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  • 特開-トナー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162513
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20241114BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20241114BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G03G9/087 331
G03G9/08 381
G03G9/097 374
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078077
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】大喜多 正希
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA09
2H500BA03
2H500CA06
2H500EA32B
2H500EA34B
2H500EA38B
2H500EA39B
2H500EA41B
2H500EA42B
2H500EA44B
2H500EA52A
(57)【要約】
【課題】低温定着性及び耐熱保存性に優れると共に、発色性に優れる画像を形成できるトナーを提供する。
【解決手段】トナーは、トナー粒子を含む。前記トナー粒子は、トナー母粒子と、前記トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備える。前記トナー母粒子は、粉砕トナー母粒子である。前記トナー母粒子の体積中位径は、5.20μm以上6.50μm以下である。前記トナー母粒子は、結着樹脂を含有する。前記結着樹脂におけるテトラヒドロフラン不溶成分の含有割合は、4.50質量%以上16.00質量%以下である。出力200W、周波数28kHzの超音波処理を1分間行った後の前記結着樹脂における前記テトラヒドロフラン不溶成分の含有割合は、2.20質量%以下である。赤外分光分析で得られる前記トナー粒子の赤外吸収スペクトルにおいて、波数701cm-1上に現れるピークの高さは、0.0070A以上0.0300A以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー粒子を含むトナーであって、
前記トナー粒子は、トナー母粒子と、前記トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備え、
前記トナー母粒子は、粉砕トナー母粒子であり、
前記トナー母粒子の体積中位径は、5.20μm以上6.50μm以下であり、
前記トナー母粒子は、結着樹脂を含有し、
前記結着樹脂におけるテトラヒドロフラン不溶成分の含有割合は、4.50質量%以上16.00質量%以下であり、
出力200W、周波数28kHzの超音波処理を1分間行った後の前記結着樹脂における前記テトラヒドロフラン不溶成分の含有割合は、2.20質量%以下であり、
赤外分光分析で得られる前記トナー粒子の赤外吸収スペクトルにおいて、波数701cm-1上に現れるピークの高さは、0.0070A以上0.0300A以下である、トナー。
【請求項2】
前記トナー粒子に含まれる樹脂の質量平均分子量は、85000以上130000以下である、請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記結着樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂を含み、
前記非晶性ポリエステル樹脂は、3価以上のカルボン酸に由来する第1繰り返し単位を有し、
前記非晶性ポリエステル樹脂の有する全繰り返し単位において、前記第1繰り返し単位の含有割合は、1.5質量%以上7.5質量%以下である、請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
前記非晶性ポリエステル樹脂は、ビスフェノール化合物に由来する第2繰り返し単位と、2価カルボン酸に由来する第3繰り返し単位とを更に有する、請求項3に記載のトナー。
【請求項5】
前記結着樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂を含み、
前記結晶性ポリエステル樹脂は、スチレン化合物に由来する第4繰り返し単位を有し、
前記結晶性ポリエステル樹脂の有する全繰り返し単位において、前記第4繰り返し単位の含有割合は、0.5質量%以上8.0質量%以下である、請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項6】
前記結晶性ポリエステル樹脂は、ジオール化合物に由来する第5繰り返し単位と、2価カルボン酸に由来する第6繰り返し単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する第7繰り返し単位とを更に有する、請求項5に記載のトナー。
【請求項7】
前記結晶性ポリエステル樹脂の質量平均分子量は、20000以上60000以下である、請求項5に記載のトナー。
【請求項8】
前記結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、2.0mgKOH/g以上3.7mgKOH/g以下である、請求項5に記載のトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置には、例えば、正帯電性を有するトナー粒子を含むトナーが用いられる。トナーは、例えば、低温定着性及び耐熱保存性に優れると共に、発色性に優れる画像を形成できることが要求される。このような要求に対して、例えば、テトラヒドロフラン(THF)不溶成分の量が一定範囲であるトナー粒子を有する現像用トナーが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-220569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のトナーによっても、優れた低温定着性及び耐熱保存性を発揮しつつ、発色性に優れる画像を形成することは困難である。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、低温定着性及び耐熱保存性に優れると共に、発色性に優れる画像を形成できるトナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るトナーは、トナー粒子を含む。前記トナー粒子は、トナー母粒子と、前記トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備える。前記トナー母粒子は、粉砕トナー母粒子である。前記トナー母粒子の体積中位径は、5.20μm以上6.50μm以下である。前記トナー母粒子は、結着樹脂を含有する。前記結着樹脂におけるテトラヒドロフラン不溶成分の含有割合は、4.50質量%以上16.00質量%以下である。出力200W、周波数28kHzの超音波処理を1分間行った後の前記結着樹脂における前記テトラヒドロフラン不溶成分の含有割合は、2.20質量%以下である。赤外分光分析で得られる前記トナー粒子の赤外吸収スペクトルにおいて、波数701cm-1上に現れるピークの高さは、0.0070A以上0.0300A以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るトナーは、低温定着性及び耐熱保存性に優れると共に、発色性に優れる画像を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】トナー粒子の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、トナーは、トナー粒子の集合体(例えば粉体)である。外添剤は、外添剤粒子の集合体(例えば粉体)である。粉体(より具体的には、トナー粒子の粉体、外添剤粒子の粉体、磁性粉等)に関する評価結果(形状、物性等を示す値)は、何ら規定していなければ、粉体から粒子を相当数選び取って、それら粒子の各々について測定した値の個数平均である。
【0010】
粉体の体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(例えば、株式会社堀場製作所製「LA-920V2」又はベックマン・コールター株式会社製の「コールターカウンターマルチサイザー3」)を用いて測定した値である。
【0011】
