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特開2024-162441配管保護構造、配管構造物および配管設置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162441
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】配管保護構造、配管構造物および配管設置方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 1/12 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
F16L1/12 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077944
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】田熊 靖史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 知広
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 康文
(57)【要約】
【課題】配管を海底から低コストで保護できる配管保護構造を提供する。
【解決手段】配管保護構造10は、気流搬送を行う配管である第1配管21を海底から保護する構造であって、海中を浮遊する第1配管21を海底から鉛直方向上側に離れた位置に係留する係留部11を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気流搬送を行う配管を海底から保護する構造であって、
海中を浮遊する前記配管を前記海底から鉛直方向上側に離れた位置に係留する係留部を備える、配管保護構造。
【請求項2】
前記係留部は、
前記配管の長手方向に沿って前記海底に配置される錘部と、
前記錘部と前記配管との間を連結する複数の連結部と、を備える、請求項1に記載の配管保護構造。
【請求項3】
前記錘部は、前記海底に対して前記配管の長手方向に沿って配置されるチェーンである、請求項2に記載の配管保護構造。
【請求項4】
前記配管に取り付けられる複数のフロートをさらに備え、
前記複数のフロートは、海水が前記配管内に侵入した場合において前記配管を海中に浮遊可能にする浮力を有する、請求項2に記載の配管保護構造。
【請求項5】
前記複数のフロートは、海水が前記配管内に充満した場合において前記配管を海中に浮遊可能にする浮力を有する、請求項4に記載の配管保護構造。
【請求項6】
前記複数のフロートは、海水が前記配管内に充満し、かつ、前記配管に水生生物が付着した場合において前記配管を海中に浮遊可能にする浮力を有する、請求項4に記載の配管保護構造。
【請求項7】
前記配管の長手方向において、前記配管に対する前記フロートの取付位置は、前記配管に対する前記連結部の連結位置に一致する、請求項4に記載の配管保護構造。
【請求項8】
前記配管は非岩場領域から岩場領域にかけて配置され、
前記複数の連結部において、前記配管と前記錘部との間における前記連結部の鉛直方向の長さは、前記非岩場領域から前記岩場領域に向かうほど徐々に長くなるように調整されている、請求項2に記載の配管保護構造。
【請求項9】
前記配管の長手方向に隣り合う前記連結部同士の間には、前記配管の外面が海中に露出可能な露出空間が存在する、請求項2に記載の配管保護構造。
【請求項10】
請求項2に記載の配管保護構造と、
前記配管保護構造が取り付けられる前記配管としての第1配管と、
前記第1配管に連続的に接続され前記配管保護構造が取り付けられない第2配管と、
前記海底に前記第2配管の長手方向に沿って配置される第2錘部と、
前記第2配管と前記第2錘部との間を連結する複数の第2連結部とを備え、
前記第2配管と前記第2錘部との間の距離は、前記第1配管と前記錘部との間の距離よりも短い、配管構造物。
【請求項11】
前記第1配管および前記第2配管の各端部は、互いに接続されるフランジ部を有する、請求項10に記載の配管構造物。
【請求項12】
前記第1配管の長手方向に沿って前記海底に配置される前記錘部としての第1錘部と、前記第2錘部とは、それぞれ別個のチェーンであり、
前記第1錘部の単位長さ当たりの重量は、前記第2錘部の単位長さ当たりの重量よりも大きい、請求項10に記載の配管構造物。
【請求項13】
