(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162436
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】リアクタンス可変回路および当該回路を備えたインピーダンス整合装置
(51)【国際特許分類】
H01P 5/04 20060101AFI20241114BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H01P5/04 603E
H05H1/46 R
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077933
(22)【出願日】2023-05-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】392036326
【氏名又は名称】株式会社アドテックプラズマテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河田 悦郎
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084BB35
2G084DD57
(57)【要約】
【課題】コンパクトな構成で高電圧の通電が可能で、インピーダンスの整合が高速で行えるインピーダンス整合装置を提供する。
【解決手段】インピーダンス整合装置はリアクタンス可変回路を備える。リアクタンス可変回路は、主線路2と、主線路に疎結合した副線路3を含む疎結合線路部4と、副線路及びグランド5間に設けられた容量可変部6を備える。副線路の一端3aはグランドに接続される。容量可変部は、副線路の他端3b及びグランド5間に接続されたダイオード7と、副線路3の当該他端及びダイオード間においてダイオードに直列接続されたコンデンサ8と、コンデンサ及びダイオード間の接続点9とグランド5との間に接続され、ダイオードに逆バイアス電圧を印加する可変直流電源11と、当該接続点及びグランド間において、可変直流電源に直列接続された抵抗10を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主線路、および前記主線路に疎結合した副線路を含む疎結合線路部を備え、
前記疎結合線路部の前記副線路の一端がグランドに接続され、さらに、
前記疎結合線路部の前記副線路およびグランド間に設けられた容量可変部を備えたものであることを特徴とするリアクタンス可変回路。
【請求項2】
前記疎結合線路部の前記主線路は、直列接続された複数の主線路エレメントからなり、前記疎結合線路部の前記副線路は、並列接続された複数の副線路エレメントからなり、前記複数の副線路エレメントがそれぞれ前記複数の主線路エレメントのそれぞれに対向して配置されていることを特徴とする請求項1に記載のリアクタンス可変回路。
【請求項3】
前記疎結合線路部の前記主線路は、並列接続された複数の主線路エレメントからなり、前記疎結合線路部の前記副線路は、直列接続された複数の副線路エレメントからなり、前記複数の副線路エレメントがそれぞれ前記複数の主線路エレメントのそれぞれに対向して配置されていることを特徴とする請求項1に記載のリアクタンス可変回路。
【請求項4】
前記疎結合線路部の前記副線路は、互いに直列接続され、かつ前記主線路に対向して配置された複数の副線路エレメントからなっていることを特徴とする請求項1に記載のリアクタンス可変回路。
【請求項5】
前記疎結合線路部の前記主線路は、互いに直列接続され、かつ前記副線路に対向して配置された複数の主線路エレメントからなっていることを特徴とする請求項1に記載のリアクタンス可変回路。
【請求項6】
前記容量可変部が、
前記疎結合線路部の前記副線路の前記他端およびグランド間に接続されたダイオードと、
前記副線路の前記他端および前記ダイオード間において前記ダイオードに直列接続されたコンデンサと、
前記コンデンサおよび前記ダイオード間の接続点とグランドとの間に接続され、前記ダイオードに逆バイアス電圧を印加する可変直流電源と、
前記接続点およびグランド間において前記可変直流電源に直列接続された抵抗またはコイルと、を有していることを特徴とする請求項1に記載のリアクタンス可変回路。
【請求項7】
前記容量可変部が、
前記疎結合線路部の前記副線路の前記他端およびグランド間に接続されたダイオードと、
前記副線路の前記一端およびグランド間に接続されたコンデンサと、
前記副線路の前記一端および前記コンデンサ間の接続点とグランドとの間に接続され、前記ダイオードに逆バイアス電圧を印加する可変直流電源と、
前記接続点およびグランド間において前記可変直流電源に直列接続された抵抗またはコイルと、を有していることを特徴とする請求項1に記載のリアクタンス可変回路。
【請求項8】
入力端および出力端を有する伝送線路と、
前記伝送線路に設けられた請求項1~請求項7のいずれかに記載のリアクタンス可変回路と、を備え、
前記リアクタンス可変回路の前記疎結合線路部の前記主線路が前記伝送線路に直列に挿入されていることを特徴とするインピーダンス整合装置。
【請求項9】
前記伝送線路における前記入力端または前記出力端と前記リアクタンス可変回路との間から分岐して、グランドに接続した分岐線路と、
前記分岐線路に設けられた別の前記リアクタンス可変回路と、をさらに備え、
前記別のリアクタンス可変回路の前記疎結合線路部の前記主線路が前記分岐線路に直列に挿入されていることを特徴とする請求項8に記載のインピーダンス整合装置。
【請求項10】
前記伝送線路の前記入力端または前記出力端と前記リアクタンス可変回路との間に設けられた別の前記リアクタンス可変回路をさらに備え、
前記別のリアクタンス可変回路の前記疎結合線路部の前記主線路が前記伝送線路に直列に挿入され、さらに、
前記リアクタンス可変回路および前記別のリアクタンス可変回路間の接続点とグランドとの間に接続されたコイルを備えたことを特徴とする請求項8に記載のインピーダンス整合装置。
【請求項11】
入力端および出力端を有する伝送線路と、
前記伝送線路から分岐して、グランドに接続された分岐線路と、
前記分岐線路に設けられた請求項1~請求項7のいずれかに記載のリアクタンス可変回路と、を備え、
前記リアクタンス可変回路の前記疎結合線路部の前記主線路が前記分岐線路に直列に挿入されていることを特徴とするインピーダンス整合装置。
【請求項12】
前記伝送線路の前記入力端または前記出力端と前記分岐線路との間から分岐して、グランドに接続された別の分岐線路と、
前記伝送線路における前記分岐線路および前記別の分岐線路間に直列に挿入されたコイルと、
前記別の分岐線路に設けられた別の前記リアクタンス可変回路を備え、
前記別のリアクタンス可変回路の前記疎結合線路部の前記主線路が前記別の分岐線路に直列に挿入されていることを特徴とする請求項11に記載のインピーダンス整合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアクタンス可変回路、とりわけ、誘導性リアクタンスおよび容量性リアクタンスを共に変化させ得る回路、および当該リアクタンス可変回路を備えたインピーダンス整合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高周波電源とプラズマ負荷(プラズマ処理装置)との間には、インピーダンス整合装置が挿入される。
一般的なインピーダンス整合装置は、機械的に容量が変更可能な可変コンデンサを1個以上有している。
【0003】
しかし、この種の可変コンデンサは、距離および面積に応じて静電容量を変化させる回転式のものであって、動作時間が回転速度に依存するので、高速での動作に適していない。
その結果、可変コンデンサを用いたインピーダンス整合装置では、高速な整合動作を実現することができない。
【0004】
そのため、従来技術においては、可変コンデンサの代わりに(容量可変)ダイオードを用い、ダイオードに対する逆バイアス電圧を変化させて、容量を電気的に高速で変更可能にすることで、高速の整合動作を実現したインピーダンス整合装置が知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0005】
