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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162470
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】マルチプレクサ
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/72 20060101AFI20241114BHJP
   H03H 9/70 20060101ALI20241114BHJP
   H03H 9/17 20060101ALI20241114BHJP
   H03H 7/46 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H03H9/72
H03H9/70
H03H9/17 F
H03H7/46 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078003
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【弁理士】
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】小笹 茂生
【テーマコード(参考)】
5J097
5J108
【Fターム(参考)】
5J097AA01
5J097AA15
5J097BB15
5J097CC05
5J097EE08
5J097GG03
5J097KK02
5J097KK04
5J108AA07
5J108BB08
5J108CC11
5J108EE03
5J108EE04
5J108EE07
5J108EE13
5J108JJ01
(57)【要約】
【課題】共通接続されたフィルタの通過帯域内の挿入損失が低減されたマルチプレクサを提供する。
【解決手段】マルチプレクサ1は、第1通過帯域を有するフィルタ20と、第1通過帯域よりも高周波側の第2通過帯域を有するフィルタ10と、を備え、フィルタ10が有する複数の弾性波共振子は、フィルタ10の直列腕経路上に配置された直列腕共振子S31と、直列腕共振子S31と並列接続された直列腕共振子S32と、直列腕共振子S31と直列腕共振子S32との接続点n1とグランドとを結ぶ並列腕経路上に配置された並列腕共振子P2と、を含み、直列腕共振子S31と直列腕共振子S32とを含む直列腕共振子S3は、第2通過帯域よりも低い反共振周波数fasLおよび第2通過帯域よりも高い反共振周波数fasHを有し、並列腕共振子P2は反共振周波数fap2を有し、反共振周波数fap2は第2通過帯域の低周波端fB1Lよりも低い。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通過帯域を有する第1フィルタと、
前記第1通過帯域よりも周波数が高い第2通過帯域を有する第2フィルタと、を備え、
前記第1フィルタの一端と前記第2フィルタの一端とが接続され、
前記第2フィルタは、複数の弾性波共振子を有し、
前記複数の弾性波共振子は、
前記第2フィルタの前記一端と他端とを結ぶ直列腕経路上に配置された第1直列腕共振子と、
前記第1直列腕共振子と並列接続された第2直列腕共振子と、
前記第1直列腕共振子と前記第2直列腕共振子との接続点のうちの前記一端側の接続点とグランドとを結ぶ並列腕経路上に配置された第1並列腕共振子と、を含み、
前記第1直列腕共振子と前記第2直列腕共振子とが合成された共振子は、前記第2通過帯域よりも低い第1反共振周波数および前記第2通過帯域よりも高い第2反共振周波数を有し、
前記第1並列腕共振子は、第3反共振周波数を有し、
前記第3反共振周波数は、前記第2通過帯域の低周波端よりも低い、
マルチプレクサ。
【請求項2】
前記第3反共振周波数は、前記第1反共振周波数以上であり、かつ、前記第2通過帯域の低周波端よりも低い、
請求項1に記載のマルチプレクサ。
【請求項3】
前記第3反共振周波数は、前記第1反共振周波数と一致している、
請求項1に記載のマルチプレクサ。
【請求項4】
前記第2フィルタは、さらに、
前記一端と前記第1直列腕共振子および前記第2直列腕共振子との間の前記直列腕経路に配置された第3直列腕共振子を含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載のマルチプレクサ。
【請求項5】
前記第2フィルタは、
前記一端と前記第1直列腕共振子および前記第2直列腕共振子との間の前記直列腕経路に配置された複数の直列腕共振子を含み、
前記第3直列腕共振子は、前記複数の直列腕共振子のなかで、前記第1直列腕共振子および前記第2直列腕共振子に最も近く接続されている、
請求項4に記載のマルチプレクサ。
【請求項6】
前記第3直列腕共振子は、前記複数の直列腕共振子のなかで、容量が最も小さい、
請求項5に記載のマルチプレクサ。
【請求項7】
前記第2フィルタは、
前記直列腕経路とグランドとの間に接続された複数の並列腕共振子を含み、
前記第1並列腕共振子は、前記複数の並列腕共振子の中で共振周波数が最も低い、
請求項1~3のいずれか1項に記載のマルチプレクサ。
【請求項8】
前記第1並列腕共振子を除く前記複数の並列腕共振子の少なくとも1つの反共振周波数は、前記第2通過帯域に含まれる、
請求項7に記載のマルチプレクサ。
【請求項9】
前記複数の弾性波共振子のそれぞれは、IDT(InterDigital Transducer)電極を有する弾性表面波共振子で構成され、
前記第2フィルタは、前記直列腕経路とグランドとの間に接続された複数の並列腕共振子を含み、
前記第1並列腕共振子は、前記複数の並列腕共振子の中で前記IDT電極の電極指ピッチが最も大きい、
請求項1~3のいずれか1項に記載のマルチプレクサ。
【請求項10】
前記第2フィルタにおいて、
前記一端と前記第1直列腕共振子および前記第2直列腕共振子との間の前記直列腕経路には、互いに並列接続された2つの直列腕共振子が配置されていない、
請求項1~3のいずれか1項に記載のマルチプレクサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波フィルタを備えるマルチプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、互いに並列接続された2つの直列腕共振子と、並列腕共振子と、を備えたラダー型の弾性波フィルタが開示されている。上記2つの直列腕共振子が合成された共振子は、弾性波フィルタの通過帯域よりも低い第1反共振周波数および当該通過帯域よりも高い第2反共振周波数を有する。