(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162512
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】紫外線照射装置
(51)【国際特許分類】
A61L 9/20 20060101AFI20241114BHJP
B01J 19/12 20060101ALI20241114BHJP
C02F 1/32 20230101ALI20241114BHJP
【FI】
A61L9/20
B01J19/12 C
C02F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078076
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】河崎 涼太
(72)【発明者】
【氏名】糀屋 睦
【テーマコード(参考)】
4C180
4D037
4G075
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180DD03
4C180HH11
4C180HH19
4C180KK05
4C180LL04
4D037BA18
4D037BB01
4D037BB02
4G075AA03
4G075AA61
4G075AA65
4G075BA04
4G075BB10
4G075CA33
4G075DA02
4G075EB31
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で紫外線照射装置の殺菌能力の向上を図れる。
【解決手段】紫外線照射装置10は、流路の流体の流れが変化する変化部の下流側を流れる流体に向けて紫外光U1、U2、U3を照射する複数の光源1、2、3と、複数の光源1、2、3それぞれについて補正情報を記憶する記憶部と、複数の光源1、2、3それぞれに、駆動電流を供給する電流供給部31、32、33と、を備える。紫外線照射装置10は、複数の光源1、2、3それぞれに、記憶部に記憶された補正情報に応じた駆動電流を供給する第1モードを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路の流体の流れが変化する変化部の下流側を流れる流体に向けて紫外光を照射する複数の光源と、
前記複数の光源それぞれについて補正情報を記憶する記憶部と、
前記複数の光源それぞれに駆動電流を供給する電流供給部と、
を備え、
前記複数の光源それぞれに、前記記憶部に記憶された前記補正情報に応じた駆動電流を供給する第1モードを有する紫外線照射装置。
【請求項2】
前記複数の光源それぞれについて、所定の駆動電流を供給した状態で、流体の非流通時の第1温度と、流体の流通時の第2温度と、を取得する取得部をさらに備え、
前記取得部の取得結果を用いて前記補正情報を更新する第2モードを有する、請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記第1モードと前記第2モードとを切り替える切替部をさらに備える、請求項2に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
予め設定された時期が到来したら前記第2モードで動作する、請求項2に記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
起動時に前記第2モードで動作し、
前記補正情報が更新されたら前記第1モードで動作する、請求項2に記載の紫外線照射装置。
【請求項6】
前記複数の光源それぞれは、前記紫外光を発するLEDと、前記LEDを支持する基板と、前記基板に設けられるヒートシンクと、を含み、
前記取得部は、前記基板に設けられる温度センサを含む、請求項2に記載の紫外線照射装置。
【請求項7】
前記複数の光源は、互いに隙間をあけて第1方向に配列され、
前記複数の光源それぞれは、長手方向が前記第1方向と交差する帯状を有する、請求項2に記載の紫外線照射装置。
【請求項8】
流路の流体の流れが変化する変化部の下流側を流れる流体に向けて紫外光を照射する複数の光源と、
前記複数の光源それぞれに駆動電流を供給する電流供給部と、
前記複数の光源それぞれについて、所定の駆動電流を供給した状態で、流体の非流通時の第1温度と、流体の流通時の第2温度と、を取得する取得部と、
を備え、
