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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162481
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】締結構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 43/00 20060101AFI20241114BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20241114BHJP
   F16B 1/02 20060101ALI20241114BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
F16B43/00 Z
F16B5/02 U
F16B1/02 M
F16B5/02 E
E04B1/58 509E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078020
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内海 良和
【テーマコード(参考)】
2E125
3J001
3J034
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AA13
2E125AA33
2E125AA58
2E125AB12
2E125AC14
2E125AG03
2E125AG12
2E125BE10
2E125CA05
2E125CA14
2E125EB02
2E125EB04
3J001FA02
3J001GA02
3J001GB01
3J001HA02
3J001JA10
3J001KA21
3J001KB04
3J034AA01
(57)【要約】
【課題】摩擦力を向上させ、より強固な締結構造とする技術を提供する。
【解決手段】第1板材と第2板材とを締結部材で締結する締結構造であって、締結部材は、第1板材と第2板材の一方の側に頭部を有し、第1板材の第1貫通孔及び第2板材の第2貫通孔を貫通するボルトと、第1板材と第2板材の他方の側からボルトに螺合するナットと、頭部とナットの一方と第1板材との間に介装された介装部材と、を備え、第2貫通孔の最大孔径が、第1貫通孔の径より長く、介装部材は、頭部とナットの一方の側に設けられたブッシュと、第1板材の側に設けられたリングを備え、ブッシュの外径は、頭部又はナットの最小外径より広径であり、リングの内径は、頭部又はナットの最小外径より広径であり、且つ、ブッシュの外径より狭径であることを特徴とする締結構造である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1板材と第2板材とを締結部材で締結する締結構造であって、
前記締結部材は、
前記第1板材と前記第2板材の一方の側に頭部を有し、前記第1板材の第1貫通孔及び前記第2板材の第2貫通孔を貫通するボルトと、
前記第1板材と前記第2板材の他方の側から前記ボルトに螺合するナットと、
前記頭部と前記ナットの一方と前記第1板材との間に介装された介装部材と、を備え、
前記第2貫通孔の最大孔径が、前記第1貫通孔の径より長く、
前記介装部材は、前記頭部と前記ナットの一方の側に設けられたブッシュと、前記第1板材の側に設けられたリングを備え、
前記ブッシュの外径は、前記頭部と前記ナットの一方の最小外径より広径であり、
前記リングの内径は、前記頭部と前記ナットの一方の最小外径より広径であり、且つ、前記ブッシュの外径より狭径である
ことを特徴とする締結構造。
【請求項2】
請求項1に記載の締結構造であって、
前記頭部と前記ナットの他方と前記第2板材との間に他の板材を有し、
前記ボルトは、前記第1貫通孔、前記第2貫通孔、及び前記他の板材の貫通孔を貫通することを特徴とする締結構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の締結構造であって、
前記ブッシュと前記リングとが一体に形成されていることを特徴とする締結構造。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の締結構造であって、
前記リングの外径は、前記第2貫通孔の最大孔径より大きいことを特徴とする締結構造。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の締結構造であって、
