]は次のように算出される。
bw[1]=bw[0]+lefta[0]=0+81=81
bw[2]=bw[1]+lefta[1]=81+17=98
同様に、bw[3]=115、bw[4]=149、bw[5]=166、bw[6]=183、bw[7]=200、bw[8]=217、bw[9]=255と算出される。画像処理部205は、算出された弁別性調整後輝度値bw[i]を、色値リスト700の列706に保持させる。
【0095】
また、S604の結果算出された弁別性調整後輝度値bw[i]に基づき、修正前の出力輝度値が算出され保存される。修正前の出力輝度値のR、G、Bのそれぞれの信号値は、列708に示すように、R=B=G=bw[i]として決定される。
【0096】
図8のモノクロの画像802は、図3(a)の描画コマンド300の色値が弁別性調整後輝度値に調整されてから生成され画像を示している。モノクロの画像801に比べて、円グラフ内の扇形の図形オブジェクト315~318の区別がつくため、弁別性が向上していることがわかる。また、「C」の文字オブジェクト313、「A」の文字オブジェクト311、および「B」の文字オブジェクト312どうしも、グレー値差がついている。一方で、「C」の文字オブジェクト313と丸の図形オブジェクト314については、NTSC輝度値のときよりも、弁別性調整後輝度値の方が輝度差は小さくなっている。このため、「C」の文字オブジェクト313と丸の図形オブジェクト314との弁別性は低下したように感じられる。このように、輝度値に差をつけるように輝度値を調整する処理だけでは、弁別性が十分に向上しないこともある。
【0097】
S606において画像処理部205は、RAM107に保存された色値リスト700の列706に保持されている弁別性調整後輝度値bw[i]を読み出し、弁別性調整後輝度差diffa[i]を次の式9に基づき算出する。弁別性調整後輝度差diffa[i]は、色値リスト700の列707に保持される。
【0098】
diffa[i]=bw[i+1]-bw[i](式9)
図7(a)の色値リスト700の列706に保持されている弁別性調整後輝度値の場合、diffb[0]は、
diffa[0]=bw[1]-bw[0]=81-0=81
と算出することができる。
【0099】
または、S605の処理の過程で算出された調整後の余剰不足lefta[i]は、diffa[i]と同じである。このため、画像処理部205は、調整後の余剰不足lefta[i]を保存しておいて、保存しておいたlefta[i]をdiffa[i]の値として用いてもよい。
【0100】
[弁別性低下判定処理について]
図6(b)は、S504で実行される、弁別性低下判定処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【0101】
S611~S615はループ処理である。S611では、処理対象のindexを示す「i」を選択する。はじめは、「i」を「0」に設定する。S612~S614では処理対象のindexの「i」に対する演算を行い、その処理を、0≦i≦Nの間、「i」をインクリメントしながら繰り返す。
【0102】
S612において画像処理部205は、RAM107に保存された色値リスト700の列705および列707から、処理対象の「i」のNTSC輝度差diffb[i]と弁別性調整後輝度差diffa[i]とを読み出す。そして、画像処理部205は、輝度差の変化量を次の式10により算出する。
【0103】
変化量=diffb[i]―diffa[i](式10)
画像処理部205は、算出した変化量と閾値thとを比較する。閾値thは0として説明する。変化量>0であれば、S605の輝度値調整の結果、調整前よりも、値が近い輝度値どうしの輝度差が小さくなっていることを意味する。また、変化量≦0であれば、値が近い輝度値どうしの輝度差は、輝度値調整の結果が大きくなっているか、変化が無かったことを意味する。
【0104】
S612において画像処理部205は、変化量>閾値と判定した場合(S612がYES)、S613へ処理を進める。輝度値調整の結果、輝度差が小さくなると、小さくなった輝度差を構成する輝度値に対応するオブジェクトは、弁別性が低下していることがある。このためS613では、小さくなった輝度差に対応するオブジェクトのエッジを強調するための準備が行われる。
