2024-162510 流体圧アクチュエータ

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024162510

(43)【公開日】2024-11-21

(54)【発明の名称】流体圧アクチュエータ

(51)【国際特許分類】

   F15B 15/10 20060101AFI20241114BHJP

【ＦＩ】

F15B15/10 H

【審査請求】未請求

【請求項の数】5

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023078074

(22)【出願日】2023-05-10

(71)【出願人】

【識別番号】000005278

【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン

(74)【代理人】

【識別番号】110001519

【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】厨 義典

【テーマコード（参考）】

3H081

【Ｆターム（参考）】

3H081AA18

3H081BB03

3H081CC20

3H081DD07

(57)【要約】      （修正有）

【課題】本開示は、流体圧アクチュエータを組み立てる際に、封止部材の挿入部とチューブを介して接する拘束部材が封止部材における周方向に傾きにくい流体圧アクチュエータの提供を目的とする。
【解決手段】流体圧アクチュエータ２０は、円筒状のチューブ２４と、チューブ２４の外周面を覆い、チューブ２４の膨張によりチューブ２４を軸方向Ｓへの伸長を制限しながら径方向に拡げるスリーブ２６と、スリーブ２６の径方向の内側において、軸方向Ｓに沿った圧縮に対して抵抗し、軸方向Ｓと交差する交差方向Ｘに変形可能である板状の拘束部材２８と、チューブ２４の軸方向Ｓにおける端部をそれぞれ封止し、チューブ２４が挿入される挿入部３２Ｂを有する第一封止部と、を備え、挿入部３２Ｂは、軸方向Ｓから見てチューブ２４を介して拘束部材２８の板面と密着する第一平坦部４０を有している。
【選択図】図２

【特許請求の範囲】

【請求項1】

流体の圧力に応じて膨張及び収縮する円筒状のチューブと、
前記チューブの外周面を覆い、前記チューブの膨張により前記チューブを軸方向への伸長を制限しながら径方向に拡げるスリーブと、
前記スリーブの径方向の内側において、前記軸方向における一方側から他方側に亘って設けられ、前記軸方向に沿った圧縮に対して抵抗し、前記軸方向と交差する交差方向に変形可能である板状の拘束部材と、
前記チューブの軸方向における一方側及び他方側の端部をそれぞれ封止し、前記チューブが挿入される挿入部を有する一対の封止部材と、
を備え、
前記一対の封止部材における少なくとも一方の前記挿入部は、前記軸方向から見て前記チューブを介して前記拘束部材の板面と密着する平坦部を有している、
流体圧アクチュエータ。

【請求項2】

前記挿入部は、前記軸方向の長さの範囲内に、前記平坦部を前記軸方向に分割する溝を有している、
請求項１に記載の、流体圧アクチュエータ。

【請求項3】

前記封止部材は、前記挿入部よりも前記軸方向の外側において前記スリーブをかしめるかしめ部材と係合する係止部と、前記係止部と前記挿入部との間において前記係止部及び前記挿入部よりも拡径された大径部と、を有し、
前記大径部は、前記平坦部と連なって形成され、前記軸方向から見て前記拘束部材の板面と平行になる第二平坦部を有し、
前記拘束部材の前記軸方向の端は、前記第二平坦部における前記軸方向の範囲内にある、
請求項１に記載の、流体圧アクチュエータ。

【請求項4】

前記第二平坦部は、前記チューブの厚さにおける２倍未満の範囲内で、前記平坦部に対して前記径方向の外側に形成されている、
請求項３に記載の、流体圧アクチュエータ。

【請求項5】

前記平坦部は、前記一対の封止部材の両方に設けられている、
請求項１から請求項４のいずれか一項に記載の、流体圧アクチュエータ。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本開示は、流体圧アクチュエータに関する。

【背景技術】

【0002】

特許文献１には、流体の圧力によって膨張及び収縮する円筒状のチューブと、所定方向に配向された繊維コードを編み込んだ伸縮性を有する構造体であり、チューブの外周面を覆うスリーブと、チューブの軸方向における端部を封止する封止部材とを備える流体圧アクチュエータであって、スリーブの内側において、軸方向における一端側から他端側に亘って設けられる拘束部材を備え、拘束部材は、軸方向に沿った圧縮に対して抵抗し、軸方向に直交する直交方向に変形可能である流体圧アクチュエータが開示されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２０２１－０８８９９９号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

