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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162454
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】光学積層体および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20241114BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20241114BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20241114BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20241114BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20241114BHJP
   H10K 59/40 20230101ALI20241114BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20241114BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G02B5/30
H05B33/14 Z
H10K50/10
H10K50/86
H10K59/10
H10K59/40
G02F1/1335 510
G09F9/00 313
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077967
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永幡 敬治
(72)【発明者】
【氏名】有賀 草平
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
3K107
5G435
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149BA02
2H149CA02
2H149DA02
2H149DA27
2H149DA33
2H149DA34
2H149EA02
2H149EA10
2H149EA12
2H149EA19
2H149FA03W
2H149FA05Y
2H149FA08X
2H149FA12Y
2H149FA26Y
2H149FA58Y
2H149FA66
2H149FD06
2H149FD47
2H291FA13X
2H291FA22X
2H291FA30X
2H291FA94X
2H291FA95X
2H291FB02
2H291FB05
2H291FD09
2H291FD12
2H291FD34
2H291FD35
2H291GA02
2H291LA40
2H291PA07
2H291PA24
2H291PA25
2H291PA42
2H291PA44
2H291PA84
2H291PA87
3K107AA01
3K107AA05
3K107BB01
3K107BB08
3K107CC32
3K107CC33
3K107EE26
3K107EE66
3K107FF06
3K107FF15
5G435BB05
5G435BB12
5G435DD11
5G435FF05
5G435LL17
(57)【要約】
【課題】表示画面に表示領域と非表示領域とを形成する着色部が設けられた画像表示装置であって、非表示時における表示領域と非表示領域との外観の違いが認識され難い画像表示装置を提供すること。
【解決手段】第1の偏光子を含む第1の偏光板と、厚み方向の位相差を有する位相差層と、印刷層と、第2の偏光子を含む第2の偏光板と、をこの順に含み、前記位相差層が、厚み方向に複屈折を有する位相差フィルムを含み、前記第1の偏光子の吸収軸方向と前記第2の偏光子の吸収軸方向とが実質的に平行である、光学積層体。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の偏光子を含む第1の偏光板と、厚み方向の位相差を有する位相差層と、印刷層と、第2の偏光子を含む第2の偏光板と、をこの順に含み、
前記位相差層が、厚み方向に複屈折を有する位相差フィルムを含み、
前記第1の偏光子の吸収軸方向と前記第2の偏光子の吸収軸方向とが実質的に平行である、
光学積層体。
【請求項2】
前記位相差層の厚み方向の位相差値Rth(550)の絶対値が、100nm以上である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記厚み方向に複屈折を有する位相差フィルムが、その遅相軸方向の屈折率を「nx」、その進相軸方向の屈折率を「ny」、その厚み方向の屈折率を「nz」としたときに、nx>ny>nz、nx>nz>ny、またはnz>nx=nyの屈折率特性を有する位相差フィルムを含む、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記厚み方向に複屈折を有する位相差フィルムが、面内位相差を有し、
その遅相軸方向が、前記第1の偏光子および前記第2の偏光子の遅相軸方向と実質的に平行である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記印刷層の厚みが、3μm~30μmである、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記第2の偏光板の前記位相差層が配置された側と反対側に表面基材層をさらに含む、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項7】
表示素子と、請求項1から6のいずれかに記載の光学積層体と、を視認側に向かってこの順に備え、
前記光学積層体が、前記第2の偏光板が、前記第1の偏光板よりも視認側になるように配置されている、
画像表示装置。
【請求項8】
前記表示素子が、液晶セル、有機エレクトロニクス素子または無機エレクトロニクス素子を含む、請求項7に記載の画像表示装置。
【請求項9】
タッチパネルをさらに含む、請求項7に記載の画像表示装置。
【請求項10】
前記表示素子が液晶セルであり、
第3の偏光子を含む第3の偏光板と、前記液晶セルと、前記光学積層体と、を視認側に向かってこの順に含む、請求項8に記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車には、各種計器表示、カーナビゲーション、バックモニター、オーディオビジュアル等の種々の用途でディスプレイが搭載されている。このような車載用ディスプレイにおいては、一般に、ディスプレイ自身の枠部材や、インストルメントパネル、コンソール等の周辺部材と外観を調和させること、配線、端子等を遮蔽すること等を目的として、表示画面の外周部に沿って着色部が設けられ、これにより、表示領域と非表示領域とが形成される。また、一般用または業務用のタブレット端末においても、表示画面の外周部に沿って着色部が設けられることが多い。
【0003】
表示画面の外周部に沿って着色部が設けられた画像表示装置においては、非表示時(電源オフ時)に表示領域(黒画面)と非表示領域(着色部)との外観の違いが目立つ場合があり、意匠性の観点から改善が求められている。
【0004】
上記要望に関連して、特許文献1では、非表示時における表示領域と非表示領域との色差を小さくした表示体が提案されているが、さらなる改善の要望がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-192708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、表示画面に表示領域と非表示領域とを形成する着色部が設けられた画像表示装置であって、非表示時における表示領域と非表示領域との外観の違いが認識され難い画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく発明者らが鋭意検討したところ、画像表示装置において、表示素子の視認側に2つの偏光子を同軸で積層し、その間に印刷層(着色部)を設けることにより、非表示時における表示領域と非表示領域との外観の違いを認識し難くすることができることを見出した。その一方で、このような構成によれば、正面方向から観察した場合に比べて斜め方向から観察した場合に、上記外観の違いが目立つ傾向があった。そこで、発明者らがさらに検討を重ねたところ、表示素子の視認側に2つの偏光子を同軸で積層し、その間に所定の光学特性を有する位相差層と印刷層とを視認側に向かってこの順に設けることにより、正面方向および斜め方向の両方において上記外観の違いが認識され難くなることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明の実施形態によれば、下記光学積層体および画像表示装置が提供される。
