(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162511
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】バイフューエルエンジンの発電制御装置
(51)【国際特許分類】
H02P 9/04 20060101AFI20241114BHJP
H02P 101/45 20150101ALN20241114BHJP
【FI】
H02P9/04 L
H02P101:45
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078075
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】内田 直博
【テーマコード(参考)】
5H590
【Fターム(参考)】
5H590CA07
5H590CA23
5H590CE05
5H590FA05
5H590GA05
(57)【要約】
【課題】ドライバビリティが悪化するのを防ぐことを目的とする。
【解決手段】本発明は、複数の燃料を切替えて駆動するバイフューエルエンジン20と、バイフューエルエンジン20の駆動力を使用して発電を行う発電機30と、を備える車両10におけるバイフューエルエンジン20の発電制御装置である。発電制御装置は、発電機30による発電中に、バイフューエルエンジン20で使用する燃料の切替えが実行される場合は、発電量を燃料の切替え前よりも小さくするように制御する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料を切替えて駆動するバイフューエルエンジンと、
前記バイフューエルエンジンの駆動力を使用して発電を行う発電機と、を備える車両におけるバイフューエルエンジンの発電制御装置であって、
前記発電機による発電中に、前記バイフューエルエンジンで使用する燃料の切替えが実行される場合は、発電量を燃料の切替え前よりも小さくするように制御することを特徴とするバイフューエルエンジンの発電制御装置。
【請求項2】
燃料の切替え前よりも発電量を小さくしてから燃料の切替えを実行するように制御することを特徴とする請求項1に記載のバイフューエルエンジンの発電制御装置。
【請求項3】
前記発電機による発電中に、前記バイフューエルエンジンで使用する燃料の切替えが実行される場合は、前記バイフューエルエンジンの駆動トルクを小さくするように制御することを特徴とする請求項1または2に記載のバイフューエルエンジンの発電制御装置。
【請求項4】
複数の燃料を切替えて駆動するバイフューエルエンジンと、
前記バイフューエルエンジンの駆動力を使用して発電を行う発電機と、を備える車両におけるバイフューエルエンジンの発電制御装置であって、
燃料の切替え前の前記発電機の発電状況に関わらず、燃料を切替えてから切替えが完了するまでは発電量を大きくしないように制御することを特徴とするバイフューエルエンジンの発電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイフューエルエンジンの発電制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からエンジンと発電機とをベルトで連結させて、エンジンの動力を使用して発電を行う車両が知られている。
特許文献1には、エンジンがベルトにより発電機に連結され、発電機が電源線を通じてバッテリおよび負荷制御手段に接続された車両が開示されている。特許文献1に開示された電源制御手段は、発電機やバッテリや電源線(電源ライン)等の状態を監視し、発電機を制御する発電機制御手段を通じて発電機を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バイフューエルエンジンを搭載した車両では燃料を切替えると、エンジン駆動トルクの変動が発生することがある。このとき、発電機が発電していると発電トルクによりエンジンの出力軸から減速トルクが出力され、減速力によりドライバビリティが悪化してしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、ドライバビリティが悪化するのを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の燃料を切替えて駆動するバイフューエルエンジンと、前記バイフューエルエンジンの駆動力を使用して発電を行う発電機と、を備える車両におけるバイフューエルエンジンの発電制御装置であって、前記発電機による発電中に、前記バイフューエルエンジンで使用する燃料の切替えが実行される場合は、発電量を燃料の切替え前よりも小さくするように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ドライバビリティが悪化するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】バイフューエル車両の構成の一例を示す図である。
