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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162450
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】電池システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/10 20060101AFI20241114BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241114BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20241114BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20241114BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20241114BHJP
   H01M 50/124 20210101ALI20241114BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241114BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20241114BHJP
【FI】
H02J7/10 L
H01M10/48 301
H01M10/48 P
H01M10/44 P
H01M50/105
H01M10/0562
H01M50/124
H02J7/00 302A
H02J7/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077956
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩原 英輝
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 浩
(72)【発明者】
【氏名】小熊 泰正
(72)【発明者】
【氏名】吉田 淳
(72)【発明者】
【氏名】右田 翼
(72)【発明者】
【氏名】内田 義宏
【テーマコード(参考)】
5G503
5H011
5H029
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA10
5G503CB11
5G503DA07
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD04
5G503GD06
5H011AA02
5H011CC08
5H029AJ11
5H029AM11
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF32
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF51
(57)【要約】
【課題】セルの外装の耐久性の悪化を抑制する。
【解決手段】ECUは、充放電制御が実行中であるか否かを判定するステップ(S100)と、充放電制御が実行中であると判定される場合(S100にてYES)、端子部の温度を取得するステップ(S102)と、充電電力の制限値Winと放電電力の制限値Woutとを設定するステップ(S104)と、設定後の充電電力の制限値Winと設定後の放電電力の制限値Woutを用いて充放電制御を実行するステップ(S106)とを含む、処理を実行する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全固体電池と、
前記全固体電池のセルの端子の温度についての温度情報を取得する取得装置と、
前記全固体電池と電気機器との間で伝送される伝送電力を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記取得装置によって取得された前記温度情報を用いて前記伝送電力の大きさに上限値を設定する、電池システム。
【請求項2】
前記取得装置は、前記端子に設けられ、前記端子の温度を検出する温度センサを含み、
前記制御装置は、前記温度センサによって検出された前記端子の温度が高い場合には、前記端子の温度が低い場合と比較して、値が減少するように前記上限値を設定する、請求項1に記載の電池システム。
【請求項3】
前記全固体電池は、複数のセルを含み、
前記取得装置は、前記複数のセルのうちの少なくともいずれかの端子に設けられたサーミスタと、前記複数のセル間に設けられた面圧センサと、前記複数のセルの各々に設けられた温度センサと、前記複数のセルの抵抗値を検出するための検出装置とのうちの少なくとも一つを含み、
前記制御装置は、前記取得装置によって取得された前記温度情報を用いて前記端子の温度を推定し、推定された前記端子の温度が高い場合には、前記端子の温度が低い場合と比較して、値が減少するように前記上限値を設定する、請求項1に記載の電池システム。
【請求項4】