粉体の個数平均一次粒子径は、何ら規定していなければ、走査型電子顕微鏡を用いて測定した一次粒子の円相当径(ヘイウッド径:一次粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の個数平均値である。粉体の個数平均一次粒子径は、例えば100個の一次粒子の円相当径の個数平均値である。なお、粒子の個数平均一次粒子径は、特に断りがない限り、粉体中の粒子の個数平均一次粒子径を指す。
【0012】
帯電性は、何ら規定していなければ、摩擦帯電における帯電性を意味する。例えば、日本画像学会から提供される標準キャリア(負帯電極性トナー用標準キャリア:N-01、正帯電極性トナー用標準キャリア:P-01)と測定対象(例えばトナー)とを混ぜて攪拌することで、測定対象を摩擦帯電させる。摩擦帯電させる前と後とでそれぞれ、例えば吸引式小型帯電量測定装置(トレック社製「MODEL 212HS」)で測定対象の帯電量を測定し、摩擦帯電の前後での帯電量の変化が大きい測定対象ほど帯電性が強いことを示す。
【0013】
軟化点(Tm)は、何ら規定していなければ、高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT-500D」)を用いて測定した値である。高化式フローテスターで測定されたS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)において、「(ベースラインストローク値+最大ストローク値)/2」となる温度が、Tm(軟化点)に相当する。
【0014】
融点(Mp)の測定値は、何ら規定していなければ、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC-6220」)を用いて測定される吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)中の最大吸熱ピークの温度である。この吸熱ピークは、結晶化部位の融解に起因して現れる。
【0015】
ガラス転移点(Tg)は、何ら規定していなければ、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC-6220」)を用いて「JIS(日本産業規格)K7121-2012」に従って測定した値である。示差走査熱量計で測定された吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)において、ガラス転移に起因する変曲点の温度(詳しくは、ベースラインの外挿線と立ち下がりラインの外挿線との交点の温度)が、Tg(ガラス転移点)に相当する。
【0016】
酸価及び水酸基価の各々の測定値は、何ら規定していなければ、「JIS(日本産業規格)K0070-1992」に従い測定した値である。
【0017】
材料の「主成分」は、何ら規定していなければ、質量基準で、その材料に最も多く含まれる成分を意味する。
【0018】
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰り返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
【0019】
<トナー>
以下、本発明の実施形態に係るトナーについて説明する。本発明のトナーは、トナー粒子を含む。トナー粒子は、トナー母粒子と、トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備える。トナー母粒子は、粉砕トナー母粒子である。トナー母粒子の体積中位径は、5.20μm以上6.50μm以下である。トナー母粒子は、結着樹脂を含有する。結着樹脂におけるテトラヒドロフラン不溶成分の含有割合は、4.50質量%以上16.00質量%以下である。出力200W、周波数28kHzの超音波処理を1分間行った後の結着樹脂におけるテトラヒドロフラン不溶成分の含有割合は、2.20質量%以下である。赤外分光分析で得られるトナー粒子の赤外吸収スペクトルにおいて、波数701cm-1上に現れるピークの高さは、0.0070A以上0.0300A以下である。
【0020】
本発明のトナーは、静電潜像の現像に好適に用いることができる。本発明のトナーは、1成分現像剤として使用してもよい。本発明のトナーは、混合装置(例えば、ボウルミル)を用いてキャリアと混合して2成分現像剤として使用してもよい。本発明のトナーは、1成分現像剤として使用する場合、現像装置内において現像スリーブ又はトナー帯電部材と摩擦することで帯電(例えば、正に帯電)する。トナー帯電部材としては、例えば、ドクターブレードが挙げられる。本発明のトナーは、2成分現像剤を構成する場合、現像装置内においてキャリアと摩擦することで帯電(例えば、正に帯電)する。
【0021】
[トナー粒子]
図1は、本発明のトナーに含まれるトナー粒子1の一例を示す。図1に示すトナー粒子1は、トナー母粒子2と、トナー母粒子2の表面に付着した外添剤3とを備える。外添剤3は、シリカ粒子4と、シリカ粒子4以外のその他の外添剤粒子5とを含む。
【0022】
以上、図1を例として、トナー粒子の一例であるトナー粒子1を説明した。但し、本発明のトナーの含むトナー粒子は、図1に示すトナー粒子1とは異なる構造を有していてもよい。具体的には、本発明のトナーにおいて、外添剤は、シリカ粒子4のみを含んでもよく、その他の外添剤粒子5のみを含んでもよい。また、トナー粒子は、シェル層を備えるトナー粒子(以下、カプセルトナー粒子と記載することがある)であってもよい。カプセルトナー粒子では、トナー母粒子が、例えば結着樹脂を含有するトナーコアと、トナーコアの表面を覆うシェル層とを備える。
【0023】
本発明のトナーは、上述の構成を備えることにより、低温定着性及び耐熱保存性に優れると共に、発色性に優れる画像を形成できる。本発明のトナーが上述の効果を発揮できる理由は以下のように推察される。本発明のトナーは、結着樹脂にテトラヒドロフラン不溶成分が一定量含有される。このテトラヒドロフラン不溶成分は、分子量が極めて高く、かつ分子内で絡まった構造を有する樹脂である。テトラヒドロフラン不溶成分は、トナー粒子に適度な弾性を付与し、トナー粒子同士の凝集を抑制する。その結果、テトラヒドロフラン不溶成分は、本発明のトナーに耐熱保存性を付与する。
【0024】
一方、弾性の高いトナー粒子を含む公知のトナーは、定着時にトナー粒子が十分に溶融せず、低温定着性が不十分となる傾向がある。また、このような公知のトナーは、定着工程において、溶融したトナー粒子で記録媒体の表面を十分に被覆(隠蔽)できず、形成される画像の発色性が不十分となる傾向がある。これに対して、本発明のトナーに含まれるテトラヒドロフラン不溶成分の少なくとも一部は、外部からエネルギー(例えば、熱又は超音波処理)が加わると、テトラヒドロフランに可溶化すると共に弾性が低下する。これは、テトラヒドロフラン不溶成分の分子内での絡まり方が比較的単純であることに起因する。つまり、分子内で複雑に絡まっている樹脂は、超音波処理を行っても構造がほとんど変化せず、テトラヒドロフランに対する可溶性及び弾性が変化しない。これに対して、分子内で比較的単純な絡まり方をしている樹脂は、外部からエネルギーを加えると絡まりが解れ、テトラヒドロフランに可溶化すると共に弾性が低下する。このため、本発明のトナーにおいて、結着樹脂におけるテトラヒドロフラン不溶成分の含有割合は、通常状態(超音波処理前)では4.50質量%以上であるが、超音波処理後は2.20質量%以下に低下する。なお、実際の画像形成では、トナー粒子を定着させる際の定着処理(加熱処理)でテトラヒドロフラン不溶成分の可溶化及び弾性の低下が発生する。このように、本発明のトナーは、通常状態(保存時)では多量のテトラヒドロフラン不溶成分の存在によってトナー粒子の弾性が高いが、定着時にはテトラヒドロフラン不溶成分が減少してトナー粒子の弾性が低下する。その結果、本発明のトナーは、耐熱保存性と、低温定着性と、形成される画像の発色性とを満たすことができる。
【0025】
また、本発明のトナーは、トナー母粒子の体積中位径が最適化されているため、記録媒体の表面をトナー粒子で十分に隠蔽し、発色性に優れる画像を形成できる。更に、本発明のトナーは、赤外分光分析で得られるトナー粒子の赤外吸収スペクトルにおいて、波数701cm-1上に現れるピークの高さが0.0070A以上0.0300A以下である。本発明のトナーは、上述のピークの高さが適切な範囲(0.0070A以上0.0300A以下)であるため、トナー粒子に適度な帯電性を付与しつつ、耐熱保存性の低下を抑制できる。これらの結果、本発明のトナーは、低温定着性及び耐熱保存性に優れると共に、発色性に優れる画像を形成できる。
【0026】
以下、本発明のトナーの詳細を更に説明する。なお、以下に記載する各成分については、特に断りのない限り、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
[トナー粒子]
