(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162505
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】乗物シート用シートバック
(51)【国際特許分類】
B60N 2/68 20060101AFI20241114BHJP
B60N 2/42 20060101ALI20241114BHJP
B60N 2/20 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B60N2/68
B60N2/42
B60N2/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078067
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岸田 圭史
(72)【発明者】
【氏名】黒田 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】深見 大介
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BD01
3B087DB02
(57)【要約】
【課題】 バックフレームと乗物とを強固に連結可能な乗物シート用シートバックの一例を開示する。
【解決手段】 バックフレーム2を回転可能に支持するブラケット3は、乗物のフロアパネルFPにFPボルトにて固定される第1固定部31A、及び当該乗物の補強部材CMに固定ボルトにて固定される第2固定部32Aを有する。これにより、シートバック1は、乗物のフロアパネルFP及び補強部材CMにより乗物に連結固定された構成となる。したがって、ブラケット3が強固に乗物に連結固定される構成となり得るので、バックフレーム2と乗物との連結に損傷が生じることが未然に抑制され得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物に搭載される乗物用シートに適用されるシートバックにおいて、
骨格を構成するバックフレームと、
前記バックフレームを回転可能に支持するブラケットであって、乗物のフロアパネルにボルトにて固定される第1固定部、及び当該乗物の補強部材にボルトにて固定される第2固定部を有するブラケットとを備え、
前記第2固定部には、固定用のボルトが貫通可能なボルト穴であって、シート前後方向に当該第2固定部を貫通するボルト穴が設けられている乗物シート用シートバック。
【請求項2】
前記ブラケットは、
前記第1固定部が設けられたブラケット本体、及び
前記第2固定部が設けられた補強ブラケットであって、ピン状の締結部材を介して前記ブラケット本体に連結された補強ブラケットを有しており、
前記ブラケット本体及び前記補強ブラケットのうち少なくとも一方には、前記締結部材が貫通挿入された締結穴が設けられており、
さらに、前記締結穴の穴径寸法は、前記締結部材の外径寸法より大きい請求項1に記載の乗物シート用シートバック。
【請求項3】
前記補強ブラケットは、前記ブラケット本体に対して前記締結部材の軸線方向と平行な方向に変位可能に当該ブラケット本体に連結されている請求項2に記載の乗物シート用シートバック。
【請求項4】
前記締結穴の内周と前記締結部材の外周との間には、樹脂製のブッシングが配置されている請求項3に記載の乗物シート用シートバック。
【請求項5】
前記補強ブラケットは、
シート前後方向に延びるアーム部であって、一端側が前記前記ブラケット本体に連結されたアーム部、及び
前記アーム部の他端側からシート幅方向に延出した取付部であって、前記第2固定部を構成する取付部を有して構成されており、
さらに、前記アーム部及び前記取付部の下端側には、壁状のフランジ部が設けられている請求項2に記載の乗物シート用シートバック。
【請求項6】
前記ブラケット本体は、
前記バックフレームが連結されたブラケットプレート、及び
前記ブラケットプレートの下端側からシート幅方向に延出した第2の取付部であって、前記第1固定部が設けられた第2の取付部を有して構成されており、
