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  • 特開-回路遮断器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162465
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】回路遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/42 20060101AFI20241114BHJP
   H01H 33/82 20060101ALI20241114BHJP
   H01H 73/18 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H01H33/42
H01H33/82
H01H73/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077992
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 岳
(72)【発明者】
【氏名】長嶺 一輝
【テーマコード(参考)】
5G001
5G030
【Fターム(参考)】
5G001AA03
5G001BB01
5G001DD06
5G030DE02
(57)【要約】
【課題】消弧室で発生したガスの圧力伝搬遅れを小さくするとともに、ガスの冷却による減圧が発生せず、開閉機構のトリップ動作を安定して行う回路遮断器を提供する。
【解決手段】内圧トリップ機構15は、消弧室14のガス圧が上昇したのを検知して移動する受圧部と、受圧部の移動に連動してトリップクロスバー13を回動させる受圧連動部と、を備えている。受圧部は、消弧室及びトリップクロスバーを仕切る内壁2bに形成された受圧孔17と、受圧孔に挿入され、消弧室のガス圧が上昇したときに受圧孔内の奥側に摺動する受圧部材19とを備えている。受圧連動部は、受圧部材に一端が固定されてトリップクロスバー側に延在している可撓性を有する圧力伝達部材21と、圧力伝達部材を挿入し、圧力伝達部材の他端がトリップクロスバーの動作面13aに対向するように支持している筒状の支持部材22と、を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点を設けた固定接触子と、
前記固定接点に接触可能な可動接点を設けた可動接触子と、
前記可動接触子を保持して開閉機構に連繋した接触子ホルダと、
前記固定接触子、前記可動接触子及び前記接触子ホルダを内包し、前記固定接点及び前記可動接点の間に発生したアークを消弧する消弧室と、
前記開閉機構にトリップ動作をさせるトリップクロスバーと、
前記消弧室のガス圧が上昇したときに前記トリップクロスバーを回動させて前記開閉機構のトリップ動作を開始する内圧トリップ機構と、を備え、
前記内圧トリップ機構は、
前記消弧室のガス圧が上昇したのを検知して移動する受圧部と、
前記受圧部の移動に連動して前記トリップクロスバーを回動させる可撓性を有する受圧連動部と、を備えていることを特徴とする回路遮断器。
【請求項2】
前記受圧部は、
前記消弧室及び前記トリップクロスバーを仕切る内壁に形成された受圧孔と、
前記受圧孔に挿入され、前記消弧室のガス圧が上昇したときに前記受圧孔内の奥側に摺動する受圧部材と、を備え、
前記受圧連動部は、
前記受圧部材に一端が固定されて前記トリップクロスバー側に延在している可撓性を有する長尺部材であり、非圧縮性の圧力伝達部材と、
前記圧力伝達部材を挿入し、当該圧力伝達部材の他端が前記トリップクロスバーの動作面に対向するように支持している筒状の支持部材と、を備えていることを特徴とする請求項1記載の回路遮断器。
【請求項3】
前記圧力伝達部材は、金属製のワイヤであることを特徴とする請求項2記載の回路遮断器。
【請求項4】
前記金属製のワイヤの外周に合成樹脂製のコーティングが施されていることを特徴とする請求項3記載の回路遮断器。
【請求項5】
前記受圧孔には、前記受圧部材より奥側に復帰バネが配置され、前記消弧室のガス圧の上昇により前記受圧部材が奥側に移動する際に前記復帰バネが圧縮状態となり、前記消弧室のガス圧が下降すると、前記復帰バネのバネ復元力により前記受圧部材が前記受圧孔の開口部側に摺動することを特徴とする請求項2記載の回路遮断器。
【請求項6】