陸上において、請求項1に記載の配管保護構造を前記配管に取り付けることで配管構造物を組み立てると共に、前記配管構造物に施工用フロートを取り付ける組立工程と、
前記施工用フロートにより前記配管構造物を海面に浮遊させた状態で、前記配管構造物を設置海域に配置する配置工程と、
前記設置海域で前記施工用フロートを前記配管構造物から切り離すことにより、前記配管構造物を降下させる降下工程と、
を含む配管設置方法。
【請求項14】
前記設置海域は、共同漁業権が設定された海域内である、請求項13に記載の配管設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気流搬送を行う配管を保護するための配管保護構造、配管構造物および配管設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海底に設置されるケーブルや取水管などの長尺体に対する保護構造として、一対の半割管が知られている(例えば特許文献1参照)。このような保護構造を長尺体に取り付ける際には、作業者が海中に潜り、一対の半割管の間に長尺体を配置させ、一対の半割管同士をボルト等で固定する作業が行われる。
【0003】
ところで、近年、大規模な沖合養殖が開発されており、沖合上の生簀群へ飼料を搬送するために、陸上または海上施設に設置された飼料貯留槽と、飼料貯留槽から生簀の近傍まで延設された配管と、配管内に圧縮空気を供給する空気源とを備える搬送システムが存在する(例えば特許文献2参照)。このような搬送システムでは、飼料が配管内を気流搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6363283号公報
【特許文献2】特開2018-011572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献2に記載の搬送システムでは、配管が主に海面に配置されているが、本発明者らは、気象や船などからの外的影響を受けにくい海中に配管を設置することを検討している。通常、配管を海中に設置する際には、海底の岩場等から配管を保護するために、特許文献1に記載のような一対の半割管を利用することが考えられる。しかし、配管をある程度の長さにわたって保護するためには、多数の半割管を準備する必要があり、設置にかかるコストが大きい。
【0006】
本発明は、気流搬送を行う配管を海底から低コストで保護できる配管保護構造、配管構造物および配管設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る配管保護構造は、気流搬送を行う配管を海底から保護する構造であって、海中を浮遊する前記配管を前記海底から鉛直方向上側に離れた位置に係留する係留部を備える。
【0008】
本発明の一態様において、前記係留部は、前記配管の長手方向に沿って前記海底に配置される錘部と、前記錘部と前記配管との間を連結する複数の連結部と、を備えることが好ましい。
【0009】
本発明の一態様において、前記錘部は、前記海底に対して前記配管の長手方向に沿って配置されるチェーンであることが好ましい。
【0010】
本発明の一態様に係る配管保護構造は、前記配管に取り付けられる複数のフロートをさらに備え、前記複数のフロートは、海水が前記配管内に侵入した場合において前記配管を海中に浮遊可能にする浮力を有することが好ましい。
また、本発明の一態様において、前記複数のフロートは、海水が前記配管内に充満した場合において前記配管を海中に浮遊可能にする浮力を有することが好ましい。
また、本発明の一態様において、前記複数のフロートは、海水が前記配管内に充満し、かつ、前記配管に水生生物が付着した場合において前記配管を海中に浮遊可能にする浮力を有することが好ましい。
【0011】
本発明の一態様では、前記配管の長手方向において、前記配管に対する前記フロートの取付位置は、前記配管に対する前記連結部の連結位置に一致することが好ましい。
【0012】
本発明の一態様において、前記配管は非岩場領域から岩場領域にかけて配置され、前記複数の連結部において、前記配管と前記錘部との間における前記連結部の鉛直方向の長さは、前記非岩場領域から前記岩場領域に向かうほど徐々に長くなるように調整されていることが好ましい。
【0013】
本発明の一態様において、前記配管の長手方向に隣り合う前記連結部同士の間には、前記配管の外面が海中に露出可能な露出空間が存在することが好ましい。
【0014】