さらに、前記第1固定部及び前記第2固定部は、シート幅方向において、前記ブラケットプレートに対して同一側に位置している請求項5に記載の乗物シート用シートバック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗物に搭載される乗物用シートに適用されるシートバックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のシートバックでは、バックフレームが車両のフロアパネルに回転可能に支持固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、貨物等の物品がシートバックの後方側に載置されている状態において、車両が急激に停止すると、当該物品が慣性力により当該シートバックに衝突する可能性がある。このため、衝突力が極めて大きい場合には、バックフレームと乗物との連結に損傷が生じるおそれがある。本開示は、当該点に鑑みた乗物シート用シートバックの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
乗物に搭載される乗物用シートに適用されるシートバックは、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
すなわち、当該構成要件は、骨格を構成するバックフレーム(2)と、バックフレーム(2)を回転可能に支持するブラケット(3)であって、乗物のフロアパネル(FP)にボルトにて固定される第1固定部(31A)、及び当該乗物の補強部材(CM)にボルトにて固定される第2固定部(32A)を有するブラケット(3)とを備え、第2固定部(32A)には、固定用のボルトが貫通可能なボルト穴(32B)であって、シート前後方向に当該第2固定部(32A)を貫通するボルト穴(32B)が設けられていることである。
【0006】
これにより、当該乗物シート用シートバック(以下、シートバックと記す。)は、乗物のフロアパネル(FP)及び補強部材(CM)により乗物に連結固定された構成となる。したがって、ブラケット(3)が強固に乗物に連結固定される構成となり得るので、バックフレーム(2)と乗物との連結に損傷が生じることが未然に抑制され得る。
【0007】
また、第2固定部(32A)を構成するボルト穴(32B)がシート前後方向に当該第2固定部(32A)を貫通しているので、第2固定部(32A)を補強部材(CM)に締結固定するボルトは、シート前後方向から補強部材(CM)に締結固定される。
【0008】
そして、物品がシートバックに衝突した場合に当該シートバック(1)に作用する衝突力は、当該固定ボルトに対して、剪断力ではなく、引っ張り力として作用する。一般的なボルトは、通常、剪断力に比べて引っ張り力に対する耐力が大きい。したがって、物品がシートバックに衝突した場合であっても、ブラケット(3)と補強部材(CM)との連結固定状態が確実に保持される。
【0009】
なお、当該シートバックは、例えば、以下の構成であってもよい。
すなわち、ブラケット(3)は、第1固定部(31A)が設けられたブラケット本体(31)、及び第2固定部(32A)が設けられた補強ブラケット(32)であって、ピン状の締結部材(34)を介してブラケット本体(31)に連結された補強ブラケット(32)を有しており、ブラケット本体(31)及び補強ブラケット(32)のうち少なくとも一方には、締結部材(34)が貫通挿入された締結穴(31D)が設けられており、締結穴(31D)の穴径寸法は、締結部材(34)の外径寸法より大きいことが望ましい。
【0010】
これにより、例えば、補強部材(CM)のボルト取付位置と第2固定部(32A)のボルト穴(32B)の位置とがずれた場合であっても、締結穴(31D)の穴径寸法が締結部材(34)の外径寸法より大きいので、当該ずれが吸収され得る。
【0011】
補強ブラケット(32)は、ブラケット本体(31)に対して締結部材(34)の軸線方向と平行な方向に変位可能に当該ブラケット本体(31)に連結されていることが望ましい。これにより、締結部材(34)の軸線方向と平行な方向に、補強部材(CM)のボルト取付位置と第2固定部(32A)のボルト穴(32B)の位置とがずれた場合であっても、当該ずれが吸収され得る。
【0012】
締結穴(31D)の内周と締結部材(34)の外周との間には、樹脂製のブッシング(34A、34B)が配置されていることが望ましい。これにより、締結穴(31D)の内周と締結部材(34)の外周とが直接的に接触することに起因する異音の発生が抑制され得る。
【0013】
補強ブラケット(32)は、シート前後方向に延びるアーム部(32C)であって、一端側がブラケット本体(31)に連結されたアーム部(32C)、及びアーム部(32C)の他端側からシート幅方向に延出した取付部(32D)であって、第2固定部(32A)を構成する取付部(32D)を有して構成されており、さらに、アーム部(32C)及び取付部(32D)の下端側には、壁状のフランジ部(32E)が設けられていることが望ましい。