【
図2】比較例に係る燃料の切替えの一例を示すタイミングチャートである。
【
図3】制御装置による処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】実施例1に係る燃料の切替えの一例を示すタイミングチャートである。
【
図5】実施例2に係る燃料の切替えの一例を示すタイミングチャートである。
【
図6】実施例3に係る燃料の切替えの一例を示すタイミングチャートである。
【
図7】比較例および実施例4に係る燃料の切替えの一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る実施形態は、複数の燃料を切替えて駆動するバイフューエルエンジン20と、バイフューエルエンジン20の駆動力を使用して発電を行う発電機30と、を備えるバイフューエル車両10におけるバイフューエルエンジン20の発電制御装置である。発電制御装置は、発電機30による発電中に、バイフューエルエンジン20で使用する燃料の切替えが実行される場合は、発電量を燃料の切替え前よりも小さくするように制御する。エンジン駆動トルクが発電トルクを下回らないように発電トルクを小さくすることにより、減速トルクがバイフューエルエンジン20から出力されることを防止することができることから、ドライバビリティが悪化するのを防ぐことができる。
【実施例0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施例について説明する。
図1は、実施例のバイフューエル車両10の構成の一例を示す図である。なお、
図1は、説明の便宜上、本開示の技術を説明するために簡略化したものであり、バイフューエル車両10が通常備える構成については図示されていなくても備えているものとする。
【0011】
本実施例のバイフューエル車両10は、バイフューエルエンジン20と、発電機30と、トランスミッション40と、駆動輪50と、第1燃料タンク60Aと、第2燃料タンク60Bと、制御装置70とを備える。
【0012】
バイフューエルエンジン20は、複数の燃料(第1燃料と第2燃料)を切替えて駆動する。第1燃料は、例えば、ガソリン燃料等の液体燃料を用いることができる。第2燃料は、例えば、圧縮天然ガス(CNG)燃料等の気体燃料を用いることができる。通常、液体燃料は気体燃料に比べてエンジン始動性が高く、気体燃料は液体燃料に比べて燃費性能に優れている。
【0013】
バイフューエルエンジン20は、吸気系として、エアクリーナと、吸気管と、電子制御スロットルバルブ等とを備える。エアクリーナで浄化された吸気は、吸気管を通してバイフューエルエンジン20の気筒に流入する。制御装置70は、電子制御スロットルバルブを制御することにより、バイフューエル車両10の運転状態等に応じて適切な吸気量をバイフューエルエンジン20の気筒に流入するように調整する。
【0014】
バイフューエルエンジン20は、燃料系として、第1インジェクタ21Aと、第2インジェクタ21Bとを備える。第1インジェクタ21Aは、第1燃料をバイフューエルエンジン20の吸気ポートまたは燃焼室に噴射する。第1燃料は、第1燃料タンク60Aから第1燃料配管61Aを介して供給される。第1インジェクタ21Aから噴射された第1燃料は、吸気系から取り込まれた空気と混ざって混合気を生成する。第2インジェクタ21Bは、第2燃料をバイフューエルエンジン20の吸気ポートまたは燃焼室に噴射する。第2燃料は、第2燃料タンク60Bから第2燃料配管61Bを介して供給される。第2インジェクタ21Bから噴射された第2燃料は、吸気系から取り込まれた空気と混ざって混合気を生成する。
【0015】
第1燃料配管61Aには第1燃料用バルブ62Aが配設され、第2燃料配管61Bには第2燃料用バルブ62Bが配設される。制御装置70は、第1燃料用バルブ62A、第2燃料用バルブ62B、第1インジェクタ21A、第2インジェクタ21Bを制御することにより、第1燃料または第2燃料を切替えて供給する。
【0016】
バイフューエルエンジン20は、燃焼室内に点火プラグを備える。制御装置70は、点火プラグの点火時期を制御し、点火プラグを点火することによって燃焼室内の混合気に着火して燃焼させる。混合気の燃焼により、バイフューエルエンジン20の気筒内でピストンが往復移動し、ピストンの往復運動がクランクシャフトの回転運動に変換される。
また、バイフューエルエンジン20は、排気系として、排気管と、マフラー等とを備える。点火プラグの点火によって混合気が燃焼されることで生じた排気は、排気管に流れ、マフラーで消音された後に排出される。
【0017】
