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特開2024-162460メタバースヘルスケアコンテンツ推奨方法及びメタバースヘルスケアシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162460
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】メタバースヘルスケアコンテンツ推奨方法及びメタバースヘルスケアシステム
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/00 20180101AFI20241114BHJP
【FI】
G16H10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077983
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松森 正樹
(72)【発明者】
【氏名】李 媛
(72)【発明者】
【氏名】沖野(佐野) 佑子
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】メタバースにおいてユーザが他者と交流することによって認知機能をはじめとする心身機能の維持向上を図るメタバースヘルスケアコンテンツ推奨方法及びシステムを提供する。
【解決手段】ウェアラブルデバイス2と、メタバースヘルスケアサーバ1とが、無線通信で最寄りのゲートウェイに接続し、ネットワークNを介して接続される仮想現実システムSにおいて、メタバースヘルスケアサーバは、ユーザ基本データ121及び現実世界データ122に基づいてユーザをユーザグループに分類し、検査データ124に基づいてユーザグループ毎にスコアの分析値を算出し、メタバースデータ123に基づいて、分析値が一定値以上のユーザグループが利用したコンテンツを、ユーザに対して利用を推奨する推奨コンテンツとして選定し、推奨コンテンツに関する情報を、ユーザがメタバースを認識するための表示を行うウェアラブルデバイスのディスプレイ27に出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタバースにおいてコンテンツを提供してユーザの認知機能の維持向上を図るメタバースヘルスケアシステムが実行するメタバースヘルスケアコンテンツ推奨方法であって、
前記メタバースヘルスケアシステムは、プロセッサと、記憶部と、を有し、
前記記憶部は、
前記ユーザの属性を含んだユーザ基本データと、
現実世界における前記ユーザのバイタルサイン、生活習慣、病歴、及び服薬の少なくとも何れか1つに関する情報を含んだ現実世界データと、
前記メタバースにおいて前記ユーザが利用した前記コンテンツの利用状況及び該コンテンツの利用の際の該ユーザのフィジカルデータの少なくとも何れか1つに関する情報を含んだメタバースデータと、
前記ユーザの認知機能の検査を行ったスコアを含んだ検査データと、を記憶し、
前記プロセッサが、
前記ユーザ基本データ及び前記現実世界データに基づいて前記ユーザをユーザグループに分類し、
前記検査データに基づいて前記ユーザグループ毎に前記スコアの分析値を算出し、
前記メタバースデータに基づいて、前記分析値が一定値以上の前記ユーザグループが利用した前記コンテンツを、前記ユーザに対して利用を推奨する推奨コンテンツとして選定し、
前記推奨コンテンツに関する情報を、前記ユーザが前記メタバースを認識するための表示を行うディスプレイに出力する
各処理を有することを特徴とするメタバースヘルスケアコンテンツ推奨方法。
【請求項2】
請求項1に記載のメタバースヘルスケアコンテンツ推奨方法であって、
前記検査データは、前記検査の実施日付が異なる複数の検査データを含み、
前記分析値は、ある前記実施日付の前記検査データにおける前記スコアと、該検査データよりも前記実施日付が1つだけ古い前記検査データにおける前記スコアと、の差分又は比率で表される前記ユーザの認知機能の維持向上度である
ことを特徴とするメタバースヘルスケアコンテンツ推奨方法。
【請求項3】
請求項1に記載のメタバースヘルスケアコンテンツ推奨方法であって、
前記メタバースデータは、前記コンテンツの実行中における前記ユーザの会話時間の合計値を含み、
前記プロセッサが、
前記メタバースデータに基づいて前記コンテンツの実行中における前記会話時間の合計値が一定時間以上である該コンテンツを前記推奨コンテンツとして選定する
処理を有することを特徴とするメタバースヘルスケアコンテンツ推奨方法。
【請求項4】
請求項3に記載のメタバースヘルスケアコンテンツ推奨方法であって、
前記メタバースデータは、前記コンテンツの実行中における前記ユーザの会話の音声データを含み、
前記プロセッサが、
前記音声データの音声分析を実行し、
前記音声分析の結果に基づいて、前記コンテンツの実行中における前記ユーザのポジティブな感情が表れている前記会話の合計時間を算出し、
前記コンテンツの実行中における前記ユーザの前記会話時間の合計値に対する前記ユーザのポジティブな感情が表れている前記会話の合計時間の比率が一定比率以上の該コンテンツを前記推奨コンテンツとして選定する
各処理を有することを特徴とするメタバースヘルスケアコンテンツ推奨方法。
【請求項5】
請求項1に記載のメタバースヘルスケアコンテンツ推奨方法であって、
前記検査データは、前記検査の実施日付が異なる複数の検査データを含み、
前記プロセッサが、
前記ユーザ基本データ、前記現実世界データ、前記メタバースデータ、及び前記検査データに基づいて、現在から所定期間経過後の前記ユーザ毎の前記スコアを予測する予測モデルを作成し、
前記予測モデルに基づいて現在から所定期間経過後に前記スコアが低下すると予測される前記ユーザを抽出し、
前記推奨コンテンツに関する情報を、前記スコアが低下すると予測されるとして抽出した前記ユーザが前記メタバースを認識するための表示を行うディスプレイに出力する
各処理を有することを特徴とするメタバースヘルスケアコンテンツ推奨方法。
【請求項6】
請求項2に記載のメタバースヘルスケアコンテンツ推奨方法であって、
前記メタバースデータは、前記ユーザに対して前記コンテンツが前記推奨コンテンツとして過去に推奨された推奨日時を含み、
前記プロセッサが、
前記検査データに基づいて、前記推奨コンテンツのうちで、前記維持向上度が、最新の前記実施日付を含めて所定の前記実施日付分だけ連続して低下している前記コンテンツ及び前記ユーザの組合せが存在するかを判定し、
