(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162482
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】締結構造
(51)【国際特許分類】
F16B 43/00 20060101AFI20241114BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20241114BHJP
F16B 1/02 20060101ALI20241114BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
F16B43/00 Z
F16B5/02 U
F16B5/02 E
F16B1/02 M
E04B1/58 509E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078021
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内海 良和
【テーマコード(参考)】
2E125
3J001
3J034
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AA13
2E125AA33
2E125AA58
2E125AB12
2E125AC14
2E125AG03
2E125AG12
2E125BE10
2E125CA05
2E125CA14
2E125EB04
3J001FA02
3J001GA02
3J001GB01
3J001HA02
3J001JA10
3J001KA21
3J001KB04
3J034AA01
(57)【要約】
【課題】摩擦力の低下を軽減させつつ、作業性を向上させる締結構造の技術を提供する。
【解決手段】第1板材と第2板材とを締結部材で締結する締結構造であって、締結部材は、第1板材と第2板材の一方の側に頭部を有し、第1板材の第1貫通孔及び第2板材の第2貫通孔を貫通するボルトと、第1板材と第2板材の他方の側からボルトに螺合するナットと、頭部とナットの一方と第1板材との間に介装された介装部材と、を備え、頭部とナットの一方の最小外径は、第1貫通孔より狭径であり、介装部材の外径は、第1貫通孔より広径であることを特徴とする締結構造である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1板材と第2板材とを締結部材で締結する締結構造であって、
前記締結部材は、
前記第1板材と前記第2板材の一方の側に頭部を有し、前記第1板材の第1貫通孔及び前記第2板材の第2貫通孔を貫通するボルトと、
前記第1板材と前記第2板材の他方の側から前記ボルトに螺合するナットと、
前記頭部と前記ナットの一方と前記第1板材との間に介装された介装部材と、を備え、
前記頭部と前記ナットの一方の最小外径は、前記第1貫通孔より狭径であり、
前記介装部材の外径は、前記第1貫通孔より広径である
ことを特徴とする締結構造。
【請求項2】
請求項1に記載の締結構造であって、
前記頭部と前記ナットの他方と前記第2板材との間に他の板材を有し、
前記ボルトは、前記第1貫通孔、前記第2貫通孔、及び前記他の板材の貫通孔を貫通することを特徴とする締結構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の締結構造であって、
前記介装部材は、前記第1貫通孔に貫入する貫入部を備え、
前記貫入部の外径は、前記第1貫通孔より狭径であることを特徴とする締結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、建物架構は、柱,梁、ブレース、床スラブのデッキプレート等の各種鉄骨部材を接合して構築される。これら鉄骨部材は溶接やボルトを介して接合される。例えば、特許文献1には、接合しようとする2つの板材を締付け力により圧着して固定する接合構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような接合構造において、施工現場において、位置合わせを容易に行う等の作業性の向上のために、板材に過大孔(長孔)を設けることが望ましい。しかし、過大孔を設けた板材を用いると、ボルトの締め付け力が局所的に加えられてしまい、所望の摩擦力を得られなくなってしまう。そのため、摩擦力の低下を軽減させつつ、作業性を向上させる締結構造が望まれている。
【0005】
