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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162494
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】防災システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
G08B17/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078043
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 康浩
【テーマコード(参考)】
5G405
【Fターム(参考)】
5G405AA01
5G405AA06
5G405AA08
5G405AB01
5G405AB02
5G405AB05
5G405AD07
5G405CA22
5G405CA27
5G405FA02
(57)【要約】
【課題】監視領域の地図において警報の対象となる区域を塗りつぶして表示する場合にも、この区域内の防災設備の位置を示すシンボルを視認できるようにする。
【解決手段】防災システムは、防災設備の位置を示すシンボルが重畳された、監視領域の地図を表示部に表示させ、前記防災設備から受信した信号に応じて警報が出力されると、前記地図において前記警報の対象となる区域を半透明色で塗りつぶして表示させる表示制御部111を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防災設備の位置を示すシンボルが重畳された、監視領域の地図を表示部に表示させ、前記防災設備から受信した信号に応じて警報が出力されると、前記地図において前記警報の対象となる区域を半透明色で塗りつぶして表示させる表示制御部
を備える防災システム。
【請求項2】
前記監視領域は、自動火災報知設備による監視の対象となる警戒区域と、ガス消火設備による消火の対象となる防護区域とを含み、
前記表示制御部は、前記警戒区域を対象とする第1警報の出力に応じて前記警戒区域を塗りつぶす半透明色と、前記防護区域を対象とする第2警報の出力に応じて前記防護区域を塗りつぶす半透明色とを異ならせる
請求項1に記載の防災システム。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記第1警報と前記第2警報とが共に出力された場合には、前記警戒区域と前記防護区域とが重なる部分を、前記第1警報の出力に応じた前記警戒区域の表示及び前記第2警報の出力に応じた前記防護区域の表示とは異なる表示方法で表示させる
請求項2に記載の防災システム。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記第1警報と前記第2警報とが共に出力された場合には、前記警戒区域と前記防護区域とが重なる部分を、前記第1警報の出力に応じた前記警戒区域の表示及び前記第2警報の出力に応じた前記防護区域の表示を交互に表示させる
請求項2に記載の防災システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地図画像上に情報を重ねて表示する技術が知られている。例えば特許文献1は、地形の標高を表現する等高線図に関し、地図を等高線ベクターとして生成し表示する等高線生成システムを開示している。
【0003】
また、非特許文献1は、防災設備の配置を示す地図を表示するシステムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-82112号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】能美防災株式会社,“総合操作盤 C13ディスプレイシステム”,[online],[令和5年3月3日検索],インターネット <URL: https://www.nohmi.co.jp/product/crt_display_system/c13_001.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に記載のシステムでは、警報の対象となる区域を赤い線で囲っていたが、実用上、赤い線で囲っただけでは、どこが警報の対象となる区域なのか、一見して判別が難しい場合があった。
【0007】
ここで、非特許文献1に記載のシステムにおいて、警報の対象となる区域を強調するために、この区域を塗りつぶして表示することが考えられる。しかし、1枚の地図データにおいて、単に警報の対象となる区域を塗りつぶしてしまうと、この区域内の防災設備の位置を示すシンボルを視認できなくなる場合がある。
【0008】
このような上記の背景に鑑み、本発明は、監視領域の地図において警報の対象となる区域を塗りつぶして表示する場合にも、この区域内の防災設備の位置を示すシンボルを視認できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、防災設備の位置を示すシンボルが重畳された、監視領域の地図を表示部に表示させ、前記防災設備から受信した信号に応じて警報が出力されると、前記地図において前記警報の対象となる区域を半透明色で塗りつぶして表示させる表示制御部を備える防災システムを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、監視領域の地図において警報の対象となる区域を塗りつぶして表示する場合にも、この区域内の防災設備の位置を示すシンボルを視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】防災システム1のシステム構成を例示する図。
図2】総合操作盤10の機能構成を例示する図。
図3】総合操作盤10のハードウェア構成をそれぞれ例示する図。
図4】従来技術に係る表示画面を例示する図。
図5】表示画面のシンボルの意味を例示する対応リストを示す図。
図6】実施形態に係る一部区域を半透明色で塗りつぶした表示画面を例示する図。
図7】表示画面におけるレイヤの概要を例示する図。
図8】防災システム1による動作概要を例示するフローチャート。
図9】自動火災報知設備20が作動した場合の動作を例示するシーケンスチャート。
図10】表示部15の表示画面の変更を例示する図。
図11】半透明色で塗りつぶした区域の色の概念を説明する図。