【0014】
これにより、補強ブラケット(32)の強度が向上するとともに、組み立て作業者は、上方側から第2固定部(32A)のボルト穴(32B)を視認でき得るので、シートバックの乗物への組み付け作業性が大きく悪化することが抑制され得る。
【0015】
ブラケット本体(31)は、バックフレーム(2)が連結されたブラケットプレート(31E)、及びブラケットプレート(31E)の下端側からシート幅方向に延出した第2の取付部(31F)であって、第1固定部(31A)が設けられた第2の取付部(31F)を有して構成されており、さらに、第1固定部(31A)及び第2固定部(32A)は、シート幅方向において、ブラケットプレート(31E)に対して同一側に位置していることが望ましい。
【0016】
これにより、組み立て作業者は、ブラケットプレート(31E)の一方側から第1固定部(31A)及び第2固定部(32A)の装着作業を実施できるので、組み立て作業性が向上し得る。
【0017】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係るシートバックを示す図である。
【
図2】第1実施形態に係るブラケットを示す図である。
【
図3】第1実施形態に係るブラケットの分解図である。
【
図4】第1実施形態に係るブラケットの構造を示す図である。
【
図5】第1実施形態に係る補強ブラケットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0020】
本実施形態は、車両等の乗物に搭載されるシート(以下、乗物用シートという。)に本開示に係るシートバックが適用された例である。なお、シートバックとは、着席者の背部を支持するための部位である。
【0021】
各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び部材又は部位の形状等を理解し易くするために記載されたものである。したがって、当該シートバックは、各図に付された方向に限定されない。各図に示された方向は、本実施形態に係る乗物用シートが車両に組み付けられた状態における方向である。斜線が付された図は、必ずしも断面図を示さない。
【0022】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示されたシートバックは、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位のうち少なくとも1つを備える。
【0023】
(第1実施形態)
<1.シートバックの概要>
図1に示されるシートバック1は、例えば、5人乗り車両の後部座席用のシートバックである。具体的には、当該シートバック1は、窓側の後部座席用のシートバックである。
【0024】
当該シートバック1は、バックフレーム2及びブラケット3、4等を少なくとも備える。バックフレーム2は、シートバック1の骨格を構成する部材である。本実施形態に係るバックフレーム2は、矩形枠状に構成された金属パイプ材にて構成されている。
【0025】
ブラケット3、4は、バックフレーム2を回転可能に支持する支持部材である。ブラケット3は、バックフレーム2のシート幅方向一端側下端部を支持する。ブラケット4は、バックフレーム2のシート幅方向他端側下端部を支持する。
【0026】
なお、ブラケット3は、本実施形態の開示発明に係る支持部材である。ブラケット4は、従来と同様な構成である。このため、本明細書では、ブラケット4の詳細説明は省略されている。
【0027】
<2.ブラケットの構成>
<2.1 ブラケットの概要>
ブラケット3は、
図2に示されるように、第1固定部31A、第2固定部32A及び支持部33等を少なくとも有して構成されている。支持部33は、バックフレーム2に連結される部位である。本実施形態に係る支持部33は、支持ブラケット33A(
図1参照)を介してバックフレーム2に連結されている。
【0028】
第1固定部31Aは、
図1に示されるように、乗物のフロアパネルFPにボルト(図示せず。)にて固定される部位である。このため、第1固定部31Aには、
図2に示されるように、当該ボルト(以下、FPボルトという。)が挿入される第1ボルト穴31B及び第2ボルト穴31Cが設けられている。
【0029】
なお、FPボルトの雄ねじと締結する雌ねじは、フロアパネルFPの裏面に設けられている。第1ボルト穴31Bと第2ボルト穴31Cとは、シート前後方向(本実施形態では、車両前後方向)に直列並んでいる。