前記全固体電池は、前記複数のセル間を接続するバスバーをさらに含み、
前記電池システムは、前記バスバーに流れる電流を検出する電流センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記取得装置によって取得された前記温度情報に加えて前記電流センサによる検出結果を用いて前記端子の温度を推定する、請求項3に記載の電池システム。
【請求項5】
前記全固体電池の前記セルは、ラミネートフィルムを外装材とする、請求項1~4のいずれかに記載の電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池として、たとえば、固体電解質を用いた全固体電池が公知である。全固体電池のセルは、たとえば、熱融着されたシール部を有するラミネートフィルムによって覆われて外装が構成される場合がある。このようなラミネートフィルムに覆われるセルについて、たとえば、特開2021-114373号公報(特許文献1)には、シール部の温度に基づいて水分透過度を算出し、水分透過度がしきい値以上である場合に、シール部を冷却する制御を実行する技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-114373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のようなセルを覆うラミネートフィルムは、水分の浸入による影響に限定されるものではなく、たとえば、セルの発熱あるいは隣接するセルからの受熱による影響を受ける場合がある。発熱あるいは受熱によりセルの端子の温度が上昇すると端子に密着するラミネートフィルムの外装としての耐久性に影響を及ぼす可能性がある。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、セルの外装の耐久性の悪化を抑制する電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に係る電池システムは、全固体電池と、全固体電池のセルの端子の温度についての温度情報を取得する取得装置と、全固体電池と電気機器との間で伝送される伝送電力を制御する制御装置とを備える。制御装置は、取得装置によって取得された温度情報を用いて伝送電力の大きさに上限値を設定する。
【0007】
このようにすると、たとえば、端子の高温時に上限値を低く設定するなど端子の温度の高低に対応させて上限値を設定することができる。そのため、上限値を低く設定することによって端子におけるジュール熱の発生量の増加を抑制することができる。これにより、端子の温度の上昇を抑制し、ラミネートフィルムの耐久性に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0008】
ある実施の形態においては、取得装置は、端子に設けられ、端子の温度を検出する温度センサを含む。制御装置は、温度センサによって検出された端子の温度が高い場合には、端子の温度が低い場合と比較して、値が減少するように上限値を設定する。
【0009】
このようにすると、端子の高温時に上限値を低く設定することができるため、端子においてジュール熱の発生量の増加を抑制することができる。これにより、端子の温度の上昇を抑制し、ラミネートフィルムの耐久性に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0010】
さらにある実施の形態においては、全固体電池は、複数のセルを含む。取得装置は、複数のセルのうちの少なくともいずれかの端子に設けられたサーミスタと、複数のセル間に設けられた面圧センサと、複数のセルの各々に設けられた温度センサと、複数のセルの抵抗値を検出するための検出装置とのうちの少なくとも一つを含む。制御装置は、取得装置によって取得された温度情報を用いて端子の温度を推定し、推定された端子の温度が高い場合には、端子の温度が低い場合と比較して、値が減少するように上限値を設定する。
【0011】
このようにすると、サーミスタ、面圧センサ、温度センサあるいは抵抗値を検出するための検出装置によって取得される温度情報を用いて端子の温度を精度高く推定することができる。
【0012】
さらにある実施の形態においては、全固体電池は、複数のセル間を接続するバスバーをさらに含む。電池システムは、バスバーに流れる電流を検出する電流センサをさらに備える。制御装置は、取得装置によって取得された温度情報に加えて電流センサによる検出結果を用いて端子の温度を推定する。
【0013】
このようにすると、取得装置によって取得された温度情報に加えて電流センサによって検出された電流値を用いることによってセルの端子の温度を精度高く推定することができる。
【0014】
さらにある実施の形態においては、全固体電池のセルは、ラミネートフィルムを外装材とする。
【0015】
このようにすると、セルの端子の温度の上昇を抑制することにより、ラミネートフィルムの耐久性に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によると、セルの外装の耐久性の悪化を抑制する電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施の形態に係る電池システムを搭載する車両の構成の一例を示す図である。
