(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162479
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】摩擦ダンパー
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20241114BHJP
F16F 7/08 20060101ALI20241114BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
F16F15/02 E
F16F7/08
E04H9/02 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078018
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内海 良和
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
3J066
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AB13
2E139AC19
2E139BA19
2E139BA20
2E139BD14
3J048AA06
3J048AC01
3J048BC05
3J048BE11
3J048EA38
3J066AA26
3J066CA06
(57)【要約】
【課題】摩擦ダンパーの第1板材の第1貫通孔近傍及び第2板材の第2貫通孔近傍の摩耗を軽減させる技術を提供する。
【解決手段】所定方向に相対移動する一対の部材の間に配置されて、相対移動に伴って摺動する板材同士の摩擦力により、相対移動を抑制する摩擦ダンパーであって、一対の部材のうちの一方の部材に設けられる第1板材と、他方の部材に設けられる第2板材と、第1板材と第2板材とを締結する締結部材と、を有し、締結部材は、第1板材側に頭部を有し、第1板材の第1貫通孔及び第2板材の第2貫通孔を貫通するボルトと、第2板材側からボルトに螺合するナットと、第1板材と頭部との間に介装された介装部材と、を備え、第2貫通孔の相対移動の方向の長さが、第1貫通孔の径より長く、介装部材は、頭部側に設けられたブッシュと、第1板材側に設けられたリングを備え、ブッシュの外径は、頭部の最小外径より広径であり、リングの内径は、頭部の最小外径より広径であり、且つ、ブッシュの外径より狭径である。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に相対移動する一対の部材の間に配置されて、前記相対移動に伴って摺動する板材同士の摩擦力により、前記相対移動を抑制する摩擦ダンパーであって、
前記一対の部材のうちの一方の部材に設けられる第1板材と、
前記一対の部材のうちの他方の部材に設けられる第2板材と、
前記第1板材と前記第2板材とを締結する締結部材と、を有し、
前記締結部材は、
前記第1板材側に頭部を有し、前記第1板材の第1貫通孔及び前記第2板材の第2貫通孔を貫通するボルトと、
前記第2板材側から前記ボルトに螺合するナットと、
前記第1板材と前記頭部との間に介装された介装部材と、を備え、
前記第2貫通孔の前記相対移動の方向の長さが、前記第1貫通孔の径より長く、
前記介装部材は、前記頭部側に設けられたブッシュと、前記第1板材側に設けられたリングを備え、
前記ブッシュの外径は、前記頭部の最小外径より広径であり、
前記リングの内径は、前記頭部の最小外径より広径であり、且つ、前記ブッシュの外径より狭径である
ことを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項2】
請求項1に記載の摩擦ダンパーであって、
前記第2板材と前記ナットとの間に第3板材を有し、
前記ボルトは、前記第1貫通孔、前記第2貫通孔、及び前記第3板材の第3貫通孔を貫通することを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の摩擦ダンパーであって、
前記ブッシュと前記リングとが一体に形成されていることを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の摩擦ダンパーであって、
前記リングの外径は、前記第2貫通孔の前記相対移動の方向の長さより長いことを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の摩擦ダンパーであって、
前記リングの内径は、前記第2貫通孔の前記相対移動の方向の長さより長いことを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の摩擦ダンパーであって、
前記締結部材は、前記ナットと前記第2板材との間に皿ばねを有することを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項7】
所定方向に相対移動する一対の部材の間に配置されて、前記相対移動に伴って摺動する板材同士の摩擦力により、前記相対移動を抑制する摩擦ダンパーであって、
前記一対の部材のうちの一方の部材に設けられる第1板材と、