前記組合せが存在する場合に、前記メタバースデータに基づいて、該組合せにおける前記ユーザに対して該組合せにおける前記コンテンツが前記推奨コンテンツとして過去に所定回数推奨されていたかを判定し、
前記組合せにおける前記ユーザに対して該組合せにおける前記コンテンツが過去に所定回数推奨されていた場合に、前記メタバースデータに基づいて、該ユーザの該コンテンツの利用時間が一定時間を超過しているかを判定し、
前記ユーザの前記コンテンツの利用時間が一定時間を超過している場合に、該ユーザに対する前記推奨コンテンツから該コンテンツを除外する
各処理を有することを特徴とするメタバースヘルスケアコンテンツ推奨方法。
【請求項7】
請求項4に記載のメタバースヘルスケアコンテンツ推奨方法であって、
前記プロセッサが、
前記音声分析の結果に基づいて、前記コンテンツの実行中における前記ユーザのネガティブな感情が表れている前記会話の合計時間を算出し、
前記コンテンツの実行中における前記ユーザの前記会話時間の合計値に対する前記ユーザのネガティブな感情が表れている前記会話の合計時間の比率が一定比率以上の該コンテンツを選定し、
選定した前記コンテンツを、前記ユーザに対する前記推奨コンテンツから除外する
各処理を有することを特徴とするメタバースヘルスケアコンテンツ推奨方法。
【請求項8】
メタバースにおいてコンテンツを提供してユーザの認知機能の維持向上を図るメタバースヘルスケアシステムであって、
プロセッサと、記憶部と、を有し、
前記記憶部は、
前記ユーザの属性を含んだユーザ基本データと、
現実世界における前記ユーザのバイタルサイン、生活習慣、病歴、及び服薬の少なくとも何れか1つに関する情報を含んだ現実世界データと、
前記メタバースにおいて前記ユーザが利用した前記コンテンツの利用状況及び該コンテンツの利用の際の該ユーザのバイタルサインの少なくとも何れか1つに関する情報を含んだメタバースデータと、
前記ユーザの認知機能の検査を行ったスコアを含んだ検査データと、を記憶し、
前記プロセッサは、
前記ユーザ基本データ及び前記現実世界データに基づいて前記ユーザをユーザグループに分類し、
前記検査データに基づいて前記ユーザグループ毎に前記スコアの分析値を算出し、
前記メタバースデータに基づいて、前記分析値が一定値以上の前記ユーザグループが利用した前記コンテンツを、前記ユーザに対して利用を推奨する推奨コンテンツとして選定し、
前記推奨コンテンツに関する情報を、前記ユーザが前記メタバースを認識するための表示を行うディスプレイに出力する
ことを特徴とするメタバースヘルスケアシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタバースヘルスケアコンテンツ推奨方法及びメタバースヘルスケアシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、世界的な高齢化が進展しており、高齢者数の増加に伴い、介護が必要な高齢者が増加している。認知症患者数も増加傾向にあり、世界保健機関(WHO)によると、世界の認知症患者は5500万人を突破しており、2030年までに7800万人、2050年までに1億3900万人に増加すると予想されている。これに伴って医療及び介護の費用の増大が懸念されている。また認知症による経済損失も大きく、年間1兆3000億ドルの経済損失が生じていると報告されている。
【0003】
一方、近年大きく技術が発展してきている仮想現実(VR(Virtual Reality))を医療に取り入れる試みがなされている。例えば特許文献1には、仮想空間において、患者のキャラクタと他のキャラクタとの対話の特性を測定して患者の精神状態を判定し、コーチキャラクタを用いて言語的又は視覚的にフィードバックする心理療法のVR治療システムが開示されている。
【0004】
また例えば特許文献2には、仮想現実を介して疼痛管理を行う際に使用するため又は運動恐怖症を治療もしくは改善するための電子装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2022-538996号公報
【特許文献2】特表2022-540641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
厚生労働省によると、高齢者が介護状態になる原因の第一位は認知症であり、要介護状態の発生と悪化を遅らせる予防介護の観点から、認知症の予防が社会目標として掲げられている。例えば認知機能を維持向上するためには、運動や食生活に留意することに加えて社会(他者)との関わりを持ち続けること、すなわち友人や家族との交流、仕事、趣味、お稽古事、ボランティア活動、地域行事、サロンへの参加などの社会参加が有効であることが知られている。
【0007】
しかし、高齢者の中には歩行能力や認知機能の低下などの身体的要因、日常生活動作に対する自信低下、うつ傾向、生きがいの喪失などによる心理的要因、気候、経済的困窮、周囲に親しい友人がいないなどの社会・環境的要因により、社会とのかかわりを持つことが困難な高齢者も存在する。
【0008】
特許文献1に開示の技術では、仮想空間において高齢者が他者と交流することはできるものの、交流による認知機能の維持向上を考慮したものではない。また特許文献2でも、仮想空間における高齢者と他者との交流による認知機能の維持向上は考慮されていない。
【0009】
本発明は、上記を考慮してなされたものであり、メタバースにおいてユーザが他者と交流することによって認知機能をはじめとする心身機能の維持向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する一態様として、メタバースにおいてコンテンツを提供してユーザの認知機能の維持向上を図るメタバースヘルスケアシステムが実行するメタバースヘルスケアコンテンツ推奨方法であって、前記メタバースヘルスケアシステムは、プロセッサと、記憶部と、を有し、前記記憶部は、前記ユーザの属性を含んだユーザ基本データと、現実世界における前記ユーザのバイタルサイン、生活習慣、病歴、及び服薬の少なくとも何れか1つに関する情報を含んだ現実世界データと、前記メタバースにおいて前記ユーザが利用した前記コンテンツの利用状況及び該コンテンツの利用の際の該ユーザのフィジカルデータの少なくとも何れか1つに関する情報を含んだメタバースデータと、前記ユーザの認知機能の検査を行ったスコアを含んだ検査データと、を記憶し、前記プロセッサが、前記ユーザ基本データ及び前記現実世界データに基づいて前記ユーザをユーザグループに分類し、前記検査データに基づいて前記ユーザグループ毎に前記スコアの分析値を算出し、前記メタバースデータに基づいて、前記分析値が一定値以上の前記ユーザグループが利用した前記コンテンツを、前記ユーザに対して利用を推奨する推奨コンテンツとして選定し、前記推奨コンテンツに関する情報を、前記ユーザが前記メタバースを認識するための表示を行うディスプレイに出力する各処理を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、仮想空間において高齢者が他者と交流することによって認知機能の維持向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1に係る仮想現実システムの構成の一例を示す図。
