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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162490
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】測定装置及び測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/52 20200101AFI20241114BHJP
   G01R 31/58 20200101ALI20241114BHJP
【FI】
G01R31/52
G01R31/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078038
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 健二
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直樹
【テーマコード(参考)】
2G014
【Fターム(参考)】
2G014AA10
2G014AA17
2G014AB33
2G014AB52
2G014AB53
2G014AC02
2G014AC18
(57)【要約】
【課題】抵抗成分漏洩電流の測定の際に位相角を精度良く測定する。
【解決手段】本開示に係る測定装置10は、磁性コア11と、磁性コア11に巻かれている第1コイルL1及び第2コイルL2と、電流測定回路12と、電圧測定回路13と、位相角検出回路15と、第2コイルL2及び位相角検出回路15に正弦波を出力可能な信号発生器14と、制御部16と、を備える。位相角検出回路15は、信号発生器14が正弦波を出力しているときに電流測定回路12が測定した電流と、信号発生器14から入力される正弦波との間の校正用位相角を検出可能である。制御部16は、位相角と校正用位相角とに基づいて補正位相角を算出し、漏洩電流と補正位相角とに基づいて抵抗成分漏洩電流を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗成分漏洩電流を測定可能な測定装置であって、
配線の周囲を囲うように配置可能な磁性コアと、
前記磁性コアに巻かれている第1コイル及び第2コイルと、
前記第1コイルに接続され前記配線の漏洩電流を測定可能な電流測定回路と、
前記配線の電圧を測定可能な電圧測定回路と、
前記漏洩電流と前記電圧との間の位相角を検出可能な位相角検出回路と、
前記第2コイル及び前記位相角検出回路に正弦波を出力可能な信号発生器と、
制御部と、
を備え、
前記位相角検出回路は、前記信号発生器が前記正弦波を出力しているときに前記電流測定回路が測定した電流と、前記信号発生器から入力される前記正弦波との間の校正用位相角を検出可能であり、
前記制御部は、
前記位相角と前記校正用位相角とに基づいて補正位相角を算出し、
前記漏洩電流と前記補正位相角とに基づいて抵抗成分漏洩電流を算出する、測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測定装置において、
前記制御部は、下記の式(1)に基づいて前記補正位相角を算出する、測定装置。
θ=θ1-θ2 (1)
ただし、式(1)において、θは前記補正位相角を示し、θ1は前記位相角を示し、θ2は前記校正用位相角を示す。
【請求項3】
請求項2に記載の測定装置において、
前記制御部は、下記の式(2)に基づいて前記抵抗成分漏洩電流を算出する、測定装置。
Ior=Io×cosθ (2)
ただし、Iorは前記抵抗成分漏洩電流を示し、Ioは前記漏洩電流を示す。
【請求項4】
請求項1に記載の測定装置において、
ユーザからの操作を受け付け可能な入力部をさらに備え、
前記制御部は、校正動作を開始させる操作を前記入力部が前記ユーザから受け付けると、前記信号発生器に前記正弦波を出力させ、前記校正用位相角を検出する、測定装置。
【請求項5】
請求項1に記載の測定装置において、
表示部をさらに備え、
前記制御部は、算出した前記抵抗成分漏洩電流を前記表示部に表示させる、測定装置。
【請求項6】
請求項1に記載の測定装置において、
前記信号発生器は、前記抵抗成分漏洩電流の測定対象周波数とは異なる周波数の前記正弦波を出力し、
前記制御部は、前記校正用位相角の検出と前記抵抗成分漏洩電流の算出とを同時に実行する、測定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の測定装置において、
前記信号発生器は、前記抵抗成分漏洩電流の測定対象周波数とは異なる1つの周波数の前記正弦波を出力し、