発電機30は、バイフューエルエンジン20の駆動力を使用して発電を行う。発電機30は、バイフューエルエンジン20との間でベルト31を介して連結される。バイフューエルエンジン20のクランクシャフトが回転することによりベルト31を介して発電機30の入力軸が回転されることで発電し、バッテリに充電される。なお、発電機30は、バッテリから受電することによりバイフューエルエンジン20にアシスト力を付与するISG(Integrated Starter Generator)であってもよい。制御装置70は、励磁電流制御回路を介して励磁電流を制御することにより発電機30の発電量(発電トルク量)を制御する。制御装置70は、バイフューエルエンジン20の発電制御装置として機能する。
【0018】
トランスミッション40は、バイフューエルエンジン20からの駆動力をトルクや回転数または回転方向を変えて駆動輪50に伝達する。
駆動輪50は、トランスミッション40を介して伝達されたバイフューエルエンジン20からの駆動力に応じて回転することによりバイフューエル車両10を走行させる。
【0019】
制御装置70は、バイフューエル車両10全体を制御する。制御装置70は、乗員によるアクセルペダルの操作をはじめとする運転操作、運転状況および各種センサからの情報に基づいて、バイフューエルエンジン20やバイフューエル車両10を構成する各ユニットを制御する。制御装置70は、例えば、ECU(Electrical Control Unit)を用いることができる。なお、制御装置70は、一つのECUで構成したり、複数のECUが協働して構成したりしてもよい。
【0020】
まず、
図2(a)および
図2(b)を参照して、比較例1および比較例2として気体燃料から液体燃料に切替えるときのタイミングチャートについて説明する。
図2(a)は、第2燃料(気体燃料)から第1燃料(液体燃料)に燃料を切替えるときに発電要求しない場合、すなわち発電機30が発電していない場合である比較例1のタイミングチャートを示している。
図2(a)では上から、エンジン駆動トルク、発電要求量、燃料切替え要求、噴射されている燃料のそれぞれ時間変化を示している。
【0021】
図2(a)のタイミングチャートに示すように、燃料切替え要求からタイムラグを経て時間t1から気体燃料が減少するとともに液体燃料が増加するように遷移し、時間t2で液体燃料に切り替わる。このとき、気体燃料が徐々に減少しつつ液体燃料が徐々に増加することから時間t1から時間t2にかけてエンジン駆動トルクが一時的に減少する。
図2(a)では発電機30が発電していないために、エンジン駆動トルクがそのままバイフューエルエンジン20から出力される出力(合計)トルクとなっている。
【0022】
図2(b)は、第2燃料(気体燃料)から第1燃料(液体燃料)に燃料を切替えるときに発電要求している場合、すなわち発電機が発電している場合である比較例2のタイミングチャートを示している。
図2(b)の各タイミングチャートの縦軸の項目は
図2(a)と同一である。
【0023】
図2(b)のタイミングチャートに示すように、時間t1から時間t2にかけてエンジン駆動トルクが一時的に減少するときに発電機30が発電しているために、発電トルクによって出力(合計)トルクが0以下となっている。出力(合計)トルクは、エンジン駆動トルクと発電トルクとを合計したトルクであり、バイフューエルエンジン20からトランスミッション40に出力されるトルクである。ここでは、エンジン駆動トルクが一時的に減少するときに発電機30が発電していることによりバイフューエルエンジン20から減速トルクが出力されるために減速力によりドライバビリティが悪化してしまう。
【0024】
本実施例の制御装置70は、発電機30による発電中に、バイフューエルエンジン20で使用する燃料の切替えが発生する場合であってもドライバビリティが悪化するのを防ぐように、バイフューエル車両10を構成する各ユニットを制御する。
<実施例1>
以下、実施例1に係る、制御装置70による処理の一例について
図3のフローチャートを参照して説明する。
図3のフローチャートは、例えば、制御装置70であるECUがメモリに格納されたプログラムを実行することにより実現される。
図3のフローチャートは、バイフューエルエンジン20が始動しており、発電機30が発電要求に応じてバイフューエルエンジン20の駆動力を使用して発電しているときに実行される。
【0025】
S10では、制御装置70は、バイフューエルエンジン20に供給する燃料を切替える燃料切替え要求があったか否かを判定する。例えば、制御装置70は、一方の燃料の残量がなくなった場合や、エンジン始動後にエンジン回転数が一定となった場合等に、自身が燃料切替え要求を行うことにより燃料切替え要求があったと判定する。また、例えば、バイフューエル車両10が燃料選択スイッチを有する場合には、制御装置70は、乗員による燃料選択スイッチの操作があった場合に燃料切替え要求があったと判定する。燃料切替え要求があった場合にはS12に進み、燃料切替え要求がない場合にはS11に進む。
【0026】