【0105】
S613において画像処理部205は、色値リスト700に保持されている現在の処理対象の「i」に対応する修正前の出力輝度値оut[i]を読み出す。そして、画像処理部205は、R=G=B(以後、RGB等量)の出力輝度値を、R≠G≠B(以後、RGB非等量)に修正する。色値リスト700の列709には、修正後の出力輝度値を示しているが、列708の修正前の出力輝度値を修正後の出力輝度値に上書きしてもよい。画像処理部205は、さらに、修正前の出力輝度値оut[i+1]を読み出し、RGB等量の出力輝度値を、RGB非等量に修正する。白および黒に対してエッジ強調を行っても変化はないため、黒のоut[0]と白のоut[9]については修正の対象外とする。
【0106】
出力輝度値の修正の目的について説明する。RGB等量のRGB値(出力輝度値)が表す色はグレーである。このため、後述するRGB色空間からCMYK色空間への色変換処理では、グレーを表すRGB値は(0,0,0,K)に変換される。本明細書では、CMYK色空間の色値を(C版の信号値,M版の信号値,Y版の信号値,K版の信号値)で表す。
【0107】
一方、RGB非等量のRGB値が表す色はカラーの色である。このため、RGB色空間からCMYK色空間への色変換の処理では、RGB非等量のRGB値は(C,M,Y,0)に変換される。そして、後続の処理であるエッジ強調処理では、C、M、Yの版にのみにエッジを強調する処理が行われる。このため、S608で修正が行われたRGB値(出力輝度値)に対応するオブジェクトにのみエッジを強調させることができる。詳細は後述する。
【0108】
図7(a)の色値リスト700の場合、変化量>0と判定されるのは、処理対象の「i」が、「0」、「3」、または「8」の場合である。また、黒のоut[0]と白のоut[9]については修正の対象外となる。このため、S613における修正処理の対象となる出力輝度値は、оut[1]、оut[3]、оut[4]、оut[8]となる。
【0109】
例えば、S613において出力輝度値の修正対象となる「C」の文字オブジェクト313に対応する修正前の出力輝度値оut[3]は、(115,115,115)である。この出力輝度値がRGB非等量に修正される。修正の方法として、NTSC変換された場合の値が、弁別性調整後輝度値bw[3]の「115」になるようなR、G、Bの組み合わせとなるように修正前の出力輝度値оut[3]をRGB非等量に修正する。例えば、(115,115,115)は、(121,111,121)に修正される。同様に、「A」の文字オブジェクト311、丸の図形オブジェクト314、円グラフを構成する扇形の図形オブジェクト318の出力輝度値についても、RGB非等量の値に修正されることになる。色値リスト700の列709において太字で示された出力輝度値が修正後の輝度値である。
【0110】
このように、処理対象の「i」に対応する出力輝度値оut[i]だけでなく出力輝度値оut[i+1]も、エッジ強調の対象とするため修正対象として選択される。出力輝度値оut[i+1]に対応するオブジェクトも、エッジ強調の対象とする理由について、図8の画像803を用いて説明する。
【0111】
図8の画像803は、画像802のうち、「A」の文字オブジェクト311、「C」の文字オブジェクト313、丸の図形オブジェクト314、円グラフの扇形の図形オブジェクト318に対してエッジ強調された画像を示している。本実施形態の弁別性低下判定処理では、オブジェクトの位置関係を把握するための処理は行われない。弁別性調整後輝度値をソートした場合に隣り合う2つの輝度値の差が低下した場合に、当該2つの輝度値に対応するオブジェクトのエッジを強調する処理が行われるようにすることで弁別性を向上させる。
【0112】