図2】実施形態1に係るユーザ基本データの構成の一例を示す図。
図3】実施形態1に係る現実世界データの構成の一例を示す図。
図4】実施形態1に係るメタバースデータ123の構成の一例を示す図。
図5】実施形態1に係る検査データの構成の一例を示す図。
図6】実施形態1に係る推奨コンテンツデータの構成の一例を示す図。
図7】実施形態1に係るメタバース処理の一例を示すフローチャート。
図8】実施形態1に係る推奨コンテンツ表示群の一例を示す図。
図9】実施形態1に係るデータ分析処理の一例を示すフローチャート。
図10】実施形態2に係るデータ分析処理の一例を示すフローチャート。
図11】実施形態3に係るデータ分析処理の一例を示すフローチャート。
図12】実施形態3に係る認知機能低下ユーザ予測リストの構成の一例を示す図。
図13】実施形態4に係るデータ分析処理の一例を示すフローチャート。
図14】実施形態4に係る除外コンテンツ決定処理の一例を示すフローチャート。
図15】実施形態4に係る除外コンテンツリストデータの構成の一例を示す図。
図16】実施形態5に係る除外コンテンツ決定処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態において、同一の構成には原則として同一の符号を付け、繰り返しの説明は省略する。なお、本実施形態は本発明を実現するための一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本実施形態における各構成要素の数は、注記がない限り、限定されない。
【0014】
以下の説明では、同一の構成要素を、区別して説明する場合には添え字を含んだ符号を用い、区別せず説明する場合には添え字を除外した符号を用いる。例えばAAA部15a,15bを区別して説明する場合には、添え字a,bを含んだ符号15a,15bを用い、区別せず説明する場合には添え字を除外した符号15を用いる。
【0015】
以下の説明では、プログラムが行う処理について説明する場合がある。コンピュータは、プロセッサ(例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit))により、主記憶装置のメモリ等を用いながら、プログラムで定められた処理を行う。そのため、プログラムを実行して行う処理の主体を、プロセッサとしてもよい。プロセッサがプログラムを実行することで、処理を行う機能部が実現される。
【0016】
同様に、プログラムを実行して行う処理の主体が、プロセッサを有するコントローラ、装置、システム、計算機、ノードであってもよい。プログラムを実行して行う処理の主体は、演算部であればよく、特定の処理を行う専用回路を含んでいてもよい。専用回路は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等である。
【0017】
以下の説明では、プログラムは、プログラムソースから計算機にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバ又は計算機が読取り可能な非一時的な記憶メディアであってもよい。プログラムソースがプログラム配布サーバの場合、プログラム配布サーバはプロセッサと配布対象のプログラムを記憶する記憶資源(ストレージ)を含み、プログラム配布サーバのプロセッサが配布対象のプログラムを他の計算機に配布してもよい。また、実施形態において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0018】
以下の説明では、テーブル形式で各種データを説明する。しかしデータ形式はテーブル形式に限られず、キュー、リスト、CSV(Comma Separated Value)といった他のデータ形式であってもよい。
【0019】
[実施形態1]
認知症の発症、認知機能の低下には、日々の生活習慣が大きく関係している。バランスの良い食事、適度な運動と睡眠、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病を防ぐことが有効である。更に、他者との交流や知的活動も認知症の予防、認知機能の維持向上に有効である。他者と会話する際には、相手の話に合わせて返答を考えたり、相手の様子を見たりして雰囲気を掴むなど、頭を使う。また、他者と会う際には、何日、何時にどこで会うか、何時に出発すれば間に合うか、どのルートを通ればよいか、などの複数のことを考え、脳の記憶分野を使用する。家族や友人、趣味のグループの人と、多様な交流を持つことにより、複数の人から異なるエピソードを聞いたり、新しい知識を得たりすることで脳が多くの刺激を受けるため、認知症の予防、認知機能の維持向上に有効である。このように、認知機能の低下抑制や維持向上には、他者と交流することが有効である。
【0020】
そこで実施形態1では、認知機能の維持向上が実現できているユーザがメタバースで実際に利用しているコンテンツを、認知機能の維持向上に適切なコンテンツとして、他のユーザに対して提案することで、メタバースを用いた認知機能の維持向上を実現する。
【0021】
(実施形態1に係るメタバースヘルスケアシステムSの構成)
図1は、実施形態1に係るメタバースヘルスケアシステムSの構成の一例を示す図である。
【0022】
メタバースヘルスケアシステムSは、ヘッドマウントディスプレイを備えたVR(Virtual Reality)デバイス(VRゴーグル、VRヘッドセット等)を装着したユーザに、インターネット上に構築されたメタバース(仮想空間)での仮想現実を提供する。メタバースヘルスケアシステムSは、コンテンツデータを実行することでメタバースにおける各種体験をユーザに提供する。メタバース内で同じコンテンツを利用するユーザ同士は、会話や対戦等の交流を行うことができる。