図12】ガス消火設備30が作動した場合の動作を例示するシーケンスチャート。
図13】表示部15において警戒区域と防護区域とが重なる部分の表示方法を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.構成
図1は、防災システム1のシステム構成を例示する図である。防災システム1は、防災の観点、例えば、災害を未然に防ぐ「被害抑止」、被害の拡大を防ぐ「被害軽減」、又は被災からの「復旧」等を含む概念に則り、これらを達成する目的として利用されるシステムである。この例において防災システム1は、総合操作盤10、自動火災報知設備20、及びガス消火設備30を有する。この例において総合操作盤10は、防災システム1の状態を表示するとともに、管理者(又はユーザ)による防災システム1の操作に用いられる機器である。この例において管理者は、例えば建築物等の防災管理者、施設内の従業員、又はオーナー(所有者)等を含む。
【0013】
次に、この例において自動火災報知設備20は、例えば建築物等で火災が発生した場合、自動的に火災を検知して、建物内の人に火災を知らせる設備である。自動火災報知設備20は、火災受信機21及び端末機器22を有する。この例において火災受信機21は、端末機器22から受信した信号に基づいて警報を出力し、管理者に火災を知らせる機器である。また、火災受信機21は、各防災設備と連携し、自動火災報知設備20及びガス消火設備30を監視制御する。この例において端末機器22は、発生した火災に対処するための機器であって、例えば火災感知器である。火災感知器は、熱、炎、又は煙等を感知するセンサを利用し、自動的に火災を検知する機器である。端末機器22は、火災を検知した場合、火災受信機21に信号を送信する。また、その他の端末機器22の代表例として、火災発生時に閉鎖して延焼を防止するための「防火戸」、火災発生時に空調ダクトの開口部を閉鎖するための「防火ダンパ」、火災発生時に煙を屋外に排気するための「排煙口」、火災発生時に音を鳴らすベルとしての「音響装置」等がある。
【0014】
次に、この例においてガス消火設備30は、火災が発生している箇所に、消火ガスを放出して消火する設備である。この例において、火災受信機21は、火災状況、シャッター等の閉鎖状況、消火ガス放出状況等を確認できる。
【0015】
以上より、防災システム1において、総合操作盤10、自動火災報知設備20、及びガス消火設備30が連携し動作することで、防災を目的とした機能が実現される。なお、総合操作盤10、自動火災報知設備20、及びガス消火設備30は、一般的に総称して防災設備とも呼ばれる。また、これらの機器又は設備等は、例えば通信線等のネットワークを介して接続される(図示略)。なお、火災受信機21は、例えば、ポーリング/セレクティング方式で各機器(設備)と信号の送受信を行い、火災等のイベントの発生を検出すると、発生したイベントの内容及び発生場所を通知する情報を総合操作盤10に送信する。
【0016】
図2は、総合操作盤10の機能構成を例示する図である。この実施形態では、総合操作盤10は、制御部11、記憶部12、通信部13、操作部14、及び表示部15を有する。また、制御部11は、表示制御部111を有する。
【0017】
この例において制御部11は、各種の制御を行う。また、表示制御部111は、防災設備の位置を示すシンボルが重畳された、監視領域の地図を表示部15に表示させる。この例において監視領域は、防災システム1の監視(防災)対象となる建築物等の領域を含む。また、表示部15に表示させる地図は、監視領域の状態、つまり災害が発生しているかどうか等を表示する地図である。また、地図に重畳されるシンボルは、例えば、火災感知器のような防災設備の位置を地図上に描画した固有の表示記号を含む概念である。表示制御部111は、例えば、建築物等で火災が発生した場合、これらの防災設備から受信した信号に応じて、地図において警報の対象となる区域の表示を変更させる。すなわち、表示制御部111は、表示部15に表示させる地図の表示を変更させることで、視覚的に管理者に異常を知らせることができる。なお、地図の表示に関し、視覚的にどのように表示が変更されるかについては後述する(1-1節)。
【0018】
この例において記憶部12は、各種のデータを記憶する。この例において通信部13は、各種の通信を行う。この例において操作部14は、管理者から各種の操作を受け付ける。この例において表示部15は、防災システム1の監視状態を地図として表示する。表示部15は、表示制御部111の指示に応じて、表示する地図の状態を変更する。
【0019】
図3は、総合操作盤10のハードウェア構成をそれぞれ例示する図である。この例において総合操作盤10は、CPU(Central Processing Unit)101、メモリ102、ストレージ103、通信IF104、入力装置105、及び表示装置106を有するコンピュータである。CPU101は、プログラムに従って各種の演算を行うプロセッサである。メモリ102は、CPU101がプログラムを実行する際のワークエリアとして機能する主記憶装置であり、例えばRAM(Random Access Memory)を含む。ストレージ103は、各種のデータ及びプログラムを記憶する補助記憶装置であり、例えばSSD(Solid State Drive)又はHDD(Hard Disc Drive)を含む。通信IF104は、所定の通信規格に従って他の装置と通信する装置であり、例えばNIC(Network Interface Card)を含む。入力装置105は、総合操作盤10に情報を入力するための装置であり、例えばタッチスクリーン、キーボード、マウス、又はポインティングデバイスを含む。表示装置106は情報を表示する装置であり、例えば有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ又は液晶ディスプレイを含む。
【0020】
この例においてストレージ103が記憶するプログラムには、コンピュータを防災システム1における総合操作盤10として機能させるためのプログラム(以下「制御プログラム」という。)が含まれる。CPU101が制御プログラムを実行している状態において、CPU101、メモリ102、ストレージ103、通信IF104、入力装置105、及び表示装置106は、総合操作盤10を動作させるための機能の一例である。特に、CPU101は、制御部11及び表示制御部111の一例である。メモリ102及びストレージ103の少なくとも一方は、記憶部12の一例である。通信IF104は、通信部13の一例である。入力装置105は、操作部14の一例である。表示装置106は、表示部15の一例である。