ここで、「C」の文字オブジェクト313と丸の図形オブジェクト314に着目して説明する。処理対象の「i」に対応する出力輝度値оut[i]だけが、エッジ強調ために修正されるものすると、丸の図形オブジェクト314の出力輝度値は修正されるが、「C」の文字オブジェクト313の出力輝度値は修正されないということが起こり得る。例えば、「C」の文字オブジェクト313の出力輝度値がоut[4]であり、丸の図形オブジェクト314の出力輝度値がоut[3]であった場合に「C」の文字オブジェクト313の出力輝度値が修正されないことになってしまう。出力輝度値が修正されないと、「C」の文字オブジェクト313のエッジは強調されないため、「C」の文字オブジェクト313の弁別性が低下したままの状態とユーザに感じさせてしまう。このため、S613は、出力輝度値оut[i+1]も、エッジ強調の対象とするため出力輝度値の修正対象として選択される。
【0113】
S613の処理が完了するとS614へ進む。また、画像処理部205は、変化量≦閾値と判定した場合(S612がNO)、S614へ処理を進める。変化量≦閾値の場合、弁別性を向上させるためのエッジ強調は不要である。このため、S613はスキップする。S614において画像処理部205は、現在のiに1を足して得らえた値を新たなiとする処理を行って、処理対象の「i」を更新する。
【0114】
以上でS504の弁別性低下判定の処理が完了し、色値リスト700の列709に修正後の出力輝度値が保持されて、色値リスト700がRAM107に保存される。なお、図7(a)の色値リスト700に保持されている値のうち、後続の処理で用いる値は、列703の入力輝度値と列709の修正後の出力輝度値のみであるため、不要な値は保存されなくてもよい。
【0115】
[弁別性が低下したオブジェクトに対するエッジ強調]
図5に戻り、図5のフローチャートの説明を続ける。S505においてコマンド実行部206は、RIP処理を実行し、画像データを、PDLデータからラスタ画像のデータへ変換する。RIP処理においてコマンド実行部206は、RAM107に保存された色値リスト700を読みだして、色値リスト700を参照しながら入力輝度値であるRGB値を、修正後の出力輝度値であるRGB値に変換しながら、ラスタ画像を生成する。この結果、弁別性が低下したと判定されたオブジェクトとイメージのオブジェクトはカラー、それ以外はグレーのラスタ画像が生成される。
【0116】
S506において色変換処理部211は、S505で生成されたラスタ画像のうち、文字、および図形などのグラフィックのオブジェクトに対して、RGB色空間の色値からCMYK色空間の色値への色変換を行う。本ステップで行う色変換を色変換1とよぶ。
【0117】
色変換1において、ラスタ画像の画素のうち、RGB値がRGB等量であるグレーを表す画素のRGB値については、(0,0,0,K)のようにK版のみの色値へ変換される。K版の信号値であるKは、弁別性調整後輝度値を反転した値、すなわちK=255―bw[i]を算出することで決定される。
【0118】
一方、RGB値がRGB非等量であるカラーを表す画素のRGB値については、(C,M,Y,0)のように、K版以外の色値へ変換される。C版、M版、Y版の各版の信号値であるC、M、Yは、C+M+Yが弁別性調整後輝度値を反転した値、すなわち、C+M+Y=255-bw[i]となるように算出することで決定される。
【0119】
具体的には、イメージ以外のオブジェクトの画素のうち、RGB非等量のRGB値を色変換1により色変換する場合、まず、RGB値は、式1により輝度値に変換される。そして、255から算出された輝度値を引いて得られた値(A値とよぶ)が、C+M+YとなるようにC、M、Yの各値が決定される。
【0120】
C、M、Yの各値の決め方は限定されない。例えば、A値を3等分してC、M、Yの各値が均等になるように値を割り当てることで決定してもよい。または、A値を2等分して、CおよびM、またはMおよびY、またはCおよびYにのみに割り当て、その他は0とすることで決定してもよい。または、A値を、Cのみ、またはMのみ、またはYのみに割り当て、その他2つは0とする方法により決定してもよい。
【0121】
また、イメージオブジェクトに対しては、通常のグレー変換を行う。例えば、R,G,Bに重みづけをして輝度値を算出後、算出した輝度値を反転することで濃度信号値であるK版の信号値へ変換する。
【0122】