前記制御部は、前記抵抗成分漏洩電流の測定対象周波数とは異なる1つの周波数の前記正弦波を前記信号発生器が出力している状態で検出した校正用位相角に基づいて、前記抵抗成分漏洩電流の測定対象周波数における前記校正用位相角を算出する、測定装置。
【請求項8】
請求項6に記載の測定装置において、
前記信号発生器は、前記抵抗成分漏洩電流の測定対象周波数とは異なる2つの周波数の前記正弦波を出力し、
前記制御部は、前記抵抗成分漏洩電流の測定対象周波数とは異なる2つの周波数の前記正弦波を前記信号発生器が出力している状態で検出した校正用位相角に基づいて、前記抵抗成分漏洩電流の測定対象周波数における前記校正用位相角を算出する、測定装置。
【請求項9】
請求項8に記載の測定装置において、
前記2つの周波数の一方は前記測定対象周波数より大きい周波数であり、前記2つの周波数の他方は前記測定対象周波数より小さい周波数である、測定装置。
【請求項10】
抵抗成分漏洩電流を測定可能な測定装置であって、配線の周囲を囲うように配置可能な磁性コアと、前記磁性コアに巻かれている第1コイル及び第2コイルと、前記第1コイルに接続され前記配線の漏洩電流を測定可能な電流測定回路と、前記配線の電圧を測定可能な電圧測定回路と、前記漏洩電流と前記電圧との間の位相角を検出可能な位相角検出回路と、前記第2コイル及び前記位相角検出回路に正弦波を出力可能な信号発生器と、を備える測定装置における測定方法であって、
前記位相角検出回路によって、前記信号発生器が前記正弦波を出力しているときに前記電流測定回路が測定した電流と、前記信号発生器から入力される前記正弦波との間の校正用位相角を検出するステップと、
前記位相角と前記校正用位相角とに基づいて補正位相角を算出するステップと、
前記漏洩電流と前記補正位相角とに基づいて抵抗成分漏洩電流を算出するステップと、
を含む、測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、活線の漏洩電流を測定する技術が知られている。活線は、電流が流れている状態の配線である。漏洩電流は、「Io」とも称される。
【0003】
漏洩電流は、抵抗成分漏洩電流と容量成分漏洩電流とを有する。抵抗成分漏洩電流は、「Ior」とも称される。容量成分漏洩電流は、「Ioc」とも称される。
【0004】
漏洩電流(Io)は、抵抗成分漏洩電流(Ior)と容量成分漏洩電流(Ioc)とのベクトル和である。配線の漏洩電流と、配線の電圧との間の位相角をθとすると、抵抗成分漏洩電流(Ior)は、下記のような式で表される。
Ior=Io×cosθ
【0005】
抵抗成分漏洩電流が流れていると熱が発生するため、抵抗成分漏洩電流は火災などの原因となり得る。そのため、抵抗成分漏洩電流を精度良く測定することが重要視されている。
【0006】
例えば特許文献1は、抵抗成分漏洩電流を測定することが可能な検出装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2023-21267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
抵抗成分漏洩電流は上述の式のように漏洩電流と位相角とに基づいて算出されるため、抵抗成分漏洩電流を精度良く測定するためには、漏洩電流を精度良く測定するだけでなく、位相角も精度良く測定する必要がある。
【0009】
通常の漏洩電流の測定においては、漏洩電流を測定するための磁性コア及び電流測定回路などにおいて位相の進み又は遅れが発生する。そのため、製造時又はメンテナンス時などに、位相の進み又は遅れを調整したり補正したりする必要がある。
【0010】
しかしながら、位相の進み又は遅れは、装置の劣化及び環境温度の変化などにより大きく変動することがある。そのため、実際に抵抗成分漏洩電流を測定するときには、調整又は補正をしたときから位相の進み又は遅れが大きく変動している場合もあり、位相角を精度良く測定することは困難であった。
【0011】
そこで、本開示は、抵抗成分漏洩電流の測定の際に位相角を精度良く測定することが可能な測定装置及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
幾つかの実施形態に係る測定装置は、抵抗成分漏洩電流を測定可能な測定装置であって、配線の周囲を囲うように配置可能な磁性コアと、前記磁性コアに巻かれている第1コイル及び第2コイルと、前記第1コイルに接続され前記配線の漏洩電流を測定可能な電流測定回路と、前記配線の電圧を測定可能な電圧測定回路と、前記漏洩電流と前記電圧との間の位相角を検出可能な位相角検出回路と、前記第2コイル及び前記位相角検出回路に正弦波を出力可能な信号発生器と、制御部と、を備え、前記位相角検出回路は、前記信号発生器が前記正弦波を出力しているときに前記電流測定回路が測定した電流と、前記信号発生器から入力される前記正弦波との間の校正用位相角を検出可能であり、前記制御部は、前記位相角と前記校正用位相角とに基づいて補正位相角を算出し、前記漏洩電流と前記補正位相角とに基づいて抵抗成分漏洩電流を算出する。このような測定装置によれば、抵抗成分漏洩電流の測定の際に位相角を精度良く測定することが可能である。
