(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162515
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/345 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
B41J2/345 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078079
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木本 智士
【テーマコード(参考)】
2C065
【Fターム(参考)】
2C065GA01
2C065GB01
2C065GC01
2C065KB05
2C065KB15
(57)【要約】
【課題】第2方向における幅を小さくすることが可能なサーマルプリントヘッドを提供する。
【解決手段】本開示のサーマルプリントヘッド(100)は、主面(10a)を有する基板(10)と、主面上に配置されている絶縁膜(14)と、絶縁膜上に配置されている第1配線層(20)と、第1配線層上に配置されている第1層間絶縁膜(30)と、発熱体膜(40)と、発熱体膜を介在させて第1層間絶縁膜上に配置されている第2配線層(50)とを備える。主面には、隆起部(11)が形成されている。隆起部は、平面視において第1方向(DR1)に沿って延在している。第2配線層は、平面視において隆起部を交差するように第1方向に直交する第2方向(DR2)に沿って延在しており、かつ第1方向に沿って並んでいる第1配線部(51a)、第2配線部(52a)、第3配線部(51b)及び第4配線部(52b)を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有する基板と、
前記主面上に配置されている絶縁膜と、
前記絶縁膜上に配置されている第1配線層と、
前記第1配線層上に配置されている第1層間絶縁膜と、
発熱体膜と、
前記発熱体膜を介在させて前記第1層間絶縁膜上に配置されている第2配線層とを備えており、
前記主面には、隆起部が形成されており、
前記隆起部は、平面視において、第1方向に沿って延在しており、
前記第2配線層は、平面視において前記隆起部を交差するように前記第1方向に直交する第2方向に沿って延在しており、かつ前記第1方向に沿って並んでいる第1配線部、第2配線部、第3配線部及び第4配線部を有し、
前記第2配線部は、前記第1配線部と前記第3配線部との間にあり、
前記第3配線部は、前記第2配線部と前記第4配線部との間にあり、
前記第1配線部の前記第2方向における一方端部は、前記第2配線部の前記第2方向における一方端部に接続されており、
前記第3配線部の前記第2方向における一方端部は、前記第4配線部の前記第2方向における一方端部に接続されており、
前記第2配線部の前記第2方向における他方端部及び前記第4配線部の前記第2方向における他方端部は、前記第1配線層に電気的に接続されており、
前記第1配線部、前記第2配線部、前記第3配線部及び前記第4配線部は、平面視において前記隆起部と重なる位置で前記発熱体膜が露出するように部分的に除去されている、サーマルプリントヘッド。
【請求項2】
前記第1パッド、第2パッド及び第3パッドとをさらに備え、
前記第1配線部の前記第2方向における他方端部及び前記第3配線部の前記第2方向における他方端部は、それぞれ、前記第1パッド及び前記第2パッドに電気的に接続されており、
前記第1配線層は、前記第3パッドに電気的に接続されており、
前記第1パッド、前記第2パッド及び前記第3パッドは、平面視において前記第1方向に沿って並んでいる、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
前記第1配線層は、前記絶縁膜上の全面にわたって配置されている、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記第1配線層の厚さは、前記第2配線層の厚さよりも大きい、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