S11では、制御装置70は、通常走行時用の発電モードで発電機30を発電させるように制御する。例えば、制御装置70は、バッテリの充電率に応じて発電機30を発電させるように制御する。制御装置70は、バッテリの充電率が所定の充電率よりも低い場合に発電機30に発電させたり、所定の充電率以上の場合に発電機30に発電させないように制御したりする。
【0027】
S12では、制御装置70は、燃料切替時用の発電モードで発電機30を発電させるように制御する。具体的に、制御装置70は、燃料を切替える前に、発電要求量を燃料の切替え前(現時点)の発電要求量よりも小さくすることにより、発電機30の発電量を燃料の切替え前(現時点)の発電量よりも小さくするように制御する。このとき、制御装置70は、発電機30の発電量を一定にするように制御する。なお、発電機30の発電量を燃料の切替え前(現時点)の発電量よりも小さくするとは、発電量が0である場合も含まれる。
【0028】
S13では、制御装置70は、燃料の切替えを実行する。
具体的に、制御装置70は、現時点で第1燃料を使用している場合には、第1インジェクタ21Aからの第1燃料の噴射を停止するとともに第1燃料用バルブ62Aを閉じる。続いて、制御装置70は第2燃料用バルブ62Bを開くとともに第2インジェクタ21Bから第2燃料を噴射するように制御する。
一方、制御装置70は、現時点で第2燃料を使用している場合には、第2インジェクタ21Bからの第2燃料の噴射を停止するとともに第2燃料用バルブ62Bを閉じる。続いて、制御装置70は第1燃料用バルブ62Aを開くとともに第1インジェクタ21Aから第1燃料を噴射するように制御する。
このとき、エンジン駆動トルクが一時的に低下するものの発電機30の発電量を小さくしているために、エンジン駆動トルクと発電トルクとを合計した出力(合計)トルクの低下を抑制することができる。
【0029】
S14では、制御装置70は、通常走行時用の発電モードで発電機30を発電させるように制御する。ここでは、制御装置70は、発電要求量を燃料の切替え時の発電要求量よりも大きくすることにより、発電機30の発電量を燃料の切替え時の発電量よりも大きくするように制御する。例えば、制御装置70は、バッテリの充電率が所定の充電率よりも低い場合には、燃料切替え前の発電量と同じになるように発電機30を制御する。
S11あるいはS14が終了することにより、
図3のフローチャートの処理が終了する。制御装置70は、バイフューエルエンジン20が始動している間、定期的に
図3のフローチャートの処理を繰り返す。
【0030】
図4は、第2燃料(気体燃料)から第1燃料(液体燃料)に切替えたときの実施例1のタイミングチャートを示している。なお、
図4の各タイミングチャートの縦軸の項目は
図2(a)と同一である。
図4のタイミングチャートに示すように、燃料の切替えを開始する時間t1から燃料の切替えが完了する時間t2までにかけて発電トルクを小さくすることにより出力(合計)トルクが0以上になっている。ここでは、エンジン駆動トルクが発電トルクを下回らないように発電トルクを小さくしている。したがって、減速トルクがバイフューエルエンジン20から出力されることを防止することができることから、ドライバビリティが悪化するのを防ぐことができる。また、発電機30の発電量が小さいながらも発電していることから、発電効率を向上させることができる。
【0031】
また、
図4のタイミングチャートに示すように、燃料の切替えを開始する時間t1よりも前に発電トルクを小さくしている。このように、時間t1よりも前に発電トルクを小さくするのは、燃料切替え要求から燃料の切替えを開始するまでにタイムラグがあるためである。したがって、通常よりも早く燃料の切替えが開始された場合であっても減速トルクがバイフューエルエンジン20から出力されることを防止することができる。
【0032】
また、
図4のタイミングチャートに示すように、燃料の切替えが完了する時間t2から時間を空けて発電トルクを大きくしている。具体的には、燃料の切替え前の発電量に戻している。このように、時間t2から時間を空けて発電トルクを大きくするのは、燃料の切替えが完了して燃焼が安定するまでに時間を要したり、燃料の切替えが完了するまでにタイムラグが生じたりするためである。したがって、時間t2から時間を空けて発電トルクを大きくすることにより、エンジンストールを抑制したり、通常よりも遅く燃料の切替えが完了される場合に減速トルクがバイフューエルエンジン20から出力されることを防止したりすることができる。
このように、実施例1によれば、発電効率を向上させつつ、出力(合計)トルクが負になることを抑制することができる。
【0033】
<実施例2>
次に、実施例2に係る、制御装置70による処理の一例について説明する。
