(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162467
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】通風量調整装置
(51)【国際特許分類】
F24F 7/04 20060101AFI20241114BHJP
F24F 13/10 20060101ALI20241114BHJP
E04B 1/70 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
F24F7/04 B
F24F13/10 A
F24F13/10 Z
E04B1/70 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077998
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗山 明之
(72)【発明者】
【氏名】海野 征生
【テーマコード(参考)】
2E001
3L058
3L081
【Fターム(参考)】
2E001DB02
2E001FA04
2E001ND11
3L058BA01
3L058BB04
3L058BB05
3L058BC03
3L058BC05
3L081AA05
3L081AA06
3L081AB01
3L081GA01
3L081GA02
3L081HA06
3L081HA08
(57)【要約】
【課題】煩雑な作業を要することなく通風量を調整する。
【解決手段】通風路に配設されて通過する空気の流量を調整する通風量調整装置10であって、通風開口11aを有するベース11と、第2収容部13aを有した弁体13と、ベース11及び弁体13の間に介在し、ベース11よりも上流側において通風開口11aに対向する状態で弁体13をベース11に支持させる弾性支持部12とを有し、ベース11、弁体13及び弾性支持部12が一体に成形されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通風路に配設されて通過する空気の流量を調整する通風量調整装置であって、
通風開口を有するベースと、
風受面を有した弁体と、
前記ベース及び前記弁体の間に介在し、前記ベースよりも上流側において前記通風開口に対向する状態で前記弁体を前記ベースに支持させる弾性支持部とを有し、
前記ベース、前記弁体及び前記弾性支持部が一体に成形されていることを特徴とする通風量調整装置。
【請求項2】
前記弾性支持部は、前記ベースにおいて前記通風開口の周囲に設けられ、前記ベースから離隔するに従って前記通風開口から離隔する方向に傾斜する拡大傾斜部と、前記ベースから離隔するに従って前記通風開口に近接する方向に傾斜する縮小傾斜部とを有し、前記拡大傾斜部と前記縮小傾斜部との間が折り畳み可能に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の通風量調整装置。
【請求項3】
前記通風開口は、円形状に形成され、
前記拡大傾斜部及び前記縮小傾斜部は、前記通風開口の中心を通過する軸心を中心とした円錐台状を成すとともに、外部から前記通風開口への通気を許容する通気孔を有し、
前記縮小傾斜部の中心部に前記弁体が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の通風量調整装置。
【請求項4】
前記弁体は、前記通風開口に向けて凸となり、前記拡大傾斜部及び前記縮小傾斜部が折り畳まれた場合に前記通風開口に嵌合する大きさに形成されていることを特徴とする請求項2に記載の通風量調整装置。
【請求項5】
前記弁体には、中心部に第2通風開口が設けられるとともに、前記第2通風開口に対向する位置に第2弾性支持部を介して第2弁体が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の通風量調整装置。
【請求項6】
前記第2弁体には、中心部に第3通風開口が設けられるとともに、前記第3通風開口に対向する位置に第3弾性支持部を介して第3弁体が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の通風量調整装置。
【請求項7】