しかしながら、この構成によれば、ダイオードは、伝送線路およびその分岐線路のそれぞれに直列に挿入され、ダイオードのカソードには、可変直流電源からの直流高電圧が逆バイアス電圧として印加されるうえに、伝送線路からの高周波高電圧が重畳される。
そして、可変直流電源とダイオードとの間には、可変直流電源への高周波成分の流れ込みを阻止するための抵抗が挿入される。
【0006】
さらには、ダイオードに逆バイアス電圧を作用させるための直流帰還回路が必要であり、ダイオードおよびグランド間にも抵抗が挿入される。
【0007】
この場合、伝送線路を流れる高周波の電圧が増大すると、可変直流電源およびダイオード間の抵抗に印加される電圧も増大し、抵抗は発熱するが、印加電圧が当該抵抗(コイル)の定格電圧を超えると、抵抗が破壊され、または焼損する。
【0008】
これを防止するため、伝送線路および分岐線路のそれぞれにおいて、複数のダイオードが多段に配置され(複数のダイオードが直列接続され)、ダイオード毎に分圧することで、高電圧高周波の通電への対応がなされている。
【0009】
しかしながら、この構成によれば、回路構成が複雑になって、インピーダンス整合装置が大型化するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の課題は、コンパクトな構成で高電圧の通電が可能で、インピーダンスの整合が高速で行えるインピーダンス整合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明によれば、主線路、および前記主線路に疎結合した副線路を含む疎結合線路部を備え、前記疎結合線路部の前記副線路の一端がグランドに接続され、さらに、前記疎結合線路部の前記副線路およびグランド間に設けられた容量可変部を備えたものであることを特徴とするリアクタンス可変回路が提供される。
【0013】
ここで、「副線路が主線路に疎結合した」とは、副線路が、結合定数が0.5~0.95の範囲内で主線路に結合していることを意味する(以下同様)。
【0014】
本発明の好ましい実施例によれば、前記疎結合線路部の前記主線路は、直列接続された複数の主線路エレメントからなり、前記疎結合線路部の前記副線路は、並列接続された複数の副線路エレメントからなり、前記複数の副線路エレメントがそれぞれ前記複数の主線路エレメントのそれぞれに対向して配置されている。
【0015】
本発明の別の好ましい実施例によれば、前記疎結合線路部の前記主線路は、並列接続された複数の主線路エレメントからなり、前記疎結合線路部の前記副線路は、直列接続された複数の副線路エレメントからなり、前記複数の副線路エレメントがそれぞれ前記複数の主線路エレメントのそれぞれに対向して配置されている。
【0016】
本発明のさらに別の好ましい実施例によれば、前記疎結合線路部の前記副線路は、互いに直列接続され、かつ前記主線路に対向して配置された複数の副線路エレメントからなっている。
【0017】
本発明のさらに別の好ましい実施例によれば、前記疎結合線路部の前記主線路は、互いに直列接続され、かつ前記副線路に対向して配置された複数の主線路エレメントからなっている。
【0018】
本発明のさらに別の好ましい実施例によれば、前記容量可変部が、前記疎結合線路部の前記副線路の前記他端およびグランド間に接続されたダイオードと、前記副線路の前記他端および前記ダイオード間において前記ダイオードに直列接続されたコンデンサと、前記コンデンサおよび前記ダイオード間の接続点とグランドとの間に接続され、前記ダイオードに逆バイアス電圧を印加する可変直流電源と、前記接続点およびグランド間において前記可変直流電源に直列接続された抵抗またはコイルと、を有している。
【0019】
本発明のさらに別の好ましい実施例によれば、前記容量可変部が、前記疎結合線路部の前記副線路の前記他端およびグランド間に接続されたダイオードと、前記副線路の前記一端およびグランド間に接続されたコンデンサと、前記副線路の前記一端および前記コンデンサ間の接続点とグランドとの間に接続され、前記ダイオードに逆バイアス電圧を印加する可変直流電源と、前記接続点およびグランド間において前記可変直流電源に直列接続された抵抗またはコイルと、を有している。
【0020】
上記課題を解決するため、また本発明によれば、入力端および出力端を有する伝送線路と、前記伝送線路に設けられた上述のリアクタンス可変回路と、を備え、前記リアクタンス可変回路の前記疎結合線路部の前記主線路が前記伝送線路に直列に挿入されていることを特徴とするインピーダンス整合装置が提供される。
【0021】
本発明の好ましい実施例によれば、前記インピーダンス整合装置は、前記伝送線路における前記入力端または前記出力端と前記リアクタンス可変回路との間から分岐して、グランドに接続した分岐線路と、前記分岐線路に設けられた別の前記リアクタンス可変回路と、をさらに備え、前記別のリアクタンス可変回路の前記疎結合線路部の前記主線路が前記分岐線路に直列に挿入されている。
【0022】
本発明の別の好ましい実施例によれば、前記インピーダンス整合装置は、前記伝送線路の前記入力端または前記出力端と前記リアクタンス可変回路との間に設けられた別の前記リアクタンス可変回路をさらに備え、前記別のリアクタンス可変回路の前記疎結合線路部の前記主線路が前記伝送線路に直列に挿入され、前記インピーダンス整合装置は、さらに、前記リアクタンス可変回路および前記別のリアクタンス可変回路間の接続点とグランドとの間に接続されたコイルを備えている。
【0023】
上記課題を解決するため、また本発明によれば、入力端および出力端を有する伝送線路と、前記伝送線路から分岐して、グランドに接続された分岐線路と、前記分岐線路に設けられた上述のリアクタンス可変回路と、を備え、前記リアクタンス可変回路の前記疎結合線路部の前記主線路が前記分岐線路に直列に挿入されていることを特徴とするインピーダンス整合装置が提供される。
【0024】
本発明の好ましい実施例によれば、前記インピーダンス整合装置は、前記伝送線路の前記入力端または前記出力端と前記分岐線路との間から分岐して、グランドに接続された別の分岐線路と、前記伝送線路における前記分岐線路および前記別の分岐線路間に直列に挿入されたコイルと、前記別の分岐線路に設けられた別の前記リアクタンス可変回路を備え、前記別のリアクタンス可変回路の前記疎結合線路部の前記主線路が前記別の分岐線路に直列に挿入されている。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、容量可変部として、電気的に容量可変な構成、例えば、ダイオードと、当該ダイオードに逆バイアス電圧を印加する可変直流電源との組み合わせを採用した場合、疎結合線路部の主線路に高周波が通電された状態で、可変直流電源によってダイオードの逆バイアス電圧が変化せしめられ、それによってダイオードの容量が高速で変化し、この容量変化に伴って、疎結合線路部(よって、リアクタンス可変回路)のリアクタンスが高速で変化しめられる。
【0026】
さらには、ダイオードとそれに逆バイアス電圧を印加する可変直流電源を、疎結合線路部と組み合わせて使用することで、ダイオードおよび可変直流電源をグランド基準で作動させることができる。そのため、交流成分阻止フィルタとしての抵抗(またはコイル)のみを備えればよく、追加の抵抗をダイオードおよびグランド間に備える必要がない。
それによって、ダイオードの周辺回路を、従来よりもコンパクト化できる。
【0027】