前記基板の構成材料は、シリコンである、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーマルプリントヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開2022-180152号公報(特許文献1)には、サーマルプリントヘッドが記載されている。特許文献1に記載のサーマルプリントヘッドは、基板と、抵抗体層と、配線層とを有している。
【0003】
基板は、主面を有している。主面には、凸部が形成されている。凸部は、平面視において第1方向に沿って延在している。配線層は、抵抗体層を介在させて、主面上に配置されている。配線層は、共通電極と、複数の個別電極とを有している。
【0004】
共通電極は、第1基部と、複数の第1延出部とを有している。第1基部は、平面視において第1方向に沿って延在している。第1延出部は、第1基部から第2方向に沿って延出している。第2方向は、第1方向に直交する方向である。第1延出部の先端は、平面視において凸部に重なっている。第1延出部は、第1方向において間隔を空けて並んでいる。個別電極は、第2基部と、第2延出部とを有している。第2延出部は、第2基部から第2方向に沿って延出している。第2延出部の先端は、平面視において凸部と重なっており、第1延出部の先端と間隔を空けて対向している。つまり、第1延出部の先端と第2延出部の先端との間からは、配線層の下にある抵抗体層が露出している。
【0005】
第2基部は、第1方向に沿って千鳥配列されている。第2基部は、ワイヤにより、ドライバICに接続される。このように、特許文献1に記載のサーマルプリントヘッドでは、ワイヤボンディングに供される複数のパッド(第2基部)が、第1方向に沿って複数の列をなすように並んでいることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のサーマルプリントヘッドでは、配線層は、フォトリソグラフィで形成されたレジストパターンをマスクとするエッチングによりパターンニングされる。フォトリソグラフィの露光が行われる際の凸部の斜面からの散乱の影響を軽減するため、第2基部は、第2方向において凸部から離して形成する必要がある。上記のとおり、特許文献1に記載のサーマルプリントヘッドでは、上記のとおり、第2基部が第1方向に沿って千鳥配列されている。
【0008】
そのため、特許文献1に記載のサーマルプリントヘッドでは、第2方向における幅が大きくなってしまう。本開示は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本開示は、第2方向における幅を小さくすることが可能なサーマルプリントヘッドを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のサーマルプリントヘッドは、主面を有する基板と、主面上に配置されている絶縁膜と、絶縁膜上に配置されている第1配線層と、第1配線層上に配置されている第1層間絶縁膜と、発熱体膜と、発熱体膜を介在させて第1層間絶縁膜上に配置されている第2配線層とを備える。主面には、隆起部が形成されている。隆起部は、平面視において、第1方向に沿って延在している。第2配線層は、平面視において隆起部を交差するように第1方向に直交する第2方向に沿って延在しており、かつ、第1方向に沿って並んでいる第1配線部、第2配線部、第3配線部及び第4配線部を有する。第2配線部は、第1配線部と第3配線部との間にある。第3配線部は、第2配線部と第4配線部との間にある。第1配線部の第2方向における一方端部は、第2配線部の第2方向における一方端部に接続されている。第3配線部の第2方向における一方端部は、第4配線部の第2方向における一方端部に接続されている。第2配線部の第2方向における他方端部及び第4配線部の第2方向における他方端部は、第1配線層に電気的に接続されている。第1配線部、第2配線部、第3配線部及び第4配線部は、平面視において隆起部と重なる位置で発熱体膜が露出するように部分的に除去されている。
【発明の効果】
【0010】
本開示のサーマルプリントヘッドによると、第2方向における幅を小さくすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】サーマルプリントヘッド100の平面図である。
【
図3】
図1のIII-IIIにおける断面図である。