前記ベース、前記弁体及び前記弾性支持部は、3Dプリンターによって成形された成形体であることを特徴とする請求項1に記載の通風量調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建具に設けられた通風路に配設されて通風路を通過する空気の流量を調整する通風量調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建具には、換気を行うために通風路が設けられる場合がある。通常、この種の通風路には、通過する空気の流量を調整するための装置が設けられている。例えば、特許文献1のものでは、通風開口に対して邪魔板を移動可能に配設し、通風開口に対する邪魔板の突き出し量を変化させることで通過する空気の流量を調整するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のものでは、通風量を調整するには邪魔板の位置を変化させる作業が必須となり、未だ改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、煩雑な作業を要することなく通風量を調整することのできる通風量調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る通風量調整装置は、通風路に配設されて通過する空気の流量を調整する通風量調整装置であって、通風開口を有するベースと、風受面を有した弁体と、前記ベース及び前記弁体の間に介在し、前記ベースよりも上流側において前記通風開口に対向する状態で前記弁体を前記ベースに支持させる弾性支持部とを有し、前記ベース、前記弁体及び前記弾性支持部が一体に成形されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、弁体に作用する風圧に応じて弾性支持部が適宜変形し、弁体によってベースの通風開口が適宜開閉されるため、煩雑な調整作業を要することなく通風量を調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態である風量調整装置を適用した建具の縦断面図である。
【
図2】
図1に示した建具に適用する風量調整装置を弁体側から見た斜視図である。
【
図3】
図2に示した風量調整装置をベース側から見た斜視図である。
【
図4】
図2に示した風量調整装置を弁体側から見た断面斜視図である。
【
図5】
図2に示した風量調整装置をベース側から見た断面斜視図である。
【
図6】
図1に示した建具に適用する風量調整装置を示すもので、(a)は弁体側から見た図、(b)はベース側から見た図である。
【
図7】
図6に示した風量調整装置の縦断面図である。
【
図8】
図6に示した風量調整装置の動作を示すもので、(a)はベースの通風開口、弁体の第2通風開口及び第2弁体の第3通風開口がいずれも開放された状態の断面図、(b)はベースの通風開口及び弁体の第2通風開口が開放された状態の断面図、(c)はベースの通風開口が開放された状態の断面図、(d)はベースの通風開口、弁体の第2通風開口及び第2弁体の第3通風開口がいずれも閉塞された状態の断面図である。
【
図9】
図6に示した風量調整装置の要部を拡大して示すもので、(a)は第2弁体の第3通風開口が開放された状態の断面図、(b)は第2弁体の第3通風開口が閉塞された状態の断面図である。
【
図10】
図1に示した建具において風量調整装置が動作した状態を示すもので、(a)は第2弁体の第3通風開口が閉塞された状態の縦断面図、(b)はベースの通風開口、弁体の第2通風開口及び第2弁体の第3通風開口がいずれも閉塞された状態の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る通風量調整装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下においては便宜上、見込み方向及び見付け方向という用語を用いる場合がある。見込み方向とは、図中の矢印Aで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った面については見込み面と称する場合がある。見付け方向とは、下枠等のように水平方向に沿って延在するものの場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。縦枠等のように上下方向に沿って延在するものの場合には、見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向という。見付け方向に沿った面については、見付け面と称する場合がある。
【0010】