本発明は、摩擦力の低下を軽減させつつ、作業性を向上させる締結構造の技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明は、第1板材と第2板材とを締結部材で締結する締結構造であって、前記締結部材は、前記第1板材と前記第2板材の一方の側に頭部を有し、前記第1板材の第1貫通孔及び前記第2板材の第2貫通孔を貫通するボルトと、前記第1板材と前記第2板材の他方の側から前記ボルトに螺合するナットと、前記頭部と前記ナットの一方と前記第1板材との間に介装された介装部材と、を備え、前記頭部と前記ナットの一方の最小外径は、前記第1貫通孔より狭径であり、前記介装部材の外径は、前記第1貫通孔より広径であることを特徴とする締結構造である。
本発明の他の特徴については、本明細書の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、摩擦力の低下を軽減させつつ、作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の締結構造10が設けられた建物架構1の概略立面図である。
【
図5】第2実施形態の締結構造10gを説明する図である。
【
図8】第3実施形態の締結構造10hを説明する図である。
【
図10】第4実施形態の締結構造10jを説明する図である。
【
図12】第5実施形態の締結構造10kを説明する図である。
【
図14】第4実施形態の変形例を説明する図である。
【
図15】第6実施形態の締結構造10mを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
(態様1)
第1板材と第2板材とを締結部材で締結する締結構造であって、前記締結部材は、前記第1板材と前記第2板材の一方の側に頭部を有し、前記第1板材の第1貫通孔及び前記第2板材の第2貫通孔を貫通するボルトと、前記第1板材と前記第2板材の他方の側から前記ボルトに螺合するナットと、前記頭部と前記ナットの一方と前記第1板材との間に介装された介装部材と、を備え、前記頭部と前記ナットの一方の最小外径は、前記第1貫通孔より狭径であり、前記介装部材の外径は、前記第1貫通孔より広径であることを特徴とする締結構造である。
【0010】
態様1の締結構造によれば、介装部材によって、ボルトから伝わる力をボルト近傍よりも外側に伝え、ボルトから第1板材に伝わる力の面圧を下げることで、第1板材と第2板材との間の摩擦係数を上げやすくなり、摩擦力の低下を軽減させつつ、頭部の最小外径より大きい第1貫通孔を備える第1板材によって作業性を向上させることができる。
【0011】
(態様2)
態様1の締結構造であって、前記頭部と前記ナットの他方と前記第2板材との間に他の板材を有し、前記ボルトは、前記第1貫通孔、前記第2貫通孔、及び前記他の板材の貫通孔を貫通することが望ましい。
【0012】
態様2の締結構造によれば、介装部材によって、ボルトから伝わる力をボルト近傍よりも外側に伝えて、摩擦力の低下を軽減させつつ、作業性を向上させることができる。
【0013】
(態様3)
態様1又は2の締結構造であって、前記介装部材は、前記第1貫通孔に貫入する貫入部を備え、前記貫入部の外径は、前記第1貫通孔より狭径であることが望ましい。
【0014】
態様3の締結構造によれば、貫入部を備えた介装部材によって、ボルトから伝わる力をボルト近傍よりも外側に伝えて、摩擦力の低下を軽減させつつ、介装部材を第1板材に固定させやすくなり、作業性をより向上させることができる。
【0015】
<<<本実施形態>>>
===第1実施形態の締結構造10===
図1は、第1実施形態の締結構造10が設けられた建物架構1の概略立面図である。
図2は、
図1中のA-A矢視図である。
図3Aは、
図2中の部分bの拡大図である。
図3Bは、
図3A中のB-B矢視図である。
【0016】
本発明の締結構造は、柱,梁、ブレース、床スラブのデッキプレート等の各種鉄骨部材である複数枚の板材の接合に適用することができる。以下、建物架構1としての柱梁架構1のH形鋼のブレース7に組み込まれた形態の締結構造10について説明する。なお、締結構造10が、摩擦ダンパーであってもよい。
【0017】
図1に示すように、ブレース7は、適宜位置で互いに所定間隔を隔てて分断されて、一対のブレース分断片71、72が形成されている。締結構造10は、ブレース7のブレース分断片71、72の間に配置されており、地震、風等の外力が発生した際でも、板材同士の摩擦力により、ブレース分断片71、72の締結構造を維持する。
μは摩擦係数、Nは垂直抗力である。
摩擦係数μは、部材の材質や部材に加えられる垂直抗力の面圧(単位面積当たりの力)によって変化することが知られている(「摩擦のおはなし」 田中 久一郎 著 日本規格協会 発行 第1版 参照)。締結構造10では、板材に加えられる面圧が高いほど摩擦係数μが小さくなり、板材に加えられる面圧が低いほど摩擦係数μが大きくなる。
【0018】
図4Aは、従来の締結構造100を説明する図である。