【
図5】層間絶縁膜60、パッド71及びパッド72の図示を省略したサーマルプリントヘッド100の平面図である。
【
図6】サーマルプリントヘッド100の製造工程図である。
【
図7】隆起部形成工程S2を説明する断面図である。
【
図8】グレーズ層形成工程S3を説明する断面図である。
【
図9】絶縁膜形成工程S4を説明する断面図である。
【
図10】第1配線層形成工程S5を説明する断面図である。
【
図11】第1層間絶縁膜形成工程S6を説明する断面図である。
【
図12A】第2配線層形成工程S7を説明する第1断面図である。
【
図12B】第2配線層形成工程S7を説明する第2断面図である。
【
図12C】第2配線層形成工程S7を説明する第3断面図である。
【
図12D】第2配線層形成工程S7を説明する第4断面図である。
【
図12E】第2配線層形成工程S7を説明する第5断面図である。
【
図13】第2層間絶縁膜形成工程S8を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面では、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。実施形態に係るサーマルプリントヘッドを、サーマルプリントヘッド100とする。
【0013】
(サーマルプリントヘッド100の構成)
以下に、サーマルプリントヘッド100の構成を説明する。
【0014】
図1は、サーマルプリントヘッド100の平面図である。
図2は、
図1のII-IIにおける断面図である。
図3は、
図1のIII-IIIにおける断面図である。
図4は、
図1のIV-IVにおける断面図である。
図5は、層間絶縁膜60、パッド71及びパッド72の図示を省略したサーマルプリントヘッド100の平面図である。
図1から
図5に示されるように、サーマルプリントヘッド100は、基板10と、配線層20と、層間絶縁膜30と、発熱体膜40と、配線層50と、層間絶縁膜60と、複数のパッド71と、パッド72とを有している。
【0015】
基板10の構成材料は、例えば、単結晶のシリコンである。但し、基板10の構成材料は、これに限られるものではない。基板10は、主面10aと、主面10bとを有している。主面10a及び主面10bは、基板10の厚さ方向における端面である。主面10bは、主面10aの反対面である。
【0016】
主面10aには、隆起部11が形成されている。隆起部11は、平面視において、第1方向に沿って延在している。第1方向DR1は、平面視におけるサーマルプリントヘッド100の長手方向に対応している。第2方向DR2は、平面視において第1方向DR1に直交している方向である。
【0017】
主面10aを含む基板10の表面には、絶縁膜12が形成されていてもよい。絶縁膜12の構成材料は、例えばシリコン酸化物である。隆起部11の頂面上には、絶縁膜12を介在させて、グレーズ層13が形成されていてもよい。グレーズ層13の構成材料は、例えばガラス材料である。絶縁膜12上には、グレーズ層13を覆うように、絶縁膜14が形成されていてもよい。絶縁膜14の構成材料は、例えばシリコン酸化物である。
【0018】
配線層20の構成材料は、例えば、銅、アルミニウム、アルミニウム-銅合金である。配線層20の厚さを、厚さT1とする。配線層20は、主面10a上に配置されている。配線層20は、好ましくは、絶縁膜14上の全面にわたって配置されている。なお、基板10の外周縁部上において配線層20が除去されていても、配線層20は、絶縁膜14上の全面にわたって配置されていると見做される。配線層20は、例えば、第1層と、第2層とを有している。第2層は、第1層上に配置されている。第2層の厚さは、第1層の厚さよりも大きい。配線層20と絶縁膜14との間には、密着層21が介在されていてもよい。密着層21の構成材料は、例えば、チタンである。
【0019】
層間絶縁膜30の構成材料は、例えば、シリコン酸化物である。層間絶縁膜30は、配線層20上に配置されている。層間絶縁膜30には、複数のコンタクト31と、コンタクト32が形成されている。コンタクト31及びコンタクト32からは、配線層20が露出している。
【0020】