図2】電池パックの構成の一例を示す図である。
図3】ECUで実行される処理の一例を示すフローチャートである。
図4】温度と制限値との関係を示すマップの一例を示す図である。
図5】変形例における電池パックの構成の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0019】
以下では、本実施の形態に係る電池システム90が電気自動車(以下、車両と記載する)1に搭載される場合を一例として説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態に係る電池システム90を搭載する車両1の構成の一例を示す図である。図1に示すように、車両1は、MG(Motor Generator)10と、動力伝達ギア20と、駆動輪30と、PCU(Power Control Unit)40と、SMR(System Main Relay)50と、充電リレー(以下、CHRと記載する)60と、充電装置70と、インレット80と、電池パック100と、ECU(Electronic Control Unit)300とを備える。本実施の形態における電池システム90は、PCU40と、充電装置70と、電池パック100と、ECU300とによって構成される。電池システム90は、SMR50とCHR60とをさらに含むようにしてもよい。
【0021】
MG10は、たとえば、三相交流回転電機であって、電動機(モータ)としての機能と発電機(ジェネレータ)としての機能とを有する。MG10の出力トルクは、減速機および差動装置等を含んで構成された動力伝達ギア20を介して駆動輪30に伝達される。
【0022】
車両1の制動時には、駆動輪30によりMG10が駆動され、MG10が発電機として動作する。これにより、MG10は、車両1の運動エネルギーを電力に変換する回生制動を行なう制動装置としても機能する。MG10における回生制動力により生じた回生電力は、電池パック100に蓄えられる。
【0023】
PCU40は、MG10と電池パック100との間で双方向に電力を変換する電力変換装置である。PCU40は、たとえば、ECU300からの制御信号に基づいて動作するインバータとコンバータとを含む。
【0024】
コンバータは、電池パック100の放電時に、電池パック100から供給された電圧を昇圧してインバータに供給する。インバータは、コンバータから供給された直流電力を交流電力に変換してMG10を駆動する。
【0025】
一方、インバータは、電池パック100の充電時に、MG10によって発電された交流電力を直流電力に変換してコンバータに供給する。コンバータは、インバータから供給された電圧を電池パック100の充電に適した電圧に降圧して電池パック100に供給する。
【0026】
また、PCU40は、ECU300からの制御信号に基づいてインバータおよびコンバータの動作を停止することによって充放電を休止する。なお、PCU40は、コンバータを省略した構成であってもよい。
【0027】
SMR50は、電池パック100とPCU40とを結ぶ電力線に電気的に接続されている。SMR50がECU300からの制御信号に応じて閉成されている(すなわち、導通状態である)場合、電池パック100とPCU40との間で電力の授受が行なわれ得る。一方、SMR50がECU300からの制御信号に応じて開放されている(すなわち、遮断状態である)場合、電池パック100とPCU40との間の電気的な接続が遮断される。
【0028】
CHR60は、電池パック100と充電装置70との間に電気的に接続されている。CHR60がECU300からの制御信号に応じて閉成されており(すなわち、導通状態であって)、後述するインレット80に外部電源である系統電源160のコネクタ150が取り付けられている場合には、充電装置70を用いた電池パック100の充電が行なわれ得る状態になる。一方、CHR60がECU300からの制御信号に応じて開放されている場合(すなわち、遮断状態である場合)、電池パック100と充電装置70との間の電気的な接続が遮断される。
【0029】
インレット80は、車両1の外装部分にリッド等のカバー(図示せず)とともに設けられる。インレット80は、後述するコネクタ150が機械的に接続可能な形状を有する。インレット80およびコネクタ150の双方には接点が内蔵されており、インレット80にコネクタ150が取り付けられると接点同士が接触して、インレット80とコネクタ150とが電気的に接続される。
【0030】
コネクタ150は、充電ケーブル170を介して系統電源160に接続される。そのため、コネクタ150が車両1のインレット80に接続される場合には、系統電源160からの電力が、充電ケーブル170、コネクタ150およびインレット80を介して車両1に供給され得る状態になる。
【0031】