【0021】
この例においてCPU101が制御するプログラムには、制御部11を表示制御部111として機能させるためのソフトウェアが含まれる。CPU101がこのソフトウェアを実行している状態において、表示制御部111は、表示部15にベクタ形式で地図を描画させる。この例においてベクタ形式は、画像を、直線、曲線、及び円などの図形の集合として描画する方式である。ベクタ形式は、例えばラスタ形式のような点(ドット)で描画する方式に比べ、データサイズが小さく、迅速な処理が可能になる。また、ベクタ形式は、画像の拡大縮小が容易に行えるといったメリットがある。災害発生時といった緊急性を要する場合において、描画方式にベクタ形式が採用されることで、表示部15は、管理者に対し、迅速かつ明確に事態の状況を把握させることができる。
【0022】
1-1.表示画面の説明
図4は、従来技術に係る表示画面を例示する図である。この従来技術は、警報の対象となる区域を地図上の枠線で示す技術である。この例において表示画面D0は、表示部15が表示する地図において、火災が発生した場合の地図の一部を表している。この例において火災感知器は火災を検知すると、火災の発生を知らせる情報を火災受信機21に送信する。その信号を受信すると、火災受信機21はその信号をもとに火災が発生していると判断し、警報を出力する。総合操作盤10の表示制御部111は、火災受信機21から警報が出力されると、表示部15に、警報の対象となる区域の表示を変更して表示させる。この例において警報の対象となる区域、つまり警報が出力された区域は、火災感知器が、実際に火災を検知した箇所に属する区域である。図4において警報が出力された区域は、例えば、ルームRm1である。一方で、図4において警報が出力されてない区域は、例えば、ルームRm2又はエレベータホールEv1である。従来技術では、これらの区域は、区域内を囲う枠(又は線)の表示が変更されることで、それぞれ区別可能となる。なお、図4では、図面上の見易さの観点から、枠線の線種の違いによって各区域が表現されているが、これは例えば、枠線の色の違いによって表現されることが通例である。この例において警報が出力された区域の枠線は、赤色で描画され、警報が出力されていない区域は、青色で描画される。また、火災が発生していない通常状態の場合では、表示部15は、監視対象の区域を、常時「警報が出力されていない区域(つまり青色の枠線で囲まれた区域)」として、地図に表示している。すなわち、表示制御部111は、表示部15に、通常状態の枠の色(例えば青色)を、別の異なる色(例えば赤色)に変更して表示させることで、警報の対象となる区域と、それ以外の区域とを、区別して表示させることができる。
【0023】
また、上述した地図には、端末機器22の位置を示すシンボルが重畳されている。図4においてシンボルSは、各端末機器22(防災設備の一例)の位置を表す。端末機器22は、例えば火災感知器、防火戸、又は防火ダンパ等である。
【0024】
図5は、表示画面のシンボルの意味を例示する対応リストを示す図である。この例においてシンボルリスト1001は、防災設備の名称と、表示部15に表示されるシンボルとの対応関係を表す。シンボルリスト1001において感知器は、アドレス(例えば、固有の識別情報又は位置情報)有り/無しの感知器、あるいは、代表の感知器に大別される。また、アドレスの無い感知器及び代表の感知器は、同一のシンボルで表示される。シンボルの表示に関し、シンボルに付加される「R255」又は「G128」といった文字列は、表示されるシンボルの色を表す(表示例)。この例において「R255」は、火災感知器が火災を検知した場合を表す。また、「G128」は、防火戸、防火ダンパ、又は排煙口がそれぞれ作動した場合を表す。なお、図5においても、図面の便宜上、付加する文字列の違いによってシンボルの意味が表現されているが、これも一般的には、色の違いによって表現されることが通例である。そのため、この例において「R255」は、シンボルが赤色で表示されることを意味し、「G128」は、シンボルが緑色で表示されることを意味しており、実際の画面表示では、「R255」、「G128」の文字は表示されない。なお、通常状態(通常時)の場合、シンボルの色は、白色で表示される。この例において通常状態とは、火災が発生していない状態を指す。
【0025】
ここで色について説明する。防災システム1において色とは、主に表示部15で表示される地図内の枠線及びシンボル等を識別するための発光に基づく視覚情報を指す。例えば、コンピュータ分野において赤色は、(255,0,0)のようなRGB値又は「#FF0000」といったカラーコード(色を表示するためのRGB値を十六進法で表記した文字列)を用いて区別される。そのため、防災システム1において用いられる色(例えば、赤色、黄色、又は緑色等)は、いずれもRGB値又はカラーコード等を用いてデータベース上で定義及び管理されている。なお、表示部15において、上述した枠線の色も、シンボルの色も、全ては管理者にとって視覚的に情報把握をしやすいかどうかを念頭に設計された工夫である。つまり、防災設備のような、人命に関わる機器を扱う技術分野では、緊急時に情報伝達が明確に行われることが優先的な課題である。
【0026】
図4に戻る。ここまで説明した表示部15の表示画面において、従来技術では地図上の区域内を囲う枠線の色を変更して表示するだけでは、視覚的な情報把握に関する問題があった。例えば、枠線の色が区別しやすいかどうかは、枠線の太さ又は発色の強さ(色の選択)等に依存する。そのため、枠線が細かったり、選択された色自体が暗かったりすると、どの区域に火災が発生しているか一見して把握し難いという問題である。あるいは、そもそも枠線自体が、地図上の各区域の境界線に隣接するため、その境界線と同化して見難い、つまり境界線なのか、枠線なのかが紛らわしいという問題である。
【0027】