配線層50は、発熱体膜40を介在させて層間絶縁膜30上に配置されている。発熱体膜40の構成材料は、例えば窒化タンタルである。配線層50の構成材料は、例えば銅、アルミニウム、アルミニウム-銅合金である。発熱体膜40と配線層50との間には、伝熱抑制層41が介在されている。伝熱抑制層41の構成材料は、例えばチタンである。
【0021】
配線層50の厚さを、厚さT2とする。厚さT1は、好ましくは、厚さT2よりも大きい。厚さT1は、厚さT2の5倍以上又は7倍以上であることがさらに好ましい。配線層50は、複数の配線部51と、複数の配線部52とを有している。配線部51及び配線部52は、平面視において、隆起部11と交差するように第2方向DR2に沿って延在している。配線部51及び配線部52は、平面視において、第1方向DR1に沿って交互に並んでいる。
【0022】
複数の配線部51には、配線部51a及び配線部51bが含まれている。複数の配線部52には、配線部52a及び配線部52bが含まれている。配線部51bは、第2方向DR2において、配線部51aと配線部52aとの間にある。配線部52aは、第2方向DR2において、配線部51bと配線部52bとの間にある。このことを別の観点から言えば、配線部51a、配線部52a、配線部51b及び配線部52bは、第2方向DR2に沿って、この順で並んでいる。
【0023】
サーマルプリントヘッド100は、平面視において、第1端100aと第2端100bとを有している。第1端100a及び第2端100bは、第2方向DR2におけるサーマルプリントヘッド100の両端である。隆起部11は、第2方向DR2において、第2端100bよりも第1端100aの近くにある。
【0024】
配線部51は、第2方向DR2において、一方端部及び他方端部を有している。配線部51の第2方向DR2における一方端部は、平面視において、配線部51の第2方向DR2における他方端部よりも第1端100aの近くにある。配線部52は、第2方向DR2において、一方端部及び他方端部を有している。配線部52の第2方向DR2における一方端部は、平面視において、配線部52の第2方向DR2における他方端部よりも第1端100aの近くにある。配線部51の第2方向DR2における一方端部及び配線部52の第2方向DR2における一方端部は、例えば、平面視においてグレーズ層13よりも第1端100aに近い位置で隆起部11に重なっている。
【0025】
配線部52の他方端部は、コンタクト31から露出している配線層20の部分の上に配置されている。これにより、配線部52の他方端部が、配線層20に電気的に接続されている。配線層50は、中継部53をさらに有している。中継部53の一部は、コンタクト32から露出している配線層20の部分の上に配置されている。これにより、中継部53が、配線層20に電気的に接続されている。
【0026】
配線部51aの第2方向DR2における一方端部は、配線部52aの第2方向DR2における一方端部と接続されている。配線部51bの第2方向DR2における一方端部は、配線部52bの第2方向DR2における他方端部と接続されている。
【0027】
配線部51及び配線部51の下にある伝熱抑制層41は、平面視において隆起部11と重なる位置(より具体的にはグレーズ層13と重なる位置)で部分的に除去されている。除去されている配線部51及び伝熱抑制層41の部分からは、発熱体膜40が露出している。除去されている配線部51の部分からは、発熱体膜40及び伝熱抑制層41が露出している。除去されている配線部51の部分は、配線部51の第2方向DR2における一方端部から離れている。
【0028】
配線部52及び配線部52の下にある伝熱抑制層41は、平面視において隆起部11と重なる位置(より具体的にはグレーズ層13と重なる位置)で部分的に除去されている。除去されている配線部52及び伝熱抑制層41の部分からは、発熱体膜40が露出している。除去されている配線部52の部分からは、発熱体膜40及び伝熱抑制層41が露出している。除去されている配線部52の部分は、配線部52の第2方向DR2における一方端部から離れている。
【0029】
層間絶縁膜60は、配線層50、配線部51から露出している伝熱抑制層41の部分、配線部52から露出している伝熱抑制層41の部分、配線部51及びその下にある伝熱抑制層41から露出している発熱体膜40の部分並びに配線部52及びその下にある伝熱抑制層41から露出している発熱体膜40の部分を覆うように、層間絶縁膜30上に配置されている。層間絶縁膜60の構成材料は、例えば、シリコン窒化物である。