充電装置70は、CHR60を介して電池パック100に電気的に接続されているとともに、インレット80に電気的に接続されている。充電装置70は、ECU300からの制御信号に応じて、系統電源160から供給される交流電力を直流電力に変換して電池パック100に出力する。充電装置70は、たとえば、インレット80にコネクタ150が取り付けられた場合に、系統電源160から供給される電力を用いて電池パック100を充電する。以下、このような系統電源160を用いた充電を「外部充電」と記載する場合がある。
【0032】
電池パック100は、MG10を駆動するための電力を蓄える蓄電装置である。電池パック100は、再充電が可能な直流電源であり、たとえば、複数個のセル110が直列に接続されて構成される。セル110は、正極と負極との間のイオンの移動に固体の電解質が用いられる二次電池であって、その構成部材が全固体化された全固体電池である。セル110を構成する材料としては、全固体電池を構成する材料として公知の材料が用いられればよく、後述する。
【0033】
ECU300には、電圧センサ210と、電流センサ220と、端子温度センサ230とが接続される。
【0034】
電圧センサ210は、複数のセル110の各々の端子間の電圧Vbを検出する。電流センサ220は、電池パック100に入出力される電流Ibを検出する。端子温度センサ230は、複数のセル110の正極端子または負極端子に設けられ、設けられた端子の温度(以下、端子温度と記載する)Tbを検出する。各センサは、その検出結果をECU300に出力する。
【0035】
ECU300は、CPU(Central Processing Unit)301と、メモリ(ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory))302とを含む。ECU300は、各センサから受ける信号、ならびにメモリ302に記憶されたマップおよびプログラム等の情報に基づいて、車両1が所望の状態となるように各機器(たとえば、PCU40または充電装置70)を制御する。
【0036】
電池パック100の蓄電量は、一般的に、満充電容量に対する、現在の蓄電量の割合を百分率で示した、SOCによって管理される。ECU300は、電圧センサ210、電流センサ220および端子温度センサ230による検出値に基づいて、電池パック100のSOCを逐次算出する機能を有する。SOCの算出方法としては、たとえば、電流値積算(クーロンカウント)による手法、または、開放電圧(OCV:Open Circuit Voltage)の推定による手法など、種々の公知の手法を採用できる。
【0037】
車両1の運転中には、MG10による回生電力または放電電力によって、電池パック100が充電または放電される。ECU300は、ドライバから要求された車両の駆動力(アクセル開度に応じて設定される要求駆動力)または制動力(ブレーキペダル踏み込み量や車速に応じて設定される要求減速力)を発生するためのパワーがMG10から出力されるようにMG10の出力を制御する。
【0038】
一方、車両1が停止状態であって、インレット80にコネクタ150が接続される場合には、ECU300は、CHR60をオン状態にするとともに充電装置70を動作させて系統電源160からの電力を用いて電池パック100を充電する。
【0039】
ECU300は、たとえば、電池パック100のSOCが予め設定された(あるいは、電池パック100の劣化状態に応じて設定された)上限値になるまで充電を継続し、電池パック100のSOCが上限値に到達すると充電を終了する。
【0040】
ECU300は、たとえば、電池パック100の温度等に応じて電池パック100を充電するときの充電電力の制限値(以下、Winと記載する)を設け、制限値Winを超えた充電電力で充電されないようにPCU40や充電装置70を制御する。さらに、ECU300は、たとえば、電池パック100の温度等に応じて電池パック100を放電するときの放電電力の制限値(以下、Woutと記載する)を設け、制限値Woutを超えた放電電力で放電されないようにPCU40を制御する。
【0041】
以上のような構成を有する車両1に搭載される電池パック100は、複数のセル110を含む。そして、複数のセル110は、たとえば、外装としてラミネート等によって覆われるように構成される。
【0042】
図2は、電池パック100の構成の一例を示す図である。図2に示すように、電池パック100は、正極端子102と負極端子104と外装となるラミネートフィルム118とを含む複数のセル110と、複数のセルのうちのいずれかのセル110の正極端子102と、当該セルに隣接するセル110の負極端子104とを接続する、複数のバスバー106と、複数のセルを予め定められた数(図2においては7個)を積層して構成される積層体を収納する電池ケース112と、終端となる負極端子104に一方端が接続されるバスバー108とを含む。
【0043】
複数のセル110の各々は、正極集電体層と、正極活物質層と、固体電解質層と、負極活物質層と、負極集電体層とを含む電極体を含む。
【0044】
固体電解質層に含まれる固体電解質材料としては、全固体電池の固体電解質として利用可能な材料であれば特に限定されるものではない。固体電解質材料としては、たとえば、硫化物系非晶質固体電解質や酸化物系非晶質固体電解質等であってもよい。