S507においてフィルタ処理部212は、図8(c)に示すフィルタを用いてエッジ強調処理を行う。S507では色版ごとに、C版、M版、Y版だけにフィルタ処理を行い、K版にはフィルタ処理を行わない。S504の弁別性低下判定処理におけるS613の出力輝度値の修正処理において、出力輝度値の修正が行われたオブジェクト以外の画素の色値は、色変換1の結果、K単色の色値に変換されている。このため、S507では、C版、M版、Y版だけにフィルタ処理を行うことで、画像803のように、出力輝度値の修正が行われたオブジェクト以外にはエッジ強調がかからないようにすることができる。一方で、S613で出力輝度値の修正処理が行われたオブジェクトは、C版,M版,Y版の色に色変換されているため、エッジ強調が行われる。
【0123】
S508において色変換処理部211は、ラスタ画像において、全ての画素の色値が(0,0,0,K)となるように色値を変換する色変換処理を行う。S508の色変換を色変換2とよぶ。
【0124】
例えば、現在の信号値をそれぞれ、C版の信号値をC、M版の信号値をM、Y版の信号値をY、K版の信号値をKで表すと、色変換処理部211はC+M+Y+Kが色変換後のK版の信号値となるように、K版の信号値を決定する。これにより、色変換1で(0,0,0,K)に変換されている画素の信号値は、色変換2の実行後も(0,0,0,K)となる。一方、色変換1で(C,M,Y,0)に変換されている画素の信号値については色変換2によって(0,0,0,C+M+Y)に変換される。色変換1において(0,0,0,K)における信号値Kおよび、および(C,M,Y,0)における信号値C+M+Yは、255-bw[i]となるように変換されている。このため、S508の色変換2の結果、イメージ以外のオブジェクトのK版の信号値は、弁別性調整後輝度値bw[i]を反転した値となる。
【0125】
また、S507でエッジ強調されたオブジェクトのエッジ部の画素の色値は、フィルタ処理による信号値の増加量をαとすると、(0,0,0,C+M+Y+α)と濃くなる。このため、図8の画像803に示すように、オブジェクトのエッジが強調されたモノクロ画像とすることができる。
【0126】
なお、S506の色変換1で、RGB等量の値は(C,0,0,0)と変換し、RGB非等量の値は(0,M,Y,K)と変換してもよい。その場合、S507のエッジ強調ではM版、Y版、K版の各版のみにエッジ強調を行い、C版にはエッジ強調を行わないことで同様の効果を得ることができる。このように、通常のモノクロ化で生成された場合の画像801に対して、グレー調整およびエッジ強調処理が実行されることにより、弁別性が向上した画像803が生成される。
【0127】
S509においてCPU105は、受信した印刷データの全ページに対して処理が完了したか否かの判定を行う。未処理のページが残っていたら、処理対象のページを次のページとして、S502~S508の処理を再度行う。また、全ページ分の処理が完了している場合、本フローチャートは終了する。
【0128】
以上説明したように本実施形態においては、異なる入力輝度値から変換される全てのグレー値に対して弁別閾値以上のグレー値差をつけることができる。さらに、通常のモノクロ変換した場合よりもよりグレー値差が小さくなったオブジェクトにはエッジ強調による縁取りが行われる。このように、弁別性向上のためのグレー値調整によって、通常のモノクロ化よりも弁別性が低下した様に感じられるオブジェクトにはエッジを強調することができる。このため本実施形態によれば、グレー値が近いオブジェクト同士が重なり(隣)合っている場合でも、適切に弁別を向上させることが可能となる。また、本実施形態では、隣接領域の判定を行わずにモノクロ画像の弁別性を向上させることができるため、隣接領域の判定を行うための専用のハードウェアを導入しなくてもよい。
【0129】
また、オブジェクトのエッジ強調のみでは、互いに接触しているオブジェクトに対しては弁別性を向上させることができるが、離れているオブジェクトどうしが似たグレーになっているオブジェクトの弁別性を向上させることができない。一方、本実施形態のグレー値調整によれば、隣接していないオブジェクトどうしの弁別性を向上させることができる。このため、本実施形態のように、グレー値調整とエッジ強調処理を組み合わせて処理を行うことで、適切に弁別を向上させることが可能となる。