前記リングの内径は、前記第2貫通孔の最大孔径より大きいことを特徴とする締結構造。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の締結構造であって、
前記ブッシュは、前記第1板材の側に突出して、前記リングの内側に貫入する突出部を備え、
前記突出部の外径は、前記リングの内径より狭径であることを特徴とする締結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、建物架構は、柱,梁、ブレース、床スラブのデッキプレート等の各種鉄骨部材を接合して構築される。これら鉄骨部材は溶接やボルトを介して接合される。例えば、特許文献1には、接合しようとする2つの板材を締付け力により圧着して固定する接合構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-42827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような接合構造では、ボルトの締め付け力が局所的に加えられてしまい、所望の摩擦力が得られない恐れがある。そのため、摩擦力を向上させ、より強固な締結構造とすることが望まれている。
【0005】
本発明は、摩擦力を向上させ、より強固な締結構造とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明は、第1板材と第2板材とを締結部材で締結する締結構造であって、前記締結部材は、前記第1板材と前記第2板材の一方の側に頭部を有し、前記第1板材の第1貫通孔及び前記第2板材の第2貫通孔を貫通するボルトと、前記第1板材と前記第2板材の他方の側から前記ボルトに螺合するナットと、前記頭部と前記ナットの一方と前記第1板材との間に介装された介装部材と、を備え、前記第2貫通孔の最大孔径が、前記第1貫通孔の径より長く、前記介装部材は、前記頭部と前記ナットの一方の側に設けられたブッシュと、前記第1板材の側に設けられたリングを備え、前記ブッシュの外径は、前記頭部と前記ナットの一方の最小外径より広径であり、前記リングの内径は、前記頭部と前記ナットの一方の最小外径より広径であり、且つ、前記ブッシュの外径より狭径であることを特徴とする締結構造である。
本発明の他の特徴については、本明細書の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、摩擦力を向上させ、より強固な締結構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の締結構造10が設けられた建物架構1の概略立面図である。
図2図1中のA-A矢視図である。
図3図2中の部分bの拡大図である。
図4図3中のB-B矢視図である。
図5図5Aは、従来の締結構造100を説明する図である。図5Bは、図5A中のE-E矢視図である。
図6】第2実施形態の締結構造10dを説明する図である。
図7図6中の部分dの拡大図である。
図8図7中のD-D矢視図である。
図9】本実施形態の変形例を説明する図である。
図10】第3実施形態の変形例の締結構造10hを説明する図である。
図11図10中の部分hの拡大図である。
図12図11中のH-H矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
(態様1)
第1板材と第2板材とを締結部材で締結する締結構造であって、前記締結部材は、前記第1板材と前記第2板材の一方の側に頭部を有し、前記第1板材の第1貫通孔及び前記第2板材の第2貫通孔を貫通するボルトと、前記第1板材と前記第2板材の他方の側から前記ボルトに螺合するナットと、前記頭部と前記ナットの一方と前記第1板材との間に介装された介装部材と、を備え、前記第2貫通孔の最大孔径が、前記第1貫通孔の径より長く、前記介装部材は、前記頭部と前記ナットの一方の側に設けられたブッシュと、前記第1板材の側に設けられたリングを備え、前記ブッシュの外径は、前記頭部と前記ナットの一方の最小外径より広径であり、前記リングの内径は、前記頭部と前記ナットの一方の最小外径より広径であり、且つ、前記ブッシュの外径より狭径であることを特徴とする締結構造である。
【0010】
態様1の締結構造によれば、頭部とナットの一方の最小外径より広径の内径を有するリングによって、ボルトから伝わる力をボルト近傍よりも外側に伝えつつ、ボルトから第1板材に伝わる力の面圧を下げることができるため、第1板材と第2板材との間の摩擦係数を上げやすくなり、摩擦力を向上させ、より強固な締結構造とすることができる。