図4Bは、
図4A中のE-E矢視図である。
図4の締結構造100の各部材について、上述の締結構造10の構成と共通する部分は符号等を同じとし、締結構造100の基本構成の詳細な説明は省略する。
【0019】
一般的に、圧接力等の力は最短距離を経て伝わる。つまり、ボルト頭部61hから加えられた力fhは、第1板材11に対して垂直方向に伝わりやすい。そのため、
図4Bに示すように、高力ボルト61b(締結部材60)によって生じる摩擦力は、各板材11、12、13の高力ボルト61b近傍で伝わりやすく、特に、ボルト頭部61hと板厚方向に重なる領域で伝わりやすい。そして、ボルト頭部61hから第1板材11に対する力fhの面圧が高くなる。
図4Bにボルト頭部61hから加えられる力fhが特に働く領域をクロスハッチングで示す。面圧が高いほど摩擦係数μが小さくなり、摩擦力(すべり耐力)が低下してしまう。
【0020】
また、施工現場において、各板材の位置合わせ等の作業を容易に行うために、板材に過大孔(長孔)を設けて施工誤差を吸収させることが望ましい。しかし、過大孔を設けた板材を用いると、
図4A及び
図4Bに示すように、高力ボルト61bの締め付け力が局所的に加えられて、面圧が高くなり、所望の摩擦力(すべり耐力)を得られなくなる恐れがある。
【0021】
これに対し、本実施形態の締結構造10は、
図3等に示すように、ボルト頭部61h側に位置して第1貫通孔11aを備える第1板材11と、ナット61n側に位置して第3貫通孔13aを備える第3板材13と、第1板材11と第3板材13との間に位置して第2貫通孔12aを備える第2板材12を有している。そして、ボルト頭部61hの最小外径D61hが、第1板材11の第1貫通孔11aの径D11aより狭径であり(D61h<D11a)、介装部材65hの外径D65hが、第1貫通孔11aの径D11aより広径である(D65h>D11a)。
【0022】
ボルト頭部61hの最小外径D61hとは、ボルト頭部61hにおける対角線のうちの最も短い長さである。
【0023】
図3Bに本実施形態の締結構造10のボルト頭部61hから加えられる力fhが特に働く領域をクロスハッチングで示す。締結構造10は、介装部材65hの外径D65hが第1貫通孔11aの径D11aより広径であることで、ボルト頭部61hから加えられる力fhを、介装部材65hを介して第1板材11に伝える。一方、ボルト頭部61hの最小外径D61hを第1貫通孔11aの径D11aより狭径とすることで、ボルト頭部61hと板厚方向(高力ボルト61bに沿った方向)に重なる第1板材11が設けられないため、ボルト頭部61hから加えられる力fhを高力ボルト61b近傍から遠ざけた外側に向かって働かせやすくなる。そして、板厚方向に、介装部材65hと第1板材11とが重なる領域(
図3Bのクロスハッチング領域)に力fhが働きやすくなる。これによって、従来よりも、ボルト頭部61hから板厚方向に伝わる力を高力ボルト61bの近傍から外側に向かって伝えやすくなる。
【0024】
また、本実施形態の締結構造10のボルト頭部61hから力fhが加えられる領域の面積(
図3Bのクロスハッチング領域の面積)は、従来の締結構造100のボルト頭部61hから力fhが加えられる面積(
図4Bのクロスハッチング領域)より広いことから、締結構造10のボルト頭部61hから第1板材11に加える力fhの面圧が、従来の締結構造100のボルト頭部61hから加えられる力fhの面圧よりも小さくなる。そのため、本実施形態の締結構造10の第1板材11と第2板材12との間の摩擦係数μは、従来の締結構造100の第1板材11と第2板材12との間の摩擦係数μよりも大きくなる。
【0025】
これによって、本実施形態の締結構造10は、第1板材11と第2板材12との間の摩擦力(すべり耐力)の低下を軽減させつつ、ボルト頭部61hの最小外径D61hより径が大きい第1貫通孔11aを備える第1板材11によって、作業性を向上させることができる。
【0026】
なお、介装部材65hの貫通孔65haと高力ボルト61bとの間には隙間があるものの、その隙間が小さいほど好ましい。
【0027】
===第2実施形態の締結構造10g===
図5は、第2実施形態の締結構造10gを説明する図である。
図6Aは、
図5中の部分gの拡大図である。
図6Bは、
図6A中のG-G矢視図である。締結構造10gについて、上述の締結構造10の構成と共通する部分は符号等を同じとし、締結構造10gの基本構成の詳細な説明は省略する。
【0028】
締結構造10gは、第3板材(他の板材)21と第2板材22と第1板材23と、これらの板材21、22、23を締結する締結部材60を有する。締結構造10gは、高力ボルト61bに沿った方向(板厚方向)に沿って、第3板材21、第2板材22、第1板材23の順に配置し、締結部材60で締結している。締結部材60は、高力ボルト61b、ナット61n、介装部材65nを備える。
