(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162492
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】光電変換装置、機器および移動体
(51)【国際特許分類】
H04N 25/70 20230101AFI20241114BHJP
【FI】
H04N25/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078040
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三ヶ尻 悟
【テーマコード(参考)】
5C024
【Fターム(参考)】
5C024CY42
5C024GX03
5C024HX32
5C024HX51
(57)【要約】
【課題】画素回路の回路規模の抑制に有利な技術を提供する。
【解決手段】APDと前記APDでアバランシェ降伏が生じた回数をカウントするためのカウンタとをそれぞれ備える第1、第2画素と処理回路とを備え、前記第1、第2画素は、前記APDを動作させ前記カウンタが前記回数をカウントする露光期間と前記APDの動作を停止させカウント値を保持する保持期間とを含む検出動作を繰り返し、前記第1画素および前記第2画素は、前記検出動作を互いに異なるタイミングで交互に開始し、前記第1画素の第1露光期間の開始から所定の時間の経過後に前記第2画素の第2露光期間が開始され、前記処理回路は、前記第1画素において前記第1露光期間においてカウントされ前記第1露光期間に続く第1保持期間に前記カウンタに保持されている第1カウント値と、前記第2画素において前記第2露光期間においてカウントされた第2カウント値と、の差分値を出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アバランシェフォトダイオードと前記アバランシェフォトダイオードにおいてアバランシェ降伏が生じた回数をカウントするためのカウンタとをそれぞれ備える第1画素および第2画素を含む複数の画素と、処理回路と、を備える光電変換装置であって、
前記光電変換装置に入射する光量の変化を検出する期間において、
前記第1画素および前記第2画素は、前記アバランシェフォトダイオードを動作させ前記カウンタが前記回数をカウントする露光期間と、前記アバランシェフォトダイオードの動作を停止させ前記露光期間にカウントされたカウント値を前記カウンタに保持する保持期間と、を含む検出動作を繰り返し、
前記第1画素および前記第2画素は、前記検出動作を互いに異なるタイミングで交互に開始し、
前記第1画素の前記露光期間のうち第1露光期間の開始から所定の時間の経過後に、前記第2画素の前記露光期間のうち第2露光期間が開始され、
前記処理回路は、前記第1画素において前記第1露光期間においてカウントされ、前記保持期間のうち前記第1露光期間に続く第1保持期間に前記カウンタに保持されている第1カウント値と、前記第2画素において前記第2露光期間においてカウントされた第2カウント値と、の差分値を出力することを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記差分値に基づいて前記変化を検出する検出回路をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記複数の画素から出力される信号を読み出すための読出回路と、前記カウンタと前記処理回路とに接続され、前記カウンタの出力と前記処理回路の出力とを切り替えて前記読出回路に出力する切替回路と、をさらに含み、
前記読出回路は、前記検出回路の機能を有することを特徴とする請求項2に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記カウンタは、フリップフロップ回路を含み、
前記処理回路は、前記第1画素の前記フリップフロップ回路に保持される前記第1カウント値と、前記第2画素の前記フリップフロップ回路に保持される前記第2カウント値と、の排他的論理和を桁ごとに取得する排他的論理和回路を含むことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記第1露光期間の長さと前記第2露光期間の長さとが同じことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記第1露光期間と前記第2露光期間とは、期間の一部が重なっていることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項7】
前記第1露光期間と前記第2露光期間とは、期間が重なっていないことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記複数の画素のうち前記第1画素と前記第2画素とは、互いに隣り合うように配された画素であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項9】
前記複数の画素は、第3画素をさらに含み、
前記変化を検出する期間において、
前記第3画素は、前記検出動作を繰り返し、かつ、前記第2露光期間の開始から所定の時間の経過後に前記第3画素の前記露光期間のうち第3露光期間が開始され、
前記処理回路は、前記第1カウント値または前記第2カウント値と、前記第3画素において前記第3露光期間においてカウントされた第3カウント値と、の差分値をさらに出力することを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項10】
前記複数の画素は、第4画素をさらに含み、
前記変化を検出する期間において、
前記第4画素は、前記検出動作を繰り返し、かつ、前記第3露光期間の開始から所定の時間の経過後に前記第4画素の前記露光期間のうち第4露光期間が開始され、
前記処理回路は、前記第1カウント値、前記第2カウント値または前記第3カウント値と、前記第4画素において前記第4露光期間においてカウントされた第4カウント値と、の差分値をさらに出力することを特徴とする請求項9に記載の光電変換装置。
【請求項11】
前記露光期間の開始に応じて、前記カウンタがリセットされることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置から出力された信号を処理する処理装置と、
を備えることを特徴とする機器。
【請求項13】
請求項1乃至11の何れか1項に記載の光電変換装置を備える移動体であって、