【0008】
[1]本発明の実施形態による光学積層体は、第1の偏光子を含む第1の偏光板と、厚み方向の位相差を有する位相差層と、印刷層と、第2の偏光子を含む第2の偏光板と、をこの順に含み、上記位相差層が、厚み方向に複屈折を有する位相差フィルムを含み、上記第1の偏光子の吸収軸方向と上記第2の偏光子の吸収軸方向とが実質的に平行である。
[2]上記[1]に記載の光学積層体において、上記位相差層の厚み方向の位相差値Rth(550)の絶対値(より具体的には、上記第1の位相差層に含まれる全ての厚み方向に複屈折を有する位相差フィルムのRth(550)の和の絶対値)が、100nm以上であってよい。
[3]上記[1]または[2]に記載の光学積層体において、上記厚み方向に複屈折を有する位相差フィルムが、その遅相軸方向の屈折率を「nx」、その進相軸方向の屈折率を「ny」、その厚み方向の屈折率を「nz」としたときに、nx>ny>nz、nx>nz>ny、またはnz>nx=nyの屈折率特性を有する位相差フィルムを含んでよい。
[4]上記[1]または[3]のいずれかに記載の光学積層体において、上記厚み方向に複屈折を有する位相差フィルムが、面内位相差を有し、その遅相軸方向が、上記第1の偏光子および上記第2の偏光子の遅相軸方向と実質的に平行であってよい。
[5]上記[1]または[4]のいずれかに記載の光学積層体において、上記印刷層の厚みが、3μm~30μmであってよい。
[6]上記[1]または[5]のいずれかに記載の光学積層体において、上記第2の偏光板の上記位相差層が配置された側と反対側に表面基材層をさらに含んでよい。
[7]本発明の実施形態による画像表示装置は、表示素子と、上記[1]または[6]のいずれかに記載の光学積層体と、を視認側に向かってこの順に備え、上記光学積層体が、上記第2の偏光板が、上記第1の偏光板よりも視認側になるように配置されている。
[8]上記[7]に記載の画像表示装置において、上記表示素子が、液晶セル、有機エレクトロニクス素子または無機エレクトロニクス素子を含んでよい。
[9]上記[7]または[8]に記載の画像表示装置は、タッチパネルをさらに含んでよい。
[10]上記[7]から[9]のいずれかに記載の画像表示装置において、上記表示素子が液晶セルであり、第3の偏光子を含む第3の偏光板と、上記液晶セルと、上記光学積層体と、を視認側に向かってこの順に含んでよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態による光学積層体は、第1の偏光子を含む第1の偏光板と、所定の光学特性を有する位相差層と、印刷層と、第2の偏光子を含む第2の偏光板と、をこの順に含み、第1の偏光子の吸収軸方向と第2の偏光子の吸収軸方向とが実質的に平行である。このような構成を採用する光学積層体を表示素子の視認側に配置することにより、得られる画像表示装置を正面方向および斜め方向から観察した場合の非表示時における表示領域と非表示領域との外観の違いを認識し難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】(a)は、本発明の1つの実施形態による光学積層体の概略断面図であり、(b)は、(a)に示す光学積層体の概略上面図である。
図1B】本発明の1つの実施形態による光学積層体の概略断面図である。
図2A】本発明の1つの実施形態による画像表示装置の概略断面図である。
図2B】本発明の1つの実施形態による画像表示装置の概略断面図である。
図2C】本発明の1つの実施形態による画像表示装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。なお、本明細書中で、数値範囲を表す「~」は、その上限および下限の数値を含む。
【0012】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、特段の言及がない限り、当該角度は基準方向に対して時計回りおよび反時計回りの両方を包含する。したがって、例えば「45°」は時計回りまたは反時計回りに45°を意味する。また、本明細書において、「実質的に平行」および「略平行」は、0°±10°の範囲内である場合を包含し、好ましくは0°±5°の範囲内、より好ましくは0°±3°の範囲内、さらに好ましくは0°±1°の範囲内であり、「実質的に直交」および「略直交」は、90°±10°の範囲内である場合を包含し、好ましくは90°±5°の範囲内、より好ましくは90°±3°の範囲内、さらに好ましくは90°±1°の範囲内である。
(6)「層」、「板」、「シート」および「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて互いから区別されるものではない。例えば「層」という用語は、「板」、「シート」、「フィルム」と呼ばれ得るような部材を含む概念である。
【0013】
A.光学積層体
本発明の実施形態による光学積層体は、第1の偏光子を含む第1の偏光板と、厚み方向の位相差を有する位相差層(以下、「第1の位相差層」とも称する)と、印刷層と、第2の偏光子を含む第2の偏光板と、をこの順に含み、第1の位相差層が、厚み方向に複屈折を有する位相差フィルムを含み、第1の偏光子の吸収軸方向と第2の偏光子の吸収軸方向とが実質的に平行である。光学積層体は、好ましくは、画像表示装置に用いられ、このとき、光学積層体は、有機エレクトロルミネセンス(EL)素子、無機EL素子、液晶セル等の表示素子の視認側に、第2の偏光板が第1の偏光板よりも視認側となるように配置される。当該構成によれば、画像表示装置を正面方向および斜め方向から観察した場合の非表示時における表示領域と非表示領域との外観の違いを認識し難くすることができる。なお、本明細書中、表示領域と非表示領域との外観の違いを認識し難くすること(目立たなくすること)を、「表示領域と非表示領域とのシームレス化」と称する場合がある。
【0014】
A-1.光学積層体の全体構成
図1Aは、本発明の1つの実施形態による光学積層体の概略断面図(a)とその概略上面図(b)である。図1Aに示す光学積層体100Aにおいては、第1の偏光子12を含む第1の偏光板10と、厚み方向の位相差を有する第1の位相差層20と、第2の偏光子32を含む第2の偏光板30とが、この順に配置されており、第2の偏光板30の第1の位相差層20が配置された側の主面の一部には、印刷層40が設けられている。光学積層体100Aにおいて、第1の偏光子12の吸収軸方向と第2の偏光子32の吸収軸方向とは、実質的に平行である。厚み方向の位相差を有する第1の位相差層20は、厚み方向に複屈折を有する位相差フィルムを含む。図1Aにおいて、印刷層40は、第2の偏光板30の第1の位相差層20側の主面上にその外縁部に沿って所定の幅で設けられている。光学積層体100Aを表示素子の視認側に配置して画像表示装置を構成した場合、表示画面において、印刷層40が設けられていない部分Aが表示領域となり、印刷層40が設けられている部分Bが非表示領域となり、これにより、表示素子の周辺に配設される配線、端子等の部品を隠蔽することができる。
【0015】
光学積層体100Aにおいて、第2の偏光板30の視認側(第1の位相差層20が配置された側と反対側)に表面基材層50が配置されている。表面基材層50は、画像表示装置の前面板として機能し得る。目的に応じて表面基材層50は省略されてもよい。
【0016】
図1Bは、本発明の別の実施形態による光学積層体の概略断面図である。図1Bに示す光学積層体100Bは、第1の偏光板10の第1の位相差層20が配置された側と反対側に第2の位相差層60が設けられている点で光学積層体100Aと異なっている。第2の位相差層60は、例えば、第1の偏光板10とともに円偏光板として機能する。光学積層体100Bは、有機EL表示装置に適用された場合に、反射防止機能とシームレス性とを好適に実現することができる。
【0017】
光学積層体を構成する各部材は、任意の適切な接着層(粘着剤層、接着剤層等)を介して貼り合せられていてもよく、接着層を介することなく、単に積層されていてもよい。図示例においては、第1の位相差層20と第2の偏光板30とは、粘着剤層70を介して貼り合わせられている。光学積層体100Aおよび100Bはそれぞれ、第1の偏光板10および第2の位相差層60の外側に表示素子等の隣接する部材との貼り合わせ用の粘着剤層をさらに備えていてもよい。この場合、当該粘着剤層は、代表的には、使用に供されるまでの間、はく離ライナーで保護される。また、図示例とは異なり、印刷層40は、第1の位相差層20の第2の偏光板30側表面に設けられてもよい。
【0018】
光学積層体の表示領域の全光線透過率は、例えば35.0%を超え、好ましくは39.0%~42.5%、より好ましくは42.5%~45%である。
【0019】
光学積層体の厚みは、例えば100μm~4000μm、好ましくは200μm~2000μmである。
【0020】
A-2.第1の偏光板および第2の偏光板