図1は、本発明の実施の形態である風量調整装置を適用した建具を示すものである。ここで例示する建具は、無目1によって上下2つのFIX窓2A,2Bを一体化した段窓と称されるものである。図には明示していないが、上方のFIX窓2Aは、上枠2a、左右の縦枠2b及び無目1を四周組みして構成した枠体の内部にガラス等のパネル2cを支持させることによって構成したものである。下方のFIX窓2Bは、無目1、左右の縦枠2b及び下枠2dを四周組みして構成した枠体の内部にガラス等のパネル2eを支持させることによって構成したものである。無目1は、例えばアルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材であり、内部が中空の筒状に構成してある。無目1の上方部分には、上方のFIX窓2Aを構成するパネル2cが支持してあり、無目1の下方部分には、下方のFIX窓2Bを構成するパネル2eが支持してある。図には明示していないが、無目1の中空部には、室内外を連通するように通風路3が設けてあり、この通風路3に上述した風量調整装置10が配設してある。以下、
図1~
図7を参照しながら、風量調整装置10について詳述し、併せて本願発明の特徴部分について説明する。なお、以下においては、便宜上、
図7に示した姿勢でそれぞれの方向を特定することとする。本実施の形態の風量調整装置10は、ベース11、弾性支持部12、弁体13を有して構成してある。
【0011】
ベース11は、外形が円形の薄板状部材である。ベース11の中心部には、円形の通風開口11aが設けてある。ベース11の上面には、収容部11bが構成してある。収容部11bは、ベース11の外周部分を外周に向けて漸次上方に突出するように湾曲することにより構成したものである。収容部11bの外周部分には、外周に向けてほぼ水平に延在したフランジ部11cが構成してある。
【0012】
弾性支持部12は、それぞれ円錐台の筒状を成す拡大傾斜部12A及び縮小傾斜部12Bを有して構成してある。拡大傾斜部12Aは、ベース11の上面において通風開口11aの周囲となる部分から上方に向かうに従って漸次外周側となるように構成したものである。縮小傾斜部12Bは、拡大傾斜部12Aの上縁部から上方に向かうに従って漸次内周側となるように構成したものである。これら拡大傾斜部12A及び縮小傾斜部12Bの間は、その全周にわたる部分が折り畳み可能に連結してあり、折り畳まれた場合にベース11の収容部11bに収容することが可能である。弾性支持部12は、通常状態においては、拡大傾斜部12Aがベース11からほぼ45°の角度をもって上方に突出し、かつ拡大傾斜部12A及び縮小傾斜部12Bがほぼ90°の角度となるように構成してある。図からも明らかなように、拡大傾斜部12A及び縮小傾斜部12Bには、それぞれ通気孔12aが設けてある。通気孔12aは、通風開口11aの中心を通過する鉛直軸を中心とした円弧状に延在するスリット状の貫通孔である。図示の例では、径方向に沿って3つの円周上となる位置に、それぞれ周方向に沿って4つの通気孔12aが互いに等間隔となるように形成してある。すなわち、拡大傾斜部12Aには合計12個の通気孔12aが形成してあり、縮小傾斜部12Bにも合計12個の通気孔12aが形成してある。
【0013】
弁体13は、弾性支持部12を介してベース11の通風開口11aに対向する位置に配設したもので、縮小傾斜部12Bの上縁部から中心に向けて漸次下方となるように湾曲した後、中心に向けてほぼ水平に延在している。すなわち、この弁体13は、縮小傾斜部12Bの中心部から下方に向けて凸となるように構成されたものであり、上面側に第2収容部(風受面)13aを構成している。弁体13の外径は、拡大傾斜部12A及び縮小傾斜部12Bが互いに折り畳まれた場合には、ベース11の通風開口11aに嵌合して閉塞することのできる寸法に形成してある。
【0014】
上述の弁体13には、第2通風開口13b、第2弾性支持部22及び第2弁体23が設けてある。第2通風開口13bは、弁体13の中心部に設けた円形の貫通孔である。第2通風開口13bの内径は、通風開口11aの内径よりも小さい。
【0015】
第2弾性支持部22は、それぞれ円錐台の筒状を成す第2拡大傾斜部22A及び第2縮小傾斜部22Bを有して構成してある。第2拡大傾斜部22Aは、弁体13の上面において第2通風開口13bの周囲となる部分から上方に向かうに従って漸次外周側となるように構成したものである。第2縮小傾斜部22Bは、第2拡大傾斜部22Aの上縁部から上方に向かうに従って漸次内周側となるように構成したものである。これら第2拡大傾斜部22A及び第2縮小傾斜部22Bの間は、その全周にわたる部分が折り畳み可能に連結してあり、折り畳まれた場合に弁体13の第2収容部13aに収容することが可能である。第2弾性支持部22は、通常状態においては第2拡大傾斜部22Aが弁体13からほぼ45°の角度をもって上方に突出し、かつ第2拡大傾斜部22A及び第2縮小傾斜部22Bがほぼ90°の角度となるように構成してある。図からも明らかなように、第2拡大傾斜部22A及び第2縮小傾斜部22Bには、それぞれ第2通気孔22aが設けてある。第2通気孔22aは、第2通風開口13bの中心を通過する鉛直軸を中心とした円弧状に延在するスリット状の貫通孔である。図示の例では、径方向に沿って3つの円周上となる位置に、それぞれ周方向に沿って4つの第2通気孔22aが互いに等間隔となるように形成してある。すなわち、第2拡大傾斜部22Aには合計12個の第2通気孔22aが形成してあり、第2縮小傾斜部22Bにも合計12個の第2通気孔22aが形成してある。