【0011】
(態様2)
態様1の締結構造であって、前記頭部と前記ナットの他方と前記第2板材との間に他の板材を有し、前記ボルトは、前記第1貫通孔、前記第2貫通孔、及び前記他の板材の貫通孔を貫通することが望ましい。
【0012】
態様2の締結構造によれば、ボルトから伝わる力をボルト近傍よりも外側に伝えつつ、第1板材と第2板材との間の摩擦力を向上させ、より強固な締結構造とすることができる。
【0013】
(態様3)
態様1又は2の締結構造であって、前記ブッシュと前記リングとが一体に形成されていることが望ましい。
【0014】
態様3の締結構造によれば、ボルトから伝わる力をボルト近傍よりも外側に伝え、第1板材と第2板材との間の摩擦力を上げつつ、締結構造の構成部材数を削減することで、締結構造の形成過程を簡略化させやすくなる。
【0015】
(態様4)
態様1~3のいずれかの締結構造であって、前記リングの外径は、前記第2貫通孔の最大孔径より大きいことが望ましい。
【0016】
態様4の締結構造によれば、リングの外径を第2貫通孔の最大孔径より短くした場合よりも、ボルトに沿った方向において、リングと第2板材とが重なった部分を広く設けることができるため、第2板材を安定的に固定させやすくなる。
【0017】
(態様5)
態様1~4のいずれかの締結構造であって、前記リングの内径は、前記第2貫通孔の最大孔径より大きいことが望ましい。
【0018】
態様5の締結構造によれば、ボルトから伝わる力をボルト近傍よりも外側に伝えつつ、第1板材と第2板材との間の摩擦力を向上させ、より強固な締結構造とすることができる。
【0019】
(態様6)
態様1~5のいずれかの締結構造であって、前記ブッシュは、前記第1板材の側に突出して、前記リングの内側に貫入する突出部を備え、前記突出部の外径は、前記リングの内径より狭径であることが望ましい。
【0020】
態様6の締結構造によれば、突出部によって、ブッシュ及び介装部材の位置を容易に合わせやすくなる。
【0021】
<<<本実施形態>>>
===第1実施形態の締結構造10===
図1は、第1実施形態の締結構造10が設けられた建物架構1の概略立面図である。図2は、図1中のA-A矢視図である。図3は、図2中の部分bの拡大図である。図4は、図3中のB-B矢視図である。
【0022】
本発明の締結構造は、柱,梁、ブレース、床スラブのデッキプレート等の各種鉄骨部材である複数枚の板材の接合に適用することができる。以下、建物架構1としての柱梁架構1のH形鋼のブレース7に組み込まれた形態の締結構造10について説明する。なお、締結構造10が、摩擦ダンパーであってもよい。
【0023】
図1に示すように、ブレース7は、適宜位置で互いに所定間隔を隔てて分断されて、一対のブレース分断片71、72が形成されている。締結構造10は、ブレース7のブレース分断片71、72の間に配置されており、地震、風等の外力が発生した際でも、板材同士の摩擦力により、ブレース分断片71、72の締結構造を維持する。
【0024】
図2等に示すように、締結構造10は、一方のブレース分断片71のウエブ71Wにボルト止めされる第1板材11と第3板材13、他方のブレース分断片72のウエブ72Wがそのまま流用される第2板材12、第1板材11と第2板材12と第3板材13とを締結する締結部材60を有する。締結部材60は、高力ボルト61b、ナット61n、介装部材65hを備える。
【0025】
第1板材11には第1貫通孔11a、第2板材12には第2貫通孔12a、第3板材(他の板材)13には第3貫通孔(他の板材の貫通孔)13aがそれぞれ板厚方向に貫通形成されているとともに、これらの貫通孔11a、12a、13aには、串刺し状に高力ボルト61bが通されている。第1貫通孔11a及び第3貫通孔13aは円形であり、第2貫通孔12aは長孔(楕円形)である。図3等に示すように、締結構造10は、第1板材11の側(第1板材11と第2板材12の一方の側)に高力ボルト61bのボルト頭部61hが設けられており、第2板材12の側(第1板材11と第2板材12の他方の側)から高力ボルト61bに螺合するナット61nが設けられている。
【0026】
介装部材65hは、高力ボルト61bのボルト頭部61hと第1板材11との間に設けられたリング状(円形)の部材である。介装部材65hは、貫通孔65ha、ブッシュ65hb、リング65hrを備える。
【0027】