第1の偏光板10および第2の偏光板30はそれぞれ、偏光子を含み、代表的には、当該偏光子の片側または両側に設けられた保護層をさらに含む。第1の偏光板および第2の偏光板は、同じ構成を有していてもよく、異なる構成を有していてもよい。第1の偏光板および第2の偏光板が含み得る偏光子および保護層に関しては、特段の記載がない限り、以下の説明が同様に適用される。
【0021】
A-2-1.偏光子
偏光子は、代表的には、二色性物質(例えば、ヨウ素)を含むポリビニルアルコール系樹脂フィルムで構成されている。偏光子は、単層の樹脂フィルムから構成されたものであってもよく、二層以上の積層体を用いて作製されたものであってもよい。
【0022】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光子が用いられる。
【0023】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系フィルムを膨潤させて染色ムラ等を防止することができる。
【0024】
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離し、当該剥離面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報に記載されている。当該公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0025】
偏光子の厚みは、例えば30μm以下であり、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは1μm~12μmであり、さらに好ましくは2μm~10μmであり、さらにより好ましくは2μm~8μmである。
【0026】
偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率は、例えば41.0%以上、好ましくは43.0%~46.0%であり、より好ましくは44.5%~46.0%である。偏光子の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。
【0027】
A-2-2.保護層
保護層は、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで構成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、アセテート系樹脂等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
【0028】
保護層の厚みは、代表的には300μm以下であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは5μm~80μm、さらに好ましくは10μm~60μmである。なお、表面処理が施されている場合、保護層の厚みは、表面処理層の厚みを含めた厚みである。
【0029】
A-3.第1の位相差層
第1の位相差層20は、厚み方向の位相差を有する。また、第1の位相差層20は、厚み方向に複屈折を有する位相差フィルムを含む。第1の位相差層は、厚み方向に複屈折を有する位相差フィルムを1枚のみ含むものであってもよく、2枚以上含むものであってもよい。このような位相差層を第1の偏光板と印刷層および第2の偏光板との間に配置することにより、光学積層体を表示素子の視認側に配置した際に、斜め方向の光漏れを抑制することができ、結果として、斜め方向のシームレス性を向上することができる。なお、本明細書中、「厚み方向に複屈折を有する位相差フィルム」は、ny/nzが、1未満であるか、または、1を超える位相差フィルムを意味し、好ましくは0.9以下または1.1以上のNz係数を有し得る。「厚み方向に複屈折を有する位相差フィルム」は、代表的には、nx>ny=nzの屈折率特性を有する位相差フィルム(ポジティブAプレート)および等方性フィルムを含まない。ここで、「ny=nz」は、nyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、ポジティブAプレートは、例えば0.9を超え1.1未満のNz係数を有し得る。等方性フィルムとは、Re(550)<10nmおよび-10nm<Rth(550)<10nmの関係を満たすフィルムを意味する。
【0030】
第1の位相差層の厚み方向の位相差値Rth(550)の絶対値は、100nm以上であることが好ましく、例えば250nm以上、400nm以上、または550nm以上であり得る。また、第1の位相差層のRth(550)の絶対値の上限は、特に制限されないが、例えば1000nm以下であり得る。第1の位相差層のRth(550)がこのような範囲である場合、本発明の効果を好適に得ることができる。第1の位相差層が2枚以上の位相差フィルムを含む場合、第1の位相差層のRth(550)は、第1の位相差層に含まれる全ての厚み方向に複屈折を有する位相差フィルムのRth(550)の和として求められる。
【0031】
厚み方向に複屈折を有する位相差フィルムとしては、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切な位相差フィルムを用いることができる。例えば、nz>nx=ny、nx=ny>nz、nx>ny>nz、nx>nz>ny、またはnz>nx>nyの屈折率特性を有する位相差フィルムを好ましく例示することができ、なかでも、nz>nx=ny、nx>ny>nz、またはnx>nz>nyの屈折率特性を有する位相差フィルムが好ましい。なお、厚み方向に複屈折を有する位相差フィルムが面内位相差を有する場合(例えば10nm以上または20nm以上、また例えば200nm以下のRe(550)を有する場合)、当該位相差フィルムは、好ましくは、その遅相軸方向が第1の偏光子および第2の偏光子の吸収軸方向と実質的に平行となるように配置される。
【0032】
厚み方向に複屈折を有する位相差フィルムは、第1の位相差層の厚み方向の位相差値(例えば、Rth(550))が所望の範囲となるように、単独で、または、同一または異なる位相差フィルム(例えば、位相差値、屈折率特性、形成材料等が異なる位相差フィルム)を複数組み合わせて用いることができる。組み合わせる位相差フィルムの数は、本発明の効果が得られる限りにおいて制限されない。複数の位相差フィルムを組み合わせて用いる場合、各位相差フィルムは、接着層を介して一体化され得る。
【0033】
nz>nx=nyの屈折率特性を有する位相差フィルム(ポジティブCプレート)の厚み方向の位相差値は、第1の位相差層に所望される位相差値、併用する位相差フィルムの有無またはその位相差値、製造性等に応じて適切に設定され得、例えば-50nm以下、-200nm以下、または-400nm以下であり得る。1つの実施形態において、ポジティブCプレートは、-50nm~-300nm、好ましくは-70nm~-250nm、より好ましくは-90nm~-200nmのRth(550)を有する。ポジティブCプレートのRe(550)は10nm未満であり得る。
【0034】
ポジティブCプレートは、任意の適切な材料で形成され得る。ポジティブCプレートは、好ましくは、ホメオトロピック配向に固定された液晶材料を含むフィルムからなる。ホメオトロピック配向させることができる液晶材料(液晶化合物)は、液晶モノマーであっても液晶ポリマーであってもよい。当該液晶化合物およびポジティブCプレートの形成方法の具体例としては、特開2002-333642号公報の[0020]~[0028]に記載の液晶化合物および位相差フィルムの形成方法が挙げられる。この場合、ポジティブCプレートの厚みは、好ましくは0.5μm~10μmであり、より好ましくは0.5μm~8μmであり、さらに好ましくは0.5μm~5μmである。
【0035】
nx>ny>nzの屈折率特性を有する位相差フィルム(ネガティブBプレート)の厚み方向の位相差値は、第1の位相差層に所望される位相差値、併用する位相差フィルムの有無またはその位相差値、製造性等に応じて適切に設定され得る。1つの実施形態において、ネガティブBプレートは、例えば50nm~400nm、好ましくは70nm~350nm、より好ましくは90nm~300nmのRth(550)を有する。ネガティブBプレートのNz係数は、例えば1.1以上、好ましくは3以上、より好ましくは5以上である。
【0036】
ネガティブBプレートは、例えば、上記特性を実現し得る任意の適切な樹脂で形成された樹脂フィルムから形成される。この樹脂フィルムを形成する樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂が挙げられる。これらの中でも、環状オレフィン系樹脂またはポリカーボネート系樹脂が好適に用いられ得る。
【0037】