【0029】
第3板材21には第3貫通孔(他の板材の貫通孔)21a、第2板材22には第2貫通孔22a、第1板材23には第1貫通孔23aがそれぞれ板厚方向に貫通形成されているとともに、これらの貫通孔21a、22a、23aには、串刺し状に高力ボルト61bが通されている。第3貫通孔21a及び第1貫通孔23aは円形であり、第2貫通孔22aは長孔(楕円形)である。
図6A等に示すように、第3板材21の側(第3板材21と第2板材22の一方の側である第3板材21側)に高力ボルト61bのボルト頭部61hが設けられ、第1板材23の側(第3板材21と第2板材22の他方の側)から高力ボルト61bに螺合するナット61nが設けられている。
【0030】
介装部材65nは、リング状(円形)の部材である。介装部材65nには、貫通孔65naが板厚方向に貫通形成されており、各板材11、12、13の貫通孔11a、12a、13aと一緒に、高力ボルト61bが通されている。
【0031】
締結構造10gは、
図6に示すように、ナット61nの最小外径D61nが、第1板材23の第1貫通孔23aの径D23aより狭径であり(D61n<D23a)、介装部材65nの外径D65nが、第1貫通孔23aの径D23aより広径である(D65n>D23a)。
【0032】
なお、ナット61nの最小外径D61nとは、ナット61nにおける対角線のうちの最も短い長さである。
【0033】
施工現場において、各板材の位置合わせ等の作業を容易に行うために、板材に過大孔(長孔)を設けて施工誤差を吸収させることが望ましいが、過大孔を設けた板材を用いると、従来の締結構造(例えば、
図4に示す締結構造100)のように、高力ボルトの締め付け力が局所的に加えられて(面圧が高くなる)、所望の摩擦力(すべり耐力)を得られなくなる恐れがある。上述のボルト頭部61h側と同様に、従来の締結構造は、ナット61nから加えられた力fnが垂直に伝わりやすい。そのため、高力ボルト61b(締結部材60)によって生じる摩擦力は、各板材11、12、13の高力ボルト61b近傍で伝わりやすく、特に、ナット61nと板厚方向に重なる領域で伝わりやすい。そして、ナット61nから伝わる力の面圧が高くなる。そして、板材に対する加えられる力fnの面圧が高いほど摩擦係数μが小さくなり、摩擦力(すべり耐力)が低下する。
【0034】
これに対し、締結構造10gは、介装部材65nの外径D65nが第1貫通孔23aの径D23aより広径であることで(D65n>D23a)、ナット61nから加えられる力fnを、介装部材65nを介して第1板材23に伝える。一方、ナット61nの最小外径D61nを第1貫通孔23aの径D23aより狭径とすることで(D61n<D23a)、ナット61nと板厚方向(高力ボルト61bに沿った方向)に重なる第1板材23が設けられないため、ナット61nから加えられる力fnを高力ボルト61b近傍から遠ざけた外側に向かって働かせやすくなる。そして、板厚方向に、介装部材65nと第1板材23とが重なる領域(
図6Bのクロスハッチング領域)に力fnが働きやすくなる。これにより、従来よりも、ナット61nから板厚に伝わる力を高力ボルト61bから外側に向かって伝えやすくなる。
【0035】
また、締結構造10gのナット61nから力fnが加えられる領域の面積(
図6Bのクロスハッチング領域の面積)が、従来の締結構造(例えば、
図4の締結構造100)のナットから力が加えられる面積より広いことから、締結構造10gのナット61nから第1板材23に加える力fnの面圧を、従来の締結構造のナットから加えられる力の面圧よりも小さくすることができる。
図6Bにナット61nから加えられる力fnが特に働く領域をクロスハッチングで示す。そのため、締結構造10gの第1板材23と第2板材22との間の摩擦係数μは、従来の締結構造100の板材間の摩擦係数μよりも大きくなる。
【0036】
これによって、締結構造10gは、第1板材23と第2板材22との間の摩擦力(すべり耐力)の低下を軽減させつつ、ナット61nの最小外径D61nより径が大きい第1貫通孔23aを備える第1板材23によって、作業性を向上させることができる。
【0037】
なお、介装部材65nの貫通孔65naと高力ボルト61bとの間には隙間があるものの、その隙間が小さいほど好ましい。
【0038】
また、
図7に示すように、第1板材11と第2板材12と第3板材13とを備えた締結構造において、第1板材11とボルト頭部61hとの間に介装部材65hを備え、且つ、第3板材13とナット61nとの間に介装部材65nを備える構成であってもよい。