前記光電変換装置が出力する信号を用いて前記移動体の移動を制御する制御装置を有することを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置、機器および移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光量の変化などのイベントの検出に応じて動作する非同期型の固体撮像素子が示されている。特許文献1では、アバランシェ降伏をしない一般的なフォトダイオードを備える検出画素がイベントを検出したことに応じて、アバランシェフォトダイオード(APD)を備える画素において、所定の露光期間内にAPDに入射する光子数をカウントした画素信号が取得される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される構成に対して、検出画素にもAPDを用い、APDに入射する光子数の変化からイベントを検出することが考えられる。しかしながら、検出画素においてAPDに入射する光子数の変化を検出するためには、注目する露光期間の少なくとも1つ前の露光期間におけるカウント値をメモリなどに保持し、注目する露光期間のカウント値と比較する必要があり、検出画素の回路規模が大きくなりうる。
【0005】
本発明は、画素回路の回路規模の抑制に有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑みて、本発明の実施形態に係る光電変換装置は、アバランシェフォトダイオードと前記アバランシェフォトダイオードにおいてアバランシェ降伏が生じた回数をカウントするためのカウンタとをそれぞれ備える第1画素および第2画素を含む複数の画素と、処理回路と、を備える光電変換装置であって、前記光電変換装置に入射する光量の変化を検出する期間において、前記第1画素および前記第2画素は、前記アバランシェフォトダイオードを動作させ前記カウンタが前記回数をカウントする露光期間と、前記アバランシェフォトダイオードの動作を停止させ前記露光期間にカウントされたカウント値を前記カウンタに保持する保持期間と、を含む検出動作を繰り返し、前記第1画素および前記第2画素は、前記検出動作を互いに異なるタイミングで交互に開始し、前記第1画素の前記露光期間のうち第1露光期間の開始から所定の時間の経過後に、前記第2画素の前記露光期間のうち第2露光期間が開始され、前記処理回路は、前記第1画素において前記第1露光期間においてカウントされ、前記保持期間のうち前記第1露光期間に続く第1保持期間に前記カウンタに保持されている第1カウント値と、前記第2画素において前記第2露光期間においてカウントされた第2カウント値と、の差分値を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、画素回路の回路規模の抑制に有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態の光電変換装置の構成例を示すブロック図。
【
図3】
図1の光電変換装置の画素の構成例を示すブロック図。
【
図6】
図1の光電変換装置の画素の構成例を示すブロック図。
【
図7】
図1の光電変換装置の画素の駆動例を示すタイミング図。
【
図8】
図1の光電変換装置の画素のカウンタの構成例を示す図。
【
図9】
図1の光電変換装置の画素の駆動例を示すタイミング図。
【
図10】
図1の光電変換装置の画素の配置例を示すブロック図。
【
図11】
図1の光電変換装置の画素の駆動例を示すタイミング図。
【
図12】
図1の光電変換装置の画素の駆動例を示すタイミング図。
【
図13】
図1の光電変換装置の画素の構成例を示すブロック図。
【
図14】
図1の光電変換装置の画素の構成例を示すブロック図。
【
図15】本実施形態の光電変換装置が組み込まれた機器の構成例を示す図。
【
図16】本実施形態の光電変換装置が組み込まれた移動体の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
図1~
図14を参照して、本開示の実施形態による光電変換装置について説明する。
図1は、本実施形態の光電変換装置100の概略構成を示すブロック図である。光電変換装置100は、
図1に示されるように、画素部10、垂直走査回路40、読出回路50、水平走査回路60、制御パルス生成回路80、出力回路90を含みうる。以下、光電変換装置100は、画素部10に配された画素12にアバランシェフォトダイオード(APD)を備える非同期型の、所謂、撮像装置であるとして説明する。しかしながら、本実施形態の光電変換装置は、これに限られるものではない。光電変換装置の例として、撮像装置の他に、測距装置(焦点検出やTime Of Flight(TOF)を用いた距離測定を行う装置)、測光装置(入射光量の測定などを行う装置)などが挙げられる。
【0011】
画素部10には、複数の行および複数の列を構成するようにアレイ状に配された複数の画素12が配されている。それぞれの画素12には、後述するように、光子検知素子であるAPDを含む光電変換部と、光電変換部から出力される信号を処理する処理回路と、が配されうる。画素部10を構成する画素12の数は、特に限定されるものではない。例えば、一般的なデジタルカメラのように数千行×数千列のアレイ状に配された複数の画素12によって画素部10が構成されていてもよい。また、例えば、1行または1列に並べた複数の画素12によって画素部10が構成されていてもよい。さらに、例えば、1つの画素12によって画素部10が構成されていてもよい。
【0012】
画素部10に配された画素アレイの各行には、行方向(
図1において、横方向)に延びる制御線14が配されている。制御線14は、行方向に並ぶ画素12にそれぞれ接続され、行方向に並ぶ画素12に共通の信号線として機能する。制御線14が延びる行方向は、水平方向と表記される場合がある。1つの行の画素12に対応して配される制御線14は、複数の種類の制御信号を画素12に供給するために複数の信号線によって構成されていてもよい。
【0013】
画素部10に配された画素アレイの各列には、行方向と交差する列方向(
図1において、縦方向)に延びるデータ線16が配されている。データ線16は、列方向に並ぶ画素12にそれぞれ接続され、列方向に並ぶ画素12に共通の信号線として機能する。データ線16が延びる列方向は、垂直方向と表記される場合がある。1つの列の画素12に体操して配されるデータ線16は、画素12から出力される複数ビットのデジタル信号をビットごとに転送するために複数の信号線によって構成されていてもよい。
【0014】
画素部10に配された画素アレイのそれぞれの行に対応して配された制御線14は、垂直走査回路40に接続されている。垂直走査回路40は、制御パルス生成回路80から出力される制御信号を受け、画素12を駆動するための制御信号を生成し、制御線14を介して画素12に供給する。垂直走査回路40に、シフトレジスタやアドレスデコーダなどの論理回路が用いられてもよい。垂直走査回路40は、画素部10に配された画素12を行単位で順次走査し、データ線16を介してそれぞれの画素12の画素信号を読出回路50へ出力させる。