前記一対の部材のうちの他方の部材に設けられる第2板材と、
前記第1板材と前記第2板材とを締結する締結部材と、を有し、
前記締結部材は、
前記第2板材側に頭部を有し、前記第1板材の第1貫通孔及び前記第2板材の第2貫通孔を貫通するボルトと、
前記第1板材側から前記ボルトに螺合するナットと、
前記第1板材と前記ナットとの間に介装された介装部材と、を備え、
前記第2貫通孔の前記相対移動の方向の長さが、前記第1貫通孔の径より長く、
前記介装部材は、前記ナット側に設けられたブッシュと、前記第1板材側に設けられたリングを備え、
前記ブッシュの外径は、前記ナットの最小外径より広径であり、
前記リングの内径は、前記ナットの最小外径より広径であり、且つ、前記ブッシュの外径より狭径である
ことを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項8】
請求項7に記載の摩擦ダンパーであって、
前記第2板材と前記頭部との間に第3板材を有し、
前記ボルトは、前記第1貫通孔、前記第2貫通孔、及び前記第3板材の第3貫通孔を貫通することを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の摩擦ダンパーであって、
前記ブッシュと前記リングとが一体に形成されていることを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項10】
請求項7又は8に記載の摩擦ダンパーであって、
前記リングの外径は、前記第2貫通孔の前記相対移動の方向の長さより長いことを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項11】
請求項7又は8に記載の摩擦ダンパーであって、
前記リングの内径は、前記第2貫通孔の前記相対移動の方向の長さより長いことを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項12】
請求項7又は8に記載の摩擦ダンパーであって、
前記締結部材は、前記ナットと前記第2板材との間に皿ばねを有することを特徴とする摩擦ダンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦ダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物架構の振動を減衰させる摩擦ダンパーが知られている。例えば、特許文献1の摩擦ダンパーのように、建物架構において、所定方向に互いに相対移動する一対の部材の間に配置され、相対移動に伴って摺動する圧接板同士の摩擦力により、相対移動を抑制することができる。特許文献1の摩擦ダンパーは、滑り板を一対の摩擦板の間に挟んだ状態で、ボルト頭部側に皿ばねを設け、ボルト頭部とナットを介してボルトを貫通させることで固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような摩擦ダンパーでは、ナット側から加えられる滑り板及び一対の摩擦板を圧接する力がボルト近傍の部分に働きやすいため、滑り板と摩擦板との圧接面が摩耗しやすいという問題があった。
【0005】
本発明は、摩擦ダンパーにおける第1板材の第1貫通孔近傍及び第2板材の第2貫通孔近傍の摩耗を軽減させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明は、所定方向に相対移動する一対の部材の間に配置されて、前記相対移動に伴って摺動する板材同士の摩擦力により、前記相対移動を抑制する摩擦ダンパーであって、前記一対の部材のうちの一方の部材に設けられる第1板材と、前記一対の部材のうちの他方の部材に設けられる第2板材と、前記第1板材と前記第2板材とを締結する締結部材と、を有し、前記締結部材は、前記第1板材側に頭部を有し、前記第1板材の第1貫通孔及び前記第2板材の第2貫通孔を貫通するボルトと、前記第2板材側から前記ボルトに螺合するナットと、前記第1板材と前記頭部との間に介装された介装部材と、を備え、前記第2貫通孔の前記相対移動の方向の長さが、前記第1貫通孔の径より長く、前記介装部材は、前記頭部側に設けられたブッシュと、前記第1板材側に設けられたリングを備え、前記ブッシュの外径は、前記頭部の最小外径より広径であり、前記リングの内径は、前記頭部の最小外径より広径であり、且つ、前記ブッシュの外径より狭径であることを特徴とする摩擦ダンパーである。
また、所定方向に相対移動する一対の部材の間に配置されて、前記相対移動に伴って摺動する板材同士の摩擦力により、前記相対移動を抑制する摩擦ダンパーであって、前記一対の部材のうちの一方の部材に設けられる第1板材と、前記一対の部材のうちの他方の部材に設けられる第2板材と、前記第1板材と前記第2板材とを締結する締結部材と、を有し、前記締結部材は、前記第2板材側に頭部を有し、前記第1板材の第1貫通孔及び前記第2板材の第2貫通孔を貫通するボルトと、前記第1板材側から前記ボルトに螺合するナットと、前記第1板材と前記ナットとの間に介装された介装部材と、を備え、前記第2貫通孔の前記相対移動の方向の長さが、前記第1貫通孔の径より長く、前記介装部材は、前記ナット側に設けられたブッシュと、前記第1板材側に設けられたリングを備え、前記ブッシュの外径は、前記ナットの最小外径より広径であり、前記リングの内径は、前記ナットの最小外径より広径であり、且つ、前記ブッシュの外径より狭径であることを特徴とする摩擦ダンパーである。