本発明の一態様に係る配管構造物は、上述の配管保護構造と、前記配管保護構造が取り付けられる前記配管としての第1配管と、前記第1配管に連続的に接続され前記配管保護構造が取り付けられない第2配管と、前記海底に前記第2配管の長手方向に沿って配置される第2錘部と、前記第2配管と前記第2錘部との間を連結する複数の第2連結部とを備え、前記第2配管と前記第2錘部との間の距離は、前記第1配管と前記配管保護構造の前記錘部との間の距離よりも短い。
【0015】
本発明の一態様において、前記第1配管および前記第2配管の各端部は、互いに接続されるフランジ部を有することが好ましい。
【0016】
本発明の一態様において、前記第1配管の長手方向に沿って前記海底に配置される前記錘部としての第1錘部と、前記第2錘部とは、それぞれ別個のチェーンであり、前記第1錘部の単位長さ当たりの重量は、前記第2錘部の単位長さ当たりの重量よりも大きいことが好ましい。
【0017】
本発明の一態様に係る配管設置方法は、陸上において、上述の配管保護造を前記配管に取り付けることで配管構造物を組み立てると共に、前記配管構造物に施工用フロートを取り付ける組立工程と、前記施工用フロートにより前記配管構造物を海面に浮遊させた状態で、前記配管構造物を設置海域に配置する配置工程と、前記設置海域で前記施工用フロートを前記配管構造物から切り離すことにより、前記配管構造物を降下させる降下工程と、を含む。
【0018】
本発明の一態様において、前記設置海域は、共同漁業権が設定された海域内であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の配管保護構造は、配管を海中に浮遊した状態に維持することにより、配管を岩場等の海底から保護できる。また、本発明の配管保護構造は、従来の半割管を用いた保護構造よりも簡易であるため、コストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態にかかる配管保護構造が利用される養殖システムを示す図。
図2】本実施形態の配管保護構造を示す模式図。
図3】本実施形態の配管設置方法を説明する模式図。
図4】本実施形態の変形例に係る配管保護構造を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
[養殖システム]
本実施形態の配管保護構造10は、図1に示すような養殖システム100の配管20を保護可能なものである。以下、養殖システム100について簡単に説明する。
【0022】
図1において、養殖システム100は、海上に配置された複数の生簀101と、生簀101に飼料を搬送する搬送装置102とを備える。複数の生簀101は、任意の海域に配置されることで生簀群を構成する。搬送装置102は、陸上または海上施設に設置された給餌基地103と、給餌基地103から生簀群付近の海底へ至る配管20と、配管20の先端に設けられた分岐装置104と、分岐装置104から各生簀101へ至る複数の供給管105とを備える。
【0023】
給餌基地103は、飼料を貯留する貯留槽106と、配管20の内部に搬送気流を形成する気流発生装置107とを備える。貯留槽106は、いわゆるサイロなどで構成され、内部に粒状の飼料を貯留するとともに、飼料を所定量ずつ配管20に供給する。気流発生装置107は、電動モータもしくはエンジン駆動のコンプレッサなどで構成され、配管20内に圧縮空気を供給する。
【0024】
分岐装置104は、不図示の制御部により選択された供給管105と配管20との間を連結する。供給管105は、生簀101ごとに対応して設けられ、分岐装置104から対応する生簀101まで延びており、生簀101内に飼料を放出する放出部105Aを有する。
【0025】
上述の養殖システム100において、貯留槽106から配管20に供給された飼料は、配管20内に形成された気流によって気流搬送される。そして、気流搬送された飼料は、分岐装置104により選択された供給管105を介して、当該供給管105に対応する生簀101に供給される。
【0026】
[養殖システムの配管]
本実施形態の養殖システム100の配管20は、例えば高密度ポリエチレンなどの合成樹脂から構成される。この配管20は、内部を搬送気流が流通する状態において、海中に単体で浮遊可能であることが好ましい。
【0027】