【0015】
画素部10に配された画素アレイのそれぞれの列に対応して配されたデータ線16は、読出回路50に接続されている。読出回路50は、画素部10に配された画素アレイの各列に対応して設けられた複数の保持回路(図示せず)を備え、データ線16を介して画素部10から行単位で出力される画素12の画素信号を、対応する列の保持回路にて保持する機能を備える。
【0016】
水平走査回路60は、制御パルス生成回路80から出力される制御信号を受け、読出回路50に配された各列の保持回路から画素信号を読み出すための制御信号を生成し、読出回路50に供給する。水平走査回路60に、シフトレジスタやアドレスデコーダなどの論理回路が用いられてもよい。水平走査回路60は、読出回路50に配された各列の保持回路を順次走査し、各々に保持されている画素信号を順次、出力回路90へと出力する。
【0017】
出力回路90は、外部インターフェース回路を有し、読出回路50から出力された画素信号を光電変換装置100の外部へ出力するための回路である。出力回路90が備える外部インターフェース回路は、特に限定されるものではない。外部インターフェース回路は、例えば、Serializer/Deserializer(SerDes)送信回路によって構成されていてもよい。SerDes送信回路は、例えば、Low Voltage Differential Signaling(LVDS)回路、Scalable Low Voltage Signaling(SLVS)回路でありうる。
【0018】
制御パルス生成回路80は、垂直走査回路40、読出回路50、水平走査回路60の動作や動作のタイミングを制御する制御信号を生成し、垂直走査回路40、読出回路50、水平走査回路60に供給する。垂直走査回路40、読出回路50、水平走査回路60の動作や動作のタイミングを制御する制御信号は、すべてが制御パルス生成回路80から供給されなくてもよい。垂直走査回路40、読出回路50、水平走査回路60の動作や動作のタイミングを制御する制御信号の一部またはすべてが、光電変換装置100の外部から供給されていてもよい。
【0019】
ここで、光電変換装置100に配される垂直走査回路40、読出回路50、水平走査回路60、制御パルス生成回路80、出力回路90などの各機能ブロックの接続態様は、
図1に示される構成例に限定されるものではない。例えば、光電変換装置100に配される各機能ブロックは、
図2に示されるような構成であってもよい。
図2に示される構成例では、画素部10に配された画素アレイの各行に、行方向に延びるデータ線16が配されている。データ線16は、行方向に並ぶ画素12にそれぞれ接続され、行方向に並ぶ画素12に共通の信号線として機能している。また、画素部10に配された画素アレイの各列に、列方向に延びる制御線18が配されている。制御線18は、列方向に並ぶ画素12にそれぞれ接続され、列方向に並ぶ画素12に共通の信号線として機能している。
【0020】
画素部10に配された画素アレイの各列に対応して配された制御線18は、水平走査回路60に接続されている。水平走査回路60は、制御パルス生成回路80から出力される制御信号を受け、画素12から画素信号を読み出すための制御信号を生成し、制御線18を介して画素12に供給する。具体的には、水平走査回路60は、画素部10の複数の画素12を列単位で順次走査し、選択された列に配された各行の画素12の画素信号が、データ線16に出力される。
【0021】
画素部10に配された画素アレイの各行に対応して配されたデータ線16は、読出回路50に接続されている。読出回路50は、画素部10に配された画素アレイの各行に対応して設けられた複数の保持回路(図示せず)を備え、データ線16を介して画素部10から列単位で出力される各行の画素12の画素信号を対応する行の保持回路にて保持する。
【0022】
読出回路50は、制御パルス生成回路80から出力される制御信号を受け、各行の保持回路に保持されている画素信号を順次、出力回路90へと出力する。
図2に示される構成例におけるその他の構成は、
図1に示される構成例と同様でありうる。
【0023】
画素部10に配された画素12は、
図3に示されるように、光電変換部20、画素信号処理部30を含みうる。光電変換部20は、光子検知素子22、クエンチ素子24を含みうる。画素信号処理部30は、波形整形回路32、デジタル処理回路34、画素出力回路36を含みうる。
【0024】
光子検知素子22には、例えば、アバランシェフォトダイオード(APD)が用いられうる。光子検知素子22であるAPDのアノードは、電位VLが供給されるノードに接続されている。APDのカソードは、クエンチ素子24の2つの端子のうち一方の端子に接続されている。光子検知素子22とクエンチ素子24との接続ノードが、光電変換部20の出力ノードである。クエンチ素子24の2つの端子のうちAPDのカソードが接続されていない他方の端子は、電位VLよりも高い電位VHが供給されるノードに接続されている。電位VLと電位VHとの電位差(電圧)は、光子検知素子22であるAPDがアバランシェ増倍動作を行うために十分な逆バイアス電圧が印加されるように設定されている。例えば、電位VLとして負の高電位が与えられ、電位VHとして電源電位程度の正の電位が供給されうる。例えば、電位VLとして-30Vが供給され、電位VHとして1Vが供給されていてもよい。
【0025】
光子検知素子22は、上述のようにAPDによって構成されうる。アバランシェ増倍動作に十分な逆バイアス電圧がAPDに供給された状態とすることによって、APDへの光入射によってアバランシェ降伏が生じ、アバランシェ増倍電流が発生する。APDに逆バイアス電圧を供給した状態における動作モードには、ガイガーモードとリニアモードとがある。ガイガーモードは、アノードとカソードとの間に印加する電圧をAPDの降伏電圧よりも大きい逆バイアス電圧とする動作モードである。リニアモードは、アノードとカソードとの間に印加する電圧をAPDの降伏電圧近傍またはそれ以下の逆バイアス電圧とする動作モードである。ガイガーモードで動作させるAPDは、SPAD(Single Photon Avalanche Diode)とも呼ばれる。光子検知素子22を構成するAPDは、リニアモードで動作するようにしてもよいし、ガイガーモードで動作するようにしてもよい。
【0026】