図7は、第1実施形態の変形例を説明する図である。これにより、第1板材11と第2板材12と第3板材13とを締結する締結構造をより強固なものとすることができる。
【0039】
===第3実施形態の締結構造10h===
図8は、第3実施形態の締結構造10hを説明する図である。
図9Aは、
図8中の部分hの拡大図である。
図9Bは、
図9A中のH-H矢視図である。締結構造10hについて、上述の締結構造10の構成と共通する部分は符号等を同じとし、締結構造10hの基本構成の詳細な説明は省略する。
【0040】
上述の締結構造10は、第1板材11と第2板材12と第3板材13とを締結部材60で締結した構成としたが、
図8及び
図9に示すように、第1板材31と第2板材32とを締結部材60で締結した締結構造10hとし、他の板材を備えない構成でもよい。
【0041】
締結構造10hは、第1板材31と第2板材32と、これらの板材31、32を締結する締結部材60を有する。締結構造10hは、高力ボルト61bに沿った方向(板厚方向)に沿って、第1板材31、第2板材32の順に配置し、締結部材60で締結している。締結部材60は、高力ボルト61b、ナット61n、介装部材65hを備える。
【0042】
第1板材31には第1貫通孔31a、第2板材32には第2貫通孔32aがそれぞれ板厚方向に貫通形成されているとともに、これらの貫通孔31a、32aには、串刺し状に高力ボルト61bが通されている。第1貫通孔31aは円形であり、第2貫通孔32aは長孔(楕円形)である。
図9等に示すように、第1板材31側(第1板材31と第2板材32の一方の側)に高力ボルト61bのボルト頭部61hが設けられ、第2板材32側(第1板材31と第2板材32の他方の側)から高力ボルト61bに螺合するナット61nが設けられている。
【0043】
介装部材65hは、上述の締結構造10の介装部材65hと同様に、高力ボルト61bのボルト頭部61hと第1板材31との間に設けられたリング状(円形)の部材である。介装部材65hは、貫通孔65ha、ブッシュ65hb、リング65hrを備える。貫通孔65haは、介装部材65hの板厚方向に貫通形成されており、各板材31、32の貫通孔31a、32aと一緒に、高力ボルト61bが通されている。なお、介装部材65hの貫通孔65haと高力ボルト61bとの間には隙間があるものの、その隙間が小さいほど好ましい。
【0044】
図9に示すように、締結構造10hは、ボルト頭部61hの最小外径D61hが、第1板材31の第1貫通孔31aの径D31aより狭径であり(D61h<D31a)、介装部材65hの外径D65hが、第1貫通孔31aの径D31aより広径である(D65h>D31a)。
【0045】
図9Bに、締結構造10hのボルト頭部61hから加えられる力fhが特に働く領域をクロスハッチングで示す。締結構造10hは、介装部材65hの外径D65hが第1貫通孔31aの径D31aより広径であることで(D65h>D31a)、ボルト頭部61hから加えられる力fhを、介装部材65hを介して第1板材31に伝える。一方、ボルト頭部61hの最小外径D61hを第1貫通孔31aの径D31aより狭径とすることで(D61h<D31a)、ボルト頭部61hから加えられる力fhを高力ボルト61b近傍から遠ざけた外側に向かって力が働きやすくなる。
【0046】
また、締結構造10hのボルト頭部61hから力fhが加えられる領域の面積(
図9Bのクロスハッチング領域の面積)は、従来の締結構造(例えば、
図4に示す締結構造100)より広い。締結構造10hのボルト頭部61hから加えられる力fhによる面圧を、従来の締結構造のボルト頭部から加えられる力による面圧よりも小さくすることができる。そのため、締結構造10hの第1板材31と第2板材32との間の摩擦係数μが、従来の締結構造の板材間の摩擦係数μよりも大きくなる。
【0047】
これによって、締結構造10hは、第1板材31と第2板材32との間の摩擦力(すべり耐力)の低下を軽減させつつ、ボルト頭部61hの最小外径D61hより径が大きい第1貫通孔31aを備える第1板材31によって、作業性を向上させることができる。
【0048】
===第4実施形態の締結構造10j===
図10は、第4実施形態の締結構造10jを説明する図である。
図11Aは、
図10中の部分jの拡大図である。
図11Bは、
図11A中のJ-J矢視図である。締結構造10jについて、上述の締結構造10の構成と共通する部分は符号等を同じとし、締結構造10jの基本構成の詳細な説明は省略する。
【0049】
締結構造10jは、第1板材41と第2板材42と第3板材(他の板材)43と、これらの板材41、42、43を締結する締結部材60を有する。締結構造10jは、高力ボルト61bに沿った方向(板厚方向)に沿って、第1板材41、第2板材42、第3板材43の順に配置し、締結部材60で締結している。締結部材60は、高力ボルト61b、ナット61n、介装部材65hを備える。