【0023】
本実施形態では、各ユーザに対して、他のユーザの認知機能の維持向上の実績があるコンテンツを利用するように推奨する。なお認知機能に限らず、コンテンツの特性に応じて、他の心身機能を維持向上の効果が高いコンテンツとして推奨してもよい。例えばウォーキングのコンテンツを、歩行機能の維持向上の効果が高いコンテンツとして推奨することもできる。
【0024】
メタバースヘルスケアシステムSは、メタバースヘルスケアサーバ1、及びユーザ毎のVRデバイスであるウェアラブルデバイス2を含んで構成される。ウェアラブルデバイス2とメタバースヘルスケアサーバ1は、無線通信で最寄りのゲートウェイに接続し、ゲートウェイ及びインターネット等のネットワークNを介した通信によって接続される。メタバースヘルスケアサーバ1は、オンプレミス環境に構築されても、クラウド環境に構築されてもよい。
【0025】
メタバースヘルスケアサーバ1は、プロセッサ11、メモリとストレージを含む記憶部12、及び通信装置13を含んで構成される。プロセッサ11は、プログラムの実行によるメタバース処理部111、及びデータ分析処理部112を有する。
【0026】
記憶部12は、ユーザ基本データ121、現実世界データ122、メタバースデータ123、及び検査データ124を格納する。また記憶部12は、推奨コンテンツリストデータ125、認知機能低下ユーザ予測リストデータ126、除外コンテンツリストデータ127、及びコンテンツデータ128を格納する。ユーザ基本データ121及び現実世界データ122は、メタバースヘルスケアサーバ1によって提供されるメタバースを利用するユーザの登録時にデータが入力される。認知機能低下ユーザ予測リストデータ126については、実施形態3で説明する。除外コンテンツリストデータ127については、実施形態4で説明する。
【0027】
図2は、実施形態1に係るユーザ基本データ121の構成の一例を示す図である。ユーザ基本データ121は、ユーザID、ユーザ名、生年月日、性別、身長、体重、・・・といった各ユーザの属性情報を保存している。
【0028】
図3は、実施形態1に係る現実世界データ122の構成の一例を示す図である。現実世界データ122は、ユーザ毎に日常健康データ、病歴データ、服薬データ等のユーザのバイタルサイン、生活習慣、病歴、及び服薬の少なくとも何れか1つに関する情報を保存している。日常健康データには、歩数、心拍数、睡眠時間、体重、居住状態(独居/同居)、喫煙の有無、飲酒の有無、定期的な運動の有無、趣味の有無等の心身の健康に影響する生活習慣に関する各種情報を保存している。日常健康データは、ウェアラブルデバイス2のGPS(Global Positioning System)機能によって取得されたユーザの行動記録を含んでもよい。
【0029】
病歴データには、糖尿病、高血圧、転倒歴、高脂血症、パーキンソン病、認知症、難聴、視力障害、頭部外傷既往等の病気やケガの履歴情報を保存している。服薬データには、糖尿病薬、高血圧薬、心疾患治療薬、抗神経病薬、抗パーキンソン病薬、睡眠薬、漢方薬、鍼灸等の病気やケガに対する治療薬や施術の履歴情報を保存している。
【0030】
図4は、実施形態1に係るメタバースデータ123の構成の一例を示す図である。メタバースデータ123は、ユーザ毎かつコンテンツ毎に、推奨日時、コンテンツの利用時間の合計値、コンテンツ利用時の音声を記録した音声データ、コンテンツ利用時のユーザの会話時間の合計値等のコンテンツの利用状況を保存する。またメタバースデータ123は、心拍数、及び、消費カロリー等のコンテンツ利用時のユーザの身体状況を示すフィジカルデータを保存する。推奨日時とは、該当のコンテンツがメタバース処理(図7)のステップS12で提示された日時である。例えば推奨日時に3つの日時が記録されている場合、該当のコンテンツが過去に3回、該当のユーザに対して推奨されたことを表す。メタバースデータ123は、各コンテンツのジャンル等の属性も管理していてもよい。
【0031】
コンテンツのジャンルには、例えばスポーツ系(バドミントン、テニス、バレーボール、スキー等)、旅行系(国内旅行、海外旅行等)、テーブルゲーム系(トランプ、将棋、麻雀等)、趣味系(書道、手芸等)といったものがある。またコンテンツのジャンルには、例えば学習系(講演会聴講等)、脳トレーニング系(計算、記憶、反応力等)、ショッピング系、医療サービス系(カウンセリング等)といったものがある。ユーザは、スポーツ、旅行、テーブルゲーム、趣味、学習、脳トレーニング、ショッピング、医療サービス等を、メタバースで、現実世界と同様に体験できる。
【0032】
図5は、実施形態1に係る検査データ124の構成の一例を示す図である。検査データ124は、ユーザ毎の認知機能、歩行機能等の心身機能の検査の結果のスコアを時系列で保存している。検査データ124は、例えば3か月や6か月に1回といった定期的周期で医療機関や行政機関によって記録及び提供されるユーザ毎の各身体機能の検査結果のスコアである。認知機能の場合には、MMSE、MoCA、DASC-21、Mini-Cog、HDS-R、ABC-DS等のスコアが評価尺度となる。DASC-21は、認知機能障害と、生活機能障害の双方を評価でき、また質問への回答形式で簡便に評価できる。
【0033】
検査データ124の基になる検査や評価は、現実世界、メタバース、オンラインのいずれで実施されてもよい。
【0034】
図6は、実施形態1に係る推奨コンテンツリストデータ125の構成の一例を示す図である。推奨コンテンツリストデータ125は、ユーザに対して認知機能の維持向上のために利用を推奨するコンテンツのIDの最新情報を、所定個数だけ優先順位を付けて保存している。
【0035】
図1の説明に戻る。コンテンツデータ128は、メタバースヘルスケアサーバ1が提供するメタバースでユーザに対して種々の疑似体験を提供するコンテンツである。例えばコンテンツのジャンルが社交系である場合には、メタバース内で同じコンテンツを利用するユーザ同士で会話を楽しむことができる。また例えばコンテンツのジャンルが運動系である場合には、メタバース内で同じコンテンツを利用するユーザ同士でスポーツを疑似的に楽しむことができる。
【0036】