前記筒状の支持部材は、合成樹脂で形成されていることを特徴とする請求項2から5の何れか1項に記載の回路遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短絡電流が流れて消弧室の内圧が上昇することにより開閉機構のトリップ動作が開始する回路遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されている回路遮断器は、短絡電流を早期に検知し、固定接触子に設けた固定接点と、可動接触子に設けた可動接点とを切り離す遮断動作時間を短縮するために、消弧室のガス内圧の変化を利用した内圧トリップ技術を採用している。特許文献1の回路遮断器は、筐体内部に、消弧室に連通するガス導入口から開閉機構のトリップクロスバーに対向する位置まで設けた圧力伝搬経路を設け、短絡電流が流れて固定接点及び可動接点の間にアークが発生して消弧室の内圧が上昇すると、上昇したガス圧をガス導入口から圧力伝搬経路を通過さてトリップクロスバーに吹き付け、トリップクロスバーを回動させて開閉機構のトリップ動作が行われるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開102018211995号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1の回路遮断器は、短絡電流が流れた際に電磁引外し装置で開閉機構のトリップ動作を行うようにした回路遮断器と比較して小型化を図ることができる。しかし、ガス導入口から圧力伝搬経路の端部(トリップクロスバーに対向する位置)までのガス経路が長い場合にはガス圧力の伝搬遅れが発生してしまい、或いは、冷却によりガスが減圧した際にはトリップクロスバーを回動させる力が低下してしまうので、トリップ動作が正常に行われない場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、消弧室で発生したガスの圧力伝搬遅れを小さくするとともに、ガスの冷却による減圧が発生せず、開閉機構のトリップ動作を安定して行うことができる回路遮断器を提供すること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る回路遮断器は、固定接点を設けた固定接触子と、固定接点に接触可能な可動接点を設けた可動接触子と、可動接触子を保持して開閉機構に連繋した接触子ホルダと、固定接触子、可動接触子及び接触子ホルダを内包し、固定接点及び可動接点の間に発生したアークを消弧する消弧室と、開閉機構にトリップ動作をさせるトリップクロスバーと、消弧室のガス圧が上昇したときにトリップクロスバーを回動させて開閉機構のトリップ動作を開始する内圧トリップ機構と、を備え、内圧トリップ機構は、消弧室のガス圧が上昇したのを検知して移動する受圧部と、受圧部の移動に連動してトリップクロスバーを回動させる可撓性を有する受圧連動部と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る回路遮断器によると、消弧室で発生したガスの圧力伝搬遅れを小さくするとともに、ガスの冷却による減圧が発生せず、開閉機構のトリップ動作を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の回路遮断器の1相の回路構造を示す概略断面図である。
図2】本発明に係る回路遮断器の通常電流が流れている場合の内圧トリップ機構を示す図である。
図3】本発明に係る回路遮断器において短絡電流が流れている場合の内圧トリップ機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0010】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
図1は、主回路の電源側及び負荷側の間に接続した3相(R,S,T相)交流用の第1実施形態の回路遮断器1の断面であり、本体ケース2に並列に組み込まれた各相のうちの1相の回路構造を示している。
【0012】
第1実施形態の回路遮断器1は、本体ケース2の内部に、主回路を開閉する開閉接点3と、開閉接点3を開閉する開閉機構4と、開閉機構4を操作する開閉ハンドル5と、主回路に短絡電流が流れたときに開閉機構4にトリップ動作をさせる過電流引外し装置6と、複数のグリッド7aを有する消弧装置7が配置されている。
【0013】