これによれば、弾性波フィルタの狭帯域化およびフィルタ特性の急峻性を向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-136687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された弾性波フィルタを、マルチプレクサの高周波側のフィルタとして適用すると、第1反共振周波数の低周波側帯域が誘導性インピーダンスであることに起因して、低周波側のフィルタの通過帯域付近にリプルが発生する場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、共通接続されたフィルタの通過帯域内の挿入損失が低減されたマルチプレクサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るマルチプレクサは、第1通過帯域を有する第1フィルタと、第1通過帯域よりも周波数が高い第2通過帯域を有する第2フィルタと、を備え、第1フィルタの一端と第2フィルタの一端とが接続され、第2フィルタは、複数の弾性波共振子を有し、複数の弾性波共振子は、第2フィルタの一端と他端とを結ぶ直列腕経路上に配置された第1直列腕共振子と、第1直列腕共振子と並列接続された第2直列腕共振子と、第1直列腕共振子と第2直列腕共振子との接続点のうちの一端側の接続点とグランドとを結ぶ並列腕経路上に配置された第1並列腕共振子と、を含み、第1直列腕共振子と第2直列腕共振子とが合成された共振子は、第2通過帯域よりも低い第1反共振周波数および第2通過帯域よりも高い第2反共振周波数を有し、第1並列腕共振子は、第3反共振周波数を有し、第3反共振周波数は、第2通過帯域の低周波端よりも低い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、共通接続されたフィルタの通過帯域内の挿入損失が低減されたマルチプレクサを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係るマルチプレクサの回路構成図である。
図2】実施の形態に係るマルチプレクサを構成する弾性波フィルタの回路構成図である。
図3A】実施の形態に係る第2フィルタを構成する弾性波共振子の第1例を模式的に表す平面図および断面図である。
図3B】実施の形態に係る第2フィルタを構成する弾性波共振子の第2例を模式的に表す断面図である。
図3C】実施の形態に係る第2フィルタを構成する弾性波共振子の第3例を模式的に表す断面図である。
図4】実施の形態に係る第2フィルタの第1直列腕共振子および第2直列腕共振子を合成した共振子のインピーダンス特性を示すグラフである。
図5】実施の形態に係る第1フィルタの第1直列腕共振子および第2直列腕共振子を合成した共振子のインピーダンスおよび第1並列腕共振子のインピーダンスの周波数関係を示すグラフである。
図6A】実施の形態および比較例に係る第2フィルタの接続点n1から端子110側を見た場合のインピーダンスを表すスミスチャートである。
図6B】実施の形態および比較例に係る第2フィルタの接続点n1から端子110側を見た場合のインピーダンスを表すスミスチャートである。
図6C】実施の形態および比較例に係る第2フィルタの接続点n3から端子110側を見た場合のインピーダンスを表すスミスチャートである。
図6D】実施の形態および比較例に係る第2フィルタの接続点n3から端子110側を見た場合のインピーダンスを表すスミスチャートである。
図6E】実施の形態および比較例に係る第2フィルタの共通端子100から端子110側を見た場合のインピーダンスを表すスミスチャートである。
図7A】実施の形態および比較例に係る第1フィルタの通過特性を表すグラフである。
図7B】実施の形態に係る第2フィルタの通過特性を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態例は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置および接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面に示される構成要素の大きさまたは大きさの比は、必ずしも厳密ではない。
【0010】
なお、各図は、本発明を示すために適宜強調、省略、または比率の調整を行った模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではなく、実際の形状、位置関係、および比率とは異なる場合がある。各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡素化される場合がある。
【0011】
本開示の回路構成において、「接続される」とは、接続端子および/または配線導体で直接接続される場合だけでなく、インダクタおよびキャパシタなどの整合素子、ならびにスイッチ回路を介して電気的に接続される場合も含む。「AおよびBの間に接続される」とは、AおよびBの間でAおよびBの両方に接続されることを意味する。
【0012】
また、「平行」および「垂直」などの要素間の関係性を示す用語、「矩形」などの要素の形状を示す用語、ならびに、数値範囲は、厳格な意味のみを表すのではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の誤差をも含むことを意味する。
【0013】
また、以下の実施の形態において、フィルタの通過帯域は、当該通過帯域内における挿入損失の最小値から3dB大きい2つの周波数間の周波数帯域と定義される。
【0014】
また、本開示において、バンドAは、無線アクセス技術(RAT:Radio Access Technology)を用いて構築される通信システムのために、標準化団体など(例えば3GPP(登録商標)、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)等)によって予め定義された周波数バンドを意味する。本実施の形態では、通信システムとしては、例えばLTE(Long Term Evolution)システム、5G(5th Generation)-NR(New Radio)システム、およびWLAN(Wireless Local Area Network)システム等を用いることができるが、これらに限定されない。
【0015】
また、バンドAのアップリンク動作バンドとは、バンドAのうちのアップリンク用に指定された周波数範囲を意味する。また、バンドAのダウンリンク動作バンドとは、バンドAのうちのダウンリンク用に指定された周波数範囲を意味する。
【0016】
(実施の形態)
[1.1 マルチプレクサ1の回路構成]
図1は、実施の形態に係るマルチプレクサ1の回路構成図である。同図に示すように、マルチプレクサ1は、フィルタ10および20と、共通端子100と、出力端子110および入力端子120と、を備える。
【0017】
共通端子100は、例えば、アンテナに接続される。
【0018】
フィルタ20は、第1フィルタの一例であり、バンドAのアップリンク動作バンドを含む通過帯域(第1通過帯域)を有する。フィルタ20の一端(出力端)は共通端子100に接続され、他端(入力端)は入力端子120に接続される。フィルタ10は、例えば、弾性波共振子を含む弾性波フィルタ、または、インダクタおよびキャパシタで構成されたLCフィルタであってもよく、これらに限定されない。
【0019】
フィルタ10は、第2フィルタの一例であり、バンドAのダウンリンク動作バンドを含む通過帯域(第2通過帯域)を有する。フィルタ10の通過帯域は、フィルタ20の通過帯域よりも高周波側に位置する。フィルタ10の一端(入力端)は共通端子100に接続され、他端(出力端)は出力端子110に接続される。つまり、フィルタ10の一端とフィルタ20の一端とは接続されている。フィルタ10は、複数の弾性波共振子を有する弾性波フィルタである。
【0020】
バンドAとしては、例えば、LTEのBand30(アップリンク動作バンド:2305-2315MHz、ダウンリンク動作バンド:2350-2360MHz)が適用される。
【0021】