プロセッサ11のメタバース処理部111は、メタバースヘルスケアサーバ1が提供するメタバースの運営及び制御を行うと共に、コンテンツデータ128を実行することで、ユーザに対して疑似体験を提供する。メタバース処理部111は、メタバースに入場するユーザに対して、推奨コンテンツリストデータ125に基づいて認知機能の維持向上の観点から利用を推奨するコンテンツの一覧を提示し、コンテンツを選択させる。またメタバース処理部111は、メタバースに入場しているユーザのメタバースにおける行動や動作、身体状況等の履歴を、ウェアラブルデバイス2を介して取得し記録する。
【0037】
プロセッサ11のデータ分析処理部112は、ユーザ基本データ121、現実世界データ122、メタバースデータ123、及び検査データ124に基づいて、ユーザに対して認知機能の維持向上の観点から利用を推奨するコンテンツを選定する。データ分析処理部112は、選定したコンテンツのIDを推奨コンテンツリストデータ125に保存する。データ分析処理部112は、推奨するコンテンツの選定と推奨コンテンツリストデータ125への保存を、所定周期で繰返すことで、推奨コンテンツリストデータ125に最新データが反映されるようにしておく。
【0038】
通信装置13は、メタバースヘルスケアサーバ1がウェアラブルデバイス2と通信を行うための通信インターフェースである。
【0039】
ウェアラブルデバイス2は、例えばヘッドマウント型のVRデバイスであり、プロセッサ21、記憶部22、通信装置23、センサ24、スピーカ25、マイク26、及びディスプレイ27を含んで構成される。
【0040】
プロセッサ21は、ウェアラブルデバイス2の全体を制御する。記憶部22は、メモリ及びストレージを含み、プロセッサ21が実行するウェアラブルデバイス2を制御するためのプログラムや各種データを格納する。
【0041】
通信装置23は、ウェアラブルデバイス2がメタバースヘルスケアサーバ1と通信を行うための通信インターフェースである。
【0042】
センサ24は、脈波センサ、体温計、モーションセンサといった、ウェアラブルデバイス2を装着するユーザのバイタルサイン、フィジカルデータ、動作情報、ユーザがおかれる環境情報等を取得するセンサ類である。例えばモーションセンサにより検知されたユーザの体の動きは、メタバースヘルスケアサーバ1で処理され、メタバースにおけるユーザの動作として現実世界の同様に認識されるように、他のユーザのウェアラブルデバイス2のディスプレイ27を介して表示される。
【0043】
モーションセンサによって検知されたウェアラブルデバイス2を装着するユーザの各コンテンツの実行中の動作に基づいて、メタバースデータ123の各コンテンツの「利用時間」が計測される。脈波センサによって検知されたウェアラブルデバイス2を装着するユーザの各コンテンツの実行中の心拍が、プロセッサ21によって計数され、メタバースデータ123の各コンテンツの「心拍数」となる。また体温計によって検知されたウェアラブルデバイス2を装着するユーザの各コンテンツの実行中の体温と、モーションセンサによって検知されたウェアラブルデバイス2を装着するユーザの各コンテンツの実行中の動作は、プロセッサ21によって解析される。そして、メタバースデータ123の各コンテンツの「消費カロリー」となる。
【0044】
スピーカ25は、ウェアラブルデバイス2を装着するユーザに対して音声を出力する。マイク26は、ウェアラブルデバイス2を装着するユーザ及び周囲の音声を収音する。ディスプレイ27は、ヘッドマウントディスプレイであり、ウェアラブルデバイス2を装着するユーザに対してメタバースに没入させるように各種情報を表示する。ディスプレイ27は、ユーザの周囲の現実世界を透過に視認させつつメタバースに関連する情報を重畳又は付加的に表示してもよい。
【0045】
なおセンサ24は、ウェアラブルデバイス2と連携する別装置のスマートデバイスであってもよい。例えばセンサ24が脈波センサである場合に、ウェアラブルデバイス2と連携するスマートウォッチが備える脈波センサを用いてもよい。
【0046】
(実施形態1に係るメタバース処理)
図7は、実施形態1に係るメタバース処理の一例を示すフローチャートである。メタバース処理は、ユーザがメタバースに入場する毎に実行される。
【0047】
先ずステップS11では、メタバースヘルスケアサーバ1のメタバース処理部111は、ユーザのメタバースへの入場を受付ける。ユーザは、ウェアラブルデバイス2を自身の頭部等に装着して起動し、ユーザ情報を入力してメタバースへの入場操作を実行する。メタバース処理部111は、ユーザによるメタバースへの入場操作をウェアラブルデバイス2から受付けて入場処理を実行する。
【0048】
次にステップS12では、メタバース処理部111は、推奨コンテンツリストデータ125に記録されている更新日時が最新のレコードに記録されている推奨コンテンツをディスプレイ27を介してユーザに対して提示する。
【0049】
次にステップS13では、メタバース処理部111は、ステップS21でユーザに対して提示した推奨コンテンツのリストから、ユーザによって選択されたコンテンツを受付ける。
【0050】
次にステップS14では、メタバース処理部111は、ステップS13で選択を受付けたコンテンツのコンテンツデータ128を読出して実行する。
【0051】
次にステップS15では、メタバース処理部111は、ステップS14で開始したコンテンツの実行中に、メタバース内でユーザのウェアラブルデバイス2によって検知されるフィジカルデータ等を収集し、メタバースデータ123として保存する。
【0052】
次にステップS16では、メタバース処理部111は、メタバース処理部111は、ユーザのメタバースからの退場を受付ける。
【0053】
(実施形態1に係る推奨コンテンツ表示群27D)
図8は、実施形態1に係る推奨コンテンツ表示群27Dの一例を示す図である。図8に示す推奨コンテンツ表示群27Dは、メタバース処理のステップS12(図7)で、ユーザが装着するウェアラブルデバイス2のディスプレイ27に表示される。推奨コンテンツ表示群27Dには、一例として5つの推奨コンテンツ表示27D1~27D5が表示されている。例えばユーザは、実行したい推奨コンテンツ表示27D1~27D5を押下してコンテンツを実行することができる。
【0054】
(実施形態1に係るデータ分析処理)