配管20は、給餌基地103から海中に延び、主に海底に沿って配置される。配管20が配置される海底には、配管20を損傷する可能性が高い岩礁や捨て石などが存在する岩場領域R1と、配管20を損傷する可能性が低い砂地などの非岩場領域R2とが存在する。このため、配管20は、岩場領域R1を通過する第1配管21と、第1配管21に接続されかつ非岩場領域R2に配置される第2配管22とを含むものとする。第1配管21および第2配管22の各端部は、互いに接続されるフランジ部211,221を有する(図2参照)。
なお、配管20における第1配管21の範囲や数は、配管20が配置される海底における岩場領域R1の範囲や数に応じて決定される。
【0028】
第1配管21は、後述する配管保護構造10によって海底から鉛直方向上側に離れた位置に係留される。なお、非岩場領域R2が岩場領域R1に隣接して存在する場合、岩場領域R1を通過する第1配管21の端部は、非岩場領域R2に配置されることが好ましい。
【0029】
第2配管22は、任意の設置構造30によって海中に係留される。本実施形態の設置構造30は、海底に第2配管22の長手方向に沿って配置される錘部31と、第2配管22と錘部31との間を連結する複数の連結部32とを備える。
錘部31は、本発明の第2錘部に相当し、第2配管22を係留可能な重量を有する。なお、本実施形態の錘部31は、チェーンである。連結部32は、本発明の第2連結部に相当し、例えば第2配管22および錘部31を結びつけるロープである。
第2配管22と錘部31との間の鉛直方向の距離は、特に限定されないが、後述する配管保護構造10における第1配管21と錘部12との間の鉛直方向の距離よりも短いことが好ましく、第2配管22と錘部31とが接触していてもよい。
【0030】
なお、第1配管21または第2配管22の「長手方向」とは、配管20の延設方向に対応する。また、第1配管21、配管保護構造10、第2配管22および設置構造30をまとめて配管構造物110と称する。
【0031】
[配管保護構造]
本実施形態の配管保護構造10は、第1配管21を岩場領域R1の海底から保護するものである。以下、本実施形態の配管保護構造10について説明する。
【0032】
配管保護構造10は、図2に示すように、海中を浮遊する第1配管21を海底から鉛直方向上側に離れた位置に係留する係留部11を備える。この係留部11は、海底に第1配管21の長手方向に沿って配置される錘部12と、第1配管21と錘部12との間を連結する複数の連結部13とを備える。
【0033】
錘部12は、海底に対して第1配管21の長手方向に沿って配置されるチェーンである。この錘部12は、本発明の錘部(第1錘部)に相当し、後述するフロート14が取り付けられた第1配管21を係留可能な重量を有する。なお、錘部12は、上述の錘部31とは別個のチェーンであり、錘部12の単位長さ当たりの重量は、錘部31の単位長さ当たりの重量よりも大きい。例えば、錘部12,31が同じ材料により構成される場合、錘部12を構成するチェーンの線径は、錘部31を構成するチェーンの線径よりも大きい。
【0034】
連結部13は、例えば第1配管21および錘部12を結びつけるロープである。第1配管21と錘部12との間の連結部13の鉛直方向の長さLは、第1配管21が海底から所望の高さに配置されるように調整されている。
例えば、図2に示すように、非岩場領域R2に配置される第1配管21の各端部から岩場領域R1に向かって、連結部13のピッチごとに、連結部13の長さLが長くなっている。また、第1配管21の長手方向の中央部分では、複数の連結部13において、連結部13の長さLが一定である。ここで、第1配管21の長手方向の中央部分における連結部13の長さLは、水流により上下の揺れが生じた場合であっても、第1配管21が海底に接触しない程度(例えば1~2m程度)に調整されていることが好ましい。第1配管21は、これらの連結部13により係留されることで、垂直方向上側に凸となる弧形状を成すように曲げられてもよいし、予め弧形状に形成されていてもよい。
連結部13のピッチは、一定であることが好ましいが、潮流や海底条件に応じて調整されてもよい。
【0035】
本実施形態の配管保護構造10は、第1配管21に取り付けられる複数のフロート14をさらに備える。これら複数のフロート14は、第1配管21に上向きの力を与え、第1配管21が通常時よりも重くなった場合であっても、第1配管21を海中に浮遊可能にする。なお、第1配管21の通常時とは、搬送気流などにより内部が空気に満たされた状態であり、フロート14の浮力なしに浮遊可能な状態とする。
【0036】