【0045】
正極層および負極層に含まれる活物質材料としては、全固体電池の電極活物質として利用可能な材料であればよく特に限定されるものではない。活物質材料としては、たとえば、ニッケル・コバルト・マンガン酸リチウム(NCM)、ニッケル・コバルト・アルミニウムさんリチウム(NCA)、コバルト酸リチウム(LCO)、(チタン酸リチウム)LTO、マンガン酸リチウム(LMO)等の材料であってもよい。
【0046】
正極層および負極層は、導電助材粒子を含んでもよい。導電助材粒子としては、たとえば、黒鉛、カーボンブラック等を用いることができる。
【0047】
正極集電体および負極集電体の材料としては、導電性を有し、正極集電体および負極集電体としてのそれぞれ機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、たとえば、SUS(Steel Use Stainless)、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、チタン、およびカーボン等を挙げることができる。さらに、正極集電体および負極集電体の形状としては、たとえば、箔状、板状、メッシュ状等を挙げることができる。正極集電体に正極端子が接続される。負極集電体に負極端子が接続される。
【0048】
電極体は、正極集電体層と、正極活物質層と、固体電解質層と、負極活物質層と、負極集電体層とがこの順序で積層された第1素子と、負極集電体層を共有して、逆順序で積層された第2素子とを含み、第1素子および第2素子が交互に複数積層されて構成される。セル110の負極端子104には、複数の素子のうちの負極集電体層の各々が接続され、セル110の正極端子102には、複数の素子のうちの正極集電体層の各々が接続される。セル110の正極端子102と負極端子104とは、図2の紙面奥-手前方向に配置される。セル110と隣接するセル110とは、互いの正極端子102と負極端子104とが対向する位置関係となるように積層される。図2には、複数のセル110の正極端子102および負極端子104のいずれかを含む断面が示されている。
【0049】
図2に示すように複数のセル110の各々の電極体には、ラミネートフィルム118が外装として覆われている。ラミネートフィルム118は、電極体の端子部(正極端子102および負極端子104)に密着した状態になることで内部へのほこりや水の浸入を防いでいる。
【0050】
以上のような構成を有する電池パック100においては、上述のような複数のセル110の電極体を覆うラミネートフィルム118は、隣接する他のセル110からバスバー106を介した受熱による影響を受ける場合がある。すなわち、バスバー106を介してセル110の端子の温度が上昇すると、端子部に密着するラミネートフィルム118の耐久性に影響を及ぼす可能性がある。
【0051】
そこで、本実施の形態においては、ECU300が、全固体電池である複数のセル110の端子部の温度についての温度情報を用いて電池パック100と電気機器(たとえば、PCU40あるいは充電装置70)との間で伝送される伝送電力の大きさに上限値を設定するものとする。
【0052】
このようにすると、複数のセル110のうちのいずれかのセル110の端子部の高温時に上限値を低く設定するなど端子部の温度の高低に対応させて上限値を設定することができるため、端子部の温度が外装であるラミネートフィルム118の耐久性に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0053】
以下、ECU300において実行される処理の一例について図3を参照しつつ説明する。図3は、ECU300で実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、車両1の運転中や外部電源を用いた充電中においてECU300により、所定の周期毎に繰り返し実行される。
【0054】
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、ECU300は、充放電制御の実行中であるか否かを判定する。ECU300は、電池パック100に対して充電制御および放電制御のうちのいずれかが実行されている場合に充放電制御の実行中であると判定する。ECU300は、たとえば、電流センサ220によって検出される電流の大きさが予め定められた値以上である場合に充電制御および放電制御のうちのいずれかが実行されていると判定してもよい。あるいは、ECU300は、PCU40に対して充電制御および放電制御のうちのいずれかの制御を実行するための制御信号を出力した後であって、当該制御を停止するための制御信号を出力していない場合には充電制御および放電制御のうちのいずれかが実行されていると判定してもよい。あるいは、ECU300は、充電制御および放電制御のうちのいずれかの制御が実行される際にオン状態にされ、当該制御が停止される際にオフ状態にされるフラグがオン状態である場合に充電制御および放電制御のうちのいずれかが実行されていると判定してもよい。充放電制御の実行中であると判定される場合(S100にてYES)、処理はS102に移される。
