(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162491
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】駆動制御装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/14 20060101AFI20241114BHJP
B65H 5/02 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G03G21/14
B65H5/02 J
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078039
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷 真希
【テーマコード(参考)】
2H270
3F049
【Fターム(参考)】
2H270KA51
2H270LA24
2H270LA70
2H270LC11
2H270LC12
2H270LC15
2H270LC19
2H270MC55
2H270MD12
2H270MF08
2H270MH09
2H270PA24
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC06
3F049AA03
3F049DA12
3F049EA07
3F049EA23
3F049LA01
3F049LB03
(57)【要約】
【課題】駆動力伝達機構と組合せてソレノイドを使用する場合の稼働音を効果的に低減すること。
【解決手段】駆動制御装置は、第1位置と第2位置との間で変位可能な可動部材と、前記第1位置にある前記可動部材を磁力によって前記第2位置へ変位させるソレノイドと、前記ソレノイドへの給電を制御する制御手段と、前記可動部材の位置に応じて状態遷移する伝達機構とを備える。前記伝達機構は、第1状態及び第2状態のうちの一方においてモータの駆動力を被駆動部材へ伝達し、他方において前記駆動力を前記被駆動部材へ伝達しない。前記制御手段は、前記ソレノイドが前記可動部材を変位させる際に、第1期間にて前記可動部材が前記第1位置から変位するように第1デューティ比で前記ソレノイドへ電流を供給させ、前記第1期間より後の第2期間にて前記第1デューティ比よりも低い第2デューティ比で前記ソレノイドへ電流を供給させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1位置と第2位置との間で変位可能な可動部材と、
前記第1位置にある前記可動部材を磁力によって前記第2位置へ変位させるソレノイドと、
電源から前記ソレノイドへの電流の供給を制御する制御手段と、
前記可動部材の位置に応じて、第1状態及び第2状態の間で遷移する伝達機構であって、
前記第1状態及び前記第2状態のうちの一方において、モータの駆動力を被駆動部材へ伝達し、
前記第1状態及び前記第2状態のうちの他方において、前記モータの前記駆動力を前記被駆動部材へ伝達しない、
前記伝達機構と、
を備え、
前記制御手段は、前記ソレノイドが前記可動部材を前記第1位置から前記第2位置へ変位させる際に、
第1期間において前記可動部材が前記第1位置から前記第2位置へ向けて変位するように第1デューティ比で前記ソレノイドへ電流を供給させ、
前記第1期間より後かつ前記可動部材が前記第2位置に到達する前に開始される第2期間において、前記第1デューティ比よりも低い第2デューティ比で前記ソレノイドへ電流を供給させる、
駆動制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記可動部材を前記第1位置から前記第2位置へ変位させる際に、
第3期間において前記第1デューティ比よりも低く前記第2デューティ比よりも高い第3デューティ比で前記ソレノイドへ電流を供給させ、
前記第3期間より後の第4期間において、前記第3デューティ比よりも低い第4デューティ比で前記ソレノイドへ電流を供給させ、
前記第1期間は、前記第4期間より後の期間である、
請求項1に記載の駆動制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1期間の前に、前記第3期間及び前記第4期間を複数回反復し、
前記第3デューティ比は、反復の都度逓増される、
請求項2に記載の駆動制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
第1動作モードにおいて、前記第3期間、前記第4期間、前記第1期間、及び前記第2期間にわたる制御シーケンスで前記ソレノイドへ電流を供給させ、
前記第1動作モードと異なる第2動作モードにおいて、前記第1期間及び前記第2期間のみからなる制御シーケンスで前記ソレノイドへ電流を供給させる、
請求項2に記載の駆動制御装置。
【請求項5】
前記駆動制御装置は、シートに画像を形成する画像形成装置において使用され、
前記第1動作モードは、片面印刷モードを含み、
前記第2動作モードは、両面印刷モードを含み、、
前記被駆動部材は、前記片面印刷モードにおいてシートを搬送せず、前記両面印刷モードにおいてシートを搬送するローラである、
請求項4に記載の駆動制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記第3期間、前記第4期間、前記第1期間、及び前記第2期間にわたる制御シーケンスによって、複数のソレノイドを用いて複数の可動部材をそれぞれ変位させる、請求項2に記載の駆動制御装置。
【請求項7】
温度を検知するセンサをさらに備え、
前記制御手段は、前記センサから出力される信号に基づいて、前記第1デューティ比、前記第2デューティ比、前記第3デューティ比及び前記第4デューティ比のうちの少なくとも1つのデューティ比を決定する、
請求項2に記載の駆動制御装置。
【請求項8】
前記モータの前記駆動力は、前記第1状態及び前記第2状態の双方において前記伝達機構へ印加される、請求項1に記載の駆動制御装置。
【請求項9】
前記伝達機構は、前記第1位置にある前記可動部材により係止される係止部を有し、
前記第1状態において、前記係止部と前記可動部材が係合しており、
前記第2状態において、前記係止部と前記可動部材が係合していない、
請求項1に記載の駆動制御装置。
【請求項10】
前記第2デューティ比は、前記係止部と前記可動部材との係合が解除された状態で、前記可動部材を前記第2位置へ向けて変位させることが可能な前記ソレノイドの前記磁力の強さに対応する、請求項9に記載の駆動制御装置。
【請求項11】
前記可動部材と連結され、前記可動部材を移動させるように前記ソレノイドの磁力によって動く駆動部材をさらに有する、
請求項9に記載の駆動制御装置。
【請求項12】
温度を検知するセンサをさらに備え、
前記制御手段は、前記センサから出力される信号に基づいて、前記第1デューティ比及び前記第2デューティ比のうちの少なくとも1つのデューティ比を決定する、
請求項1に記載の駆動制御装置。
【請求項13】
補正値を予め記憶する記憶手段、をさらに備え、
前記制御手段は、前記記憶手段に記憶されている前記補正値に基づいて、少なくとも1つのデューティ比を調整する、
請求項1に記載の駆動制御装置。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の駆動制御装置と、
シートに画像を形成する画像形成手段と、
を備える画像形成装置。
【請求項15】
前記被駆動部材は、前記シートを搬送するローラである、請求項14に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駆動制御装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートに画像を形成する画像形成装置において、電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換するアクチュエータとしてソレノイドが利用されている。とりわけ、ローラ、ドラム及びベルトといった構成要素への駆動力の伝達及び遮断のために、ソレノイドは、何らかの駆動力伝達機構と組合せて使用される。特許文献1は、ソレノイドの磁力で変位するプランジャがアーム部材を旋回させてアーム部材の先端を遊星歯車機構の内歯ギアに係合させることで、駆動力が伝達される伝達状態と駆動力の伝達が遮断される遮断状態との間の切り替えを行う技術を開示している。
【0003】
ソレノイドは便利なアクチュエータであるものの、ソレノイドの磁力で動く部材の他の部材との衝突に起因する稼働音が、ユーザに不快感を与えてしまうことがある。特許文献2は、ピックアップローラを原稿へ向けて下降させる際のプランジャと連結部材との衝突に起因する稼働音を低減するための技術を開示している。特許文献2により開示された技術は、ソレノイドの引込み力と機械的負荷とが釣り合うようにソレノイドへ供給されるパルス信号の周期を変化させて、プランジャの変位速度を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-84519号公報