【0030】
層間絶縁膜60には、複数の貫通穴61と、貫通穴62とが形成されている。貫通穴61からは、配線部51(配線部51a、配線部51b)の第2方向DR2における他方端部が露出している。貫通穴62からは、中継部53が露出している。複数の貫通穴61及び貫通穴62は、好ましくは、第2方向DR2に沿って1列をなすように並んでいる。
【0031】
パッド71は貫通穴61から露出している配線部51(配線部51a、配線部51b)の第2方向DR2における他方端部上に配置されており、パッド72は貫通穴62から露出している中継部53の部分の上に配置されている。これにより、パッド71は配線部51(配線部51a、配線部51b)の第2方向DR2における他方端部に電気的に接続されており、パッド72は中継部53に電気的に接続されている。中継部53は上記のとおり配線層20に電気的に接続されているため、パッド72は、配線層20に電気的に接続されている。パッド71及びパッド72は、例えば、ニッケル層、ニッケル層上に配置されているパラジウム層と、パラジウム層上に配置されている金層とで構成されている。
【0032】
上記のように、複数の貫通穴61及び貫通穴62は、第2方向DR2に沿って1列をなすように並んでいる。そのため、パッド71及びパッド72は、第2方向DR2に沿って1列をなすように並んでいる。
【0033】
(サーマルプリントヘッド100の動作)
以下に、サーマルプリントヘッド100の動作を説明する。
【0034】
パッド72は配線層20に電気的に接続されており、配線層20は配線部52の第2方向DR2における他方端部に電気的に接続されているため、複数の配線部52には、パッド72から共通電位が供給される。
【0035】
パッド71には、ドライバIC(図示せず)の出力端子がボンディングワイヤ、FPC(Flexible Printed Circuit)で電気的に接続される。これにより、複数の配線部51の各々には、ドライバICからの出力電位が選択的に供給される。これにより、電位が供給されている配線部51及びその配線部51と接続されている配線部52から露出している発熱体膜40が、選択的に発熱する。そして、選択的に発熱する発熱体膜40の上方にある層間絶縁膜60に紙が接触することで、当該紙に対する印字が行われることになる。
【0036】
(サーマルプリントヘッド100の製造方法)
以下に、サーマルプリントヘッド100の製造方法を説明する。
【0037】
図6は、サーマルプリントヘッド100の製造工程図である。
図6に示されているように、サーマルプリントヘッド100の製造方法は、準備工程S1と、隆起部形成工程S2と、グレーズ層形成工程S3と、絶縁膜形成工程S4と、第1配線層形成工程S5と、第1層間絶縁膜形成工程S6と、第2配線層形成工程S7と、第2層間絶縁膜形成工程S8と、パッド形成工程S9と、個片化工程S10とを有している。
【0038】
準備工程S1では、基板10が準備される。
図7は、隆起部形成工程S2を説明する断面図である。
図7に示されているように、隆起部形成工程S2では、隆起部11が形成される。隆起部形成工程S2では、第1に、主面10a上にハードマスクが形成される。ハードマスクの形成は、基板10の表面にハードマスクの構成材料(例えば、シリコン窒化物)を成膜するとともに、主面10a上に成膜されているハードマスクの構成材料をパターンニングすることにより行われる。ハードマスクの構成材料の成膜は例えば減圧CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて行われ、ハードマスクの構成材料のパターンニングはフォトリソグラフィで形成されたレジストパターンをマスクとするRIE(Reactive Ion Etching)等のドライエッチングにより行われる。ドライエッチング(RIE)は、主面10a上にあるハードマスクの構成材料に対して行われるため、主面10a以外の基板10の表面上にはハードマスクの構成材料が残存する。
【0039】
第2に、上記のハードマスク及び主面10a以外の基板10の表面上にあるハードマスクの構成材料を用いて、ウェットエッチングが行われる。このウェットエッチングは、例えば、水酸化カリウム水溶液を用いて行われる。第4に、上記のハードマスク及び主面10a以外の表面に残存しているハードマスクの構成材料が、ウェットエッチングにより除去される。このウェットエッチングは、例えば、フッ酸を用いて行われる。以上により、主面10aに隆起部11が形成される。