前記取得部で取得された前記第1温度および前記第2温度に基づいて前記流体の流速を推定し、推定された前記流体の流速に対応する光出力になるように前記駆動電流を制御する紫外線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路中で流体の殺菌に用いる紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線を用いて気体を殺菌する装置が知られている。例えば、特許文献1には、吸入した気体に紫外線を照射する空気清浄機が記載されている。この装置は、吸入部からサイクロン室へ向かう気体の流れを形成するファンと、サイクロン室内の対象物に紫外線を照射する手段と、ファンの風量を制御する風量制御手段と、風量に応じて紫外線の光量等を変化させる光量制御手段とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流路を流れる流体に紫外線を照射して殺菌する場合に、紫外線LEDの駆動電流を大きくすると殺菌能力は高まるが、流体の流速が遅い箇所で過剰能力になる。また、駆動電流が大きいと紫外線LEDの温度上昇が大きくなり、LEDの寿命が短くなる。寿命を向上させるために、紫外線LEDの駆動電流を減らすと、流体の流速が速い箇所で殺菌能力が不足することがある。
【0005】
本発明の目的は、このような課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で紫外線照射装置の殺菌能力の向上を図れる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の紫外線照射装置は、流路の流体の流れが変化する変化部の下流側を流れる流体に向けて紫外光を照射する複数の光源と、複数の光源それぞれについて補正情報を記憶する記憶部と、複数の光源それぞれに駆動電流を供給する電流供給部と、を備え、複数の光源それぞれに、記憶部に記憶された補正情報に応じた駆動電流を供給する第1モードを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡易な構成で紫外線照射装置の殺菌能力の向上を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る紫外線照射装置を備えた流体殺菌装置の一例を概略的に示す図である。
【
図2】
図1の紫外線照射装置の光源の一例を示す図である。
【
図3】
図1の紫外線照射装置を概略的に示すブロック図である。
【
図4】
図1の紫外線照射装置の第2モードの動作を示すフローチャートである。
【
図5】実施形態に係る紫外線照射装置を備えた別例の流体殺菌装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0010】
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0011】
[実施形態]
図面を参照して、実施形態に係る紫外線照射装置10(以下、「照射装置10」ということがある)の一例を備えた流体殺菌装置100を説明する。
図1は、流体殺菌装置100を示す図である。
図1(A)は、流体殺菌装置100の平面視の断面を示し、
図1(B)は、正面視の流体殺菌装置100を示す。
図2は、実施形態の光源1を示す図であり、
図2(A)は平面視の光源1を示し、
図2(B)は正面視の光源1を示す。
図3は、照射装置10を示すブロック図である。
【0012】
照射装置10は、流体殺菌装置100に好適に組み込まれ、紫外光によって流体殺菌装置100が供給する流体91中の微生物を不活化(殺菌ともいう)する。照射装置10において、流体91は、
図1に矢印で示すように、流路90内を上流から下流に向かって流れる。流路90は画定部材99によって画定される。一例として、この例の画定部材99は角筒状のダクトである。流体91は、流路90を流れる液体、気体、またはこれらの混相体であってもよく、この例では空気である。一例として、流体91は、上流側に設けられた供給源98から流路90を通じて下流側の居室などの所定空間(不図示)に供給される。
【0013】
流路90は、上流側と下流側とで流体91の流れが変化する変化部92を有する。
図1の例では、変化部92は、流路90が上流側部分P1と下流側部分S1との間で屈曲する屈曲部95と、流路90が上流側部分P2よりも下流側部分S2が拡幅される拡幅部96とを含む。また、図示はしないが、変化部には、流路が上流側部分よりも下流側部分が縮幅される縮幅部、流路が分岐する分岐部、流路が合流する合流部が含まれる。
【0014】
照射装置10は、流路90の流体91の流れが変化する変化部92の下流側を流れる流体91に向けて紫外光U1、U2、U3を照射する複数の光源1、2、3を備える。
図1の例では、複数の光源1、2、3は、変化部92よりも下流側に設けられ、下流側に向けて紫外光U1、U2、U3を照射する。特に、光源1は紫外光U1を照射し、光源2は紫外光U2を照射し、光源3は紫外光U3を照射する。一例として、複数の光源1、2、3は、互いに隙間をあけて第1方向に配列される。複数の光源1、2、3は、第1方向に等間隔に配置されてもよい。この例では、第1方向は、流体91の主流方向に直交する直交面(以下、単に「直交面」という)に沿った方向である。