【特許文献2】特開2009-149385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、駆動力伝達機構と組合せてソレノイドを使用する場合、駆動力が伝達される伝達状態と遮断状態との間の遷移の際に負荷が不連続に変化するため、特許文献2により開示された技術では稼働音を十分に低減できないことがある。
【0006】
そこで、本発明は、駆動力伝達機構と組合せてソレノイドを使用する場合の稼働音を効果的に低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある観点によれば、第1位置と第2位置との間で変位可能な可動部材と、前記第1位置にある前記可動部材を磁力によって前記第2位置へ変位させるソレノイドと、電源から前記ソレノイドへの電流の供給を制御する制御手段と、前記可動部材の位置に応じて、第1状態及び第2状態の間で遷移する伝達機構であって、前記第1状態及び前記第2状態のうちの一方において、モータの駆動力を被駆動部材へ伝達し、前記第1状態及び前記第2状態のうちの他方において、前記モータの前記駆動力を前記被駆動部材へ伝達しない、前記伝達機構と、を備え、前記制御手段は、前記ソレノイドが前記可動部材を前記第1位置から前記第2位置へ変位させる際に、第1期間において前記可動部材が前記第1位置から前記第2位置へ向けて変位するように第1デューティ比で前記ソレノイドへ電流を供給させ、前記第1期間より後かつ前記可動部材が前記第2位置に到達する前に開始される第2期間において、前記第1デューティ比よりも低い第2デューティ比で前記ソレノイドへ電流を供給させる、駆動制御装置が提供される。前記駆動制御装置と、シートに画像を形成する画像形成手段と、を備える画像形成装置もまた提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、駆動力伝達機構と組合せてソレノイドを使用する場合の稼働音を効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】ソレノイドを使用した伝達機構の状態の切り替えについての第1の説明図。
【
図1B】ソレノイドを使用した伝達機構の状態の切り替えについての第2の説明図。
【
図2】第1実施形態に係る画像形成装置の全体的な構成の一例を示す概略図。
【
図3】第1実施形態に係る画像形成装置の制御機能の構成の一例を示すブロック図。
【
図4】伝達機構及び切替装置の構成の一例について説明するための概略図。
【
図5】第1実施形態に係るソレノイドへの給電のデューティ比の経時的な変化の一例を表すグラフ。
【
図6A】第1位置にある可動部材と伝達機構との間の位置関係を示す説明図。
【
図6B】デューティ比が引き下げられる直前の可動部材と伝達機構との間の位置関係を示す説明図。
【
図6C】第2位置に到達した可動部材と伝達機構との間の位置関係を示す説明図。
【
図7】第1実施形態に係る駆動制御処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図8】第2実施形態に係るソレノイドへの給電のデューティ比の経時的な変化の一例を表すグラフ。
【
図9】第2実施形態に係る駆動制御処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図10】第3実施形態に係る画像形成装置の制御機能の構成の一例を示すブロック図。
【
図11】デューティ比の調整に使用される調整データの構成の一例を示す説明図。
【
図12】ソレノイドの温度と可動部材の変位に要するデューティ比との間の関係を表すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<1.ソレノイドを使用した伝達機構の状態の切り替え>
図1A及び
図1Bは、ソレノイドを使用した伝達機構の状態の切り替えについての説明図である。図示した例において、ソレノイド10は、電源(図示せず)から電流を供給されることで磁力を生じさせる。
図1Aは、ソレノイド10が給電されていない状態を示しており、
図1Bは、ソレノイド10が給電されている状態を示している。
【0012】
第1可動部材11は、ソレノイド10のハウジングに設けられる支点10aにより軸支され、支点10aの周りに旋回可能な板状の部材である。図中で、第1可動部材11の第1端11aは支点10aよりも右側にあり、第1可動部材11の第2端11bは支点10aよりも左側にある。第1可動部材11の断面は略コの字状であり、第2端11bからある距離だけ離れた屈曲点11cにおいて屈曲している。第1可動部材11は、第1端11aの近傍でバネ12の上端に接続される。バネ12は、第1可動部材11の第1端11aを図中で下方向に付勢し、それにより、支点10aで軸支された第1可動部材11の反対側の第2端11bは、図中で上方向に付勢される。
【0013】
第2可動部材(連結部材)13は、旋回軸14の周りで旋回可能な部材である。第2可動部材13は、旋回軸14と反対側の端部に開口13aを有し、開口13aは、第1可動部材11の第2端11bを収容する。また、第2可動部材13は、突起13bを有する。
【0014】
回転部材(被規制部材)15は、回転軸15aの周りで回転可能な部材(例えば、カム)である。回転部材15は、例えば定常的にモータ(図示せず)の駆動力を印加されることで、図中で時計回りの方向(方向D1)に回転しようとする。回転部材15は、その外周において係止部15bを有する。係止部15bは、
図1Aの例において、第1位置にある第2可動部材13の突起13bと係合する。
図1Aの状態で、第1可動部材11の第2端11bは、開口13aの内側面に当接し、第2可動部材13を図中で反時計回りに旋回する方向に付勢する。したがって、回転部材15の方向D1への回転は、係止部15bが突起13bにより係止されているために、抑止される。
【0015】
図1Bの例において、ソレノイド10に電流が供給されると、第1可動部材11はソレノイド10の磁力によって支点10aの周りで反時計回りに旋回し、第1可動部材11の屈曲点11cが図中で下方向(方向D2)へ移動する。屈曲点11cは、開口13aの内側面に当接し、第2可動部材13を旋回軸14の周りで時計回りに旋回させる。すると、第2可動部材13の突起13bは、回転部材15から離脱して第2位置へ退避する。即ち、第2可動部材13は、第1位置と第2位置との間で変位可能である。ソレノイド10は、磁力によって第2可動部材13を第1位置から第2位置に変位させる。また、第1可動部材11は、第2可動部材13と連結され、第2可動部材13を移動させるようにソレノイド10の磁力によって動く駆動部材としての機能を有する。結果的に、
図1Bの状態で、回転部材15の回転は抑止されず、回転部材15はモータの駆動力を受けて方向D1へ回転する。
【0016】
ここで説明した回転部材15を何らかの被駆動部材と直接的に又は間接的に接続することで、回転部材15を含む機構を、モータからの駆動力を被駆動部材へ伝達する伝達機構として構成することができる。この伝達機構は、ソレノイド10への給電を制御することにより、駆動力を伝達する伝達状態と駆動力を伝達しない遮断状態との間で切替可能(遷移可能)である。また、ソレノイド10、第1可動部材11、第2可動部材13を含む機構を、伝達機構の伝達状態と遮断状態とを切り替える切替装置16と呼ぶことができる。切替装置16は、バネ12を含んでいてもよい。
【0017】
ここで、
図1Aに示されるように、第2可動部材13と回転部材15が係合し、第2可動部材13の突起13bが回転部材15の係止部15bを係止している状態においては、第2可動部材13と回転部材15との間に摩擦力などの力が生じている。さらに、回転部材15がモータからの力を受けており、第2可動部材13の突起13bと回転部材15の係止部15bとの間に、回転部材15が回転しようとする力による機械的な応力がかかっている場合がある。そのため、回転部材15と第2可動部材13が係合していない状態と比較すると、ソレノイド10への給電によって第2可動部材13の突起13bが(力に打ち克って)回転部材15から離脱するために、より大きなソレノイド10の磁力が必要とされる。一方で、第2可動部材13と回転部材15の係合が一旦解除されると、ソレノイド10の磁力が第2可動部材13に大きな加速度を与え、その加速度を打ち消す力がもはや存在しないために、第2可動部材13が過剰な速度で旋回することになる。この第2可動部材13が他の部材に衝突すると、ユーザにとって不快な稼働音が発生する。
【0018】
次節以降で、こうした不快な稼働音を低減するためのいくつかの実施形態について詳しく説明する。
【0019】
<2.第1実施形態>
<2-1.装置の全体的な構成>