【0016】
第2弁体23は、第2弾性支持部22を介して第2通風開口13bに対向する位置に配設したもので、第2縮小傾斜部22Bの上縁部から中心に向けて漸次下方となるように湾曲した後、中心に向けてほぼ水平に延在している。すなわち、この第2弁体23は、第2縮小傾斜部22Bの中心部から下方に向けて凸となるように構成されたものであり、上面に第3収容部(風受面)23aを構成している。第2弁体23の外径は、第2拡大傾斜部22A及び第2縮小傾斜部22Bが互いに折り畳まれた場合に弁体13の第2通風開口13bに嵌合して閉塞することのできる寸法に形成してある。
【0017】
上述の第2弁体23には、第3通風開口23b、第3弾性支持部32及び第3弁体33が設けてある。第3通風開口23bは、第2弁体23の中心部に設けた円形の貫通孔である。第3通風開口23bの内径は、第2通風開口13bの内径よりも小さい。
【0018】
第3弾性支持部32は、それぞれ円錐台の筒状を成す第3拡大傾斜部32A及び第3縮小傾斜部32Bを有して構成してある。第3拡大傾斜部32Aは、第2弁体23の上面において第3通風開口23bの周囲となる部分から上方に向かうに従って漸次外周側となるように構成したものである。第3縮小傾斜部32Bは、第3拡大傾斜部32Aの上縁部から上方に向かうに従って漸次内周側となるように構成したものである。これら第3拡大傾斜部32A及び第3縮小傾斜部32Bの間は、その全周にわたる部分が折り畳み可能に連結してあり、折り畳まれた場合に第2弁体23の第3収容部23aに収容することが可能である。第3弾性支持部32は、通常状態においては第3拡大傾斜部32Aが第2弁体23からほぼ45°の角度をもって上方に突出し、かつ第3拡大傾斜部32A及び第3縮小傾斜部32Bがほぼ90°の角度となるように構成してある。図からも明らかなように、第3拡大傾斜部32A及び第3縮小傾斜部32Bには、それぞれ第3通気孔32aが設けてある。第3通気孔32aは、第3通風開口23bの中心を通過する鉛直軸を中心とした円弧状に延在するスリット状の貫通孔である。図示の例では、径方向に沿って3つの円周上となる位置に、それぞれ周方向に沿って4つの第3通気孔32aが互いに等間隔となるように形成してある。すなわち、第3拡大傾斜部32Aには合計12個の第3通気孔32aが形成してあり、第3縮小傾斜部32Bにも合計12個の第3通気孔32aが形成してある。
【0019】
第3弁体33は、第3弾性支持部32を介して第3通風開口23bに対向する位置に配設したもので、第3縮小傾斜部32Bの上縁部から中心に向けて漸次下方となるように湾曲した後、中心に向けてほぼ水平に延在している。すなわち、この第3弁体33は、第3縮小傾斜部32Bの中心部から下方に向けて凸となるように構成されたものであり、上面に凹部(風受面)33aを構成している。第3弁体33の外径は、第3拡大傾斜部32A及び第3縮小傾斜部32Bが互いに折り畳まれた場合に第2弁体23の第3通風開口23bに嵌合して閉塞することのできる寸法に形成してある。
【0020】
上述の風量調整装置10では、例えば樹脂を材料として、ベース11、弾性支持部12、弁体13、第2弾性支持部22、第2弁体23、第3弾性支持部32、第3弁体33が一体の成形体として構成してある。この成形体を得るには、例えば3D(3次元)プリンターを適用すれば容易に実施可能である。
【0021】
上記のように構成した風量調整装置10は、
図1に示すように、無目1の室内に臨む見付け壁部1aに設けた通風路3の下流開口3aに装着すれば良い。より具体的に説明すると、第3弁体33が室外側となる横向きの姿勢で風量調整装置10を無目1の中空内部に配設し、フランジ部11cを介して見付け壁部1aにネジを螺合することにより、無目1に風量調整装置10を取り付けることが可能となる。無目1の室外に臨む見付け壁部1bには、上流開口3bが設けてある。
【0022】
ここで、風量調整装置10は、通常状態にある場合、上述したように弾性支持部12、第2弾性支持部22、第3弾性支持部32がそれぞれ90°となり、ベース11の通風開口11a、弁体13の第2通風開口13b及び第2弁体23の第3通風開口23bがいずれも開放された状態にある。従って、この状態においては、