トナー粒子は、トナー母粒子と、トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備える。赤外分光分析で得られるトナー粒子の赤外吸収スペクトルにおいて、波数701cm-1上に現れるピークの高さは、0.0070A以上0.0300A以下であり、0.0110A以上0.0200A以下が好ましく、0.0150A以上0.0200A以下がより好ましい。上述のピークの高さを0.0070A以上とすることで、本発明のトナーに良好な現像性が付与され、その結果、発色性に優れる画像を形成できる。上述のピークの高さを0.0300A以下とすることで、本発明のトナーの耐熱保存性が最適化される。なお、赤外分光分析は、温度25℃において、実施例に記載の方法又はこれに準拠した方法により実施できる。
【0028】
ここで、波数701cm-1上に現れるピークの高さは、例えば、芳香環構造(特に、スチレンに由来する構造)の量を示す。芳香環構造は、トナー粒子に適度な帯電性を付与する傾向がある。一方、芳香環構造を過剰に含むトナー粒子は、耐熱保存性が低下する傾向がある。
【0029】
トナー粒子に含まれる樹脂の質量平均分子量としては、85000以上130000以下が好ましく、95000以上115000以下がより好ましく、100000以上111000以下が更に好ましい。トナー粒子に含まれる樹脂の質量平均分子量を85000以上とすることで、本発明のトナーの耐熱保存性を更に最適化できる。トナー粒子に含まれる樹脂の質量平均分子量を130000以下とすることで、本発明のトナーの低温定着性を更に最適化できる。なお、トナー粒子に含まれる樹脂は、通常、トナー母粒子に含まれる結着樹脂と同様である。トナー粒子に含まれる樹脂の質量平均分子量は、実施例に記載の方法又はこれに準拠する方法により測定できる。
【0030】
(トナー母粒子)
トナー母粒子は、例えば主成分として結着樹脂を含有する。トナー母粒子は、必要に応じて、内添剤(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉の少なくとも1つ)を更に含有してもよい。トナー母粒子は、粉砕法により得られる粉砕トナー母粒子である。粉砕法は、テトラヒドロ不溶成分を一定量含むトナー母粒子を容易に調製できる。
【0031】
トナー母粒子の体積中位径(D50)は、5.20μm以上6.50μm以下であり、5.50μm以上6.20μm以下が好ましく、5.70μm以上6.00μm以下がより好ましい。トナー母粒子の体積中位径を5.20μm以上とすることで、本発明のトナーの耐熱保存性が最適化される。また、トナー母粒子の体積中位径を5.20μm以上6.50μm以下とすることで、本発明のトナーは、定着工程において、溶融したトナー粒子で記録媒体の表面を十分に被覆(隠蔽)することができる。その結果、本発明のトナーは、発色性に優れる画像を形成できる。
【0032】
(結着樹脂)
低温定着性に優れたトナーを提供する観点から、トナー母粒子は、結着樹脂として熱可塑性樹脂を含有することが好ましく、結着樹脂全体の85質量%以上の割合で熱可塑性樹脂を含有することがより好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、オレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン樹脂、及びポリプロピレン樹脂)、ビニル樹脂(例えば、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、及びN-ビニル樹脂)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、及びウレタン樹脂が挙げられる。また、これら各樹脂の共重合体、すなわち上記樹脂中に任意の繰り返し単位が導入された共重合体(例えば、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル樹脂、及びスチレン-ブタジエン樹脂)も、結着樹脂として使用できる。
【0033】
トナー母粒子における結着樹脂の含有割合としては、60質量%以上97質量%以下が好ましく、85質量%以上92質量%以下がより好ましい。
【0034】
結着樹脂におけるテトラヒドロフラン不溶成分の含有割合は、4.50質量%以上16.00質量%以下であり、7.00質量%以上15.00質量%以下が好ましく、8.00質量%以上10.00質量%以下が更に好ましい。結着樹脂におけるテトラヒドロフラン不溶成分の含有割合を4.50質量%以上とすることで、本発明のトナーの耐熱保存性を最適化できる。結着樹脂におけるテトラヒドロフラン不溶成分の含有割合を16.00質量%以下とすることで、本発明のトナーの低温定着性と、形成される画像の発色性を最適化できる。
【0035】
出力200W、周波数28kHzの超音波処理を1分間行った後の結着樹脂におけるテトラヒドロフラン不溶成分の含有割合は、2.20質量%以下であり、0.20質量%以上2.20質量%以下が好ましく、0.40質量%以上2.00質量%以下がより好ましく、0.80質量%以上1.50質量%以下が更に好ましい。超音波処理後の結着樹脂におけるテトラヒドロフラン不溶成分の含有割合を2.20質量%以下とすることで、本発明のトナーの低温定着性と、形成される画像の発色性とを最適化できる。超音波処理後の結着樹脂におけるテトラヒドロフラン不溶成分の含有割合を0.20質量%以上とすることで、上述の結着樹脂におけるテトラヒドロフラン不溶成分の含有割合を上述の範囲に調整し易くなる。
【0036】
本発明のトナーの低温定着性を更に最適化する観点から、結着樹脂としては、ポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂は、1種以上の多価アルコールと1種以上の多価カルボン酸とを縮重合させることで得られる。ポリエステル樹脂を合成するための多価アルコールとしては、例えば、2価アルコール(例えば、ジオール化合物、及びビスフェノール化合物)、及び3価以上のアルコールが挙げられる。ポリエステル樹脂を合成するための多価カルボン酸としては、例えば、2価カルボン酸、及び3価以上のカルボン酸が挙げられる。なお、多価カルボン酸の代わりに、縮重合によりエステル結合を形成できる多価カルボン酸誘導体(例えば、多価カルボン酸の無水物、及び多価カルボン酸ハライド)を使用してもよい。
【0037】
ジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-ブテン-1,4-ジオール、1,5-ペンタンジオール、2-ペンテン-1,5-ジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、1,4-ベンゼンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
【0038】
ビスフェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(例えば、ポリオキシエチレン(2,2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)、及びビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0039】
3価以上のアルコールとしては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及び1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
【0040】
2価カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸(より具体的には、n-ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n-オクチルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸)、及びアルケニルコハク酸(より具体的には、n-ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n-オクテニルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸)が挙げられる。
【0041】
3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシルプロパン、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、及びエンポール三量体酸が挙げられる。
【0042】
ポリエステル樹脂は、ビニル化合物に由来する繰り返し単位を更に有してもよい。ビニル化合物としては、例えば、オレフィン化合物(例えば、エチレン、プロピレン及びブチレン)、スチレン化合物、(メタ)アクリル酸、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。ビニル化合物としては、スチレン化合物又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