なお、フィルタ10の通過帯域は、フィルタ20の通過帯域よりも高周波側に位置していればよく、フィルタ10および20の通過帯域は、それぞれ、同一バンドのダウンリンク動作バンドおよびアップリンク動作バンドを含む通過帯域でなくてもよい。例えば、フィルタ10の通過帯域はバンドBを含み、フィルタ20の通過帯域はバンドBよりも低周波側のバンドCを含んでもよい。
【0022】
なお、本実施の形態に係るマルチプレクサ1において、フィルタ10および20以外のフィルタが共通端子100に接続されていてもよい。また、共通端子100と出力端子110とを結ぶ経路、および、共通端子100と入力端子120とを結ぶ経路のいずれかに、インダクタおよびキャパシタの少なくとも一方を含むインピーダンス整合回路が接続されてもよい。
【0023】
なお、共通端子100、出力端子110および入力端子120は、マルチプレクサ1が備えていなくてもよい。
【0024】
[1.2 フィルタ10の回路構成]
次に、マルチプレクサ1を構成するフィルタ10の回路構成について例示する。
【0025】
図2は、実施の形態に係るマルチプレクサ1を構成するフィルタ10(第2フィルタ)の回路構成図である。同図に示すように、フィルタ10は、直列腕共振子S1、S2、S3およびS4と、並列腕共振子P1、P2、P3およびP4と、を備える。
【0026】
直列腕共振子S1~S4は、フィルタ10の一端と他端とを結ぶ(共通端子100と出力端子110とを結ぶ)直列腕経路上に配置される。また、並列腕共振子P1~P4のそれぞれは、直列腕共振子S1~S4および出力端子110の各接続点とグランドとの間に接続されている。上記接続構成により、フィルタ10は、ラダー型のバンドパスフィルタを構成している。
【0027】
直列腕共振子S3は、互いに並列接続された直列腕共振子S31およびS32で構成されている。直列腕共振子S31は、第1直列腕共振子の一例であり、上記直列腕経路上に配置される。直列腕共振子S32は、第2直列腕共振子の一例であり、上記直列腕経路上に配置され、直列腕共振子S31と並列接続される。
【0028】
並列腕共振子P2は、第1並列腕共振子の一例であり、直列腕共振子S31と直列腕共振子S32との接続点n1およびn2のうちのフィルタ10の一端側(共通端子100側)の接続点n1とグランドとを結ぶ並列腕経路上に配置される。
【0029】
直列腕共振子S2は、第3直列腕共振子の一例であり、共通端子100と直列腕共振子S3との間の直列腕経路に配置される。直列腕共振子S2は、直列腕共振子S1およびS2のうち、直列腕共振子S3に最も近く接続されている。
【0030】
なお、本実施の形態に係るフィルタ10において、直列腕共振子S3および並列腕共振子P2は必須の構成要素であり、その他の直列腕共振子および並列腕共振子は無くてもよい。また、フィルタ10において、直列腕共振子S3よりも出力端子110側または並列腕共振子P2よりも共通端子100側に、縦結合型の弾性波共振器が接続されてもよい。また、並列腕共振子P1~P4のそれぞれとグランドとの間にインダクタが接続されていてもよい。
【0031】
[1.3 弾性波共振子の構造]
次に、フィルタ10が有する弾性波共振子の構造について例示する。
【0032】
図3Aは、実施の形態に係るフィルタ10(第2フィルタ)を構成する弾性波共振子の第1例を模式的に表す平面図および断面図である。同図には、フィルタ10を構成する複数の弾性波共振子(直列腕共振子S1、S2、S31、S32およびS4、並列腕共振子P1、P2、P3、P4)のそれぞれの基本構造が例示されている。なお、図3Aに示された弾性波共振子60は、フィルタ10を構成する弾性波共振子の典型的な構造を説明するためのものであって、電極を構成する電極指の本数および長さなどは、これに限定されない。
【0033】
弾性波共振子60は、圧電性を有する基板50と、櫛形電極60aおよび60bとで構成されている。
【0034】
図3Aの(a)に示すように、基板50の上には、互いに対向する一対の櫛形電極60aおよび60bが形成されている。櫛形電極60aは、互いに平行な複数の電極指61aと、複数の電極指61aを接続するバスバー電極62aとで構成されている。また、櫛形電極60bは、互いに平行な複数の電極指61bと、複数の電極指61bを接続するバスバー電極62bとで構成されている。複数の電極指61aおよび61bは、弾性波伝搬方向(X軸方向)と直交する方向に沿って形成されている。
【0035】
また、複数の電極指61aおよび61b、ならびに、バスバー電極62aおよび62bで構成されるIDT電極54は、図3Aの(b)に示すように、密着層540と主電極層542との積層構造となっている。
【0036】
密着層540は、基板50と主電極層542との密着性を向上させるための層であり、材料として、例えば、Tiが用いられる。主電極層542は、材料として、例えば、Cuを1%含有したAlが用いられる。保護層55は、櫛形電極60aおよび60bを覆うように形成されている。保護層55は、主電極層542を外部環境から保護する、周波数温度特性を調整する、および、耐湿性を高めるなどを目的とする層であり、例えば、二酸化ケイ素を主成分とする誘電体膜である。
【0037】
なお、密着層540、主電極層542および保護層55を構成する材料は、上述した材料に限定されない。さらに、IDT電極54は、上記積層構造でなくてもよい。IDT電極54は、例えば、Ti、Al、Cu、Pt、Au、Ag、Pdなどの金属または合金から構成されてもよく、また、上記の金属または合金から構成される複数の積層体から構成されてもよい。また、保護層55は、形成されていなくてもよい。
【0038】
次に、基板50の積層構造について説明する。
【0039】
図3Aの(c)に示すように、基板50は、高音速支持基板51と、低音速膜52と、圧電膜53とを備え、高音速支持基板51、低音速膜52および圧電膜53がこの順で積層された構造を有している。
【0040】
圧電膜53は、例えばθ°YカットX伝搬LiTaO圧電単結晶または圧電セラミックス(X軸を中心軸としてY軸からθ°回転した軸を法線とする面で切断したリチウムタンタレート単結晶、またはセラミックスであって、X軸方向に弾性表面波が伝搬する単結晶またはセラミックス)からなる。なお、各フィルタの要求仕様により、圧電膜53として使用される圧電単結晶の材料およびカット角θが適宜選択される。
【0041】
高音速支持基板51は、低音速膜52、圧電膜53ならびにIDT電極54を支持する基板である。高音速支持基板51は、さらに、圧電膜53を伝搬する表面波および境界波などの弾性波よりも、高音速支持基板51中のバルク波の音速が高速となる基板であり、弾性表面波を圧電膜53および低音速膜52が積層されている部分に閉じ込め、高音速支持基板51より下方に漏れないように機能する。高音速支持基板51の材料としては、例えば、窒化アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、水晶などの圧電体、アルミナ、サファイア、マグネシア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライト、スピネル、サイアロンなどのセラミック、酸化アルミニウム、酸窒化ケイ素、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、ダイヤモンドなどの誘電体、もしくはシリコンなどの半導体、または上記材料を主成分とする材料を用いることができる。なお、上記スピネルには、Mg、Fe、Zn、Mnなどから選ばれる1以上の元素と酸素とを含有するアルミニウム化合物が含まれる。上記スピネルの例としては、MgAl、FeAl、ZnAl、MnAlを挙げることができる。