そこで、本実施形態では、表示制御部111は、地図において警報の対象となる区域を半透明色で塗りつぶして表示させる構成を有する。この例において半透明色で塗りつぶすとは、地図上の区域内を、枠線で囲むのではなく、区域全体をある色(例えば赤色)で表示するとともに、その色の透明度を調整する処理を指す。この例において透明度(又は透過度)は、画像データなどに設定される色情報の一つであって、複数の画像や要素を重畳させた、つまり重ね合わせた場合、手前の画像が透き通って背後にある画像(色)を透過させる度合いのことを言う。すなわち、「半透明色」とは、ある色に関し、その色を含む画像が透き通って、その画像の背後にある画像(色)を透過させるように透明度が調整された色のことをいう。なお、透明度の具体的な処理(調整)方法については後述する(2-1節)。
【0028】
図6は、本実施形態に係る一部区域を半透明色で塗りつぶした表示画面を例示する図である。この例において表示画面D1は、表示部15が表示する地図において、火災が発生した場合の地図の一部を表している。ここで、監視領域は、通常時は所定の基準色(例えば白色)で表示される。既に説明した表示画面D0の場合と同様に、表示制御部111は、警報が出力されると、表示部15に、警報の対象となる区域の表示を変更して表示させる。具体的には、警報の対象となる区域を半透明色(例えば、半透明の赤色)で塗りつぶす。図6において警報が出力された区域は、例えば、ルームRm1である。また、図6において警報が出力されてない区域は、例えば、ルームRm2又はエレベータホールEv1である。図6では、半透明色を表現することが難しいため、塗りつぶしをハッチングで表現している。表示部15において警報が出力された区域(斜線の区域)の色は例えば赤色で表示され、警報が出力されていない区域は例えば白色で表示されるが、図6において赤色の区域と白色の区域とはハッチングの有無で区別される。
【0029】
図7は、表示画面におけるレイヤの概要を例示する図である。この例においてレイヤは、地図又は記号等の画像データが重なって表示される場合に、それらの画像データ毎に割り当てられた仮想の平面又は複数の平面からなる階層構造といった概念を含む。図7では、表示部15に表示される地図(表示画面D1)の一部が模式的に表されており、各画像データ(レイヤ)の重なりが立体的に表現されている。この例においてL1は、監視領域の地図のデータに割り当てられたレイヤを表す。また、L2は、警報の対象となる区域であって、上述した「斜線」、つまり半透明の赤色で塗りつぶされた区域のデータに割り当てられたレイヤを表す。なお、図7はあくまで画像の重なり(重畳)を説明するための概念図である。そのため、レイヤ構造を有しているかどうかに依らず、表示制御部111は、例えば上述した表示画面D1のように、地図を半透明色で塗りつぶして表示させることが可能である。
【0030】
以上より、半透明色で塗りつぶすとは、より厳密には、ある基準色(例えば白色)に対し、その基準色とは異なる色(例えば赤色)を、対象の区域にデータ(例えばレイヤ)として重畳させることをいう。監視領域の地図において警報の対象となる区域が塗りつぶして表示されるため、火災の発生場所や消火ガスが放出される場所が、管理者にとって一見して分かりやすくなる。さらに、半透明色で塗りつぶすとは、元々の地図上に重畳されたシンボルが見えるように、表示する色の透明度を設定する処理を指す。対象の区域を非透明色で塗りつぶすとシンボルも一緒に塗りつぶされてしまうが、半透明色で塗りつぶすことにより、この区域内の防災設備のシンボルを視認することができるようになる。次に、防災システム1の動作について、以下に説明する。
【0031】
2.動作
図8は、防災システム1による動作概要を例示するフローチャートである。この例において以下では、防災システム1全体の動作の概要を説明する。
【0032】
ステップS1において、総合操作盤10の表示制御部111は、表示部15に、防災設備の位置を示すシンボルが重畳された、監視領域の地図を表示させる。この例においてステップS1は、表示部15に地図が表示されている状態を含む。そのため、この時点では、防災システム1は、火災が発生していない平常状態である。
【0033】
ステップS2において、防災システム1によって、警報が出力される。この例において警報は、各防災設備が送信した信号に応じて出力される警報であって、火災が発生したことを知らせるための情報及びその手段といった概念を含む。そのため、火災の発生によって警報が出力された場合、防災設備のネットワークを介し、火災が発生したという情報が、各防災設備、例えば、総合操作盤10に伝達され、共有される(図示略)。
【0034】
ステップS3において、総合操作盤10の表示制御部111は、防災設備から受信した信号に応じて警報が出力されると、表示部15に、警報の対象となる区域を半透明色で塗りつぶして表示させる。この例において表示部15は、例えば、図6のような表示画面を表示することができる。そのため、監視領域の地図において、警報の対象となる区域を目立たせるために塗りつぶして表示する場合にも、この区域に所属する防災設備の位置を示すシンボルを、管理者は容易に視認することができる。
【0035】
次に、上述した動作概要に関連し、警報の対象となる区域が複数種類ある場合の処理を以下に説明する。なお、以下の動作は、図8のフローチャート上では省略されている。
【0036】
警報の対象となる区域が複数種類ある場合において、総合操作盤10の表示制御部111は、警戒区域と、防護区域とで、塗りつぶす半透明色を同じ色にしてもよいし、異なる色にしてもよい。この例において警戒区域及び防護区域は、警報の対象となる区域(つまり、監視領域)の種類の一例である。警戒区域は、自動火災報知設備20による監視の対象となる区域である。また、防護区域は、ガス消火設備30による消火の対象となる区域である。なお、それぞれの区域は、自動火災報知設備20の有無又はガス消火設備30の有無によって区別される。この例において自動火災報知設備20の一方のみがある区域は、警戒区域に分類される。また、ガス消火設備30の一方のみがある区域は、防護区域に分類される。さらに、自動火災報知設備20及びガス消火設備30の両方がある場合、その区域は、警戒区域であり、かつ防護区域である。なお、この点に関し、1つの区域において、警戒区域及び防護区域が併存することは、決して言葉の矛盾又はシステム(技術)の矛盾を表すものではない。
【0037】