特許文献１に記載の構成では、流体圧アクチュエータを組み立てる際に封止部材の挿入部とチューブを挟んで接する拘束部材は、周方向に傾きやすい。

【0005】

本開示は、流体圧アクチュエータを組み立てる際に、封止部材の挿入部とチューブを介して接する拘束部材が封止部材における周方向に傾きにくい流体圧アクチュエータの提供を目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

第一態様の流体圧アクチュエータは、流体の圧力に応じて膨張及び収縮する円筒状のチューブと、前記チューブの外周面を覆い、前記チューブの膨張により前記チューブを軸方向への伸長を制限しながら径方向に拡げるスリーブと、前記スリーブの径方向の内側において、前記軸方向における一方側から他方側に亘って設けられ、前記軸方向に沿った圧縮に対して抵抗し、前記軸方向と交差する交差方向に変形可能である板状の拘束部材と、前記チューブの軸方向における一方側及び他方側の端部をそれぞれ封止し、前記チューブが挿入される挿入部を有する一対の封止部材と、を備え、前記一対の封止部材における少なくとも一方の前記挿入部は、前記軸方向から見て前記チューブを介して前記拘束部材の板面と密着する平坦部を有している。

【0007】

この流体圧アクチュエータによれば、軸方向の少なくとも一方の封止部材における挿入部に、軸方向から見てチューブを介して拘束部材の板面と密着する平坦部が設けられている。このため、流体圧アクチュエータを組み立てる際に拘束部材を平坦部に対してチューブを介して密着するため、拘束部材が周方向に回転しにくい。

【0008】

第二態様の流体圧アクチュエータは、第一態様に記載の流体圧アクチュエータにおいて、前記挿入部は、前記軸方向の長さの範囲内に、前記平坦部を前記軸方向に分割する溝を有している。

【0009】

この流体圧アクチュエータによれば、挿入部は、軸方向の長さの範囲内に、平坦部を軸方向に分割する溝を有しているため、かしめ後はチューブが平坦部に形成された溝にくい込む。このため、この流体圧アクチュエータでは、平坦部が一つの平面で形成されている場合と比べて、挿入部から流体が漏れ出にくい。

【0010】

第三態様の流体圧アクチュエータは、第一態様又は第二態様に記載の流体圧アクチュエータにおいて、前記封止部材は、前記挿入部よりも前記軸方向の外側において前記スリーブをかしめるかしめ部材と係合する係止部と、前記係止部と前記挿入部との間において前記係止部及び前記挿入部よりも拡径された大径部と、を有し、前記大径部は、前記平坦部と連なって形成され、前記軸方向から見て前記拘束部材の板面と平行になる第二平坦部を有し、前記拘束部材の前記軸方向の端は、前記第二平坦部における前記軸方向の範囲内にある。

【0011】

この流体圧アクチュエータによれば、封止部材における大径部には、挿入部の平坦部と連なって形成され、軸方向から見て拘束部材の板面と平行になる第二平坦部を有しているため、拘束部材の軸方向の端は、前記第二平坦部における前記軸方向の範囲内にある場合、拘束部材と、封止部材における硬質な第二平坦部分は、硬質な平面同士が合わさる。これにより、この流体圧アクチュエータによれば、平坦部が挿入部のみに形成されている場合と比べて、かしめ部材によってかしめられた状態で拘束部材をより周方向に傾きにくく固定することができる。

【0012】

第四態様の流体圧アクチュエータは、第三態様に記載の流体圧アクチュエータにおいて、前記第二平坦部は、前記チューブの厚さにおける２倍未満の範囲内で、前記平坦部に対して前記径方向の外側に形成されている。

【0013】

平坦部及び第二平坦部における径方向の位置が等しい場合には、流体圧アクチュエータを組み立てる際に、拘束部材の端部がチューブの厚さだけ第二平坦部よりも径方向外側に位置するため、拘束部材の端部と第二平坦部との間に隙間が生じる。