実施例2では、上述したS12において燃料を切替える前に、発電機30の発電量を燃料の切替え前(現時点)の発電量よりも小さくすることに加えて、制御装置70は、燃料を切替える前にエンジン駆動トルクを燃料の切替え前(現時点)のエンジン駆動トルクよりも小さくするように制御する。ここでは、制御装置70は、発電量を小さくするタイミングと、エンジン駆動トルクを小さくするタイミングとを略一致させるとともに、エンジン駆動トルクの減少量を発電トルクの低下分よりも小さくするように制御する。
燃料を切替える前に発電機30の発電量を小さくすると、燃料を切替える前の出力(合計)トルクが大きくなるように変動する。したがって、燃料を切替える前にエンジン駆動トルクを小さくするように制御することにより、燃料を切替える前の出力(合計)トルクの変動を抑制することができる。
【0034】
図5は、第2燃料(気体燃料)から第1燃料(液体燃料)に切替えたときの実施例2のタイミングチャートを示している。なお、
図5の各タイミングチャートの縦軸の項目は
図2(a)と同一である。
図5のタイミングチャートに示すように、燃料の切替えを開始する時間t1から燃料の切替えが完了する時間t2までにかけて発電トルクを小さくすることにより出力(合計)トルクが0以上になっている。
【0035】
また、
図5のタイミングチャートに示すように、燃料の切替えを開始する時間t1よりも前にエンジン駆動トルクを小さくしている。ここでは、エンジン駆動トルクの減少量aが発電トルクの低下分bよりも小さい場合の例を示している。このように、時間t1よりも前にエンジン駆動トルクを小さくすることにより、時間t1よりも前に発電トルクを小さくしたことによる出力(合計)トルクの変動を抑制することができる。
【0036】
なお、
図5のタイミングチャートに示すように、燃料の切替えが完了する時間t2から時間を空けてエンジン駆動トルクを大きくしている。具体的には、燃料の切替え前のエンジン駆動トルクに戻している。このように、時間t2から時間を空けてエンジン駆動トルクを大きくすることにより、時間t2から時間を空けて発電トルクを大きくすることによる出力(合計)トルクの変動を抑制することができる。
【0037】
このように、実施例2によれば、発電効率を向上させつつ、出力(合計)トルクが負になることを抑制することができ、かつ出力(合計)トルクの変動を抑制することができる。
【0038】
<実施例3>
次に、実施例3に係る、制御装置70による処理の一例について説明する。
実施例3では、上述したS12において燃料を切替える前に、発電機30の発電量を0(ゼロ)にすることに加えて、制御装置70は、燃料を切替える前にエンジン駆動トルクを燃料の切替え前(現時点)のエンジン駆動トルクよりも小さくするように制御する。ここでは、制御装置70は、発電量を小さくするタイミングと、エンジン駆動トルクを小さくするタイミングとを略一致させるとともに、エンジン駆動トルクの減少量と発電トルクの低下分とが同じになるように制御する。
燃料を切替える前に発電機30の発電量を0(ゼロ)にすると、燃料を切替える前の出力(合計)トルクが大きくなるように変動する。燃料を切替える前にエンジン駆動トルクを小さくするように制御することにより、燃料を切替える前の出力(合計)トルクの変動を抑制することができる。
【0039】
図6は、第2燃料(気体燃料)から第1燃料(液体燃料)に切替えたときの実施例3のタイミングチャートを示している。なお、
図6の各タイミングチャートの縦軸の項目は
図2(a)と同一である。
図6のタイミングチャートに示すように、燃料の切替えを開始する時間t1から燃料の切替えが完了する時間t2までにかけて発電トルクを0(ゼロ)にすることにより出力(合計)トルクが0以上になっている。
【0040】
また、
図6のタイミングチャートに示すように、燃料の切替えを開始する時間t1よりも前にエンジン駆動トルクを小さくしている。ここでは、エンジン駆動トルクの減少量aと発電トルクの低下分bとが一致している。このように、時間t1よりも前にエンジン駆動トルクを小さくすることにより、時間t1よりも前に発電トルクを0(ゼロ)にしたことによる出力(合計)トルクの変動を抑制することができる。
【0041】
なお、
図6のタイミングチャートに示すように、燃料の切替えが完了する時間t2から時間を空けてエンジン駆動トルクを大きくしている。具体的には、燃料の切替え前のエンジン駆動トルクに戻している。このように、時間t2から時間を空けてエンジン駆動トルクを大きくすることにより、時間t2から時間を空けて発電トルクを大きくすることによる出力(合計)トルクの変動を抑制することができる。
【0042】
このように、実施例3によれば、発電トルクを0(ゼロ)にすることにより出力(合計)トルクが負になることをより抑制することができ、かつ出力(合計)トルクの変動を抑制することができる。
【0043】
<実施例4>
次に、実施例4に係る、制御装置70による処理の一例について説明する。
実施例4では、制御装置70は、燃料の切替え前の発電機30の発電状況に関わらず、燃料を切替えてから切替えが完了するまでは発電量を大きくしないように制御する。