【0040】
図8は、グレーズ層形成工程S3を説明する断面図である。
図8に示されるように、グレーズ層形成工程S3では、絶縁膜12及びグレーズ層13が形成される。グレーズ層形成工程S3では、第1に、熱酸化、LP(Low Pressure)-CVD等が行われることにより、絶縁膜12が形成される。第2に、グレーズ層13が形成される。グレーズ層13は、例えば、絶縁膜12を介在させて隆起部11の頂面上にガラス材料を含むペーストをディスペンサやスクリーン印刷等を用いて塗布するとともに、塗布されたペーストを焼成することにより形成される。
図9は、絶縁膜形成工程S4を説明する断面図である。
図9に示されるように、絶縁膜形成工程S4では、絶縁膜14が形成される。絶縁膜14は、TEOS(Tetra Eth Oxy Silane)を用いたプラズマCVD法等により形成される。
【0041】
図10は、第1配線層形成工程S5を説明する断面図である。
図10に示されているように、第1配線層形成工程S5では、配線層20及び密着層21が形成される。第1配線層形成工程S5では、第1に、例えばスパッタリングにより、密着層21及び配線層20の第1層が順次形成される。第2に、配線層20の第1層をシード層として電解めっきが行われることにより、配線層20の第2層が成長し、配線層20が形成される。なお、配線層20が形成された後、配線層20及び密着層21に対するパターンニング(例えば、外周縁部にある配線層20及び密着層21の除去)が行われてもよい。このパターンニングは、例えば、ウェットエッチングにより行われる。
【0042】
図11は、第1層間絶縁膜形成工程S6を説明する断面図である。
図11に示されるように、層間絶縁膜30が形成される。第1層間絶縁膜形成工程S6では、第1に、層間絶縁膜30の構成材料が、例えばプラズマCVD法により成膜される。第2に、成膜された層間絶縁膜30の構成材料上に、レジストパターンが形成される。レジストパターンは、コンタクト31及びコンタクト32(
図11中において図示せず)に対応する位置に開口部を有している。レジストパターンは、フォトリソグラフィで形成される。第3に、上記のレジストパターンをマスクとしてRIE等のドライエッチングが行われることにより、コンタクト31及びコンタクト32(
図11中において図示せず)が形成される。
【0043】
図12Aは、第2配線層形成工程S7を説明する第1断面図である。
図12Aに示されるように、第2配線層形成工程S7では、第1に、層間絶縁膜30上に、発熱体膜40の構成材料、伝熱抑制層41の構成材料及び配線層50の構成材料が、例えばスパッタリングにより順次成膜される。
図12Bは、第2配線層形成工程S7を説明する第2断面図である。
図12Bに示されているように、第2配線層形成工程S7では、第2に、成膜された配線層50の構成材料がパターンニングされることにより、配線部51、配線部52及び中継部53(
図12B中において図示せず)が形成される。このパターンニングは、フォトリソグラフィで形成されたレジストパターンをマスクとするウェットエッチングにより行われる。
【0044】
第2配線層形成工程S7では、第3に、成膜された伝熱抑制層41の構成材料がパターンニングされることにより、伝熱抑制層41が形成される。このパターンニングは、配線部51、配線部52及び中継部53をマスクとするウェットエッチングにより行われる。
図12Cは、第2配線層形成工程S7を説明する第3断面図である。
図12Cに示されるように、第2配線層形成工程S7では、第3に、配線部51及び配線部52が部分的に除去される。配線部51及び配線部52の部分的な除去は、フォトリソグラフィで形成されたレジストパターンをマスクとするウェットエッチングにより行われる。
【0045】
図12Dは、第2配線層形成工程S7を説明する第4断面図である。
図12Dに示されるように、第2配線層形成工程S7では、第4に、配線部51から露出している伝熱抑制層41及び配線部52から露出している伝熱抑制層41が、部分的に除去される。伝熱抑制層41の部分的な除去は、フォトリソグラフィで形成されたレジストパターンをマスクとするウェットエッチングにより行われる。