【0014】

ここで、この流体圧アクチュエータによれば、第二平坦部は、前記チューブの厚さにおける２倍未満の範囲内で平坦部よりも径方向の外側に形成されている。このため、この流体圧アクチュエータによれば拘束部材の端部は、かしめ後に平坦部と密着し、拘束部材の周方向への傾きを完全に解消することができると共に、組立時、拘束部材と第二平坦部との位置が近付くため、第二平坦部が平坦部と径方向の位置が等しい場合と比べて、より組み立てやすい。

【0015】

第五態様の流体圧アクチュエータは、第一態様から第四態様のいずれか一態様に記載の流体圧アクチュエータにおいて、前記平坦部は、前記一対の封止部材の両方に設けられている。

【0016】

この流体圧アクチュエータによれば、一対の封止部材の両方に、拘束部材の回転を規制する平坦部が形成されているため、流体圧アクチュエータを組み立てる際に拘束部材のねじれを解消した状態で組み立てやすい流体圧アクチュエータを得ることができる。

【発明の効果】

【0017】

本開示によれば、流体圧アクチュエータを組み立てる際に、封止部材の挿入部とチューブを介して接する拘束部材が封止部材における周方向に傾きにくい流体圧アクチュエータを提供できる。

【図面の簡単な説明】

【0018】

【図1】本開示の実施形態に係る流体圧アクチュエータの平面図である。

【図2】本開示の実施形態に係る流体圧アクチュエータの軸方向の一端側の分解斜視図である。

【図3】本開示の実施形態に係る封止部材を説明する斜視図である。

【図4】本開示の実施形態に係る封止部材を説明する平面図である。

【図5】本開示の実施形態に係る封止部材を説明する側面図である。

【図6】本開示の実施形態に係る流体圧アクチュエータが動作する様子を説明する断面図である。

【図7】本開示の変形例に係る封止部材を説明する斜視図である。

【発明を実施するための形態】

【0019】

以下、図面を参照して本開示の技術を実現する実施形態を詳細に説明する。

【0020】

なお、作用、機能が同じ働きを担う構成要素及び処理には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明を適宜省略する場合がある。また、本開示は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。

【0021】

［実施形態］
＜流体圧アクチュエータ２０の構成＞
図１には、本開示の実施形態に係る流体圧アクチュエータ２０が示されている。流体圧アクチュエータ２０は、アクチュエータ本体部２２、第一封止部３０Ａ、第二封止部３０Ｂを備えている。

【0022】

図１及び図２にも示されるように、アクチュエータ本体部２２は、チューブ２４、スリーブ２６、及び拘束部材２８を有している。チューブ２４は、弾性変形による伸縮可能な円筒状であり、内部の流体の圧力変化によって膨張及び収縮する。チューブ２４の軸方向を「軸方向Ｓ」とする。チューブ２４は、ブチルゴムなどの弾性材料によって構成することができる。チューブ２４へ供給する流体としては、空気を用いることができ、この場合には、流体圧アクチュエータ２０は空気式アクチュエータとなる。なお、流体圧アクチュエータ２０を油圧駆動とする場合には、耐油性が高いＮＢＲ（ニトリルゴム）、または水素化ＮＢＲ、クロロプレンゴム、及びエピクロロヒドリンゴムからなる群より選択される少なくとも一種とすることが好ましい。

【0023】

スリーブ２６は、チューブ２４の外周を覆う円筒状とされている。スリーブ２６は、所定方向に配向された繊維コードを編み込んだ伸縮性を有する構造体であり、配向されたコードが軸方向Ｓに対して所定の角度θで交差されている。スリーブ２６は、このような形状を有することによって、角度θを変えるパンタグラフ変形し、チューブ２４の収縮及び膨張を規制しつつこの収縮及び膨張に追従する。

【0024】

スリーブ２６を構成するコードとしては、芳香族ポリアミド（アラミド繊維）やポリエチレンテレフタラート（ＰＥＴ）の繊維コードを用いることが好ましい。但し、このような種類の繊維コードに限定されるものではなく、例えば、ＰＢＯ繊維（ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール）などの他の高強度繊維のコードでもよい。