また、疎結合線路部の主線路を、直列接続された複数の主線路エレメントから形成し、疎結合線路部の副線路を、並列接続された複数の副線路エレメントから形成して、複数の副線路エレメントをそれぞれ複数の主線路エレメントのそれぞれに対向して配置した場合、あるいは、主線路を、並列接続された複数の主線路エレメントから形成し、副線路を、直列接続された複数の副線路エレメントから形成して、複数の副線路エレメントをそれぞれ複数の主線路エレメントのそれぞれに対向して配置した場合や、疎結合線路部の副線路を、互いに直列接続し、かつ主線路に対向して配置した複数の副線路エレメントから形成した場合、あるいは、主線路を、互いに直列接続し、かつ副線路に対向して配置した複数の主線路エレメントから形成した場合には、主線路に高電圧の高周波が通電されても、疎結合線路部内で分圧または分流することで、副線路に供給される電圧または電流を抑制することができ、それによって、ダイオードの多段化およびその周辺回路の複雑化、大型化が回避される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の1実施例によるリアクタンス可変回路の回路図である。
【
図2】本発明の別の実施例によるリアクタンス可変回路の回路図である。
【
図3】本発明のさらに別の実施例によるリアクタンス可変回路の回路図である。
【
図4】
図1(A)に示したリアクタンス可変回路を備えたインピーダンス整合装置の1例の回路図である。
【
図5】
図1(A)に示したリアクタンス可変回路を備えたインピーダンス整合装置の別の例の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の構成を好ましい実施例に基づいて説明する。
図1(A)は本発明の1実施例によるリアクタンス可変回路の回路図である。
【0030】
図1(A)を参照して、本発明のリアクタンス可変回路1は、主線路2、および主線路2に疎結合した副線路3を含む疎結合線路部4を備えている。疎結合線路部4の副線路3の一端3aはグランド5に接続されている。
【0031】
ここで、「副線路3が主線路2に疎結合した」とは、副線路3が、結合定数が0.5~0.95の範囲内で主線路2に結合していることを意味する(以下同様)。
【0032】
本発明のリアクタンス可変回路1は、さらに、疎結合線路部4の副線路3およびグランド5間に設けられた容量可変部6を備えている。
【0033】
容量可変部6は、この実施例では、疎結合線路部4の副線路3の他端3bおよびグランド5間に接続されたダイオード7と、副線路3の他端3bおよびダイオード7間においてダイオード7に直列接続されたコンデンサ8と、コンデンサ8およびダイオード7間の接続点9とグランド5との間に接続され、ダイオード7に逆バイアス電圧を印加する可変直流電源11と、接続点9およびグランド5間において、可変直流電源11に直列接続された抵抗10とを有している。
【0034】
この場合、ダイオード7のアノードはグランド5に接続され、ダイオード7のカソードはコンデンサ8を介して副線路3の他端3bに接続されている。
コンデンサ8は直流電流を阻止するフィルタとして機能する。
【0035】
さらに、可変直流電源11の負極はグランド5に接続され、可変直流電源11の正極は抵抗10を介してダイオード7のカソードに接続されている。
抵抗10は、交流成分を阻止するフィルタとして機能する。
【0036】
本発明のリアクタンス可変回路においては、疎結合線路部4の主線路2に高周波電圧が通電された状態で、可変直流電源11によってダイオード7の逆バイアス電圧が変化せしめられ、それによってダイオード7の容量が高速で変化し、この容量変化に伴って、疎結合線路部4(よって、リアクタンス可変回路1)のリアクタンスが高速で変化しめられる。
【0037】
さらには、ダイオード7とそれに逆バイアス電圧を印加する可変直流電源11が、疎結合線路部4と組み合わせて使用されることで、ダイオード7および可変直流電源11がグランド基準で作動せしめられる。そのため、交流成分阻止フィルタとしての抵抗10のみを備えればよく、追加の抵抗をダイオード7およびグランド5間に備える必要がない。
それによって、ダイオード7の周辺回路が従来よりもコンパクト化される。
【0038】
この実施例では、交流成分を阻止するフィルタとして抵抗10を用いているが、抵抗10の代わりにコイルを使用することができる。
【0039】
図1(B)は、本発明の別の実施例によるリアクタンス可変回路の回路図である。
図1(B)の実施例は、
図1(A)の実施例と、容量可変部の構成が異なるだけである。よって、
図1(B)中、
図1(A)に示したものと同じ構成要素には同一番号を付して、以下ではそれらの詳細な説明を省略する。
【0040】
この実施例では、
図1(A)に示した容量可変部6のダイオード7と、それ以外の構成要素(コンデンサ8、抵抗10、可変直流電源11)とが、疎結合線路部4の副線路3の一端3a側と他端3b側に分かれて設けられている。
【0041】
すなわち、
図1(B)に示すように、リアクタンス可変回路1’の容量可変部6’は、疎結合線路部4の副線路3の他端3bおよびグランド5間に接続されたダイオード7と、副線路3の一端3aおよびグランド5間に接続されたコンデンサ8と、副線路3の一端3aおよびコンデンサ8間の接続点12とグランド5との間に接続され、ダイオード7に逆バイアス電圧を印加する可変直流電源11、接続点12およびグランド5間において、可変直流電源11に直列接続された抵抗10とを有している。
【0042】
この場合、ダイオード7のアノードはグランド5に接続され、ダイオード7のカソードは副線路3の他端3bに接続されている。
【0043】
さらに、副線路3の一端3aは、コンデンサ8を介してグランド5に接続されており、可変直流電源11の負極はグランド5に接続され、可変直流電源11の正極は抵抗10を介して副線路3の一端3aに接続されている。
コンデンサ8は直流電流を阻止するフィルタとして機能し、抵抗10は交流成分を阻止するフィルタとして機能する。
【0044】
この実施例においても、
図1(A)の実施例と同様の効果が得られるが、それに加えて、この実施例では、比較的大きな容量のコンデンサ8を用いると、接続点12に高周波成分が存在しなくなる、つまり、抵抗10に高周波が印加されなくなる。
その結果、設計上必要とされる抵抗よりも大幅に小さいサイズの(抵抗値も小さい)抵抗10を備えればよく、リアクタンス可変回路1をよりコンパクト化できる。
【0045】
図1(A)の実施例と同様、この実施例においても、抵抗10の代わりにコイルを使用することができる。
【0046】
図2(A)および(B)は、それぞれ、本発明のさらに別の実施例によるリアクタンス可変回路の回路図である。
図2(A)および(B)の実施例は、
図1(A)の実施例と疎結合線路部の構成が異なるだけである。よって、
図2(A)および(B)中、
図1(A)に示したものと同じ構成要素には同一番号を付して、以下ではそれらの詳細な説明を省略するとともに、容量可変部の回路は示さずに1つのボックスとして描いてある。
【0047】
図2(A)を参照して、この実施例では、リアクタンス可変回路20の疎結合線路部23の主線路21は、直列接続されて一直線上に配置された2本の主線路エレメント21a、21bからなり、疎結合線路部23の副線路22は、並列接続されて一直線上に配置された2本の副線路エレメント22a、22bからなっている。
【0048】
そして、2本の副線路エレメント22a、22bがそれぞれ2本の主線路エレメント21a、21bのそれぞれに対向して配置されている。また、副線路22の一端は直接グランド5に接続され、副線路22の他端は容量可変部6を介してグランド5に接続されている。
【0049】
この実施例によれば、容量可変部6に印加される電圧を半減させることができるので、この実施例は、主線路21の両端に比較的高い電圧が印加される場合に特に有効である。
【0050】
図2(B)を参照して、この実施例では、リアクタンス可変回路20’の疎結合線路部23’の主線路21’は、並列接続されて一直線上に配置された2本の主線路エレメント21a、21bからなり、疎結合線路部23’の副線路22’は、直列接続されて一直線上に配置された2本の副線路エレメント22a、22bからなっている。
【0051】
そして、2本の副線路エレメント22a、22bがそれぞれ2本の主線路エレメント21a、21bのそれぞれに対向して配置されている。また、副線路22’の一端は直接グランド5に接続され、副線路22’の他端は容量可変部6を介してグランド5に接続されている。