貫通孔65haは、介装部材65hの板厚方向に貫通形成されており、各板材11、12、13の貫通孔11a、12a、13aと一緒に、高力ボルト61bが通されている。なお、介装部材65hの貫通孔65haと高力ボルト61bとの間には隙間があるものの、その隙間が小さいほど好ましい。
【0028】
ブッシュ65hbは、ボルト頭部61h側に設けられている。便宜上、図4に、ブッシュ65hbが設けられた部分を右斜め下がりの斜線で示す。ブッシュ65hbは、第1板材11側に突出して、リング65hrの内側に貫入する突出部65hbmを備えることが好ましく、この突出部65hbmの外径が、リング65hrの内径D65hraより狭径であることがより好ましい。このような突出部65hbmを備えるブッシュ65hbとすることで、ブッシュ65hb及び介装部材65hの位置を容易に合わせやすくなる。なお、ブッシュ65hbの突出部65hbmは、ブッシュ65hbと一体に形成されていてもよく、別体に形成されていてもよい。
【0029】
リング65hrは、ブッシュ65hbより第1板材11側に設けられている。便宜上、図4に、リング65hrが設けられた部分を左斜め下がりの斜線で示す。
【0030】
ブッシュ65hb、リング65hrは、一体に形成されていてもよく、別体に形成されていてもよい。ブッシュ65hbとリング65hrが、一体に形成されていることで、締結構造10を形成するための構成部材数を削減することができるため、締結構造10の形成過程を簡略化させやすくなる。
【0031】
高力ボルト61bの先端部には、ナット61nが螺着されており、高力ボルト61b及びナット61nによって、第2板材12が、第1板材11と第3板材13とに挟まれた状態で締結され、圧接力が板厚方向に付与される。この圧接力により、第1板材11と第2板材12、及び第2板材12と第3板材13とがそれぞれ当接され、圧接力に応じた摩擦力を生じる。この摩擦力が大きいほど、締結構造10のすべり耐力が大きくなる。
【0032】
摩擦力Fは、F=μ×Nで求められる。
μは摩擦係数、Nは垂直抗力である。
摩擦係数μは、部材の材質や部材に加えられる垂直抗力の面圧(単位面積当たりの力)によって変化することが知られている(「摩擦のおはなし」 田中 久一郎 著 日本規格協会 発行 第1版 参照)。締結構造10では、板材に加えられる面圧が高いほど摩擦係数μが小さくなり、板材に加えられる面圧が低いほど摩擦係数μが大きくなる。
【0033】
図5Aは、従来の締結構造100を説明する図である。図5Bは、図5A中のE-E矢視図である。図5の締結構造100の各部材について、上述の締結構造10の構成と共通する部分は符号等を同じとし、締結構造100の基本構成の詳細な説明は省略する。
【0034】
一般的に、圧接力等の力は最短距離を経て伝わる。つまり、ボルト頭部61hから加えられた力fhは、第1板材11に対して垂直方向に伝わりやすい。そのため、図5Bに示すように、高力ボルト61b(締結部材60)によって生じる摩擦力は、各板材11、12、13の高力ボルト61b近傍で伝わりやすく、特に、ボルト頭部61hと板厚方向に重なる領域で伝わりやすい。そして、ボルト頭部61hから第1板材11に対する力fhの面圧が高くなる。図5Bにボルト頭部61hから加えられる力fhが特に働く領域をクロスハッチングで示す。面圧が高いほど摩擦係数μが小さくなり、摩擦力(すべり耐力)が低下してしまう恐れがあった。
【0035】
これに対し、締結構造10は、図3等に示すように、第2貫通孔12aの最大孔径(D12a)が、第1貫通孔11aの径D11aより長い(D12a>D11a)。そして、ブッシュ65hbの外径D65hbが、ボルト頭部61hの最小外径D61hより広径(D65hb>D61h)であり、リング65hrの内径D65hraが、ボルト頭部61hの最小外径D61hより広径であり(D65hra>D61h)、且つ、リング65hrの内径D65hraが、ブッシュ65hbの外径D65hbより狭径である(D65hra<D65hb)。
【0036】
なお、ボルト頭部61hの最小外径D61hとは、ボルト頭部61hにおける対角線のうちの最も短い長さである。
【0037】
図4に本実施形態の締結構造10のボルト頭部61hから加えられる力fhが特に働く領域を着色領域で示す。図4に示すように、締結構造10のボルト頭部61hから加えられる力fhが特に働く領域は、締結構造10をボルト頭部61h側から見たときに、ブッシュ65hbとリング65hrとが重なる部分である。
【0038】