【0025】

拘束部材２８は、チューブ２４とスリーブ２６との間に設けられている。拘束部材２８は、長尺板状とされ、長手方向がチューブ２４の軸方向Ｓに沿った方向に配置され、チューブ２４の外周の一部を覆い、チューブ２４の一端から他端に渡って配置されている。

【0026】

拘束部材２８は、加圧により膨張及び収縮のない板状の材料で形成されており、端部同士が近づく方向に撓み変形可能とされている。拘束部材２８としては、いわゆる、板バネ（leaf spring）を用いることができる。板バネの寸法は、流体圧アクチュエータ２０のサイズや要求される把持力などに応じて決定される。一例として拘束部材２８の軸方向Ｓの長さは、チューブ２４の軸方向Ｓの長さから、チューブ２４の軸方向Ｓの長さに大径部５０における軸方向Ｓの長さの略２倍を加えた長さまでの範囲とされている。また、板バネの材料についても特に限定されないが、典型的には、ステンレス鋼などの金属など、撓み変形し易く、圧縮に強い材料であればよい。他に、炭素繊維強化プラスチック（ＣＦＲＰ）の薄板などによって形成されてもよい。

【0027】

第一封止部３０Ａは、第一封止部材３２、係止リング３４、及びかしめ部材３６を有している。

【0028】

第一封止部材３２は、一体成形された蓋部３２Ａ、挿入部３２Ｂ、係止部４８、及び大径部５０を有している。蓋部３２Ａは、チューブ２４の外径よりも大径とされた略直方体状とされ、蓋部３２Ａの一端側の中央から、係止部４８、大径部５０及び挿入部３２Ｂが軸方向Ｓに延出形成されている。

【0029】

挿入部３２Ｂは、所謂タケノコ形状とされ、スリーブ２６の内側のチューブ２４の一端側に挿入される部分である。また、挿入部３２Ｂは、図３から図５に示されるように、軸方向Ｓの長さの範囲において、本開示の平坦部の一例である第一平坦部４０と、複数の溝４４と、を有している。なお、第一平坦部４０の具体的形状については、後述する。

【0030】

係止部４８は、挿入部３２Ｂにおける軸方向Ｓの他端側において蓋部３２Ａ及び挿入部３２Ｂよりも縮径された円筒形状の部分である。大径部５０は、係止部４８の軸方向Ｓの一端側において、係止部４８及びチューブ２４の内径よりも大径とされ、第二平坦部５２を有する部分である。また、大径部５０における係止部４８側は、係止部４８に向かって縮径するテーパ部４９とされている。なお、第二平坦部５２の具体的形状については、後述する。

【0031】

第一封止部３０Ａとしては、ステンレス鋼などの金属を好適に用い得るが、このような金属に限定されず、硬質プラスチック材料などを用いてもよい。

【0032】

また、挿入部３２Ｂの径方向中央部に軸方向Ｓに延出形成されると共に、蓋部３２Ａの側面の接続孔Ｈと連通されている流路Ｒを有している（図６も参照）。接続孔Ｈには、図示しない空気供給ホースが接続され、圧縮空気が流路Ｒに供給される。

【0033】

係止リング３４は、リング状とされ、係止部４８との間にスリーブ２６を挟み込むように、スリーブ２６の外側に配置され、スリーブ２６を第一封止部材３２に係止する。スリーブ２６は、係止リング３４を介して外周へ折り返される。係止リング３４としては、金属、硬質プラスチックや、繊維、ゴムなどの材料を用いることができる。

【0034】

かしめ部材３６は、アクチュエータ本体部２２の外周で挿入部３２Ｂが挿入された部分を覆うように配置され、アクチュエータ本体部２２を第一封止部材３２に圧着する。これにより、アクチュエータ本体部２２は、第一封止部材３２に固定される。かしめ部材３６としては、アルミニウム合金、真鍮、及び鉄などの金属を用いることができる。

【0035】

本実施形態において、第一平坦部４０及び第二平坦部５２は、図３から図６に示されるように、軸方向Ｓと交差する方向（以下「交差方向Ｘ」と称する）に面する部分である。言い換えれば、第一平坦部４０及び第二平坦部５２は、交差方向Ｘが法線方向となる。