本体ケース2は、下部ケース2aに電源側中間ケース2b及び負荷側中間ケース2cが重なって組付けられており、電源側中間ケース2b及び負荷側中間ケース2cにトップカバー2dが重なって組付けられて構成されている。下部ケース2aには、電源側主回路端子8及び負荷側主回路端子9が固定されている。開閉接点3は固定接点10aを有する固定接触子10及び可動接点11aを有する可動接触子11で構成されており、可動接触子11は接触子ホルダ12で回動自在に支持されている。
【0014】
開閉機構4は、可動接触子11と開閉ハンドル5との間を連繋するトグルリンク機構(不図示)と、ラッチ(不図示)と、トリップクロスバー13とを組み合わせたラッチ機構で構成されている。トリップクロスバー13が、図1の矢印A方向(反時計方向)に回動すると、開閉機構4のトリップ動作により可動接触子11が開極動作を行う。
【0015】
過電流引外し装置6は、電源側主回路端子8及び負荷側主回路端子9の間を過電流が流れると、湾曲したバイメタル6aが開閉機構4のトリップクロスバー13に接触することで、トリップクロスバー13が反時計方向に回動する。これにより、開閉機構4のトリップ動作により可動接触子11が開極動作を行う。
【0016】
本体ケース2の下部ケース2a及び電源側中間ケース2bは、開閉接点3、接触子ホルダ12及び消弧装置7を内包する消弧室14を形成している。そして、本実施形態は、消弧室14のガス圧が上昇したときに開閉機構4のトリップ動作を開始する内圧トリップ機構15を備えている。
【0017】
内圧トリップ機構15は、図2に示すように、電源側中間ケース2bのトリップクロスバー13に近接する壁に連通孔16が形成されている。連通孔16は、消弧室14側で開口している受圧孔17と、トリップクロスバー13が配置されている側で開口し、受圧孔17より小さな内径のワイヤ挿通孔18とで構成されている。なお、本発明に係る内壁が電源側中間ケース2bに対応している。
【0018】
受圧孔17には受圧部材19が挿入されている。受圧部材19は、受圧孔17より僅かに小径な円柱形状の合成樹脂部材であり、消弧室14の内圧が上昇すると受圧孔17の底壁17aに向けて摺動していく。
【0019】
受圧部材19より底壁17a側の受圧孔17には、圧縮コイルバネで構成した復帰バネ20が挿入されている。この復帰バネ20は、受圧部材19が底壁17aに摺動していくと、圧縮によるバネ復元力により受圧部材19に対して受圧孔17の開口側に向けて押し付け力を作用する。
【0020】
受圧部材19には、ワイヤ挿通孔18から挿通した金属製のワイヤ21の一端が固定されている。このワイヤ21の表面には、例えばポリテトラフルオロエチレンN(PTFE)などの摩擦係数が小さく、耐熱性を有する合成樹脂がコーティングされている。
【0021】
ワイヤ挿通孔18の開口部(電源側中間ケース2bのトリップクロスバー13側で開口している部位)には、ガイドチューブ22の一端が挿入されて固定されている。ガイドチューブ22は、例えばPTFEなどの合成樹脂製の部材であり、ワイヤ挿通孔18からトリップクロスバー13に設けたトリップ動作面13aに向けて延在するように、略L字状に曲がって形成されている。
【0022】
受圧部材19が一端に固定されているワイヤ21は、ワイヤ挿通孔18に固定されているガイドチューブ22の一端から挿入され、他端がトリップクロスバー13のトリップ動作面13aに対向した状態でガイドチューブ22内に摺動自在に配置されている。そして、ワイヤ21の他端には、合成樹脂製の押し込み部材23が固定されている。
【0023】
次に、第1実施形態の回路遮断器1の動作について説明する。
【0024】
主回路に通常電流が流れている場合は、図1,2に示すように、消弧室14の圧力が大気圧状態とされている。このため、内圧トリップ機構15の受圧部材19は受圧孔17の底壁17aに向けて摺動せず、受圧部材19に一端が固定されたワイヤ21も、ガイドチューブ22内を摺動せず、ワイヤ21の他端に固定された押し込み部材23も、トリップクロスバー13のトリップ動作面13aに対向した状態で保持される。
【0025】
一方、主回路に短絡電流が流れると、固定接触子10の固定接点10aと可動接触子11の可動接点11aとの間に電磁反発力が働き、可動接触子11が限流開極動作を行う。この可動接触子11が限流開極動作時には、固定接点10aと可動接点11aとの間にアークが発生する。アークのアーク熱によって消弧室14内のガスが加熱されていき、消弧室14の温度及びガス圧力が上昇していく。