【0013】
一実施形態に係る測定装置において、前記制御部は、下記の式(1)に基づいて前記補正位相角を算出してもよい。
θ=θ1-θ2 (1)
ただし、式(1)において、θは前記補正位相角を示し、θ1は前記位相角を示し、θ2は前記校正用位相角を示す。これにより、補正位相角を算出することができる。
【0014】
一実施形態に係る測定装置において、前記制御部は、下記の式(2)に基づいて前記抵抗成分漏洩電流を算出してもよい。
Ior=Io×cosθ (2)
ただし、Iorは前記抵抗成分漏洩電流を示し、Ioは前記漏洩電流を示す。これにより、抵抗成分漏洩電流を算出することができる。
【0015】
一実施形態に係る測定装置において、ユーザからの操作を受け付け可能な入力部をさらに備え、前記制御部は、校正動作を開始させる操作を前記入力部が前記ユーザから受け付けると、前記信号発生器に前記正弦波を出力させ、前記校正用位相角を検出してもよい。これにより、ユーザからの操作に応じて校正動作を開始することができる。
【0016】
一実施形態に係る測定装置において、表示部をさらに備え、前記制御部は、算出した前記抵抗成分漏洩電流を前記表示部に表示させてもよい。これにより、ユーザは、表示部の表示によって抵抗成分漏洩電流を確認することができる。
【0017】
一実施形態に係る測定装置において、前記信号発生器は、前記抵抗成分漏洩電流の測定対象周波数とは異なる周波数の前記正弦波を出力し、前記制御部は、前記校正用位相角の検出と前記抵抗成分漏洩電流の算出とを同時に実行してもよい。これにより、校正動作と測定動作とを同時に実行することができる。
【0018】
一実施形態に係る測定装置において、前記信号発生器は、前記抵抗成分漏洩電流の測定対象周波数とは異なる1つの周波数の前記正弦波を出力し、前記制御部は、前記抵抗成分漏洩電流の測定対象周波数とは異なる1つの周波数の前記正弦波を前記信号発生器が出力している状態で検出した校正用位相角に基づいて、前記抵抗成分漏洩電流の測定対象周波数における前記校正用位相角を算出してもよい。これにより、信号発生器が測定対象周波数とは異なる1つの周波数の正弦波を出力することによって、校正動作と測定動作とを同時に実行することができる。
【0019】
一実施形態に係る測定装置において、前記信号発生器は、前記抵抗成分漏洩電流の測定対象周波数とは異なる2つの周波数の前記正弦波を出力し、前記制御部は、前記抵抗成分漏洩電流の測定対象周波数とは異なる2つの周波数の前記正弦波を前記信号発生器が出力している状態で検出した校正用位相角に基づいて、前記抵抗成分漏洩電流の測定対象周波数における前記校正用位相角を算出してもよい。これにより、信号発生器が測定対象周波数とは異なる2つの周波数の正弦波を出力することによって、校正動作と測定動作とを同時に実行することができる。
【0020】
一実施形態に係る測定装置において、前記2つの周波数の一方は前記測定対象周波数より大きい周波数であり、前記2つの周波数の他方は前記測定対象周波数より小さい周波数であってよい。これにより、校正用位相角を精度良く算出することができる。
【0021】
幾つかの実施形態に係る測定方法は、抵抗成分漏洩電流を測定可能な測定装置であって、配線の周囲を囲うように配置可能な磁性コアと、前記磁性コアに巻かれている第1コイル及び第2コイルと、前記第1コイルに接続され前記配線の漏洩電流を測定可能な電流測定回路と、前記配線の電圧を測定可能な電圧測定回路と、前記漏洩電流と前記電圧との間の位相角を検出可能な位相角検出回路と、前記第2コイル及び前記位相角検出回路に正弦波を出力可能な信号発生器と、を備える測定装置における測定方法であって、前記位相角検出回路によって、前記信号発生器が前記正弦波を出力しているときに前記電流測定回路が測定した電流と、前記信号発生器から入力される前記正弦波との間の校正用位相角を検出するステップと、前記位相角と前記校正用位相角とに基づいて補正位相角を算出するステップと、前記漏洩電流と前記補正位相角とに基づいて抵抗成分漏洩電流を算出するステップと、を含む。このような測定方法によれば、抵抗成分漏洩電流の測定の際に位相角を精度良く測定することが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、抵抗成分漏洩電流の測定の際に位相角を精度良く測定することが可能な測定装置及び測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一実施形態に係る測定装置の概略構成図である。
