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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162507
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ドローン及びドローン制御システム
(51)【国際特許分類】
   B64U 10/20 20230101AFI20241114BHJP
   B64U 20/80 20230101ALI20241114BHJP
   B64C 13/18 20060101ALI20241114BHJP
   E21D 11/10 20060101ALI20241114BHJP
   B64U 101/70 20230101ALN20241114BHJP
【FI】
B64U10/20
B64U20/80
B64C13/18 Z
E21D11/10 Z
B64U101:70
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078069
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】516304883
【氏名又は名称】エアロセンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】河野 整
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康輔
(72)【発明者】
【氏名】硲間 優一
(72)【発明者】
【氏名】ジーザス ラモン ロンキーリョ
(72)【発明者】
【氏名】クオン ハン ファム
(72)【発明者】
【氏名】中釜 淳一
(72)【発明者】
【氏名】平井 真二
(72)【発明者】
【氏名】額田 将範
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155LA06
2D155LA12
2D155LA13
2D155LA16
2D155LA17
(57)【要約】
【課題】低コストかつ構造物内での高速の自律飛行が可能なドローンを提供する。
【解決手段】本開示は、構造物の内部を飛行するドローンである。ドローンは、推進装置及び垂直離着陸装置を有する本体と、本体に取り付けられた第1距離センサ及び第2距離センサと、を備える。第1距離センサは、第1センサ中心軸から構造物までの距離を第1センサ中心軸周りの複数点で測定した第1測定データを取得するように構成される。第2距離センサは、第2センサ中心軸から構造物までの距離を第2センサ中心軸周りの複数点で測定した第2測定データを取得するように構成される。第2センサ中心軸は、第1センサ中心軸と90°未満の角度で交差する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の内部を飛行するドローンであって、
推進装置及び垂直離着陸装置を有する本体と、
前記本体に取り付けられた第1距離センサ及び第2距離センサと、
を備え、
前記第1距離センサは、第1センサ中心軸から前記構造物までの距離を前記第1センサ中心軸周りの複数点で測定した第1測定データを取得するように構成され、
前記第2距離センサは、第2センサ中心軸から前記構造物までの距離を前記第2センサ中心軸周りの複数点で測定した第2測定データを取得するように構成され、
前記第2センサ中心軸は、前記第1センサ中心軸と90°未満の角度で交差する、ドローン。
【請求項2】
請求項1に記載のドローンであって、
前記本体の飛行方向と垂直な方向から視て、前記第1センサ中心軸と前記本体の飛行方向とが成す角度は、前記第2センサ中心軸と前記飛行方向とが成す角度と等しい、ドローン。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のドローンであって、
前記本体は、胴体に固定された主翼を有する、ドローン。
【請求項4】
請求項3に記載のドローンであって、
前記第1距離センサ及び前記第2距離センサは、それぞれ、前記胴体の先端部に取り付けられる、ドローン。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のドローンと、
前記第1測定データと前記第2測定データとから前記本体の飛行方向を調整するように構成された制御装置と、
を備える、ドローン制御システム。
【請求項6】
請求項5に記載のドローン制御システムであって、