【0030】
そして、第1ボルト穴31Bは、FPボルトの直径に対応した丸穴である。第2ボルト穴31Cは、長円状の長穴である。具体的には、第2ボルト穴31Cの短径寸法は、FPボルトの直径に対応した寸法である。第2ボルト穴31Cの長径方向は、シート前後方向(本実施形態では、車両前後方向)と略平行である。
【0031】
第2固定部32Aは、
図1に示されるように、乗物の補強部材CMにボルト(図示せず。)にて固定される部位である。当該第2固定部32Aには、
図2に示されるように、当該固定用のボルト(以下、固定ボルトという。)が貫通可能なボルト穴32Bが設けられている。
【0032】
ボルト穴32B(以下、第3ボルト穴32Bと記す。)は、シート前後方向(本実施形態では、車両前後方向)に第2固定部32Aを貫通する穴である。なお、当該第3ボルト穴32Bは、長径方向がシート幅方向(本実施形態では、車両幅方向)と略平行な長穴にて構成されている。
【0033】
ところで、本実施形態に係る補強部材CMは、
図1に示されるように、車両幅方向に延びてフロアパネルFPを補強するフロアクロスメンバーである。そして、第3ボルト穴32Bは、シート前後方向に第2固定部32Aを貫通している。
【0034】
このため、固定ボルトは、壁部CM1を車両前後方向に貫通して当該補強部材CMに締結固定される。壁部CM1は、補強部材CMのうち車両前後方向と略直交する壁状部位である。なお、第1ボルト穴31Bは、第2ボルト穴31Cより第3ボルト穴32Bに近い位置に設けられている。
【0035】
<2.2 ブラケットの詳細>
本実施形態に係るブラケット3は、
図3に示されるように、ブラケット本体31及び補強ブラケット32を有して構成されている。ブラケット本体31は、第1固定部31A及び支持部33が設けられた部材である。補強ブラケット32は、第2固定部32Aが設けられた部材である。
【0036】
そして、補強ブラケット32は、ピン状の締結部材34を介してブラケット本体31に連結されている。具体的には、
図4に示されるように、ブラケット本体31及び補強ブラケット32のうち少なくとも一方(本実施形態では、ブラケット本体31)には、締結穴31Dが設けられている。
【0037】
締結穴31Dは、締結部材34が貫通挿入された貫通穴である。そして、当該締結穴31Dの穴径寸法は、締結部材34の外径寸法より大きくなっている。このため、締結部材34は、ブラケット本体31に対して締結穴31Dの径方向に変位できる。
【0038】
本実施形態では、締結部材34の外周と締結穴31Dの内周との間には、樹脂製のブッシング34A、34Bが配置されている。そして、当該ブッシング34A、34Bが配置された状態においても、少なくとも設計中心値において、締結部材34は、ブラケット本体31に対して締結穴31Dの径方向に変位可能である。
【0039】
因みに、ブラケット3(ブッシング34A、34Bを含む。)の寸法、及びフロアパネルFPの寸法が、公差範囲内で最も大きくばらついた場合には、ブラケット3が車両に組み付けられた状態において、ブッシング34A、34Bと締結部材34とが接触した状態となる場合もあり得る。
【0040】
本実施形態では、締結部材34は、圧入又は溶接にて補強ブラケット32に固定されている。ブッシング34A、34Bは、締結部材34に圧接している。ワッシャ34Cは、締結部材34がブラケット本体31から抜けることを防止する。当該ワッシャ34Cは、締結部材34の先端がカシメられて当該締結部材34に固定されている。
【0041】
また、補強ブラケット32は、ブラケット本体31に対して締結部材34の軸線方向Loと平行な方向に変位可能に当該ブラケット本体31に連結されている。具体的には、ワッシャ34Cが締結部材34に固定された状態において、当該締結部材34がブラケット本体31に対して軸線方向Loに変位可能である。
【0042】
つまり、本実施形態では、設計中心値において、ブッシング34Aのフランジ部34Dとブラケット本体31との間、及びブッシング34Bのフランジ部34Eとブラケット本体31との間に隙間が設けられている。
【0043】
なお、ブラケット3(ブッシング34A、34Bを含む。)の寸法、及びフロアパネルFPの寸法が、公差範囲内で最も大きくばらついた場合には、ブラケット3が車両に組み付けられた状態において、それら隙間のうち少なくとも一方の隙間が消失した状態となる場合もあり得る。
【0044】
<ブラケット本体の詳細>
ブラケット本体31は、