【0043】
スチレン化合物としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、及びp-n-ドデシルスチレンが挙げられる。
【0044】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等、及び(メタ)アクリル酸ラウリルが挙げられる。
【0045】
結着樹脂としては、非晶性ポリエステル樹脂が好ましい。一方、結着樹脂が少量の結晶性ポリエステル樹脂を含むと、トナー粒子のシャープメルト性を最適化できる。以上から、結着樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂の両方を含むことが好ましい。結着樹脂において、結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂の合計含有割合としては、90質量%以上が好ましく、99質量%以上がより好ましく、100質量%が更に好ましい。
【0046】
なお、非晶性ポリエステル樹脂は、明確なMpを測定できないことが多い。よって、示差走査熱量計を用いて測定される吸熱曲線において明確に吸熱ピークを判断できないポリエステル樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂と判断して差し支えない。
【0047】
(非晶性ポリエステル樹脂)
結着樹脂が非晶性ポリエステル樹脂を含む場合、非晶性ポリエステル樹脂は、3価以上のカルボン酸に由来する第1繰り返し単位を有することが好ましい。第1繰り返し単位は、非晶性ポリエステル樹脂に架橋構造を導入する。その結果、非晶性ポリエステル樹脂は、分子量が増大すると共に、分子内が適度に絡まり易くなる。非晶性ポリエステル樹脂は、適量の第1繰り返し単位を有することにより、通常状態ではテトラヒドロフランに不溶(即ち、高弾性)でありながら、外部からエネルギー(例えば、熱又は超音波処理)が加わるとテトラヒドロフランに可溶(即ち、低弾性)となる。3価以上のカルボン酸としては、トリメリット酸が好ましく、無水トリメリット酸がより好ましい。
【0048】
非晶性ポリエステル樹脂の有する全繰り返し単位において、第1繰り返し単位の含有割合としては、1.5質量%以上7.5質量%以下が好ましく、3.0質量%以上4.5質量%以下がより好ましい。非晶性ポリエステル樹脂における第1繰り返し単位の含有割合を1.5質量%以上7.5質量%以下とすることで、非晶性ポリエステル樹脂のテトラヒドロフランに対する溶解性(即ち、弾性)を調整し易くなる。
【0049】
非晶性ポリエステル樹脂は、ビスフェノール化合物に由来する第2繰り返し単位と、2価カルボン酸に由来する第3繰り返し単位とを更に有することが好ましい。ビスフェノール化合物としては、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物又はビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が好ましい。2価カルボン酸としては、n-ドデセニル無水コハク酸又はテレフタル酸が好ましい。
【0050】
非晶性ポリエステル樹脂の有する全繰り返し単位において、第2繰り返し単位の含有割合としては、60.0質量%以上90.0質量%以下が好ましく、70.0質量%以上80.0質量%以下がより好ましい。
【0051】
非晶性ポリエステル樹脂の有する全繰り返し単位において、第3繰り返し単位の含有割合としては、10.0質量%以上35.0質量%以下が好ましく、15.0質量%以上25.0質量%以下がより好ましい。
【0052】
トナー母粒子において、非晶性ポリエステル樹脂の含有割合としては、50.0質量%以上95.0質量%以下が好ましく、70.0質量%以上90.0質量%以下がより好ましい。
【0053】
非晶性ポリエステル樹脂の軟化点としては、100.0℃以上150.0℃以下が好ましく、110.0℃以上130.0℃以下が好ましい。非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点としては、45.0℃以上70.0℃以下が好ましく、55.0℃以上65.0℃以下がより好ましい。非晶性ポリエステル樹脂の酸価としては、3.0mgKOH/g以上25.0mgKOH/g以下が好ましく、5.0mgKOH/g以上15.0mgKOH/g以下がより好ましい。非晶性ポリエステル樹脂の水酸基価としては、5.0mgKOH/g以上50.0mgKOH/g以下が好ましく、10.0mgKOH/g以上20.0mgKOH/g以下がより好ましい。非晶性ポリエステル樹脂の質量平均分子量としては、90000以上150000以下が好ましく、105000以上125000以下がより好ましい。非晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量としては、2000以上5000以下が好ましく、3200以上4000以下がより好ましい。
【0054】
(結晶性ポリエステル樹脂)
結着樹脂が結晶性ポリエステル樹脂を含む場合、結晶性ポリエステル樹脂は、スチレン化合物に由来する第4繰り返し単位を有することが好ましい。第4繰り返し単位は、上述するスチレンに由来する構造をトナー粒子に付与する。スチレン化合物としては、スチレンが好ましい。
【0055】
結晶性ポリエステル樹脂の有する全繰り返し単位において、第4繰り返し単位の含有割合としては、0.5質量%以上8.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以上3.0質量%以下がより好ましい。結晶性ポリエステル樹脂における第4繰り返し単位の含有割合を0.5質量%以上8.0質量%以下とすることで、赤外分光分析で得られるトナー粒子の赤外吸収スペクトルにおいて、波数701cm-1上に現れるピークの高さを0.0070A以上0.0300A以下に調整し易くなる。
【0056】
結晶性ポリエステル樹脂は、ジオール化合物に由来する第5繰り返し単位と、2価カルボン酸に由来する第6繰り返し単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する第7繰り返し単位とを有することが好ましい。ジオール化合物としては、1,4-ブタンジオール又は1,6-ヘキサンジオールが好ましい。2価カルボン酸としては、フマル酸が好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸n-ブチルが好ましい。
【0057】
結晶性ポリエステル樹脂の有する全繰り返し単位において、第5繰り返し単位の含有割合としては、30.0質量%以上55.0質量%以下が好ましく、42.0質量%以上48.0質量%以下がより好ましい。
【0058】
結晶性ポリエステル樹脂の有する全繰り返し単位において、第6繰り返し単位の含有割合としては、40.0質量%以上65.0質量%以下が好ましく、50.0質量%以上55.0質量%以下がより好ましい。
【0059】
結晶性ポリエステル樹脂の有する全繰り返し単位において、第7繰り返し単位の含有割合としては、0.5質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.8質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0060】
トナー母粒子において、結晶性ポリエステル樹脂の含有割合としては、5.0質量%以上40.0質量%以下が好ましく、8.0質量%以上12.0質量%以下がより好ましい。
【0061】
結晶性ポリエステル樹脂の軟化点としては、70.0℃以上1000.0℃以下が好ましく、85.0℃以上90.0℃以下が好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の融点としては、70.0℃以上90.0℃以下が好ましく、75.0℃以上85.0℃以下がより好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の酸価としては、2.0mgKOH/g以上3.7mgKOH/g以下が好ましく、2.8mgKOH/g以上3.4mgKOH/g以下がより好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の水酸基価としては、5.0mgKOH/g以上25.0mgKOH/g以下が好ましく、10.0mgKOH/g以上20.0mgKOH/g以下がより好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の質量平均分子量としては、20000以上60000以下が好ましく、25000以上40000以下がより好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量としては、2000以上5000以下が好ましく、3200以上4000以下がより好ましい。