前記制御装置は、前記第1測定データに含まれる測定点のうち前記構造物の少なくとも天面における複数の測定点の距離と、前記第2測定データに含まれる複数の測定点のうち前記構造物の少なくとも天面における複数の測定点の距離と、を用いて、前記本体の飛行方向を調整する、ドローン制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドローン及びドローン制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル等の衛星の電波が届かない構造物内において、距離センサを用いて自律飛行するドローンが考案されている(特許文献1参照)。このドローンは、上下方向の壁の距離と、左右方向の壁の距離とを測定することで、壁からの位置を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-11266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の壁との距離を用いた制御では、ドローンと壁との距離を一定に保つことはできるが、ドローンの飛行方向を修正することは難しい。つまり、ドローンと左右及び上下の壁との距離だけでは、ドローンの機首がどちらに向いているかは判定できない。そのため、機首の方向の判定には、数回の距離測定(つまり距離の変化量)が必要となる。その結果、高速で飛行するドローンの自律飛行には対応できない。
【0005】
これに対し、3次元の距離センサを用いて機首の方向を判定する対応が考えられる。しかし、3次元の距離センサは、高価かつ重量が大きい。また、取得するデータが大きいため、処理負担も大きくなる。
【0006】
本開示の一局面は、低コストかつ構造物内での高速の自律飛行が可能なドローンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、構造物の内部を飛行するドローンである。ドローンは、推進装置及び垂直離着陸装置を有する本体と、本体に取り付けられた第1距離センサ及び第2距離センサと、を備える。第1距離センサは、第1センサ中心軸から構造物までの距離を第1センサ中心軸周りの複数点で測定した第1測定データを取得するように構成される。第2距離センサは、第2センサ中心軸から構造物までの距離を第2センサ中心軸周りの複数点で測定した第2測定データを取得するように構成される。第2センサ中心軸は、第1センサ中心軸と90°未満の角度で交差する。
【0008】
このような構成によれば、第1測定データの基準値からのずれと第2測定データの基準値からのずれとを用いて、ドローンの機首の方向(つまり飛行方向)の設定方向からのずれを推定することができる。
【0009】
そのため、高価なセンサを用いることなく、ドローンの飛行方向を調整することができる。また、センサの重量及び取得データ量が低減されるため、ドローンを構造物内で高速に自律飛行させることができる。
【0010】
本開示の一態様では、本体の飛行方向と垂直な方向から視て、第1センサ中心軸と本体の飛行方向とが成す角度は、第2センサ中心軸と飛行方向とが成す角度と等しくてもよい。このような構成によれば、ドローンの飛行方向の調整における演算負荷を低減できると共に、調整精度を高めることができる。
【0011】
本開示の一態様では、本体は、胴体に固定された主翼を有してもよい。このような構成によれば、回転翼構造のドローンに比べて、構造物内を高速で飛行することができる。
【0012】
本開示の一態様では、第1距離センサ及び第2距離センサは、それぞれ、胴体の先端部に取り付けられてもよい。このような構成によれば、第1距離センサ及び第2距離センサの測定エリアと本体との干渉を抑制することができる。
【0013】
本開示の別の態様は、ドローンと、第1測定データと第2測定データとから本体の飛行方向を調整するように構成された制御装置と、を備えるドローン制御システムである。このような構成によれば、高価なセンサを用いることなく、ドローンの飛行方向を調整することができる。また、センサの重量及び取得データ量が低減されるため、ドローンを構造物内で高速に自律飛行させることができる。
【0014】
本開示の一態様では、制御装置は、第1測定データに含まれる測定点のうち構造物の少なくとも天面における複数の測定点の距離と、第2測定データに含まれる複数の測定点のうち構造物の少なくとも天面における複数の測定点の距離と、を用いて、本体の飛行方向を調整してもよい。このような構成によれば、底面に凹凸構造や設備が存在するトンネル内の空間において、ドローンの飛行方向の調整精度を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態におけるドローン制御システムの構成図である。
図2図2Aは、図1のドローン制御システムにおけるドローンの模式図であり、図2Bは、図2Aのドローンの本体の模式的な斜視図である。
図3図3は、図2のドローンの第1距離センサの機能を説明する模式図である。
図4図4A及び図4Bは、図2のドローンにおける測定データの取得イメージである。
図5図5は、図2の第1距離センサの測定データから修正量を算出する手順を示す模式図である。
図6図6Aは、図2のドローンの飛行状態の一例を示す模式図であり、図6Bは、図6Aの飛行状態において取得される第1測定データの模式図であり、図6Cは、図6Aの飛行状態において取得される第2測定データの模式図である。
図7図7Aは、図2のドローンの飛行状態の一例を示す模式図であり、図7Bは、図7Aの飛行状態において取得される第1測定データの模式図であり、図7Cは、図7Aの飛行状態において取得される第2測定データの模式図である。