【0036】

第一平坦部４０は、組み立てられた流体圧アクチュエータ２０において、軸方向Ｓから見てチューブ２４を介して拘束部材２８の板面と密着する部分である。なお、「平坦とされた」とは、図３から図６に示されるように、巨視的に見て実質的に平らであればよく、また「軸方向Ｓに平行する」とは、軸方向Ｓに対して巨視的に見て平行であればよい。すなわち、「平坦とされた」とは、製造上の誤差を含んで形成されていてもよい。

【0037】

また、本実施形態において、第一平坦部４０は、図４及び図５に示されるように、挿入部３２Ｂに形成された溝４４によって軸方向Ｓに分割されている。すなわち、本実施形態において、第一平坦部４０は、溝４４によって軸方向Ｓに分割された複数の分割面４２が、全体として拘束部材２８の板面とチューブ２４を介して密着する部分である。なお、本実施形態において、溝４４は、一例として所謂タケノコ形状の溝部分であり、挿入部３２Ｂを軸方向Ｓから見て周方向に無端とされて形成されている。

【0038】

なお、第一平坦部４０は、どのように形成されてもよいが、一例として、所謂タケノコ形状とされた挿入部３２Ｂにおいて、交差方向Ｘの一方側（拘束部材２８が取り付けられる側）を、溝４４が残る程度に切削することによって形成される。

【0039】

第二平坦部５２は、組み立てられた流体圧アクチュエータ２０において、軸方向Ｓから見て拘束部材２８の板面とかしめ後に接触する部分である。すなわち、第二平坦部５２は、第一平坦部４０に連なって形成され、軸方向Ｓに平行する面を有する部分である。また、第二平坦部５２と、テーパ部４９との境目は、図４に示されるように、平面視でテーパ部４９側が凸となるように湾曲したエッジ部５２Ｅとされている。

【0040】

第二封止部３０Ｂは、第二封止部材３３、係止リング３４、及びかしめ部材３６を有している。第二封止部材３３は、接続孔Ｈ及び流路Ｒは形成されておらず、先端がＲ形状とされていることを除いては、第一封止部３０Ａの第一封止部材３２と同様である。また、第一封止部３０Ａ及び第二封止部３０Ｂを区別しない場合、封止部３０と称する。

【0041】

続いて、本実施形態における流体圧アクチュエータ２０の組み立て手順を説明する。

【0042】

＜流体圧アクチュエータ２０の組み立て＞
図２及び図６に示すように、本実施形態における流体圧アクチュエータ２０の一端側では、第一封止部３０Ａとアクチュエータ本体部２２とが、次の様に組み立てられる。

【0043】

まず、第一封止部３０Ａの挿入部３２Ｂを、チューブ２４の一端が大径部５０に突き当たるまで挿入する。次に、拘束部材２８を、第一平坦部４０とチューブ２４を介して接触させるともに、第二平坦部５２に重なるように配置する。これにより拘束部材２８は、第一平坦部４０によって第一封止部材３２における周方向の移動が規制される。なお、拘束部材２８を配置する周方向の位置は、後述するようにアクチュエータ本体部２２が曲がる方向（軸方向Ｓと直交する方向）の外側とされる。

【0044】

なお、本実施形態では、拘束部材２８の軸方向Ｓの一方側の端は、第二平坦部５２とテーパ部４９との境であるエッジ部５２Ｅの端５２Ａよりも挿入部３２Ｂ側に位置するように配置される。言い換えれば、拘束部材２８の軸方向Ｓの端は、第二平坦部５２における軸方向Ｓの範囲内にある。なお、拘束部材２８の端は、図４に示されるように、全体が平面視で第二平坦部５２と重なる位置にあること（拘束部材２８の端が、エッジ部５２Ｅにかからないこと）がより好ましい。

【0045】

次に、スリーブ２６をチューブ２４及び第一封止部３０Ａの蓋部３２Ａに掛けながら拘束部材２８の外周面を覆い、係止リング３４をスリーブ２６の径方向外側から、係止部４８の位置で取付けることによって、スリーブ２６を係止部４８に係止する。