締結構造10は、介装部材65hのブッシュ65hbの外径D65hbが、ボルト頭部61hの最小外径D61hより広径であり(D65hb>D61h)、ブッシュ65hbの外径D65hbが、リング65hrの内径D65hraより広径(D65hra<D65hb)であることで、ボルト頭部61hから加えられる力fhを、介装部材65h(ブッシュ65hb、リング65hr)を介して第1板材11に伝える。一方、リング65hrの内径D65hraが、ボルト頭部61hの最小外径D61hより広径であることで(D65hra>D61h)、図3のB-B矢視における、板厚方向(高力ボルト61bに沿った方向)において、ボルト頭部61hと重なるリング65hrが設けられないため、ボルト頭部61hから加えられる力fhを高力ボルト61b近傍から遠ざけた外側に向かって力が働きやすくなる。そして、図3のB-B矢視において、板厚方向に、ブッシュ65hbとリング65hrと第1板材11とが重なる領域(図4の着色領域)に力fhが働きやすくなる。
【0039】
また、締結構造10において、ボルト頭部61hから第1板材11に対して力fhが加えられやすい部分は、ボルト頭部61h側から見たときに、第1板材11とブッシュ65hbとリング65hrとが重なる部分であるため、締結構造10のボルト頭部61hから第1板材11に対して力fhが加えられる領域の面積(図4の着色領域の面積)が、従来の締結構造100のボルト頭部61hから力fhが加えられる面積(図5Bのクロスハッチング領域)より広くなる。そして、本実施形態の締結構造10のボルト頭部61hから第1板材11に加える力fhの面圧が、従来の締結構造100のボルト頭部61hから加えられる力fhの面圧よりも小さくなる。そのため、本実施形態の締結構造10の第1板材11と第2板材12との間の摩擦係数μは、従来の締結構造100の第1板材11と第2板材12との間の摩擦係数μよりも大きくなる。
【0040】
これによって、本実施形態の締結構造10は、第1板材11と第2板材12との間の摩擦力(すべり耐力)を向上させて、締結構造10をより強固な締結構造とすることができる。
【0041】
なお、介装部材65hの貫通孔65haと高力ボルト61bとの間には隙間があるものの、その隙間が小さいほど好ましい。
【0042】
また、図3等に示すように、リング65hrの外径D65hrが、第2貫通孔12aの最大孔径D12aより長いことが好ましい(D65hr>D12a)。さらに、リング65hrの内径D65hraが、第2貫通孔12aの最大孔径D12aより長いことが好ましい(D65hra>D12a)。これにより、第1板材11と第2板材12との間の摩擦力(すべり耐力)を向上させて、締結構造10をより強固な締結構造とすることができる。また、リング65hrの外径D65hrを、第2貫通孔12aの最大孔径D12aより短くした場合よりも、高力ボルト61bに沿った方向において、リング65hrと第2板材12とが重なる部分を広く設けることができるため、第2板材12を安定的に固定させやすくなる。
【0043】
===第2実施形態の締結構造10d===
図6は、第2実施形態の締結構造10dを説明する図である。図7は、図6中の部分dの拡大図である。図8は、図7中のD-D矢視図である。締結構造10dについて、上述の締結構造10の構成と共通する部分は符号等を同じとし、締結構造10dの基本構成の詳細な説明は省略する。
【0044】
締結構造10dは、第3板材(他の板材)21と第2板材22と第1板材23と、これらの板材21、22、23を締結する締結部材60を有する。締結構造10dは、高力ボルト61bに沿った方向(板厚方向)に沿って、第3板材21、第2板材22、第1板材23の順に配置し、締結部材60で締結している。締結部材60は、高力ボルト61b、ナット61n、介装部材65nを備える。
【0045】
第3板材21には第3貫通孔(他の板材の貫通孔)21a、第2板材22には第2貫通孔22a、第1板材23には第1貫通孔23aがそれぞれ板厚方向に貫通形成されているとともに、これらの貫通孔21a、22a、23aには、串刺し状に高力ボルト61bが通されている。第3貫通孔21a及び第1貫通孔23aは円形であり、第2貫通孔22aは長孔(楕円形)である。図7等に示すように、第3板材21の側(第3板材21と第2板材22の一方の側である第3板材21側)に高力ボルト61bのボルト頭部61hが設けられ、第1板材23の側(第3板材21と第2板材22の他方の側)から高力ボルト61bに螺合するナット61nが設けられている。
【0046】