図2】漏洩電流Io、抵抗成分漏洩電流Ior、容量成分漏洩電流Iocの関係を示すベクトル図である。
図3】一実施形態に係る測定装置が校正動作をしているときの様子を示す図である。
図4】変形例に係る測定装置の概略構成図である。
図5】比較例に係る測定装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、一実施形態に係る測定装置10の概略構成図である。
【0026】
測定装置10は、活線の抵抗成分漏洩電流を測定可能な装置である。図1は、測定装置10が、配電盤1と負荷2とを接続する配線5の抵抗成分漏洩電流を測定する様子を示す図である。配線5は電流が流れている状態の配線であり、配線5は活線である。
【0027】
なお、図1において、測定装置10が、配電盤1と負荷2とを接続する配線5の抵抗成分漏洩電流を測定しているのは、一例として示したものである。測定装置10は、このような配線5に限定されず、任意の活線の抵抗成分漏洩電流を測定することが可能である。
【0028】
配線5は、信号線5aと、GND線5bとを備える。配線5は、例えば、信号線5aの周りにGND線5bが巻かれている同軸ケーブルであってよい。
【0029】
図1に示す例においては、配電盤1から負荷2に向かって、信号線5aに電流I1が流れている。また、負荷2から配電盤1に向かって、GND線5bに電流I2が流れている。配線5から漏洩電流が流れていない場合は、電流I1と電流I2は等しい。
【0030】
配線5から漏洩電流が流れている場合、漏洩電流Ioは、電流I1と電流I2との差分であり、下記の式(1)で表される。
Io=I1-I2 (1)
【0031】
漏洩電流Ioは、配線5の信号線5aから抵抗4を介してGNDに流れる抵抗成分漏洩電流Iorと、配線5の信号線5aからキャパシタ3を介してGNDに流れる容量成分漏洩電流Iocとのベクトル和である。
【0032】
図1に示す抵抗4は、抵抗素子をイメージしたものではなく、抵抗成分漏洩電流Iorが流れる抵抗成分をイメージしたものである。また、図1に示すキャパシタ3は、キャパシタ素子をイメージしたものではなく、容量成分漏洩電流Iocが流れるキャパシタ成分をイメージしたものである。
【0033】
図2は、漏洩電流Io、抵抗成分漏洩電流Ior、容量成分漏洩電流Iocの関係を示すベクトル図である。図2に示すθは、配線5に流れる漏洩電流Ioと、配線5の電圧との間の位相角である。なお、本実施形態において、「配線5の電圧」とは、信号線5aの電圧とGND線5bの電圧との差分を意味するものとする。
【0034】
図2に示すように、抵抗成分漏洩電流Iorは、漏洩電流Ioと位相角θとに基づいて、下記の式(2)で表される。
Ior=Io×cosθ (2)
【0035】
再び図1を参照し、測定装置10の構成及び機能の概略について説明する。
【0036】
測定装置10は、磁性コア11と、第1コイルL1と、第2コイルL2と、電流測定回路12と、電圧測定回路13と、信号発生器14と、位相角検出回路15と、制御部16と、入力部17と、表示部18と、第1スイッチSW1と、第2スイッチSW2と、第3スイッチSW3とを備える。
【0037】
磁性コア11は、抵抗成分漏洩電流の測定対象である配線5の周囲を囲うように配置することが可能である。磁性コア11は、例えばリング状の形状であってよい。磁性コア11は、一部が開閉可能な構成であってよい。磁性コア11は、一部が開閉可能な構成である場合、配線5を挟み込むことができる。
【0038】
第1コイルL1は、磁性コア11に巻かれているコイルである。第1コイルL1は、磁性コア11が挟み込んでいる配線5の漏洩電流を検出することができる。
【0039】
第2コイルL2は、磁性コア11に巻かれているコイルである。第2コイルL2は、測定装置10において校正動作を行う際に用いられるコイルである。
【0040】
校正動作を行っている際に、第2コイルL2に信号発生器14から正弦波が入力されると、第2コイルL2には正弦波の電流が流れる。そして、第2コイルL2は、磁性コア11の内部に、正弦波に応じた磁束を発生させる。そうすると、第1コイルL1に電流が流れ、第1コイルL1は、正弦波に応じた電流を検出する。
【0041】
電流測定回路12は、第1コイルL1に接続されている。電流測定回路12には第1コイルL1が検出した配線5の漏洩電流が入力される。これにより、電流測定回路12は、配線5の漏洩電流を測定することができる。
【0042】
電流測定回路12は、電流電圧変換回路、増幅回路などを含んでいてよい。電流測定回路12は、測定した配線5の漏洩電流に対応する信号を、位相角検出回路15及び制御部16に出力する。電流測定回路12は、測定した配線5の漏洩電流に対応する信号を、電流として出力してもよいし電圧として出力してもよい。