防災システム1において、地図上のどの区域が、警戒区域なのか、又は防護区域なのかといった対応関係は、予めデータベース等で定義される(図示略)。この例においてデータベースには、区域の識別情報(例えば、ルームRm1)、警戒区域該当の有無、防護区域該当の有無、第1警報の出力(発生中)有無、及び第2警報の出力(発生中)有無が定義及び記録されている。この例において第1警報は、警戒区域を対象とする警報である。第2警報は、防護区域を対象とする警報である。これらの警報は、各防災設備が送信した信号に応じて決定され出力される。また、各防災設備と警報との対応関係、並びに、各防災設備と区域の識別情報(例えば、ルームRm1)との対応関係についても同様に、予めデータベース等で定義される(図示略)。以上より、表示制御部111は、これらの警報に応じて、警戒区域と、防護区域とで、塗りつぶす半透明色を異ならせることができる。また、それによって管理者は、警戒区域と、防護区域とを容易に判別することができる。
【0038】
また、警報の対象となる区域が複数種類ある場合において、総合操作盤10の表示制御部111は、警戒区域と、防護区域とが重なる部分の表示を変更してもよい。この例において警戒区域と、防護区域とが重なるとは、ある一の区域において、第1警報及び第2警報が、一緒に出力された場合のことを指す。この例において表示制御部111は、第1警報と、第2警報とが共に出力された場合には、警戒区域と防護区域とが重なる部分を、第1警報の出力に応じた警戒区域の表示及び第2警報の出力に応じた防護区域の表示とは異なる表示方法で表示させてもよい。
【0039】
表示方法の一例として、より具体的には、表示制御部111は、第1警報と、第2警報とが共に出力された場合には、警戒区域と防護区域とが重なる部分を、第1警報の出力に応じた警戒区域の表示及び第2警報の出力に応じた防護区域の表示を交互に表示させる。すなわち、ある一の区域において、第1警報及び第2警報が、共に出力された場合、表示制御部111は、表示部15のその区域について、警戒区域の半透明の赤色(半透明色の一例)と、防護区域の半透明の黄色(半透明色の一例)とを任意のタイミング(例えば3秒毎)で切り替えて(点滅させて)、交互に表示させる。以上より、このように表示部15において表示を切り替える処理が実行されることで、管理者は、自動火災報知設備20及びガス消火設備30の両方とも作動した区域を容易に認識することができる。
【0040】
ここまで、防災システム1全体の動作の概要を説明したが、以降は、総合操作盤10、自動火災報知設備20、及びガス消火設備30が、それぞれ連動する場合について、動作の詳細を説明する。また、各防災設備の連動に関し、「自動火災報知設備20」が作動した場合と、「ガス消火設備30」が作動した場合とで、防災システム1の動作が異なるため、それぞれ、2-1及び2-2に分割し、以下に説明する。
【0041】
2-1.自動火災報知設備20が作動した場合
図9は、自動火災報知設備20が作動した場合の動作を例示するシーケンスチャートである。この例において図9のシーケンスチャートは、例えば、自動火災報知設備20が設置されている警戒区域で火災が発生した場合を想定した動作例である。
【0042】
ステップS11において、総合操作盤10の表示制御部111は、表示部15に、防災設備の位置を示すシンボルが重畳された、監視領域の地図を表示させる。この例においてステップS11は、表示部15に地図が表示されている状態を含む。そのため、この時点では、防災システム1は、火災が発生していない平常状態である。
【0043】
ステップS12において、火災感知器(端末機器22の一例)が火災を検知すると、火災感知器は、火災受信機21に火災信号を送信する。この例において火災感知器は、熱、炎、又は煙等を感知するセンサを利用し、自動的に火災を検知する。また、この例において火災信号は、火災が検知されたという情報に加え、例えば、どの区域の、どの火災感知器が火災を検知したかという識別情報又は位置情報(アドレス)を含む信号であってもよい。
【0044】
ステップS13において、火災受信機21は、火災信号の受信をもとに火災が発生したと判断すると、火災の発生を知らせるための警報を出力する。この例において警報は、火災受信機21の表示部等に表示される(例えば火災発生を示すLEDが点灯する)。または、火災受信機21の音響部(スピーカ)等から警報音が出力される。火災受信機21が、警報を出力することで、火災の発生箇所の周囲(現場)にいる人に対し、映像又は音を通じて火災の発生を知らせることができる。なお、この例において火災感知器は、自動火災報知設備20に属するため、出力された警報は、警戒区域を表す第1警報として区別される。
【0045】
ステップS14において、火災受信機21は、総合操作盤10に火災情報を送信する。この例において火災情報は、火災を検知した火災感知器が設置されている警戒区域の識別情報(例えば感知器のアドレス、部屋の識別番号、位置情報等)を含む。また、出力された警報が、警戒区域を表す第1警報である情報を含む。
【0046】
ステップS15において、総合操作盤10の表示制御部111は、表示部15に、警戒区域とシンボルの表示を変更させる。より具体的には、表示制御部111は、火災受信機21から火災情報を受信すると、受信した火災情報をもとに、出力された警報が、警戒区域を対象とする第1警報であると判断する。その後、表示制御部111は、表示部15に、地図において警戒区域を半透明色で塗りつぶして表示させる。具体的には、この例において監視領域の地図はベクタ形式の画像データを用いて描画されるので、表示制御部111は、画像データのうち、警戒区域に相当する図形のデータの、塗りつぶし色及び透明度を指定する情報を書き換える。
【0047】
図10は、表示部15の表示画面の変更を例示する図である。この例において表示画面D11は、ステップS11における表示部15の表示画面の一部を表す。ステップS11の時点では警報が出力されていないので、全ての区域が半透明色で塗りつぶされていない、つまり白色の状態(通常状態)である。また、図10において、ステップS11の時点では警報が出力されていないので、全てのシンボルが通常状態である。図10において表示画面D12は、ステップS15における表示部15の表示画面の一部を表す。この例において受信した火災情報から警戒区域の対象が、例えばルームRm1と判断された場合を想定する。図10の表示画面D12において表示制御部111は、表示部15に、警戒区域であるルームRm1を、半透明の赤色(図10では斜線部分)、つまり半透明色で塗りつぶして表示させる。なお、表示制御部111は、表示部15に、地図におけるシンボルSに関し、受信した火災情報をもとに、例えば、火災感知器のシンボルの表示を白色から赤色に変更させる。これによって、どの防災設備が作動したか管理者が視認しやすくなる。
【0048】