介装部材65nは、第1板材23とナット61nとの間に介装されたリング状(円形)の部材であり、貫通孔65na、ブッシュ65nb、リング65nrを備える。
【0047】
貫通孔65naは、介装部材65nの板厚方向に貫通形成されており、各板材11、12、13の貫通孔11a、12a、13aと一緒に、高力ボルト61bが通されている。なお、介装部材65nの貫通孔65naと高力ボルト61bとの間には隙間があるものの、その隙間が小さいほど好ましい。
【0048】
ブッシュ65nbは、ナット61n側に設けられている。便宜上、図8に、ブッシュ65nbが設けられた部分を右斜め下がりの斜線で示す。ブッシュ65nbは、第1板材23側に突出して、リング65nrの内側に貫入する突出部65nbmを備えることが好ましく、この突出部65nbmの外径が、リング65nrの内径D65nraより狭径であることがより好ましい。このような突出部65nbmを備えるブッシュ65nbとすることで、ブッシュ65nb及び介装部材65nの位置を容易に合わせやすくなる。なお、ブッシュ65nbの突出部65nbmは、ブッシュ65nbと一体に形成されていてもよく、別体に形成されていてもよい。
【0049】
リング65nrは、ブッシュ65nbより第1板材23側に設けられている。便宜上、図8に、リング65nrが設けられた部分を左斜め下がりの斜線で示す。
【0050】
ブッシュ65nb、リング65nrは、一体に形成されていてもよく、別体に形成されていてもよい。ブッシュ65nbとリング65nrが、一体に形成されていることで、締結構造10dを形成するための構成部材数を削減することができるため、締結構造10dの形成過程を簡略化させやすくなる。
【0051】
締結構造10dは、図7等に示すように、第2貫通孔22aの最大孔径(D22a)が、第1貫通孔23aの径D23aより長い(D22a>D23a)。そして、ブッシュ65nbの外径D65nbが、ナット61nの最小外径D61nより広径(D65nb>D61n)であり、リング65nrの内径D65nraが、ナット61nの最小外径D61nより広径であり(D65nra>D61n)、且つ、リング65nrの内径D65nraが、ブッシュ65nbの外径D65nbより狭径である(D65nra<D65nb)。
【0052】
なお、ナット61nの最小外径D61nとは、ナット61nにおける対角線のうちの最も短い長さである。
【0053】
図8に締結構造10dのナット61nから加えられる力fnが特に働く領域を着色領域で示す。図8に示すように、締結構造10dのナット61nから加えられる力fnが特に働く領域は、締結構造10dをナット61n側から見たときに、ブッシュ65nbとリング65nrとが重なる部分である。
【0054】
締結構造10dは、介装部材65nのブッシュ65nbの外径D65nbが、ナット61nの最小外径D61nより広径であり(D65nb>D61n)、ブッシュ65nbの外径D65nbが、リング65nrの内径D65nraより広径(D65nra<D65nb)であることで、ナット61nから加えられる力fnを、介装部材65n(ブッシュ65nb、リング65nr)を介して第1板材23に伝える。一方、リング65nrの内径D65nraが、ナット61nの最小外径D61nより広径であることで(D65nra>D61n)、図7のD-D矢視における、板厚方向(高力ボルト61bに沿った方向)において、ナット61nと重なるリング65nrが設けられないため、ナット61nから加えられる力fnを高力ボルト61b近傍から遠ざけた外側に向かって力が働きやすくなる。そして、図7のD-D矢視において、板厚方向に、ブッシュ65nbとリング65nrと第1板材23とが重なる領域(図8の着色領域)に力fnが働きやすくなる。
【0055】
また、締結構造10dにおいて、ナット61nから第1板材23に対して力fnが加えられやすい部分は、ナット61n側から見たときに、第1板材23とブッシュ65nbとリング65nrとが重なる部分であるため、締結構造10dのナット61nから第1板材23に対して力fnが加えられる領域の面積(図8の着色領域の面積)が、従来の締結構造(例えば、図5の締結構造100)のナット61nから力が加えられる面積より広くなる。そして、締結構造10dのナット61nから第1板材23に加える力fnの面圧が、従来の締結構造10d0のナット61nから加えられる力fnの面圧よりも小さくなる。そのため、締結構造10dの第1板材23と第2板材22との間の摩擦係数μは、従来の締結構造の板材間の摩擦係数μよりも大きくなる。
【0056】