図2は、第1実施形態に係る画像形成装置100の全体的な構成の一例を示す概略図である。本実施形態において、画像形成装置100は、電子写真方式でシートに画像を形成するプリンタである。但し、本開示に係る技術は、コピー機、ファクシミリ、及び複合機などの他の種類の画像形成装置にも適用可能である。また、本開示に係る技術は、インクジェット方式などの他の画像形成方式で動作する画像形成装置にも適用可能である。
【0020】
画像形成装置100のカセット20は、シートの束を収容する。給送ローラ21は、カセット20内のシートの束からシートPをピックアップし、シートPを搬送路40へ給送する。分離ローラ対22は、シートの重送を防止するために1枚のシートPを残りのシートから分離し、シートPを搬送路40に沿ってへ搬送する。レジローラ対23を通過したシートPの先端は、シートセンサ41により検知される。
【0021】
プロセスカートリッジ30は、帯電ローラ31、感光ドラム32、現像ローラ35、及びトナー収容部(図示せず)を含む一体的なユニットとして、画像形成装置100に対し着脱可能である。プロセスカートリッジ30は、シートに画像を形成する画像形成手段であると見做されてもよい。プロセスカートリッジ30は、シートセンサ41によりシートPの先端が検知されたタイミングを基準として、画像形成プロセスの実行を開始する。まず、帯電ローラ31は、図中で時計回りに回転する感光ドラム32の表面を一様に帯電させる。露光器33は、印刷ジョブの入力画像データに従ってレーザ光を射出する。レーザミラー34は、露光器33からのレーザ光を反射して、感光ドラム32の表面をレーザ光に露光させる。その結果、感光ドラム32の表面に静電潜像が形成される。現像ローラ35は、感光ドラム32にトナーを供給することにより、感光ドラム32の表面上の静電潜像を現像して、トナー像を形成する。感光ドラム32は、トナー像を担持したままさらに回転し、転写ローラ36と協働して、転写位置に到達したシートPにトナー像を転写する。
【0022】
定着器38は、転写位置を通過したシートPを加圧し及び加熱することにより、シートPにトナー像を定着させる。片面印刷モードの場合、シートPは、排出ローラ対25により排出トレイ29へ排出される。両面印刷モードの場合、シートPは、フラッパ(図示せず)によって反転経路43へ送り込まれる。シートPの搬送方向は、シートセンサ42がシートPの後端を検知したタイミングを基準に反転される。反転ローラ対26は、シートPを両面搬送路44へ送り込む。シートセンサ45は、両面搬送路44へ進入したシートPを検知する。両面搬送路44には、両面搬送ローラ対24が配設されている。両面搬送ローラ対24は、両面印刷モードにおいてシートを搬送し、両面搬送路44から搬送路40へシートPを表裏反転した状態で送り込む。両面搬送ローラ対24は、片面印刷モードにおいてはシートを搬送しない。感光ドラム32は、転写ローラ36と協働して、転写位置に再度到達したシートPに裏面のためのトナー像を転写する。さらに定着器38を通過して両面印刷が完了したシートPは、排出ローラ対25により排出トレイ29へ排出される。
【0023】
上述した画像形成装置100の構成に含まれる各ローラは、モータの駆動力を受けて動作する被駆動部材である。後に説明するように、画像形成装置100は、モータの駆動力を少なくとも1つの被駆動部材へ伝達する伝達機構を備える。伝達機構の状態は、駆動力を被駆動部材へ伝達する伝達状態、及び駆動力を被駆動部材へ伝達しない遮断状態の間で切り替え可能とされる。伝達機構の状態の切り替えは、ソレノイドの磁力を制御することにより行われる。
【0024】
例えば、両面搬送ローラ対24は、後述する伝達機構140(
図3及び
図4参照)を介してモータへ機械的に接続される。伝達機構140は、ソレノイドに定常的に電流が供給されることで、遮断状態に維持される。両面印刷モードにおいて、シートPを搬送路40へ復帰させるタイミングが到来すると、ソレノイドへの電流の供給が中断され、伝達機構140の状態は伝達状態へ遷移する。その結果、両面搬送ローラ対24が回転を開始し、シートPが両面搬送路44から搬送路40へ送り込まれる。シートセンサ45がシートPの後端を検知すると、ソレノイドへの電流の供給が再開され、伝達機構140の状態は遮断状態へ遷移し、両面搬送ローラ対24は回転を停止する。両面搬送ローラ対24がシートPを搬送路40へ送り込むタイミングは、例えば、後続のシートとの間の十分な間隔が確保されるように決定され得る。当然ながら、
図1を用いて説明した他のローラもまた、同じ伝達機構140又は他の伝達機構を介して、モータからの駆動力を受け得る。
【0025】
<2-2.制御機能の構成>
図3は、画像形成装置100の制御機能の構成の一例を示すブロック図である。
図3に示したコントローラ110は、画像形成装置100の様々な部材の駆動を制御する駆動制御部である。例えば、コントローラ110は、マイクロプロセッサ又はマイクロコントローラといった汎用的な処理回路を含んでもよい。また、コントローラ110は、ASIC又はFPGAといった専用の処理回路を含んでもよい。以下に説明する制御機能は、ソフトウェア、ファームウェア及びハードウェアの任意の組合せによって実現されてよい。
図3を参照すると、コントローラ110は、画像形成制御部120、記憶部125、及び搬送制御部130を含む。
【0026】
画像形成制御部120は、昇圧回路121、露光制御回路122及び定着制御回路123へ接続される制御手段である。昇圧回路121は、電源(図示せず)の電圧を昇圧し、帯電ローラ31、現像ローラ35、及び転写ローラ36へ、それぞれ感光ドラム32の帯電、静電潜像の現像、及びトナー像の転写のための高電圧を出力する。露光制御回路122は、露光器33から射出されるレーザ光のオン/オフ、及びレーザミラー34による感光ドラム32の表面上でのレーザ光の走査を制御する。定着制御回路123は、定着器38によるシートPの加圧及び加熱を制御する。定着制御回路123は、定着器38のヒータの温度を検知するサーミスタ(図示せず)へ接続され得る。
【0027】
記憶部125は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取専用メモリ(ROM)及びハードディスクドライブ(HDD)の任意の組合せを含む記憶手段である。RAMは、一時的なコンピュータ読取可能な記憶媒体の一例である。ROM及びハードディスクは、非一時的なコンピュータ読取可能な記憶媒体の一例である。記憶部125は、1つ以上の制御プログラム及び様々なデータ(例えば、設定データ及び画像データ)を記憶する。
【0028】
コントローラ110、より具体的には搬送制御部130は、センサ群41、42、...、直流(DC)生成回路131、モータ132、給送クラッチ133、及び伝達機構140へ接続される制御手段である。DC生成回路131は、後述するソレノイドなどいくつかのアクチュエータへの直流電流の供給源となる低電圧のDC電源を生成する。モータ132は、画像形成装置100が具備する複数の被駆動部材を駆動させる駆動力を生成する。給送クラッチ133は、モータ132からの駆動力を給送ローラ21へ伝達し、又は給送ローラ21への駆動力の伝達を遮断する。伝達機構140は、第1状態において、モータ132からの駆動力を両面搬送ローラ対24へ伝達し、第2状態において、両面搬送ローラ対24への駆動力の伝達を遮断する。次項で説明するように、伝達機構140の状態は、ソレノイドの磁力によって変位可能な可動部材の位置に応じて遷移する。なお、給送クラッチ133もまた伝達機構140と同様の構成を有していてもよい。
【0029】
<2-3.伝達機構の構成例>
図4は、伝達機構140及び切替装置160の構成の一例について説明するための概略図である。
図4の例において、伝達機構140は、遊星歯車機構150を含む。伝達機構140は、第1ギア24a及び第2ギア24bを含んでいてもよい。切替装置160は、ソレノイド141、第1可動部材143、第2可動部材145を含む。切替装置160は、バネ142を含んでいてもよい。
図4は、ソレノイド141が給電されていない状態を示している。
図4に示した伝達機構140及び切替装置160は、
図1A及び
図1Bで示した伝達機構及び切替装置16と同等の構成を有していてよい。
【0030】
第1可動部材(駆動部材)143は、ソレノイド141のハウジングにより軸支されて旋回可能な板状の部材である。第1可動部材143は、
図1A及び
図1Bにおける第1可動部材11に相当する。ソレノイド141は、
図1A及び
図1Bにおけるソレノイド10に相当する。第1可動部材143は、一端の近傍でバネ142の上端に接続される。バネ142は、第1可動部材143の当該一端を図中で下方向に付勢する。それにより、第1可動部材143の他端は図中で上方向に付勢される。第2可動部材145は、旋回軸144の周りで旋回可能な部材である。第2可動部材(可動部材)145は、
図1A及び