【0043】
電圧測定回路13は、配線5の信号線5a及びGND線5bに接続可能である。電圧測定回路13は、信号線5aの電圧とGND線5bの電圧との差分を配線5の電圧として測定する。電圧測定回路13は、差動増幅回路などを含んでいてよい。電圧測定回路13は、測定した配線5の電圧に対応する信号を、第3スイッチSW3を介して位相角検出回路15に出力する。
【0044】
信号発生器14は、同期した2つの正弦波を出力可能な任意の構成の信号発生器である。信号発生器14は、第1スイッチSW1を介して第2コイルL2に接続されている。信号発生器14は、第2スイッチSW2を介して位相角検出回路15に接続されている。
【0045】
信号発生器14は、測定装置10において校正動作を行う際に、第2コイルL2及び位相角検出回路15に同期した正弦波を出力する。
【0046】
位相角検出回路15は、入力される2つの信号の間の位相角を検出することが可能な回路である。
【0047】
位相角検出回路15は、測定装置10において測定動作を行う際には、電流測定回路12が測定した漏洩電流と、電圧測定回路13が測定した電圧との間の位相角を検出する。位相角検出回路15は、検出した位相角を制御部16に出力する。
【0048】
位相角検出回路15は、測定装置10において校正動作を行う際には、信号発生器14が正弦波を出力しているときに電流測定回路12が測定した電流と、信号発生器14から入力される正弦波との間の校正用位相角を検出する。なお、本実施形態においては、信号発生器14が正弦波を出力しているときに電流測定回路12が測定した電流と、信号発生器14から入力される正弦波との間の位相角を、「校正用位相角」と称する場合がある。位相角検出回路15は、検出した校正用位相角を制御部16に出力する。
【0049】
制御部16は、測定装置10全体及び測定装置10の各ブロックを制御する。制御部16は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路、又はこれらの組み合わせを含む。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)若しくはGPU(Graphics Processing Unit)などの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。
【0050】
制御部16の動作の詳細については後述する。
【0051】
入力部17は、ユーザからの操作を受け付け可能なインタフェースを含む。入力部17は、例えば、ボタンなどを含んでいてよい。
【0052】
表示部18は、各種のデータを表示することができる。表示部18は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)又は有機EL(Electro Luminescent)ディスプレイなどを含んでいてよい。
【0053】
第1スイッチSW1は、信号発生器14と第2コイルL2との間に接続されている。第1スイッチSW1は、制御部16の指令に応じて、信号発生器14と第2コイルL2との間の接続をオン/オフすることができる。第1スイッチSW1は、電気的な接続のオン/オフを切り替え可能な任意の構成のスイッチであってよい。
【0054】
第2スイッチSW2は、信号発生器14と位相角検出回路15との間に接続されている。第2スイッチSW2は、制御部16の指令に応じて、信号発生器14と位相角検出回路15との間の接続をオン/オフすることができる。第2スイッチSW2は、電気的な接続のオン/オフを切り替え可能な任意の構成のスイッチであってよい。
【0055】
第3スイッチSW3は、電圧測定回路13と位相角検出回路15との間に接続されている。第3スイッチSW3は、制御部16の指令に応じて、電圧測定回路13と位相角検出回路15との間の接続をオン/オフすることができる。第3スイッチSW3は、電気的な接続のオン/オフを切り替え可能な任意の構成のスイッチであってよい。
【0056】
(測定装置の動作)
測定装置10は、抵抗成分漏洩電流を測定するに際し、校正動作及び測定動作を実行する。校正動作及び測定動作について順に説明する。
【0057】
<校正動作>
まず、測定装置10の校正動作について説明する。測定動作を実行する直前に校正動作を実行することによって、測定装置10は、磁性コア11、第1コイルL1及び電流測定回路12に起因する位相の進み又は遅れを補正することができる。
【0058】
図3は、測定装置10が校正動作をしているときの様子を示す図である。校正動作をする際は、磁性コア11は、配線5を挟み込んでいない。そのため、図3においては、配電盤1、配線5、負荷2、キャパシタ3及び抵抗4を記載していない。
【0059】