クエンチ素子24は、光子検知素子22でアバランシェ降伏が生じた際の電流の変化を電圧信号に変換する機能を備える。また、クエンチ素子24は、アバランシェ降伏による電流増倍時に負荷回路(クエンチ回路)として機能し、光子検知素子22に印加される電圧を低減してアバランシェ降伏を抑制する機能を備える。クエンチ素子24がアバランシェ降伏を抑制する動作は、クエンチ動作と呼ばれる。また、クエンチ素子24は、クエンチ動作によって電圧降下した分の電流を流すことによって、光子検知素子22に供給する電位を電位VHへと戻す機能を備える。クエンチ素子24が光子検知素子22に供給する電位を電位VHへと戻す動作は、リチャージ動作と呼ばれる。クエンチ素子24は、抵抗素子やMOS(MIS)トランジスタなどによって構成されうる。本実施形態では、後述するように、クエンチ素子24としてトランジスタを用いる。
【0027】
波形整形回路32は、光電変換部20の出力信号が供給される入力ノードと、出力ノードと、を備える。波形整形回路32は、光電変換部20から供給されるアナログ信号をパルス信号に変換する機能を備えている。
図3に示されるように、波形整形回路32は、インバータ回路などによって構成されうる。波形整形回路32の出力ノードは、デジタル処理回路34に接続されている。
【0028】
デジタル処理回路34は、波形整形回路32の出力信号が供給される入力ノードと、制御線14に接続された入力ノードと、出力ノードと、を備える。デジタル処理回路34は、後述するカウンタを含む。カウンタは、波形整形回路32から出力される信号に重畳するパルスのカウントを行い、カウントの結果であるカウント値を保持する機能を備える。垂直走査回路40から制御線14を介してデジタル処理回路34に供給される信号には、パルスのカウント期間(露光期間)を制御するためのタイマクロック信号などが含まれ得る。デジタル処理回路34の出力ノードは、画素出力回路36を介してデータ線16に接続されている。
【0029】
画素出力回路36は、デジタル処理回路34とデータ線16との間の電気的な接続状態(接続または非接続)を切り替える機能を備える。画素出力回路36は、垂直走査回路40から制御線14を介して供給される制御信号(
図2に示される構成例の場合、水平走査回路60から制御線18を介して供給される制御信号)に応じて、デジタル処理回路34とデータ線16との間の接続状態を切り替える。画素出力回路36は、信号を出力するためのバッファ回路などを含みうる。
【0030】
画素12は、典型的には、画像を形成するための画素信号を出力する単位構造体である。ただし、TOF方式を用いた測距などを目的とする場合に、画素12は、必ずしも画像を形成するための画素信号を出力する単位構造体である必要はない。すなわち、画素12は、光が到達した時刻と光量とを測定するための信号を出力する単位構造体であってもよい。
【0031】
画素信号処理部30は、必ずしも各々の画素12に1つずつ設けられている必要はなく、複数の画素12に対して1つの画素信号処理部30を設けるようにしてもよい。この場合、1つの画素信号処理部30を用い、複数の画素12の信号処理を順次実行することができる。
【0032】
光電変換装置100は、1つの基板に形成されていてもよい。また、例えば、光電変換装置100は、複数の基板を積層した積層型の光電変換装置として構成されていてもよい。後者の場合、例えば、
図4に示されるように、光電変換装置100は、センサ基板110と回路基板120とを積層して電気的に接続した積層型の光電変換装置として構成可能である。センサ基板110には、画素12の構成要素のうち少なくとも光子検知素子22が配置されうる。また、回路基板120には、画素12の構成要素のうち、クエンチ素子24と画素信号処理部30とが配置されうる。センサ基板110に配された光子検知素子22と、回路基板120に配されたクエンチ素子24および画素信号処理部30と、は、例えば、画素12ごとに設けられた接続配線を介して電気的に接続されていてもよい。また、回路基板120には、垂直走査回路40、読出回路50、水平走査回路60、制御パルス生成回路80、出力回路90などがさらに配されうる。
【0033】
積層型の光電変換装置100において、1つの画素12に配された、光子検知素子22と、クエンチ素子24および画素信号処理部30と、は、センサ基板110の光入射面に対する正射影において重なるようにセンサ基板110と回路基板120とに配されうる。垂直走査回路40、読出回路50、水平走査回路60、制御パルス生成回路80、出力回路90などは、複数の画素12によって構成される画素部10の周囲に配されうる。
【0034】
積層型の光電変換装置100は、素子の集積度を向上し、結果として、高機能化を図ることができる。特に、光子検知素子22と、クエンチ素子24および画素信号処理部30と、を別々の基板に配置することによって、光子検知素子22の受光面積を犠牲にすることなく光子検知素子22を高密度に配することができる。それによって、光子検知効率を向上させることができる。光電変換装置100を構成する基板の数は、2つに限定されるものではない。3つ以上の基板が積層され、光電変換装置100が構成されていてもよい。
【0035】
また、
図4に示される構成では、センサ基板110および回路基板120として、ウェーハからダイシングされたチップを想定しているが、センサ基板110および回路基板120はチップに限定されるものではない。例えば、センサ基板110および回路基板120の各々はウェーハであってもよい。また、センサ基板110および回路基板120は、ウェーハ状態で積層した後にダイシングしてもよいし、各々をチップ化した後に積層および接合してもよい。
【0036】
図5(a)、5(b)は、光電変換部20および波形整形回路32の基本動作を説明する図である。
図5(a)は、光電変換部20および波形整形回路32の回路図である。
図5(b)は、波形整形回路32の入力ノード(ノードA)における信号の波形と、波形整形回路32の出力ノード(ノードB)における信号の波形と、を示している。ここでは、説明の簡略化のため、波形整形回路32がインバータ回路によって構成されている場合が示されている。
【0037】
時刻t0において、光子検知素子22には電位VH-電位VLに相当する電位差の逆バイアス電圧が印加されている。光子検知素子22を構成するAPDのアノードとカソードとの間には、光子が入射した際にアバランシェ降伏が生じる十分な逆バイアス電圧が印加されているが、光子検知素子22に光子が入射していない状態ではアバランシェ降伏の種になるキャリアが存在しない。そのため、光子検知素子22においてアバランシェ降伏は起こらず、光子検知素子22に電流は流れない。
【0038】