【0042】
低音速膜52は、圧電膜53を伝搬するバルク波よりも、低音速膜52中のバルク波の音速が低速となる膜であり、圧電膜53と高音速支持基板51との間に配置される。この構造と、弾性波が本質的に低音速な媒質にエネルギーが集中するという性質とにより、弾性表面波エネルギーのIDT電極外への漏れが抑制される。低音速膜52の材料としては、例えば、ガラス、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化リチウム、酸化タンタル、もしくは酸化ケイ素にフッ素、炭素やホウ素を加えた化合物などの誘電体、または上記材料を主成分とする材料を用いることができる。
【0043】
なお、基板50の上記積層構造によれば、圧電基板を単層で使用している従来の構造と比較して、共振周波数および反共振周波数におけるQ値を大幅に高めることが可能となる。すなわち、Q値が高い弾性波共振子を構成し得るので、当該弾性波共振子を用いて、挿入損失が小さいフィルタを構成することが可能となる。
【0044】
なお、高音速支持基板51は、支持基板と、圧電膜53を伝搬する表面波および境界波などの弾性波よりも、伝搬するバルク波の音速が高速となる高音速膜とが積層された構造を有していてもよい。この場合、高音速膜の材料としては、高音速支持基板51の材料と同じ材料を用いることができる。また、支持基板の材料としては、例えば、窒化アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、水晶などの圧電体、アルミナ、サファイア、マグネシア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライトなどのセラミック、ダイヤモンド、ガラスなどの誘電体、シリコン、窒化ガリウムなどの半導体、もしくは樹脂、または上記材料を主成分とする材料を用いることができる。
【0045】
なお、本明細書において、「材料の主成分」とは、当該材料に占める割合が50重量%を超える成分をいう。上記主成分は、単結晶、多結晶およびアモルファスのうちいずれかの状態、もしくは、これらが混在した状態で存在していてもよい。
【0046】
図3Bは、実施の形態に係るフィルタ10を構成する弾性波共振子の第2例を模式的に表す断面図である。図3Aに示した弾性波共振子60では、IDT電極54が、圧電膜53を有する基板50上に形成された例を示したが、当該IDT電極54が形成される基板は、図3Bに示すように、圧電体層の単層からなる圧電単結晶基板57であってもよい。
【0047】
圧電単結晶基板57は、例えば、LiNbOの圧電単結晶で構成されている。本例に係る弾性波共振子は、LiNbOの圧電単結晶基板57と、IDT電極54と、圧電単結晶基板57上およびIDT電極54上に形成された保護層58と、で構成されている。
【0048】
上述した圧電膜53および圧電単結晶基板57は、弾性波フィルタ装置の要求通過特性などに応じて、適宜、積層構造、材料、カット角、および、厚みを変更してもよい。上述したカット角以外のカット角を有するLiTaO圧電基板などを用いた弾性波共振子であっても、上述した圧電膜53を用いた弾性波共振子60と同様の効果を奏することができる。
【0049】
また、IDT電極54が形成される基板は、支持基板と、エネルギー閉じ込め層と、圧電膜とが、この順で積層された構造を有していてもよい。圧電膜上にIDT電極54が形成される。圧電膜は、例えば、LiTaO圧電単結晶または圧電セラミックスが用いられる。支持基板は、圧電膜、エネルギー閉じ込め層、およびIDT電極54を支持する基板である。
【0050】
エネルギー閉じ込め層は1層または複数の層からなり、その少なくとも1つの層を伝搬するバルク弾性波の速度は、圧電膜近傍を伝搬する弾性波の速度よりも大きい。例えば、エネルギー閉じ込め層は、低音速層と、高音速層との積層構造となっていてもよい。低音速層は、圧電膜を伝搬する弾性波の音速よりも、低音速層中のバルク波の音速が低速となる膜である。高音速層は、圧電膜を伝搬する弾性波の音速よりも、高音速層中のバルク波の音速が高速となる膜である。なお、支持基板を高音速層としてもよい。
【0051】
また、エネルギー閉じ込め層は、音響インピーダンスが相対的に低い低音響インピーダンス層と、音響インピーダンスが相対的に高い高音響インピーダンス層とが、交互に積層された構成を有する音響インピーダンス層であってもよい。
【0052】
ここで、弾性波共振子60を構成するIDT電極の電極パラメータについて説明する。
【0053】
弾性波共振子の波長とは、図3Aの(b)に示すIDT電極54を構成する複数の電極指61aまたは61bの繰り返し周期である波長λで規定される。また、電極指ピッチは、波長λの1/2であり、櫛形電極60aおよび60bをそれぞれ構成する電極指61aおよび61bのライン幅をWとし、隣り合う電極指61aと電極指61bとの間のスペース幅をSとした場合、(W+S)で定義される。
【0054】
なお、IDT電極54において、隣り合う電極指間の間隔が一定でない場合には、IDT電極54の電極指ピッチは、IDT電極54の平均電極指ピッチで定義される。IDT電極54の平均電極指ピッチは、IDT電極54に含まれる電極指61a、61bの総本数をNi本とし、IDT電極54の、弾性波伝搬方向における一方端に位置する電極指と他方端に位置する電極指との中心間距離をDiとすると、Di/(Ni-1)と定義される。
【0055】
また、図3Cは、実施の形態に係るフィルタ10を構成する弾性波共振子の第3例を模式的に表す断面図である。図3Cには、フィルタ10の弾性波共振子として、バルク弾性波共振子が示されている。同図に示すように、バルク弾性波共振子は、例えば、支持基板65と、下部電極66と、圧電体層67と、上部電極68と、を有しており、支持基板65、下部電極66、圧電体層67、および上部電極68がこの順で積層された構成となっている。
【0056】
支持基板65は、下部電極66、圧電体層67、および上部電極68を支持するための基板であり、例えば、シリコン基板である。なお、支持基板65は、下部電極66と接触する領域に、空洞が設けられている。これにより、圧電体層67を自由に振動させることが可能となる。
【0057】
下部電極66は、支持基板65の一方面上に形成されている。上部電極68は、支持基板65の一方面上に形成されている。下部電極66および上部電極68は、材料として、例えば、Cuを1%含有したAlが用いられる。
【0058】
圧電体層67は、下部電極66と上部電極68との間に形成されている。圧電体層67は、例えば、ZnO(酸化亜鉛)、AlN(窒化アルミニウム)、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、KN(ニオブ酸カリウム)、LN(リチウムニオベイト)、LT(リチウムタンタレート)、水晶、およびLiBO(ホウ酸リチウム)の少なくとも1つを主成分とする。
【0059】
上記積層構成を有するバルク弾性波共振子は、下部電極66と上部電極68との間に電気的なエネルギーを印加することで圧電体層67内にてバルク弾性波を誘発して共振を発生させるものである。このバルク弾性波共振子により生成されるバルク弾性波は、下部電極66と上部電極68との間を、圧電体層67の膜面に垂直な方向に伝搬する。つまり、バルク弾性波共振子は、バルク弾性波を利用した共振子である。
【0060】
[1.4 並列分割された直列腕共振子S3の共振特性]