入力部17は、校正動作を開始させるための操作をユーザから受け付け可能である。制御部16は、校正動作を開始させるための操作を入力部17がユーザから受け付けると、校正動作を開始する。
【0060】
校正動作を開始すると、制御部16は、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2をオンする。また、制御部16は、第3スイッチをオフする。
【0061】
続いて、制御部16は、信号発生器14に正弦波を発生させる。信号発生器14は、第1スイッチSW1を介して第2コイルL2に正弦波を出力する。また、信号発生器14は、第2スイッチSW2を介して位相角検出回路15に正弦波を出力する。
【0062】
信号発生器14が出力する正弦波の周波数は、抵抗成分漏洩電流の測定対象周波数と同じ周波数であってよい。例えば、測定対象周波数が50Hzである場合、信号発生器14が出力する正弦波の周波数は50Hzであってよい。また、例えば、測定対象周波数が60Hzである場合、信号発生器14が出力する正弦波の周波数は60Hzであってよい。
【0063】
第2コイルL2に信号発生器14から正弦波が入力されると、第1コイルL1は、第2コイルL2に入力された正弦波に応じた電流を検出する。電流測定回路12は、第1コイルL1に流れる電流を測定し、測定した電流に対応する信号を、位相角検出回路15に出力する。
【0064】
位相角検出回路15は、信号発生器14が正弦波を出力しているときに電流測定回路12が測定した電流と、信号発生器14から入力される正弦波との間の校正用位相角を検出する。ここで位相角検出回路15が検出する校正用位相角は、磁性コア11、第1コイルL1及び電流測定回路12に起因する位相角である。
【0065】
位相角検出回路15は、検出した校正用位相角を制御部16に出力する。制御部16は、校正用位相角を保持する。
【0066】
<測定動作>
続いて、測定装置10の測定動作について説明する。校正動作が終了して、制御部16が校正用位相角を保持すると、測定装置10は、測定動作を実行することができる。
【0067】
図1は、測定装置10が測定動作をしているときの様子を示す図である。測定動作をする際は、磁性コア11が、抵抗成分漏洩電流の測定対象である配線5を挟み込んでいる。この際、配線5には電流が流れており、配線5は活線である。
【0068】
測定動作を開始すると、制御部16は、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2をオフする。また、制御部16は、第3スイッチをオンする。この際、制御部16は、信号発生器14に正弦波を出力させない。
【0069】
第1コイルL1は、磁性コア11が挟み込んでいる配線5の漏洩電流を検出する。電流測定回路12には第1コイルL1が検出した配線5の漏洩電流が入力される。これにより、電流測定回路12は、配線5の漏洩電流を測定する。電流測定回路12は、測定した漏洩電流に対応する信号を、位相角検出回路15に出力する。
【0070】
電圧測定回路13は、信号線5aの電圧とGND線5bの電圧との差分を配線5の電圧として測定する。電圧測定回路13は、測定した配線5の電圧に対応する信号を、第3スイッチSW3を介して位相角検出回路15に出力する。
【0071】
位相角検出回路15は、電流測定回路12が測定した漏洩電流と、電圧測定回路13が測定した配線5の電圧との間の位相角を検出する。
【0072】
位相角検出回路15は、検出した位相角を制御部16に出力する。
【0073】
制御部16は、測定動作において位相角検出回路15から取得した位相角θ1と、校正動作において位相角検出回路15から取得した校正用位相角θ2とに基づいて、補正位相角θを下記の式(3)のように算出する。
θ=θ1-θ2 (3)
【0074】
このように、測定動作において取得した位相角θ1を、校正動作において取得した校正用位相角θ2に基づいて補正することによって、制御部16は、磁性コア11、第1コイルL1及び電流測定回路12に起因する位相の進み又は遅れを補正した補正位相角θを算出することができる。
【0075】
制御部16は、電流測定回路12が測定した漏洩電流Ioと、上述の式(3)により算出した補正位相角θに基づいて、抵抗成分漏洩電流Iorを、下記の式(4)のように算出する。
Ior=Io×cosθ (4)
【0076】
制御部16は、算出した抵抗成分漏洩電流Iorを、表示部18に表示させる。
【0077】