【0062】
(着色剤)
トナー母粒子は、着色剤を含有していてもよい。着色剤としては、本発明のトナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。本発明のトナーを用いて高画質な画像を形成する観点から、着色剤の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、1.0質量部以上20.0質量部以下が好ましく、2.0質量部以上5.0質量部以下がより好ましい。
【0063】
トナー母粒子は、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
【0064】
トナー母粒子は、カラー着色剤を含有していてもよい。カラー着色剤としては、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤が挙げられる。
【0065】
イエロー着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリールアミド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。イエロー着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、及び194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、並びにC.I.バットイエローが挙げられる。
【0066】
マゼンタ着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。マゼンタ着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、及び254)が挙げられる。
【0067】
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。シアン着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、及び66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、並びにC.I.アシッドブルーが挙げられる。
【0068】
(電荷制御剤)
トナー母粒子は、電荷制御剤を含有していてもよい。電荷制御剤は、例えば、優れた帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を有するトナーを提供する目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電させることができるか否かの指標になる。トナー母粒子に正帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナー母粒子のカチオン性を強めることができる。
【0069】
正帯電性の電荷制御剤としては、例えば、アジン化合物、直接染料、酸性染料、アルコキシル化アミン、アルキルアミド、4級アンモニウム塩化合物、及び4級アンモニウムカチオン基を含む樹脂が挙げられる。電荷制御剤としては、4級アンモニウム塩化合物が好ましい。
【0070】
アジン化合物としては、例えば、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2-オキサジン、1,3-オキサジン、1,4-オキサジン、1,2-チアジン、1,3-チアジン、1,4-チアジン、1,2,3-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,3,5-トリアジン、1,2,4-オキサジアジン、1,3,4-オキサジアジン、1,2,6-オキサジアジン、1,3,4-チアジアジン、1,3,5-チアジアジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、1,2,4,6-オキサトリアジン、1,3,4,5-オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、及びキノキサリンが挙げられる。
【0071】
直接染料としては、例えば、アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ-ンBH/C、アジンディープブラックEW、及びアジンディープブラック3RLが挙げられる。
【0072】
酸性染料としては、例えば、ニグロシンBK、ニグロシンNB、及びニグロシンZが挙げられる。
【0073】
4級アンモニウム塩化合物としては、例えば、ベンジルデシルヘキシルメチルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルアンモニウムクロライド、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、及びジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩が挙げられる。
【0074】
帯電安定性に優れたトナーを提供する観点から、電荷制御剤の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.5質量部以上3.0質量部以下がより好ましい。
【0075】
(離型剤)
トナー母粒子は、離型剤を含有していてもよい。離型剤は、例えば、本発明のトナーに耐オフセット性を付与する目的で使用される。本発明のトナーに充分な耐オフセット性を付与させる観点から、離型剤の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、1.0質量部以上20.0質量部以下が好ましく、3.0質量部以上8.0質量部以下がより好ましい。
【0076】
離型剤としては、例えば、脂肪族炭化水素系ワックス、脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、脂肪酸エステルを主成分とするエステルワックス、及び脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックスが挙げられる。脂肪族炭化水素系ワックスとしては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合体、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス及びフィッシャートロプシュワックスが挙げられる。脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物としては、例えば、酸化ポリエチレンワックス、及び酸化ポリエチレンワックスのブロック共重合体が挙げられる。植物系ワックスとしては、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、及びライスワックスが挙げられる。動物系ワックスとしては、例えば、みつろう、ラノリン及び鯨ろうが挙げられる。鉱物系ワックスとしては、例えば、オゾケライト、セレシン、及びペトロラタムが挙げられる。脂肪酸エステルを主成分とするエステルワックスとしては、例えば、モンタン酸エステルワックス及びカスターワックスが挙げられる。脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックスとしては、例えば、脱酸カルナバワックスが挙げられる。離型剤としては、エステルワックスが好ましい。
【0077】
トナー母粒子が離型剤を含有する場合、結着樹脂と離型剤との相溶性を改善するために、相溶化剤をトナー母粒子に添加してもよい。
【0078】
(外添剤)
外添剤としては、無機粒子が好ましい。無機粒子としては、シリカ粒子、又は金属酸化物(より具体的には、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、又はチタン酸バリウム等)の粒子が好ましく、シリカ粒子又は酸化チタン粒子がより好ましい。シリカ粒子の個数平均一次粒子径としては、5nm以上200nm以下が好ましく、10nm以上40nm以下がより好ましい。酸化チタン粒子の個数平均一次粒子径としては、50nm以上600nm以下が好ましく、300nm以上450nm以下がより好ましい。
【0079】
トナー粒子における外添剤の含有量としては、トナー母粒子からの脱離を抑制しながらその機能を十分に発揮させる観点から、トナー母粒子100質量部に対して、0.1質量部以上15.0質量部以下が好ましく、1.0質量部以上4.0質量部以下がより好ましい。
【0080】
[トナーの製造方法]
本発明のトナーは、例えば、トナー母粒子の調製工程と、外添工程とを備える製造方法により製造できる。
【0081】
(トナー母粒子の調製工程)