本発明の他の特徴については、本明細書の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、摩擦ダンパーの第1板材の第1貫通孔近傍及び第2板材の第2貫通孔近傍の摩耗を軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の摩擦ダンパー10が設けられた建物架構1の概略立面図である。
【
図5】第1実施形態の変形例の摩擦ダンパー10eを説明する図である。
【
図7】第2実施形態の摩擦ダンパー10gを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
(態様1)
所定方向に相対移動する一対の部材の間に配置されて、前記相対移動に伴って摺動する板材同士の摩擦力により、前記相対移動を抑制する摩擦ダンパーであって、前記一対の部材のうちの一方の部材に設けられる第1板材と、前記一対の部材のうちの他方の部材に設けられる第2板材と、前記第1板材と前記第2板材とを締結する締結部材と、を有し、前記締結部材は、前記第1板材側に頭部を有し、前記第1板材の第1貫通孔及び前記第2板材の第2貫通孔を貫通するボルトと、前記第2板材側から前記ボルトに螺合するナットと、前記第1板材と前記頭部との間に介装された介装部材と、を備え、前記第2貫通孔の前記相対移動の方向の長さが、前記第1貫通孔の径より長く、前記介装部材は、前記頭部側に設けられたブッシュと、前記第1板材側に設けられたリングを備え、前記ブッシュの外径は、前記頭部の最小外径より広径であり、前記リングの内径は、前記頭部の最小外径より広径であり、且つ、前記ブッシュの外径より狭径であることを特徴とする摩擦ダンパーである。
【0010】
態様1の摩擦ダンパーによれば、介装部材によって、ボルトから伝わる力をボルト近傍よりも外側に伝えやすくなり、第1板材の第1貫通孔近傍及び第2板材の第2貫通孔近傍の摩耗を軽減させやすくなる。
【0011】
(態様2)
態様1の摩擦ダンパーであって、前記第2板材と前記ナットとの間に第3板材を有し、前記ボルトは、前記第1貫通孔、前記第2貫通孔、及び前記第3板材の第3貫通孔を貫通することが望ましい。
【0012】
態様2の摩擦ダンパーによれば、介装部材によって、ボルトから伝わる力をボルト近傍よりも外側に伝えやすくなり、第1板材の第1貫通孔近傍及び第2板材の第2貫通孔近傍の摩耗を軽減させやすくなる。
【0013】
(態様3)
態様1又は2の摩擦ダンパーであって、前記ブッシュと前記リングとが一体に形成されていることが望ましい。
【0014】
態様3の摩擦ダンパーによれば、介装部材によって、ボルトから伝わる力をボルト近傍よりも外側に伝えやすくなり、第2板材の第2貫通孔近傍の摩耗をより軽減させつつ、摩擦ダンパーの構成部材数を削減することで、摩擦ダンパーの形成過程を簡略化させやすくなる。
【0015】
(態様4)
態様1~3のいずれかの摩擦ダンパーであって、前記リングの外径は、前記第2貫通孔の前記相対移動の方向の長さより長いことが望ましい。
【0016】
態様4の摩擦ダンパーによれば、リングの外径を第2貫通孔の相対移動の方向の長さより短くした場合よりも、ボルトに沿った方向において、リングと第2板材とが重なる部分を広く設けることができるため、第2板材を安定的に固定させやすくなる。
【0017】
(態様5)
態様1~4のいずれかの摩擦ダンパーであって、前記リングの内径は、前記第2貫通孔の前記相対移動の方向の長さより長いことが望ましい。
【0018】
態様5の摩擦ダンパーによれば、介装部材によって、ボルトから伝わる力をボルト近傍よりも外側に伝えやすくなり、第1板材の第1貫通孔近傍及び第2板材の第2貫通孔近傍の摩耗を軽減させやすくなる。
【0019】
(態様6)
態様1~5のいずれかの摩擦ダンパーであって、前記締結部材は、前記ナットと前記第2板材との間に皿ばねを有することが望ましい。
【0020】
態様6の摩擦ダンパーによれば、皿ばねの弾発力によって、ボルトによる圧接力を安定的に各板材に付与させやすくなる。
【0021】
(態様7)
所定方向に相対移動する一対の部材の間に配置されて、前記相対移動に伴って摺動する板材同士の摩擦力により、前記相対移動を抑制する摩擦ダンパーであって、前記一対の部材のうちの一方の部材に設けられる第1板材と、前記一対の部材のうちの他方の部材に設けられる第2板材と、前記第1板材と前記第2板材とを締結する締結部材と、を有し、前記締結部材は、前記第2板材側に頭部を有し、前記第1板材の第1貫通孔及び前記第2板材の第2貫通孔を貫通するボルトと、前記第1板材側から前記ボルトに螺合するナットと、前記第1板材と前記ナットとの間に介装された介装部材と、を備え、前記第2貫通孔の前記相対移動の方向の長さが、前記第1貫通孔の径より長く、前記介装部材は、前記ナット側に設けられたブッシュと、前記第1板材側に設けられたリングを備え、前記ブッシュの外径は、前記ナットの最小外径より広径であり、前記リングの内径は、前記ナットの最小外径より広径であり、且つ、前記ブッシュの外径より狭径であることを特徴とする摩擦ダンパーである。