図8図8Aは、図2のドローンの飛行状態の一例を示す模式図であり、図8Bは、図8Aの飛行状態において取得される第1測定データの模式図であり、図8Cは、図8Aの飛行状態において取得される第2測定データの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示すドローン制御システム100は、自律飛行するドローン10を用いて構造物Sの内部の計測、点検、捜索等を行う。
【0017】
構造物Sとしては、トンネル等の管状構造物が挙げられる。特に、鉄道路線や道路に設けられる長距離のトンネルに対して、本開示は有利な効果を奏する。ドローン制御システム100は、ドローン10と、制御装置20とを備える。
【0018】
<ドローン>
ドローン10は、構造物Sの内部を自律飛行する。図2A及び図2Bに示すように、ドローン10は、本体11と、第1距離センサ15と、第2距離センサ16とを備える。
【0019】
<本体>
本体11は、胴体111と、第1主翼112Aと、第2主翼112Bと、推進装置113と、垂直離着陸装置114と、第1垂直尾翼115Aと、第2垂直尾翼115Bと、第1エルロン116Aと、第2エルロン116Bと、第1ラダー117Aと、第2ラダー117Bとを有する。本体11は、胴体111の先端部111Aを機首として飛行する固定翼機である。
【0020】
第1主翼112A及び第2主翼112Bは、それぞれ、胴体111に固定されている。推進装置113は、胴体111の後端部に取り付けられており、例えばモータ駆動のプロペラによって構成されている。
【0021】
垂直離着陸装置114は、複数の垂直昇降用のプロペラ114A,114B,114C,114Dによって構成されている。これらのプロペラ114A,114B,114C,114Dは、胴体111、第1主翼112A及び第2主翼112Bのいずれかに取り付けられている。
【0022】
第1垂直尾翼115A及び第2垂直尾翼115Bは、それぞれ、胴体111に固定されている。第1エルロン116Aは、第1主翼112Aの後端部に上下方向に揺動可能に取り付けられている。第2エルロン116Bは、第2主翼112Bの後端部に上下方向に揺動可能に取り付けられている。第1ラダー117Aは、第1垂直尾翼115Aの後端部に左右方向に揺動可能に取り付けられている。第2ラダー117Bは、第2垂直尾翼115Bの後端部に左右方向に揺動可能に取り付けられている。
【0023】
<距離センサ>
第1距離センサ15は、胴体111の先端部111Aに取り付けられている。具体的には、第1距離センサ15は、先端部111Aのうち、本体11の中心軸Pよりも左側の領域に配置されている。なお、本体11の中心軸Pとは、本体11の飛行方向FDと平行、かつ、本体11の左右の中心点を通る仮想軸である。
【0024】
図3に示すように、第1距離センサ15は、第1センサ中心軸C1と直交する方向にレーザ光Lを照射し、散乱光を検出することで、第1センサ中心軸C1から周囲の物体までの距離を測定するセンサである。
【0025】
第1距離センサ15は、第1センサ中心軸C1と直交する複数の方向に向けてパルス状にレーザ光Lを照射する。つまり、第1距離センサ15は、周囲の物体に対して第1センサ中心軸C1を中心とした周方向の走査を行う。第1距離センサ15としては、市販の2次元型のLiDARセンサが使用できる。
【0026】
図2に示すように、第1距離センサ15は、第1センサ中心軸C1が本体11の飛行方向FD(つまり本体11の中心軸P)と交差し、かつ、飛行方向FDと同じ仮想平面に含まれる向きで胴体111に取り付けられている。
【0027】
図4A及び図4Bに示すように、第1距離センサ15は、ドローン10が構造物Sの内部を飛行中に、第1センサ中心軸C1から構造物S(つまり内壁W)までの距離を第1センサ中心軸C1周りの複数点で測定した第1測定データD1を取得するように構成されている。
【0028】
第1測定データD1は、測定方向(つまりレーザ光の照射角度)と測定距離とを組み合わせたデータの集合体である。第1測定データD1のプロットによって、第1センサ中心軸C1が内部に含まれる楕円が形成される。
【0029】
図2に示すように、第2距離センサ16は、胴体111の先端部111Aに取り付けられている。具体的には、第2距離センサ16は、先端部111Aのうち、本体11の中心軸Pよりも右側の領域に配置されている。
【0030】
第2距離センサ16としては、第1距離センサ15と同じセンサが使用される。すなわち、第2距離センサ16は、周囲の物体に対して第2センサ中心軸C2を中心とした周方向の走査を行う。
【0031】
第2距離センサ16は、第2センサ中心軸C2が本体11の飛行方向FD(つまり本体11の中心軸P)と交差し、かつ、飛行方向FDと同じ仮想平面に含まれる向きで胴体111に取り付けられている。
【0032】
第2センサ中心軸C2は、第1距離センサ15の第1センサ中心軸C1と90°未満の角度で交差している。すなわち、第2センサ中心軸C2は、第1センサ中心軸C1と平行ではなく、かつ、第1センサ中心軸C1と垂直でもない。
【0033】