図8(a)に示すように、第3通気孔32a、第3通風開口23bを経て通風開口11aに至る通風経路と、第2通気孔22a、第2通風開口13bを経て通風開口11aに至る通風経路と、通気孔12aを経て通風開口11aに至る通風経路とによって室内外が連通された状態となり、室内の換気を効率良く行うことが可能となる。
【0023】
上述の状態から例えば室外の風が強くなる等の影響により、風量調整装置10に対して加えられる風圧が上昇すると、この風圧が凹部33aを介して第3弁体33に加えられ、第3収容部23aを介して第2弁体23に風圧が加えられ、第2収容部13aを介して弁体13に加えられる。この結果、まずは
図8(b)、
図10(a)に示すように、第3弾性支持部32が折り畳まれた状態となる。この状態においては、
図9(b)に示すように、第3通風開口23bが閉塞されるため、第3通気孔32a、第3通風開口23bを経て通風開口11aに至る通風経路を通じた空気の流通が阻止されることになる。つまり、
図8(b)に示す状態においては、第2通気孔22a、第2通風開口13bを経て通風開口11aに至る通風経路と、通気孔12aを経て通風開口11aに至る通風経路とによって室内外が連通された状態となる。従って、強い風がそのまま室内に取り入れられる事態が防止された状態で換気を行うことが可能となる。
【0024】
上述した状態から風量調整装置10に加えられる風圧が上昇すると、第3弾性支持部32に加えて第2弾性支持部22が折り畳まれ、
図8(c)に示すように、第3通風開口23b及び第2通風開口13bが共に閉塞された状態となる。さらに風圧が上昇すれば、最終的に第3弾性支持部32、第2弾性支持部22及び弾性支持部12のすべてが折り畳まれた状態となり、
図8(d)、
図10(b)に示すように、第3通風開口23b、第2通風開口13b、通風開口11aがすべて閉塞されるため、通風路3を通じた室内外の通風が遮断されることになる。これにより、例えば台風が接近するなどして突風が発生している状況下にあっても、何ら作業を要することなく、自動的に通風路3が遮断されることになり、室内に突風が進入する事態を防止することができる。
【0025】
上述の状態からは、室外の風圧が低下すれば、弾性支持部12、第2弾性支持部22、第3弾性支持部32がそれぞれの弾性力によって順次元の状態に復帰することになり、室内の換気が再開されることになる。
【0026】
なお、上述した実施の形態では、段窓の無目1に設けた通風路3に適用した風量調整装置10を例示しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、風量調整装置は、その他の建具の通風路に適用しても良いし、室内外を仕切る壁や部屋を仕切る壁等、建具以外に設けられた通風路に適用することも可能である。この場合、風量調整装置の少なくとも一部が室外に突出するように配設されていても良いし、通風開口11aが上下に沿う状態で配設しても構わない。
【0027】
また、上述した実施の形態では、3つの弾性支持部12,22,32を有した風量調整装置を例示しているが、弾性支持部の数は少なくとも1つあれば良い。例えば、実施の形態の風量調整装置から第3弾性支持部32及び第3弁体33を削除すれば、2つの弾性支持部を有した風量調整装置を構成することができる。同様に、実施の形態の風量調整装置から第3弾性支持部32、第3弁体33、第2弾性支持部22、第2弁体23を削除すれば、1つの弾性支持部を有した風量調整装置を構成することができる。逆に、第3弁体33に第4弾性支持部及び第4弁体を構成すれば、4つの弾性支持部を有した風量調整装置を構成することも可能である。なお、弾性支持部を複数設ける場合には、それぞれの板厚を同一となるように構成しても良いし、互いに異なる板厚となるように弾性支持部を設けることも可能である。より具体的に説明すると、実施の形態1のように、第3弾性支持部32、第2弾性支持部22、弾性支持部12の順で折りたためる場合には、第3弾性支持部32、第2弾性支持部22、弾性支持部12の順で漸次板厚が大きくなるように構成することがより好ましい。複数の弾性支持部を同一の板厚で構成する場合には、通気孔の開口面積や個数を変更することで、弾性支持部が折りたたまれる順番をコントロールすることが可能である。
【0028】
さらに、上述した実施の形態では、弾性支持部12,22,23としてそれぞれ2つの円錐台状を成す拡大傾斜部及び縮小傾斜部を連結したものを例示しているが、弾性支持部の形状はこれに限定されない。例えば、ベースの四隅部分にそれぞれコイル状に形成した弾性支持部を設け、これらの弾性支持部によって弁体を支持するようにしても良い。また弁体13,23,33の形状も実施の形態のものに限らない。例えば、下方に向けて漸次外径が減少する円錐状の弁体を適用し、弁体の下端部を予め通風開口の内部に挿入するようにしても良い。さらに風受面13a,23a,33aとして凹状を成すものを例示しているが、必ずしも風受面が凹状に構成されている必要はない。またさらに、通気孔12a,22a,32aの形状も円弧状に延在するスリット状のものに限らず、円形の通気孔を複数設けるように構成しても同様の作用効果を奏することが可能である。