以上のような一実施形態に係る測定装置10によれば、抵抗成分漏洩電流の測定の際に位相角を精度良く測定することが可能となる。より具体的には、測定装置10は、第2コイルL2及び位相角検出回路15に正弦波を出力可能な信号発生器14を備え、位相角検出回路15は、信号発生器14が正弦波を出力しているときに電流測定回路12が測定した電流と、信号発生器14から入力される正弦波との間の校正用位相角を検出可能である。そして、制御部16は、漏洩電流と電圧との間の位相角と、校正用位相角とに基づいて補正位相角を算出し、漏洩電流と補正位相角とに基づいて抵抗成分漏洩電流を算出する。このように、校正用位相角を検出し、位相角と校正用位相角とに基づいて補正位相角を算出することにより、測定装置10は、磁性コア11、第1コイルL1及び電流測定回路12に起因する位相の進み又は遅れを補正した補正位相角を算出することができる。したがって、測定装置10は、抵抗成分漏洩電流の測定の際に位相角を精度良く測定することができる。
【0078】
また、一実施形態に係る測定装置10によれば、校正用位相角を自動で算出することができるため、メンテナンス時などに、位相の進み又は遅れを調整したり補正したりする必要がない。したがって、作業者の負担を軽減することができる。また、校正用の設備を設けることを不要とすることができる。
【0079】
(変形例)
図4は、変形例に係る測定装置10aの概略構成を示す図である。図4を参照して、変形例に係る測定装置10aについて説明する。
【0080】
変形例に係る測定装置10aは、校正動作と測定動作とを同時に実行するという点で、図1に示した測定装置10の動作と異なる。
【0081】
変形例に係る測定装置10aの構成は、図1に示した測定装置10の構成と同様であるため、測定装置10aの構成の説明は省略する。
【0082】
変形例に係る測定装置10aは、校正動作と測定動作とを同時に実行する。そのため、変形例に係る測定装置10aは、図4に示すように、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3を全てオンした状態で動作する。
【0083】
なお、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3を全てオンした状態で動作するため、変形例に係る測定装置10aは、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3を備えていなくてもよい。この場合、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3の部分はショートしていてよい。
【0084】
変形例に係る測定装置10aの信号発生器14は、抵抗成分漏洩電流の測定対象周波数とは異なる周波数の正弦波を出力する。例えば、抵抗成分漏洩電流の測定対象周波数が50Hzである場合、信号発生器14は、50Hzとは異なる周波数の正弦波を出力する。
【0085】
このように、抵抗成分漏洩電流の測定対象周波数と、信号発生器14が出力する正弦波の周波数を異なる周波数とすることにより、測定装置10aは、校正動作と測定動作とを同時に実行することができる。
【0086】
測定対象周波数をFreq_meas、信号発生器14が出力する校正動作用の正弦波の周波数をFreq_calとして説明する。
【0087】
位相角検出回路15は、電流測定回路12が測定したFreq_calの周波数の電流と、信号発生器14から入力されるFreq_calの周波数の正弦波との間の位相角を、校正用周波数位相角として検出する。
【0088】
位相角検出回路15は、検出した校正用周波数位相角を制御部16に出力する。
【0089】
制御部16は、位相角検出回路15から取得した校正用周波数位相角θcalに基づいて、校正用位相角θ2を、下記の式(5)のように算出する。
【数1】
【0090】
また、位相角検出回路15は、電流測定回路12が測定したFreq_measの周波数の漏洩電流と、電圧測定回路13が測定した配線5のFreq_measの周波数の電圧との間の位相角θ1を検出する。
【0091】
位相角検出回路15は、検出した位相角θ1を制御部16に出力する。
【0092】
制御部16は、位相角検出回路15から取得した位相角θ1と、上述の式(5)に基づいて算出した校正用位相角θ2とに基づいて、補正位相角θを上述の式(3)に基づいて算出する。
【0093】
変形例に係る測定装置10aの信号発生器14は、上述のように抵抗成分漏洩電流の測定対象周波数とは異なる1つの周波数の正弦波を出力してもよいが、抵抗成分漏洩電流の測定対象周波数とは異なる2つの周波数の正弦波を出力してもよい。以下、信号発生器14が、抵抗成分漏洩電流の測定対象周波数とは異なる2つの周波数の正弦波を出力する場合の動作について説明する。
【0094】
測定対象周波数をFreq_meas、信号発生器14が出力する校正動作用の正弦波の一方の周波数をFreq_cal1、信号発生器14が出力する校正動作用の正弦波の他方の周波数をFreq_cal2、として説明する。なお、Freq_cal1は、Freq_measより小さい周波数であり、Freq_cal2は、Freq_measより大きい周波数である。