第1配管21が通常時よりも重くなる場合として、配管20(図1参照)のいずれかの箇所に穴が開くなどの異常が発生することにより、配管20内に海水が流入(または充満)する場合が挙げられる。そこで、フロート14の浮力は、当該フロート14の両隣のフロート14間における第1配管21の重量と、当該第1配管21の内部にある海水重量との合計の1/2よりも大きいことが好ましい。
【0037】
また、第1配管21が通常時よりも重くなる場合として、年月経過により、第1配管21にフジツボなどの水生生物が付着する場合が挙げられる。そこで、フロート14の浮力は、当該フロート14の両隣のフロート14間における第1配管21の重量と、当該第1配管21の内部にある海水重量と、当該第1配管21に付着見込みの水生生物の重量との合計の1/2よりも大きいことが好ましい。
【0038】
第1配管21の長手方向において、第1配管21に対するフロート14の取付位置は、第1配管21に対する連結部13の連結位置に一致する。また、第1配管21の長手方向において、第1配管21に対するフロート14の取付ピッチPは、特に限定されないが、第1配管21に対する連結部13の連結ピッチに等しい。具体的には、第1配管21に対するフロート14の取付ピッチPは、隣り合うフロート14同士の間、または、第1配管21の端部と当該端部に隣接するフロート14との間において、第1配管21の揺れを抑制可能な程度(例えば2m)に調整されることが好ましい。
【0039】
上述の配管保護構造10は、第1配管21をほぼ被覆しない状態で第1配管21に取り付けらえる。換言すると、配管保護構造10では、第1配管21の長手方向に隣り合う連結部13同士の間において、第1配管21を海中に露出させる露出空間15が広く確保される。
【0040】
[本実施形態の効果]
本実施形態の配管保護構造10は、上述したように、気流搬送を行う配管である第1配管21を海底から保護する構造であって、海中を浮遊する第1配管21を海底から鉛直方向上側に離れた位置に係留する係留部11を備える。
このような構成では、第1配管21を海中に浮遊した状態に維持できるため、第1配管21を岩場等の海底から保護できる。また、本実施形態の配管保護構造10は、従来の半割管を用いた保護構造よりも簡易であるため、コストを削減できる。
【0041】
本実施形態において、係留部11は、第1配管21の長手方向に沿って海底に配置される錘部12と、錘部12と第1配管21との間を連結する複数の連結部13と、を備える。
このような構成では、海中を浮遊する第1配管21を好適に係留することができる。例えば、錘部12の配置を調整することで、第1配管21を海底上の所望の平面位置に配置できる。また、複数の連結部13の各長さを調整することで、第1配管21を海底からの所望の高さ位置に配置できる。
【0042】
本実施形態において、錘部12は、海底に対して第1配管21の長手方向に沿って配置されるチェーンである。
このような構成によれば、錘部12は、一連の連続した形状を有するため、コンクリートブロックのように海底を転がることがない。よって、錘部12を第1配管21の長手方向に沿った状態に設置することが容易である。
【0043】
本実施形態の配管保護構造10は、第1配管21に取り付けられる複数のフロート14をさらに備え、複数のフロート14は、海水が第1配管21内に侵入した場合において第1配管21を海中に浮遊させるための浮力を有する。特に、本実施形態において、複数のフロート14は、海水が第1配管21内に充満した場合、または、海水が第1配管21内に充満しかつ第1配管21に水生生物が付着した場合であっても、第1配管21を海中に浮遊させるための浮力を有する。
このような構成では、第1配管21が通常時よりも重量が増した場合において、第1配管21が海中に浮遊された状態を維持できる。これにより、第1配管21が岩場等の海底に接触することが好適に抑制される。
【0044】
本実施形態では、第1配管21の長手方向において、第1配管21に対するフロート14の取付位置は、第1配管21に対する連結部13の連結位置に一致する。
このような構成では、第1配管21に加わる曲げモーメントを抑制できるため、第1配管21の耐久性を向上させることができる。
【0045】
本実施形態において、第1配管21は非岩場領域R2から岩場領域R1にかけて配置され、複数の連結部13において、第1配管21と錘部12との間における連結部13の長さLは、非岩場領域R2から岩場領域R1に向かうほど徐々に長くなるように調整されている。