図9は、実施形態1に係るデータ分析処理の一例を示すフローチャートである。データ分析処理は、所定周期で実行され、ユーザ基本データ121、現実世界データ122、メタバースデータ123、及び検査データ124に基づいて推奨コンテンツリストデータ125を作成する。データ分析処理は、定期的に実行されることで、最新のユーザ基本データ121、現実世界データ122、メタバースデータ123、及び検査データ124に基づいて更新された推奨コンテンツリストデータ125を保持することができる。
【0055】
先ずステップS21では、メタバースヘルスケアサーバ1のデータ分析処理部112は、メタバースヘルスケアサーバ1に保存されているユーザ基本データ121を取得する。次にステップS22では、データ分析処理部112は、メタバースヘルスケアサーバ1に保存されている現実世界データ122を取得する。次にステップS23では、データ分析処理部112は、メタバースヘルスケアサーバ1に保存されているメタバースデータ123を取得する。次にステップS24では、データ分析処理部112は、メタバースヘルスケアサーバ1に保存されている検査データ124を取得する。
【0056】
次にステップS25では、データ分析処理部112は、ユーザ基本データ121及び現実世界データ122を用いたクラスター分析によりユーザを分類する。ユーザの各クラスターが、概ね10人以上100人以下となるようにクラスタリングすることが望ましい。
【0057】
次にステップS26では、データ分析処理部112は、検査データ124の認知機能のスコアを分析し、スコアの分析値が一定値以上、または上位所定数又は所定パーセントの優良ユーザを特定する。スコアの分析値は、検査データ124の検査の実施日付が異なるある実施日付の検査データにおけるスコアを、この検査データよりも実施日付が1つだけ古い検査データにおけるスコアで割った比率で表されるユーザの認知機能の維持向上度である。維持向上度は、最新データと直近の前回データの差分でもよいし、最新データから過去の所定期間にわたる複数のデータの向上率又は向上量の平均でもよい。
【0058】
優良ユーザとは、スコアの分析値がステップS25でグループ分けしたユーザグループの中で一定値以上、または上位の所定数又は所定パーセントであり、認知機能の推移が良好なユーザグループである。
【0059】
なおステップS26では、検査データ124の認知機能のスコアの推移に代えて、検査データ124の認知機能の最新スコアが高い順番で優良ユーザを特定してもよい。
【0060】
次にステップS27では、データ分析処理部112は、メタバースデータ123に基づいて、ステップS26で特定した優良ユーザの会話時間が長い上位所定数又は所定パーセントの優良コンテンツを特定する。
【0061】
次にステップS28では、データ分析処理部112は、ステップS27特定した優良コンテンツで推奨コンテンツリストデータ125を更新する。
【0062】
なおステップS27では、優良ユーザの会話時間が長いコンテンツに絞り込まず、優良ユーザが一定時間以上使用した履歴がある全てのコンテンツを優良コンテンツとしてもよい。
【0063】
また、ユーザ向けに、各コンテンツの利用時間と認知機能の検査データのレポートを定期的に(例えば推奨コンテンツリストデータ125の更新タイミングで)作成してもよい。
【0064】
(実施形態1の効果)
上述の実施形態1では、ユーザ基本データ121及び現実世界データ122に基づいてユーザを分類したユーザグループ毎に、検査データ124に基づいて認知機能のスコアを算出する。メタバースデータ123に基づいて、認知機能のスコアが優良なユーザグループが利用したコンテンツを、他のユーザに対して利用を推奨する推奨コンテンツとして選定し、ウェアラブルデバイス2のディスプレイ27に出力する。
【0065】
よって認知機能の維持向上に関して実績があるコンテンツをユーザに対して利用を推奨し、メタバースにおけるユーザの交流促進によって、認知機能の維持向上の効果を高めることができる。
【0066】
またメタバースデータ123に基づいてコンテンツの実行中における会話時間の合計値が一定時間以上であるコンテンツを推奨コンテンツとして選定することで、会話時間と認知機能の因果関係に基づいて、認知機能の維持向上を効率的に図ることができる。
【0067】
[実施形態2]
実施形態1では、各ユーザに対して、他のユーザの認知機能の維持向上の実績があるコンテンツを利用するように推奨する。しかし、単に多くの人と交流すればよいわけではない。人間関係に伴うストレスや不安、突然の環境変化は、認知症の発症、認知機能低下要因になる可能性がある。例えば、会いたくない人と無理をして会う、少人数での交流を好む人が無理をして多くの人と交流する、気力や体力の上限を考慮せずに多くの人と交流する、などは、ストレスや不安、極度の疲労を抱えさせる。このため認知症の発症や認知機能の低下のリスクとなる可能性がある。本人が心地よく感じ、大きな負担がないようにしつつ、質の高い交流を増やすことが、認知症の予防、認知機能維持向上に対して有効である。
【0068】
そこで実施形態2では、他のユーザとの交流において、喜びや信頼などのポジティブな感情を不安や恐れなどのネガティブな感情よりも増やすことで、認知症予防及び認知機能の維持向上に効果的な交流を促すようにする。
【0069】
(実施形態2に係るデータ分析処理)
図10は、実施形態2に係るデータ分析処理の一例を示すフローチャートである。実施形態2に係るデータ分析処理は、実施形態1に係るデータ分析処理(図9)と比較して、ステップS27とS28の間にステップS27aが実行される点が異なり、その他は同様である。
【0070】
ステップS27aでは、メタバースヘルスケアサーバ1のデータ分析処理部112は、ステップS27で特定した優良コンテンツの会話音声分析を行い、ポジティブな会話の時間比率が一定比率以上又は上位所定数の優良コンテンツを絞り込む。
【0071】
音声データによる感情分析によれば、感情は、例えば喜び、信頼、誇り、安心、感謝、希望、興味、満足、快、親しみ、不安、恐れ、悲しみ、嫌悪、罪悪感、怒り、失望、孤独感、恨み等に分類することができる。このうち喜び、信頼、誇り、安心、感謝、希望、興味、満足、快、親しみは、ポジティブな感情に分類される。また不安、恐れ、悲しみ、嫌悪、罪悪感、怒り、失望、孤独感、恨みは、ネガティブな感情に分類される。感情は、他者との会話中の音声分析、又は、心拍数、心拍変動、脈拍数、血圧、経皮的動脈血酸素飽和度、呼吸、消費カロリーなどのバイタルサインの分析により取得される。
【0072】
データ分析処理部112は、ポジティブな感情の時間比率(ポジティブ時間比率)を式(1)により算出する。なお感情は、音声に限らず、心拍変動、脈拍、あるいは音声、心拍変動、及び脈拍を組合せて推定してもよい。