【0046】

次に、スリーブ２６を、係止リング３４が内側となるように第一封止部３０Ａの挿入部３２Ｂまで折り返し、かしめ部材３６を、スリーブ２６の径方向外側から、挿入部３２Ｂ及び係止部４８に亘るように配置し、図示しないかしめ機によって圧着する。これにより、アクチュエータ本体部２２の軸方向Ｓの一方側において、チューブ２４、拘束部材２８及びスリーブ２６が第一封止部３０Ａに固定される。この際、拘束部材２８は第二平坦部５２と接触し固定されることにより、かしめ後の周方向の移動が規制される。

【0047】

次に、チューブ２４、スリーブ２６、及び拘束部材２８の軸方向Ｓの他方側において、拘束部材２８を大径部５０の第二平坦部５２と重なるように配置する。なお、前述のように、本実施形態における拘束部材２８の軸方向Ｓの長さは、チューブ２４の軸方向Ｓの長さから、チューブ２４の軸方向Ｓの長さに大径部５０における軸方向Ｓの長さの略２倍を加えた長さまでの範囲とされている。このため、拘束部材２８の軸方向Ｓの他方側の端は、一方側の端と同様に、第二封止部３０Ｂにおける第二平坦部５２における軸方向Ｓの範囲内にある。

【0048】

次に、拘束部材２８が第二封止部３０Ｂの第一平坦部４０から周方向に外れないように注意しながら、第二封止部３０Ｂの挿入部３２Ｂをチューブ２４の軸方向Ｓの他方側に挿入する。

【0049】

次に、スリーブ２６でチューブ２４及び第二封止部３０Ｂの蓋部３２Ａに掛けながら拘束部材２８の外周面を覆い、係止リング３４をスリーブ２６の径方向外側から、係止部４８の位置で取付けることによって、スリーブ２６を係止部４８に係止する。

【0050】

次に、スリーブ２６を、係止リング３４が内側となるように第二封止部３０Ｂの挿入部３２Ｂまで折り返し、かしめ部材３６を、スリーブ２６の径方向の外側から、挿入部３２Ｂ及び係止部４８に亘るように配置し、図示しないかしめ機によって圧着する。これにより、アクチュエータ本体部２２の軸方向Ｓの他方側において、チューブ２４、拘束部材２８及びスリーブ２６が第二封止部３０Ｂに固定される。

【0051】

以上の手順によりチューブ２４の一方側及び他方側が第一封止部３０Ａ及び第二封止部３０Ｂに封止されることによって、流体圧アクチュエータ２０が組み立てられる。

【0052】

続いて、本開示における流体圧アクチュエータ２０の動作を説明する。

【0053】

＜流体圧アクチュエータ２０の動作＞
図６に示されるように、流体圧アクチュエータ２０は、一端側の第一封止部３０Ａが固定され、他端側の第二封止部３０Ｂが自由端となるようにして使用される。

【0054】

接続孔Ｈから圧縮空気を流入させると、流体圧アクチュエータ２０内の圧力が上昇する。内圧上昇により、チューブ２４が弾性変形して膨張し、スリーブ２６は角度θが大きくなるようにパンタグラフ変形し、アクチュエータ本体部２２の長さが短縮する方向に力が作用する。このとき、アクチュエータ本体部２２の拘束部材２８が配置された外周側壁は短縮が規制されているため、アクチュエータ本体部２２は、軸方向Ｓから見て拘束部材２８が配置されていない側の外周壁が短縮する。これにより、拘束部材２８が撓み変形し、図６における二点鎖線で示されるように、アクチュエータ本体部２２の全体が湾曲する。

【0055】

なお、本開示において、拘束部材２８は、幅方向に長さを有しているため、板厚方向、すなわち第一封止部３０Ａ及び第二封止部３０Ｂにおける軸方向Ｓと交差する方向以外の方向に曲がりにくい。言い換えれば、図６に示されるように、拘束部材２８は、チューブ２４の軸心に向かう方向に曲がる。

【0056】

続いて、本開示に係る流体圧アクチュエータ２０による作用及び効果を説明する。

【0057】

＜作用及び効果＞
本実施形態の流体圧アクチュエータ２０によれば、軸方向Ｓの少なくとも一方の封止部材における挿入部３２Ｂに、軸方向から見てチューブを介して拘束部材２８の板面と平行となる第一平坦部４０が設けられている。このため、流体圧アクチュエータ２０を組み立てる際に拘束部材２８を第一平坦部４０に対してチューブ２４を介して平行を保つため、拘束部材２８が周方向に回転しにくい。