これによって、締結構造10dは、第1板材23と第2板材22との間の摩擦力(すべり耐力)を向上させて、締結構造10dをより強固な締結構造とすることができる。
【0057】
なお、介装部材65nの貫通孔65naと高力ボルト61bとの間には隙間があるものの、その隙間が小さいほど好ましい。
【0058】
また、図7等に示すように、リング65nrの外径D65nrが、第2貫通孔22aの最大孔径D22aより長いことが好ましい(D65nr>D22a)。さらに、リング65nrの内径D65nraが、第2貫通孔22aの最大孔径D22aより長いことが好ましい(D65nra>D22a)。これにより、第1板材23と第2板材22との間の摩擦力(すべり耐力)を向上させて、締結構造10dをより強固な締結構造とすることができる。また、リング65nrの外径D65nrを、第2貫通孔22aの最大孔径D22aより短くした場合よりも、高力ボルト61bに沿った方向において、リング65nrと第2板材22とが重なる部分を広く設けることができるため、第2板材22を安定的に固定させやすくなる。
【0059】
また、図9に示すように、第1板材11と第2板材12と第3板材13とを備えた締結構造において、第1板材11とボルト頭部61hとの間に介装部材65hを備え、且つ、第3板材13とナット61nとの間に介装部材65nを備える構成であってもよい。図9は、本実施形態の変形例を説明する図である。これにより、第1板材11と第2板材12と第3板材13とを締結する締結構造をより強固なものとすることができる。
【0060】
===第3実施形態の締結構造10h===
図10は、第3実施形態の変形例の締結構造10hを説明する図である。図11は、図10中の部分hの拡大図である。図12は、図11中のH-H矢視図である。締結構造10hについて、上述の締結構造10の構成と共通する部分は符号等を同じとし、締結構造10hの基本構成の詳細な説明は省略する。
【0061】
上述の締結構造10は、第1板材11と第2板材12と第3板材13とを締結部材60で締結した構成としたが、図10~12に示すように、第1板材31と第2板材32とを締結部材60で締結した締結構造10hとし、他の板材を備えない構成でもよい。
【0062】
締結構造10hは、第1板材31と第2板材32と、これらの板材31、32を締結する締結部材60を有する。締結構造10hは、高力ボルト61bに沿った方向(板厚方向)に沿って、第1板材31、第2板材32の順に配置し、締結部材60で締結している。締結部材60は、高力ボルト61b、ナット61n、介装部材65hを備える。
【0063】
第1板材31には第1貫通孔31a、第2板材32には第2貫通孔32aがそれぞれ板厚方向に貫通形成されているとともに、これらの貫通孔31a、32aには、串刺し状に高力ボルト61bが通されている。第1貫通孔31aは円形であり、第2貫通孔32aは長孔(楕円形)である。図11等に示すように、第1板材31側(第1板材11と第2板材12の一方の側)に高力ボルト61bのボルト頭部61hが設けられ、第2板材32側(第1板材11と第2板材12の他方の側)から高力ボルト61bに螺合するナット61nが設けられている。
【0064】
介装部材65hは、上述の締結構造10の介装部材65hと同様の構成であり、第1板材31とボルト頭部61hとの間に介装されたリング状(円形)の部材で、貫通孔65ha、ブッシュ65hb、リング65hrを備える。
【0065】
ブッシュ65hbは、ボルト頭部61h側に設けられている。便宜上、図11に、ブッシュ65hbが設けられた部分を右斜め下がりの斜線で示す。ブッシュ65hbは、第1板材31側に突出して、リング65hrの内側に貫入する突出部65hbmを備えることが好ましく、この突出部65hbmの外径が、リング65hrの内径D65hraより狭径であることがより好ましい。このような突出部65hbmを備えるブッシュ65hbとすることで、ブッシュ65hb及び介装部材65hの位置を容易に合わせやすくなる。なお、ブッシュ65hbの突出部65hbmは、ブッシュ65hbと一体に形成されていてもよく、別体に形成されていてもよい。
【0066】
リング65hrは、ブッシュ65hbより第1板材31側に設けられている。便宜上、図11に、リング65hrが設けられた部分を左斜め下がりの斜線で示す。
【0067】
ブッシュ65hb、リング65hrは、一体に形成されていてもよく、別体に形成されていてもよい。ブッシュ65hbとリング65hrが、一体に形成されていることで、締結構造10hを形成するための構成部材数を削減することができるため、締結構造10hの形成過程を簡略化させやすくなる。