環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1-240517号公報、特開平3-14882号公報、特開平3-122137号公報に記載されている樹脂が挙げられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα-オレフィンとの共重合体(代表的には、ランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸およびその誘導体で変性したグラフト変性体、ならびに、それらの水素化物が挙げられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーが挙げられる。ノルボルネン系モノマーとしては、特開2015-210459号公報等に記載されているモノマーが挙げられる。上記環状オレフィン系樹脂は、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR社製の商品名「アートン(Arton)」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学社製の商品名「APEL」が挙げられる。
【0038】
ポリカーボネート系樹脂としては、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切なポリカーボネート系樹脂を用いることができる。好ましくは、ポリカーボネート系樹脂は、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジオール、脂環式ジメタノール、ジ、トリまたはポリエチレングリコール、ならびに、アルキレングリコールまたはスピログリコールからなる群から選択される少なくとも1つのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、を含む。より好ましくは、ポリカーボネート系樹脂は、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジメタノールに由来する構造単位ならびに/あるいはジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含む。ポリカーボネート系樹脂は、必要に応じてその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。なお、本発明に好適に用いられ得るポリカーボネート系樹脂および位相差フィルムの製造方法の詳細は、例えば、国際公開公報第2011/062239号に記載されており、当該記載は本明細書に参考として援用される。
【0039】
ネガティブBプレートは、上記樹脂フィルムを延伸することにより作製される。延伸温度および延伸倍率は、ネガティブBプレートに所望される厚み方向の位相差値および厚み、使用される樹脂の種類、Tg等に応じて適切に設定される。
【0040】
ネガティブBプレートの厚みは、例えば10μm~150μm、好ましくは10μm~100μm、より好ましくは10μm~30μmである。
【0041】
nx>nz>nyの屈折率特性を有する位相差フィルム(Zプレート)の厚み方向の位相差値は、第1の位相差層に所望される位相差値、併用する位相差フィルムの有無またはその位相差値、製造性等に応じて適切に設定され得る。1つの実施形態において、Zプレートは、例えば50nm~300nm、好ましくは70nm~250nm、より好ましくは90nm~200nmのRth(550)を有する。ZプレートのNz係数は、例えば0.1~0.5、好ましくは0.15~0.45、より好ましくは0.2~0.4である。
【0042】
Zプレートは、代表的には、上記特性を実現し得る任意の適切な樹脂で形成された樹脂フィルムから形成される。この樹脂フィルムを形成する樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂が挙げられる。これらの中でも、環状オレフィン系樹脂またはポリカーボネート系樹脂が好適に用いられ、Zプレートを形成し得る環状オレフィン系樹脂またはポリカーボネート系樹脂を好ましく例示することができる。
【0043】
Zプレートは、例えば、上記樹脂を任意の適切な溶媒に溶解または分散した塗布液を収縮性フィルムに塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を収縮させることにより形成され得る。代表的には、塗膜の収縮は、収縮性フィルムと塗膜との積層体を加熱して収縮性フィルムを収縮させ、このような収縮性フィルムの収縮により塗膜を収縮させる。塗膜の収縮率は、好ましくは0.50~0.99であり、より好ましくは0.60~0.98であり、さらに好ましくは、0.70~0.95である。加熱温度は、好ましくは130℃~170℃であり、より好ましくは150℃~160℃である。1つの実施形態においては、塗膜を収縮させる際に、当該収縮方向と直交する方向に積層体を延伸してもよい。この場合、積層体の延伸倍率は、好ましくは1.01倍~3.0倍であり、より好ましくは1.05倍~2.0倍であり、さらに好ましくは1.10倍~1.50倍である。収縮性フィルムを構成する材料の具体例としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネー系樹脂ト、ノルボルネン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリイミド系樹脂、アセテート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、液晶ポリマーが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく組み合わせて用いてもよい。収縮性フィルムは、好ましくは、これらの材料から形成される延伸フィルムである。
【0044】
Zプレートの厚みは、例えば10μm~150μm、好ましくは10μm~100μm、より好ましくは10μm~30μmである。
【0045】
第1の位相差層の厚み(合計厚み)は、例えば1μm~500μm、好ましくは1μm~300μmである。
【0046】
A-4.印刷層
印刷層40は、用途および所望のデザインに応じて印刷により着色されている着色層である。印刷層は、所定のデザインが施された意匠層であってもよく、ベタの着色層であってもよい。印刷層は、好ましくはベタの着色層であり、より好ましくは黒、青、紺、紫、茶等の濃暗色(例えば、SCI方式のL*a*b*色空間のL*が50以下、a*値が+10~-10、b*値が+10~-10の範囲)の着色層であり、さらに好ましくは黒色(例えば、SCI方式のL*a*b*色空間のL*が20以下、a*値が+5~-5、b*値が+5~-5の範囲)の着色層である。印刷層を黒色の着色層とすることにより、非表示領域において配線、端子、バックライト、その他の部品を好適に隠蔽することができる。
【0047】
印刷層は、目的に応じた任意の適切なパターンで形成され得る。代表的には、印刷層は、偏光板の主面上にその外周部に沿って枠状に形成され、例えば、ベゼルに対応する位置に形成され得る。このような構成であれば、ベゼルを用いずに非表示領域を隠蔽することができる。
【0048】
印刷層は、印刷層形成用組成物を用いて任意の適切な印刷法により形成することができる。印刷法の具体例としては、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷が挙げられる。
【0049】
印刷層形成用組成物は、代表的には、色材と溶媒および/またはバインダーと必要に応じて用いられ得る任意の適切な添加剤とを含む。バインダーとしては、塩素化ポリオレフィン(例えば、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン)、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂が挙げられる。バインダー樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。1つの実施形態においては、バインダー樹脂は熱重合性樹脂である。熱重合性樹脂は、光重合性樹脂に比べて使用量が少なくてすむので、色材の使用量(着色層における色材含有量)を増大させることができる。その結果、特に黒色の着色層を形成する場合に、全光線透過率が非常に小さく、優れた隠蔽性を有する着色層を形成することができる。1つの実施形態においては、バインダー樹脂は(メタ)アクリル系樹脂であり、好ましくは多官能モノマー(例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート)を共重合成分として含む(メタ)アクリル系樹脂である。多官能モノマーを共重合成分として含む(メタ)アクリル系樹脂を用いることにより、適切な弾性率を有する印刷層が形成され得る。加えて、印刷層の厚みによる段差も形成され、当該段差がブロッキング防止に効果的に機能し得る。
【0050】