図1Bにおける第2可動部材13に相当する。第2可動部材145は、旋回軸144と反対側の端部に開口145aを有する。開口145aが第1可動部材143の上記他端を収容することで、第1可動部材143及び第2可動部材145は、双方が連動して旋回可能な形で互いに連結される。本実施形態では、以下に説明するように、第1可動部材143がソレノイド141の磁力によって動くことで、第2可動部材145が第1位置と第2位置との間で変位する。第2可動部材145は、突起145bを有する。切替装置160は、第1可動部材143及び第2可動部材145を含むストッパ部を有するということができる。第2可動部材145が第1位置にあり、カム151と係合している状態を、ストッパ部の規制状態と呼ぶことができる。第2可動部材145が第2位置にあり、カム151から離脱している状態を、ストッパ部の解除状態と呼ぶことができる。つまり、ストッパ部は、カム151と係合する規制状態(係合状態)と、カム151から離脱した解除状態(離脱状態)を取ることができる。ソレノイド141への電流の供給が変化することにより、ストッパ部の規制状態と解除状態とが切り替えられる。
【0031】
遊星歯車機構150は、典型的には、太陽歯車、遊星歯車、遊星キャリア、及び内歯車から構成されるが、
図4ではその構成の一部のみが簡略的に示されている。
【0032】
本実施形態において、カム151(被規制部材)は、遊星歯車機構150の太陽歯車と接続されている。カム151は、
図1A及び
図1Bにおける回転部材15に相当する。カム151は、その外周において係止部151bを有する。係止部151bは、
図4に示した第1位置にある第2可動部材145の突起145bと係合する。この状態で、太陽歯車の回転は抑止される。出力歯車152は、遊星歯車機構150の遊星キャリアと接続されている。遊星歯車機構150の内歯車は、モータ132の駆動力を受けて定常的に図中で反時計回りに回転する。太陽歯車の回転が抑止されている場合、遊星歯車機構150の遊星歯車は内歯車の回転に連動して太陽歯車の周りを反時計回りに公転し、遊星キャリアを出力歯車152と共に回転軸の周りに反時計回りに回転させる。出力歯車152は、両面搬送ローラ対24の第1ギア24aと係合しており、第1ギア24aは第2ギア24bと係合している。出力歯車152が回転すると、第1ギア24a及び第2ギア24bが連動して(但し互いに逆方向に)回転し、第1ギア24a及び第2ギア24bと同軸の両面搬送ローラ対24が回転する。このとき、シートPが両面搬送ローラ対24に到達すると、シートPは両面搬送ローラ対24の回転によって図中で左から右へ搬送されることになる。
【0033】
一方、ソレノイド141に電流が供給されると、第1可動部材143がソレノイド141の磁力によって反時計回りに旋回し、第1可動部材143の左端が開口145a内で第2可動部材145を押し下げて、第1可動部材143を時計回りに旋回させる。すると、第1位置においてカム151の係止部151bを係止することで太陽歯車の回転を抑止していた第2可動部材145の突起145bがカム151から離脱し、第2位置へ変位する。この状態で、太陽歯車及びカム151は回転可能となる。太陽歯車の回転が抑止されていない(太陽歯車が負荷を受けていない)場合、遊星歯車は、太陽歯車の周りを公転することなく、それぞれ自転する(それに連動して太陽歯車は空転する)。したがって、遊星キャリアが回転しないため、出力歯車152、第1ギア24a及び第2ギア24bもまた回転せず、モータ132から両面搬送ローラ対24への駆動力の伝達が遮断される。なお、遊星歯車機構150の構成は、この構成に限定されない。太陽歯車、遊星歯車、遊星キャリアの3つのうちの1つがカム151と接続され、残り2つのうちの1つがモータ132によって駆動され、最後の1つが出力歯車152と接続されていればよい。
【0034】
ソレノイド141への電流の供給が再び停止されると、第1可動部材143は、バネ142の弾性力によって時計回りに旋回し、第2可動部材145を旋回軸144の周りで反時計回りに旋回させる。すると、第2可動部材145の突起145bが第2位置から第1位置へ復帰して、カム151の係止部151bを係止する。それにより、モータ132から両面搬送ローラ対24への駆動力の伝達が再開され、両面搬送ローラ対24が回転するようになる。
【0035】
ここでは、伝達機構の係止部が可動部材と係合している第1状態及び可動部材と係合していない第2状態のうちの第1状態において、伝達機構がモータの駆動力を被駆動部材へ伝達する例を説明した。被駆動部材とは、例えば、シートの搬送に関与するローラであり得る。但し、本開示に係る技術は、かかる例には限定されない。伝達機構は、上述した例とは逆に、第1状態においてモータの駆動力を被駆動部材へ伝達せず、第2状態においてモータの駆動力を被駆動部材へ伝達してもよい。例えば、第1位置に付勢されている可動部材が、出力歯車と連動して回転可能な回転体の係止部を係止するような構成を採用することで、第1状態において出力歯車の回転を抑止してモータの駆動力の被駆動部材への伝達を遮断することができる。
【0036】
なお、ソレノイドの磁力が直接的に作用する可動部材と、被規制部材と係合する可動部材との間に、互いに連動するいくつの部材が介在してもよい。また、ソレノイドの磁力が直接的に作用する可動部材自体が被規制部材と係合してもよい。例えば、
図4を用いて説明した第1可動部材143の一端に、カム151の係止部151bと係合する突起が設けられてもよい。
【0037】
<2-4.ソレノイドの給電制御>
前項で説明した伝達機構140には、第2可動部材145が第1位置にある第1状態及び第2可動部材145が第2位置にある第2状態の双方において、モータ132の駆動力が印加される。搬送制御部130は、ソレノイド141への電流の供給を制御するように構成される。搬送制御部130は、例えば、両面搬送ローラ対24への駆動力の伝達を遮断しようとする際に、DC生成回路131からソレノイド141へ電流を供給させることにより、第2可動部材145を第1位置から第2位置へ変位させる。このとき、搬送制御部130は、第2可動部材145が遊星歯車機構150から離脱した後の第2可動部材145の旋回速度を低減するために、ソレノイド141への電流の供給量を経時的に変化させる。ここでは、電流の供給量の変化は、限定ではないものの、パルス変調方式(例えば、パルス振幅変調又はパルス幅変調)で実現されるものとする。即ち、搬送制御部130は、ソレノイド141への給電のデューティ比を変化させてソレノイド141の磁力を増減し、それにより可動部材の動きを制御する。
【0038】
図5は、ソレノイド141への給電のデューティ比の経時的な変化の一例を表すグラフを示している。
図5のグラフG1の横軸は時間の経過を表し、縦軸はソレノイド141への給電のデューティ比をパーセンテージで表す。
【0039】
時刻T0は、ソレノイド141への給電が開始されるタイミングである。時刻T0から時刻T1までの第1期間において、搬送制御部130は、第1デューティ比R1でDC生成回路131からソレノイド141へ電流を供給させる。次いで、搬送制御部130は、第1期間より後の第2期間において、第1デューティ比R1よりも低い第2デューティ比R2でDC生成回路131からソレノイド141へ電流を供給させる。第2期間は、両面搬送ローラ対24への駆動力の伝達の再開のためにDC生成回路131からソレノイド141への給電が停止されるまで継続する。第1期間の間に、第2可動部材145とカム151の係合が解除され、第2可動部材145の突起145bが係止部151bから離脱する。第1期間は第2可動部材が第2位置に到達する前に終了し、第2期間は、第1期間の終了後かつ第2可動部材が第2位置に到達する前に開始される。言い換えれば、第1期間の長さは第2可動部材145が第1位置から第2位置に移動するまでにかかる時間よりも短い。つまり、第2可動部材145が第1位置から第2位置へ向けて変位を開始するように、ソレノイド141には第1デューティ比R1で電流が供給される。そして、第2可動部材145とカム151の係合が解除された後、第2可動部材145が第2位置に到達する前に、ソレノイド141には第2デューティ比R2で電流が供給される。
【0040】