【0015】
照射装置10は、変化部92の上流側と下流側のいずれに配置されてもよいが、この例では、流路90の断面内の流速差が大きい変化部92の下流側部分S2よりも下流側に配置される。照射装置10は、変化部92の下流側部分S2から、当該下流側部分S2の直交面に沿った断面積に応じて算出された距離だけ離れた位置に配置されてもよい。この例では、照射装置10は、下流側部分S2から、前記断面積の平方根として算出される算出距離の50%以上下流側に配置される。この場合、変化部92で発生するカルマン渦による流速の不安定化の影響が殆ど無視できることが示唆されている。
【0016】
変化部92では、流体の流速が偏り、流体の流路断面内の流速分布(以下、単に「流速分布」という)が不均一になる。換言すると、変化部92の特に下流側には、流速が遅い低速領域と、流速が低速領域よりも速い高速領域と、流速が低速領域よりも速く高速領域よりも遅い中間領域とが生じる。なお、これらの領域は便宜的に区切られたもので明確な境界はなく、流速は各領域間で徐々に変化する。
図1の例では、湾曲の外側が内側よりも流速が速く、高速領域は湾曲の外側に形成され、低速領域は湾曲の内側に形成される。
【0017】
流速分布が不均一な変化部92の下流側部分S2よりも下流側を流れる流体91に、複数の光源1、2、3が紫外光U1、U2、U3を流路内に照射すると、流速と紫外光U1、U2、U3の殺菌能力との間に不釣り合いな状態(ミスマッチ)が生じる。複数の光源1、2、3の駆動電流I1、I2、I3が同じ場合、低速領域で殺菌能力が過剰になり、高速領域で殺菌能力が不足する。高速領域での殺菌能力を確保するために、複数の光源1、2、3の駆動電流I1、I2、I3を大きくすると、低速領域で殺菌能力が一層過剰になる。また、駆動電流I1、I2、I3が大きいと、光源の温度上昇が大きくなり、光源の寿命が短くなる。
【0018】
そこで、照射装置10は、複数の光源1、2、3それぞれについて補正情報Jを記憶する記憶部54と、複数の光源1、2、3それぞれに、駆動電流I1、I2、I3を供給する電流供給部31、32、33と、を備え、複数の光源1、2、3それぞれに、記憶部54に記憶された補正情報Jに応じた駆動電流I1、I2、I3を供給する第1モードを有する。電流供給部31は光源1に駆動電流I1を供給し、電流供給部32は光源2に駆動電流I2を供給し、電流供給部33は光源3に駆動電流I3を供給する。
【0019】
実施形態では、補正情報Jは、各光源に供給する駆動電流I1、I2、I3の大きさである電流値である。一例として、補正情報Jは、高速領域に配置される光源1について120A、低速領域に配置される光源3について80A、中間領域に配置される光源2について100Aとして設定される。このように、第1モードでは、照射装置10は、複数の光源1、2、3それぞれに、予め記憶部54に記憶された補正情報Jに応じた駆動電流I1、I2、I3を供給する。これにより、紫外光U1の強度は紫外光U2の強度よりも高くなり、紫外光U2の強度は紫外光U3の強度よりも高くなる。この結果、殺菌能力が不足しやすい高速領域に最も強度の高い紫外光U1を照射し、殺菌能力が過剰になり易い低速領域に最も強度の低い紫外光U3を照射することができる。この場合、流速と紫外光U1、U2、U3の殺菌能力との間のミスマッチを低減できる。
【0020】
図1、
図3に示すように、照射装置10は、光源1、2、3と、取得部4と、情報処理部5と、電流供給部31、32、33と、切替入力部45と、を含む。取得部4は、光源1、2、3それぞれの温度を取得する温度センサ41、42、43を含む。温度センサ41は光源1の温度を、温度センサ42は光源2の温度を、温度センサ43は光源3の温度を検知する。情報処理部5は、取得部4の取得結果および切替入力部45の提供情報に基づいて電流供給部31、32、33を制御する。電流供給部31、32、33は、情報処理部5の制御に基づいて光源1、2、3それぞれに駆動電流I1、I2、I3を供給する。切替入力部45は、後述する第1モードと第2モードとを切り替えるユーザ操作の入力を受け入れる。
【0021】
図2も参照して、光源1、2、3を説明する。光源2、3は、光源1と同様の構成を有している。ここでは、光源1を説明するが、この説明は光源2、3にも適用できる。
【0022】
光源1は、紫外光を発するLED11と、LED11を支持する基板12と、基板12に設けられるヒートシンク14と、を含む。基板12は、長手方向が第2方向に向けられた細長い長方形の形状を有する。第2方向は、流体91の主流方向に直交する直交面に沿って第1方向と交差する方向である。特に、この例の第2方向は、第1方向と直交する方向である。基板12の主面は直交面に平行である。
【0023】