色材としては、目的および所望の色に応じて任意の適切な色材が用いられ得る。色材は、顔料であってもよく、染料であってもよく、好ましくは顔料である。色材の具体例としては、チタン白、亜鉛華、カーボンブラック、鉄黒、弁柄、クロムバーミリオン、群青、コバルトブルー、黄鉛、チタンイエロー等の無機顔料;フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、イソインドリノンイエロー、ベンジジンイエロー、キナクリドンレッド、ポリアゾレッド、ペリレンレッド、アニリンブラック等の有機顔料または染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢顔料(パール顔料)が挙げられる。黒色の着色層を形成する場合には、カーボンブラック、鉄黒、アニリンブラックが好適に用いられる。この場合、色材は併用することが好ましい。可視光を広範囲かつ均等に吸収し、色付きのない(すなわち、真っ黒な)着色層を形成し得るからである。例えば、上記の色材に加えて、アゾ化合物および/またはキノン化合物が用いられ得る。1つの実施形態においては、色材は、主成分としてのカーボンブラックとその他の色材(例えば、アゾ化合物および/またはキノン化合物)とを含む。このような構成によれば、色つきがなく、かつ、経時安定性に優れた着色層を形成し得る。黒色の着色層を形成する場合には、色材は、バインダー樹脂100重量部に対して、好ましくは50重量部~200重量部の割合で用いられ得る。この場合、色材中のカーボンブラックの含有割合は、好ましくは80%~100%である。このような割合で色材(特にカーボンブラック)を用いることにより、全光線透過率が非常に小さく、かつ、経時安定性に優れた着色層を形成することができる。
【0051】
印刷層の全光線透過率は、好ましくは0.01%以下であり、より好ましくは0.008%以下である。全光線透過率がこのような範囲であれば、画像表示装置の非表示領域を良好に隠蔽することができる。
【0052】
印刷層の厚みは、例えば3μm~30μm、好ましくは5μm~20μm、より好ましくは10μm~15μmである。印刷層の厚みが当該範囲内であれば、表示領域と非表示領域とのシームレス化効果が好適に得られ得る。
【0053】
A-5.表面基材層
表面基材層50は、画像表示装置の前面板として機能し得る。よって、好ましくは、表面基材層は、光学積層体が表示素子の視認側に配置された際に、最表面となる位置に配置される。表面基材層は、基材フィルムを含み、必要に応じて、反射防止層、防汚層、ハードコート層等の機能層をさらに含み得る。表面基材層は、好ましくは反射防止層を含む。反射防止層としては、例えば、特開2005-248173号公報に開示されるような光の干渉作用による反射光の打ち消し効果を利用して反射を防止する薄層タイプ、特開2011-2759号公報に開示されるような表面に微細構造を付与することにより低反射率を発現させる表面構造タイプ等が挙げられる。機能層は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。機能層は、必要に応じて支持フィルム上に形成された状態で、接着層(例えば、粘着剤層、接着剤層)を介して基材フィルムに積層されてもよく、接着層を介することなく基材フィルム上に直接形成されてもよい。
【0054】
基材フィルムとしては、ガラスフィルム(無機ガラスフィルム)または樹脂フィルムを用いることができる。
【0055】
ガラスフィルムを構成するガラスとしては、組成による分類によれば、例えば、ソーダ石灰ガラス、ホウ酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、石英ガラスが挙げられる。また、アルカリ成分による分類によれば、例えば、無アルカリガラス、低アルカリガラスが挙げられる。ガラスフィルムの厚みは、好ましくは100μm~2000μmであり、より好ましくは200μm~1000μmである。
【0056】
樹脂フィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。なかでも、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂が好ましく、ポリイミド系樹脂がより好ましい。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。樹脂フィルムの厚みは、好ましくは100μm~2000μmであり、より好ましくは200μm~1000μmである。
【0057】
A-6.接着層
接着層としては、光学用途に適用可能な任意の適切な粘着剤層または接着剤層が用いられ得る。接着層の全光線透過率は、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上である。また、接着層のヘイズは、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.8%以下である。1つの実施形態において、第1の位相差層20と第2の偏光板30との貼り合わせは、粘着剤層を介して行われる。粘着剤層は、第1の位相差層20と第2の偏光板30との間に設けられる印刷層40の端部の段差を好適に充填することができる。
【0058】
粘着剤層を構成する粘着剤組成物としては、任意の適切な粘着剤組成物が用いられ得る。例えば、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系、ビニルアルキルエーテル系、ポリビニルアルコール系、ポリビニルピロリドン系、ポリアクリルアミド系、セルロース系等の粘着剤組成物が挙げられる。中でも、光学的透明性に優れ、また、粘着特性、耐候性、耐熱性等に優れる点から、アクリル系粘着剤組成物が好ましく用いられる。
【0059】
第1の位相差層20と第2の偏光板30との貼り合わせに用いられる粘着剤層の厚み(表示領域における厚み)は、例えば50μm~1000μm、好ましくは200μm~750μm、より好ましくは250μm~500μmである。任意の他の構成部材の貼り合わせに用いられる粘着剤層の厚みは、例えば1μm~300μm、好ましくは5μm~100μm、より好ましくは10μm~50μmであり得る。
【0060】
接着剤層を構成する接着剤組成物としては、任意の適切な接着剤組成物が用いられ得る。例えば、水性接着剤、溶剤型接着剤、エマルション系接着剤、無溶剤型接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤、熱硬化型接着剤が挙げられる。活性エネルギー線硬化型接着剤としては、電子線硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤、可視光線硬化型接着剤が挙げられる。好ましくは熱硬化性接着剤または紫外線硬化型接着剤が用いられる。
【0061】
接着剤層の厚みは、好ましくは0.01μm~3.0μmであり、より好ましくは0.1μm~2.5μmであり、さらに好ましくは0.5μm~1.5μmである。
【0062】
A-7.第2の位相差層
第2の位相差層60は、例えば、第1の偏光板とともに円偏光板として機能する。第2の位相差層は、好ましくはλ/4板として機能する位相差フィルム(以下、単に「λ/4板」称する)を含む。λ/4板は、例えば120nm~160nm、好ましくは135nm~155nmのRe(550)を有する。λ/4板は、例えば、nx>ny≧nzの屈折率特性を有し得る。λ/4板のNz係数は、好ましくは0.9~1.5であり、より好ましくは0.9~1.3である。λ/4板は、その遅相軸方向が第1の偏光子の吸収軸方向と例えば45°±10°、好ましくは45°±5°、より好ましくは45°の角度をなすように配置され得る。λ/4板は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。λ/4のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上1未満であり、0.8以上0.95以下であってもよい。
【0063】
第2の位相差層は、λ/4板に加えてλ/2板として機能する位相差フィルム(以下、単に「λ/2板」称する)を含んでもよい。λ/2板は、例えば210nm~280nm、好ましくは230nm~240nmのRe(550)を有する。λ/2板は、例えば、nx>ny≧nzの屈折率特性を有し得る。λ/2板のNz係数は、好ましくは0.9~1.5であり、より好ましくは0.9~1.3である。λ/2板は、第1の偏光板とλ/4板との間に配置され得る。第1の偏光子の吸収軸とλ/4板の遅相軸とのなす角度は、好ましくは65°~85°であり、より好ましくは72°~78°であり、さらに好ましくは約75°である。第1の偏光子の吸収軸とλ/2板の遅相軸とのなす角度は、好ましくは10°~20°であり、より好ましくは13°~17°であり、さらに好ましくは約15°である。
【0064】
第2の位相差層を含む光学積層体は、有機EL素子と組み合わせて用いられた場合に、シームレス性に加えて、優れた反射防止機能を発揮し得る。λ/4板およびλ/2板はそれぞれ、例えば、樹脂フィルムの延伸フィルムまたは液晶化合物の配向固化層で構成され得る。このようなλ/4板およびλ/2板は、当業者に周知であることから、その詳細な説明は省略する。