【0022】
態様7の摩擦ダンパーによれば、介装部材によって、ボルトから伝わる力をボルト近傍よりも外側に伝えやすくなり、第1板材の第1貫通孔近傍及び第2板材の第2貫通孔近傍の摩耗を軽減させやすくなる。
【0023】
(態様8)
態様7の摩擦ダンパーであって、前記第2板材と前記頭部との間に第3板材を有し、前記ボルトは、前記第1貫通孔、前記第2貫通孔、及び前記第3板材の第3貫通孔を貫通することが望ましい。
【0024】
態様8の摩擦ダンパーによれば、介装部材によって、ボルトから伝わる力をボルト近傍よりも外側に伝えやすくなり、第1板材の第1貫通孔近傍及び第2板材の第2貫通孔近傍の摩耗を軽減させやすくなる。
【0025】
(態様9)
態様7又は8の摩擦ダンパーであって、前記ブッシュと前記リングとが一体に形成されていることが望ましい。
【0026】
態様9の摩擦ダンパーによれば、介装部材によって、ボルトから伝わる力をボルト近傍よりも外側に伝えやすくなり、第2板材の第2貫通孔近傍の摩耗をより軽減させつつ、摩擦ダンパーの構成部材数を削減することで、摩擦ダンパーの形成過程を簡略化させやすくなる。
【0027】
(態様10)
態様7~9のいずれかの摩擦ダンパーであって、前記リングの外径は、前記第2貫通孔の前記相対移動の方向の長さより長いことが望ましい。
【0028】
態様10の摩擦ダンパーによれば、リングの外径を第2貫通孔の相対移動の方向の長さより短くした場合よりも、ボルトに沿った方向において、リングと第2板材とが重なる部分を広く設けることができるため、第2板材を安定的に固定させやすくなる。
【0029】
(態様11)
態様7~10のいずれかの摩擦ダンパーであって、前記リングの内径は、前記第2貫通孔の前記相対移動の方向の長さより長いことが望ましい。
【0030】
態様11の摩擦ダンパーによれば、介装部材によって、ボルトから伝わる力をボルト近傍よりも外側に伝えやすくなり、第1板材の第1貫通孔近傍及び第2板材の第2貫通孔近傍の摩耗を軽減させやすくなる。
【0031】
(態様12)
態様7~11のいずれかの摩擦ダンパーであって、前記締結部材は、前記ナットと前記第2板材との間に皿ばねを有することが望ましい。
【0032】
態様12の摩擦ダンパーによれば、皿ばねの弾発力によって、ボルトによる圧接力を安定的に各板材に付与させやすくなる。
【0033】
<<<本実施形態>>>
===第1実施形態の摩擦ダンパー10===
図1は、第1実施形態の摩擦ダンパー10が設けられた建物架構1の概略立面図である。
図2は、
図1中のA-A矢視図である。
図3Aは、
図2中の部分bの拡大図である。
図3Bは、
図3A中のB-B矢視図である。
【0034】
摩擦ダンパー10は、建物架構1としての柱梁架構1のH形鋼のブレース7に組み込まれている。ブレース7は、適宜位置で互いに所定間隔を隔てて分断されて、一対のブレース分断片71、72が形成されている。ブレース分断片71、72同士は、所定間隔で架け渡し方向に相対移動可能になっている。この架け渡し方向が、相対移動の方向に相当する。摩擦ダンパー10は、ブレース7のブレース分断片71、72の間に配置されており、地震等の外力が発生した際に、板材同士の摩擦力により、ブレース分断片71、72のブレース架け渡し方向への相対移動を抑制する。
【0035】
図2等に示すように、摩擦ダンパー10は、一方のブレース分断片71のウエブ71Wにボルト止めされる第1板材11と第3板材13、他方のブレース分断片72のウエブ72Wがそのまま流用される第2板材12、第1板材11と第2板材と第3板材とを締結する締結部材60を有する。締結部材60は、高力ボルト61b、ナット61n、皿ばね63、介装部材65を備える。
【0036】
第1板材11には第1貫通孔11a、第2板材には第2貫通孔12a、第3板材13には第3貫通孔13aがそれぞれ板厚方向に貫通形成されているとともに、これらの貫通孔11a、12a、13aには、串刺し状に高力ボルト61bが通されている。第1貫通孔11a及び第3貫通孔13aは円形であり、第2貫通孔12aは相対移動方向に沿って長い長孔である。
【0037】
高力ボルト61bの先端部には、ナット61nが螺着されており、高力ボルト61b及びナット61nによって、第2板材12が、第1板材11と第3板材13とに挟まれた状態で締結され、圧接力が板厚方向に付与される。この圧接力により、第1板材11と第2板材12、及び第2板材12と第3板材13とがそれぞれ当接され、摺動時には、圧接力に応じた摩擦力を生じる。この摩擦力が柱梁架構1の振動の減衰力となる。なお、ナット61nと第3板材との間には、皿ばね63が介装されており、皿ばね63の弾発力が付与されることにより、圧接力の大きさの安定化が図られる。
【0038】