【0130】
<実施形態2>
本実施形態では、弁別性向上のためのグレー値調整後、全てのオブジェクトがモノクロに変換された上で、対象のオブジェクトに対してエッジ強調する処理を行う方法を説明する。RIP処理後において、モノクロ画像しか扱えないような場合、本実施形態の方法により弁別性を向上させることができる。本実施形態については、実施形態1からの差分を中心に説明する。特に明記しない部分については実施形態1と同じ構成および処理である。
【0131】
はじめに、図3(c)に示す、ラスタ画像310と同じ主福の画素数をもつ画像である属性情報320を生成する処理である属性情報生成処理について説明する。図5のS502の解析処理では、描画コマンドから抽出されたオブジェクトごとに、抽出されたオブジェクトと、そのオブジェクトの属性を表す8ビットの属性値が対応付けられた属性リストが生成される。そして、S505のRIP処理では、描画したオブジェクトに対応付けられている属性値を属性リストから取得して、描画したオブジェクトと同じ位置の画素に、取得した属性値を付与する。このように処理することで属性情報320が生成される。
【0132】
図9は、本実施形態の弁別性低下判定処理の流れを示すフローチャートである。S911、S912、S914、S915は、それぞれS611、S612、S614、S615と同様であるため説明を省略する。
【0133】
本実施形態では、S912において画像処理部205が変化量>閾値と判定した場合(S912がYES)、S913において画像処理部205は、属性リストにおいて、処理対象の「i」に対応するオブジェクトの属性値を修正するための処理を行う。
【0134】
文字属性を表す属性値は、「00100111」が設定されており、下位bitから順に0bit目、1bit目、2bit目、5bit目に「1」が立っている。本実施形態では、属性値の3bit目を弁別性低下判定用のビットとして用いる。例えば、3bit目が「0」であれば弁別性の低下なし、3bit目が「1」であれば弁別性の低下ありを示すことにする。
【0135】
S913において画像処理部205は、属性リストに保持されている現在の処理対象のindex「i」に対応するオブジェクトに対応付けられている属性値を読み出し、属性値の3bit目を「1」に修正する。画像処理部205は、さらに、属性リストに保持されているindex「i+1」に対応するオブジェクトに対応付けられている属性値を読み出し、属性値の3bit目を「1」に修正する。このように、弁別性が低下したオブジェクトの属性値を修正する。
【0136】
この結果、「A」の文字オブジェクト311と、「C」の文字オブジェクト313の属性値は、「00100111」から「00101111」に修正される。丸の図形オブジェクト314と円グラフを構成する扇形の図形オブジェクト318の属性は、「00100011」から「00101011」に修正される。
【0137】
そして本実施形態におけるS505においてコマンド実行部206は、色値リスト700を用いてRIP処理を行う。ただし、本実施形態の色値リスト700には、図7(a)の列709のような修正後の出力輝度値は保持されていない。このため、コマンド実行部206は、入力輝度値であるRGB値を、列708に保持されている修正前の出力輝度値であるRGB等量のRGB値に変換しながら、ラスタ画像を生成する。また、イメージオブジェクトもRIP処理時にグレー化を行う。
【0138】
この結果、全てのオブジェクトの色がグレーであるラスタ画像が生成される。以降のステップ処理へはK版のみのラスタ画像が送られる。即ち、画素値が輝度値であるK版のラスタ画像が次の処理へ送られる。さらに、本実施形態のS505では、属性値が修正された属性リストに基づき属性情報320が生成される。
【0139】
S506において色変換処理部211は、ラスタ画像の各画素の色値を、輝度空間の色値から濃度空間の色値への色変換を行う。ラスタ画像の現在の色値である輝度値をGrayで表すと、色変換処理部211は、255―Grayの濃度値へ変換する。