【0050】
第1板材41には第1貫通孔41a、第2板材42には第2貫通孔42a、第3板材43には第3貫通孔(他の板材の貫通孔)43aがそれぞれ板厚方向に貫通形成されているとともに、これらの貫通孔41a、42a、43aには、串刺し状に高力ボルト61bが通されている。第1貫通孔41a、第3貫通孔43aは円形であり、第2貫通孔42aは長孔(楕円形)である。
図11等に示すように、第1板材41側(第1板材41と第2板材42の一方の側)に高力ボルト61bのボルト頭部61hが設けられ、第3板材43側(第1板材41と第2板材42の他方の側である第2板材42の側)から高力ボルト61bに螺合するナット61nが設けられている。
【0051】
介装部材65hは、高力ボルト61bのボルト頭部61hと第1板材41との間に設けられたリング状(円形)の部材である。締結構造10jの介装部材65hは、貫通孔65ha、介装部65hx、及び貫入部65hyを備える。介装部65hxと貫入部65hyは、一体に形成されていてもよく、別体に形成されていてもよい。
【0052】
貫通孔65haは、板厚方向に貫通形成された孔であり、各板材41、42、43の貫通孔41a、42a、43aと一緒に、高力ボルト61bが通される。介装部材65hの貫通孔65haと高力ボルト61bとの間には隙間があるものの、その隙間が小さいほど好ましい。介装部65hxは、ボルト頭部61hと第1板材41との間に位置する。また、貫入部65hyは、介装部65hxよりナット61n側に設けられており、第1貫通孔41aに貫入される部材である。
【0053】
締結構造10jは、
図11に示すように、ボルト頭部61hの最小外径D61hが、第1板材41の第1貫通孔41aの径D41aより狭径である(D61h<D41a)。そして、介装部65hxの外径D65hxが、第1貫通孔41aの径D41aより広径である(D65hx>D41a)。
【0054】
図11Bに、締結構造10jのボルト頭部61hから加えられる力fhが特に働く領域をクロスハッチングで示す。締結構造10jは、介装部材65h(介装部65hx)の外径D65hxが第1貫通孔41aの径D41aより広径であることで(D65hx>D41a)、ボルト頭部61hから加えられる力fhを、介装部材65h(介装部65hx)を介して第1板材41に伝える。一方、ボルト頭部61hの最小外径D61hを第1貫通孔41aの径D41aより狭径とすることで(D61h<D41a)、ボルト頭部61hから加えられる力fhを高力ボルト61b近傍から遠ざけた外側に向かって働かせやすくなる。
【0055】
また、締結構造10jのボルト頭部61hから力fhが加えられる領域の面積(
図11Bのクロスハッチング領域の面積)が、従来の締結構造(例えば、
図4Bに示す締結構造100)のナットから力が加えられる領域の面積より広ことから、締結構造10jのボルト頭部61hから第1板材41に加える力fhの面圧が、従来の締結構造のボルト頭部から加えられる力の面圧よりも小さくなる。そのため、締結構造10jの第1板材41と第2板材42との間の摩擦係数μが、従来の締結構造の板材間の摩擦係数μよりも大きくなる。
【0056】
これによって、締結構造10jは、第1板材41と第2板材42との間の摩擦力(すべり耐力)の低下を軽減させつつ、ボルト頭部61hの最小外径D61hより径が大きい第1貫通孔41aを備える第1板材41によって、作業性を向上させることができる。
【0057】
貫入部65hyの外径D65hyは、第1貫通孔41aの径D41aより狭径である(D65hy<D41a)。介装部材65hが貫入部65hyを備えることで、介装部65hxのみを備える場合よりも剛性が大きくなり、高力ボルト61bからの軸力の伝達効率が向上する。貫入部65hyを第1貫通孔41aに貫入させることで、第1板材41に対する介装部材65hの位置を容易に特定させ、固定させやすくなるため、締結部材60による締結力を締結構造10jに付与させやすくなる。
【0058】
===第5実施形態の締結構造10k===
図12は、第5実施形態の締結構造10kを説明する図である。
図13Aは、
図12中の部分kの拡大図である。
図13Bは、
図13A中のK-K矢視図である。締結構造10kについて、上述の締結構造10の構成と共通する部分は符号等を同じとし、締結構造10kの基本構成の詳細な説明は省略する。
【0059】
締結構造10kは、第3板材(他の板材)51と第2板材52と第1板材53と、これらの板材51、52、53を締結する締結部材60を有する。締結構造10kは、高力ボルト61bに沿った方向(板厚方向)に沿って、第3板材51、第2板材52、第1板材53の順に配置し、締結部材60で締結している。締結部材60は、高力ボルト61b、ナット61n、介装部材65nを備える。