基板12の下流側の実装面に複数(この例では10個)のLED11が搭載される。複数のLED11は、基板12の実装面上にアレイ状に並べられ、下流側に向けて紫外光を照射するように配置される。複数のLED11は、実装面上に等間隔となるように二次元アレイ状(2行×5列)に配置される。光源1は、複数のLED11のそれぞれから出力される紫外光の照射方向を軸方向に平行化するためのリフレクタまたはレンズをさらに備えてもよい。一例として、複数のLED11は直列接続されて、1つの電流供給部によって一体的に電流が供給される。
【0024】
複数のLED11は、例えば、殺菌効率の高い波長である260nm~290nm付近の紫外光を発するよう構成される。複数のLED11は、画定部材99の内側に設けられる光触媒(例えば、酸化チタン)を活性化する効率の高い波長を有する紫外光を発するよう構成されてもよい。複数のLED11は、例えば、酸化チタンの活性化効率の高い280nm~380nm程度の紫外光を発するよう構成されてもよい。複数のLED11は、殺菌効率の高い260nm~290nm程度の紫外光を発するLEDと、光触媒の活性化効率の高い300nm~380nm程度の紫外光を発するLEDとを含んでもよい。
【0025】
ヒートシンク14は、基板12の上流側の面(実装面と反対側の面)に設けられる。ヒートシンク14は、流体91に触れることによって冷却される。LED11で生じた熱量は、基板12を介してヒートシンク14に伝達され、ヒートシンク14に触れる流体91に放散される。これにより、LED11の温度上昇が抑制される。
【0026】
温度センサ41は、基板12の実装面上に配置される。温度センサ41は、公知の原理に基づいて温度を検知可能なものであればよく、この例ではサーミスタ(不図示)を含む。温度センサ41は、サーミスタの抵抗値に基づいて光源1の温度を検知する。温度センサ41の検知結果は情報処理部5に提供される。
【0027】
情報処理部5を説明する。
図3に示す情報処理部5の各機能ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのプロセッサ、CPU、メモリをはじめとする素子や電子回路、機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0028】
情報処理部5は、出力部51、52、53と、記憶部54と、推定部55と、演算部56と、入力部57と、切替部58と、通信部59とを主に含む。これらの各機能ブロックは、データバス等の内部情報伝達手段(不図示)を介して相互に情報連携することができる。
【0029】
情報の流れに沿って説明する。入力部57は、温度センサ41、42、43の検知結果と、切替入力部45の検知結果とを受け入れる。推定部55は、後述する第2モードにおいて、温度センサ41、42、43で検知された第1温度と第2温度とに基づいて各光源における流体91の流速を推定する。演算部56は、推定部55で推定された各光源におけるの流速に応じて補正情報Jを更新するための更新情報Kを算出する。一例として、更新情報Kは、補正情報Jと同様に、各光源に供給する駆動電流I1、I2、I3の電流値である。
【0030】
切替部58は、切替入力部45の検知結果に基づいて、第1モードと第2モードとを切り替える。実施形態では、切替部58は、予め設定された時期が到来したら第2モードに切り替える。この時期は、1時間毎、1日毎、1月毎、1年毎等の定期的な時期であってもよいし、1日の中で始業時間等の所定の時刻であってもよい。実施形態では、切替部58は、照射装置10が起動されたときに第2モードに切り替え、第2モードで補正情報Jが更新されたら第1モードに切り替える。この結果、照射装置10は、照射装置10の起動時に第2モードで動作し、補正情報Jが更新されたら第1モードで動作する。
【0031】
通信部59は、照射装置10からの情報を外部(例えば、流体殺菌装置100)に送信し、外部からの情報を受信する。特に、通信部59は、供給源98からの流体91の供給および停止を制御するための制御信号を流体殺菌装置100に送信できる。記憶部54は、予め設定された補正情報Jまたは更新された補正情報Jを記憶する。記憶部54は、入力部57に入力された情報、および推定部55の推定結果を記憶できる。
【0032】
出力部51、52、53は、電流供給部31、32、33が補正情報Jに基づく大きさの駆動電流I1、I2、I3を供給するように、電流指示信号を電流供給部31、32、33に出力する。特に、出力部51は、電流供給部31が駆動電流I1を供給するための電流指示信号を出力し、出力部52は、電流供給部32が駆動電流I2を供給するための電流指示信号を出力し、出力部53は、電流供給部33が駆動電流I3を供給するための電流指示信号を出力する。電流指示信号は、アナログ信号、デジタル信号、PWM信号等であってもよい。
【0033】