このような構成では、第1配管21に過度な曲げが生じることを抑制しつつ、第1配管21が岩場領域R1の海底に接触しないように第1配管21を配置させることができる。
【0046】
本実施形態の配管20は、養殖システム100に利用されるものであるため、気流搬送される飼料が配管20の内側壁面に接触する。このため、配管20の経年劣化に伴って配管20に穴が開く可能性がある。
従来の配管保護構造である一対の半割管は、配管の外面を覆っているため、配管に穴が開いた場合に、穴の位置を特定することが困難である。また、配管の穴周りに補修カバーを取り付ける場合、配管を海底から持ち上げて、一対の半割管を取り外した後に、補修カバーを取り付ける工程を行うため、手間がかかる。
一方、本実施形態の配管保護構造10では、第1配管21の長手方向に隣り合う連結部13同士の間において、第1配管21の外面を海中に露出させる露出空間15が存在する。このため、第1配管21に穴があいた場合には、露出空間15から第1配管21の穴の位置を特定することができる。また、第1配管21の穴周りに補修カバーを取り付ける場合、第1配管21を持ち上げる必要がなく、露出空間15から第1配管21に補修カバーを取り付けることができるため、従来に比べて修理にかかる手間を削減できる。
【0047】
本実施形態の配管構造物110は、上述の第1配管21、配管保護構造10、第2配管22および設置構造30を備え、第2配管22と錘部31との間の距離は、第1配管21と錘部12との間の距離よりも短い。
このような構成では、配管20のうち保護が必要な部分となる第1配管21を海底から十分に離して配置させる一方、配管20のうち保護が必要でない部分となる第2配管22を海底に近接配置させることができる。これにより、第2配管22に対する水流の影響を抑制し、配管20の配置を好適に維持できる。
【0048】
本実施形態の第1配管21および第2配管22の各端部は、互いに接続されるフランジ部211,221を有する。
このような構成では、配管構造物110の製造時、第1配管21と第2配管22とをフランジ接続することで配管20が形成される。ここで、配管20の形成前には、第1配管21および第2配管22が分割された状態であるため、取り扱いが容易である。
【0049】
本実施形態の錘部12,31は、それぞれ別個のチェーンであり、錘部12の単位長さ当たりの重量は、錘部31の単位長さ当たりの重量よりも大きい。
このような構成では、錘部12,31が別個のチェーンであることにより、第1配管21および第2配管22のそれぞれに錘部12,31を取り付けることが容易である。また、錘部12,31として、それぞれに必要十分な単位長さ当たりの重量を有するチェーンを利用できる。例えば、錘部12は、海中を浮遊する第1配管21を係留するための重量を必要とするが、錘部31は、海底近くに配置される第2配管22を係留するため、錘部12ほどの重量を必要としない。このため、錘部31を錘部12よりも軽くすることで、全体のコストを抑えることができる。
【0050】
[配管設置方法]
以下、本実施形態の配管20を設置する方法の一例について、図3を参照して説明する。
まず、陸上において、配管20に対して配管保護構造10および設置構造30を取り付けることで配管構造物110を組み立てると共に、この配管構造物110に施工用フロート40を取り付ける(組立工程)。
【0051】
次に、図3に示すように、陸上で組み立てられた配管構造物110を船50により曳航し、設置海域に配置する(配置工程)。このとき、配管構造物110は、施工用フロート40により海面に浮遊した状態で、設置海域に配置される。また、配管20のうち、第1配管21は、岩場領域R1に対応する海面に配置され、第2配管22は、非岩場領域R2に対応する海面に配置される。第1配管21および錘部12はロープ等より一体的にまとめられてもよい。
【0052】
その後、施工用フロート40を配管構造物110から切り離すことで、配管構造物110を設置海域の海底に向かって降下させる(降下工程)。以上により、配管構造物110が設置海域に設置される。
【0053】
上述の配管設置方法では、陸上で配管20に配管保護構造10および設置構造30を取り付けるため、作業者の海中作業がほぼ必要ない。これにより、海中作業にかかる費用を削減できる。
【0054】
また、本実施形態において、第1配管21の設置海域は、潮流が最大2ノット以下の場所であることが好ましい。すなわち、第1配管21の設置海域は、比較的潮流が穏やかな沖合の海域であることが好ましい。これにより、海中に浮遊した状態になる第1配管21の過度な揺れを抑え、配管20の耐久性を向上させることができる。