次に、直列腕共振子S31およびS32の並列分割された直列腕共振子S3の共振特性(インピーダンス特性)について説明する。
【0061】
図4は、実施の形態に係るフィルタ10(第2フィルタ)の直列腕共振子S31およびS32を合成した直列腕共振子S3のインピーダンス特性を示すグラフである。直列腕共振子S3は、並列分割された直列腕共振子S31およびS32を合成した共振子である。直列腕共振子S31は共振周波数fr1および反共振周波数fa1を有し、直列腕共振子S32は共振周波数fr2および反共振周波数fa2を有する。共振周波数fr1と共振周波数fr2とは異なり、反共振周波数fa1と反共振周波数fa2とは異なる。
【0062】
直列腕共振子S31およびS32を合成した直列腕共振子S3の共振特性は、図4に示すように、インピーダンスが極小となる共振周波数frsLおよびfrsH、ならびに、インピーダンスが極大となる反共振周波数fasL(第1反共振周波数)およびfasH(第2反共振周波数)を有する。共振周波数frsLおよびfrsH、ならびに、反共振周波数fasLおよびfasHの周波数関係は、frsL<fasL<frsH<fasHである。共振周波数frsLよりも低周波側の周波数帯域では、直列腕共振子S3のインピーダンスは容量性(C性)を示し、共振周波数frsLよりも高周波側かつ反共振周波数fasL(第1反共振周波数)よりも低周波側の周波数帯域では、直列腕共振子S3のインピーダンスは誘導性(L性)を示す。また、反共振周波数fasLよりも高周波側かつ共振周波数frsHよりも低周波側の周波数帯域では、直列腕共振子S3のインピーダンスは容量性を示し、共振周波数frsHよりも高周波側かつ反共振周波数fasH(第2反共振周波数)よりも低周波側の周波数帯域では、直列腕共振子S3のインピーダンスは誘導性を示し、反共振周波数fasHよりも高周波側の周波数帯域では、直列腕共振子S3のインピーダンスは容量性を示す。また、誘導性を示す周波数帯域において、反共振周波数に近づくほど誘導性が高くなり、共振周波数に近づくほど誘導性が低くなる。
【0063】
[1.5 直列腕共振子S3および並列腕共振子P2の周波数関係]
次に、直列腕共振子S3および並列腕共振子P2の周波数関係について説明する。
【0064】
なお、以下の図5および図6A図6Eにおいて、フィルタ10の通過帯域の低周波端をfB1Lとし、フィルタ10の通過帯域の高周波端をfB1Hとし、フィルタ20の通過帯域の低周波端をfB2Lとし、フィルタ20の通過帯域の高周波端をfB2Hとする。
【0065】
図5は、実施の形態に係るフィルタ10(第2フィルタ)の直列腕共振子S3のインピーダンス(a)、および、実施の形態および比較例に係る並列腕共振子P2のインピーダンス(b)の周波数関係を示すグラフである。
【0066】
なお、比較例に係るマルチプレクサは、実施の形態に係るマルチプレクサ1と比較して、フィルタ10の並列腕共振子P2の反共振周波数fap2が、フィルタ10の通過帯域内に含まれる点のみが異なる。図5の(b)において、実施の形態に係る並列腕共振子P2のインピーダンスは実線波形で表されており、比較例に係る並列腕共振子P2のインピーダンスは破線波形で表されている。
【0067】
図5の(a)に示すように、実施の形態および比較例に係るマルチプレクサにおいて、直列腕共振子S3の反共振周波数fasLは、フィルタ10の通過帯域よりも低周波側に位置している。また、図示していないが、直列腕共振子S3の反共振周波数fasHは、フィルタ10の通過帯域よりも高周波側に位置している。
【0068】
フィルタ10を高周波側のフィルタとしてマルチプレクサを構成すると、反共振周波数fasLの低周波側帯域のインピーダンスが誘導性であることに起因して、フィルタ10において、上記低周波帯域のインピーダンス変動量が大きくなる(スミスチャートにおける上記低周波帯域のインピーダンスの巻きが大きくなる)。このため、上記低周波帯域と通過帯域が重複する低周波側のフィルタ20において、フィルタ20の通過帯域付近(図5の(a)に示されたリプル発生帯)に不要レスポンスが発生し、通過帯域内のリプルとして発現する場合がある。なお、本実施の形態および比較例におけるリプル発生帯とは、図5の(a)に示すように、フィルタ20の通過帯域の低周波端fB2Lから反共振周波数fasLまでの周波数帯と定義される。
【0069】
これに対して、本実施の形態に係るマルチプレクサ1では、図5の(b)に示すように、直列腕共振子S3の共通端子100側に直接接続された並列腕共振子P2の反共振周波数fap2を、フィルタ10の通過帯域の低周波端fB1Lよりも低くしている(図5の(b)の実線波形)。なお、並列腕共振子P2の共振周波数から反共振周波数fap2までの周波数領域では、並列腕共振子P2のインピーダンスは誘導性を示す。また、誘導性を示す周波数帯域において、反共振周波数fap2に近づくほど誘導性は高くなり、共振周波数に近づくほど誘導性は低くなる。
【0070】
これによれば、フィルタ10において、直列腕共振子S3のインピーダンスが誘導性となる周波数領域と、並列腕共振子P2のインピーダンスが誘導性となる周波数領域とを重ねることが可能となる。これにより、フィルタ10において、上記低周波帯域(上記リプル発生帯)のインピーダンス変動量を小さくできる(スミスチャートにおける上記低周波帯域のインピーダンスの巻きを小さくできる)。このため、上記低周波帯域と通過帯域とが重複する低周波側のフィルタ20において、フィルタ20の通過帯域付近に発生する不要レスポンスが抑制されるので、フィルタ20の通過帯域内のリプルを抑制できる。よって、共通端子100に接続されたフィルタ20の通過帯域内の挿入損失が低減されたマルチプレクサ1を提供することが可能となる。
【0071】
なお、比較例に係る(従来の)マルチプレクサでは、フィルタ10の並列腕共振子P2の反共振周波数fap2は、フィルタ10の通過帯域内に位置するので、並列腕共振子P2のインピーダンスが誘導性となる(誘導性が高い)周波数領域を、フィルタ20の通過帯域と重複させることは困難である。
【0072】
なお、本実施の形態に係るマルチプレクサ1において、並列腕共振子P2の反共振周波数fap2は、反共振周波数fasL以上であり、かつ、フィルタ10の通過帯域の低周波端fB1Lよりも低いことが望ましい。
【0073】
これによれば、フィルタ10において、直列腕共振子S3のインピーダンスが誘導性となる周波数領域と、並列腕共振子P2のインピーダンスが誘導性となる周波数領域とを高精度に重ねることが可能となる。
【0074】
また、本実施の形態に係るマルチプレクサ1において、並列腕共振子P2の反共振周波数fap2は、反共振周波数fasLと一致していることがさらに望ましい。
【0075】
これによれば、フィルタ10において、直列腕共振子S3のインピーダンスが誘導性となる周波数領域と、並列腕共振子P2のインピーダンスの誘導性が高い周波数領域とを重ねることが可能となる。
【0076】
なお、本実施の形態において、反共振周波数fap2が反共振周波数fasLと一致している、とは、2つの反共振周波数が完全に一致していることだけでなく、反共振周波数fap2が反共振周波数fasLの(100±0.1)%の範囲内にあることを含む。
【0077】
[1.6 フィルタ10のインピーダンス状態]
次に、本実施の形態に係るマルチプレクサが有するフィルタ10の各ノードから見たインピーダンスについて、比較例に係るマルチプレクサと比較しながら、図6A図6Eを参照して説明する。