電流供給部31、32、33は、前述したように、情報処理部5の制御に基づいて光源1、2、3それぞれに駆動電流I1、I2、I3を供給する。一例として、電流供給部31、32、33は、情報処理部5の出力部51、52、53の電流指示信号に応じた大きさの駆動電流I1、I2、I3を供給する電流源であってもよい。この電流源はトランジスタなどの半導体素子等を用いて構成できる。
【0034】
切替入力部45は、第1モードと第2モードとを切り替えるユーザの操作を検知し、その検知結果を情報処理部5に提供する。一例として、切替入力部45は、ユーザがON状態とOFF状態を切り替え可能なスイッチ(不図示)を含んでもよい。
【0035】
このように構成された照射装置10は、取得部4で取得された第1温度および第2温度に基づいて流体91の流速を推定し、推定された流体91の流速に対応する光出力になるように光源1、2、3それぞれの駆動電流を制御することができる。
【0036】
図4を参照して、照射装置10の第2モードの動作の例示的なプロセスS110を説明する。
図4は、プロセスS110を説明するフローチャートである。照射装置10は、所定の場合に第2モードの動作を実行する。例えば、プロセスS110は、ユーザが切替入力部45に第2モードに切り替える操作を入力したときに開始されてもよい。以下の例では、プロセスS110は、予め設定された時期(始業時等の所定のタイミング)が到来した場合に第2モードの動作を実行する。
【0037】
プロセスS110が開始されると、照射装置10は、複数の光源1、2、3それぞれについて、所定の駆動電流I1、I2、I3を供給する(ステップS111)。このステップでは、所定の駆動電流I1、I2、I3の電流値は同じであってもよい。
【0038】
ステップS111を実行したら、照射装置10は、流体91の流通を停止させる(ステップS112)。このステップでは、供給源98からの流体91の供給を停止させるための制御信号を通信部59から流体殺菌装置100に送信する。この結果、供給源98は停止して流路90の流体91の流通も停止する。つまり、流路90は無風状態になる。
【0039】
ステップS112を実行したら、照射装置10は、複数の光源1、2、3それぞれについて、流体91の非流通時の第1温度を取得する(ステップS113)。このステップでは、入力部57は、取得部4の温度センサ41、42、43の検知結果を第1温度として受け付ける。記憶部54は、複数の光源1、2、3それぞれについて、第1温度を記憶する。なお、流体91の供給を停止させた後、温度が安定すると考えられる所定の期間(例えば、1分、10分、1時間など)経過後に第1温度を取得することが望ましい。
【0040】
ステップS113を実行したら、照射装置10は、流体91の流通を開始させる(ステップS114)。このステップでは、供給源98からの流体91を供給させるための制御信号を通信部59から流体殺菌装置100に送信する。この結果、供給源98が稼働して流体91が流路90に流通する。
【0041】
ステップS114を実行したら、照射装置10は、複数の光源1、2、3それぞれについて、流体91の流通時の第2温度を取得する(ステップS115)。このステップでは、入力部57は、取得部4の温度センサ41、42、43の検知結果を第2温度として受け付ける。なお、流体91を供給させた後、温度が安定すると考えられる所定の期間(例えば、1分、10分、1時間など)経過後に第2温度を取得することが望ましい。
【0042】
ステップS115を実行したら、照射装置10は、複数の光源1、2、3それぞれについて、第1温度と第2温度とを用いて流速を推定する(ステップS116)。このステップでは、推定部55は、所定の計算式に第1温度と第2温度とを代入して流速を推定する。
【0043】
ステップS116を実行したら、照射装置10は、複数の光源1、2、3それぞれについて、推定された流速に基づいて更新情報Kを算出する(ステップS117)。このステップでは、演算部56は、所定の計算式に流速を代入して更新情報Kを算出する。更新情報Kは、補正情報Jと同様に、複数の光源1、2、3それぞれに供給する駆動電流I1、I2、I3の電流値である。
【0044】
ステップS117を実行したら、照射装置10は、更新情報Kを用いて補正情報Jを更新する(ステップS118)。このステップでは、記憶部54に記憶されている補正情報Jは、更新情報Kに書き換えられて新たな補正情報Jとして記憶される。
【0045】
ステップS118を実行したら、照射装置10は、第1モードに切り替える(ステップS119)。このステップでは、切替部58は、第2モードから第1モードに切り替える。
【0046】
ステップS119を実行したら、照射装置10は、更新された補正情報Jを用いて第1モードで動作する(ステップS120)。このステップでは、照射装置10は、複数の光源1、2、3それぞれに、記憶部54に新たに記憶された補正情報Jに応じた駆動電流I1、I2、I3を供給する。