上述の摺動をブレース架け渡し方向について許容するために、第2板材12の第2貫通孔12aは、ブレース架け渡し方向に沿って長い長孔に形成されている。すなわち、この第2貫通孔12aによって、柱梁架構1のブレース分断片71、72同士のブレース架け渡し方向の相対移動に伴い、第1板材11に対して第2板材12が、第3板材13に対して第2板材12が、ブレース架け渡し方向に摺動可能になっている。第2貫通孔12aの相対移動方向(ブレース架け渡し方向)の長さL12aは、第1貫通孔11aの径D11aより長い(L12a>L11a)。なお、この第2貫通孔12a(長孔)のブレース架け渡し方向の長さは、地震時に想定されるブレース分断片71、72同士の相対移動量を考慮して決定される。
【0039】
図3等に示すように、本実施形態の介装部材65は、高力ボルト61bのボルト頭部61hと第1板材11との間に設けられたリング状(円形)の部材である。介装部材65には、貫通孔が板厚方向に貫通形成されており、各板材11、12、13の貫通孔11a、12a、13aと一緒に、高力ボルト61bが通されている。なお、介装部材65の貫通孔65aと高力ボルト61bとの間には隙間があるものの、その隙間が小さいほど好ましい。
【0040】
介装部材65は、ブッシュ65b、リング65r、中間部65mを備える。ブッシュ65bは、ボルト頭部61h側に設けられている。便宜上、
図3Bに、ブッシュ65bが設けられた部分を右斜め下がりの斜線で示す。ブッシュ65bの外径D65bが、ボルト頭部61hの最小外径D61hより広径(D65b>D61h)である。
【0041】
リング65rは、ブッシュ65bより第1板材11側に設けられている。便宜上、
図3Bに、リング65rが設けられた部分を左斜め下がりの斜線で示す。リング65rの内径D65raが、ボルト頭部61hの最小外径D61hより広径であり(D65ra>D61h)、且つ、ブッシュ65bの外径D65bより狭径である(D65ra<D65b)。
【0042】
ブッシュ65b、リング65rは、一体に形成されていてもよく、別体に形成されていてもよい。ブッシュ65bとリング65rが、一体に形成されていることで、摩擦ダンパー10を形成するための構成部材数を削減することができるため、摩擦ダンパー10の形成過程を簡略化させやすくなる。
【0043】
中間部65mは、円形の部材で、ブッシュ65bより第1板材11側に設けられており、リング65rの内側で、且つ、リング65r及び第1板材11と当接しない位置に設けられている。中間部65mを備えることで、第1板材11に対する介装部材65の位置を容易に特定させ、固定させやすくなるため、締結部材60による締結力を摩擦ダンパー10に付与させやすくなる。中間部65mは、必ずしも設けなくてもよい。中間部65mは、ブッシュ65bと一体に形成されていてもよく、別体に形成されていてもよい。
【0044】
ボルト頭部61hの最小外径D61hとは、ボルト頭部61hにおける対角線のうちの最も短い長さである。
【0045】
図4Aは、従来の摩擦ダンパー100を説明する図である。
図4Bは、
図4A中のD-D矢視図である。
図4A及び
図4Bの摩擦ダンパー100の各部材について、上述の摩擦ダンパー10の構成と共通する部分は符号等を同じとし、摩擦ダンパー100の基本構成の詳細な説明は省略する。
【0046】
一般的に、圧接力等の力は最短距離を経て伝わる。つまり、ボルト頭部61hから加えられた力fは、第1板材11に対して垂直方向に伝わりやすい。そのため、
図4Bに示すように、高力ボルト61b(締結部材60)によって生じる摩擦力は、各板材11、12、13のボルト近傍で伝わりやすく、特に、ボルト頭部61hと板厚方向に重なる領域で伝わりやすい。
図4Bにボルト頭部61hから加えられる力fが特に働く領域をクロスハッチングで示す。
図4Bに示すように、従来の摩擦ダンパー100は、ボルト頭部61hから伝わる力fが第1板材11の第1貫通孔11a近傍及び第2板材12の第2貫通孔12a近傍に働きやすくなり、第1板材11の第1貫通孔11a近傍及び第2板材12の第2貫通孔12a近傍が局所的に摩耗しやすくなってしまう恐れがあった。
【0047】
図3Bに示すように、摩擦ダンパー10のボルト頭部61hから加えられる力fが特に働く領域は、摩擦ダンパー10をボルト頭部61h側から見たときに、ブッシュ65bとリング65rとが重なる部分(
図3Bの着色領域)である。
【0048】
摩擦ダンパー10は、介装部材65のブッシュ65bの外径が、ボルト頭部61hの最小外径D61hより広径で、リング65rの内径D65raより広径(リング65rの内径D65raがブッシュ65bの外径より狭径)であることで、ボルト頭部61hから加えられる力fを、介装部材65(ブッシュ65b、リング65r)を介して第1板材11に伝える。一方、リング65rの内径D65raが、ボルト頭部61hの最小外径D61hより広径であることで、
図3AのB-B矢視における、板厚方向(高力ボルト61bに沿った方向)において、ボルト頭部61hと重なるリング65rが設けられないため、ボルト頭部61hから加えられる力fを高力ボルト61b近傍から遠ざけた外側に向かって力が働きやすくなる。そして、
図3AのB-B矢視において、板厚方向に、ブッシュ65bとリング65rと第1板材11とが重なる領域(
図3Bの着色領域)に力fが働きやすくなる。
【0049】
また、摩擦ダンパー10において、ボルト頭部61hから第1板材11に対して力fが加えられやすい部分は、ボルト頭部61h側から見たときに、第1板材11とブッシュ65bとリング65rとが重なる部分であるため、摩擦ダンパー10のボルト頭部61hから第1板材11に対して力fが加えられる領域の面積(