【0058】

本実施形態の流体圧アクチュエータ２０によれば、挿入部３２Ｂは、軸方向Ｓの長さの範囲内に、第一平坦部４０を軸方向Ｓに分割する溝４４を有しているため、かしめ機による圧着後はチューブ２４が第一平坦部４０の溝４４にくい込む。このため、この流体圧アクチュエータ２０では、第一平坦部４０が一つの平面で形成されている場合と比べて、挿入部３２Ｂから流体が漏れ出にくい。

【0059】

また、本実施形態の流体圧アクチュエータ２０によれば、封止部材における大径部５０には、第一平坦部４０と連なって軸方向Ｓから見て拘束部材２８の板面と密着する交差方向に面する第二平坦部５２を有している。このため、本実施形態の流体圧アクチュエータ２０では、拘束部材２８は、封止部材における硬質な部分と接触する。これにより、この流体圧アクチュエータ２０によれば、第一平坦部４０が挿入部３２Ｂのみに形成されている場合と比べて、かしめ部材３６によってかしめられた状態で封止部材をより強固に固定することができる。

【0060】

また、本実施形態の流体圧アクチュエータ２０によれば、拘束部材２８の軸方向Ｓの端は、平面視で第二平坦部５２と重なる位置にある。このため、本実施形態の流体圧アクチュエータ２０では、拘束部材２８の端が第二平坦部５２からはみ出る場合（拘束部材２８の端が、エッジ部５２Ｅにかかる場合）と比べて、流体圧アクチュエータ２０を組み立てる際に拘束部材２８がより周方向に回転しにくい。

【0061】

また、本実施形態の流体圧アクチュエータ２０によれば、一対の封止部材の両方に、拘束部材２８の回転を規制する第一平坦部４０が形成されている。これにより流体圧アクチュエータ２０を組み立てる際に拘束部材２８のねじれを解消した状態で組み立てやすい流体圧アクチュエータ２０を得ることができる。

【0062】

＜変形例＞
次に、本開示の変形例について説明する。本変形例では実施形態と同様の部分については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。

【0063】

図７は、本開示の変形例に係る第一封止部材３２を示す図である。図７に示すように第一封止部材３２の大径部５０には、第一平坦部４０よりも径方向外側に第二平坦部１５２が形成されている。言い換えれば、第二平坦部１５２と第一平坦部４０は、段差を介して連なって形成されている。本変形例において第一平坦部４０と第二平坦部１５２との段差の大きさは、一例として弾性変形していない状態におけるチューブ２４の厚さである。なお、本変形例においても、拘束部材２８の軸方向Ｓの端は、第二平坦部１５２の軸方向Ｓの範囲内にあることが好ましい。

【0064】

ところで、第一平坦部４０及び第二平坦部５２における径方向の位置が等しい場合には、流体圧アクチュエータ２０を組み立てる際に、拘束部材２８の端部がチューブ２４の厚さだけ第二平坦部５２よりも径方向外側に位置する。このため、第一平坦部４０及び第二平坦部５２における径方向の位置が等しい場合には、拘束部材２８の端部と第二平坦部５２との間に隙間が生じる。

【0065】

ここで、この流体圧アクチュエータ２０によれば、第二平坦部５２は、チューブ２４の厚さだけ第一平坦部４０よりも径方向の外側に形成されている。このため、この流体圧アクチュエータ２０によれば拘束部材２８の端部は、チューブ２４を介して第一平坦部４０と密着すると共に、チューブ２４の厚さだけ第二平坦部１５２との位置が近付く。このように、第二平坦部５２が第一平坦部４０と径方向の位置が等しい場合と比べて、より組み立てやすい。

【0066】

本変形例の流体圧アクチュエータにおいても、実施形態に係る流体圧アクチュエータ２０と同様に、第一平坦部４０が挿入部３２Ｂのみに形成されている場合と比べて、かしめ部材３６によってかしめられた状態で封止部材をより強固に固定することができる。