第1デューティ比R1は、モータ132の駆動力に打ち克って第2可動部材145の突起145bを係止部151bから離脱させるために十分なソレノイド141の磁力の強さに対応する。第1デューティ比R1は、モータ132の駆動力に依存するカム151の負荷及び係止部151bの係合面の摩擦、機械的な及び電気的なばらつき、ソレノイド141の特性、並びに温度上昇の影響などを考慮して、予め決定され得る。第1期間の長さは、第2可動部材145の突起145bが係止部151bから離脱するために十分長く、且つ第2可動部材145(及び連動して動く第1可動部材143)が他の部材と衝突するまでの時間長よりも短くなるように、予め決定され得る。つまり、第2可動部材145とカム151が係合した状態(突起145bと係止部151bが係合した状態)で、ソレノイド141に第1デューティ比R1で電流が供給された場合、第2可動部材145は第1位置から第2位置に向けて変位を開始することができる。言い換えれば、この場合、第2可動部材145が受ける力は、第2可動部材145が第1位置から第2位置へ向けて動くために必要な最低限の力よりも大きい。第2デューティ比R2は、係止部151bから離脱した第2可動部材145を第2位置へ向けて変位させるために必要なソレノイド141の磁力の強さに対応する。つまり、第2デューティ比R2は、係止部151bと第2可動部材145の係合が解除された状態で、第2可動部材145を第2位置へ向けて変位させることが可能なソレノイド141の磁力の強さに対応する。第2デューティ比R2は、機械的な及び電気的なばらつきを考慮して、バネ142の弾性力に抗して第2可動部材145を確実に第2位置へ向けて変位させることができる範囲内で十分に低い値に予め決定され得る。第2期間においては、第2可動部材145にカム151の負荷は掛からないことから、第2デューティ比R2を、第1デューティ比R1よりも有意に低くすることができる。なお、第2可動部材145とカム151が係合した状態で、ソレノイド141に第2デューティ比R2で電流が供給された場合、第2可動部材145とカム151の係合が維持される。言い換えれば、第2可動部材145とカム151が係合した状態で、ソレノイド141に第2デューティ比R2で電流が供給された場合、ソレノイド141の磁力に起因して第2可動部材145が受ける力は、第2可動部材145が第1位置から第2位置へ向けて変位を開始するために必要な力よりも小さい。コントローラ110の記憶部125は、このように決定される第1デューティ比R1、第2デューティ比R2、及び第1期間の長さといった設定値を示す設定データを予め記憶する。
【0041】
図6Aは、ソレノイド141への給電が開始される時刻T
0における第2可動部材145とカム151との間の位置関係を示している。時刻T
0において、第2可動部材145は第1位置にあり、第2可動部材145の突起145bはカム151の係止部151bに係合している。
【0042】
図6Bは、第1期間が終了する直前の時刻T
11における第2可動部材145とカム151との間の位置関係を示している。時刻T
11において、第2可動部材145は第1位置と第2位置との間の中間にあり、第2可動部材145の突起145bはカム151の係止部151bから離脱した直後である。カム151は、この時点で、第2可動部材145によって係止されず、回転可能である。ソレノイド141には依然として第1デューティ比R
1で電流が供給されており、ソレノイド141の強い磁力が第1可動部材143に働くが、直後の時刻T
1が到来するとデューティ比は第2デューティ比R
2へ引き下げられる。
【0043】
図6Cは、第2期間の最中の時刻T
12における第2可動部材145とカム151との間の位置関係を示している。時刻T
12において、第2可動部材145は第2位置に到達する。一方、第1可動部材143は、ソレノイド141のハウジングに当接しており、移動が規制されている。ソレノイド141のハウジングは、第1可動部材143の移動を規制する規制部としての機能を有する。なお、ソレノイド141のハウジングと異なる部品によって、第1可動部材143の移動が規制されてもよい。カム151は、時刻T
11から時刻T
12までの間に回転している。第2期間において、ソレノイド141には第1デューティ比R
1よりも低い第2デューティ比R
2で電流が供給されているため、第1期間よりも低下したソレノイド141の磁力が第1可動部材143に働く。第2可動部材145が第2位置に到達するまでに、第1可動部材143及び第2可動部材145の旋回速度は低下する。第1可動部材143は、例えばソレノイド141のハウジングに衝突して停止し、第2可動部材145もまた停止する。
【0044】
<2-5.処理の流れの例>
図7は、本実施形態に係る搬送制御部130により実行され得る駆動制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7に示した駆動制御処理は、例えば、コントローラ110の処理回路が記憶部125に予め記憶されるコンピュータプログラムを実行することにより実現され得る。
【0045】
まず、モータ132の駆動力を受けて動作している被駆動部材を停止すべきタイミングが到来すると、S111で、搬送制御部130は、第1デューティ比R1でのソレノイド141への給電を開始する。S113で、搬送制御部130は、タイマを監視し、第1デューティ比R1での給電を継続したまま第1期間(高デューティ期間ともいう)の経過を待ち受ける。第1期間が経過すると、S115で、搬送制御部130は、ソレノイド141への給電のデューティ比を、第1デューティ比R1から第2デューティ比R2へ引き下げる。
【0046】
<2-6.第1実施形態のまとめ>
本節で説明した第1実施形態では、モータの駆動力を被駆動部材へ伝達する伝達機構を係止している可動部材を伝達機構から離脱させるために、ソレノイドの磁力で可動部材を第1位置から第2位置へ変位させるようにソレノイドへの給電が制御される。具体的には、第1期間において第1デューティ比で電源からソレノイドへ電流が供給され、第1期間より後の第2期間において、第1デューティ比よりも低い第2デューティ比で電源からソレノイドへ電流が供給される。それにより、給電制御の当初の第1期間において、十分に高い第1デューティ比を使用して、モータの駆動力を定常的に印加されている伝達機構から可動部材を確実に離脱させることができる。加えて、第1期間より後の第2期間において、負荷から自由になった可動部材の速度を第2位置への到達の前に抑制して、可動部材と他の部材との衝突に起因する稼働音を低減することができる。即ち、可動部材の確実な離脱とユーザにとって不快な稼働音の低減との両立が可能となる。
【0047】
なお、本実施形態では、フラッパ型のソレノイドの構成が主に説明されているものの、本開示に係る技術は、他の種類のソレノイド(例えば、プランジャ型のソレノイド)にも適用可能である。また、被駆動部材は、シートの搬送に関与するローラには限定されない。例えば、帯電ローラ31、感光ドラム32、レーザミラー34、現像ローラ35、及び転写ローラ36といった、静電潜像又はトナー像の形成に関与する部材への駆動力の伝達及びその遮断のために、本開示に係る技術が利用されてもよい。
【0048】
また、
図5に示したデューティ比の推移は一例に過ぎない。例えば、第1期間の終了後に、デューティ比が第2デューティ比からさらに第3デューティ比へ引き下げられるなど、多段階のデューティ比の引き下げが行われてもよい。
【0049】
<3.第2実施形態>
上述したソレノイドの給電のデューティ比が小さいほど、可動部材の速度はより抑制され得るが、機械的な及び電気的なばらつき、並びに温度上昇の影響といった不確定要因に対して被駆動部材の適切な動作を確保するためには、マージンが必要である。デューティ比のマージンの大きさと、部材間の衝突に起因する稼働音の大きさとは、トレードオフの関係にある。本節で説明する第2実施形態では、デューティ比の経時的な制御に、高デューティ期間及び低デューティ期間の反復を取り入れることで、デューティ比のマージンを削減して、稼働音を一層低減させる。
【0050】
第2実施形態に係る画像形成装置100の全体的な構成、制御機能の構成、及び伝達機構の構成は、第1実施形態と同様であってよい。第2実施形態においても、第1位置にある第2可動部材145が伝達機構140のカム151の回転を抑止することで、モータ132の駆動力が両面搬送ローラ対24へ伝達される。搬送制御部130は、両面搬送ローラ対24への駆動力の伝達を遮断しようとする際に、DC生成回路131からソレノイド141へ電流を供給させることにより、第2可動部材145を第1位置から第2位置へ変位させる。本実施形態においても、搬送制御部130は、ソレノイド141への給電のデューティ比を経時的に変化させることで第1可動部材143及び(第1可動部材143と連動する)第2可動部材145の動きを制御するものとする。
【0051】
<3-1.ソレノイドの給電制御>
具体的には、本実施形態において、搬送制御部130は、第2可動部材145を第1位置から第2位置へ変位させる際に、高デューティ期間及び低デューティ期間を交互に複数回反復させる。そして、搬送制御部130は、少なくとも高デューティ期間におけるデューティ比を、反復の都度逓増させる。最後の反復における高デューティ期間及び低テューティ期間は、第1実施形態における第1期間及び第2期間とそれぞれ同様であってよい。以下の説明では、最後の反復を除いた高デューティ期間及び低デューティ期間を、それぞれ第3期間及び第4期間と呼ぶこととする。
【0052】
説明を単純化するために反復回数を1回とすると、制御シーケンスは、時系列で次の4種類のデューティ期間からなる。
・第3期間:ソレノイドへの給電は第3デューティ比R3で行われる。第3デューティ比R3は、第1デューティ比R1よりも低く、第2デューティ比R2よりも高い;
・第4期間:ソレノイドへの給電は第4デューティ比R4で行われる。第4デューティ比R4は、第3デューティ比R3よりも低い。第4デューティ比R4は、伝達機構から離脱した可動部材を第2位置へ向けて変位させるためのソレノイドの磁力の強さに対応する。;