続く時刻t1において、光子検知素子22に光子が入射したものとする。光子検知素子22に光子が入射すると、光電変換によって電子-正孔対が生成され、これらキャリアを種としてアバランシェ降伏が生じ、光子検知素子22にアバランシェ増倍電流が流れる。このアバランシェ増倍電流がクエンチ素子24を流れることによってクエンチ素子24による電圧降下が生じ、ノードAの電圧が降下し始める。ノードAの電圧降下量が大きくなり、時刻t3においてアバランシェ降伏が停止すると、ノードAの電圧レベルはそれ以上降下しなくなる。
【0039】
光子検知素子22におけるアバランシェ降伏が停止すると、電位VLが供給されるノードから光子検知素子22を介してノードAに電圧降下分を補う電流が流れ、ノードAの電位は徐々に増加する。その後、時刻t5においてノードAは元の電位レベルに整定する。
【0040】
波形整形回路32は、ノードAから入力される信号を所定の判定閾値に応じて二値化し、ノードBから出力する。具体的には、波形整形回路32は、ノードAの電位レベルが判定閾値を超えている場合に、ノードBからローレベルの信号を出力し、ノードAの電位レベルが判定閾値以下の場合に、ノードBからハイレベルの信号を出力する。例えば、
図5(b)に示されるように、時刻t2から時刻t4の期間においてノードAの電位レベルが判定閾値以下であるとする。この場合、ノードBにおける信号レベルは、時刻t0から時刻t2までの期間および時刻t4から時刻t5までの期間においてローレベルとなり、時刻t2から時刻t4までの期間においてハイレベルとなる。
【0041】
こうして、ノードAから入力されたアナログ信号は、波形整形回路32によってデジタル信号へと波形整形される。光子検知素子22への光子の入射に応じて波形整形回路32から出力されるパルス信号が、光子検知パルス信号である。
【0042】
図6は、本実施形態における画素12の構成をより詳細に説明する図である。
図6の説明において、
図3、
図5と重複する部分の説明は、適宜、省略または簡略化する。
図6に示される構成では、1つの例として、2つの画素12a、12bを1つのグループとしている。さらに、読出回路50は、画素読出回路51、差分値読出回路53、露光制御回路52を含む。デジタル処理回路34は、カウンタ342、処理回路341を含む。
【0043】
カウンタ342は、上述のように、光子検知素子22に入射された光子に基づくパルスのカウントを行い、カウントの結果であるカウント値を保持する。カウンタ342は、光子検知素子22であるAPDにおいてアバランシェ降伏が生じた回数をカウントするともいえる。カウンタ342は、カウント値を保持するために複数ビットのデジタル信号を保持可能なビットメモリとして、例えば、フリップフロップを含む。カウンタ342に保持されたカウント値は、画素出力回路36を介してカウント値CNTとしてデータ線16に出力される。カウンタ342に保持されたカウント値は、処理回路341にも出力可能である。また、カウンタ342は、露光制御回路52から入力されるリセット信号RESのパルスに応じたタイミングで保持しているカウント値を初期値にリセットする。
【0044】
処理回路341は、画素12aに配されたカウンタ342から入力されたカウント値と、画素12bに配されたカウンタ342との差分値を演算し、画素出力回路36を介して差分値読出回路53にその結果を出力する。処理回路341は、デジタル信号であるカウント値に基づく差分演算処理を行うことができるように構成されたデジタル回路でありうる。
【0045】
図7は、画素12a、12bの動作を示すタイミング図である。光電変換装置100に入射する光量の変化を検出する期間において、画素12a、12bは、光子検知素子
22であるAPDを動作させカウンタ342がアバランシェ降伏した回数をカウントする露光期間と、APDの動作を停止させ露光期間にカウントされたカウント値をカウンタ342に保持する保持期間と、を含む検出動作を繰り返す。画素12aおよび画素12bは、この検出動作を互いに異なるタイミングで交互に開始する。
【0046】
例えば、
図7に示される2フレーム目では、画素12aに配されたクエンチ素子24(トランジスタ)がオン動作することによってAPDが動作し露光期間になる。一方、画素12bは、クエンチ素子24がオフ動作することによってAPDの動作が停止し保持期間になる。そのため、画素12bに配されたカウンタ342は、画素12bの露光期間であった1フレーム目でカウントされたカウント値を保持している。このように、画素12bの露光期間のうち
図7に示される1フレーム目の露光期間の開始から所定の時間の経過後に、画素12aの露光期間のうち
図7に示される2フレーム目の露光期間が開始される。処理回路341は、画素12bにおいて1フレーム目の露光期間においてカウントされ、1フレーム目の第1露光期間に続く2フレーム目の保持期間にカウンタ342に保持されている画素12bの1フレーム目の露光期間のカウント値と、画素12aにおいて2フレーム目の露光期間においてカウントされたカウント値と、の差分値を出力する。例えば、画素12aの露光期間が終わるタイミングで、画素12aの2フレーム目のカウント値と画素12bに保持されている1フレーム目のカウント値との差分値が、処理回路341によって演算される。
【0047】
処理回路341での差分値の演算が終了するタイミングで、画素12aに配されたカウンタ342のリセットをせずにクエンチ素子24をオフ動作させることによって、露光期間が終了し、かつ、3フレーム目の保持期間において、カウンタ342にカウント値が保持された状態が持続する。一方、画素12bでは、3フレーム目になると、クエンチ素子24がオン動作する露光期間の開始に応じてカウンタ342のカウント値がリセットされ、光子検知素子22であるAPDのアバランシェ降伏の回数のカウントが開始される。このような検出動作を繰り返すことによって、画素12aと画素12bとの間で、カウント値の差分値、すなわち、フレーム間での入射する光子のカウント値の変化量を取得し続けることができる。このカウント値が変化することによって、光電変換装置100に入射する光量の変化を検出することが可能になる。例えば、差分値に基づいて入射する光量の変化を検出する検出回路が、差分値読出回路53に配されていてもよい。また、例えば、光電変換装置100から外部に差分値を出力し、光電変換装置100の外部において、入射する光量の変化を検出が検出されてもよい。
【0048】
図8に、画素12aと画素12bとのカウンタ342のカウント値の差分値を取得するための処理回路341の論理回路の例が示されている。上述のように、カウンタ342は、フリップフロップ回路を含む。処理回路341は、画素12aのフリップフロップ回路に保持されるカウント値と、画素12bのフリップフロップ回路に保持されるカウント値と、の排他的論理和を桁ごとに取得する排他的論理和回路を含んでいてもよい。それによって、カウンタ342に保持されたカウント値の各桁間の差分値を取り出すことができる。例えば、差分値読出回路53に配された検出回路が、ある桁よりも上の桁から「1(カウント値が変化)」が出力された場合に、入射する光量が変化するイベントが発生したと判定してもよい。