【0065】
B.画像表示装置
本発明の実施形態による画像表示装置は、表示素子と、A項に記載の光学積層体と、を視認側に向かってこの順に備え、光学積層体は、第2の偏光板が、第1の偏光板よりも視認側になるように配置されている。このような構成の画像表示装置は、正面方向および斜め方向から観察した際のシームレス性が良好であることから、意匠性に優れる。
【0066】
非表示時の表示領域のSCI方式のL*a*b*色空間は、例えばL*が好ましくは15以下、より好ましくは10以下であり、a*が好ましくは-10~+10、より好ましくは-5~+5であり、b*が好ましくは-10~+10、より好ましくは-5~+5である。また、非表示時の表示領域のSCE方式のL*a*b*色空間は、L*が好ましくは10以下、より好ましくは5以下であり、a*が好ましくは-10~+10、より好ましくは-5~+5であり、b*が好ましくは-10~+10、より好ましくは-5~+5である。
【0067】
非表示時の表示領域と非表示領域とにおけるSCI方式のL*a*b*色差(CIE 1976)ΔE*abは、好ましくは20未満であり、より好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下である。また、SCE方式のL*a*b*色差(CIE 1976)ΔE*abは、好ましくは5未満であり、より好ましくは3以下、さらに好ましくは1以下である。また、極角45°で測定(受光)した際のL*a*b*色差(CIE 1976)ΔE*abは、好ましくは5未満であり、より好ましくは3以下、さらに好ましくは1以下である。ΔE*abが上記範囲内であれば、非表示時の表示領域と非表示領域との外観の差が認識され難い状態である。なお、L*a*b*色差(CIE 1976)ΔE*abは、下記式によって算出される値である(式中、L*は明度、a*は色度a*,b*は色度b*を表す)。
ΔE*ab=〔(ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)1/2
【0068】
非表示時の表示領域におけるSCI方式の反射率は、好ましくは5%未満であり、より好ましくは3%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。非表示領域における当該反射率は、好ましくは3%以下であり、より好ましくは2%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。両領域の反射率の差は、好ましくは3%以下であり、より好ましくは1%以下ある。
【0069】
非表示時の表示領域におけるSCE方式の反射率は、好ましくは3%以下であり、より好ましくは2%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。非表示領域における当該反射率は、好ましくは3%以下であり、より好ましくは2%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。両領域の反射率の差は、好ましくは3%以下であり、より好ましくは1%以下ある。
【0070】
非表示時の表示領域において極角45°で測定(受光)した際の反射率は、好ましくは5%以下であり、より好ましくは3%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。非表示領域における当該反射率は、好ましくは3%以下であり、より好ましくは2%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。両領域の反射率の差は、好ましくは3%以下であり、より好ましくは1%以下ある。
【0071】
上記表示素子としては、液晶セル、有機EL素子、無機EL素子等が挙げられる。また、表示素子は、タッチパネルをさらに含んでもよい。これらの表示素子は、当業者に周知であることから、その詳細な説明は省略する。
【0072】
図2Aは、表示素子として液晶セルを含む画像表示装置(液晶表示装置)の概略断面図である。画像表示装置200Aは、バックライトユニット110、第3の偏光子を含む第3の偏光板120、液晶セル130および光学積層体100Aを視認側に向かってこの順に備える。好ましくは、光学積層体100Aは、第1の偏光板10の外側に粘着剤層(図示せず)を有しており、当該粘着剤層を介して液晶セル130に貼り合わせられている。また、光学積層体100Aは、代表的には、第1の偏光板10(第1の偏光子12)の吸収軸方向と第3の偏光板120(第3の偏光子)の吸収軸方向とが実質的に直交となるように配置されており、第1の偏光板10、液晶セル130および第3の偏光板120は、液晶パネルを構成している。
【0073】
図2Bは、表示素子として有機EL素子を含む画像表示装置(有機EL表示装置)の概略断面図である。画像表示装置200Bは、有機EL素子140および光学積層体100Bを視認側に向かってこの順に備える。光学積層体100Bは、例えば、第2の位相差層60の外側に設けられた粘着剤層(図示せず)を介して有機EL素子140に貼り合わせられている。
【0074】
図2Cは、タッチパネルと表示素子としての有機EL素子とを含む画像表示装置(有機EL表示装置)の概略断面図である。画像表示装置200Cは、有機EL素子140、タッチパネル150、および光学積層体100Bを視認側に向かってこの順に備える。これらの部材はそれぞれ、好ましくは粘着剤層(図示せず)を介して貼り合わせられている。図示例では、タッチパネルが表示素子の視認側に配置されるアウトセル方式であるが、タッチパネルは、オンセル方式またはインセル方式で表示素子に組み込まれてもよい。
【実施例0075】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下の通りである。
(1)厚み
デジタルゲージ((株)尾崎製作所製、製品名「PEACOCK」)を用いて測定した。
(2)偏光子の単体透過率、偏光度
偏光板(保護層/偏光子/保護層)を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製 V-7100)を用いて測定した単体透過率Ts、平行透過率Tp、直交透過率Tcをそれぞれ、偏光子のTs、TpおよびTcとした。これらのTs、TpおよびTcは、JIS Z8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値である。得られたTpおよびTcから、下記式を用いて偏光度を求めた。
偏光度(%)={(Tp-Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
(3)屈折率(nx、ny、nz)、Re(λ)、およびRth(λ)
Axometrics社製、製品名「Axoscan」を用いて測定した。測定波長は550nm、測定温度は23℃であった。
【0076】
[製造例1A:nx>ny>nzの屈折率特性を有する位相差フィルムA(ネガティブBプレート)]
nx>ny>nzの屈折率特性を有する位相差フィルムAとして、市販の位相差フィルム(環状オレフィン系樹脂フィルムの延伸フィルム、日本ゼオン社製、「ZeonorFilm(R)ZB」、厚み:75μm)を準備した。位相差フィルムAのRe(550)は55nmであり、Rth(550)は275nmであった。
【0077】
[製造例1B:nz>nx=nyの屈折率特性を有する位相差フィルムB(ポジティブCプレート)]
下記化学式(1)(式中の数字65および35はモノマーユニットのモル%を示し、便宜的にブロックポリマー体で表している:重量平均分子量5000)で示される側鎖型液晶ポリマー20重量部、ネマチック液晶相を示す重合性液晶(BASF社製:商品名PaliocolorLC242)80重量部および光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製:商品名イルガキュア907)5重量部をシクロペンタノン200重量部に溶解して液晶塗工液を調製した。そして、垂直配向処理を施したPET基材に当該塗工液をバーコーターにより塗工した後、80℃で4分間加熱乾燥することによって液晶を配向させた。この液晶層に紫外線を照射し、液晶層を硬化させることにより、液晶配向固化層(厚み3μm)を基材上に形成した。この液晶配向固化層は、nz>nx=nyの屈折率特性を有し、Re(550)は0nm、Rth(550)は-135nmであった。
【化1】
【0078】
[製造例1C:nx>nz>nyの屈折率特性を有する位相差フィルムC(Zプレート)]
市販の環状オレフィン系樹脂フィルム(JSR社製、商品名「Arton(R5000)」、厚み:130μm、Tg:137℃)の両側に、厚み60μmの収縮性フィルム(東レ社製、商品名「トレファンBO2873」)を、アクリル系粘着剤層(厚み15μm)を介して貼り合わせ、自由端一軸延伸に供し、nx>nz>nyの屈折率特性を有する位相差フィルムCを得た。延伸温度は146℃とし、延伸倍率は1.38倍とした。得られた位相差フィルムCのRe(550)は270nmであり、Rth(550)は135nmであった。