また、本体11の飛行方向FDと垂直な方向(例えば鉛直方向)から視て、第1センサ中心軸C1と本体11の飛行方向FDとが成す角度(例えば30°)は、第2センサ中心軸C2と飛行方向FDとが成す角度(例えば30°)と等しい。具体的には、第2距離センサ16は、本体11の中心軸Pを含む仮想平面に対し、第1距離センサ15と面対称となるように配置されている。
【0034】
図4A及び図4Bに示すように、第2距離センサ16は、ドローン10が構造物Sの内部を飛行中に、第2センサ中心軸C2から構造物S(つまり内壁W)までの距離を第2センサ中心軸C2周りの複数点で測定した第2測定データD2を取得するように構成されている。
【0035】
第2測定データD2は、測定方向と測定距離とを組み合わせたデータの集合体である。第2センサ中心軸C2が第1センサ中心軸C1と平行でないため、第2測定データD2が形成する楕円を含む仮想平面は、第1測定データD1が形成する楕円が含まれる仮想平面と交差する。
【0036】
なお、本実施形態では、ドローン10が飛行する構造物Sの内部空間の断面が円形であるため、第1測定データD1及び第2測定データD2それぞれの集合は楕円となる。一方、内部空間の断面が角形、又は曲線と直線との組み合わせで構成される場合は、第1測定データD1及び第2測定データD2それぞれの集合は楕円以外の幾何学形状となる。したがって、構造物Sの内部空間の断面が円形ではない場合、以下で用いる楕円は、楕円以外の幾何学形状に置き換えられる。
【0037】
第1距離センサ15及び第2距離センサ16は、ドローン10の飛行中、一定の時間間隔で測定データの取得(つまり距離測定)を実行する。
【0038】
<制御装置>
図1に示す制御装置20は、ドローン10の飛行状態(例えば、速度、姿勢、高度等)の監視と制御とを行う。制御装置20は、プロセッサと、メモリ等の記録媒体とを有するコンピュータによって構成される。
【0039】
制御装置20は、無線通信によって、ドローン10からのデータの受信と、ドローン10への制御指令の送信とを行う。ただし、制御装置20の全体又は一部の機能は、ドローン10の本体11に内蔵されてもよい。
【0040】
制御装置20は、ドローン10が取得した第1測定データD1と第2測定データD2とから、本体11の位置(つまり高度及び水平方向の座標)と、本体11の飛行方向FDとを調整するように構成されている。
【0041】
本体11の位置の調整処理では、制御装置20は、第1測定データD1が形成する楕円の中心と第1センサ中心軸C1との位置の関係、及び/又は第2測定データD2が形成する楕円の中心と第2センサ中心軸C2との位置の関係から、ドローン10の構造物Sの内部における相対位置を把握する。
【0042】
例えば、断面が真円形のトンネル内部をドローン10が飛行する場合は、第1測定データD1が形成する楕円の中心と第1センサ中心軸C1との位置とが一致する場合に、本体11の中心軸Pとトンネルの中心軸とが一致する。
【0043】
制御装置20は、ドローン10の位置を把握した後、目的とする位置(つまり座標)にドローン10が移動するように、推進装置113、垂直離着陸装置114、第1エルロン116A、第2エルロン116B、第1ラダー117A、及び第2ラダー117Bを制御する。
【0044】
本体11の飛行方向FDの調整処理では、図5に示すように、制御装置20は、基準データSDと、第1測定データD1とを比較する。基準データSDは、ドローン10が設定された飛行方向(つまり基準方向)に飛行している際に、第1距離センサ15から取得される測定データである。
【0045】
具体的には、制御装置20は、基準データSDの楕円の中心を通り、この楕円を含む仮想平面と垂直な基準ベクトル成分V0と、第1測定データD1の楕円の中心を通り、この楕円を含む仮想平面と垂直な測定ベクトル成分V1とを算出する。
【0046】
制御装置20は、基準ベクトル成分V0と測定ベクトル成分V1とが一致する(つまり、両者の差分Θがゼロとなる)ように、本体11の向きを変える修正量Mをベクトルとして算出する。また、制御装置20は、第2測定データD2についても同様の比較を行い、修正量Mを算出する。
【0047】
制御装置20は、算出された2つの修正量Mに基づいて、本体11の向きを変えるように、推進装置113、垂直離着陸装置114、第1エルロン116A、第2エルロン116B、第1ラダー117A、及び第2ラダー117Bを制御する。制御装置20は、一定の時間間隔で、修正量Mの算出を行う。
【0048】
なお、制御装置20は、第1測定データD1及び第2測定データD2それぞれの楕円と、修正量Mが予め個別に設定されたテンプレート楕円とのマッチングによって、修正量Mを算出してもよい。ただし、マッチング処理は演算負荷が大きいため、ベクトル成分による演算が好ましい。
【0049】
以下、制御装置20による修正量Mの算出例を説明する。以下の例では、円筒状の構造物Sの内部を、構造物Sの軸方向と平行な方向を基準方向として本体11が飛行することを想定する。
【0050】
図6Aは、本体11が、構造物Sの軸方向と平行な方向に飛行している状態である。この状態では、図6Bに示す第1測定データD1の楕円と図6Cに示す第2測定データD2の楕円とは同形となる。
【0051】