【0140】
S507においてフィルタ処理部212は、エッジ強調を行う。本実施形態のS507では、属性情報320がRAM107から読み出され、画素毎に、属性値の3bit目が1かどうかの判定が行われる。フィルタ処理部212は、属性値の3bit目が1である画素に対応するラスタ画像の画素を処理対象の画素として順次選択して、フィルタ処理を行うことでエッジ強調を行う。
【0141】
本実施形態では、RIP処理後のラスタ画像は、すでにグレーの画像であるため、色変換2の処理は不要であるためS508はスキップされる。
【0142】
以上説明したように本実施形態によれば、RIP処理後にはグレー画像しか扱えない画像処理装置、またはモノクロ出力時には高速な処理を必要とする場合にも、適切に弁別を向上させることが可能となる。
【0143】
<その他の実施形態>
なお、エッジ強調の程度、S504の弁別性低下判定において弁別性が低下したかを判定するための閾値thについては、不図示のUI画面からのユーザ設定に応じて変更できるようにしてもよい。このように設定を変更可能とすることにより、弁別性が優先するようにエッジがはっきりと強調された画像としたいユーザから、エッジが強調されることを好まないが一定の弁別性は確保したいユーザまで対応することが可能となる。
【0144】
本開示は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0145】
<その他>
なお、上述した実施形態の開示は、以下の構成を含む。
【0146】
(構成1)
カラーの画像をモノクロで印刷するための画像処理装置であって、
PDLデータを取得する取得手段と、
前記PDLデータにおいてオブジェクトごとに指定されている複数の色を表す複数の色値それぞれを、グレー値に変換する変換手段と、
複数の前記変換されたグレー値をソートした場合に隣り合うグレー値の組み合わせの差分が、所定の値以上になるように、前記変換されたグレー値を調整する調整手段と、
前記調整の結果、差分が小さくなった前記組み合わせに対応するオブジェクトのエッジを強調する処理をする処理手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【0147】
(構成2)
前記PDLデータに基づき、ラスタ画像を生成する生成手段をさらに有し、
前記処理手段は、
前記ラスタ画像に対して、前記エッジを強調する処理をする
ことを特徴とする構成1に記載の画像処理装置。
【0148】
(構成3)
前記生成手段は、
前記差分が小さくなった前記組み合わせに対応するオブジェクトについてはカラーでRIP処理し、前記差分が小さくなった前記組み合わせに対応するオブジェクト以外のオブジェクトについてはグレーでRIP処理して前記ラスタ画像を生成し、
前記処理手段は、
前記ラスタ画像のカラーを表す色値に対して前記エッジを強調する処理をする
ことを特徴とする構成2に記載の画像処理装置。
【0149】
(構成4)
前記生成手段は、画素値がRGB値である前記ラスタ画像を生成し、
前記ラスタ画像のRGB値を、CMYKの各版の信号値に変換する第1の色変換手段をさらに有し、
前記処理手段は、CMYKの各版のうちの前記差分が小さくなった前記組み合わせに対応するオブジェクトの信号値が含まれる版に対してのみ前記エッジを強調する処理を行い、
前記エッジを強調する処理がされた後の信号値を、K版の信号値に変換する第2の色変換手段をさらに有する
ことを特徴とする構成2または3に記載の画像処理装置。
【0150】
(構成5)
前記オブジェクトの信号値が含まれる版は、CMYの版であり、
前記処理手段は、CMYの版に対して前記エッジを強調する処理を行う
ことを特徴とする構成4に記載の画像処理装置。
【0151】
(構成6)
前記調整されたグレー値は、RGBの信号値が等量であるRGB値で表され、
前記差分が小さくなった前記組み合わせに対応するオブジェクトの前記調整されたグレー値を表すRGB値を、信号値が非等量であるRGB値に修正する修正手段をさらに有し、
前記第1の色変換手段は、