【0068】
締結構造10hは、図11等に示すように、第2貫通孔32aの最大孔径(D32a)が、第1貫通孔31aの径D31aより長い(D32a>D31a)。そして、ブッシュ65hbの外径D65hbが、ボルト頭部61hの最小外径D61hより広径(D65hb>D61h)である。また、リング65hrの内径D65hraがボルト頭部61hの最小外径D61hより広径であり(D65hra>D61h)、且つ、リング65hrの内径D65hraがブッシュ65hbの外径D65hbより狭径である(D65hra<D65hb)。
【0069】
図12に、締結構造10hのボルト頭部61hから加えられる力fhが特に働く領域を灰色の着色で示す。締結構造10hは、介装部材65hのブッシュ65hbの外径が、ボルト頭部61hの最小外径D61hより広径で、リング65hrの内径D65hraより広径(リング65hrの内径D65hraがブッシュ65hbの外径より狭径)であることで、ボルト頭部61hから加えられる力fhを、介装部材65h(ブッシュ65hb、リング65hr)を介して第1板材31に伝える。一方、リング65hrの内径D65hraが、ボルト頭部61hの最小外径D61hより広径であることで、図11のH-H矢視における、板厚方向(高力ボルト61bに沿った方向)において、ボルト頭部61hと重なるリング65hrが設けられないため、ボルト頭部61hから加えられる力fhが高力ボルト61b近傍から遠ざけた外側に向かって働きやすくなる。そして、図11のH-H矢視において、板厚方向にブッシュ65hbとリング65hrと第1板材31とが重なる領域(図12の着色領域)に力fhが働きやすくなる。
【0070】
また、締結構造10hのボルト頭部61hから第1板材31に対して力fhが加えられる領域が、ブッシュ65hbとリング65hrと第1板材31とが重なる領域であり、この面積(図12の着色領域の面積)が、従来の締結構造(例えば、図5に示す締結構造100)より広くなるため、締結構造10hのボルト頭部61hから加えられる力fhの面圧が従来の締結構造の締結構造のナットから加えられる力の面圧より小さくなる。そのため、締結構造10hの第1板材31と第2板材32との間の摩擦係数μは、従来の締結構造の板材間の摩擦係数μよりも大きくなる。
【0071】
これにより、締結構造10hは、第1板材31と第2板材32との間の摩擦力(すべり耐力)を向上させて、締結構造10をより強固な締結構造とすることができる。
【0072】
図11等に示すように、リング65hrの外径D65hrが、第2貫通孔32aの最大孔径D32aより長いことが好ましい(D65hr>D32a)。さらに、リング65hrの内径D65hraが、第2貫通孔32aの最大孔径D32aより長いことが好ましい(D65hra>D32a)。これにより、第1板材31と第2板材32との間の摩擦力(すべり耐力)を向上させて、締結構造10hをより強固な締結構造とすることができる。また、リング65hrの外径D65hrを、第2貫通孔32aの最大孔径D32aより短くした場合よりも、高力ボルト61bに沿った方向において、リング65hrと第2板材32とが重なる部分を広く設けることができるため、第2板材32を安定的に固定させやすくなる。
【0073】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0074】
1 建物架構(柱梁架構、構造物)、
7 ブレース、
10、10d、10h、100 締結構造、
11 第1板材、
11a 第1貫通孔、
12 第2板材、
12a 第2貫通孔、
13 第3板材(他の板材)、
13a 第3貫通孔(他の板材の貫通孔)、
21 第3板材(他の板材)、
21a 第3貫通孔(他の板材の貫通孔)、
22 第2板材、
22a 第2貫通孔、
23 第1板材、
23a 第1貫通孔、
31 第1板材、
31a 第1貫通孔、
32 第2板材、
32a 第2貫通孔、
60 締結部材、
61b 高力ボルト(ボルト)、
61h ボルト頭部(頭部)、
61n ナット、
65h 介装部材、
65ha 貫通孔、
65hb ブッシュ、
65hbm 突出部、
65hr リング、
65n 介装部材、
65na 貫通孔、
65nb ブッシュ、
65nbm 突出部、
65nr リング、
71、72 ブレース分断片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12