【0078】
図6Aは、実施の形態および比較例に係るフィルタ10(第2フィルタ)の接続点n1から出力端子110側を見た場合のインピーダンスを表すスミスチャートである。なお、同図には、フィルタ20、直列腕共振子S1およびS2、ならびに並列腕共振子P1およびP2が接続されていない状態で、直列腕共振子S3およびS4ならびに並列腕共振子P3およびP4が接続された回路を接続点n1から見たインピーダンスが示されている。
【0079】
同図に示すように、実施の形態に係るフィルタ10において、フィルタ20の通過帯域の低周波端fB2Lから反共振周波数fasLまでの帯域(以下、リプル発生帯と記す)は、スミスチャートの誘導性領域に位置している。
【0080】
一方、比較例に係るフィルタ10において、リプル発生帯は、スミスチャートの誘導性領域に位置しており、実施の形態に係るフィルタ10と同じ特性となっている。
【0081】
図6Bは、実施の形態および比較例に係るフィルタ10(第2フィルタ)の接続点n1ら出力端子110側を見た場合のインピーダンスを表すスミスチャートである。なお、同図には、フィルタ20、直列腕共振子S1およびS2、ならびに並列腕共振子P1が接続されていない状態で、直列腕共振子S3およびS4ならびに並列腕共振子P2、P3およびP4が接続された回路を接続点n1から見たインピーダンスが示されている。
【0082】
実施の形態および比較例の双方において、図6Bに示された回路は、図6Aに示された回路に比べて並列腕共振子P2が接続されたことで、フィルタ10のリプル発生帯には並列腕共振子P2の誘導性インピーダンスが並列付加される。このため、フィルタ10のリプル発生帯のインピーダンスは、スミスチャート上において等コンダクタンス円を反時計回りに移動する。
【0083】
ただし、実施の形態では、反共振周波数fasLは、並列腕共振子P2の反共振周波数fap2により近いため、リプル発生帯のうち反共振周波数fasL付近は、誘導性の高インピーダンスが並列付加されるので、スミスチャート上においてインピーダンスのシフト量は小さい。
【0084】
これに対して、比較例では、反共振周波数fasLは、並列腕共振子P2の反共振周波数fap2よりも低周波側の周波数と重なるため、リプル発生帯のうち反共振周波数fasL付近は、誘導性の低インピーダンスが並列付加されるので、スミスチャート上においてインピーダンスのシフト量は大きい。
【0085】
また、実施の形態および比較例では、リプル発生帯のうち低周波端fB2Lには、どちらも同程度の誘導性のインピーダンスが並列付加されるので、実施の形態および比較例では、スミスチャート上において低周波端fB2Lのインピーダンスのシフト量は略同じである。
【0086】
つまり、図6Bにおいて、実施の形態におけるリプル発生帯のインピーダンス偏差(低周波端fB2Lから反共振周波数fasLまでのインピーダンスの差)は、比較例におけるリプル発生帯のインピーダンス偏差よりも大きい。
【0087】
図6Cは、実施の形態および比較例に係るフィルタ10(第2フィルタ)の接続点n3から出力端子110側を見た場合のインピーダンスを表すスミスチャートである。なお、同図には、フィルタ20、直列腕共振子S1および並列腕共振子P1が接続されていない状態で、直列腕共振子S2、S3およびS4ならびに並列腕共振子P2、P3およびP4が接続された回路を接続点n3から見たインピーダンスが示されている。
【0088】
実施の形態および比較例の双方において、図6Cに示された回路は、図6Bに示された回路に比べて直列腕共振子S2が接続されたことで、フィルタ10のリプル発生帯には直列腕共振子S2の容量性インピーダンスが直列付加される。このため、フィルタ10のリプル発生帯のインピーダンスは、等レジスタンス円を反時計回りに移動する。
【0089】
実施の形態および比較例では、リプル発生帯には、どちらも同程度の容量性のインピーダンスが直列付加されるので、実施の形態および比較例では、スミスチャート上においてリプル発生帯のシフト量は略同じである。
【0090】
つまり、図6Cでは、図6Bのインピーダンス偏差の関係を維持し、実施の形態におけるリプル発生帯のインピーダンス偏差は、比較例におけるリプル発生帯のインピーダンス偏差よりも大きい。また、スミスチャート上において、リプル発生帯のインピーダンスを含む1巻きのインピーダンスの周波数範囲は、実施の形態よりも比較例の方が広い。
【0091】
図6Dは、実施の形態および比較例に係るフィルタ10(第2フィルタ)の接続点n3から出力端子110側を見た場合のインピーダンスを表すスミスチャートである。なお、同図には、フィルタ20および直列腕共振子S1が接続されていない状態で、直列腕共振子S2、S3およびS4ならびに並列腕共振子P1、P2、P3およびP4が接続された回路を接続点n3から見たインピーダンスが示されている。
【0092】
実施の形態および比較例の双方において、図6Dに示された回路は、図6Cに示された回路に比べて並列腕共振子P1が接続されたことで、フィルタ10のリプル発生帯には並列腕共振子P1の誘導性インピーダンスが並列付加される。このため、スミスチャート上において、フィルタ10のリプル発生帯のインピーダンスは、等コンダクタンス円を反時計回りに移動する。
【0093】
実施の形態では、図6Cにおける反共振周波数fasLが大きな等コンダクタンス円上に位置しているため、並列腕共振子P1の誘導性インピーダンスが並列付加されることで、この大きな等コンダクタンスを反時計まわりに大きく移動する。また、図6Cにおける低周波端fB2Lも大きな等コンダクタンス円上に位置しているため、並列腕共振子P1の誘導性インピーダンスが並列付加されることで、この大きな等コンダクタンスを反時計まわりに大きく移動する。
【0094】
一方、比較例では、図6Cにおける反共振周波数fasLが小さな等コンダクタンス円上に位置しているため、並列腕共振子P1の誘導性インピーダンスが並列付加されることで、この小さな等コンダクタンスを反時計まわりに移動する。このため、反共振周波数fasLは、さほど移動しない。また、図6Cにおける低周波端fB2Lは大きな等コンダクタンス円上に位置しているため、並列腕共振子P1の誘導性インピーダンスが並列付加されることで、この大きな等コンダクタンスを反時計まわりに大きく移動する。
【0095】
上記のように、実施の形態および比較例では、フィルタ10のリプル発生帯の両端を構成する反共振周波数fasLおよび低周波端fB2Lのインピーダンスシフト量が異なるため、結果的に、実施の形態の方が、比較例よりも、リプル発生帯のインピーダンスの収束度が高くなる(インピーダンスの変化量が小さくなる)。
【0096】
これは、図6Cで述べた、スミスチャート上において、リプル発生帯のインピーダンスを含むインピーダンスの1巻きの周波数範囲が、実施の形態よりも比較例の方が広いことに起因する。すなわち、スミスチャート上において、1巻きのインピーダンスの周波数範囲が狭いほうが、1巻きのインピーダンスの周波数範囲が広いほうよりも、誘導性インピーダンスが並列付加された場合のリプル発生帯のインピーダンスの収束度が高くなる(インピーダンスの変化量が小さくなる)。
【0097】
図6Eは、実施の形態および比較例に係るフィルタ10(第2フィルタ)の共通端子100から出力端子110側を見た場合のインピーダンスを表すスミスチャートである。なお、同図には、フィルタ20が接続されていない状態で、直列腕共振子S1、S2、S3およびS4ならびに並列腕共振子P1、P2、P3およびP4が接続された回路を共通端子100から見たインピーダンスが示されている。