【0055】
S102にて、ECU300は、複数のセル110の各々の端子部の温度を端子温度センサ230を用いて取得する。
【0056】
S104にて、ECU300は、充電電力の制限値Winおよび放電電力の制限値Woutを設定する。
【0057】
具体的には、ECU300は、たとえば、複数のセル110の各々の端子部の温度のうちの最大となる温度(以下、最大温度と記載する)を特定し、特定された最大温度に対応した充電電力の制限値Winと放電電力の制限値Woutとを設定する。なお、ECU300は、最大温度に代えて複数のセルの各々の端子部の温度の平均値を用いて制限値Win,Woutを設定してもよい。
【0058】
ECU300は、たとえば、温度と制限値との関係を示すマップ等を用いて特定された最大温度から充電電力の制限値Winと放電電力の制限値Woutとを設定する。図4は、温度と制限値との関係を示すマップの一例を示す図である。図4の横軸は、端子部の温度を示す。図4の縦軸は、充電電力の制限値Win(負方向)と、放電電力の制限値Wout(正方向)とを示す。図4のLN1は、端子部の温度変化に対する放電電力の制限値Woutの変化を示す。図4のLN2は、端子部の温度変化に対する充電電力の制限値Winの変化を示す。
【0059】
図4のLN1に示すように、端子部の温度と放電電力の制限値Woutとの関係は、端子部の温度が予め定められた第1温度Tb(0)になるまでは、放電電力の制限値Woutとして予め定められた値Wout(1)が設定される関係となる。そして、端子部の温度と放電電力の制限値Woutとの関係は、端子部の温度が第1温度Tb(0)以上になるときには、端子部の温度が高くなるほど大きさが小さくなるように放電電力の制限値Woutが設定される関係となる。すなわち、端子部の温度が高い場合には、低い場合と比較して大きさが小さくなるように放電電力の制限値Woutが設定される。
【0060】
第1温度Tb(0)は、たとえば、実験等によって適合される。さらに、端子部の温度と放電電力の制限値Woutとの関係は、端子部の温度が予め定められた第2温度Tb(1)以上になるときには、放電電力の制限値Woutとしてゼロが設定される関係となる。
【0061】
また、図4のLN2に示すように、端子部の温度と充電電力の制限値Winとの関係は、端子部の温度が第1温度Tb(0)になるまでは、充電電力の制限値Winとして予め定められた値Win(1)が設定される関係となる。そして、端子部の温度と充電電力の制限値Winとの関係は、端子部の温度が第1温度Tb(0)以上になるときには、端子部の温度が高くなるほど大きさが小さくなるように充電電力の制限値Winが設定される関係となる。すなわち、端子部の温度が高い場合には、低い場合と比較して大きさが小さくなるように充電電力の制限値Winが設定される。さらに、端子部の温度と充電電力の制限値Winとの関係は、端子部の温度が第2温度Tb(1)以上になるときには、充電電力の制限値Winとしてゼロが設定される関係となる。なお、図4のLN1およびLN2に示す端子部の温度と制限値との関係は、一例であって、特に、図4に示す関係に限定されるものではない。
【0062】
そのため、ECU300は、たとえば、複数のセル110における最大温度がTb(1)であることを特定した場合には、放電電力の制限値WoutとしてWout(0)を設定するとともに、充電電力の制限値WinとしてWin(0)を設定する。その後処理はS106に移される。
【0063】
S106にて、ECU300は、設定後の充電電力の制限値Winと設定後の放電電力の制限値Woutとを用いて充放電制御を実行する。
【0064】
ECU300は、たとえば、電池パック100の充電中においては、充電電力の大きさが制限値Winの大きさを超えないように電池パック100に供給される電流を制御する。ECU300は、たとえば、外部電源を用いて電池パック100を充電する場合には、充電装置70を用いて上述の電流制御を実施する。また、ECU300は、たとえば、運転中に電池パック100を充電する場合には、PCU40を用いて上述の電流制御を実行する。
【0065】
一方、ECU300は、電池パック100の放電中においては、放電電力の大きさが制限値Woutの大きさを超えないように電池パックから供給される電流を制御する。ECU300は、たとえば、運転中に電池パック100を放電する場合には、PCU40を用いて上述の電流制御を実行する。
【0066】
以上のような構造およびフローチャートに基づく電池システム90の動作の一例について説明する。
【0067】
たとえば、電池パック100に対して外部電源を用いて充電している場合を想定する。充放電制御が実行中の場合に(S100にてYES)、複数のセル110の各々に設けられる端子温度センサ230の検出結果を取得して複数のセル110の各々の端子温度が取得される(S102)。
【0068】