【0052】
この実施例によれば、容量可変部6に流入する電流を半減させることができ、よって、この実施例は、主線路21’に比較的大きな電流が流れる場合に特に有効である。
【0053】
なお、
図2(A)および(B)の実施例では、主線路および副線路をそれぞれ構成する主線路エレメントおよび副線路エレメントの本数は、この実施例に限定されず、主線路エレメントおよび副線路エレメントが同数であれば、それぞれ3本以上であってもよい。
【0054】
図3(A)および(B)は、それぞれ、本発明のさらに別の実施例によるリアクタンス可変回路の回路図である。
図3(A)および(B)の実施例は、
図1(A)の実施例と疎結合線路部の構成が異なるだけである。よって、
図3(A)および(B)中、
図1(A)に示したものと同じ構成要素には同一番号を付して、以下ではそれらの詳細な説明を省略するとともに、容量可変部の回路は示さずに1つのボックスとして描いてある。
【0055】
図3(A)を参照して、この実施例では、リアクタンス可変回路30の疎結合線路部32の主線路31は、互いに直列接続され、かつ副線路3に対向して配置された3本の主線路エレメント31a~31cからなっている。
【0056】
この実施例によれば、疎結合線路部32の主線路31と副線路3の長さの比(3:1)に応じて、主線路31の全体に印加される電圧が各主線路エレメント31a~31cに分圧され、副線路3には主線路エレメント31a~31cの1本分の電圧しか印加されない。
すなわち、疎結合線路部32内で分圧を行うことで、容量可変部6に印加される電圧の低減が図れる。
【0057】
図3(B)を参照して、この実施例では、リアクタンス可変回路30’の疎結合線路部34の副線路33は、互いに直列接続され、かつ主線路2に対向して配置された3本の副線路エレメント33a~33cからなっている。また、副線路33の一端は直接グランド5に接続され、副線路33の他端は容量可変部6を介してグランド5に接続されている。
【0058】
この実施例によれば、疎結合線路部34の主線路2と副線路33の長さの比(1:3)に応じて、副線路33の全体に励起される電流が各副線路エレメント33a~33cに分配され、容量可変部6には主線路エレメント34の1/3の電流しか流入しない。
すなわち、疎結合線路部34内で分流を行うことで、容量可変部6に流入する電流の低減が図れる。
【0059】
図4および
図5は、
図1(A)に示したリアクタンス可変回路を備えたインピーダンス整合装置の種々の例の回路図である。
図4および
図5中、
図1(A)に示したものと同じ構成要素には同一番号を付して、以下ではそれらの詳細な説明を省略するとともに、容量可変部の回路は示さずに1つのボックスとして描いてある。
【0060】
図4(A)を参照して、この実施例では、インピーダンス整合装置は、入力端13aおよび出力端13bを有する伝送線路13と、伝送線路13に設けられたリアクタンス可変回路1とを備えている。
【0061】
そして、リアクタンス可変回路1の疎結合線路部4の主線路2が伝送線路13に直列に挿入されている。
【0062】
この実施例によれば、リアクタンス可変回路1が発揮する作用効果に基づき、高速でのインピーダンス整合が実現できるとともに、インピーダンス整合装置のコンパクト化を図ることができる。
【0063】
図4(B)を参照して、この実施例では、入力端13aおよび出力端13bを有する伝送線路13と、伝送線路13から分岐して、グランド5に接続された分岐線路14と、分岐線路14に設けられたリアクタンス可変回路1とを備えている。
【0064】
そして、リアクタンス可変回路1の疎結合線路部4の主線路2が分岐線路14に直列に挿入されている。
【0065】
この実施例においても、
図4(A)の実施例と同様の作用効果が得られる
【0066】
図4(C)を参照して、この実施例では、インピーダンス整合装置は、入力端13aおよび出力端13bを有する伝送線路13と、伝送線路13に設けられた第1のリアクタンス可変回路1aとを備えている。そして、第1のリアクタンス可変回路1aの疎結合線路部4の主線路2が伝送線路13に直列に挿入されている。
【0067】
インピーダンス整合装置は、さらに、伝送線路13における入力端13aと第1のリアクタンス可変回路1aとの間から分岐して、グランド5に接続した分岐線路14と、分岐線路14に設けられた第2のリアクタンス可変回路1bとを備えている。そして、第2のリアクタンス可変回路1bの疎結合線路部4の主線路2が分岐線路14に直列に挿入されている。
【0068】
この実施例においても、
図4(A)の実施例と同様の作用効果が得られる。
【0069】
図5(A)を参照して、この実施例では、インピーダンス整合装置は、入力端13aおよび出力端13bを有する伝送線路13と、伝送線路13に設けられた第1のリアクタンス可変回路1aとを備えている。そして、第1のリアクタンス可変回路1aの疎結合線路部4の主線路2が伝送線路13に直列に挿入されている。
【0070】
インピーダンス整合装置は、さらに、伝送線路13における出力端13bと第1のリアクタンス可変回路1aとの間から分岐して、グランド5に接続した分岐線路14と、分岐線路14に設けられた第2のリアクタンス可変回路1bと備えている。そして、第2のリアクタンス可変回路1bの疎結合線路部4の主線路2が分岐線路14に直列に挿入されている。
【0071】
この実施例においても、
図4(C)の実施例と同様の作用効果が得られる。
【0072】
図5(B)を参照して、この実施例では、インピーダンス整合装置は、入力端13aおよび出力端13bを有する伝送線路13と、伝送線路13に設けられた第1のリアクタンス可変回路1aとを備えている。そして、第1のリアクタンス可変回路1aの疎結合線路部4の主線路2が伝送線路13に直列に挿入されている。
【0073】
インピーダンス整合装置は、さらに、伝送線路13の出力端13bと第1のリアクタンス可変回路1aとの間に設けられた第2のリアクタンス可変回路1bを備えている。そして、第2のリアクタンス可変回路1bの疎結合線路部4の主線路2が伝送線路13に直列に挿入されている。
【0074】
インピーダンス整合装置は、さらに、第1のリアクタンス可変回路1aおよび第2のリアクタンス可変回路1b間の接続点とグランド5との間に接続されたコイル15を備えている。
【0075】
図5(C)を参照して、この実施例では、インピーダンス整合装置は、入力端13aおよび出力端13bを有する伝送線路13と、伝送線路13から分岐して、グランド5に接続された第1の分岐線路14aと、分岐線路14aに設けられた第1のリアクタンス可変回路1aとを備えている。そして、第1のリアクタンス可変回路1aの疎結合線路部4の主線路2が分岐線路14aに直列に挿入されている。
【0076】
インピーダンス整合装置は、さらに、伝送線路13の出力端13bと第1の分岐線路14aとの間から分岐して、グランド5に接続された第2の分岐線路14bと、伝送線路13における第1の分岐線路14aおよび第2の分岐線路14b間に直列に挿入されたコイル15と、第2の分岐線路14bに設けられた第2のリアクタンス可変回路1bを備えている。そして、第2のリアクタンス可変回路1bの疎結合線路部4の主線路2が第2の分岐線路14bに直列に挿入されている。
【0077】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明の構成は上記実施例に限定されず、添付の特許請求の範囲に記載した構成の範囲内で当業者が種々の変形例を案出し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0078】
1、1’ リアクタンス可変回路
1a 第1のリアクタンス可変回路
1b 第2のリアクタンス可変回路
2 主線路
3 副線路
3a 一端
3b 他端
4 疎結合線路部
5 グランド
6、6’ 容量可変部
7 ダイオード
8 コンデンサ