【0049】
画素12aの露光期間の長さと画素12bの露光期間の長さとは、
図7に示されるように同じであってもよい。その場合、光電変換装置100に入射する光量が増加するイベントおよび減少するイベントの何れにおいても、処理回路341において同じ演算を用いて差分値を取得し、検出回路において、同じ閾値を用いて判定することができる。つまり、回路構成をシンプルな構成にすることができる。しかしながら、それに限られることはなく、画素12aの露光期間の長さと画素12bの露光期間の長さとは、互いに異なっていてもよい。その場合に、例えば、処理回路341に、画素12aと画素12bとの露光期間の長さに応じて、少なくとも一方のカウント値を補正する補正回路などが配されていてもよい。
【0050】
また、
図7に示されるように、画素12aの露光期間と画素12bの露光期間とは、期間が重なっていなくてもよい。しかしながら、それに限られることはなく、
図9に示されるように、画素12aの露光期間と画素12bの露光期間とは、期間の一部が重なっていてもよい。露光期間をオーバーラップさせる場合、イベントの取り逃しが発生する確率が減少する。
【0051】
上述では、画素12a、12bに注目して説明したが、画素部10には、例えば、カラー画像を取得するために、赤色に感度がある画素12R、緑色に感度がある画素12R、青色に感度がある画素12Bをさらに含んでいてもよい。例えば、上述の入射する光量の変化を検出する画素12a(12b)、画素12R、画素12G、画素12Bの4つの画素を1つのグループ420としてもよい。この場合、例えば、
図10に示されるように、横方向に互いに隣り合うグループ420同士を左右フリップして配置し、光量の変化を検出するイベント画素である画素12aと画素12bとを、互いに隣り合うように配してもよい。画素12R、12G、12Bも、画素12a、12bと同様の構成を有していてもよい。例えば、画素12R、12G、12Bにおいて、APDをSPADとして機能させてもよい。また、画素12R、12G、12Bには、処理回路341が配されていなくてもよい。また、例えば、画素12R、12G、12Bのうち互いに隣り合う画素において、画素12aと画素12bとの関係と同様に、処理回路341が配され、イベントの検出に用いられてもよい。
【0052】
ここで、処理回路341によって取得されたフレーム間の画素12a、12bのカウント値の差分値からイベントを検出する方法を示す。イベントとは、画素12a、12bの光子検知素子22に入射する光の光量の変化が所定の条件を満たすことを意味する。所定の条件とは、例えば、カウント値の差分値が所定の閾値を超えたことであってもよく、カウント値の変化量が所定の閾値を超えたことであってもよい。イベントの検出は、上述したように、例えば、差分値読出回路53に配された検出回路で行われてもよいし、差分値を光電変換装置100の外部に出力し、光電変換装置100の外部で行われてもよい。
【0053】
図11は、カウント値の差分値が所定の閾値を超えたことに応じて、イベントを検出する例である。
図11に示されるように、1フレームごとに画素12a、画素12bに配されたカウンタ342が、交互に1フレームの期間内に入射する光子をカウントする。上述したように、それぞれのフレームごとにカウント値の差分値を取得し、差分値が所定閾値を超えた場合にイベントとして検出する。例えば、光電変換装置100は、イベントを検知したことに応じて、画素12の状態を遷移させる機能を有していてもよい。例えば、光電変換装置100は、イベントの検出に応じて、それぞれの画素12を用いて撮像を開始してもよい。
【0054】
1つの画素12を用いて入射する光量の変化(イベント)を検出するためには、注目フレームに対して、注目フレームよりも前のフレームで取得したカウント値を記憶するメモリやメモリのコントローラなどが必要になる。例えば、
図10に示される4つの画素12によって構成されるグループ420において、8つの画素12に対して1つのメモリを配する必要が出てくる。つまり、画素回路の回路規模が大きくなってしまう。一方、本実施形態において、2つの画素12a、12bを使用することによって、例えば排他的論理和回路など、小規模の回路の追加で処理回路341を構成することができる。つまり、画素回路の回路規模の増大を抑制しつつ、イベントの検出が可能になる。また、イベントの検出に用いる画素12a、12bは、画素12R、12G、12Bなどと同様の構成を有しうる。つまり、イベントを検出するための画素12a、12bとして、他の画素とは異なる構成を有する必要がないため、画素部10の設計の自由度などが向上する。
【0055】
上述では、2つの画素12a、12bを用いて、入射する光量の変化を検出するための差分値を取得することを説明した。しかしながら、入射する光量の変化の検出は、2つの画素12a、12bのグループだけで行われることに限られることはない。3つ以上の画素12を用いて、入射する光量の変化の検出が行われてもよい。
図12には、4つの画素12a~12dを用いて入射する光量の変化を検出する例が示されている。
【0056】
画素12a~12dは、露光期間と保持期間とを含む上述の検出動作を互いに異なるタイミングで所定の順番で開始する。画素12a~14dのそれぞれにおいて、1つのフレームごとに露光期間に入射する光子の数をカウントし、次いで、カウントを保持し続ける。
図12に示される構成の場合、最大4フレーム前までのカウント値が保持できる。この場合に、画素12aと画素12bとのカウント値の差分値など、露光期間が隣り合う画素12間での差分値を取得するだけに限られることはない。例えば、画素12aと画素12dとのカウント値の差分値や、画素12bと画素12dとのカウント値の差分値など、隣り合うフレーム間の差分値だけではなく、変則的な差分値を得ることが可能になる。また、
図12では、それぞれの画素12a~12dの露光期間が重ならない例が示されている。しかしながら、それに限られることはなく、画素12aの露光期間と画素12bの露光期間とが、画素12bの露光期間と画素12cの露光期間とが、画素12cの露光期間と画素12dの露光期間とが、それぞれ重なっていてもよい。露光期間を画素12間でオーバーラップさせる期間を、上述した2つの画素12a、12bを用いる場合よりも長くとることができる。それによって、入射する光量が変化するイベント情報を取り逃がす確率が減少する。
【0057】
図13、
図14を用いて、入射する光量が変化などのイベントを検出した場合の光電変換装置100の動作の切り替えの具体例を示す。
図13は、