図3に示されるように、ブラケットプレート31E及び取付部31F等を少なくとも有して構成されている。ブラケットプレート31Eは、支持部33が設けられた部材である。
【0045】
なお、第1固定部31AがフロアパネルFPに固定された状態では、ブラケットプレート31EがフロアパネルFPに対して略直交するように立設した状態となるとともに、締結部材34の軸線方向Loが略水平方向と一致した状態となる。
【0046】
取付部31Fは、ブラケットプレート31Eの下端側からシート幅方向に延出した部位であって、第1固定部31A、つまり第1ボルト穴31B及び第2ボルト穴31Cが設けられた部位である。
【0047】
そして、第1固定部31A及び第2固定部32Aは、シート幅方向において、ブラケットプレート31Eに対して同一側(
図2では、右側)に位置している。なお、本実施形態に係るブラケットプレート31E及び取付部31Fは、鋼板製の一体成形品である。
【0048】
<補強ブラケットの詳細>
補強ブラケット32は、
図2に示されるように、アーム部32C、取付部32D及びフランジ部32E等を少なくとも有している。アーム部32Cは、シート前後方向に延びる部材であって、一端側がブラケット本体31に連結された部材である。
【0049】
取付部32Dは、
図5に示されるように、アーム部32Cの他端側、つまりブラケット本体31との連結部と反対側からシート幅方向に延出した部位であって、第2固定部32Aを構成する部位である。
【0050】
フランジ部32Eは、アーム部32C及び取付部32Dの下端側に設けられた壁状の部位である。つまり、フランジ部32Eは、補強ブラケット32の下端側全域において、アーム部32C及び取付部32Dから突出した壁状の部位である。
【0051】
なお、本実施形態では、アーム部32C、取付部32D及びフランジ部32Eは、プレス加工等の塑性加工にて一体成形された金属製の一体品である。
<3.本実施形態に係るシートバックの特徴>
バックフレーム2を回転可能に支持するブラケット3は、乗物のフロアパネルFPにFPボルトにて固定される第1固定部31A、及び当該乗物の補強部材CMに固定ボルトにて固定される第2固定部32Aを有する。
【0052】
これにより、シートバック1は、乗物のフロアパネルFP及び補強部材CMにより乗物に連結固定された構成となる。したがって、ブラケット3が強固に乗物に連結固定される構成となり得るので、バックフレーム2と乗物との連結に損傷が生じることが未然に抑制され得る。
【0053】
また、第2固定部32Aを構成するボルト穴32Bがシート前後方向に当該第2固定部32Aを貫通している。これにより、第2固定部32Aを補強部材CMに締結固定する固定ボルトは、シート前後方向から補強部材CMに締結固定される。
【0054】
そして、物品がシートバックに衝突した場合に当該シートバック1に作用する衝突力は、当該固定ボルトに対して、剪断力ではなく、引っ張り力として作用する。一般的に、ボルトは、通常、剪断力に比べて引っ張り力に対する耐力が大きい。したがって、物品がシートバック1に衝突した場合であっても、ブラケット3と補強部材CMとの連結固定状態が確実に保持される。
【0055】
ブラケット3は、ブラケット本体31及び補強ブラケット32を有して構成され、かつ、ブラケット本体31に設けられた締結穴31Dの穴径寸法は、締結部材34の外径寸法より大きい。
【0056】
これにより、例えば、補強部材CMに設けられた固定ボルトの取付位置と第2固定部32Aのボルト穴32Bの位置とがずれた場合であっても、締結穴31Dの穴径寸法が締結部材34の外径寸法より大きいので、当該ずれが吸収され得る。
【0057】
補強ブラケット32は、ブラケット本体31に対して締結部材34の軸線方向と平行な方向に変位可能に当該ブラケット本体31に連結されている。これにより、締結部材34の軸線方向と平行な方向に、補強部材CMに設けられた固定ボルトの取付位置と第2固定部32Aのボルト穴32Bの位置とがずれた場合であっても、当該ずれが吸収され得る。
【0058】
締結穴31Dの内周と締結部材34の外周との間には、樹脂製のブッシング34A、34Bが配置されている。これにより、締結穴31Dの内周と締結部材34の外周とが直接的に接触することに起因する異音の発生が抑制され得る。
【0059】
補強ブラケット32のアーム部32C及び取付部32Dの下端側には、壁状のフランジ部32Eが設けられている。これにより、補強ブラケット32の強度が向上するとともに、組み立て作業者は、上方側から第2固定部32Aのボルト穴32Bを視認でき得るので、シートバック1の乗物への組み付け作業性が大きく悪化することが抑制され得る。