【0098】
実施の形態および比較例の双方において、図6Eに示された回路は、図6Dに示された回路に比べて直列腕共振子S1が接続されたことで、フィルタ10のリプル発生帯には直列腕共振子S1の容量性インピーダンスが直列付加される。このため、フィルタ10のリプル発生帯のインピーダンスは、等レジスタンス円を反時計回りに移動する。
【0099】
実施の形態および比較例では、リプル発生帯には、どちらも同程度の容量性のインピーダンスが直列付加されるので、実施の形態および比較例では、スミスチャート上において、リプル発生帯のシフト量は略同じであり、いずれも誘導性領域から容量性領域へ移動する。
【0100】
つまり、図6Eでは、図6Dのインピーダンス収束度の関係を維持し、実施の形態におけるリプル発生帯のインピーダンス収束度は、比較例におけるリプル発生帯のインピーダンス収束度よりも高い。言い換えると、スミスチャート上において、実施の形態におけるリプル発生帯のインピーダンスの巻きは、比較例におけるリプル発生帯のインピーダンスの巻きよりも小さい。このため、実施の形態に係るマルチプレクサ1では、上記リプル発生帯と通過帯域が重複する低周波側のフィルタ20において、フィルタ20の通過帯域付近に発生する不要レスポンスが抑制されるので、フィルタ20の通過帯域内のリプルを抑制できる。
【0101】
なお、本実施の形態に係るマルチプレクサ1において、フィルタ10の直列腕共振子S2は、共通端子100と直列腕共振子S3とを結ぶ直列腕経路上に配置された直列腕共振子のなかで、最も容量が小さいことが望ましい。
【0102】
これによれば、直列腕共振子S3および並列腕共振子P2と共通端子100側で最も近く接続される直列腕共振子S2の容量を小さくすることで、スミスチャート上において、上記リプル発生帯を、よりオープン側(高インピーダンス側)へ移動させることが可能となる。
【0103】
また、並列腕共振子P2は、フィルタ10を構成する複数の並列腕共振子の中で、共振周波数が最も低いことが望ましい。
【0104】
これによれば、並列腕共振子P2の高インピーダンスの誘導性領域をリプル発生帯に重ねることができるので、リプル発生帯のインピーダンス偏差を大きくできる。
【0105】
また、並列腕共振子P2は、フィルタ10を構成する複数の並列腕共振子の中で、IDT電極の電極指ピッチが最も大きいことが望ましい。
【0106】
これによれば、並列腕共振子P2の高インピーダンスの誘導性領域をリプル発生帯に重ねることができるので、リプル発生帯のインピーダンス偏差を大きくできる。
【0107】
また、並列腕共振子P2を除く複数の並列腕共振子の少なくとも1つの反共振周波数は、フィルタ10の通過帯域に含まれる。
【0108】
これによれば、フィルタ10の通過帯域の挿入損失を低減できる。
【0109】
また、フィルタ10において、共通端子100と直列腕共振子S3との間の直列腕経路には、互いに並列接続された2つの直列腕共振子で構成された共振子は配置されていないことが望ましい。
【0110】
これによれば、フィルタ20の通過帯域付近に発生する不要レスポンスを発現させる共振子が、直列腕共振子S3および並列腕共振子P2よりも共通端子100側に接続されていないので、上記不要レスポンスの発生を抑制できる。
【0111】
[1.7 マルチプレクサ1の通過特性]
図7Aは、実施の形態および比較例に係るフィルタ20の通過特性を表すグラフである。また、図7Bは、実施の形態に係るフィルタ10の通過特性を表すグラフである。
【0112】
図7Aには、実施の形態に係るマルチプレクサ1における入力端子120から共通端子100の通過特性(実線波形)、および、比較例に係るマルチプレクサにおける入力端子120から共通端子100の通過特性(破線波形)が示されている。また、図7Bには、実施の形態に係るマルチプレクサ1における共通端子100から入力端子110の通過特性が示されている。なお、比較例に係るマルチプレクサにおける共通端子100から入力端子110の通過特性は、図7Bに示された実施の形態に係るマルチプレクサ1の通過特性とほぼ同じ波形であるため、図7Bへの記載を省略している。
【0113】
図7Aに示すように、比較例に係るマルチプレクサのフィルタ20の通過特性において、通過帯域の高周波側領域にリプルが発生しているのに対して、実施の形態に係るマルチプレクサ1のフィルタ20の通過特性では、通過帯域の高周波側領域におけるリプルが解消されている。これにより、実施の形態に係るマルチプレクサ1では、フィルタ20の通過帯域の挿入損失を低減できる。
【0114】
これは、実施の形態に係るマルチプレクサ1では、上記リプル発生帯と通過帯域が重複する低周波側のフィルタ20において、フィルタ20の通過帯域付近に発生する不要レスポンスが抑制されることに起因する。
【0115】
[2 効果など]
以上のように、本実施の形態に係るマルチプレクサ1は、第1通過帯域を有するフィルタ20と、第1通過帯域よりも周波数が高い第2通過帯域を有するフィルタ10と、を備え、フィルタ10の一端とフィルタ20の一端とが接続され、フィルタ10は複数の弾性波共振子を有し、当該複数の弾性波共振子は、フィルタ10の一端と他端とを結ぶ直列腕経路上に配置された直列腕共振子S31と、直列腕共振子S31と並列接続された直列腕共振子S32と、直列腕共振子S31と直列腕共振子S32との接続点n1とグランドとを結ぶ並列腕経路上に配置された並列腕共振子P2と、を含み、直列腕共振子S31と直列腕共振子S32とが合成された直列腕共振子S3は、第2通過帯域よりも低い反共振周波数fasLおよび第2通過帯域よりも高い反共振周波数fasHを有し、並列腕共振子P2は反共振周波数fap2を有し、反共振周波数fap2は第2通過帯域の低周波端fB1Lよりも低い。
【0116】
これによれば、フィルタ10において、直列腕共振子S3のインピーダンスが誘導性となる周波数領域と、並列腕共振子P2のインピーダンスが誘導性となる周波数領域とを重ねることが可能となる。これにより、フィルタ10において、第2通過帯域よりも低周波の帯域(リプル発生帯と記す)のインピーダンス変動量を小さくできる(スミスチャートにおける上記リプル発生帯のインピーダンスの巻きを小さくできる)。このため、上記リプル発生帯と通過帯域が重複する低周波側のフィルタ20において、フィルタ20の通過帯域付近に発生する不要レスポンスが抑制されるので、通過帯域内のリプルを抑制できる。よって、共通端子100に接続されたフィルタ20の通過帯域内の挿入損失が低減されたマルチプレクサ1を提供することが可能となる。
【0117】
また例えば、マルチプレクサ1において、反共振周波数fap2は、反共振周波数fasL以上であり、かつ、第2通過帯域の低周波端fB1Lよりも低い。
【0118】
これによれば、フィルタ10において、直列腕共振子S3のインピーダンスが誘導性となる周波数領域と、並列腕共振子P2のインピーダンスが誘導性となる周波数領域とを高精度に重ねることが可能となる。
【0119】
また例えば、マルチプレクサ1において、反共振周波数fap2は、反共振周波数fasLと一致している。
【0120】
これによれば、フィルタ10において、直列腕共振子S3のインピーダンスが誘導性となる周波数領域と、並列腕共振子P2のインピーダンスの誘導性が高い周波数領域とを重ねることが可能となる。
【0121】
また例えば、マルチプレクサ1において、フィルタ10は、さらに、フィルタ10の上記一端と直列腕共振子S3との間の直列腕経路に配置された直列腕共振子S2を含む。