また、第1測定データD1及び第2測定データD2それぞれの楕円は、基準データSDと一致している。そのため、制御装置20が算出する修正量Mはゼロとなり、飛行方向FDの調整は行われない。
【0052】
図7Aは、本体11が構造物Sの軸方向に対し、左に20°傾斜した方向に飛行している(つまり反時計回りにヨーイングしている)状態である。
【0053】
この状態では、図7Bに示す第1測定データD1の楕円の長軸が基準データSDの楕円の長軸よりも長くなる。一方で、図7Cに示す第2測定データD2の楕円の長軸は基準データSDの楕円の長軸よりも小さくなる。
【0054】
このケースでは、制御装置20は、飛行方向FDを右に回転させる修正量Mを算出し、機首が右に向くように本体11の飛行方向FDを調整する。
【0055】
図8Aは、本体11が構造物Sの軸方向に対し、左に20°傾斜すると共に、下に30°傾斜した方向に飛行している(つまり反時計回りにヨーイングすると同時に反時計回りにピッチングしている)状態である。
【0056】
この状態では、図8Bに示す第1測定データD1の楕円の長軸は、基準データSDの楕円の長軸よりも長くなると共に、基準データSDの楕円の長軸に対し傾斜する。一方で、図8Cに示す第2測定データD2の楕円の長軸は、基準データSDの楕円の長軸よりも小さくなると共に、基準データSDの楕円の長軸に対し傾斜する。
【0057】
このケースでは、制御装置20は、飛行方向FDを右に回転させる共に上にも回転させる修正量Mを算出し、機首が右上に向くように本体11の飛行方向FDを調整する。
【0058】
制御装置20は、第1測定データD1に含まれる測定点のうち構造物Sの少なくとも天面における複数の測定点の距離と、第2測定データD2に含まれる複数の測定点のうち構造物Sの少なくとも天面における複数の測定点の距離とを用いて、本体11の飛行方向FDを調整してもよい。
【0059】
すなわち、制御装置20は、第1測定データD1及び第2測定データD2が形成するそれぞれの楕円のうち、トンネルの少なくとも天面に相当する部分のみを使って、修正量Mを算出してもよい。
【0060】
これにより、距離センサからトンネルの底面までの距離(つまり底面の形状)が基準データとの比較対象から除去される。そのため、底面に凹凸構造や設備が存在するトンネル内の空間において、ドローンの飛行方向の調整精度を高められる。
【0061】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)第1測定データの基準値からのずれと第2測定データの基準値からのずれとを用いて、ドローン10の機首の方向(つまり飛行方向)の設定方向からのずれを推定することができる。
【0062】
そのため、高価なセンサを用いることなく、ドローン10の飛行方向を調整することができる。また、センサの重量及び取得データ量が低減されるため、ドローン10を構造物内で高速に自律飛行させることができる。
【0063】
(1b)第1センサ中心軸と本体11の飛行方向とが成す角度が、第2センサ中心軸と飛行方向とが成す角度と等しいことで、ドローン10の飛行方向の調整における演算負荷を低減できると共に、調整精度を高めることができる。
【0064】
(1c)本体11が導体に固定された主翼112A,112Bを有することで、回転翼構造のドローンに比べて、構造物内を高速で飛行することができる。
【0065】
(1d)第1距離センサ15及び第2距離センサ16がそれぞれ胴体111の先端部111Aに取り付けられることで、第1距離センサ15及び第2距離センサ16の測定エリアと本体11との干渉を抑制することができる。
【0066】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0067】
(2a)上記実施形態のドローンにおいて、第1センサ中心軸と本体の飛行方向とが成す角度は、第2センサ中心軸と飛行方向とが成す角度と必ずしも等しくなくてもよい。つまり、第1距離センサ及び第2距離センサは、対称となるように配置されなくてもよい。
【0068】
(2b)上記実施形態のドローンにおいて、本体は、必ずしも固定翼を有さなくてもよい。本開示は、固定翼を有さない回転翼型のドローンにも適用可能である。
(2c)上記実施形態のドローンにおいて、第1距離センサ及び第2距離センサは、必ずしも胴体の先端部に取り付けられなくてもよい。
【0069】
(2d)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0070】
10…ドローン、11…本体、15…第1距離センサ、16…第2距離センサ、
20…制御装置、100…ドローン制御システム、111…胴体、111A…先端部、
112A…第1主翼、112B…第2主翼、113…推進装置、
114…垂直離着陸装置、114A,114B,114C,114D…プロペラ、
115A…第1垂直尾翼、115B…第2垂直尾翼、116A…第1エルロン、
116B…第2エルロン、117A…第1ラダー、117B…第2ラダー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8