ポジティブ時間比率=ポジティブな感情の時間/(ポジティブな感情の時間+ネガティブな感情の時間)・・・(1)
【0073】
ステップS28では、データ分析処理部112は、ステップS27aで絞り込んだ優良コンテンツで推奨コンテンツリストデータ125を更新する。
【0074】
(実施形態2の効果)
上述の実施形態2では、コンテンツの実行中におけるユーザの会話時間の合計値に対するユーザのポジティブな感情が表れている会話の合計時間の比率が一定比率以上のコンテンツを推奨コンテンツとして選定する。これによりユーザが与えられる感情を考慮し、認知機能の維持向上の効率と効果が高いコンテンツを推奨コンテンツとすることができる。
【0075】
[実施形態3]
実施形態3では、他のユーザの認知機能の維持向上の実績があるコンテンツを利用するように推奨するターゲットを特定のユーザに絞ることで、無駄な推奨の通知を抑制すると共に、認知機能の維持向上の効果をより高める。
【0076】
(実施形態3に係るデータ分析処理)
図11は、実施形態3に係るデータ分析処理の一例を示すフローチャートである。図11は、実施形態3に係る認知機能低下ユーザ予測リストデータ126の構成の一例を示す図である。
【0077】
実施形態3に係るデータ分析処理は、実施形態1に係るデータ分析処理(図9)と比較して、ステップS27とS28の間にステップS27b、S27cが実行される点が異なり、その他は同様である。
【0078】
ステップS27bでは、メタバースヘルスケアサーバ1のデータ分析処理部112は、ユーザ基本データ121、現実世界データ122、及びメタバースデータ123に基づいて、将来の認知機能が低下するユーザを予測する。
【0079】
例えば認知機能のスコアを目的変数、ユーザ基本データ121、現実世界データ122、メタバースデータ123の各項目値を説明変数とする回帰分析により、所定期間経過後(例えば2年後)の各ユーザの認知機能を予測する。そして、現状より低下する結果が出たユーザを抽出する。またはユーザ基本データ121、現実世界データ122、メタバースデータ123の各項目値を入力、認知機能のスコアを出力とするモデルを機械学習し、このモデルに基づいてユーザの認知機能の低下を予測してもよい。このモデルは、現実世界データ122とメタバースデータ123の更新を反映させるため、一定周期で再学習される。
【0080】
次にステップS27cでは、データ分析処理部112は、ステップS27bで抽出したユーザで認知機能低下ユーザ予測リストデータ126(図12)を更新する。認知機能低下ユーザ予測リストデータ126が存在する場合に、メタバース処理(図7)のステップS12で推奨コンテンツを提示する際、認知機能低下ユーザ予測リストデータ126にユーザIDが記録されているユーザに対してのみ推奨コンテンツが提示される。
【0081】
(実施形態3の効果)
上述の実施形態3では、予測モデルに基づいて将来に認知機能のスコアが低下すると予測されるユーザを抽出し、抽出したユーザに対して推奨コンテンツを通知する。よって、通知が必要な対象を絞って無駄な推奨コンテンツの通知を抑制すると共に、認知機能の維持向上の効率性と効果をより高めることができる。
【0082】
[実施形態4]
実施形態3では、認知機能の維持向上の効果が期待できるユーザにターゲットを絞る。これに対して実施形態4では、あるコンテンツに関して過去に認知機能の維持向上の効果がないユーザをターゲットから除外することで、コンテンツの無駄な推奨や無意味なコンテンツ実行を抑制する。
【0083】
(実施形態4に係るデータ分析処理)
図13は、実施形態4に係るデータ分析処理の一例を示すフローチャートである。
【0084】
実施形態4に係るデータ分析処理は、実施形態1に係るデータ分析処理(図9)と比較して、ステップS27とS28の間にステップS27dが実行される点が異なり、その他は同様である。
【0085】
ステップS27dでは、メタバースヘルスケアサーバ1のデータ分析処理部112は、ステップS27で特定した優良コンテンツから、ユーザの認知機能の維持向上の効果が低いコンテンツを除外する除外コンテンツ決定処理を実行する。除外コンテンツ決定処理では、後述の除外コンテンツリストデータ127(図15)を作成する。除外コンテンツ決定処理の詳細は、図14を参照して後述する。
【0086】
除外コンテンツリストデータ127(図15)が存在する場合、メタバース処理(図7)のステップS12で、除外コンテンツリストデータ127に記録されているユーザID及びコンテンツIDに該当のユーザ及びコンテンツを、推奨をキャンセルして提示しない。
【0087】
(実施形態4に係る除外コンテンツ決定処理)
図14は、実施形態4に係る除外コンテンツ決定処理の一例を示すフローチャートである。先ずステップS27d1では、メタバースヘルスケアサーバ1のデータ分析処理部112は、ステップS27(図12)で特定した優良コンテンツからコンテンツを1つ選択する。
【0088】
次にステップS27d2では、データ分析処理部112は、メタバースデータ123及び検査データ124を参照し、ステップS27d1で選択したコンテンツが、過去に認知機能が所定回数(例えば2回)だけ連続で下がっているユーザが存在するコンテンツかを判定する。データ分析処理部112は、過去に認知機能が所定回数だけ連続で下がっているユーザが存在するコンテンツである場合(ステップS27d2YES)にステップS27d3に処理を移す。一方、データ分析処理部112は、過去に認知機能が所定回数だけ連続で下がっているユーザが存在しないコンテンツでない場合(ステップS27d2NO)にステップS27d6に処理を移す。
【0089】
ステップS27d3では、データ分析処理部112は、メタバースデータ123を参照し、ステップS27d1で選択したコンテンツが、ステップS27d2でYESとなるユーザについて、過去に所定回数(例えば2回)推奨されたコンテンツかを判定する。データ分析処理部112は、過去に所定回数推奨されたコンテンツである場合(ステップS27d3YES)にステップS27d4に処理を移す。一方、データ分析処理部112は、過去に所定回数推奨されたコンテンツでない場合(ステップS27d3NO)にステップS27d6に処理を移す。
【0090】