・第1期間:ソレノイドへの給電は第1デューティ比R1で行われる。第1デューティ比R1は、モータの駆動力に打ち克って可動部材を伝達機構から離脱させるためのソレノイドの磁力の強さに対応し、十分なマージンを含む;
・第2期間:ソレノイドへの給電は第2デューティ比R2で行われる。第2デューティ比R2は、伝達機構から離脱した可動部材を第2位置へ向けて変位させるためのソレノイドの磁力の強さに対応する。
【0053】
図8は、本実施形態に係るソレノイド141への給電のデューティ比の経時的な変化の一例を表すグラフを示している。
図5のグラフG1と同様に、
図8のグラフG2の横軸は時間の経過を表し、縦軸はソレノイド141への給電のデューティ比をパーセンテージで表す。
図8の例では、第3デューティ比R
3_iでソレノイド141へ電流が供給される第3デューティ期間P3
i及び第4デューティ比R
4_iでソレノイド141へ電流が供給される第4デューティ期間P4
iのペアが4回反復される(i=1,2,3,4)。なお、第3デューティ期間P3
i及び第4デューティ期間P4
iの反復回数は、4回よりも少なくてもよく、4回よりも多くてもよい。2回目以降(i≧2)の第3デューティ期間P3
iにおける第3デューティ比R
3_iは、直前の第3デューティ期間P3
iにおける第3デューティ比R
3_iよりも大きい。つまり、R
3_i>R
3_i-1である。2回目以降(i≧2)の第4デューティ期間P4
iにおける第4デューティ比R
4_iは、直前の第4デューティ期間P4
iにおける第4デューティ比R
4_iよりも大きい。つまり、R
4_i>R
4_i-1である。
【0054】
時刻T0は、ソレノイド141への給電が開始されるタイミングである。時刻T0から時刻T21までの1回目の第3期間P31において、搬送制御部130は、第3デューティ比R3_1でソレノイド141へ電流を供給させる。次いで、時刻T21から時刻T22までの1回目の第4期間P41において、搬送制御部130は、第3デューティ比R3_1よりも低い第4デューティ比R4_1でソレノイド141へ電流を供給させる。
【0055】
次いで、時刻T22から時刻T23までの2回目の第3期間P32において、搬送制御部130は、第3デューティ比R3_2でソレノイド141へ電流を供給させる。第3デューティ比R3_2は、第3デューティ比R3_1からオフセットΔR3だけ高い。次いで、時刻T23から時刻T24までの2回目の第4期間P42において、搬送制御部130は、第3デューティ比R3_2よりも低い第4デューティ比R4_2でソレノイド141へ電流を供給させる。第4デューティ比R4_2は、第4デューティ比R4_1からオフセットΔR4だけ高い。
【0056】
その後、3回目の第3期間P33及び第4期間P43、並びに4回目の第3期間P34及び第4期間P44においても、それぞれ逓増されたデューティ比でソレノイド141への給電が行われる。次いで、第1期間P1において第1デューティ比R1でソレノイド141への給電が行われ、さらに第2期間P2において第2デューティ比R2でソレノイド141への給電が行われる。第2期間P2は、両面搬送ローラ対24への駆動力の伝達の再開のためにソレノイド141への給電が停止されるまで継続する。
【0057】
4回の第3期間P3iにおける第3デューティ比R3_iはいずれも、モータ132の駆動力に打ち克って第2可動部材145が伝達機構140(カム151)から離脱する可能性のあるソレノイド141の磁力の強さに対応することが望ましい。各第3期間P3iにおいて第2可動部材145が伝達機構140から離脱するか否かは、機械的な及び電気的なばらつき並びに温度上昇の影響などといった非確定的な要因に依存する。つまり、第2可動部材145が伝達機構140から離脱しやすい状況においては、最初の第3期間P31において第2可動部材145が伝達機構140から離脱する場合がある。一方、第2可動部材145が伝達機構140から離脱しにくい状況においては、第3期間P3iにおいて第2可動部材145が伝達機構140から離脱せず、第1期間P1において第2可動部材145が伝達機構140から離脱する場合がある。早期の高デューティ期間(第3期間)において第2可動部材145が離脱した場合、第2可動部材145は、直後の低デューティ期間(第4期間)において第2位置へ到達し、その後の高デューティ期間及び低デューティ期間において第2位置に留まる。遅くとも、第2可動部材145は、最後の高デューティ期間である第1期間において伝達機構140から離脱し、最後の低デューティ期間である第2期間において第2位置へ到達する。
【0058】
4回の第4期間P4iにおける第4デューティ比R4_iはいずれも、伝達機構140から離脱した第2可動部材145を第2位置へ向けて変位させるために必要なソレノイド141の磁力の強さに対応する。第4デューティ比R4_iは、第2デューティ比R2と同様に、バネ142の弾性力に抗して第2可動部材145を確実に第2位置へ向けて変位させることができる範囲内で十分に低い値であってよい。
【0059】
コントローラ110の記憶部125は、それぞれのデューティ期間におけるデューティ比(例えば、初期値R3_1、R4_1、及びΔR3、ΔR4)、並びにそれぞれのデューティ期間の長さといった設定値を示す設定データを予め記憶する。ある実施例において、オフセットΔR3は、次式に従って決定され得る:
ΔR3=(R1-R3_1)/k
同様に、オフセットΔR4は、次式に従って決定され得る:
ΔR4=(R2-R4_1)/k
ここで、数値kは、第3期間及び第4期間の反復回数を表す1以上の整数である。
【0060】
他の実施例において、デューティ比の逓増のためのオフセットは、個別のデューティ期間ごとに相違してもよく、例えば時間の経過に対して非線形的に引き上げられてもよい。記憶部125は、各デューティ期間についてのデューティ比の増分(及び期間長)を定義するテーブルを記憶していてもよい。また、低デューティ期間におけるデューティ比は、全ての反復を通じて一定であってもよい(即ち、R4_i=R2)。
【0061】
<3-2.処理の流れの例>
図9は、本実施形態に係る搬送制御部130により実行され得る駆動制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9に示した駆動制御処理は、例えば、コントローラ110の処理回路が記憶部125に予め記憶されるコンピュータプログラムを実行することにより実現され得る。
【0062】
まず、S211で、搬送制御部130は、第3デューティ比R3及び第4デューティ比R4をそれぞれの初期値に設定する。次いで、モータ132の駆動力を受けて動作している被駆動部材を停止すべきタイミングが到来すると、S213で、搬送制御部130は、第3デューティ比R3でのソレノイド141への給電を開始する。S215で、搬送制御部130は、タイマを監視し、第3デューティ比R3での給電を継続したまま高デューティ期間の経過を待ち受ける。高デューティ期間が経過すると、S217で、搬送制御部130は、ソレノイド141への給電のデューティ比を、第3デューティ比R3から第4デューティ比R4へ引き下げる。
【0063】
その後の処理は、S219で、現在の期間が最後のデューティ期間であるか否かに依存して分岐する。現在の期間が最後のデューティ期間ではない場合、S221で、搬送制御部130は、引き続きタイマを監視し、第4デューティ比R4での給電を継続したまま低デューティ期間の経過を待ち受ける。低デューティ期間が経過すると、S223で、搬送制御部130は、第3デューティ比R3及び第4デューティ比R4をそれぞれ所定のオフセットΔR3及びΔR4だけ引き上げる。次の高デューティ期間が最後の高デューティ期間である場合、第3デューティ比R3は、第1デューティ比R1に等しくなる。同様に、次の低デューティ期間が最後の低デューティ期間である場合、第4デューティ比R4は、第2デューティ比R2に等しくなる。そして、処理はS213へ戻る。
【0064】
S219で、現在の期間が最後のデューティ期間である場合、
図9の駆動制御処理は終了する。この場合、被駆動部材への駆動力の伝達が再開されるまで、低デューティ期間が維持されることになる。
【0065】
なお、本実施形態は、複数の伝達機構の状態を伝達状態と遮断状態との間でそれぞれ切り替えるための複数のソレノイドが存在する実施例において一層有益である。そうした実施例において、搬送制御部130は、複数のソレノイドへの電流の供給を、
図8を用いて説明した一連の制御シーケンスで共通的に制御してよい。その場合、あるソレノイドは、ある高デューティ期間において対応する可動部材を変位させる一方で、別のソレノイドは、別の高デューティ期間において対応する可動部材を変位させ得る。即ち、複数の可動部材の各々が、対応する伝達機構からの離脱のために要する値を上回るデューティ比での給電が行われたタイミングで、対応する伝達機構からの離脱する。そのタイミングは、複数の可動部材について互いに相違し得る。結果的に、給電の共通的な制御シーケンスを使用しながらも、複数の可動部材をそれぞれ抑制された速度で変位させて、それぞれの稼働音を効果的に低減することができる。