まず、
図7(a)を参照して、比較例3として気体燃料から液体燃料に切替えるときのタイミングチャートについて説明する。
図7(a)は、第2燃料(気体燃料)から第1燃料(液体燃料)に切替えるときに発電要求があった場合、すなわち発電機が発電する場合である比較例3のタイミングチャートを示している。
図7(a)の各タイミングチャートの縦軸の項目は
図2(a)と同一である。
【0044】
図7(a)のタイミングチャートに示すように、時間t1から時間t2にかけてエンジン駆動トルクが一時的に減少するときに、発電要求に応じて発電機が発電して発電量を大きくすると発電トルクによって出力(合計)トルクが0以下となるとともに、出力(合計)トルクの変動幅が大きくなる。このように、エンジン駆動トルクが一時的に減少するときに発電量を大きくすることによりバイフューエルエンジン20から減速トルクが出力されるために減速力によりドライバビリティが悪化してしまう。
【0045】
図7(b)は、第2燃料(気体燃料)から第1燃料(液体燃料)に切替えたときの実施例4のタイミングチャートを示している。なお、
図7(b)の各タイミングチャートの縦軸の項目は
図2(a)と同一である。
図7(b)のタイミングチャートに示すように、燃料の切替えを開始する時間t1から燃料の切替えが完了する時間t2までにかけて、制御装置70は、発電量を大きくしないにように制御することにより、出力(合計)トルクが0以上になっている。ここでは、制御装置70は、発電トルクを0(ゼロ)に維持するように制御する。制御装置70は、燃料を切替えてから切替えが完了するまでに発電量を大きくする必要があっても、切替えが完了する時間t2までは発電量を大きくせずに、時間t2が経過してから発電量を大きくするように制御する。したがって、出力(合計)トルクの変動幅を抑制することができることから、ドライバビリティが悪化するのを防ぐことができる。
【0046】
このように、実施例4によれば、出力(合計)トルクの低下率が大きくなることを防ぐことで出力(合計)トルクが負になることを抑制するとともに、出力(合計)トルクの変動幅を抑制することができる。なお、ここでは、燃料の切替えを開始する時間t1から燃料の切替えが完了する時間t2までにかけて、制御装置70は、発電量を0(ゼロ)に維持するように制御する場合について説明したが、この場合に限られない。制御装置70は、燃料の切替えを開始する時間t1から燃料の切替えが完了する時間t2までにかけて、一定の発電量を維持するように制御してもよい。
【0047】
以上、本発明に係る実施例について説明したが、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
【0048】
上述した実施例におけるタイミングチャートでは、気体燃料から液体燃料に燃料を切替える場合について説明したが、この場合に限られず、液体燃料から気体燃料に燃料を切替える場合であってもよい。
【0049】
上述した実施例では、第1燃料の液体燃料として石油系燃料であるガソリン燃料について説明したが、この場合に限られず、重油、軽油、灯油等の石油系燃料であってもよく、アルコール類であってもよく、油脂類であってもよい。また、上述した実施例では、第2燃料の気体燃料としてCNGについて説明したが、この場合に限られず、LPG等であってもよい。
【0050】
上述した実施例では、発電機30による発電中に、バイフューエルエンジン20で使用する燃料の切替えが実行される場合は、発電量が燃料の切替え前よりも小さくなるように制御される。したがって、燃料の切替え時には発電量を十分に確保することができない可能性があることから、制御装置70は燃料の切替え前に予め発電機30に発電させておきバッテリの充電率を確保するように制御してもよい。具体的に、制御装置70は、気体燃料の残量が閾値以下である場合には燃料の切替えに備えて、発電機30に発電させるように制御することができる。
【0051】
上述した実施例では、発電機30による発電中に、バイフューエルエンジン20で使用する燃料の切替えが実行される場合は、発電量を燃料の切替え前よりも小さくする場合について説明したが、この場合に限られない。エアコン(AC:Air Conditioner)のコンプレッサも、バイフューエルエンジン20の駆動力を使用して動作する。したがって、制御装置70は、発電機30と同様、ACのコンプレッサの動作中に、バイフューエルエンジン20で使用する燃料の切替えが実行される場合は、ACのコンプレッサによる駆動量を燃料の切替え前よりも小さくする(駆動量が0である場合が含まれる)ように制御してもよい。
10:バイフューエル車両(車両) 20:バイフューエルエンジン 21A:第1インジェクタ 21B:第2インジェクタ 30:発電機 40:トランスミッション 50:駆動輪 70:制御装置(発電制御装置) 60A:第1燃料タンク 60B:第2燃料タンク