図3Bの着色領域の面積)が、従来の摩擦ダンパー100のボルト頭部61hから力fが加えられる面積(
図4Bのクロスハッチング領域)より広くなる。そのため、本実施形態の摩擦ダンパー10のボルト頭部61hから加えられる力fによる単位面積当たりの摩擦力が、従来の摩擦ダンパー100のボルト頭部61hから加えられる力fによる単位面積当たりの摩擦力よりも小さくなる。
【0050】
ボルト頭部61hから加えられる力fを高力ボルト61b近傍から外側に向かいやすくしつつ、ボルト頭部61hから加えられる力fによる単位面積当たりの摩擦力を小さくすることで、第1板材11の第1貫通孔11a近傍及び第2板材12の第2貫通孔近傍の摩耗を軽減させることができる。
【0051】
なお、本実施形態の摩擦ダンパー10では、板厚方向におけるナット61nが設けられた側は、皿ばね63が設けられているため、第3板材13は、ナット61nから第3板材13に対して広い範囲に力が働きやすい。また、介装部材65の貫通孔65aと高力ボルト61bとの間には隙間があるものの、その隙間が小さいほど好ましい。
【0052】
本実施形態の摩擦ダンパー10は、リング65rの外径D65rが、第2貫通孔12aの相対移動の方向の長さL12aより短く(D65r<L12a)、リング65rの内径D65raが、第2貫通孔12aの相対移動の方向の長さL12aより短いが(D65ra<L12a)、これに限られない。リング65rの外径D65rを、第2貫通孔12aの相対移動の方向の長さL12aより長くしてもよい(D65r>L12a)。外径D65rを長さL12aより長くすることで、リング65rの外径D65rが、第2貫通孔12aの相対移動の方向の長さL12aより短くした場合よりも、板厚方向(高力ボルト61b)に沿った方向において、リング65rと第2板材12とが重なる部分を広く設けることができる。これにより、第2板材12を安定的に固定させやすくなる。また、リング65rの内径D65raを、第2貫通孔12aの相対移動の方向の長さL12aより長くしてもよい(D65ra>L12a)。
【0053】
===第1実施形態の変形例の摩擦ダンパー10e===
図5は、第1実施形態の変形例の摩擦ダンパー10eを説明する図である。
図6Aは、
図5中の部分eの拡大図である。
図6Bは、
図5A中のE-E矢視図である。摩擦ダンパー10eについて、上述の摩擦ダンパー10の構成と共通する部分は符号等を同じとし、摩擦ダンパー10eの基本構成の詳細な説明は省略する。
【0054】
第1実施形態の摩擦ダンパー10は、第1板材11と第2板材12と第3板材13とを締結部材60で締結した構成としたが、
図5及び
図6に示すように、第1板材11と第2板材12とを締結部材60で締結した摩擦ダンパー10eとし、第3板材13を備えない構成でもよい。
【0055】
摩擦ダンパー10eの介装部材65は、上述の摩擦ダンパー10の介装部材65と同様の構成であり、高力ボルト61bのボルト頭部61hと第1板材11との間に設けられたリング状(円形)の部材である。介装部材65には、貫通孔65aが板厚方向に貫通形成されており、各板材11、12の貫通孔11a、12aと一緒に、高力ボルト61bが通されている。
【0056】
摩擦ダンパー10eの介装部材65は、高力ボルト61bのボルト頭部61hと第1板材11との間に設けられたリング状(円形)の部材である。上述の摩擦ダンパー10と同様に、介装部材65は、ブッシュ65b、リング65r、中間部65mを備える。
【0057】
ブッシュ65bは、ボルト頭部61h側に設けられている。便宜上、
図6Bに、ブッシュ65bが設けられた部分を右斜め下がりの斜線で示す。ブッシュ65bの外径D65bが、ボルト頭部61hの最小外径D61hより広径(D65b>D61h)である。
【0058】
リング65rは、ブッシュ65bより第1板材11側に設けられている。便宜上、
図6Bに、リング65rが設けられた部分を左斜め下がりの斜線で示す。リング65rの内径D65raが、ボルト頭部61hの最小外径D61hより広径であり(D65ra>D61h)、且つ、ブッシュ65bの外径D65bより狭径である(D65ra<D65b)。
【0059】
ブッシュ65b、リング65rは、一体に形成されていてもよく、別体に形成されていてもよい。ブッシュ65bとリング65rが、一体に形成されていることで、摩擦ダンパー10eを形成するための構成部材数を削減することができるため、摩擦ダンパー10の形成過程を簡略化させやすくなる。
【0060】
図6Bに、摩擦ダンパー10eのボルト頭部61hから加えられる力fが特に働く領域を灰色の着色で示す。摩擦ダンパー10eは、介装部材65のブッシュ65bの外径が、ボルト頭部61hの最小外径D61hより広径で、リング65rの内径D65raより広径(リング65rの内径D65raがブッシュ65bの外径より狭径)であることで、ボルト頭部61hから加えられる力fを、介装部材65(ブッシュ65b、リング65r)を介して第1板材11に伝える。一方、リング65rの内径D65raが、ボルト頭部61hの最小外径D61hより広径であることで、