【0122】
また例えば、マルチプレクサ1において、フィルタ10は、上記一端と直列腕共振子S3との間の直列腕経路に配置された複数の直列腕共振子を含み、直列腕共振子S2は、上記複数の直列腕共振子のなかで、直列腕共振子S3に最も近く接続されている。
【0123】
また例えば、マルチプレクサ1において、直列腕共振子S2は、上記複数の直列腕共振子のなかで、容量が最も小さい。
【0124】
これによれば、上記リプル発生帯を、スミスチャート上で、よりオープン側(高インピーダンス側)へ移動させることが可能となる。
【0125】
また例えば、マルチプレクサ1において、フィルタ10は、上記直列腕経路とグランドとの間に接続された複数の並列腕共振子を含み、並列腕共振子P2は、上記複数の並列腕共振子の中で共振周波数が最も低い。
【0126】
これによれば、並列腕共振子P2の高インピーダンスの誘導性領域をリプル発生帯に重ねることができるので、リプル発生帯のインピーダンス偏差を大きくできる。
【0127】
また例えば、マルチプレクサ1において、並列腕共振子P2を除く上記複数の並列腕共振子の少なくとも1つの反共振周波数は、第2通過帯域に含まれる。
【0128】
これによれば、フィルタ10の通過帯域の挿入損失を低減できる。
【0129】
また例えば、マルチプレクサ1において、上記複数の弾性波共振子のそれぞれは、IDT電極を有する弾性表面波共振子で構成され、フィルタ10は、上記直列腕経路とグランドとの間に接続された複数の並列腕共振子を含み、並列腕共振子P2は、上記複数の並列腕共振子の中でIDT電極の電極指ピッチが最も大きい。
【0130】
これによれば、並列腕共振子P2の高インピーダンスの誘導性領域をリプル発生帯に重ねることができるので、リプル発生帯のインピーダンス偏差を大きくできる。
【0131】
また例えば、マルチプレクサ1のフィルタ10において、上記一端と直列腕共振子S3との間の直列腕経路には、互いに並列接続された2つの直列腕共振子が配置されていない。
【0132】
これによれば、フィルタ20の通過帯域付近に発生する不要レスポンスを発現させる共振子が、直列腕共振子S3および並列腕共振子P2よりも共通端子100側に接続されていないので、上記不要レスポンスの発生を抑制できる。
【0133】
(その他の実施の形態)
以上、本発明に係るマルチプレクサについて、実施の形態を挙げて説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態に対して本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本発明に係るマルチプレクサを内蔵した各種機器も本発明に含まれる。
【0134】
また、例えば、上記実施の形態に係るマルチプレクサにおいて、各構成要素の間に、インダクタおよびキャパシタなどの整合素子、ならびにスイッチ回路が接続されていてもかまわない。
【0135】
なお、上記実施の形態において示された共振周波数および反共振周波数は、例えば、弾性波共振子の2つの入出力電極にRFプローブを接触させて反射特性を測定することで導出される。
【0136】
以下に、上記実施の形態に基づいて説明したマルチプレクサの特徴を示す。
【0137】
<1>
第1通過帯域を有する第1フィルタと、
前記第1通過帯域よりも周波数が高い第2通過帯域を有する第2フィルタと、を備え、
前記第1フィルタの一端と前記第2フィルタの一端とが接続され、
前記第2フィルタは、複数の弾性波共振子を有し、
前記複数の弾性波共振子は、
前記第2フィルタの前記一端と他端とを結ぶ直列腕経路上に配置された第1直列腕共振子と、
前記第1直列腕共振子と並列接続された第2直列腕共振子と、
前記第1直列腕共振子と前記第2直列腕共振子との接続点のうちの前記一端側の接続点とグランドとを結ぶ並列腕経路上に配置された第1並列腕共振子と、を含み、
前記第1直列腕共振子と前記第2直列腕共振子とが合成された共振子は、前記第2通過帯域よりも低い第1反共振周波数および前記第2通過帯域よりも高い第2反共振周波数を有し、
前記第1並列腕共振子は、第3反共振周波数を有し、
前記第3反共振周波数は、前記第2通過帯域の低周波端よりも低い、マルチプレクサ。
【0138】
<2>
前記第3反共振周波数は、前記第1反共振周波数以上であり、かつ、前記第2通過帯域の低周波端よりも低い、<1>に記載のマルチプレクサ。
【0139】
<3>
前記第3反共振周波数は、前記第1反共振周波数と一致している、<1>または<2>に記載のマルチプレクサ。
【0140】
<4>
前記第2フィルタは、さらに、
前記一端と前記第1直列腕共振子および前記第2直列腕共振子との間の前記直列腕経路に配置された第3直列腕共振子を含む、<1>~<3>のいずれかに記載のマルチプレクサ。
【0141】
<5>
前記第2フィルタは、
前記一端と前記第1直列腕共振子および前記第2直列腕共振子との間の前記直列腕経路に配置された複数の直列腕共振子を含み、
前記第3直列腕共振子は、前記複数の直列腕共振子のなかで、前記第1直列腕共振子および前記第2直列腕共振子に最も近く接続されている、<4>に記載のマルチプレクサ。
【0142】
<6>
前記第3直列腕共振子は、前記複数の直列腕共振子のなかで、容量が最も小さい、<5>に記載のマルチプレクサ。
【0143】
<7>
前記第2フィルタは、
前記直列腕経路とグランドとの間に接続された複数の並列腕共振子を含み、
前記第1並列腕共振子は、前記複数の並列腕共振子の中で共振周波数が最も低い、<1>~<3>のいずれかに記載のマルチプレクサ。
【0144】
<8>
前記第1並列腕共振子を除く前記複数の並列腕共振子の少なくとも1つの反共振周波数は、前記第2通過帯域に含まれる、<7>に記載のマルチプレクサ。
【0145】
<9>
前記複数の弾性波共振子のそれぞれは、IDT電極を有する弾性表面波共振子で構成され、
前記第2フィルタは、前記直列腕経路とグランドとの間に接続された複数の並列腕共振子を含み、
前記第1並列腕共振子は、前記複数の並列腕共振子の中で前記IDT電極の電極指ピッチが最も大きい、<1>~<8>のいずれかに記載のマルチプレクサ。
【0146】
<10>
前記第2フィルタにおいて、
前記一端と前記第1直列腕共振子および前記第2直列腕共振子との間の前記直列腕経路には、互いに並列接続された2つの直列腕共振子が配置されていない、<1>~<9>のいずれかに記載のマルチプレクサ。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明は、マルチバンド化およびマルチモード化された周波数規格に適用できる低損失のマルチプレクサとして、携帯電話などの通信機器に広く利用できる。
【符号の説明】
【0148】
1 マルチプレクサ
10、20 フィルタ
50 基板
51 高音速支持基板
52 低音速膜
53 圧電膜
54 IDT電極
55、58 保護層
57 圧電単結晶基板
60 弾性波共振子
60a、60b 櫛形電極
61a、61b 電極指
62a、62b バスバー電極
65 支持基板
66 下部電極
67 圧電体層
68 上部電極
100 共通端子
110 出力端子
120 入力端子
n1、n2、n3 接続点
P1、P2、P3、P4 並列腕共振子
S1、S2、S3、S31、S32、S4 直列腕共振子
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A
図7B