9 接続点
10 抵抗
11 可変直流電源
12 接続点
13 伝送線路
13a 入力端
13b 出力端
14 分岐線路
14a 第1の分岐線路
14b 第2の分岐線路
15 コイル
20、20’ リアクタンス可変回路
21、21’ 主線路
21a、21b 主線路エレメント
22、22’ 副線路
22a、22b 副線路エレメント
23、23’ 疎結合線路部
30、30’ リアクタンス可変回路
31 主線路
31a~31c 主線路エレメント
32 疎結合線路部
33 副線路
33a~33c 副線路エレメント
34 疎結合線路部
【手続補正書】
【提出日】2023-09-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の線路、および前記第1の線路に疎結合した第2の線路を含む疎結合線路部を備え、
前記疎結合線路部の前記第2の線路の一端がグランドに接続され、さらに、
前記疎結合線路部の前記第2の線路およびグランド間に設けられた容量可変部を備えたものであることを特徴とするリアクタンス可変回路。
【請求項2】
前記疎結合線路部の前記第1の線路は、直列接続された複数の第1の線路エレメントからなり、前記疎結合線路部の前記第2の線路は、並列接続された複数の第2の線路エレメントからなり、前記複数の第2の線路エレメントがそれぞれ前記複数の第1の線路エレメントのそれぞれに対向して配置されていることを特徴とする請求項1に記載のリアクタンス可変回路。
【請求項3】
前記疎結合線路部の前記第1の線路は、並列接続された複数の第1の線路エレメントからなり、前記疎結合線路部の前記第2の線路は、直列接続された複数の第2の線路エレメントからなり、前記複数の第2の線路エレメントがそれぞれ前記複数の第1の線路エレメントのそれぞれに対向して配置されていることを特徴とする請求項1に記載のリアクタンス可変回路。
【請求項4】
前記疎結合線路部の前記第2の線路は、互いに直列接続され、かつ前記第1の線路に対向して配置された複数の第2の線路エレメントからなっていることを特徴とする請求項1に記載のリアクタンス可変回路。
【請求項5】
前記疎結合線路部の前記第1の線路は、互いに直列接続され、かつ前記第2の線路に対向して配置された複数の第1の線路エレメントからなっていることを特徴とする請求項1に記載のリアクタンス可変回路。
【請求項6】
前記容量可変部が、
前記疎結合線路部の前記第2の線路の他端およびグランド間に接続されたダイオードと、
前記第2の線路の前記他端および前記ダイオード間において前記ダイオードに直列接続されたコンデンサと、
前記コンデンサおよび前記ダイオード間の接続点とグランドとの間に接続され、前記ダイオードに逆バイアス電圧を印加する可変直流電源と、
前記接続点およびグランド間において前記可変直流電源に直列接続された抵抗またはコイルと、を有していることを特徴とする請求項1に記載のリアクタンス可変回路。
【請求項7】
前記容量可変部が、
前記疎結合線路部の前記第2の線路の他端およびグランド間に接続されたダイオードと、
前記第2の線路の前記一端およびグランド間に接続されたコンデンサと、
前記第2の線路の前記一端および前記コンデンサ間の接続点とグランドとの間に接続され、前記ダイオードに逆バイアス電圧を印加する可変直流電源と、
前記接続点およびグランド間において前記可変直流電源に直列接続された抵抗またはコイルと、を有していることを特徴とする請求項1に記載のリアクタンス可変回路。
【請求項8】
入力端および出力端を有する伝送線路と、
前記伝送線路に設けられた請求項1~請求項7のいずれかに記載のリアクタンス可変回路と、を備え、
前記リアクタンス可変回路の前記疎結合線路部の前記第1の線路が前記伝送線路に直列に挿入されていることを特徴とするインピーダンス整合装置。
【請求項9】
前記伝送線路における前記入力端または前記出力端と前記リアクタンス可変回路との間から分岐して、グランドに接続した分岐線路と、
前記分岐線路に設けられた別の前記リアクタンス可変回路と、をさらに備え、
前記別のリアクタンス可変回路の前記疎結合線路部の前記第1の線路が前記分岐線路に直列に挿入されていることを特徴とする請求項8に記載のインピーダンス整合装置。
【請求項10】
前記伝送線路の前記入力端または前記出力端と前記リアクタンス可変回路との間に設けられた別の前記リアクタンス可変回路をさらに備え、
前記別のリアクタンス可変回路の前記疎結合線路部の前記第1の線路が前記伝送線路に直列に挿入され、さらに、
前記リアクタンス可変回路および前記別のリアクタンス可変回路間の接続点とグランドとの間に接続されたコイルを備えたことを特徴とする請求項8に記載のインピーダンス整合装置。
【請求項11】
入力端および出力端を有する伝送線路と、
前記伝送線路から分岐して、グランドに接続された分岐線路と、
前記分岐線路に設けられた請求項1~請求項7のいずれかに記載のリアクタンス可変回路と、を備え、
前記リアクタンス可変回路の前記疎結合線路部の前記第1の線路が前記分岐線路に直列に挿入されていることを特徴とするインピーダンス整合装置。
【請求項12】
前記伝送線路の前記入力端または前記出力端と前記分岐線路との間から分岐して、グランドに接続された別の分岐線路と、
前記伝送線路における前記分岐線路および前記別の分岐線路間に直列に挿入されたコイルと、
前記別の分岐線路に設けられた別の前記リアクタンス可変回路を備え、
前記別のリアクタンス可変回路の前記疎結合線路部の前記第1の線路が前記別の分岐線路に直列に挿入されていることを特徴とする請求項11に記載のインピーダンス整合装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアクタンス可変回路、とりわけ、誘導性リアクタンスおよび容量性リアクタンスを共に変化させ得る回路、および当該リアクタンス可変回路を備えたインピーダンス整合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高周波電源とプラズマ負荷(プラズマ処理装置)との間には、インピーダンス整合装置が挿入される。
一般的なインピーダンス整合装置は、機械的に容量が変更可能な可変コンデンサを1個以上有している。
【0003】
しかし、この種の可変コンデンサは、距離および面積に応じて静電容量を変化させる回転式のものであって、動作時間が回転速度に依存するので、高速での動作に適していない。
その結果、可変コンデンサを用いたインピーダンス整合装置では、高速な整合動作を実現することができない。
【0004】
そのため、従来技術においては、可変コンデンサの代わりに(容量可変)ダイオードを用い、ダイオードに対する逆バイアス電圧を変化させて、容量を電気的に高速で変更可能にすることで、高速の整合動作を実現したインピーダンス整合装置が知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0005】
しかしながら、この構成によれば、ダイオードは、伝送線路およびその分岐線路のそれぞれに直列に挿入され、ダイオードのカソードには、可変直流電源からの直流高電圧が逆バイアス電圧として印加されるうえに、伝送線路からの高周波高電圧が重畳される。
そして、可変直流電源とダイオードとの間には、可変直流電源への高周波成分の流れ込みを阻止するための抵抗が挿入される。
【0006】
さらには、ダイオードに逆バイアス電圧を作用させるための直流帰還回路が必要であり、ダイオードおよびグランド間にも抵抗が挿入される。
【0007】
この場合、伝送線路を流れる高周波の電圧が増大すると、可変直流電源およびダイオード間の抵抗に印加される電圧も増大し、抵抗は発熱するが、印加電圧が当該抵抗(コイル)の定格電圧を超えると、抵抗が破壊され、または焼損する。
【0008】
これを防止するため、伝送線路および分岐線路のそれぞれにおいて、複数のダイオードが多段に配置され(複数のダイオードが直列接続され)、ダイオード毎に分圧することで、高電圧高周波の通電への対応がなされている。
【0009】