【0060】
第3板材51には第3貫通孔(他の板材の貫通孔)51a、第2板材52には第2貫通孔52a、第1板材53には第1貫通孔53aがそれぞれ板厚方向に貫通形成されているとともに、これらの貫通孔51a、52a、53aには、串刺し状に高力ボルト61bが通されている。第3貫通孔51a及び第1貫通孔53aは円形であり、第2貫通孔52aは長孔(楕円形)である。
図12等に示すように、第3板材51の側(第3板材51と第2板材52の一方の側である第3板材51側)に高力ボルト61bのボルト頭部61hが設けられ、第1板材53の側(第3板材51と第2板材52の他方の側)から高力ボルト61bに螺合するナット61nが設けられている。
【0061】
介装部材65nは、ナット61nと第1板材53との間に設けられたリング状(円形)の部材である。介装部材65nは、貫通孔65na、介装部65nx、及び貫入部65nyを備える。介装部65nxと貫入部65nyは、一体に形成されていてもよく、別体に形成されていてもよい。
【0062】
貫通孔65naは、板厚方向に貫通形成された孔であり、各板材51、52、53の貫通孔51a、52a、53aと一緒に、高力ボルト61bが通される。介装部材65nの貫通孔65naと高力ボルト61bとの間には隙間があるものの、その隙間が小さいほど好ましい。介装部65nxは、ナット61nと第1板材53との間に位置する。また、貫入部65nyは、介装部65nxよりボルト頭部61h側に設けられており、第1貫通孔53aに貫入される部材である。
【0063】
締結構造10kは、
図13に示すように、ナット61nの最小外径D61nが、第1板材53の第1貫通孔53aの径D53aより狭径である(D61n<D53a)。そして、介装部65nxの外径D65nxが、第1貫通孔53aの径D53aより広径である(D65nx>D53a)。
【0064】
図13Bに、締結構造10kのナット61nから加えられる力fnが特に働く領域をクロスハッチングで示す。締結構造10kは、介装部材65n(介装部65nx)の外径D65nxが第1貫通孔53aの径D53aより広径であることで(D65nx>D53a)、ナット61nから加えられる力fnを、介装部材65n(介装部65nx)を介して第1板材53に伝える。一方、ナット61nの最小外径D61nを第1貫通孔53aの径D53aより狭径とすることで(D61n<D53a)、ナット61nから加えられる力fnを高力ボルト61b近傍から遠ざけた外側に向かって働かせやすくなる。
【0065】
また、締結構造10kのナット61nから力fnが加えられる領域の面積(
図13Bのクロスハッチング領域の面積)が、従来の締結構造(例えば、
図4に示す締結構造100)のナットから力が加えられる領域の面積より広ことから、締結構造10kのナット61nから第1板材53に加える力fnの面圧が、従来の締結構造のナットから加えられる力の面圧よりも小さくなる。そのため、締結構造10kの第1板材53と第2板材52との間の摩擦係数μが、従来の締結構造の板材間の摩擦係数μよりも大きくなる。
【0066】
これによって、締結構造10jは、第1板材53と第2板材52との間の摩擦力(すべり耐力)の低下を軽減させつつ、ナット61nの最小外径D61hより径が大きい第1貫通孔53aを備える第1板材53によって、作業性を向上させることができる。
【0067】
また、貫入部65nyは、介装部65nxよりボルト頭部61h側に設けられている。貫入部65nyの外径D65nyは、第1貫通孔53aの径D53aより狭径である(D65ny<D53a)。介装部材65nが貫入部65nyを備えることで、介装部65nxのみの場合よりも剛性が大きくなり、高力ボルト61bからの軸力の伝達効率が向上する。貫入部65nyを第1貫通孔53aに貫入させることで、第1板材53に対する介装部材65nの位置を容易に特定させ、固定させやすくなるため、締結部材60による締結力を締結構造10kに付与させやすくなる。
【0068】
また、
図14に示すように、第1板材41と第2板材42と第3板材43とを備えた締結構造において、第1板材41とボルト頭部61hとの間に介装部材65hを備え、且つ、第3板材43とナット61nとの間に介装部材65nを備える構成であってもよい。
図14は、第4実施形態の変形例を説明する図である。これにより、第1板材41と第2板材42と第3板材43とを締結する締結構造をより強固なものとすることができる。
【0069】
===第6実施形態の変形例の締結構造10m===
図15は、第6実施形態の締結構造10mを説明する図である。
図16Aは、
図15中の部分mの拡大図である。
図16Bは、