【0095】
位相角検出回路15は、電流測定回路12が測定したFreq_cal1の周波数の電流と、信号発生器14から入力されるFreq_cal1の周波数の正弦波との間の位相角を、第1の校正用周波数位相角として検出する。
【0096】
位相角検出回路15は、電流測定回路12が測定したFreq_cal2の周波数の電流と、信号発生器14から入力されるFreq_cal2の周波数の正弦波との間の位相角を、第2の校正用周波数位相角として検出する。
【0097】
位相角検出回路15は、検出した第1の校正用周波数位相角及び第2の校正用周波数位相角を制御部16に出力する。
【0098】
制御部16は、位相角検出回路15から取得した第1の校正用周波数位相角θcal1及び第2の校正用周波数位相角θcal2に基づいて、校正用位相角θ2を、下記の式(6)~(8)のように算出する。
【数2】
【数3】
【数4】
【0099】
また、位相角検出回路15は、電流測定回路12が測定したFreq_measの周波数の漏洩電流と、電圧測定回路13が測定した配線5のFreq_measの周波数の電圧との間の位相角θ1を検出する。
【0100】
位相角検出回路15は、検出した位相角θ1を制御部16に出力する。
【0101】
制御部16は、位相角検出回路15から取得した位相角θ1と、上述の式(6)~(8)に基づいて算出した校正用位相角θ2とに基づいて、補正位相角θを上述の式(3)に基づいて算出する。
【0102】
このように、信号発生器14が測定対象周波数とは異なる2つの周波数の正弦波を出力することにより、信号発生器14が測定対象周波数とは異なる1つの周波数の正弦波を出力する場合に比べて、比較例に係る測定装置10aは、広い周波数範囲に亘って、補正位相角θを精度良く算出することができる。
【0103】
(比較例)
図5は、比較例に係る測定装置200の概略構成図である。
【0104】
比較例に係る測定装置200は、磁性コア11と、第1コイルL1と、電流測定回路12と、電圧測定回路13と、位相角検出回路15と、制御部16と、入力部17と、表示部18とを備える。
【0105】
比較例に係る測定装置200は、第2コイルL2、信号発生器14、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3を備えていないという点で、図1に示した一実施形態に係る測定装置10と相違する。
【0106】
比較例に係る測定装置200は、第2コイルL2及び信号発生器14を備えていないため、図1に示した測定装置10が実行可能な校正動作を実行することができない。
【0107】
そのため、比較例に係る測定装置200は、磁性コア11、第1コイルL1及び電流測定回路12に起因する位相の進み又は遅れを、校正動作によって補正することができない。したがって、比較例に係る測定装置200は、抵抗成分漏洩電流を測定する際に位相角を精度良く測定することができない。
【0108】
本開示は、その精神又はその本質的な特徴から離れることなく、上述した実施形態以外の他の所定の形態で実現できることは当業者にとって明白である。従って、先の記述は例示的であり、これに限定されない。開示の範囲は、先の記述によってではなく、付加した請求項によって定義される。あらゆる変更のうちその均等の範囲内にあるいくつかの変更は、その中に包含される。
【0109】
例えば、上述した各構成部の配置及び個数等は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の配置及び個数等は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【0110】
例えば、上述した実施形態において、抵抗成分漏洩電流を測定する際に位相角を補正することができる測定装置10について説明した。しかしながら、上述した位相角を補正する技術は、位相角を測定する他の装置に対しても適用可能である。例えば、クランプ電力計においても位相角を精度良く測定することが重要であるが、上述の位相角を補正する技術は、クランプ電力計にも適用可能である。上述の位相角を補正する技術をクランプ電力計に実装すれば、クランプ電力計は、精度良く位相角を測定することができるため、精度良く電力測定を行うことができる。
【符号の説明】
【0111】
1 配電盤
2 負荷
3 キャパシタ
4 抵抗
5 配線
5a 信号線
5b GND線
10、10a 測定装置
11 磁性コア
12 電流測定回路
13 電圧測定回路
14 信号発生器
15 位相角検出回路
16 制御部
17 入力部
18 表示部
L1 第1コイル
L2 第2コイル
SW1 第1スイッチ
SW2 第2スイッチ
SW3 第3スイッチ
200 測定装置
図1
図2
図3
図4
図5