図6AのE-E矢視において、板厚方向(高力ボルト61bに沿った方向)において、ボルト頭部61hと重なるリング65rが設けられないため、ボルト頭部61hから加えられる力fを高力ボルト61b近傍から遠ざけた外側に向かって力が働きやすくなる。そして、
図6AのE-E矢視において、板厚方向に、ブッシュ65bとリング65rと第1板材11とが重なる領域(
図6Bの着色領域)に力fが働きやすくなる。
【0061】
また、摩擦ダンパー10eのボルト頭部61hから第1板材11に対して力fが加えられる領域が、ブッシュ65bとリング65rと第1板材11とが重なる領域であり、この面積(
図6Bの着色領域の面積)が、従来の摩擦ダンパー(例えば、
図4に示す摩擦ダンパー100)より広くなるため、摩擦ダンパー10eのボルト頭部61hから加えられる力fによる単位面積当たりの摩擦力を、従来の摩擦ダンパーよりも小さくすることができる。
【0062】
ボルト頭部61hから加えられる力fを高力ボルト61b近傍から外側に向かいやすくしつつ、ボルト頭部61hから加えられる力fによる単位面積当たりの摩擦力を小さくすることで、第1板材11の第1貫通孔11a近傍及び第2板材12の第2貫通孔12a近傍の摩耗を軽減させることができる。
【0063】
また、摩擦ダンパー10eも、摩擦ダンパー10と同様に、リング65rの外径D65rが、第2貫通孔12aの相対移動の方向の長さL12aより短く(D65r<L12a)、リング65rの内径D65raが、第2貫通孔12aの相対移動の方向の長さL12aより短いが(D65ra<L12a)、これに限られない。リング65rの外径D65rを、第2貫通孔12aの相対移動の方向の長さL12aより長くしてもよい(D65r>L12a)。外径D65rを長さL12aより長くすることで、リング65rの外径D65rが、第2貫通孔12aの相対移動の方向の長さL12aより短くした場合よりも、板厚方向(高力ボルト61b)に沿った方向において、リング65rと第2板材12とが重なる部分を広く設けることができる。これにより、第2板材12を安定的に固定させやすくなる。また、リング65rの内径D65raを、第2貫通孔12aの相対移動の方向の長さL12aより長くしてもよい(D65ra>L12a)。
【0064】
===第2実施形態の摩擦ダンパー10g===
図7は、第2実施形態の摩擦ダンパー10gを説明する図である。
図8Aは、
図7中の部分gの拡大図である。
図8Bは、
図8A中のG-G矢視図である。摩擦ダンパー10gについて、上述の摩擦ダンパー10の構成と共通する部分は符号等を同じとし、摩擦ダンパー10gの基本構成の詳細な説明は省略する。
【0065】
第1実施形態の摩擦ダンパー10、10eは、締結部材60の高力ボルト61bのボルト頭部61h側に第1板材11を設け、ナット61n側に第3板材13を設けたが、これに限られない。
図7及び
図8に示す摩擦ダンパー10gのように、締結部材60のナット61n側に第1板材11を設け、ボルト頭部61h側に第3板材13を設けてもよい。この場合、ボルト頭部61hと第3板材13との間に、皿ばね63を設けて、皿ばね63の弾発力を付与して、圧接力の大きさの安定化が図ってもよい。
【0066】
第1実施形態の摩擦ダンパー10と同様に、摩擦ダンパー10gは、柱梁架構1のH形鋼のブレース7のブレース分断片71、72の間に配置され、板材同士の摩擦力により、ブレース分断片71、72のブレース架け渡し方向への相対移動を抑制する。(
図1参照)。また、
図7及び
図8に示すように、摩擦ダンパー10gは、ブレース分断片71のウエブ71Wにボルト止めされる第1板材11と第3板材13、ブレース分断片72のウエブ72Wである第2板材12、第1板材11と第2板材とを締結する締結部材60を有する。締結部材60は、高力ボルト61b、ナット61n、皿ばね63、介装部材65を備える。円形の第1貫通孔11a及び第3貫通孔13aと、相対移動方向に沿って長い長孔である第2貫通孔12aには、串刺し状に高力ボルト61bが通されている。高力ボルト61bの先端部にはナット61nが螺着されている。
【0067】
介装部材65は、ブッシュ65b、リング65r、中間部65mを備える。ブッシュ65bは、ナット61n側に設けられている。便宜上、
図8Bに、ブッシュ65bが設けられた部分を右斜め下がりの斜線で示す。ブッシュ65bの外径D65bが、ナット61nの最小外径D61nより広径(D65b>D61n)である。
【0068】
リング65rは、ブッシュ65bより第1板材11側に設けられている。便宜上、
図8Bに、リング65rが設けられた部分を左斜め下がりの斜線で示す。リング65rの内径D65raが、ナット61nの最小外径D61nより広径であり(D65ra>D61n)、且つ、ブッシュ65bの外径D65bより狭径である(D65ra<D65b)。
【0069】
ブッシュ65b、リング65rは、一体に形成されていてもよく、別体に形成されていてもよい。ブッシュ65bとリング65rが、一体に形成されていることで、摩擦ダンパー10gを形成するための構成部材数を削減することができるため、摩擦ダンパー10gの形成過程を簡略化させやすくなる。
【0070】