【0079】
[製造例1D:nx>ny=nzの屈折率特性を有する位相差フィルムD(ポジティブAプレート)]
nx>ny=nzの屈折率特性を有する位相差フィルムDとして、市販の位相差フィルム(カネカ社製、「UTZ-フィルム#270」、厚み:33μm)を準備した。位相差フィルムDのRe(550)は270nm、Rth(550)は270nmであった。
【0080】
[製造例2:偏光板A]
1.偏光子の作製
平均重合度が2,400、ケン化度が99.9モル%、厚みが45μmであるポリビニルアルコールフィルムを用意した。ポリビニルアルコールフィルムを、周速比の異なるロール間で、20℃の膨潤浴(水浴)中に30秒間浸漬して膨潤しながら搬送方向に2.2倍に延伸し(膨潤工程)、続いて、30℃の染色浴(ヨウ素濃度が0.1重量%、ヨウ化カリウム濃度が0.9重量%である水溶液)中で30秒間浸漬して染色しながら元のポリビニルアルコールフィルム(搬送方向に全く延伸していないポリビニルアルコールフィルム)を基準にして搬送方向に3.3倍に延伸した(染色工程)。次いで、染色したポリビニルアルコールフィルムを、40℃の架橋浴(ホウ酸濃度が3.0重量%、ヨウ化カリウム濃度が3.0重量%である水溶液)中で28秒間浸漬して元のポリビニルアルコールフィルムを基準にして搬送方向に3.6倍まで延伸した(架橋工程)。さらに、得られたポリビニルアルコールフィルムを、61℃の延伸浴(ホウ酸濃度が4.0重量%、ヨウ化カリウム濃度が5.0重量%である水溶液)中で60秒間浸漬して元のポリビニルアルコールフィルムを基準にして搬送方向に6.0倍まで延伸した(延伸工程)後、20℃の洗浄浴(ヨウ化カリウム濃度が2.0重量%である水溶液)中で10秒間浸漬した(洗浄工程)。洗浄したポリビニルアルコールフィルムを、40℃で30秒間乾燥して偏光子を作製した。偏光子の厚みは18μmであった。
【0081】
2.偏光板Aの作製
接着剤として、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール樹脂(平均重合度が1,200、ケン化度が98.5モル%、アセトアセチル化度が5モル%)とメチロールメラミンとを重量比3:1で含有する水溶液を用いた。この接着剤を用いて、上記で得られた偏光子の一方の面(表示素子側)に、保護層として、(メタ)アクリル系樹脂(ラクトン環構造を有する変性アクリル系ポリマー)からなる厚み30μmの透明保護フィルム(日本触媒社製)を、また、他方の面(視認側)に、保護層として、トリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製、商品名「TJ40UL」)にHCを形成した厚み49μmの透明保護フィルムをロール貼合機で貼り合わせた後、引き続きオーブン内で加熱乾燥(温度が90℃、時間が10分間)させて、偏光子の両面に透明保護フィルムが貼り合わせられた偏光板Aを作製した。得られた偏光子の単体透過率は41.7%であり、偏光度は99.9%であった。
【0082】
[製造例3:印刷層形成用組成物A]
色材(黒色顔料)としてセイコーアドバンス社製「HF GV3 RX01」を溶剤に濃度10重量%で含浸させて、黒色の印刷層形成用組成物Aを得た。
【0083】
[製造例4:粘着剤層A]
ブチルアクリレート(BA):60重量部、シクロヘキシルアクリレート(CHA):6重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA):26重量部、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA):8重量部から構成されるモノマー混合物に、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニル-1-オン(商品名「イルガキュア651」、BASFジャパン社製):0.09重量部、及び1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(商品名「イルガキュア184」、BASFジャパン社製):0.09重量部を4つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下で紫外線に曝露して部分的に光重合することによって、重合率が約10%の部分重合物(モノマーシロップ)を得た。この部分重合物100重量部に、多官能重合性化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製「KAYARAD DPHA」):0.12重量部、およびシランカップリング剤として3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学製「KBM-403」):0.3重量部を添加して、均一に混合して、粘着剤(粘着剤組成物)を調製した。これにより、粘着剤組成物Aを得た。
【0084】
ポリエステルフィルムの片面が剥離面となっている厚さ38μmのはく離ライナーR1(三菱樹脂社製、MRF#38)に、上記で得た粘着剤組成物Aを塗布し、ポリエステルフィルムの片面が剥離面となっている厚さ38μmのはく離ライナーR2(三菱樹脂社製、MRE#38)を被せて空気を遮断し、紫外線を照射して硬化させることにより、粘着剤層A(厚み250μm、全光線透過率92.0%、ヘイズ0.3%)を形成した。
【0085】
[製造例5:表面基材層A]
厚み1mmのガラスフィルム(松波硝子工業社製、製品名「ソーダライムガラス」)の一方の側に粘着剤層Aを介して反射防止層/TACフィルムの構成を有する反射防止フィルム(日東電工社製、製品名「T-60LA28HCAR6N」、厚み85μm)を貼り合わせて、[ガラスフィルム/TACフィルム/反射防止層]の構成を有する表面基材層Aを得た。
【0086】
[実施例1]
上記偏光板Aを矩形状に切り出して、第2の偏光板とした。シルクスクリーン印刷により、印刷層形成用組成物Aを第2の偏光板の(メタ)アクリル樹脂フィルム側表面の外周部に沿って、平面視で幅1.5mmの枠状に塗布し、自然乾燥させて厚み5μmの黒色の印刷層を形成した。次いで、当該印刷層の上に再度シルクスクリーン印刷により、印刷層形成用組成物Aを同様に塗布し、50℃で1時間乾燥させて厚み5μmの黒色の印刷層を形成した(最終的に形成された印刷層の厚み:10μm)。次いで、粘着剤層Aをはく離ライナーから第2の偏光板の印刷層が形成された側に転写し、さらにその上に、第2の偏光板の吸収軸方向と位相差フィルムAの遅相軸方向とが互いに平行になるように位相差フィルムAを積層した。このとき、印刷層と第2の偏光板との境目の段差部分は、粘着剤層Aに完全に充填され、空隙は生じなかった。次いで、得られた積層体の第2の偏光板側表面にアクリル系粘着剤(厚み250μm)を介して表面基材層を貼り合せた。これにより、[表面基材層A/第2の偏光板/印刷層A/粘着剤層A/位相差フィルムA]の構成を有する積層体1を得た。
【0087】
上記偏光板Aを矩形状に切り出して、第1の偏光板とした。第1の偏光板に、λ/4板として機能し得る逆分散位相差フィルム(ポリカーボネート系樹脂フィルムの延伸フィルム、Re(550)=147nm)を、その遅相軸方向が第1の偏光板の吸収軸方向と45°の角度をなすように接着剤層を介して貼り合わせて、円偏光板1を得た。
【0088】
上記で得られた積層体1の表面基材層Aと反対側の表面にアクリル系粘着剤(厚み23μm)を介してガラス板を貼り合わせてガラス板付積層体1を得た。
円偏光板1の第1の偏光板側にアクリル系粘着剤(厚み23μm)を介してガラス板付積層体1を貼り合わせ、λ/4板側にアクリル系粘着剤(厚み23μm)を介して別のガラス板を貼り合わせた。このとき、ガラス板付積層体1の表面基材層Aが最外層となるように、かつ、第1の偏光板および第2の偏光板の吸収軸方向が互いに平行となるように配置した。これにより、[表面基材層A/第2の偏光板/印刷層A/粘着剤層A/位相差フィルムA/ガラス板/第1の偏光板/λ/4板/ガラス板]の構成を有する光学積層体1を得た。なお、光学積層体1において、ガラス板は、特性評価の際の取り扱い性の観点から設けられたものである。
【0089】
[実施例2]
粘着剤層Aの上に位相差フィルムAと位相差フィルムBとをこの順に積層したこと以外は実施例1と同様にして、[表面基材層A/第2の偏光板/印刷層A/粘着剤層A/位相差フィルムA/位相差フィルムB]の構成を有する積層体2を得た。なお、位相差フィルムBの積層(転写)は、接着剤を介して位相差フィルムBを位相差フィルムAに貼合わせ、その後基材を剥離することによって行った。
積層体1の代わりに積層体2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体2を得た。
【0090】
[実施例3]