【0067】

＜その他の変形例＞
なお、上述の説明では、第一封止部３０Ａ及び第二封止部３０Ｂが第一平坦部４０及び第二平坦部５２を有しているとしたが、本開示に係る流体圧アクチュエータ２０は、これに限られない。すなわち、第一封止部３０Ａ又は第二封止部３０Ｂのうちいずれか一方が第一平坦部４０及び第二平坦部５２を有していない構成とされていてもよい。この場合においても、第一封止部３０Ａ又は第二封止部３０Ｂのうちいずれか他方が平坦部を有しているため、流体圧アクチュエータ２０を組み立てる際に、拘束部材２８が封止部における周方向に傾きにくい流体圧アクチュエータ２０を得ることができる。

【0068】

なお、上述の説明では、本実施形態の流体圧アクチュエータ２０によれば、拘束部材２８の軸方向Ｓの端は、平面視で第二平坦部５２と重なる位置にあるとしたが、本開示に係る流体圧アクチュエータ２０は、これに限られない。例えば、拘束部材２８の軸方向Ｓの端が、第二平坦部５２のエッジ部５２Ｅの端５２Ａと重なり、拘束部材２８の端が、幅方向（図４における図面上下方向）において第二平坦部５２からはみ出てもよい。言い換えれば、拘束部材２８の端が、エッジ部５２Ｅにかかってもよい。この場合においても、流体圧アクチュエータ２０を組み立てる際に、拘束部材２８が封止部における周方向に傾きにくい流体圧アクチュエータ２０を得ることができる。

【0069】

なお、上述の説明では、拘束部材２８の軸方向Ｓの端は、第二平坦部５２の軸方向Ｓの範囲内にあるとしたが、本開示に係る流体圧アクチュエータ２０は、これに限られない。すなわち、拘束部材２８の軸方向Ｓの端が、第一平坦部４０の長さの範囲内に位置してもよい。この場合においても、流体圧アクチュエータ２０を組み立てる際に、拘束部材２８が封止部における周方向に傾きにくい流体圧アクチュエータ２０を得ることができる。

【0070】

なお、実施形態の説明では、第二平坦部５２は、第一平坦部４０と径方向の位置が同じに形成されていたが、本開示に係る流体圧アクチュエータ２０は、これに限られない。第二平坦部５２は、チューブ２４の厚さにおける２倍未満の範囲内で第一平坦部４０よりも径方向の外側に形成されていれば、チューブ２４の厚さだけ拘束部材２８との位置が近付く。したがって、第二平坦部がチューブの厚さにおける２倍未満の範囲内で、第一平坦部４０に対して径方向の外側に形成されている流体圧アクチュエータ２０は、第二平坦部５２が第一平坦部４０と径方向の位置が等しい場合と比べて、より組み立てやすく、拘束部材２８と第二平坦部５２が圧着後に密着するため、より周方向に傾きにくくなる。

【0071】

また、上述の説明では、第一平坦部４０は、挿入部３２Ｂに形成された溝４４によって軸方向Ｓに複数に分割されていたが、本開示に係る流体圧アクチュエータ２０は、これに限らない。すなわち、挿入部３２Ｂは、溝４４を有していない構成とされていてもよい。この場合においても、流体圧アクチュエータ２０を組み立てる際に、拘束部材２８は、第一平坦部４０に対してチューブ２４を介して密着するため、拘束部材２８が周方向に回転しにくい。

【0072】

以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態を説明したが、本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。

【符号の説明】

【0073】

２０ 流体圧アクチュエータ、２２ アクチュエータ本体部、２４ チューブ、２６ スリーブ、２８ 拘束部材、３０ 封止部、３０Ａ 第一封止部、３０Ｂ 第二封止部、３２ 第一封止部材、３２Ａ 蓋部、３２Ｂ 挿入部、３３ 第二封止部材、３４ 係止リング、３６ かしめ部材、３８ 取付部 ４０ 第一平坦部、４２ 分割面、４４ 溝、４８ 係止部、４９ テーパ部、５０ 大径部、５２Ａ エッジ部の端、５２Ｅ エッジ部、５２ 第二平坦部

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】