ここで半透明色に関し、透明度について説明する。透明度の設定は、予め行われる。図11は、半透明色で塗りつぶした区域の色の概念を説明する図である。この例において色(C)は、警戒区域又は防護区域に割り当てられた色である。C10は、色(C)を設定する際に利用するソフトウェア上のコマンド及び現在設定されている色を表す。この例において透明度(T)は、警戒区域又は防護区域に割り当てられた色の透明度である。B10及びT10は、色(C)の透明度(T)を設定する際に利用するソフトウェア上のコマンド及び現在設定されている透明度を表す。B10及びT10は、いずれも色(C)の透明度(T)が40%であることを表している。この例において透明度が0%の色は、透過性のない色である。また、透明度が100%の色は、透明である(この場合、厳密には色ではない)。すなわち、防災システム1において、透明度が0%及び100%を除く数値に設定された色が、半透明色として定義される。また、上述した各区域、色(C)、及び透明度(T)の対応関係は、データベース等に記録される。
【0049】
以上より、表示制御部111は、表示部15においてどこで火災が発生しているか(火災の発生を知らせる警報の対象となる場所)を管理者に対し、視覚情報として明確に伝達させることができる。また、表示部15において、警戒区域が半透明色で塗りつぶされて表示されることで、管理者は、元々の地図に表示されたシンボルを視認できるようになる。なお、表示部15において、火災を検知した火災感知器のシンボルの色を白色から赤色に変更することで、管理者は、どの火災感知器が火災を検知したかを認識できるようになる。
【0050】
ステップS16において、火災受信機21は、警戒区域に設置された防火・防排煙用の端末機器22、例えば、防火戸、防火ダンパ、又は排煙口に起動信号を送信する。なお、これらの端末機器22は、自動火災報知設備20に含まれる。そのため、この処理は、発生した火災に対処するための処理の一例である。
【0051】
ステップS17において、警戒区域に設置された防火・防排煙用の端末機器22に関し、火災受信機21から起動信号を受信すると、起動信号に応じてそれぞれの端末機器22が作動する。この例において端末機器22が例えば、防火戸の場合、防火戸が閉鎖する。また、端末機器22が例えば、防火ダンパの場合、防火ダンパが空調ダクトの開口部を閉鎖する。端末機器22が例えば、排煙口の場合、排煙口が開放され、煙を屋外に排気する。
【0052】
ステップS18において、火災受信機21は、総合操作盤10に作動情報を送信する。なお、この作動情報の送信は、起動信号の送信に応じて防火・防排煙用の端末機器22から応答信号を受信してから行われてもよい。この例において作動情報は、起動信号によって作動させた防火・防排煙用の端末機器22の起動状況、作動状況、及び不具合状況等を含む情報である。また、作動情報には、作動した各端末機器22の識別情報が含まれる。
【0053】
ステップS19において、総合操作盤10は、火災受信機21から作動情報を受信すると、総合操作盤10の表示制御部111は、表示部15に、シンボルの色を変更させる。より具体的には、ステップS17にて作動した防火・防排煙用の端末機器22のシンボル、つまり防火戸、防火ダンパ、及び排煙口のシンボルの色について、表示制御部111は、表示部15に、通常時の白色から緑色に変更させる(図示略)。これによって、管理者は、どの端末機器22が作動したかを認識できるようになる。
【0054】
以上より、自動火災報知設備20が作動した場合において、表示制御部111は、表示部15に、警戒区域を半透明色で塗りつぶして表示させる。これによって、監視領域の地図において警報の対象となる区域が塗りつぶして表示されるため、管理者にとって、火災の発生場所が一見して分かりやすくなる。また、警報の対象となる区域が半透明色で塗りつぶされるため、管理者は、この区域内の防災設備のシンボルを視認することができる。
【0055】
2-2.ガス消火設備30が作動した場合
図12は、ガス消火設備30が作動した場合の動作を例示するシーケンスチャートである。この例において図12のシーケンスチャートは、例えば、ガス消火設備30が設置されている防護区域で火災が発生した場合を想定した動作例である。
【0056】
ステップS21-S23において、上述した図9のシーケンスチャートのステップS11-S13と同一の処理が行われる。なお、以降の図12のシーケンスチャートの処理に関し、上述したステップS14-S19が並行して行われてもよい。
【0057】
ステップS24において、火災受信機21は、火災が発生した防護区域に設置されたガス消火設備30の端末機器に起動信号を送信する。なお、この例において端末機器は、ガス消火設備30に含まれる。また、ガス消火設備30に含まれる端末機器は、不活性ガス消火設備又はハロゲン化物消火設備等である(図示略)。
【0058】
ステップS25において、起動信号を受信したガス消火設備30は、消火ガスを放出する準備ができると、火災受信機21に応答信号を送信する。この例において応答信号は、消火ガスの充てん状況、起動状況、及び不具合状況等を含む情報である。
【0059】
ステップS26において、送信した応答信号にて、起動が問題ない場合、ガス消火設備30が作動する。この例において作動とは、ガス消火設備30による端末機器の操作を含む概念である。ガス消火設備30が作動すると、防護区域に消火ガスが放出される。この例において消火ガスは、不活性ガス又はハロゲン化物等を含み、火災を速やかに鎮静化させるために対象となる箇所に放出される。
【0060】
ステップS27において、火災受信機21は、応答信号を受信すると、消火ガスの放出を知らせる警報を出力する。この例において火災受信機21は、表示部に警報を表示する(例えば消火ガス放出を示すLEDが点灯する)。また、火災受信機21は、音響部(スピーカ)等から警報音を出力する。これによって火災受信機21の近辺にいる者に、防護区域において消火ガスの放出を知らせることができる。
【0061】
ステップS28において、火災受信機21は、総合操作盤10に、ガス消火設備30の作動情報を送信する。この例において作動情報は、ガス消火設備30の起動状況、作動状況、及び不具合状況等を含む情報である。また、作動情報には、作動したガス消火設備30(又は端末機器)の識別情報が含まれる。
【0062】