【0060】
第1固定部31A及び第2固定部32Aは、シート幅方向において、ブラケットプレート31Eに対して同一側に位置している。これにより、組み立て作業者は、ブラケットプレート31Eの一方側から第1固定部31A及び第2固定部32Aの装着作業を実施できるので、組み立て作業性が向上し得る。
【0061】
(その他の実施形態)
上述の実施形態に係るブラケット3では、ブラケット本体31と補強ブラケット32とが別体で構成され、かつ、ブラケット本体31と補強ブラケット32とが締結部材34にて連結されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、ブラケット本体31と補強ブラケット32とが一体品であってもよい。
【0062】
上述の実施形態に係る補強ブラケット32は、ブラケット本体31に対して軸線方向に変位可能であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、補強ブラケット32が当該軸線方向に変位不可な構成であってもよい。
【0063】
上述の実施形態では、締結穴31Dがブラケット本体31に設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、締結穴31Dが補強ブラケット32に設けられ、締結部材34がブラケット本体31に固定された構成であってもよい。
【0064】
上述の実施形態では、締結穴31Dの内周と締結部材34の外周との間には、樹脂製のブッシング34A、34Bが配置されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、当該ブッシング34A、34Bが廃止された構成であってもよい。
【0065】
上述の実施形態では、補強ブラケット32のアーム部32C及び取付部32Dの下端側には、壁状のフランジ部32Eが設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、フランジ部32Eが廃止された構成、又はフランジ部32Eが上端側に設けられた構成であってもよい。
【0066】
上述の実施形態では、第1固定部31A及び第2固定部32Aは、シート幅方向において、ブラケットプレート31Eに対して同一側に位置していた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第1固定部31Aと第2固定部32Aとがブラケットプレート31Eを挟んで一方側と他方側それぞれに配置された構成であってもよい。
【0067】
上述の実施形態では、第2固定部32Aを構成するボルト穴32Bがシート前後方向に当該第2固定部32Aを貫通していた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、固定ボルトが上下方向から補強部材CMに締結される構成であってもよい。
【0068】
上述の実施形態では、固定ボルトが補強部材CMに締結される構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、固定ボルトが補強部材CMに締結以外の車両の部位に締結される構成であってもよい。
【0069】
上述の実施形態に係る第1固定部31Aは、複数のFPボルトにてフロアパネルFPに締結固定される構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、1本のFPボルトにてフロアパネルFPに締結される構成であってもよい。
【0070】
上述の実施形態では、車両に本開示に係る乗物用シートを適用した。しかし、本明細書に開示された発明の適用はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、鉄道車両、船舶及び航空機等の乗物に用いられるシート、並びに劇場や家庭用等に用いられる据え置き型シートにも適用できる。
【0071】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1… シートバック 2…バックフレーム 3… ブラケット
31… ブラケット本体 31A…第1固定部 31B… 第1ボルト穴
31C… 第2ボルト穴 31D…締結穴 31E… ブラケットプレート
31F… 取付部 32…補強ブラケット 32A… 第2固定部
32C… アーム部 32D…取付部 32E… フランジ部
34… 締結部材 34A…ブッシング FP… フロアパネル
CM… 補強部材