【0047】
ステップS120を実行したら、プロセスS110は終了する。上記の各ステップはあくまでも一例であり、各種の変更が可能である。
【0048】
次に、
図5を参照して、照射装置10を備えた別例の流体殺菌装置200を説明する。
図5は、流体殺菌装置200を概略的に示す平面断面図である。流体殺菌装置200では、流路90は、変化部94として、流路90が上流側部分P3よりも下流側部分S3が拡幅される拡幅部97を有する。流体殺菌装置200は、流体殺菌装置100に設けられたものと同じ照射装置10が設けられる。したがって、重複する説明を省き、相違点を重点的に説明する。
【0049】
流体殺菌装置200では、拡幅部97の下流側部分S3において、第1方向の両端付近で相対的に流速が遅く、第1方向の中央付近で相対的に流速が速い。このため、流速と紫外光U1、U2、U3の殺菌能力との間のミスマッチを低減する観点から、中央に配置される光源2の紫外光U2の強度は、両端側に配置される光源1、3の紫外光U1、U3の強度よりも高く設定されることが望ましい。そこで、照射装置10の補正情報Jは、紫外光U2の強度が紫外光U1、U3の強度よりも高くなるように設定されている。
【0050】
流体殺菌装置200において、照射装置10は、プロセスS110に示す第2モードの動作および第1モードの動作を実行する。この結果、流速と紫外光U1、U2、U3の殺菌能力との間のミスマッチが低減される。
【0051】
以下、本発明のいくつかの態様について説明する。
【0052】
本発明の第1の態様は、流路の流体の流れが変化する変化部の下流側を流れる流体に向けて紫外光を照射する複数の光源と、前記複数の光源それぞれについて補正情報を記憶する記憶部と、前記複数の光源それぞれに駆動電流を供給する電流供給部と、を備え、前記複数の光源それぞれに、前記記憶部に記憶された前記補正情報に応じた駆動電流を供給する第1モードを有する紫外線照射装置である。
【0053】
第1の態様によれば、複数の光源それぞれに補正情報に応じた駆動電流が供給されるので、補正情報を流速に対応させて設定できる。これにより複数の光源それぞれが発する紫外光の強度を流速に対応させることができる。この結果、各光源における流速と紫外光の殺菌能力とのミスマッチが低減される。
【0054】
本発明の第2の態様は、前記複数の光源それぞれについて、所定の駆動電流を供給した状態で、流体の非流通時の第1温度と、流体の流通時の第2温度と、を取得する取得部をさらに備え、前記取得部の取得結果を用いて前記補正情報を更新する第2モードを有する、第1の態様に記載の紫外線照射装置である。第2の態様によれば、第1温度と第2温度を用いて、最新の流速に対応する補正情報に更新できる。第1モードでは、更新された補正情報に応じた駆動電流を各光源に供給できる。この結果、各光源における流速と紫外光の殺菌能力とのミスマッチが一層低減される。
【0055】
本発明の第3の態様は、前記第1モードと前記第2モードとを切り替える切替部をさらに備える、第2の態様に記載の紫外線照射装置である。第3の態様によれば、通常運転時には第1モードで動作させ、補正情報を更新すべきときに第2モードに切り替えることができる。
【0056】
本発明の第4の態様は、予め設定された時期が到来したら前記第2モードで動作する、第2または第3の態様に記載の紫外線照射装置である。第4の態様によれば、予定された時期に補正情報を更新することができる。計画的に補正情報を更新できる。
【0057】
本発明の第5の態様は、起動時に前記第2モードで動作し、前記補正情報が更新されたら前記第1モードで動作する、第2から第4のいずれか一つの態様に記載の紫外線照射装置である。第5の態様によれば、起動時に第2モードで補正情報が更新され、自動的に第1モードに移行し、更新された補正情報で通常運転することができる。更新忘れを減らすことができる。
【0058】
本発明の第6の態様は、前記複数の光源それぞれは、前記紫外光を発するLEDと、前記LEDを支持する基板と、前記基板に設けられるヒートシンクと、を含み、前記取得部は、前記基板に設けられる温度センサを含む、第1から第5のいずれか一つの態様に記載の紫外線照射装置である。第6の態様によれば、LED、温度センサおよびヒートシンクが基板に一体化されるので、光源のユニット化が容易になる。ユニット化された光源を用いることにより、紫外線照射装置の組立工数を削減できる。
【0059】
本発明の第7の態様は、前記複数の光源は、互いに隙間をあけて第1方向に配列され、前記複数の光源それぞれは、長手方向が前記第1方向と交差する帯状を有する、第1から第6のいずれか一つの態様に記載の紫外線照射装置である。第7の態様によれば、複数の光源が隙間をあけて配置されるので、この隙間を流体が流れることができる。流体が帯状光源に効率よく接触し、温度上昇を抑制するため、光源の長寿命化を図れる。