中間部65mは、ブッシュ65bより第1板材11側に設けられており、リング65rの内側で、且つ、リング65r及び第1板材11と当接しない位置に設けられている。中間部65mを備えることで、第1板材11に対する介装部材65の位置を容易に特定させ、固定させやすくなるため、締結部材60による締結力を摩擦ダンパー10gに付与させやすくなる。中間部65mは、必ずしも設けなくてもよい。また、中間部65mは、ブッシュ65bと一体に形成されていてもよく、別体に形成されていてもよい。
【0071】
なお、ナット61nの最小外径D61nとは、ナット61nにおける対角線のうちの最も短い長さである。
【0072】
図8Bに示すように、摩擦ダンパー10gのナット61nから加えられる力fが特に働く領域は、摩擦ダンパー10gをナット61n側から見たときに、ブッシュ65bとリング65rとが重なる部分(
図8Bの着色領域)である。
【0073】
摩擦ダンパー10gは、介装部材65のブッシュ65bの外径が、ナット61nの最小外径D61hより広径で、リング65rの内径D65raより広径(リング65rの内径D65raがブッシュ65bの外径より狭径)であることで、ナット61nから加えられる力fを、介装部材65(ブッシュ65b、リング65r)を介して第1板材11に伝える。一方、リング65rの内径D65raが、ナット61nの最小外径D61hより広径であることで、
図8AのG-G矢視において、板厚方向(高力ボルト61bに沿った方向)において、ナット61nと重なるリング65rが設けられないため、ナット61nから加えられる力fを高力ボルト61b近傍から遠ざけた外側に向かって力が働きやすくなる。そして、
図8AのG-G矢視において、板厚方向に、ブッシュ65bとリング65rと第1板材11とが重なる領域(
図3Bの着色領域)に力fが働きやすくなる。
【0074】
また、摩擦ダンパー10gにおいて、ナット61nから第1板材11に対して力fが加えられやすい部分は、ナット61n側から見たときに、ブッシュ65bとリング65rと第1板材11とが重なる部分であるため、摩擦ダンパー10gのナット61nから第1板材11に対して力fが加えられる領域の面積(
図3Bの着色領域の面積)が、従来の摩擦ダンパー100のナット61nから力fが加えられる面積(
図4Bのクロスハッチング領域参照)より広くなる。そのため、摩擦ダンパー10gのナット61nから加えられる力fによる単位面積当たりの摩擦力が、従来の摩擦ダンパーのナットから加えられる力による単位面積当たりの摩擦力よりも小さくなる。
【0075】
ナット61nから加えられる力fを高力ボルト61b近傍から外側に向かいやすくしつつ、ナット61nから加えられる力fによる単位面積当たりの摩擦力を小さくすることで、第1板材11の第1貫通孔11a近傍及び第2板材12の第2貫通孔12a近傍の摩耗を軽減させることができる。
【0076】
なお、摩擦ダンパー10gは、板厚方向におけるボルト頭部61hが設けられた側は、皿ばね63が設けられているため、第3板材13は、ボルト頭部61hから第3板材13に対して広い範囲に力が働きやすい。また、介装部材65の貫通孔65aと高力ボルト61bとの間には隙間があるものの、その隙間が小さいほど好ましい。
【0077】
また、摩擦ダンパー10gは、リング65rの外径D65rが、第2貫通孔12aの相対移動の方向の長さL12aより短く(D65r<L12a)、リング65rの内径D65raが、第2貫通孔12aの相対移動の方向の長さL12aより短いが(D65ra<L12a)、これに限られない。リング65rの外径D65rを、第2貫通孔12aの相対移動の方向の長さL12aより長くしてもよい(D65r>L12a)。外径D65rを長さL12aより長くすることで、リング65rの外径D65rが、第2貫通孔12aの相対移動の方向の長さL12aより短くした場合よりも、板厚方向(高力ボルト61b)に沿った方向において、リング65rと第2板材12とが重なる部分を広く設けることができる。これにより、第2板材12を安定的に固定させやすくなる。また、リング65rの内径D65raを、第2貫通孔12aの相対移動の方向の長さL12aより長くしてもよい(D65ra>L12a)。
【0078】
さらに、第2実施形態の摩擦ダンパー10gは、第1板材11と第2板材12と第3板材13とを締結部材60で締結した構成であるが、第2実施形態の摩擦ダンパー10gの変形例として、上述の摩擦ダンパー10eのように、第1板材11と第2板材12とを締結部材60で締結した摩擦ダンパー(不図示)とし、第3板材13を備えない構成であってもよい。
【0079】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0080】
1 建物架構(柱梁架構、構造物)、
7 ブレース、
10、10e、10g、100 摩擦ダンパー、
11 第1板材、
11a 第1貫通孔、
12 第2板材、
12a 第2貫通孔、
13 第3板材、
13a 第3貫通孔、
60 締結部材、
61b 高力ボルト(ボルト)、
61h ボルト頭部(頭部)、
61n ナット、
63 皿ばね、
65 介装部材、
65a 貫通孔、
65b ブッシュ、
65r リング、
65m 中間部、
71、72 ブレース分断片