【0066】
<3-3.変形例>
上述した反復的なデューティ比の制御によれば、可動部材を伝達機構から離脱させる際の加速度を最小限に留めて稼働音を抑制できる反面、可動部材が伝達機構から離脱するまでの時間が第1実施形態と比較して長くなる可能性がある。とりわけ、被駆動部材の高頻度な作動及び停止が想定される場面では、駆動力を伝達する伝達機構の状態の切り替えに長時間を要すると、その切り替えが生産性のボトルネックとなる虞がある。
【0067】
そこで、ある変形例において、搬送制御部130は、次の2つの動作モードのうちの1つを選択的に用いて、DC生成回路131からソレノイド141への給電を制御してもよい。
・第1動作モード(反復的な駆動制御(
図8参照)):ソレノイド141への給電を、第3期間、第4期間、第1期間、及び第2期間にわたる制御シーケンスで行う。
・第2動作モード(非反復的な駆動制御(
図5参照)):ソレノイド141への給電を、第1期間及び第2期間のみからなる制御シーケンスで行う。
【0068】
典型的には、第1動作モードは、被駆動部材の高頻度な作動及び停止が想定されない場面で使用され得る。例えば、第1動作モードは、両面搬送ローラ対24がシートの搬送に関与することのない片面印刷モードを含み得る。即ち、ジョブの実行時に、片面印刷モードが指定されている場合、デューティ比の逓増を伴う高デューティ期間及び低デューティ期間の反復によって、稼働音を低減しながら、両面搬送ローラ対24の駆動が停止される。一方、第2動作モードは、両面搬送ローラ対24がシートの搬送に関与する両面印刷モードを含み得る。即ち、両面印刷モードが指定されている場合、ジョブ実行の最中の複数回にわたる両面搬送ローラ対24の駆動停止の際に、非反復的な駆動制御によって動作時間が短縮され、高い生産性が提供され得る。
【0069】
概して、モータの駆動力を受けて作動する被駆動部材(例えば、両面搬送ローラ対24)が多いほど、モータに掛かる負荷は大きくなる。そのため、モータ132のトルクに余裕が少ない状況、又は温度上昇を抑制すべき状況においては、ジョブの実行に関与しない被駆動部材を停止することが望ましい。本変形例のように、被駆動部材の作動/停止の想定される頻度に応じて制御シーケンスを切り替えることで、モータの負荷の抑制又は温度上昇の抑制と高い生産性との間の良好なバランスを実現することができる。
【0070】
<3-4.第2実施形態のまとめ>
本節で説明した第2実施形態では、可動部材を伝達機構から離脱させる際に、可動部材を変位させるためのソレノイドへの給電制御が、高デューティ期間及び低デューティ期間の交互の反復からなる制御シーケンスによって行われる。そして、先行する高デューティ期間におけるデューティ比は、後続する高デューティ期間におけるデューティ比よりも低く設定される。したがって、第1位置から第2位置への可動部材の変位を、過剰なマージンを含まない相対的に低いデューティ比でトリガすることができる。それにより、可動部材の変位速度を抑制し、稼働音を効果的に低減することができる。
【0071】
例えば、ソレノイドの抵抗は温度依存であるため、温度が変化すると、同じデューティ比でソレノイドに給電した場合に生じる磁力の強さもまた変化し得る。どのような温度変化があってもソレノイドの磁力が確実に可動部材を変位させるようにするためには、デューティ比のマージンは相応に大きくなければならない。本実施形態に係る制御シーケンスでは、最後の高デューティ期間(第1期間)における十分なマージンによって可動部材の変位が保証され、早期の高デューティ期間(第3期間)におけるより低いデューティ比によって稼働音の低減も達成される。その他の環境条件の変化、及び部材の製造時のばらつきを許容するためのマージンについても同様のことが当てはまる。
【0072】
<4.第3実施形態>
上述したように、可動部材を伝達機構から離脱させるために要するデューティ比は、製品の機械的な及び電気的なばらつきに影響され、製品ごとに相違し得る。また、ソレノイドの温度が変化すると、同じデューティ比でソレノイドに給電した場合に生じる磁力の強さもまた変化し得る。本節で説明する第3実施形態では、こうした所要デューティ比の変動要因に対して、専らデューティ比のマージンに依拠して可動部材の確実な変位を保証する代わりに、デューティ比を適応的に調整する仕組みを取り入れる。
【0073】
第3実施形態に係る画像形成装置100の全体的な構成、及び伝達機構の構成は、第1実施形態及び第2実施形態と同様であってよい。
図10は、第3実施形態に係る画像形成装置100の制御機能の構成の一例を示すブロック図である。
図10に示したコントローラ210は、画像形成装置100の様々な部材の駆動を制御する駆動制御部である。第1実施形態に係るコントローラ110と同様に、コントローラ210は、汎用的な処理回路及び専用の処理回路の一方又は双方を含み得る。
図10を参照すると、コントローラ210は、画像形成制御部120、記憶部225、及び搬送制御部230を含む。
【0074】
記憶部225は、RAM、ROM及びHDDの任意の組合せを含む記憶手段である。記憶部225は、1つ以上の制御プログラム及び様々なデータを記憶する。とりわけ、本実施形態において、記憶部225は、調整データ227を記憶する。調整データ227の構成の一例について、後に詳しく説明する。
【0075】
コントローラ210、より具体的には搬送制御部230は、センサ群41、42、...、DC生成回路131、モータ132、給送クラッチ133、伝達機構140、及び温度センサ241へ接続される。温度センサ241は、ソレノイド141(
図4参照)の温度を計測する計測手段である。温度センサ241は、例えば、ソレノイド141の近傍に配設されるサーミスタ又は熱電対であってよい。
【0076】
搬送制御部230は、ソレノイド141への電流の供給を制御するように構成される。搬送制御部230は、モータ132から両面搬送ローラ対24への駆動力の伝達を遮断しようとする際に、DC生成回路131からソレノイド141へ電流を供給させることにより、第2可動部材145を第1位置から第2位置へ変位させる。このとき、搬送制御部230は、第2可動部材145の伝達機構140からの離脱後の旋回速度を低減するために、ソレノイド141への電流の供給量を経時的に変化させる。第1の例として、搬送制御部230は、第1実施形態における非反復的な駆動制御によって、ソレノイド141への給電のデューティ比を、第1デューティ比R1から第2デューティ比R2へ引き下げてもよい。第2の例として、搬送制御部230は、第2実施形態における反復的な駆動制御によって、高デューティ期間と低デューティ期間とを交互に複数回反復させてもよい。但し、いずれの例においても、搬送制御部230は、少なくとも1つのデューティ比を、記憶部225に予め記憶される調整データ227に基づいて適応的に決定する。
【0077】
本実施形態におけるデューティ比の調整は、次のうちの少なくとも一方を含み得る:
・製造上のばらつきを補償するための補正
・温度変化に起因する所要デューティ比の変化に合わせた調整
【0078】
非反復的な駆動制御が行われる第1の例において、搬送制御部230は、第1デューティ比R1及び第2デューティ比R2のうちの少なくとも1つを、調整データ227に基づいて決定し得る。反復的な駆動制御が行われる第2の例において、搬送制御部230は、第1デューティ比R1、第2デューティ比R2、第3デューティ比R3及び第4デューティ比R4のうちの少なくとも1つを、調整データ227に基づいて決定し得る。温度変化に起因する所要デューティ比の変化に合わせた調整は、温度センサ241により計測されるソレノイド141の温度にさらに基づいて行われ得る。つまり、第1の例において、搬送制御部230は、温度センサ241から出力される信号に基づいて、第1デューティ比R1及び第2デューティ比R2のうちの少なくとも1つを調整することができる。また、第2の例において、搬送制御部230は、温度センサ241から出力される信号に基づいて、第1デューティ比R1、第2デューティ比R2、第3デューティ比R3及び第4デューティ比R4のうちの少なくとも1つを調整することができる。
【0079】
図11は、反復的な駆動制御を前提とした調整データ227の構成の一例を示している。
図11を参照すると、調整データ227は、第1、第2、第3及び第4デューティ比の各々について、「基準値」、「補正値」、及び「調整係数」というパラメータを含む。「基準値」は、予め決定される基準温度において、製品のばらつきが無いと仮定した場合に設定されるべきデューティ比の値を示す。基準温度は、例えば、20℃であってよい。なお、第3デューティ比及び第4デューティ比については、逓増される前の初期値が基準値として示されてよい。「補正値」は、製品のばらつきの影響を補償するために、デューティ比の基準値に加算されるべき値を示す。それぞれのデューティ比の補正値X