【0029】
以上のように、本発明に係る通風量調整装置は、通風路に配設されて通過する空気の流量を調整する通風量調整装置であって、通風開口を有するベースと、風受面を有した弁体と、前記ベース及び前記弁体の間に介在し、前記ベースよりも上流側において前記通風開口に対向する状態で前記弁体を前記ベースに支持させる弾性支持部とを有し、前記ベース、前記弁体及び前記弾性支持部が一体に成形されていることを特徴としている。
この発明によれば、弁体に作用する風圧に応じて弾性支持部が適宜変形し、弁体によってベースの通風開口が適宜開閉されるため、煩雑な調整作業を要することなく通風量を調整することが可能となる。
【0030】
また本発明は、上述した通風量調整装置において、前記弾性支持部は、前記ベースにおいて前記通風開口の周囲に設けられ、前記ベースから離隔するに従って前記通風開口から離隔する方向に傾斜する拡大傾斜部と、前記ベースから離隔するに従って前記通風開口に近接する方向に傾斜する縮小傾斜部とを有し、前記拡大傾斜部と前記縮小傾斜部との間が折り畳み可能に連結されていることを特徴としている。
この発明によれば、風圧が増大した場合に拡大傾斜部と縮小傾斜部との折り畳み角度が適宜変化し、弁体によってベースの通風開口が適宜開閉される。
【0031】
また本発明は、上述した通風量調整装置において、前記通風開口は、円形状に形成され、前記拡大傾斜部及び前記縮小傾斜部は、前記通風開口の中心を通過する軸心を中心とした円錐台状を成すとともに、外部から前記通風開口への通気を許容する通気孔を有し、前記縮小傾斜部の中心部に前記弁体が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、通風量調整装置の周囲全周から通気開口に対して空気を通過させることが可能となる。
【0032】
また本発明は、上述した通風量調整装置において、前記弁体は、前記通風開口に向けて凸となり、前記拡大傾斜部及び前記縮小傾斜部が折り畳まれた場合に前記通風開口に嵌合する大きさに形成されていることを特徴としている。
この発明によれば、弁体によって通風開口を閉じることが可能となる。
【0033】
また本発明は、上述した通風量調整装置において、前記弁体には、中心部に第2通風開口が設けられるとともに、前記第2通風開口に対向する位置に第2弾性支持部を介して第2弁体が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、風圧に応じて弾性支持部及び第2弾性支持部が適宜変形し、通風開口が弁体によって開閉され、かつ第2通風開口が第2弁体によって開閉されることになり、通風量をより細かく調整することが可能となる。
【0034】
また本発明は、上述した通風量調整装置において、前記第2弁体には、中心部に第3通風開口が設けられるとともに、前記第3通風開口に対向する位置に第3弾性支持部を介して第3弁体が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、風圧に応じて弾性支持部、第2弾性支持部及び第3弾性支持部が適宜変形し、通風開口が弁体によって開閉され、かつ第2通風開口が第2弁体によって開閉され、かつ第3通風開口が第3弁体によって開閉されることになり、通風量をより細かく調整することが可能となる。
【0035】
また本発明は、上述した通風量調整装置において、前記ベース、前記弁体及び前記弾性支持部は、3Dプリンターによって成形された成形体であることを特徴としている。
この発明によれば、ベース、弁体及び弾性支持部が一体成形された成形体を容易に得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0036】
10 風量調整装置、11 ベース、11a 通風開口、11b 収容部、11c フランジ部、12 弾性支持部、12A 拡大傾斜部、12B 縮小傾斜部、12a 通気孔、13 弁体、13a 第2収容部、13b 第2通風開口、22 第2弾性支持部、22A 第2拡大傾斜部、22B 第2縮小傾斜部、22a 第2通気孔、23 第2弁体、23a 第3収容部、23b 第3通風開口、32 第3弾性支持部、32A 第3拡大傾斜部、32B 第3縮小傾斜部、32a 第3通気孔、33 第3弁体、33a 凹部