ステップS29において、総合操作盤10は、火災受信機21から作動情報を受信すると、総合操作盤10の表示制御部111は、表示部15に、防護区域の表示を変更させる。より具体的には、表示制御部111は、火災受信機21から作動情報を受信すると、受信した作動情報をもとに、出力された警報が、防護区域を対象とする第2警報であると判断する。その後、表示制御部111は、表示部15に、地図において防護区域を半透明色(例えば黄色)で塗りつぶして表示させる。また、ガス消火設備30に含まれる、作動した端末機器のシンボルの色が変更されてもよい。
【0063】
以上より、表示制御部111は、表示部15においてどこで消火ガスが放出されているか(消火ガスの放出を知らせる警報の対象となる場所)を管理者に対し、視覚情報として明確に伝達させることができる。また、表示部15において、防護区域が半透明色で塗りつぶされて表示されることで、管理者は、元々の地図に表示されたシンボルを視認できるようになる。
【0064】
ここまで、警戒区域又は防護区域のどちらか一方の表示の変更のみを説明してきた。しかし、例えば、図12のシーケンスチャートの処理に関し、上述した図9のシーケンスチャートのステップS14-S19が並行して行われた場合、自動火災報知設備20及びガス消火設備30の両方が作動することになる。この場合の表示の変更について、以下の2-3節で説明する。
【0065】
2-3.自動火災報知設備20及びガス消火設備30の両方が作動した場合
ここでは、上述した図12のシーケンスチャートの処理に加え、上述した図9のシーケンスチャートのステップS14-S19が並行して行われた場合を一例として、自動火災報知設備20及びガス消火設備30の両方が作動した場合について説明する(シーケンス図略)。この例において総合操作盤10は、火災受信機21から火災情報及び作動情報を受信する(ステップS14及びステップS28)。火災情報及び作動情報を受信する順番については、順不同でよく、いずれかの情報を受信したことを契機に、総合操作盤10の表示制御部111は、処理を実行する。この例において表示制御部111は、表示部15に、地図において警戒区域と、防護区域とが重なる部分の表示方法を変更させる。具体的な表示方法を以下に説明する。
【0066】
図13は、表示部15において警戒区域と、防護区域とが重なる部分の表示方法を例示する図である。図13において表示画面D100は、警戒区域における表示部15の表示画面の一部を表す。また、表示画面D200は、防護区域における表示部15の表示画面の一部を表す。この例においてルームRm1は、警戒区域かつ防護区域である。警戒区域と防護区域とで塗りつぶす半透明色が異なる色である場合、表示制御部111は、表示部15に、その区域(ルームRm1)について、警戒区域の半透明色(例えば赤色)と、防護区域の半透明色(例えば黄色)とを、例えば任意のタイミング(3秒毎)で切り替えて、交互に表示させる。他の例として、警戒区域と防護区域とで塗りつぶす半透明色が同じ色である場合、表示制御部111は、表示部15に、その区域(ルームRm1)について、半透明色(例えば赤色)で塗りつぶして点滅表示させてもよい。以上より、このように表示部15において表示を切り替える処理が実行されることで、管理者は、自動火災報知設備20及びガス消火設備30の両方とも作動した区域を容易に認識することができる。
【0067】
3.変形例
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。以下、変形例をいくつか説明する。以下で説明する事項のうち2つ以上の事項が組み合わされて適用されてもよい。
【0068】
(1)防災システム1
防災システム1におけるシステム構成は、実施形態において例示したものに限定されない。要求される機能を実現できるものであれば、防災システム1はどのようなハードウェア及びネットワークによってシステムを構成してもよい。この例において防災システム1に含まれる防災設備は、総合操作盤10、自動火災報知設備20、及びガス消火設備30に限定されない。例えば、スプリンクラー設備又は水噴霧設備等といった、ガス消火設備30以外の消火設備であってもよいし、避難誘導設備であってもよい。
【0069】
(2)総合操作盤10
総合操作盤10は、その機能の少なくとも一部がネットワーク上のサーバに実装されてもよい。そのサーバは、例えば、物理サーバでもよいし、仮想サーバ(いわゆるクラウドを含む)であってもよい。また、機能要素とハードウェアとの対応関係は実施形態において例示したものに限定されない。例えば、実施形態において、総合操作盤10に実装されるものとして説明した機能の少なくとも一部が他の装置に実装されてもよいし、反対に、他の装置に実装されるものとして説明した機能の少なくとも一部が総合操作盤10に実装されてもよい。この例において総合操作盤10に代えて、火災受信機21が表示部15を有し、地図表示を行ってもよい。また、総合操作盤10において、火災受信機21から受信する情報に関し、火災情報又は作動情報だけでなく、例えば、各防災設備の管理状況をリストとして、定期的に火災受信機21から受信する定時情報等が含まれてもよい。
【0070】
(3)自動火災報知設備20
自動火災報知設備20は、実施形態において例示したものに限定されない。例えば、上述した例では、火災感知器といった端末機器22は、自動火災報知設備20に属するため、出力された警報は、警戒区域を表す第1警報として区別される。この例において火災を検知した火災感知器のある区域だけでなく、隣接する区域における自動火災報知設備20が連動し、その隣接する区域を警戒区域として、火災受信機21を介して総合操作盤10に第1警報が出力されてもよい。
【0071】
(4)火災受信機21
火災受信機21は、実施形態において例示したものに限定されない。例えば、防災設備から受信する信号に関し、火災受信機21は、火災信号又は応答信号だけでなく、各防災設備の不具合状況といった情報を取得するための不具合信号等を各防災設備から受信してもよい。また、火災受信機21は、どのような通信方式で各防災設備と信号の送受信を行ってもよい。
【0072】
(5)端末機器22
発生した火災に対処するための端末機器22は、上述した例に限定されない。端末機器22の代表例として、例えば、火災発生時に人が手で押すボタンとしての「発信機」、又は「非常電話機」等であってもよい。また、端末機器22は中継器を介して火災受信機21に接続されてもよい。
【0073】
(6)ガス消火設備30