粘着剤層Aの上に2枚の位相差フィルムAをアクリル系粘着剤(厚み23μm)を介して積層したこと以外は実施例1と同様にして、[表面基材層A/第2の偏光板/印刷層A/粘着剤層A/位相差フィルムA/位相差フィルムA]の構成を有する積層体3を得た。なお、2枚の位相差フィルムAの遅相軸方向がいずれも、第2の偏光板の吸収軸方向と平行になるように配置した。
積層体1の代わりに積層体3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体3を得た。
【0091】
[実施例4]
粘着剤層Aの上に位相差フィルムCを積層したこと以外は実施例1と同様にして、[表面基材層A/第2の偏光板/印刷層A/粘着剤層A/位相差フィルムC]の構成を有する積層体4を得た。なお、位相差フィルムCの遅相軸方向と第2の偏光板の吸収軸方向とが互いに平行になるように配置した。
積層体1の代わりに積層体4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体4を得た。
【0092】
[実施例5]
粘着剤層Aの上に2枚の位相差フィルムCをアクリル系粘着剤(厚み23μm)を介して積層したこと以外は実施例1と同様にして、[表面基材層A/第2の偏光板/印刷層A/粘着剤層A/位相差フィルムC/位相差フィルムC]の構成を有する積層体5を得た。なお、2枚の位相差フィルムCの遅相軸方向がいずれも、第2の偏光板の吸収軸方向と平行になるように配置した。
積層体1の代わりに積層体5を用いたこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体5を得た。
【0093】
[実施例6]
粘着剤層Aの上に位相差フィルムBを積層(転写)したこと以外は実施例1と同様にして、[表面基材層A/第2の偏光板/印刷層A/粘着剤層A/位相差フィルムB]の構成を有する積層体6を得た。
積層体1の代わりに積層体6を用いたこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体6を得た。
【0094】
[実施例7]
粘着剤層Aの上に2枚の位相差フィルムBをアクリル系粘着剤層(厚み23μm)を介して積層(転写)したこと以外は実施例1と同様にして、[表面基材層A/第2の偏光板/印刷層A/粘着剤層A/位相差フィルムB/位相差フィルムB]の構成を有する積層体7を得た。
積層体1の代わりに積層体7を用いたこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体7を得た。
【0095】
[実施例8]
粘着剤層Aの上に3枚の位相差フィルムBをアクリル系粘着剤層(厚み23μm)を介して積層(転写)したこと以外は実施例1と同様にして、[表面基材層A/第2の偏光板/印刷層A/粘着剤層A/位相差フィルムB/位相差フィルムB/位相差フィルムB]の構成を有する積層体8を得た。
積層体1の代わりに積層体8を用いたこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体8を得た。
【0096】
[実施例9]
粘着剤層Aの上に4枚の位相差フィルムBをアクリル系粘着剤層(厚み23μm)を介して積層(転写)したこと以外は実施例1と同様にして、[表面基材層A/第2の偏光板/印刷層A/粘着剤層A/位相差フィルムB/位相差フィルムB/位相差フィルムB/位相差フィルムB]の構成を有する積層体9を得た。
積層体1の代わりに積層体9を用いたこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体9を得た。
【0097】
[比較例1]
粘着剤層Aの上に位相差フィルムを積層しなかったこと以外は実施例1と同様にして、[表面基材層A/第2の偏光板/印刷層A/粘着剤層A]の構成を有する積層体C1を得た。
積層体1の代わりに積層体C1を用いたこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体C1を得た。
【0098】
[比較例2]
粘着剤層Aの上に位相差フィルムDを積層したこと以外は実施例1と同様にして、[表面基材層A/第2の偏光板/印刷層A/粘着剤層A/位相差フィルムD]の構成を有する積層体C2を得た。なお、位相差フィルムDの遅相軸方向と第2の偏光板の吸収軸方向とが互いに平行になるように配置した。
積層体1の代わりに積層体C2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体C2を得た。
【0099】
[比較例3]
粘着剤層Aの上に2枚の位相差フィルムDをアクリル系粘着剤(厚み23μm)を介して積層したこと以外は実施例1と同様にして、[表面基材層A/第2の偏光板/印刷層A/粘着剤層A/位相差フィルムD/位相差フィルムD]の構成を有する積層体C3を得た。なお、2枚の位相差フィルムDの遅相軸方向がいずれも、第2の偏光板の吸収軸方向と平行になるように配置した。
積層体1の代わりに積層体C3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体C3を得た。
【0100】
上記で得られた光学積層体1~9およびC1~C3の構成(ガラス板を除く)、各種測定結果、およびシームレス性の評価結果を表1および表2に示す。なお、表示領域および非表示領域はそれぞれ、平面視で印刷層が形成されていない領域および形成されている領域である。
<L*a*b*色空間、色差ΔE*abおよび反射率>
アクリル系粘着剤を用いて光学積層体を反射板(東レフィルム社製、商品名「DMS-X42」)上に貼り合せて測定サンプルを作製した。このとき、ガラス板側表面が反射板と対向するように貼り合せた。当該測定サンプルに対して、下記測定条件にて分光反射率を測定し、L*a*b*を求めた。なお、斜め方向(極角45°)の反射率については全方位で測定された測定値の最大値を採用した。
(測定条件)
正面方向:分光測色計(コニカミノルタ社製、「CM-2600d」)を用いて、拡散照明方式で測定サンプルを照明し、SCI(正反射光を含む)方式またはSCE(正反射光を除く)方式で受光した。
斜め方向:ディスプレイ測定システム(コニカミノルタ社製、「DMS505」)を用いて、測定サンプル主面の法線方向から照明し、法線に対して45°の角度で受光した。
測定波長範囲:360nm-740nm
光源:D65
測定径 MAV:φ8mm
また、色差(ΔE*ab)は下式で算出した。
ΔE*ab=〔(ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)1/2
<輝度>
液晶表示装置からバックライトを取り出した。当該バックライトの上に光学積層体をガラス板側表面がバックライトと対向するように載置し、バックライトを点灯したときの輝度をAUTRONIC MELCHERS社製「コノスコープ」を用いて測定した。測定は、正面方向および斜め方向(極角45°)の2通りで行い、斜め方向については全方位で測定した際の最小値を採用した。
<シームレス性>
光学積層体1~9およびC1~C3のガラス板側に、アクリル系粘着剤層(厚み23μm)を介して、反射板(東レフィルム社製、商品名「DMS-X42」)を貼り合わせて、評価サンプルとした。蛍光灯点灯下、極角45°で全方位から目視で光学積層体を表面基材層側から観察し、表示領域と非表示領域との境界視認性を評価した。評価基準は以下の通りである。
[評価基準]
×:refに比べて変化なし
〇:refに比べてやや改善
◎:refに比べて大きく改善
【表1】
【表2】
【0101】
表1に示される通り、実施例の光学積層体では、表示領域と非表示領域とにおける斜め方向の反射光の色差が比較例1の光学積層体よりも小さく、シームレス性評価結果も優れている。このことから、実施例の光学積層体を画像表示装置に適用する場合、比較例1の光学積層体を適用する場合に比べて斜め方向から観察した際のシームレス性が改善され得る。一方、第1の位相差層が厚み方向に複屈折を有する位相差フィルムを含まない比較例2および3では、第1の位相差層全体としての厚み方向の位相差値は実施例の第1の位相差層と同等であったがシームレス性向上効果は得られなかった。なお、正面方向については、実施例および比較例の光学積層体はいずれも、良好なシームレス性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の光学積層体は、画像表示装置に好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0103】
10 第1の偏光板
20 第1の位相差層
30 第2の偏光板
40 印刷層
50 表面基材層
60 第2の位相差層
100 光学積層体
110 バックライトユニット
120 第3の偏光板
130 液晶セル
140 有機EL素子
150 タッチパネル
200 画像表示装置
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C