トナー母粒子の調製工程では、粉砕法によりトナー母粒子を調製する。トナー母粒子の調製工程は、例えば溶融混練工程と、粉砕工程とを備える。トナー母粒子の調製工程は、溶融混練工程の前に混合工程を更に備えてもよい。また、トナー母粒子の調製工程は、粉砕工程後に、微粉砕工程及び分級工程の少なくとも一方を更に備えてもよい。
【0082】
混合工程では、結着樹脂と、必要に応じて添加する内添剤とを混合して、混合物を得る。溶融混練工程では、トナー材料を溶融し混練して、溶融混練物を得る。トナー材料としては、例えば混合工程で得られる混合物が用いられる。粉砕工程では、得られた溶融混練物を、例えば室温(25℃)まで冷却した後、粉砕して粉砕物を得る。粉砕工程で得られた粉砕物の小径化が必要な場合は、粉砕物を更に粉砕する工程(微粉砕工程)を実施してもよい。また、粉砕物の粒径を揃える場合は、得られた粉砕物を分級する工程(分級工程)を実施してもよい。以上の工程により、粉砕物であるトナー母粒子が得られる。
【0083】
(外添工程)
外添工程では、混合機を用いて、上述のトナー母粒子と、外添剤とを混合して、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させる。これにより、本発明のトナーが得られる。外添剤は、特定外添剤粒子と、必要に応じて用いられるその他の外添剤粒子とを含む。混合機としては、例えばFMミキサー(日本コークス工業株式会社製)が挙げられる。
【実施例0084】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。しかし、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
【0085】
[体積中位径の測定]
トナー母粒子の体積中位径(D50)は、粒度計(ベックマン・コールター株式会社製「コールターカウンターマルチサイザー3」)を用いて測定した。
【0086】
[赤外分光分析]
赤外分光分析においては、測定装置として、フーリエ変換赤外分光分析装置(パーキンエルマー社製「Frontier」)を用いた。測定モードは、ATR(全反射測定法)モードであった。ATR結晶としては、ダイヤモンド(屈折率2.4)を用いた。
【0087】
ATR結晶を測定装置に装着し、ATR結晶の上に測定対象(後述する各実施例及び比較例のトナー)1mgを載せた。続けて、測定装置の圧力アームを用いて、荷重60N以上80N以下で試料を加圧した。続けて、赤外光入射角45°の条件で、試料のFT-IRスペクトル(横軸:照射した赤外線の波数、縦軸:吸光度)を測定した。得られたFT-IRスペクトルから、波数701cm-1に現れたピーク(スチレンに由来する構造を示すピーク)の高さを読み取った。
【0088】
[質量平均分子量及び数平均分子量の測定]
質量平均分子量及び数平均分子量は、以下の方法で測定した。まず、測定対象(ポリエステル樹脂又はトナー粒子)10mgとテトラヒドロフラン(THF)5mLとを混合し、混合物を得た。得られた混合物を室温で2時間静置した。次に、混合物を更に攪拌し、測定対象及びTHFを十分に混合した。次に、サンプル処理フィルター(株式会社トムシック製「TITAN2-30PTFE 0.45μm エコパック」)に混合物を通過させ、通過した混合物をGPC試料とした。以下の条件のゲルろ過クロマトグラフィ(GPC)により、GPC試料に含まれる樹脂の質量平均分子量及び数平均分子量を測定した。
【0089】
(GPC条件)
測定装置:東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」
カラム:超高性能セミミクロSEC用カラム(東ソー株式会社製「TSKgel SuperMultipore HZ-H」、充填剤:スチレン-ジビニルベンゼン樹脂、カラムサイズ:内径4.6mm×長さ15cm、充填剤粒子径:6μm)
カラム本数:3本
溶離液:テトラヒドロフラン
溶出液流速:1.0mL/分
試料溶液量:150μL
カラム温度:40℃
検出器:RI(屈折率)検出器
検量線:東ソー株式会社製の単分散ポリスチレン標準試料(F-40、F-20、F-4、F-1、A-5000、A-2500及びA-1000)と、n-プロピルベンゼンとを用いて作成された検量線
【0090】
[非晶性ポリエステル樹脂の合成]
以下の方法により、非晶性ポリエステル樹脂A~Hを調製した。非晶性ポリエステル樹脂A~Hの軟化点(Tm)、ガラス転移点(Tg)、酸価、水酸基価、質量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を下記表1に示す。
【0091】
(非晶性ポリエステル樹脂A)
温度計(熱電対)、脱水管、窒素導入管、及び攪拌装置を備えた4つ口フラスコを反応容器として用いた。反応容器に、多価アルコールとしてのBPA-PO(ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物)1700質量部、及びBPA-EO(ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物)650質量部と、多価カルボン酸としてのドデセニル無水コハク酸200質量部、テレフタル酸400質量部、及び無水トリメリット酸100質量部と、触媒としての酸化ジブチル錫4質量部とを加えた。続けて、反応により生成される水を除去しながら、温度220℃、大気圧の条件で、反応容器内容物を9時間反応させた(第1反応)。その後、温度220℃、減圧雰囲気下(圧力8.0kPa)の条件で、反応容器内容物を更に反応させた(第2反応)。この際、反応時間は、生成物(非晶性ポリエステル樹脂A)の軟化点が下記表1に示す温度となる時間に調整した。反応終了後、反応容器内容物を取り出し、冷却した。これにより、非晶性ポリエステル樹脂A(軟化点124.8℃)が得られた。
【0092】
(非晶性ポリエステル樹脂B~H)
以下の点を変更した以外は、非晶性ポリエステル樹脂Aの調製と同様の方法により、非晶性ポリエステル樹脂B~Hを調製した。非晶性ポリエステル樹脂B~Hの調製では、使用する原料の量を下記表1に示す通りに変更した。また、非晶性ポリエステル樹脂B~Hの調製では、第2反応において、得られる生成物の軟化点が下記表1に示す通りとなるように、反応時間を調整した。
【0093】
下記表1において、「DDSA」は、ドデセニル無水コハク酸を示す。「TPA」は、無水トリメリット酸を示す。「TMA」は、無水トリメリット酸を示す。「部」は、質量部を示す。
【0094】
【表1】
【0095】
[結晶性ポリエステル樹脂の合成]
以下の方法により、結晶性ポリエステル樹脂a~eを調製した。結晶性ポリエステル樹脂a~eの軟化点(Tm)、融点(Mp)、酸価、水酸基価、質量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を下記表2に示す。
【0096】
(結晶性ポリエステル樹脂a)
温度計(熱電対)、脱水管、窒素導入管、及び攪拌装置を備えた4つ口フラスコを反応容器として用いた。反応容器に、多価アルコールとしての1,4-ブタンジオール995質量部、及び1,6-ヘキサンジオール260質量部と、多価カルボン酸としてのフマル酸1500質量部と、ハイドロキノン2.5質量部とを加えた。続けて、反応により生成される水を除去しながら、温度170℃、大気圧の条件で、反応容器内容物を5時間反応させた(第1反応)。次に、温度210℃、大気圧の条件で、反応容器内容物を更に1.5時間反応させた(第2反応)。次に、温度210℃、減圧雰囲気下(圧力8.0kPa)の条件で、反応容器内容物を更に1.0時間反応させた(第3反応)。次に、反応容器に、ビニル化合物として、スチレン70質量部及びメタクリル酸ブチル50質量部を投入した。次に、温度210℃、大気圧の条件で、反応容器内容物を更に1.5時間反応させた(第4反応)。次に、温度210℃、減圧雰囲気下(圧力8.0kPa)の条件で、反応容器内容物を更に1時間反応させた(第5反応)。第5反応の終了後、反応容器内容物を取り出し、冷却した。これにより、結晶性ポリエステル樹脂aが得られた。
【0097】
(結晶性ポリエステル樹脂b~e)
以下の点を変更した以外は、結晶性ポリエステル樹脂aの調製と同様の方法により、結晶性ポリエステル樹脂b~eを調製した。結晶性ポリエステル樹脂b~eの調製では、使用する原料の量を下記表2に示す通りに変更した。なお、下記表2において、「部」は、質量部を示す。
【0098】
【表2】
【0099】
<トナーの調製>
以下の方法により、実施例1~13及び比較例1~7のトナーを調製した。
【0100】
[実施例1]
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM-20B」)を用いて、結着樹脂としての80.0質量部の非晶性ポリエステル樹脂A及び10.0質量部の結晶性ポリエステル樹脂aと、着色剤としての4.0質量部のカーボンブラック(三菱化学株式会社製「MA-100」、個数平均一次粒子径24nm)と、離型剤としての5.0質量部のエステルワックス(日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP-3」、融点:73℃)と、電荷制御剤としての1.0質量部の4級アンモニウム塩化合物(オリヱント化学工業株式会社製「BONTRON(登録商標)P-51」)とを、回転数を200rpmで4分間混合した。