図6に示される光電変換装置100の構成の変形例を示す図である。
図6では、読出回路50は、画素部10に配された複数の画素12から出力される画像などを生成するための信号を読み出す画素読出回路51と、イベントの検出に用いる画素12a、12bのカウント値の差分値を読み出す差分値読出回路53と、が別々の構成として配されている。一方、
図13の読出回路50では、画素読出回路51に画像生成用の信号および画素12a、12bのカウント値の差分値が読み出される。そのため、
図13に示される構成において、読出回路50の画素読出回路51は、画素12a、12bのカウント値の差分値に基づいて入射する光量の変化を検出する検出回路としても機能しうる。
【0058】
また、光電変換装置100には、カウンタ342と処理回路341とに接続され、カウンタ342の出力と処理回路341の出力とを切り替えて読出回路50の画素読出回路51に出力する切替回路37が配されている。画素読出回路51が備える検出回路の機能が入射する光量の変化を検出した場合に、画素読出回路51は、選択信号SELを切替回路37に送信し、画素読出回路51に読み出される信号を、画素12aと画素12bとの間の差分値と画素12にそれぞれ配されたカウンタ342のカウント値との間で切り替える。
【0059】
図14には、処理回路341から出力される差分値とカウンタ342から出力されるカウント値とを切り替える切替回路37の例が示されている。
図14に示される構成において、選択信号SELに応じて、マルチプレクサ回路を使用することによって、カウンタ342の出力と処理回路341の出力とを切り替えることができる。例えば、入射する光量の変化(イベント)を検出した後に、画素12a、12bを含むそれぞれの画素12において、APDをSPADとして動作させる。つまり、露光制御回路52に従う露光制御において、画素12aと画素12bとの交互動作ではなく、例えば、全ての画素12において所望の時間にわたり露光を行い続ける動作とすることができる。それによって、画素12a、12bを含む画素12に配されたカウンタ342によってカウントされたカウント値を順次、読み出す動作に切り替え、画像を生成するための信号を得ることができる。本実施形態において、入射する光量の変化(イベント)を検出するために配された画素12a、12bにおいても、画像を生成するための信号を生成する動作を行える。したがって、画素12a、12bをイベントの検出のみに使用し、画像の生成において画素12a、12bの画素値を他の画素12の画素値を用いて補完する場合と比較して、得られる画像の画質が向上しうる。
【0060】
以下、光電変換装置100の応用例として、
図15に示される、光電変換装置100を備える機器EQPについて説明する。機器EQPは、電子機器とも呼ばれうる。
図15は、機器EQPの一例としてカメラを示している。ここで、カメラの概念には、撮影を主目的とする装置のみならず、撮影機能を補助的に備える装置(例えば、パーソナルコンピュータや、スマートフォンなどの携帯端末)も含まれる。
【0061】
光電変換装置100は、画素部10が設けられた積層構造の半導体チップでありうる。光電変換装置100は、
図15に示されるように、半導体パッケージPKGに収容されている。パッケージPKGは、光電変換装置100が固定された基体と、光電変換装置100に対向するガラスなどの蓋体と、基体に設けられた端子と光電変換装置100に設けられた端子とを接続するボンディングワイヤやバンプなどの導電性の接続部材と、を含みうる。機器EQPは、光学系OPT、制御装置CTRL、処理装置PRCS、表示装置DSPL、記憶装置MMRYの少なくともいずれかをさらに備えていてもよい。
【0062】
光学系OPTは、光電変換装置100に結像するものであり、例えば、レンズやシャッタ、ミラーでありうる。制御装置CTRLは、光電変換装置100の動作を制御するものであり、例えば、ASICなどの半導体デバイスでありうる。処理装置PRCSは、光電変換装置100から出力された信号を処理する信号処理部として機能するものであり、CPUやASICなどの半導体デバイスでありうる。表示装置DSPLは、光電変換装置100で得られた画像データを表示する、EL表示装置や液晶表示装置でありうる。記憶装置MMRYは、光電変換装置100で得られた画像データを記憶する、磁気デバイスや半導体デバイスである。記憶装置MMRYは、SRAMやDRAMなどの揮発性メモリ、あるいは、フラッシュメモリやハードディスクドライブなどの不揮発性メモリでありうる。機械装置MCHNはモーターやエンジンなどの可動部あるいは推進部を有する。カメラにおける機械装置MCHNはズーミングや合焦、シャッタ動作のために光学系OPTの部品を駆動することができる。機器EQPでは、光電変換装置100から出力された画像データを表示装置DSPLに表示したり、機器EQPが備える通信装置(不図示)によって外部に送信したりする。このため、機器EQPは、記憶装置MMRYや処理装置PRCSを備えていてもよい。
【0063】
光電変換装置100が組み込まれたカメラは、監視カメラや、自動車や鉄道車両、船舶、航空機あるいは産業用ロボットなどの輸送機器に搭載される車載カメラなどにも適用されうる。加えて、光電変換装置100が組み込まれたカメラは、輸送機器に限らず、高度道路交通システム(ITS)など、広く物体認識を利用する機器に適用することができる。
【0064】
次いで、本実施形態の光電変換装置100を移動体に搭載する具体的な応用について、
図16(a)、16(b)を用いて説明する。
図16(a)は、車載カメラに関する光電変換システムの一例を示したものである。光電変換システムSYSは、上述の光電変換装置100を有する。光電変換システムSYSは、光電変換装置100によって取得された複数の画像データに対し、画像処理を行う画像処理部801と、光電変換システムSYSによって取得された複数の画像データから視差(視差画像の位相差)の算出を行う視差取得部802を有する。また、光電変換システムSYSは、算出された視差に基づいて対象物までの距離を算出する距離取得部803と、算出された距離に基づいて衝突可能性があるか否かを判定する衝突判定部804と、を有する。ここで、視差取得部802や距離取得部803は、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段の一例である。すなわち、距離情報とは、視差、デフォーカス量、対象物までの距離等に関する情報である。衝突判定部804はこれらの距離情報のいずれかを用いて、衝突可能性を判定してもよい。距離情報取得手段は、専用に設計されたハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアモジュールによって実現されてもよい。また、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。