【0026】
消弧室14のガス圧力が上昇していくと、図3に示すように、内圧トリップ機構15の受圧部材19は、消弧室14のガス圧に押されて受圧孔17の底壁17aに向けて摺動していくとともに、復帰バネ20が圧縮されていく。そして、受圧部材19の摺動とともに、受圧部材19に固定されているワイヤ21もガイドチューブ22内を摺動し、ワイヤ21の他端がガイドチューブ22の他端から突出する。そして、ワイヤ21の他端に固定した押し込み部材23が、トリップクロスバー13のトリップ動作面13aを押し付ける。
【0027】
押し込み部材23でトリップ動作面13aが押し付けられたトリップクロスバー13は反時計方向(矢印A方向)に回動する。
【0028】
トリップクロスバー13の反時計方向の回動により開閉機構4のトリップ動作が開始し、接触子ホルダ12の回動により可動接触子11の開極動作が開始し、可動接点11aを固定接点10aから離間させてアークを引き延していき、消弧装置7のグリッド7aに引き込まれて分断・冷却されることで、アークが消弧されていく。
【0029】
アークが消弧されて消弧室14のガス圧が低下すると、圧縮状態の復帰バネ20が受圧部材19に対してバネ復元力による押し付け力を作用し、受圧部材19を受圧孔17の開口部まで摺動させる。この受圧部材19の摺動により、ワイヤ21の他端に固定した押し込み部材23は、トリップクロスバー13のトリップ動作面13aから離れた位置まで移動する。そして、開閉機構4のトリップ動作を解除してトリップクロスバー13が回動前の図1に示す状態に復帰したときには、ワイヤ21の他端に固定された押し込み部材23は、トリップクロスバー13のトリップ動作面13aに対向した状態で保持される。
【0030】
次に、本実施形態の回路遮断器1の効果について説明する。
【0031】
本実施形態の回路遮断器1は、主回路に短絡電流が流れて消弧室14のガス圧が上昇すると、受圧孔17に挿入されている受圧部材19が底壁17a側に摺動し、同時に、受圧部材19に一端が固定されているワイヤ21もガイドチューブ22に支持されながら移動していき、ワイヤ21の他端に固定した押し込み部材23がトリップクロスバー13のトリップ動作面13aを押し込むことで、トリップクロスバー13が反時計方向に回動して開閉機構4がトリップ動作を開始する。このように、本実施形態の回路遮断器1は、従来装置のようなガス圧力伝搬経路を設けず、ガス圧の上昇による受圧部材19の移動をワイヤ21に直接伝達しているので、消弧室14で発生したガスの圧力伝搬遅れを解消して開閉機構4がトリップ動作を瞬時に開始することができ、ガスの冷却による減圧でトリップ動作面13aを押し込む力が低下するなどの問題も派生せず、開閉機構4のトリップ動作を安定して行うことができる。
【0032】
また、消弧室14のガス圧が急激に上昇し、トリップクロスバー13のトリップ動作面13aを押し込むワイヤ21の押し込み荷重が高い場合であっても、ワイヤ21が金属製で形成されているので、機械的損傷を防止することができる。
【0033】
また、ワイヤ21の外周面に合成樹脂がコーティングされていることで、ガイドチューブ22内を摺動する際のワイヤ21の摩擦が低減し、ワイヤ21を低荷重でガイドチューブ22内を摺動させることができるので、消弧室14のガス圧が上昇した際にワイヤ21がトリップクロスバー13に伝達する速度を高めることができる。
【0034】
また、ガイドチューブ22も合成樹脂で形成されていることで、ガイドチューブ22内を摺動する際のワイヤ21の摩擦がさらに低減し、消弧室14のガス圧が上昇した際にワイヤ21がトリップクロスバー13に伝達する速度をさらに高めることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 回路遮断器
2 本体ケース
2a 下部ケース
2b 電源側中間ケース
2c 負荷側中間ケース
2d トップカバー
3 開閉接点
4 開閉機構
5 開閉ハンドル
6 過電流引外し装置
7a グリッド
7 消弧装置
8 電源側主回路端子
9 負荷側主回路端子
10 固定接触子
11 可動接触子
12 接触子ホルダ
13 トリップクロスバー
13a トリップ動作面
14 消弧室
15 内圧トリップ機構
16 連通孔
17 受圧孔
17a底壁
18 ワイヤ挿通孔
19 受圧部材
20 復帰バネ
21 ワイヤ
22 ガイドチューブ
23 押し込み部材
図1
図2
図3