しかしながら、この構成によれば、回路構成が複雑になって、インピーダンス整合装置が大型化するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の課題は、コンパクトな構成で高電圧の通電が可能で、インピーダンスの整合が高速で行えるインピーダンス整合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明によれば、第1の線路、および前記第1の線路に疎結合した第2の線路を含む疎結合線路部を備え、前記疎結合線路部の前記第2の線路の一端がグランドに接続され、さらに、前記疎結合線路部の前記第2の線路およびグランド間に設けられた容量可変部を備えたものであることを特徴とするリアクタンス可変回路が提供される。
【0013】
ここで、「第2の線路が第1の線路に疎結合した」とは、第2の線路が、結合定数が0.5~0.95の範囲内で第1の線路に結合していることを意味する(以下同様)。
【0014】
本発明の好ましい実施例によれば、前記疎結合線路部の前記第1の線路は、直列接続された複数の第1の線路エレメントからなり、前記疎結合線路部の前記第2の線路は、並列接続された複数の第2の線路エレメントからなり、前記複数の第2の線路エレメントがそれぞれ前記複数の第1の線路エレメントのそれぞれに対向して配置されている。
【0015】
本発明の別の好ましい実施例によれば、前記疎結合線路部の前記第1の線路は、並列接続された複数の第1の線路エレメントからなり、前記疎結合線路部の前記第2の線路は、直列接続された複数の第2の線路エレメントからなり、前記複数の第2の線路エレメントがそれぞれ前記複数の第1の線路エレメントのそれぞれに対向して配置されている。
【0016】
本発明のさらに別の好ましい実施例によれば、前記疎結合線路部の前記第2の線路は、互いに直列接続され、かつ前記第1の線路に対向して配置された複数の第2の線路エレメントからなっている。
【0017】
本発明のさらに別の好ましい実施例によれば、前記疎結合線路部の前記第1の線路は、互いに直列接続され、かつ前記第2の線路に対向して配置された複数の第1の線路エレメントからなっている。
【0018】
本発明のさらに別の好ましい実施例によれば、前記容量可変部が、前記疎結合線路部の前記第2の線路の他端およびグランド間に接続されたダイオードと、前記第2の線路の前記他端および前記ダイオード間において前記ダイオードに直列接続されたコンデンサと、前記コンデンサおよび前記ダイオード間の接続点とグランドとの間に接続され、前記ダイオードに逆バイアス電圧を印加する可変直流電源と、前記接続点およびグランド間において前記可変直流電源に直列接続された抵抗またはコイルと、を有している。
【0019】
本発明のさらに別の好ましい実施例によれば、前記容量可変部が、前記疎結合線路部の前記第2の線路の他端およびグランド間に接続されたダイオードと、前記第2の線路の前記一端およびグランド間に接続されたコンデンサと、前記第2の線路の前記一端および前記コンデンサ間の接続点とグランドとの間に接続され、前記ダイオードに逆バイアス電圧を印加する可変直流電源と、前記接続点およびグランド間において前記可変直流電源に直列接続された抵抗またはコイルと、を有している。
【0020】
上記課題を解決するため、また本発明によれば、入力端および出力端を有する伝送線路と、前記伝送線路に設けられた上述のリアクタンス可変回路と、を備え、前記リアクタンス可変回路の前記疎結合線路部の前記第1の線路が前記伝送線路に直列に挿入されていることを特徴とするインピーダンス整合装置が提供される。
【0021】
本発明の好ましい実施例によれば、前記インピーダンス整合装置は、前記伝送線路における前記入力端または前記出力端と前記リアクタンス可変回路との間から分岐して、グランドに接続した分岐線路と、前記分岐線路に設けられた別の前記リアクタンス可変回路と、をさらに備え、前記別のリアクタンス可変回路の前記疎結合線路部の前記第1の線路が前記分岐線路に直列に挿入されている。
【0022】
本発明の別の好ましい実施例によれば、前記インピーダンス整合装置は、前記伝送線路の前記入力端または前記出力端と前記リアクタンス可変回路との間に設けられた別の前記リアクタンス可変回路をさらに備え、前記別のリアクタンス可変回路の前記疎結合線路部の前記第1の線路が前記伝送線路に直列に挿入され、前記インピーダンス整合装置は、さらに、前記リアクタンス可変回路および前記別のリアクタンス可変回路間の接続点とグランドとの間に接続されたコイルを備えている。
【0023】
上記課題を解決するため、また本発明によれば、入力端および出力端を有する伝送線路と、前記伝送線路から分岐して、グランドに接続された分岐線路と、前記分岐線路に設けられた上述のリアクタンス可変回路と、を備え、前記リアクタンス可変回路の前記疎結合線路部の前記第1の線路が前記分岐線路に直列に挿入されていることを特徴とするインピーダンス整合装置が提供される。
【0024】
本発明の好ましい実施例によれば、前記インピーダンス整合装置は、前記伝送線路の前記入力端または前記出力端と前記分岐線路との間から分岐して、グランドに接続された別の分岐線路と、前記伝送線路における前記分岐線路および前記別の分岐線路間に直列に挿入されたコイルと、前記別の分岐線路に設けられた別の前記リアクタンス可変回路を備え、前記別のリアクタンス可変回路の前記疎結合線路部の前記第1の線路が前記別の分岐線路に直列に挿入されている。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、容量可変部として、電気的に容量可変な構成、例えば、ダイオードと、当該ダイオードに逆バイアス電圧を印加する可変直流電源との組み合わせを採用した場合、疎結合線路部の第1の線路に高周波が通電された状態で、可変直流電源によってダイオードの逆バイアス電圧が変化せしめられ、それによってダイオードの容量が高速で変化し、この容量変化に伴って、疎結合線路部(よって、リアクタンス可変回路)のリアクタンスが高速で変化しめられる。
【0026】
さらには、ダイオードとそれに逆バイアス電圧を印加する可変直流電源を、疎結合線路部と組み合わせて使用することで、ダイオードおよび可変直流電源をグランド基準で作動させることができる。そのため、交流成分阻止フィルタとしての抵抗(またはコイル)のみを備えればよく、追加の抵抗をダイオードおよびグランド間に備える必要がない。
それによって、ダイオードの周辺回路を、従来よりもコンパクト化できる。
【0027】
また、疎結合線路部の第1の線路を、直列接続された複数の第1の線路エレメントから形成し、疎結合線路部の第2の線路を、並列接続された複数の第2の線路エレメントから形成して、複数の第2の線路エレメントをそれぞれ複数の第1の線路エレメントのそれぞれに対向して配置した場合、あるいは、第1の線路を、並列接続された複数の第1の線路エレメントから形成し、第2の線路を、直列接続された複数の第2の線路エレメントから形成して、複数の第2の線路エレメントをそれぞれ複数の第1の線路エレメントのそれぞれに対向して配置した場合や、疎結合線路部の第2の線路を、互いに直列接続し、かつ第1の線路に対向して配置した複数の第2の線路エレメントから形成した場合、あるいは、第1の線路を、互いに直列接続し、かつ第2の線路に対向して配置した複数の第1の線路エレメントから形成した場合には、第1の線路に高電圧の高周波が通電されても、疎結合線路部内で分圧または分流することで、第2の線路に供給される電圧または電流を抑制することができ、それによって、ダイオードの多段化およびその周辺回路の複雑化、大型化が回避される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の1実施例によるリアクタンス可変回路の回路図である。
【
図2】本発明の別の実施例によるリアクタンス可変回路の回路図である。
【
図3】本発明のさらに別の実施例によるリアクタンス可変回路の回路図である。
【
図4】
図1(A)に示したリアクタンス可変回路を備えたインピーダンス整合装置の1例の回路図である。