【0101】
その後、得られた混合物を、二軸押出機(株式会社池貝製「PCM-30」)を用いて、材料供給速度6kg/時間、軸回転数160rpm、及びシリンダー温度120℃の条件にて溶融混練した。その後、得られた混練物を冷却した。この混練物をロートプレックスミル(株式会社東亜器機製作所製「8/16型」)にて粗粉砕した後、機械式粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミルRS」)を用いて微粉砕した。得られた微粉砕物を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「EJ-LABO型式EJ-L-3」)を用いて分級した。これにより、体積中位径が5.82μmである粉体状のトナー母粒子を得た。
【0102】
上述のトナー母粒子100.0質量部と、外添剤としての疎水性シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)RA-200H」、個数平均一次粒子径:12nm)1.2質量部と、酸化チタン粒子(チタン工業株式会社製「EC-100」)0.8質量部とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM-10」)を用い、回転数3000rpm、ジャケット制御温度20℃で2分間混合した。これにより、実施例1のブラックトナーを得た。
【0103】
着色剤の種類を下記に示す通りに変更した以外は、実施例1のブラックトナーの調製と同様の方法により、実施例1のシアントナー、実施例1のマゼンタトナー及び実施例1のイエロートナーを調製した。以下、実施例1のブラックトナー、シアントナー、マゼンタトナー及びイエロートナーを一括して「実施例1のトナー」と記載する。
マゼンタトナー用着色剤:山陽色素株式会社製「C.I.ピグメントレッド269」
シアントナー用着色剤:山陽色素株式会社製「C.I.ピグメントブルー15:3」
イエロートナー用着色剤:大日精化工業株式会社製「C.I.ピグメントイエロー74」
【0104】
[実施例2~13及び比較例1~7]
トナー母粒子の調製において使用する非晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂の種類及び量と、トナー母粒子の体積中位径(D50)とを下記表3に示す通りに変更した以外は、実施例1のトナーの調製と同様の方法により、実施例2~13及び比較例1~7のトナーを調製した。なお、各実施例及び比較例のトナーの物性の測定及び性能の評価において、着色剤の影響を受けないものについては、ブラックトナーを代表例として用いて測定又は評価を実施した。
【0105】
【表3】
【0106】
[赤外分光分析]
実施例1~13及び比較例1~7のトナーのうちのブラックトナーについて、上述の方法により、赤外分光分析(FT-IR)を行い、トナー粒子の赤外吸収スペクトルを得た。そして、赤外吸収スペクトルにおいて、波数701cm-1上に現れるピークの高さを求めた。測定結果を下記表4に示す。
【0107】
[テトラヒドロフラン不溶成分の測定]
実施例1~13及び比較例1~7のトナーのうちのブラックトナーについて、以下の方法で結着樹脂におけるテトラヒドロフラン不溶成分の含有割合を測定した。まず、サンプル瓶にTHF(テトラヒドロフラン)40mLと、測定対象0.05gとを投入した。測定対象としては、各トナーに含まれている結着樹脂と同組成の混合物(例えば、実施例1のブラックトナーであれば、0.044gの非晶性ポリエステル樹脂Aと0.006g結晶性ポリエステル樹脂aとの混合物)を用いた。ロータリーミキサーを用いてサンプル瓶の内容物を3時間攪拌した後、サンプル瓶を24時間静置した。その後、サンプル瓶から上澄み液5mLを注射器で回収した。回収した上澄み液5mLを金属皿に移し、自然乾燥させた。乾燥後、金属皿の上に残留している成分を、超音波処理前の結着樹脂のテトラヒドロフラン不溶成分とした。
【0108】
上述の金属皿の上の超音波処理前の結着樹脂におけるテトラヒドロフラン不溶成分の質量mを測定した。質量mを8倍した値が、測定対象0.05gのうち、THF40mLに可溶した成分の質量Mに相当する。測定された質量Mを下記式に当てはめることにより、測定対象における超音波処理前の結着樹脂におけるテトラヒドロフラン不溶成分の含有割合を算出した。測定結果を下記表4に示す。
テトラヒドロフラン不溶成分の含有割合=100×[0.05g-(質量M[g])]/0.05g
【0109】
次に、実施例1~13及び比較例1~7のうちのブラックトナーについて、超音波処理後の結着樹脂におけるTHF不溶成分の含有割合を測定した。サンプル瓶にTHF(テトラヒドロフラン)40mLと、上述の測定対象(各トナーに含まれている結着樹脂と同組成の混合物)0.05gとを投入した。上述のサンプル瓶の内容物に対して、出力200W、周波数28kHzの超音波処理を1分間行った。次に、ロータリーミキサーを用いてサンプル瓶の内容物を3時間攪拌した後、サンプル瓶を24時間静置した。その後、サンプル瓶から上澄み液5mLを注射器で回収した。回収した上澄み液5mLを金属皿に移し、自然乾燥させた。乾燥後、金属皿の上に残留している成分を、超音波処理後の結着樹脂のテトラヒドロフラン不溶成分とした。その後、超音波処理前の結着樹脂におけるテトラヒドロフラン不溶成分の含有割合の測定と同様の方法により、超音波処理後の結着樹脂におけるテトラヒドロフラン不溶成分の含有割合を算出した。測定結果を下記表4に示す。
【0110】
[トナー粒子に含まれる樹脂の質量平均分子量]
実施例1~13及び比較例1~7のうちのブラックトナーについて、上述の方法により、トナー粒子に含まれる樹脂の質量平均分子量を測定した。測定結果を下記表4に示す。
【0111】
【表4】
【0112】
<評価>
以下の方法により、実施例1~13及び比較例1~7のトナーについて、形成される画像の発色性、低温定着性及び耐熱保存性を評価した。評価は、特に断りのない限り、温度23℃、湿度50%の条件で行った。評価結果を下記表5に示す。
【0113】
[現像剤の調製]
粉体混合機(愛知電機株式会社製「ロッキングミキサー(登録商標)」、混合方式:容器回転揺動方式)を用い、評価対象となるトナー(実施例1~13及び比較例1~7のトナーの何れか)8質量部と、キャリア100質量部(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa 7054ci」用キャリア)とを、30分間混合した。これにより、評価対象となるトナーを含む評価用初期現像剤(詳しくは、評価用ブラック初期現像剤、評価用マゼンタ初期現像剤、評価用シアン初期現像剤及び評価用イエロー初期現像剤)(トナー濃度約7質量%)を得た。
【0114】
また、上述の粉体混合機を用い、トナー(実施例1~13及び比較例1~7のトナーの何れか)100質量部と、キャリア(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa 7054ci」用キャリア)10質量部とを、30分間混合した。これにより、評価対象となるトナーを含む補給用現像剤(詳しくは、評価用ブラック補給用現像剤、評価用マゼンタ補給用現像剤、評価用シアン補給用現像剤及び評価用イエロー補給用現像剤)(トナー濃度約91質量%)を得た。
【0115】
[評価機]
評価機として、カラー複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa 7054ci」、感光体ドラム:アモルファスシリコンドラム)を用いた。この評価機は、感光体と、感光体に形成された静電潜像を現像剤(詳しくは、現像剤に含まれるトナー)により現像する現像装置と、現像装置内の現像剤を排出する現像剤排出部と、補給用現像剤を現像装置内へ補給する補給用現像剤供給部と、トナーを記録媒体に定着させる定着装置とを備えていた。即ち、この評価機は、トリクル現像方式が採用されていた。評価機の現像装置(詳しくは、ブラック現像装置、マゼンタ現像装置、シアン現像装置及びイエロー現像装置のうち何れか)に評価用初期現像剤(詳しくは、評価用ブラック初期現像剤、評価用マゼンタ初期現像剤、評価用シアン初期現像剤及び評価用イエロー初期現像剤の何れか)を投入した。また、評価機の補給用ブラック現像剤供給部に補給用現像剤(詳しくは、評価用ブラック補給用現像剤、評価用マゼンタ補給用現像剤、評価用シアン補給用現像剤及び評価用イエロー補給用現像剤の何れか)を投入した。評価機は、線速322mm/秒、トナー載り量0.37mg/cm3に設定した。評価機を改造し、定着装置の定着温度を任意に設定できるようにした。記録媒体として、A4サイズの普通紙(富士フイルムビジネスイノベーション株式会社製「C2」)を用いた。