【0060】
本発明の第8の態様は、紫外線照射装置である。この紫外線照射装置は、流路の流体の流れが変化する変化部の下流側を流れる流体に向けて紫外光を照射する複数の光源と、前記複数の光源それぞれに駆動電流を供給する電流供給部と、前記複数の光源それぞれについて、所定の駆動電流を供給した状態で、流体の非流通時の第1温度と、流体の流通時の第2温度と、を取得する取得部と、を備え、前記取得部で取得された前記第1温度および前記第2温度に基づいて前記流体の流速を推定し、推定された前記流体の流速に対応する光出力になるように前記駆動電流を制御する紫外線照射装置である。
【0061】
第8の態様によれば、温度から推定された流速に対応する光出力になるように複数の光源それぞれが制御されるので、複数の光源それぞれの光出力を流速に対応させることが可能になり、各光源における流速と紫外光の殺菌能力とのミスマッチが低減される。
【0062】
以上、実施形態をもとに本発明を説明した。これらの実施形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求の範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【0063】
(変形例)
以下、変形例を説明する。変形例の図面および説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0064】
実施形態の説明では、紫外線照射装置10が平面視で流体の流れが変化する変化部に適用される例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、紫外線照射装置は、側面視で流体の流れが変化する変化部にも適用できるし、流体の流れが3次元的に変化する変化部にも適用できる。
【0065】
実施形態の説明では、照射装置10の光源数が3である例を示したが、照射装置の光源数は2または4以上であってもよい。
【0066】
実施形態の説明では、補正情報Jが各光源に供給する駆動電流I1、I2、I3の電流値である例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、補正情報は、各光源の駆動電流の大小関係を規定する数値であってもよい。例えば、補正情報は、各光源の駆動電流の大小関係を規定する係数であり、この係数を基準電流に乗じて各光源の駆動電流を算出してもよい。この基準電流は、気温、風量、その他のパラメータに応じて変化させてもよい。
【0067】
実施形態の説明では、第2モードで第2温度を取得する際の流体91の流通量は、通常運転時の流通量と同じである例を示したが、第2温度を取得する際の流体の流通量は、通常運転時の流通量よりも少なくてもよいし、多くてもよい。
【0068】
実施形態の説明では、第2モードで第1温度、第2温度を所定の計算式に代入して流速を推定する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1温度、第2温度、および流速の関係について予め作成されたルックアップテーブルを用いてテーブル処理することによって流速を推定してもよい。例えば、予め、第1温度、第2温度および流速の関係について機械学習させた機械学習モデルを作成し、この機械学習モデルを用いて第1温度、第2温度から流速を推定してもよい。
【0069】
実施形態の説明では、第2モードで所定の計算式に流速を代入して更新情報Kを算出する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、流速と更新情報の関係について予め作成されたルックアップテーブルを用いてテーブル処理することによって更新情報を推定してもよい。例えば、流速と更新情報の関係について機械学習させた機械学習モデルを作成し、この機械学習モデルを用いて流速から更新情報を算出してもよい。
【0070】
実施形態の説明では、第2モードで第1温度、第2温度から流速を推定し、推定された流速から更新情報を求める例を示したが、更新情報は、第1温度、第2温度から直接特定されてもよい。
【0071】
これらの各変形例は、実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0072】
上述した各実施形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0073】
1、2、3 光源、 4 取得部、 10 紫外線照射装置、 11 LED、 12 基板、 14 ヒートシンク、 31、32、33 電流供給部、 41、42、43 温度センサ、 54 記憶部、 58 切替部、 90 流路、 91 流体、 92、94 変化部。