【
図5】
図1(A)に示したリアクタンス可変回路を備えたインピーダンス整合装置の別の例の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の構成を好ましい実施例に基づいて説明する。
図1(A)は本発明の1実施例によるリアクタンス可変回路の回路図である。
【0030】
図1(A)を参照して、本発明のリアクタンス可変回路1は、
第1の線路2、および
第1の線路2に疎結合した
第2の線路3を含む疎結合線路部4を備えている。疎結合線路部4の
第2の線路3の一端3aはグランド5に接続されている。
【0031】
ここで、「第2の線路3が第1の線路2に疎結合した」とは、第2の線路3が、結合定数が0.5~0.95の範囲内で第1の線路2に結合していることを意味する(以下同様)。
【0032】
本発明のリアクタンス可変回路1は、さらに、疎結合線路部4の第2の線路3およびグランド5間に設けられた容量可変部6を備えている。
【0033】
容量可変部6は、この実施例では、疎結合線路部4の第2の線路3の他端3bおよびグランド5間に接続されたダイオード7と、第2の線路3の他端3bおよびダイオード7間においてダイオード7に直列接続されたコンデンサ8と、コンデンサ8およびダイオード7間の接続点9とグランド5との間に接続され、ダイオード7に逆バイアス電圧を印加する可変直流電源11と、接続点9およびグランド5間において、可変直流電源11に直列接続された抵抗10とを有している。
【0034】
この場合、ダイオード7のアノードはグランド5に接続され、ダイオード7のカソードはコンデンサ8を介して第2の線路3の他端3bに接続されている。
コンデンサ8は直流電流を阻止するフィルタとして機能する。
【0035】
さらに、可変直流電源11の負極はグランド5に接続され、可変直流電源11の正極は抵抗10を介してダイオード7のカソードに接続されている。
抵抗10は、交流成分を阻止するフィルタとして機能する。
【0036】
本発明のリアクタンス可変回路においては、疎結合線路部4の第1の線路2に高周波電圧が通電された状態で、可変直流電源11によってダイオード7の逆バイアス電圧が変化せしめられ、それによってダイオード7の容量が高速で変化し、この容量変化に伴って、疎結合線路部4(よって、リアクタンス可変回路1)のリアクタンスが高速で変化しめられる。
【0037】
さらには、ダイオード7とそれに逆バイアス電圧を印加する可変直流電源11が、疎結合線路部4と組み合わせて使用されることで、ダイオード7および可変直流電源11がグランド基準で作動せしめられる。そのため、交流成分阻止フィルタとしての抵抗10のみを備えればよく、追加の抵抗をダイオード7およびグランド5間に備える必要がない。
それによって、ダイオード7の周辺回路が従来よりもコンパクト化される。
【0038】
この実施例では、交流成分を阻止するフィルタとして抵抗10を用いているが、抵抗10の代わりにコイルを使用することができる。
【0039】
図1(B)は、本発明の別の実施例によるリアクタンス可変回路の回路図である。
図1(B)の実施例は、
図1(A)の実施例と、容量可変部の構成が異なるだけである。よって、
図1(B)中、
図1(A)に示したものと同じ構成要素には同一番号を付して、以下ではそれらの詳細な説明を省略する。
【0040】
この実施例では、
図1(A)に示した容量可変部6のダイオード7と、それ以外の構成要素(コンデンサ8、抵抗10、可変直流電源11)とが、疎結合線路部4の
第2の線路3の一端3a側と他端3b側に分かれて設けられている。
【0041】
すなわち、
図1(B)に示すように、リアクタンス可変回路1’の容量可変部6’は、疎結合線路部4の
第2の線路3の他端3bおよびグランド5間に接続されたダイオード7と、
第2の線路3の一端3aおよびグランド5間に接続されたコンデンサ8と、
第2の線路3の一端3aおよびコンデンサ8間の接続点12とグランド5との間に接続され、ダイオード7に逆バイアス電圧を印加する可変直流電源11、接続点12およびグランド5間において、可変直流電源11に直列接続された抵抗10とを有している。
【0042】
この場合、ダイオード7のアノードはグランド5に接続され、ダイオード7のカソードは第2の線路3の他端3bに接続されている。
【0043】
さらに、第2の線路3の一端3aは、コンデンサ8を介してグランド5に接続されており、可変直流電源11の負極はグランド5に接続され、可変直流電源11の正極は抵抗10を介して第2の線路3の一端3aに接続されている。
コンデンサ8は直流電流を阻止するフィルタとして機能し、抵抗10は交流成分を阻止するフィルタとして機能する。
【0044】
この実施例においても、
図1(A)の実施例と同様の効果が得られるが、それに加えて、この実施例では、比較的大きな容量のコンデンサ8を用いると、接続点12に高周波成分が存在しなくなる、つまり、抵抗10に高周波が印加されなくなる。
その結果、設計上必要とされる抵抗よりも大幅に小さいサイズの(抵抗値も小さい)抵抗10を備えればよく、リアクタンス可変回路1をよりコンパクト化できる。
【0045】
図1(A)の実施例と同様、この実施例においても、抵抗10の代わりにコイルを使用することができる。
【0046】
図2(A)および(B)は、それぞれ、本発明のさらに別の実施例によるリアクタンス可変回路の回路図である。
図2(A)および(B)の実施例は、
図1(A)の実施例と疎結合線路部の構成が異なるだけである。よって、
図2(A)および(B)中、
図1(A)に示したものと同じ構成要素には同一番号を付して、以下ではそれらの詳細な説明を省略するとともに、容量可変部の回路は示さずに1つのボックスとして描いてある。
【0047】
図2(A)を参照して、この実施例では、リアクタンス可変回路20の疎結合線路部23の
第1の線路21は、直列接続されて一直線上に配置された2本の
第1の線路エレメント21a、21bからなり、疎結合線路部23の
第2の線路22は、並列接続されて一直線上に配置された2本の
第2の線路エレメント22a、22bからなっている。
【0048】
そして、2本の第2の線路エレメント22a、22bがそれぞれ2本の第1の線路エレメント21a、21bのそれぞれに対向して配置されている。また、第2の線路22の一端は直接グランド5に接続され、第2の線路22の他端は容量可変部6を介してグランド5に接続されている。
【0049】
この実施例によれば、容量可変部6に印加される電圧を半減させることができるので、この実施例は、第1の線路21の両端に比較的高い電圧が印加される場合に特に有効である。
【0050】
図2(B)を参照して、この実施例では、リアクタンス可変回路20’の疎結合線路部23’の
第1の線路21’は、並列接続されて一直線上に配置された2本の
第1の線路エレメント21a、21bからなり、疎結合線路部23’の
第2の線路22’は、直列接続されて一直線上に配置された2本の
第2の線路エレメント22a、22bからなっている。
【0051】
そして、2本の第2の線路エレメント22a、22bがそれぞれ2本の第1の線路エレメント21a、21bのそれぞれに対向して配置されている。また、第2の線路22’の一端は直接グランド5に接続され、第2の線路22’の他端は容量可変部6を介してグランド5に接続されている。
【0052】
この実施例によれば、容量可変部6に流入する電流を半減させることができ、よって、この実施例は、第1の線路21’に比較的大きな電流が流れる場合に特に有効である。
【0053】
なお、
図2(A)および(B)の実施例では、
第1の線路および
第2の線路をそれぞれ構成する
第1の線路エレメントおよび
第2の線路エレメントの本数は、この実施例に限定されず、
第1の線路エレメントおよび
第2の線路エレメントが同数であれば、それぞれ3本以上であってもよい。
【0054】
図3(A)および(B)は、それぞれ、本発明のさらに別の実施例によるリアクタンス可変回路の回路図である。
図3(A)および(B)の実施例は、