【0116】
[発色性]
評価機を用いて、記録媒体にソリッド画像(詳しくは、ブラックソリッド画像、シアンソリッド画像、マゼンタソリッド画像及びイエローソリッド画像)を形成した。定着装置の定着温度は、170℃に設定した。蛍光分光濃度計(コニカミノルタ株式会社製「FD-5」)を用いて、ブラックソリッド画像の明度(L*)と、シアンソリッド画像、マゼンタソリッド画像及びイエローソリッド画像の彩度(C*)を測定した。ブラックソリッド画像のL*は、18.0未満を合格、18.0以上を不合格と判断できる。シアンソリッド画像のC*は、60.0以上を合格、60.0未満を不合格と判断できる。マゼンタソリッド画像のC*は、72.0以上を合格、72.0未満を不合格と判断できる。イエローソリッド画像のC*は、97.0以上を合格、97.0未満を不合格と判断できる。発色性は、以下の基準で評価した。なお、下記表5において、発色性の「C/M/Y/K」は、シアンソリッド画像、マゼンタソリッド画像及びイエローソリッド画像の彩度(C*)と、ブラックソリッド画像の明度(L*)とを示す。例えば、実施例1の「C/M/Y/K」の「62.2/74.1/99.3/16.2」は、シアンソリッド画像のC*が62.2、マゼンタソリッド画像のC*が74.1、イエローソリッド画像のC*が99.3、ブラックソリッド画像のL*が16.2であることを示す。
【0117】
(発色性の基準)
A(良好):ブラックソリッド画像のL*、シアンソリッド画像のC*、マゼンタソリッド画像のC*、及びイエローソリッド画像のC*の全てが合格であった。
B(不良):ブラックソリッド画像のL*、シアンソリッド画像のC*、マゼンタソリッド画像のC*、及びイエローソリッド画像のC*のうち少なくとも1つが不合格であった。
【0118】
[低温定着性]
評価機を用いて、記録媒体に大きさ25mm×25mmのブラックソリッド画像(詳しくは、定着装置に通す前の未定着のトナー像)を形成した。続けて、上記ブラックソリッド画像が形成された記録媒体(評価用紙)を評価機の定着装置に通した。この際、定着装置の定着温度を120℃から220℃まで5℃ずつ上げながら各定着温度について定着の可否を判定し、ブラックソリッド画像(トナー像)を評価用紙に定着できる最低温度(最低定着温度)を測定した。
【0119】
トナーを定着させることができたか否かは、以下に示す折擦り試験で評価した。折擦り試験では、評価用紙について、ブラックソリッド画像を形成した面が内側となり、かつブラックソリッド画像の中心を折り目が通過するように折り曲げた。次に、折り曲げた評価用紙について、綿布で被覆した黄銅製の分銅(1kg)を用いて、1kgの荷重をかけながら折り目上を5往復摩擦した。次に、評価用紙を広げ、評価用紙の折り曲げ部のうちブラックソリッド画像が定着された部分におけるトナーの剥がれの長さ(剥がれ長)を測定した。剥がれ長が1mm以下の場合、折擦り試験に合格しており、評価用紙にトナーを定着できたと判断した。剥がれ長が1mm超の場合、折擦り試験に不合格で、評価用紙にトナーを定着できていないと判断した。各評価用現像剤について、定着温度を変えながらブラックソリッド画像の形成及び折り擦り試験を繰り返し、折り擦り試験に合格する定着温度のうちの最低温度(最低定着温度)を求めた。低温定着性は、以下の基準で判定した。
【0120】
(低温定着性の基準)
A(極めて良好):最低定着温度が150℃以下である。
B(良好):最低定着温度が155℃以上160℃以下である。
C(不良):最低定着温度が165℃以上である。
【0121】
[耐熱保存性]
評価対象となるトナー(詳しくは、実施例1~13及び比較例1~7のトナーのうちのブラックトナー)3gを容量20mLのポリエチレン製容器に入れた。上述の容器を55℃に設定された恒温槽内に3時間静置した。3時間静置後、恒温槽から容器を取り出した。容器からトナーを取り出し、これを評価用トナーとした。得られた評価用トナーを、質量既知の200メッシュ(目開き75μm)の篩に載せた。そして、評価用トナーを含む篩の質量を測定し、篩別前のトナーの質量を求めた。続けて、粉体特性評価装置(ホソカワミクロン株式会社製「パウダテスタ(登録商標)PT-X」)に上記篩をセットし、粉体特性評価装置のマニュアルに従い、振幅1.0mmの条件で30秒間、篩を振動させ、評価用トナーを篩別した。篩別後、篩を通過しなかったトナーの質量を測定した。そして、篩別前のトナーの質量と、篩別後のトナーの質量とに基づいて、下記式に従って凝集度[質量%]を求めた。なお、下記式における「篩別後のトナーの質量」は、篩を通過しなかったトナー(即ち、篩別後に篩上に残留したトナー)の質量である。耐熱保存性は、以下の基準で判定した。
凝集度[質量%]=100×篩別後のトナーの質量/篩別前のトナーの質量
【0122】
(耐熱保存性の基準)
A(極めて良好):凝集度が10質量%以下である。
B(良好):凝集度が10質量%超20質量%以下である。
C(不良):凝集度が20質量%超である。
【0123】
【表5】
【0124】
実施例1~13のトナーは、トナー粒子を含んでいた。トナー粒子は、トナー母粒子と、トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備えていた。トナー母粒子は、粉砕トナー母粒子であった。トナー母粒子の体積中位径は、5.20μm以上6.50μm以下であった。トナー母粒子は、結着樹脂を含有していた。結着樹脂におけるテトラヒドロフラン不溶成分の含有割合は、4.50質量%以上16.00質量%以下であった。出力200W、周波数28kHzの超音波処理を1分間行った後の結着樹脂におけるテトラヒドロフラン不溶成分の含有割合は、2.20質量%以下であった。赤外分光分析で得られるトナー粒子の赤外吸収スペクトルにおいて、波数701cm-1上に現れるピークの高さは、0.0070A以上0.0300A以下であった。実施例1~13のトナーは、低温定着性及び耐熱保存性に優れると共に、発色性に優れる画像を形成できた。また、実施例1~11のトナーは、トナー粒子に含まれる樹脂の質量平均分子量が85000以上130000以下であった。その結果、実施例1~11のトナーは、低温定着性及び耐熱保存性が極めて良好であった。
【0125】
これに対して、比較例1のトナーは、トナー母粒子の体積中位径が過度に小さかった。また、比較例2のトナーは、トナー母粒子の体積中位径が過度に大きかった。トナー母粒子は、サイズが過度に大きい場合及び過度に小さい場合の何れにおいても記録媒体の表面を適切に被覆して画像に発色性を付与することが難しくなる。そのため、比較例1及び2のトナーは、形成される画像の発色性が不良であった。
【0126】
比較例3のトナーは、結着樹脂におけるテトラヒドロフラン不溶成分の含有割合が4.50質量%未満であった。比較例3のトナーは、結着樹脂に弾性を付与する成分であるテトラヒドロフラン不溶成分が不足していた。そのため、比較例3のトナーは、耐熱保存性が不良であった。
【0127】
比較例4のトナーは、結着樹脂におけるテトラヒドロフラン不溶成分の含有割合が16.00質量%超であった。比較例4のトナーは、定着時にトナー粒子が溶け広がることを阻害する成分であるテトラヒドロフラン不溶成分が過剰に含まれていた。その結果、比較例4のトナーは、形成される画像の発色性が不良であった。
【0128】
比較例5のトナーは、超音波処理後の結着樹脂におけるテトラヒドロフラン不溶成分の含有割合が2.20質量%超であった。超音波処理を行ってもテトラヒドロフランに可溶化しない成分は、定着時にトナー粒子が溶け広がることを強く阻害すると判断される。比較例5のトナーは、このような成分が過剰に含まれるため、発色性が不良であった。
【0129】
比較例6のトナーは、トナー粒子の赤外吸収スペクトルにおいて、波数701cm-1上に現れるピークの高さが0.0070A未満であった。上述のピークの高さは、トナー粒子に含まれるスチレンに由来する構造の量を示す。スチレンに由来する構造は、トナーに帯電性を付与する。比較例6のトナーは、スチレンに由来する構造の量が不足していたため、帯電量が不足し、形成される画像の発色性が不良であった。
【0130】
比較例7のトナーは、トナー粒子の赤外吸収スペクトルにおいて、波数701cm-1上に現れるピークの高さが0.0070A未満であった。スチレンに由来する構造は、適量であればトナー粒子への帯電性付与に有効であるが、過剰であればトナーの耐熱保存性を低下させる。そのため、比較例7のトナーは、耐熱保存性が不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明のトナーは、例えば複写機、プリンター、又は複合機において画像を形成するために用いることができる。
【符号の説明】
【0132】
1 トナー粒子
2 トナー母粒子
3 外添剤
4 シリカ粒子
5 他の外添剤粒子
図1