取得された端子温度のうちの最大温度が特定され、特定された最大温度と図4に示した端子部の温度と制限値との関係から充電電力の制限値Winと放電電力の制限値Woutとが設定される(S104)。そして、設定後の充電電力の制限値Winと設定後の放電電力の制限値Woutとを用いて充放電制御が実行される(S106)。そのため、電池パック100の充電中においては、充電電力の大きさが設定後の充電電力の制限値Winの大きさを超えないように電池パック100に供給される電流が充電装置70を用いて制御される。その結果、複数のセル110の各々における発熱が抑制される。
【0069】
以上のように、本実施の形態に係る電池システム90によると、たとえば、端子部の高温時に上限値を低く設定するなど端子部の温度の高低に対応させて上限値(制限値WinおよびWout)を設定することができるため、端子部の温度がラミネートフィルム118に影響を及ぼすことを抑制することができる。したがって、セルの外装の耐久性の悪化を抑制する電池システムを提供することができる。
【0070】
さらに、端子温度センサ230によって検出された端子部の温度が高いほど大きさが減少するように各制限値が設定されるので、端子の温度がラミネートフィルム118に影響及ぼすことを抑制することができる。
【0071】
以下、変形例について記載する。
上述の実施の形態では、セル110の正極端子および負極端子のいずれかに設けられた端子温度センサ230によって取得される端子部の温度を用いて充電電力の制限値Winと放電電力の制限値Woutとが設定されるものとして説明したが、特に、端子温度センサ230を用いて端子部の温度を取得することに限定されるものではない。
【0072】
たとえば、複数のセル110のうちの少なくともいずれかの端子部に設けられたサーミスタの抵抗値の検出結果を用いて複数のセル110の各々の温度のうちの最大温度を取得するようにしてもよい。サーミスタは、たとえば、電池パック100を構成する複数のセル110のうちの温度が他よりも高くなる複数の箇所に設けられるようにしてもよい。
【0073】
あるいは、たとえば、複数のセル110の端子部以外の箇所に設けられた温度センサの検出結果を用いて複数のセル110の各々の温度のうちの最大温度を取得するようにしてもよい。
【0074】
あるいは、たとえば、複数のセル110のうちの少なくともいずれか2つの間に設けられる面圧センサの検出結果を用いて複数のセル110の各々の温度のうちの最大温度を取得するようにしてもよい。図5は、変形例における電池パック100の構成の一例を説明するための図である。図5に示すように、複数のセル110の各々の間における積層方向の面の全体を覆うように面圧センサ240が設けられる。面圧センサ240は、複数の面圧の測定点を含み、測定点において作用する圧力を検出し、検出した圧力を示す情報と、測定点の位置を示す情報とをECU300に送信する。ECU300は、受信した圧力を用いて複数のセル110の膨張量を推定し、推定された膨張量から端子部の温度を推定し、複数のセル110の各々の温度のうちの最大温度を取得してもよい。
【0075】
あるいは、ECU300は、複数のセル110の各々の抵抗値(内部抵抗)を検出してもよい。ECU300は、たとえば、複数のセル110の各々に印加される電圧と電流とを検出することによって複数のセル110の各々の抵抗値を検出してもよい。ECU300は、検出された抵抗値を用いて複数のセル110の各々の温度を推定し、推定された温度を用いて複数のセル110の各々のうちの最大温度を取得してもよい。
【0076】
上述のようにして端子部の温度についての温度情報を用いることによってセル110の端子部の温度を精度高く推定することができる。
【0077】
さらに上述のサーミスタ、面圧センサ、温度センサあるいは抵抗値を検出する検出装置を用いて取得された温度情報に加えて、複数のセル110の各々を接続するバスバー106を流れる電流値を検出する電流センサ220を用いて端子部の温度を推定してもよい。
【0078】
ECU300は、たとえば、温度情報を用いて取得された各セルの端子部の温度を電流センサ220の検出結果に示す電流値を用いて補正してもよい。ECU300は、たとえば、電流センサ220の電流値が高くなるほど端子部の温度が高くなるように補正してもよい。端子部において生じる熱(ジュール熱)はバスバーに流れる電流にも寄与するため、上述のように温度情報に加えて電流値を用いて端子部の温度を推定することによって端子部の温度を精度高く推定することができる。
【0079】
なお、上記した変形例は、その全部または一部を適宜組み合わせて実施してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0080】
1 車両、10 MG、20 動力伝達ギア、30 駆動輪、40 PCU、50 SMR、60 CHR、70 充電装置、80 インレット、90 電池システム、100 電池パック、102 正極端子、104 負極端子、106,108 バスバー、110 セル、112 電池ケース、118 ラミネートフィルム、150 コネクタ、160 系統電源、170 充電ケーブル、210 電圧センサ、220 電流センサ、230 端子温度センサ、240 面圧センサ、300 ECU、301 CPU、302 メモリ。
図1
図2
図3
図4
図5