図1(A)の実施例と疎結合線路部の構成が異なるだけである。よって、
図3(A)および(B)中、
図1(A)に示したものと同じ構成要素には同一番号を付して、以下ではそれらの詳細な説明を省略するとともに、容量可変部の回路は示さずに1つのボックスとして描いてある。
【0055】
図3(A)を参照して、この実施例では、リアクタンス可変回路30の疎結合線路部32の
第1の線路31は、互いに直列接続され、かつ
第2の線路3に対向して配置された3本の
第1の線路エレメント31a~31cからなっている。
【0056】
この実施例によれば、疎結合線路部32の第1の線路31と第2の線路3の長さの比(3:1)に応じて、第1の線路31の全体に印加される電圧が各第1の線路エレメント31a~31cに分圧され、第2の線路3には第1の線路エレメント31a~31cの1本分の電圧しか印加されない。
すなわち、疎結合線路部32内で分圧を行うことで、容量可変部6に印加される電圧の低減が図れる。
【0057】
図3(B)を参照して、この実施例では、リアクタンス可変回路30’の疎結合線路部34の
第2の線路33は、互いに直列接続され、かつ
第1の線路2に対向して配置された3本の
第2の線路エレメント33a~33cからなっている。また、
第2の線路33の一端は直接グランド5に接続され、
第2の線路33の他端は容量可変部6を介してグランド5に接続されている。
【0058】
この実施例によれば、疎結合線路部34の第1の線路2と第2の線路33の長さの比(1:3)に応じて、第2の線路33の全体に励起される電流が各第2の線路エレメント33a~33cに分配され、容量可変部6には第1の線路エレメント34の1/3の電流しか流入しない。
すなわち、疎結合線路部34内で分流を行うことで、容量可変部6に流入する電流の低減が図れる。
【0059】
図4および
図5は、
図1(A)に示したリアクタンス可変回路を備えたインピーダンス整合装置の種々の例の回路図である。
図4および
図5中、
図1(A)に示したものと同じ構成要素には同一番号を付して、以下ではそれらの詳細な説明を省略するとともに、容量可変部の回路は示さずに1つのボックスとして描いてある。
【0060】
図4(A)を参照して、この実施例では、インピーダンス整合装置は、入力端13aおよび出力端13bを有する伝送線路13と、伝送線路13に設けられたリアクタンス可変回路1とを備えている。
【0061】
そして、リアクタンス可変回路1の疎結合線路部4の第1の線路2が伝送線路13に直列に挿入されている。
【0062】
この実施例によれば、リアクタンス可変回路1が発揮する作用効果に基づき、高速でのインピーダンス整合が実現できるとともに、インピーダンス整合装置のコンパクト化を図ることができる。
【0063】
図4(B)を参照して、この実施例では、入力端13aおよび出力端13bを有する伝送線路13と、伝送線路13から分岐して、グランド5に接続された分岐線路14と、分岐線路14に設けられたリアクタンス可変回路1とを備えている。
【0064】
そして、リアクタンス可変回路1の疎結合線路部4の第1の線路2が分岐線路14に直列に挿入されている。
【0065】
この実施例においても、
図4(A)の実施例と同様の作用効果が得られる
【0066】
図4(C)を参照して、この実施例では、インピーダンス整合装置は、入力端13aおよび出力端13bを有する伝送線路13と、伝送線路13に設けられた第1のリアクタンス可変回路1aとを備えている。そして、第1のリアクタンス可変回路1aの疎結合線路部4の
第1の線路2が伝送線路13に直列に挿入されている。
【0067】
インピーダンス整合装置は、さらに、伝送線路13における入力端13aと第1のリアクタンス可変回路1aとの間から分岐して、グランド5に接続した分岐線路14と、分岐線路14に設けられた第2のリアクタンス可変回路1bとを備えている。そして、第2のリアクタンス可変回路1bの疎結合線路部4の第1の線路2が分岐線路14に直列に挿入されている。
【0068】
この実施例においても、
図4(A)の実施例と同様の作用効果が得られる。
【0069】
図5(A)を参照して、この実施例では、インピーダンス整合装置は、入力端13aおよび出力端13bを有する伝送線路13と、伝送線路13に設けられた第1のリアクタンス可変回路1aとを備えている。そして、第1のリアクタンス可変回路1aの疎結合線路部4の
第1の線路2が伝送線路13に直列に挿入されている。
【0070】
インピーダンス整合装置は、さらに、伝送線路13における出力端13bと第1のリアクタンス可変回路1aとの間から分岐して、グランド5に接続した分岐線路14と、分岐線路14に設けられた第2のリアクタンス可変回路1bと備えている。そして、第2のリアクタンス可変回路1bの疎結合線路部4の第1の線路2が分岐線路14に直列に挿入されている。
【0071】
この実施例においても、
図4(C)の実施例と同様の作用効果が得られる。
【0072】
図5(B)を参照して、この実施例では、インピーダンス整合装置は、入力端13aおよび出力端13bを有する伝送線路13と、伝送線路13に設けられた第1のリアクタンス可変回路1aとを備えている。そして、第1のリアクタンス可変回路1aの疎結合線路部4の
第1の線路2が伝送線路13に直列に挿入されている。
【0073】
インピーダンス整合装置は、さらに、伝送線路13の出力端13bと第1のリアクタンス可変回路1aとの間に設けられた第2のリアクタンス可変回路1bを備えている。そして、第2のリアクタンス可変回路1bの疎結合線路部4の第1の線路2が伝送線路13に直列に挿入されている。
【0074】
インピーダンス整合装置は、さらに、第1のリアクタンス可変回路1aおよび第2のリアクタンス可変回路1b間の接続点とグランド5との間に接続されたコイル15を備えている。
【0075】
図5(C)を参照して、この実施例では、インピーダンス整合装置は、入力端13aおよび出力端13bを有する伝送線路13と、伝送線路13から分岐して、グランド5に接続された第1の分岐線路14aと、分岐線路14aに設けられた第1のリアクタンス可変回路1aとを備えている。そして、第1のリアクタンス可変回路1aの疎結合線路部4の
第1の線路2が分岐線路14aに直列に挿入されている。
【0076】
インピーダンス整合装置は、さらに、伝送線路13の出力端13bと第1の分岐線路14aとの間から分岐して、グランド5に接続された第2の分岐線路14bと、伝送線路13における第1の分岐線路14aおよび第2の分岐線路14b間に直列に挿入されたコイル15と、第2の分岐線路14bに設けられた第2のリアクタンス可変回路1bを備えている。そして、第2のリアクタンス可変回路1bの疎結合線路部4の第1の線路2が第2の分岐線路14bに直列に挿入されている。
【0077】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明の構成は上記実施例に限定されず、添付の特許請求の範囲に記載した構成の範囲内で当業者が種々の変形例を案出し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0078】
1、1’ リアクタンス可変回路
1a 第1のリアクタンス可変回路
1b 第2のリアクタンス可変回路
2 第1の線路
3 第2の線路
3a 一端
3b 他端
4 疎結合線路部
5 グランド
6、6’ 容量可変部
7 ダイオード
8 コンデンサ
9 接続点
10 抵抗
11 可変直流電源
12 接続点
13 伝送線路
13a 入力端
13b 出力端
14 分岐線路
14a 第1の分岐線路
14b 第2の分岐線路
15 コイル
20、20’ リアクタンス可変回路
21、21’ 第1の線路
21a、21b 第1の線路エレメント
22、22’ 第2の線路
22a、22b 第2の線路エレメント
23、23’ 疎結合線路部
30、30’ リアクタンス可変回路
31 第1の線路
31a~31c 第1の線路エレメント
32 疎結合線路部
33 第2の線路
33a~33c 第2の線路エレメント
34 疎結合線路部