【0055】
また、本実施形態において、第1配管21の設置海域は、共同漁業権が設定された海域内であることが好ましい。これにより、第1配管21の設置海域を利用する関係者が特定可能であり、第1配管21の近傍に漁網や錨が設置されないように調整することが容易になる。
【0056】
[変形例]
本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
【0057】
前記実施形態では、錘部12が一本のチェーンである場合を例示しているが、錘部12は複数のチェーンであってもよい。
例えば、図4に示すように、変形例に係る錘部12は、互いの間に隙間をあけて平行配置された2本のチェーン12A,12Bを含んでもよい。この場合、チェーン12A,12Bは、図4の示すような平面視において、第1配管21の両側に配置される。また、複数の連結部13は、チェーン12A,12Bと第1配管21とをそれぞれ連結する。このような変形例では、第1配管21の水平方向の揺れを抑制することができる。
【0058】
また、前記実施形態において、錘部12は、チェーンであることに限定されない。例えば、錘部12は、第1配管21の長手方向に沿って海底に配置される複数のコンクリートブロックであってもよい。
【0059】
前記実施形態において、連結部13はロープであることに限定されない。例えば、連結部13は、ワイヤーであってもよいし、長尺状の任意の部材であってもよい。
【0060】
前記実施形態において、第1配管21に対するフロート14の取付位置、フロート14の浮力、第1配管21に対する連結部13の取付位置、および、連結部13の長さなどは、第1配管21の具体的構造や第1配管21が配置される海域の具体的条件などに応じて適宜変更可能である。
例えば、前記実施形態において、第1配管21の剛性が高い場合など、第1配管21に対するフロート14の取付位置は、第1配管21に対する連結部13の連結位置に一致しなくてもよい。
また、第1配管21に取り付けられるフロート14の数は、第1配管21に取り付けられる連結部13の数よりも少なくてもよい。この場合、第1配管21に対するフロート14の取付ピッチPは、第1配管21に対する連結部13の連結ピッチの整数倍であってもよい。
あるいは、第1配管21に取り付けられるフロート14の数は、第1配管21に取り付けられる連結部13の数よりも多くてもよい。この場合、第1配管21に対するフロート14の取付ピッチPは、第1配管21に対する連結部13の連結ピッチの「1/整数」倍であってもよい。
【0061】
前記実施形態において、配管保護構造10は、複数のフロート14を備えなくてもよい。このような変形例によっても、通常時の第1配管21が岩場等の海底に接触することを抑制できる。
【0062】
前記実施形態において、係留部11は、浮力体である第1配管21を海中に浮遊した状態に留める錘部12を含んで構成されるものであるが、本発明はこれに限定されない。
例えば、変形例に係る係留部11は、錘部12の替わりに、沈設体である第1配管21を海中に浮遊した状態に留める浮力体を含んで構成されてもよい。この場合、第1配管21は、連結部を介して、浮力体から海中に吊り下げられた状態に配置される。浮力体は、海底等に係留されたフロートである。このような変形例によっても、第1配管21が海中を浮遊した状態で係留されるため、第1配管21を岩場等の海底から保護できる。
【0063】
前記実施形態では、養殖システム100の配管20を保護する場合を説明しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明は、気流搬送を行う任意の配管を保護することに利用可能である。
【符号の説明】
【0064】
10…配管保護構造、11…係留部、12…錘部、12A,12B…チェーン、13…連結部、14…フロート、15…露出空間、20…配管、21…第1配管、211…フランジ部、221…フランジ部、22…第2配管、30…設置構造、31…錘部、32…連結部、40…施工用フロート、50…船、100…養殖システム、101…生簀、102…搬送装置、103…給餌基地、104…分岐装置、110…配管構造物、105…供給管、105A…放出部、106…貯留槽、107…気流発生装置、R1…岩場領域、R2…非岩場領域。
図1
図2
図3
図4