ガス消火設備30は、実施形態において例示したものに限定されない。例えば、ガス消火設備30は、ガス以外を利用した消火設備を含んでもよく、上述したスプリンクラー設備又は水噴霧設備等を、例えば端末機器として含んでもよい。
【0074】
(7)動作
図8図9、及び図12に示すフローチャート又はシーケンスチャートはあくまで動作の一例を示すものであり、防災システム1及び各防災設備の動作はこれに限定されない。図示した動作の一部が省略されてもよいし、順番が入れ替えられてもよいし、新たな動作が追加されてもよい。この例において図9及び図12のステップS11及びステップS21にて、表示部15は地図を表示しているが、火災受信機21から出力された警報の情報を受信したタイミングで、警報の対象となる区域をクローズアップして表示する処理が追加されてもよい。あるいは、表示部15は、例えば、表示画面を暗くする省エネモード等によって地図を表示しておらず、同じくそのタイミングで、表示画面を明るくするとともに、地図を表示する処理が行われてもよい。
【0075】
(8)表示方法
上述したように、表示部15において、自動火災報知設備20及びガス消火設備30の両方が作動した場合、警戒区域と、防護区域とは異なる半透明色で塗りつぶされてもよい(例えば警戒区域は赤色の半透明色、防護区域は黄色の半透明色)。また、上述した実施形態では、警戒区域と防護区域とが重なる場合には、警戒区域の半透明色と防護区域の半透明色とが交互に表示されていたが(赤色の半透明色→黄色の半透明色→赤色の半透明色・・・)、表示方法は上述した方法に限定されない。この例において警戒区域と防護区域とが重なる場合には、その区域は、警戒区域及び防護区域のどちらでもない半透明色(例えば緑色、青色又はピンク色等の半透明色)で塗りつぶされてもよい。
【0076】
(9)半透明色・色
表示部15において、地図に利用される半透明色及び色は、上述した例に限定されず、どのような色が採用されてもよい。例えば、管理者(ユーザ)自身が、半透明色及び色を選択し、設定してもよい。記憶部12等のデータベースにて、地図上の区域又はシンボル等と、RGB値又はカラーコード等で定義された半透明色又は色とが、対応づいていれば、どのように設定されてもよい。また、半透明色又は色の定義は、RGB値又はカラーコードに限定されない。
【0077】
(10)透明度
また、表示部15において、透明度の設定は、上述した例に限定されず、どのように調整されてもよい。この例において警報の対象となる区域(警戒区域及び/又は防護区域)において、半透明色の透明度は一様でなくてもよい。例えば、警報区域において火災を検知した火災感知器の周辺については、他の部分よりも透明度が低くなる(度数40%から20%に変更)、つまり色が濃くなるよう設定されてもよい。あるいは、半透明色の透明度は、その区域で作動している端末機器22等の数によって変更されてもよく、例えば作動している端末機器22等の数が多い程、透明度が低くなるよう設定されてもよい。
【0078】
(11)シンボル
作動した端末機器22等のシンボルの表示方法は、色の変更に限定されない。例えば作動した端末機器22等のシンボルが拡大表示されてもよいし、シンボルが点滅して表示されてもよいし、例えば防火戸のシンボルについては閉止動作が表示されるなど、物理的に動く端末機器22等のシンボルについて、画面上の動き(アニメーション)が表示されてもよい。
【0079】
(12)区域・地図・建築物・施設
警報の対象となる区域は、上述した例に限定されず、警戒区域及び防護区域以外にも、管理者が自由に定めた区域が、防災システム1において採用されてもよい。また、表示部15において、警戒区域及び防護区域の対象となる地図は、建築物以外にも、外部の道又は関連する施設等を含んでもよい。
【0080】
(13)画像データの構造
表示部15における画像データ(地図)は、レイヤ構造を有してもよい。また、レイヤは、上述した例に限定されず、例えば、表示部15において、複数のレイヤによって地図が描画されてもよい。この例において地図は、地図データ、シンボル、及び警報の対象となる区域の少なくとも合計3つ以上のレイヤを有してもよい。総合操作盤10の処理に影響を及ぼさない範囲であれば、レイヤの構成は自由に設定されてよい。
【0081】
(14)描画形式
表示部15における描画形式は、ベクタ形式又はラスタ形式のいずれかに関わらず、上述した半透明色で塗りつぶす処理が行われてもよい。この例においてベクタ形式の場合、ラスタ形式に比べ、データサイズが小さく、迅速な処理が可能になるとともに、画像の拡大縮小が容易に行えるといったメリットがある。そのため、火災発生時といった緊急性を要する場合において、描画方式にベクタ形式が採用されることで、表示部15は、管理者に対し、迅速かつ明確に事態の状況を把握させることができる。
【0082】
(15)データファイル
表示部15における画像データのファイル形式は、描画形式がベクタ形式又はラスタ形式のいずれかに関わらず、どのようなファイル形式であってもよい。この例においてベクタ形式に関し、ベクタデータのファイル形式は限定されず、例えば、「PDF(Portable Document Format)、拡張子は(.pdf)」、「SVG(Scalable Vector Graphics)、拡張子は(.svg)」、又は「AI(Adobe Illustrator)、拡張子は(.ai)」といったファイル形式によってベクタデータが保存されてもよい。
【0083】
(16)その他
CPU101及び各装置によって実行される各種プログラムは、インターネット等のネットワークを介したダウンロードにより提供されるものであってもよいし、DVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体に記録された状態で提供されてもよい。なお、各プロセッサは、CPUに代えて、例えば、MPU(Micro Processing Unit)であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1…防災システム、10…総合操作盤、20…自動火災報知設備、30…ガス消火設備、21…火災受信機、22…端末機器、11…制御部、111…表示制御部、12…記憶部、13…通信部、14…操作部、15…表示部、101…CPU、102…メモリ、103…ストレージ、104…通信IF、105…入力装置、106…表示装置、S…シンボル、1001…シンボルリスト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13