前記信号値が等量のRGB値については、K版の信号値に変換されるように色変換を行い、前記信号値が非等量のRGB値については、CMYの版の信号値に変換されるように色変換を行う、
ことを特徴とする構成5に記載の画像処理装置。
【0152】
(構成7)
前記信号値が非等量であるRGB値は、前記変換手段によって用いられる変換方法でグレー値に変換されると、前記調整されたグレー値となるRGB値である
ことを特徴とする構成6に記載の画像処理装置。
【0153】
(構成8)
前記RGB値は輝度値であり、CMYKの各版の信号値は濃度値であり、
前記第1の色変換手段は、
前記信号値が等量であるRGB値については、RGB値を構成する何れかの信号値を反転することでK版の信号値に変換し、
前記信号値が非等量であるRGB値については、CMYの版の信号値を足すと前記調整されたグレー値を反転した値となるようなCMYの版の信号値へ変換する
ことを特徴とする構成7に記載の画像処理装置。
【0154】
(構成9)
前記PDLデータに基づき、前記オブジェクトごとの属性を示す値が含まれる属性情報を生成する属性情報生成手段と、
前記差分が小さくなった前記組み合わせに対応するオブジェクトの前記属性を示す値に所定の情報が含まれるように、前記属性を示す値を修正する修正手段と、をさらに有し、
前記処理手段は、
前記所定の情報が含まれる前記属性を示す値に対応するオブジェクトのエッジを強調する処理をする
ことを特徴とする構成1または2に記載の画像処理装置。
【0155】
(構成10)
前記調整が行われる前の前記組み合わせのグレー値差と、前記調整が行われた後の前記組み合わせのグレー値差と、の差を比較して、前記調整の結果、前記差分が小さくなった前記組み合わせがあるかを判定する判定手段を有し、
前記処理手段は、
前記判定手段によって、グレー値の差分が小さくなったと判定された前記組み合わせに対応するオブジェクトのエッジを強調する処理をする
ことを特徴とする構成1から9のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【0156】
(構成11)
前記調整手段は、
前記変換されたグレー値を昇順または降順でソートした場合に隣り合う2つのグレー値を前記組み合わせとして、前記変換されたグレー値を調整する
ことを特徴とする構成1から10のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【0157】
(構成12)
前記変換手段は、複数の色成分の信号値それぞれに重みづけをすることでグレー値に変換する
ことを特徴とする構成1から11のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【0158】
(構成13)
前記処理手段は、
前記調整の結果、前記差分が閾値より小さくなった前記組み合わせに対応するオブジェクトのエッジを強調する処理をする
ことを特徴とする構成1から12のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【0159】
(構成14)
カラーの画像をモノクロで印刷するための画像処理装置であって、
PDLデータを取得する取得ステップと、
前記PDLデータにおいてオブジェクトごとに指定されている複数の色を表す複数の色値それぞれを、グレー値に変換する変換ステップと、
複数の前記変換されたグレー値をソートした場合に隣り合うグレー値の組み合わせの差分が、所定の値以上になるように、前記変換されたグレー値を調整する調整ステップと、
前記調整の結果、差分が小さくなった前記組み合わせに対応するオブジェクトのエッジを強調する処理をする処理ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【0160】
(構成15)
コンピュータに、構成1から13のいずれか1項に記載の画像処理装置の各手段を実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0161】
101 画像形成装置
220 画像処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9