1、X
2、X
3及びX
4は、例えば、製品の製造後の試験において測定されるばらつきに基づいて決定され、記憶部225(例えば、不揮発性メモリ)に書き込まれ得る。「調整係数」は、温度変化に起因する所要デューティ比の変化に合わせた調整のための係数を示す。
【0080】
図12は、ソレノイドの温度と、第2可動部材145を伝達機構140から離脱させるために要するデューティ比との間の関係を表すグラフG3を示している。グラフG3は、ソレノイドの温度が20℃であるときに所要デューティ比R
refを指し示し、温度が上昇するにつれて所要デューティ比は高くなる。実用上あり得る温度範囲において、温度変化に対する所要デューティ比の変化は、線形的であると見なされてもよい。よって、基準温度を20℃とし、基準温度からの温度変化にグラフG3の傾きに相当する調整係数を乗算して得た調整量を基準値R
ref(又は基準値と補正値との和)に加算することで、変化後の温度に適したデューティ比を導出することができる。あるいは、ソレノイド141の温度特性に応じて、より複雑なデューティ比の調整モデルが使用されてもよい。
図11の例では、第1、第2、第3及び第4デューティ比について異なる調整係数α
1、α
2、α
3及びα
4が示されているが、複数のデューティ比の調整のために共通的な調整係数が使用されてもよい。
【0081】
なお、
図11に示した調整データ227の構成は一例に過ぎない。調整データ227は、例えば、反復的な駆動制御のためのオフセットΔR
3及びΔR
4についての補正値をさらに含んでいてもよい。また、記憶部225は、ソレノイドの種類若しくは巻き数、又はモータの種類などの属性についての複数の候補値にそれぞれ対応する複数セットの調整データ227を予め記憶していてもよい。その場合には、搬送制御部230は、制御対象のソレノイド141又はモータ132の属性に対応するデータセットを記憶部225から読出して、デューティ比の決定のために使用し得る。
【0082】
また、ソレノイド141の温度は、温度センサ241によって直接的に計測される代わりに、ソレノイド141への給電の履歴及び/又は環境温度に基づいて推定されてもよい。
【0083】
本節で説明した第3実施形態では、可動部材を伝達機構から離脱させるためのソレノイドへの給電制御におけるデューティ比が、製品のばらつき及びソレノイドの温度変化の一方又は双方に合わせて調整される。したがって、過剰に大きいマージンをデューティ比に含める必要性が排除されるため、可動部材の変位速度を抑制することができ、あるいは可動部材の変位をトリガするまでに要する時間を短縮することができる。
【0084】
なお、伝達機構140、切替装置160、及びコントローラ110又は210(より具体的には搬送制御部130又は230)を含む構成を、駆動制御装置と呼ぶことができる。つまり、画像形成装置100は、駆動制御装置を含む。駆動制御装置は、モータ132、被駆動部材、及びソレノイド141に供給される電流を出力する電源を含んでいてもよい。
【0085】
<5.その他の実施形態>
上記実施形態は、1つ以上の機能を実現するプログラムをネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行する処理の形式でも実現可能である。また、1つ以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0086】
本明細書の開示は、少なくとも以下の駆動制御装置及び画像形成装置を含む。
(項目1)
第1位置と第2位置との間で変位可能な可動部材と、
前記第1位置にある前記可動部材を磁力によって前記第2位置へ変位させるソレノイドと、
電源から前記ソレノイドへの電流の供給を制御する制御手段と、
前記可動部材の位置に応じて、第1状態及び第2状態の間で遷移する伝達機構であって、
前記第1状態及び前記第2状態のうちの一方において、モータの駆動力を被駆動部材へ伝達し、
前記第1状態及び前記第2状態のうちの他方において、前記モータの前記駆動力を前記被駆動部材へ伝達しない、
前記伝達機構と、
を備え、
前記制御手段は、前記ソレノイドが前記可動部材を前記第1位置から前記第2位置へ変位させる際に、
第1期間において前記可動部材が前記第1位置から前記第2位置へ向けて変位するように第1デューティ比で前記ソレノイドへ電流を供給させ、
前記第1期間より後かつ前記可動部材が前記第2位置に到達する前に開始される第2期間において、前記第1デューティ比よりも低い第2デューティ比で前記ソレノイドへ電流を供給させる、
駆動制御装置。
(項目2)
前記制御手段は、前記可動部材を前記第1位置から前記第2位置へ変位させる際に、
第3期間において前記第1デューティ比よりも低く前記第2デューティ比よりも高い第3デューティ比で前記ソレノイドへ電流を供給させ、
前記第3期間より後の第4期間において、前記第3デューティ比よりも低い第4デューティ比で前記ソレノイドへ電流を供給させ、
前記第1期間は、前記第4期間より後の期間である、
項目1に記載の駆動制御装置。
(項目3)
前記制御手段は、前記第1期間の前に、前記第3期間及び前記第4期間を複数回反復し、
前記第3デューティ比は、反復の都度逓増される、
項目2に記載の駆動制御装置。
(項目4)
前記制御手段は、
第1動作モードにおいて、前記第3期間、前記第4期間、前記第1期間、及び前記第2期間にわたる制御シーケンスで前記ソレノイドへ電流を供給させ、
前記第1動作モードと異なる第2動作モードにおいて、前記第1期間及び前記第2期間のみからなる制御シーケンスで前記ソレノイドへ電流を供給させる、
項目2又は3に記載の駆動制御装置。
(項目5)
前記駆動制御装置は、シートに画像を形成する画像形成装置において使用され、
前記第1動作モードは、片面印刷モードを含み、
前記第2動作モードは、両面印刷モードを含み、、
前記被駆動部材は、前記片面印刷モードにおいてシートを搬送せず、前記両面印刷モードにおいてシートを搬送するローラである、
項目4に記載の駆動制御装置。
(項目6)
前記制御手段は、前記第3期間、前記第4期間、前記第1期間、及び前記第2期間にわたる制御シーケンスによって、複数のソレノイドを用いて複数の可動部材をそれぞれ変位させる、項目2~5のいずれか1項に記載の駆動制御装置。
(項目7)
温度を検知するセンサをさらに備え、
前記制御手段は、前記センサから出力される信号に基づいて、前記第1デューティ比、前記第2デューティ比、前記第3デューティ比及び前記第4デューティ比のうちの少なくとも1つのデューティ比を決定する、
項目2~6のいずれか1項に記載の駆動制御装置。
(項目8)
前記モータの前記駆動力は、前記第1状態及び前記第2状態の双方において前記伝達機構へ印加される、項目1~7のいずれか1項に記載の駆動制御装置。
(項目9)
前記伝達機構は、前記第1位置にある前記可動部材により係止される係止部を有し、
前記第1状態において、前記係止部と前記可動部材が係合しており、
前記第2状態において、前記係止部と前記可動部材が係合していない、
項目1~7のいずれか1項に記載の駆動制御装置。
(項目10)
前記第2デューティ比は、前記係止部と前記可動部材との係合が解除された状態で、前記可動部材を前記第2位置へ向けて変位させることが可能な前記ソレノイドの前記磁力の強さに対応する、項目9に記載の駆動制御装置。
(項目11)
前記可動部材と連結され、前記可動部材を移動させるように前記ソレノイドの磁力によって動く駆動部材をさらに有する、
項目9に記載の駆動制御装置。
(項目12)
温度を検知するセンサをさらに備え、
前記制御手段は、前記センサから出力される信号に基づいて、前記第1デューティ比及び前記第2デューティ比のうちの少なくとも1つのデューティ比を決定する、
項目1~11のいずれか1項に記載の駆動制御装置。
(項目13)
補正値を予め記憶する記憶手段、をさらに備え、
前記制御手段は、前記記憶手段に記憶されている前記補正値に基づいて、少なくとも1つのデューティ比を調整する、
項目1~12のいずれか1項に記載の駆動制御装置。
(項目14)
項目1~13のいずれか1項に記載の駆動制御装置と、
シートに画像を形成する画像形成手段と、
を備える画像形成装置。
(項目15)
前記被駆動部材は、前記シートを搬送するローラである、項目14に記載の画像形成装置。
【0087】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0088】
21,22,23,24,25,26:ローラ(被駆動部材)、30:プロセスカートリッジ(画像形成手段)、100:画像形成装置、125,225:記憶部(記憶手段)、130,230:搬送制御部(制御手段)、131:DC生成回路(電源)、132:モータ、133,140:伝達機構、141:ソレノイド、143:第1可動部材、145:第2可動部材、151b:係止部、227:調整データ、241:温度センサ(計測手段)、P:シート、R1:第1デューティ比、R2:第2デューティ比、R3:第3デューティ比、R4:第4デューティ比