【0065】
光電変換システムSYSは車両情報取得装置810と接続されており、車速、ヨーレート、舵角などの車両情報を取得することができる。また、光電変換システムSYSは、衝突判定部804での判定結果に基づいて、車両に対して制動力を発生させる制御信号を出力する制御装置である制御ECU820が接続されている。また、光電変換システムSYSは、衝突判定部804での判定結果に基づいて、ドライバーへ警報を発する警報装置830とも接続されている。例えば、衝突判定部804の判定結果として衝突可能性が高い場合、制御ECU820はブレーキをかける、アクセルを戻す、エンジン出力を抑制するなどして衝突を回避、被害を軽減する車両制御を行う。警報装置830は音等の警報を鳴らす、カーナビゲーションシステムなどの画面に警報情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与えるなどしてユーザに警告を行う。
【0066】
本実施形態では、車両の周囲、例えば前方又は後方を光電変換システムSYSで撮像する。
図16(b)に、車両前方(撮像範囲850)を撮像する場合の光電変換システムを示した。車両情報取得装置810が、光電変換システムSYSないしは光電変換装置100に指示を送る。このような構成によって、測距の精度をより向上させることができる。
【0067】
上述では、他の車両と衝突しないように制御する例を説明した、しかしながら、これに限られることはなく、例えば、他の車両に追従して自動運転する制御や、車線からはみ出さないように自動運転する制御などにも適用可能である。
【0068】
本明細書の開示は、以下の光電変換装置、機器および移動体を含む。
【0069】
(項目1)
アバランシェフォトダイオードと前記アバランシェフォトダイオードにおいてアバランシェ降伏が生じた回数をカウントするためのカウンタとをそれぞれ備える第1画素および第2画素を含む複数の画素と、処理回路と、を備える光電変換装置であって、
前記光電変換装置に入射する光量の変化を検出する期間において、
前記第1画素および前記第2画素は、前記アバランシェフォトダイオードを動作させ前記カウンタが前記回数をカウントする露光期間と、前記アバランシェフォトダイオードの動作を停止させ前記露光期間にカウントされたカウント値を前記カウンタに保持する保持期間と、を含む検出動作を繰り返し、
前記第1画素および前記第2画素は、前記検出動作を互いに異なるタイミングで交互に開始し、
前記第1画素の前記露光期間のうち第1露光期間の開始から所定の時間の経過後に、前記第2画素の前記露光期間のうち第2露光期間が開始され、
前記処理回路は、前記第1画素において前記第1露光期間においてカウントされ、前記保持期間のうち前記第1露光期間に続く第1保持期間に前記カウンタに保持されている第1カウント値と、前記第2画素において前記第2露光期間においてカウントされた第2カウント値と、の差分値を出力することを特徴とする光電変換装置。
【0070】
(項目2)
前記差分値に基づいて前記変化を検出する検出回路をさらに含むことを特徴とする項目1に記載の光電変換装置。
【0071】
(項目3)
前記複数の画素から出力される信号を読み出すための読出回路と、前記カウンタと前記処理回路とに接続され、前記カウンタの出力と前記処理回路の出力とを切り替えて前記読出回路に出力する切替回路と、をさらに含み、
前記読出回路は、前記検出回路の機能を有することを特徴とする項目2に記載の光電変換装置。
【0072】
(項目4)
前記カウンタは、フリップフロップ回路を含み、
前記処理回路は、前記第1画素の前記フリップフロップ回路に保持される前記第1カウント値と、前記第2画素の前記フリップフロップ回路に保持される前記第2カウント値と、の排他的論理和を桁ごとに取得する排他的論理和回路を含むことを特徴とする項目1乃至3の何れか1項目に記載の光電変換装置。
【0073】
(項目5)
前記第1露光期間の長さと前記第2露光期間の長さとが同じことを特徴とする項目1乃至4の何れか1項目に記載の光電変換装置。
【0074】
(項目6)
前記第1露光期間と前記第2露光期間とは、期間の一部が重なっていることを特徴とする項目1乃至5の何れか1項目に記載の光電変換装置。
【0075】
(項目7)
前記第1露光期間と前記第2露光期間とは、期間が重なっていないことを特徴とする項目1乃至5の何れか1項目に記載の光電変換装置。
【0076】
(項目8)
前記複数の画素のうち前記第1画素と前記第2画素とは、互いに隣り合うように配された画素であることを特徴とする項目1乃至7の何れか1項目に記載の光電変換装置。
【0077】
(項目9)
前記複数の画素は、第3画素をさらに含み、
前記変化を検出する期間において、
前記第3画素は、前記検出動作を繰り返し、かつ、前記第2露光期間の開始から所定の時間の経過後に前記第3画素の前記露光期間のうち第3露光期間が開始され、
前記処理回路は、前記第1カウント値または前記第2カウント値と、前記第3画素において前記第3露光期間においてカウントされた第3カウント値と、の差分値をさらに出力することを特徴とする項目1乃至8の何れか1項目に記載の光電変換装置。
【0078】
(項目10)
前記複数の画素は、第4画素をさらに含み、
前記変化を検出する期間において、
前記第4画素は、前記検出動作を繰り返し、かつ、前記第3露光期間の開始から所定の時間の経過後に前記第4画素の前記露光期間のうち第4露光期間が開始され、
前記処理回路は、前記第1カウント値、前記第2カウント値または前記第3カウント値と、前記第4画素において前記第4露光期間においてカウントされた第4カウント値と、の差分値をさらに出力することを特徴とする項目9に記載の光電変換装置。
【0079】
(項目11)
前記露光期間の開始に応じて、前記カウンタがリセットされることを特徴とする項目1乃至10の何れか1項目に記載の光電変換装置。
【0080】
(項目12)
項目1乃至11の何れか1項目に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置から出力された信号を処理する処理装置と、
を備えることを特徴とする機器。
【0081】
(項目13)
項目1乃至11の何れか1項目に記載の光電変換装置を備える移動体であって、
前記光電変換装置が出力する信号を用いて前記移動体の移動を制御する制御装置を有することを特徴とする移動体。
【0082】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0083】
12:画素、100:光電変換装置、341:処理回路、342:カウンタ