図16A中のM-M矢視図である。締結構造10mについて、上述の締結構造10jの構成と共通する部分は符号等を同じとし、締結構造10mの基本構成の詳細な説明は省略する。
【0070】
第4実施形態の締結構造10jは、第1板材41と第2板材42と第3板材43とを締結部材60で締結した構成としたが、
図15及び
図16に示すように、第1板材91と第2板材92とを締結部材60で締結した締結構造10mとし、第3板材を備えない構成でもよい。
【0071】
締結構造10mの介装部材65hは、上述の締結構造10jと同様の構成であり、高力ボルト61bのボルト頭部61hと第1板材91との間に設けられたリング状(円形)の部材である。上述の締結構造10jと同様に、介装部材65hは、貫通孔65ha、介装部65hx、及び貫入部65hyを備える。
【0072】
貫通孔65haは、板厚方向に貫通形成された孔であり、各板材91、92の貫通孔91a、92aと一緒に、高力ボルト61bが通される。介装部材65hの貫通孔65haと高力ボルト61bとの間には隙間があるものの、その隙間が小さいほど好ましい。介装部65hxは、ボルト頭部61hと第1板材91との間に位置する部材である。
【0073】
締結構造10mは、ボルト頭部61hの最小外径D61hが、第1板材91の第1貫通孔91aの径D91aより狭径である(D61h<D91a)。そして、介装部材65h(介装部65hx)の外径D65hxが、第1貫通孔91aの径D91aより広径である(D65hx>D91a)。
【0074】
図16Bに、締結構造10mのボルト頭部61hから加えられる力fhが特に働く領域をクロスハッチングで示す。締結構造10mは、介装部材65h(介装部65hx)の外径D65hxが第1貫通孔91aの径D91aより広径であることで、ボルト頭部61hから加えられる力fhを、介装部材65h(介装部65hx)を介して第1板材91に伝える。一方、ボルト頭部61hの最小外径D61hを第1貫通孔91aの径D91aより狭径とすることで、ボルト頭部61hから加えられる力fhを高力ボルト61b近傍から遠ざけた外側に向かって働かせやすくなる。
【0075】
また、締結構造10mのボルト頭部61hから力fhが加えられる領域の面積(
図16Bのクロスハッチング領域の面積)が、従来の締結構造(例えば、
図4に示す締結構造100)より広い。締結構造10mのボルト頭部61hから加えられる力fhの面圧を、従来の締結構造のボルト頭部から加えられる力の面圧よりも小さくすることができる。そのため、締結構造10mの第1板材91と第2板材92との間の摩擦係数μが、従来の締結構造の板材間の摩擦係数μよりも大きくなる。
【0076】
また、貫入部65hyは、介装部65hxよりナット61側に設けられている。貫入部65hyの外径D65hyは、第1貫通孔91aの径11aより狭径である(D65hy<D91a)。介装部材65hが貫入部65hyを備えることで、介装部65hxのみを備える場合よりも剛性が大きくなり、高力ボルト61bからの軸力の伝達効率が向上する。貫入部65hyを第1貫通孔91aに貫入させることで、第1板材91に対する介装部材65hの位置を容易に特定させ、固定させやすくなるため、締結部材60による締結力を締結構造10mに付与させやすくなる。
【0077】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0078】
1 建物架構(柱梁架構、構造物)、
7 ブレース、
10、10g、10h、10j、10k、10m、100 締結構造、
11 第1板材、
11a 第1貫通孔、
12 第2板材、
12a 第2貫通孔、
13 第3板材(他の板材)、
13a 第3貫通孔(他の板材の貫通孔)、
21 第3板材(他の板材)、
21a 第3貫通孔(他の板材の貫通孔)、
22 第2板材、
22a 第2貫通孔、
23 第1板材、
23a 第1貫通孔、
31 第1板材、
31a 第1貫通孔、
32 第2板材、
32a 第2貫通孔、
41 第1板材、
41a 第1貫通孔、
42 第2板材、
42a 第2貫通孔、
43 第3板材(他の板材)、
43a 第3貫通孔(他の板材の貫通孔)、
51 第3板材(他の板材)、
51a 第3貫通孔(他の板材の貫通孔)、
52 第2板材、
52a 第2貫通孔、
53 第1板材、
53a 第1貫通孔、
91 第1板材、
91a 第1貫通孔、
92 第2板材、
92a 第2貫通孔、
60 締結部材、
61b 高力ボルト(ボルト)、
61h ボルト頭部(頭部)、
61n ナット、
65h 介装部材、
65hx 介装部、
65hy 貫入部、
65ha 貫通孔、
65n 介装部材、
65nx 介装部、
65ny 貫入部、
65na 貫通孔、
71、72 ブレース分断片