ステップS27d4では、データ分析処理部112は、メタバースデータ123を参照し、ステップS27d1で選択したコンテンツが、ステップS27d3でYESとなるユーザについて、利用時間が一定時間(例えば5時間)を超えるコンテンツかを判定する。データ分析処理部112は、利用時間が一定時間を超えるコンテンツである場合(ステップS27d4YES)にステップS27d5に処理を移す。一方、データ分析処理部112は、利用時間が一定時間を超えるコンテンツでない場合(ステップS27d4NO)にステップS27d6に処理を移す。
【0091】
ステップS27d5では、データ分析処理部112は、ステップS27d2、S27d3、S27d4でYESと判定されたコンテンツ及びユーザの組合せを除外コンテンツリストデータ127に登録する。
【0092】
図15は、実施形態4に係る除外コンテンツリストデータ127の構成の一例を示す図である。除外コンテンツリストデータ127は、ユーザID毎に除外コンテンツのIDを格納する。
【0093】
ステップS27d6では、データ分析処理部112は、ステップS27(図12)で特定した全ての優良コンテンツを確認済かを判定する。データ分析処理部112は、ステップS27(図12)で特定した全ての優良コンテンツを確認済の場合(ステップS27d6YES)に除外コンテンツ決定処理を終了してステップS28(図12)に処理を移す。一方データ分析処理部112は、全ての優良コンテンツを確認済でない場合(ステップS27d6NO)にステップS27d1に処理を戻す。
【0094】
(実施形態4の効果)
上述の実施形態4では、過去に推奨したコンテンツを一定時間以上ユーザが利用したにもかかわらず、このユーザの認知機能が低下している場合に、このユーザに対して同じコンテンツを推奨しないようにする。よって、コンテンツの無駄な推奨を抑制し、無意味なコンテンツ実行を抑制することで、ユーザの時間浪費を回避できる。
【0095】
[実施形態5]
実施形態4では、あるコンテンツに関して過去に認知機能の維持向上の効果がないユーザをターゲットから除外することで、コンテンツの無駄な推奨を抑制する。これに対して実施形態5では、あるコンテンツに関して過去にネガティブな会話の比率が高かったユーザをターゲットから除外することで、コンテンツの無駄な推奨を抑制する。
【0096】
(実施形態5に係る除外コンテンツ決定処理)
図16は実施形態5に係る除外コンテンツ決定処理の一例を示すフローチャートである。実施形態5に係る除外コンテンツ決定処理は、実施形態4に係る除外コンテンツ決定処理(図14)と比較して、ステップS27d2~S27d5に代えて、ステップS27d2a及びS27d5aが実行される点が異なり、その他は同様である。
【0097】
ステップS27d2aでは、メタバースヘルスケアサーバ1のデータ分析処理部112は、優良コンテンツの会話音声分析の結果、ステップS27d1で選択したコンテンツがあるユーザに関してネガティブな会話の比率が一定比率以上であるかを判定する。データ分析処理部112は、ネガティブな感情の時間比率(ネガティブ時間比率)を式(2)により算出する。
ネガティブ時間比率=ネガティブな感情の時間/(ポジティブな感情の時間+ネガティブな感情の時間)・・・(2)
【0098】
データ分析処理部112は、あるユーザに関してネガティブな会話の比率が一定比率以上であるコンテンツである場合(ステップS27d2aYES)にステップS27d5に処理を移す。一方データ分析処理部112は、何れのユーザに関してもネガティブな会話の比率が一定比率未満であるコンテンツである場合(ステップS27d2aNO)に、ステップS27d6に処理を移す。
【0099】
ステップS27d6では、データ分析処理部112は、ステップS28d2aYESに該当するコンテンツ及びユーザを除外コンテンツリストデータ127に登録する。
【0100】
(実施形態5の効果)
上述の実施形態5では、過去にネガティブな会話の比率が高かったコンテンツ及びユーザを推奨コンテンツから除外することで、ユーザが与えられるネガティブな感情に配慮しながら、コンテンツの無駄な推奨を抑制することができる。特にあるコンテンツにおいてネガティブな感情を持ったユーザが存在する場合には、このコンテンツにおいて他のユーザも同様にネガティブな感情を持ったと考えられる。このため、ネガティブな感情を持ったユーザをこのコンテンツから排除することで、他のユーザの感情に配慮することができる。
【0101】
以上、本願開示に係る実施形態について詳述したが、本願開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上述の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また上述の実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0102】
また上述の各構成、機能部や処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また上述の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやHDD、SSD等の記録装置、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0103】
また上述の各図において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、必ずしも実装上の全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。例えば、実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0104】
また上述した各システムや各装置の各機能及びデータの配置形態は一例に過ぎない。各機能及びデータの配置形態は、ハードウェアやソフトウェアの性能、処理効率、通信効率等の観点から最適な配置形態に変更し得る。
【符号の説明】
【0105】
S:メタバースヘルスケアシステム、1:メタバースヘルスケアサーバ、2:ウェアラブルデバイス、11,21:プロセッサ、27:ディスプレイ、111:メタバース処理部、112:データ分析処理部、121:ユーザ基本データ、122:現実世界データ、123:メタバースデータ、124:検査データ、125:推奨コンテンツリストデータ、126:認知機能低下ユーザ予測リストデータ、127:除外コンテンツリストデータ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16