図12Eは、第2配線層形成工程S7を説明する第5断面図である。
図12Eに示されるように、第2配線層形成工程S7では、第5に、発熱体膜40の構成材料がパターンニングされる。このパターンニングは、フォトリソグラフィで形成されたレジストパターンをマスクとするRIE等のドライエッチングにより行われる。
【0046】
図13は、第2層間絶縁膜形成工程S8を説明する断面図である。
図13に示されるように、第2層間絶縁膜形成工程S8では、第1に、層間絶縁膜60の構成材料が、例えばプラズマCVD法により成膜される。第2に、成膜された層間絶縁膜60の構成材料上にレジストパターンが形成される。レジストパターンは、貫通穴61及び貫通穴62(
図13中において図示せず)に対応する位置に開口部を有している。レジストパターンは、フォトリソグラフィで形成される。第3に、上記のレジストパターンをマスクとしてRIE等のドライエッチングが行われることにより、貫通穴61及び貫通穴62(
図13中において図示せず)が形成される。
【0047】
パッド形成工程S9では、パッド71及びパッド72が形成される。パッド71(パッド72)は、パッド71(パッド72)を構成している各層が、例えば無電解めっき法で順次成長されることにより形成される。個片化工程S10では、基板10のダイシングが行われることにより、
図1から
図5に示される構造のサーマルプリントヘッド100が複数個得られる。
【0048】
<サーマルプリントヘッド100の効果>
以下に、サーマルプリントヘッド100の効果を説明する、
サーマルプリントヘッド100では、配線部52の第2方向DR2における他方端部が配線層20に電気的に接続されており、配線層20にパッド72が電気的に接続されている。パッド72の配置には制限が少ないため、パッド71及びパッド72を第1方向DR1に沿って1列をなすように並べることが可能である。そのため、サーマルプリントヘッド100によると、第2方向DR2におけるサーマルプリントヘッド100の幅(第1端100aと第2端100bとの間の距離)を小さくすることが可能である。
【0049】
なお、第2方向DR2におけるサーマルプリントヘッド100の幅が小さくなれば、製造時に欠陥の影響を受けにくくなるため、サーマルプリントヘッド100の歩留まりが改善される。また、第2方向DR2におけるサーマルプリントヘッド100の幅が小さくなれば、1枚のウェハから製造できるサーマルプリントヘッド100の取れ数も増加する。
【0050】
サーマルプリントヘッド100では、パッド72と配線部52の第2方向DR2における他方端部と間で電流が配線層20を流れるため、パッド72と配線部52の第2方向DR2における他方端部と間における電圧降下を抑制することが可能である。また、厚さT1が厚さT2よりも大きい場合及び/又は配線層20が絶縁膜14上の全面にわたって配置されている場合には、配線層20の電気抵抗値がさらに小さくなり、パッド72と配線部52の第2方向DR2における他方端部と間における電圧降下をさらに抑制することが可能である。
【0051】
(付記)
本開示の実施形態には、以下の構成が含まれている。
【0052】
<付記1>
主面を有する基板と、
前記主面上に配置されている絶縁膜と、
前記絶縁膜上に配置されている第1配線層と、
前記第1配線層上に配置されている第1層間絶縁膜と、
発熱体膜と、
前記発熱体膜を介在させて前記第1層間絶縁膜上に配置されている第2配線層とを備えており、
前記主面には、隆起部が形成されており、
前記隆起部は、平面視において、第1方向に沿って延在しており、
前記第2配線層は、平面視において前記隆起部を交差するように前記第1方向に直交する第2方向に沿って延在しており、かつ前記第1方向に沿って並んでいる第1配線部、第2配線部、第3配線部及び第4配線部を有し、
前記第2配線部は、前記第1配線部と前記第3配線部との間にあり、
前記第3配線部は、前記第2配線部と前記第4配線部との間にあり、
前記第1配線部の前記第2方向における一方端部は、前記第2配線部の前記第2方向における一方端部に接続されており、
前記第3配線部の前記第2方向における一方端部は、前記第4配線部の前記第2方向における一方端部に接続されており、
前記第2配線部の前記第2方向における他方端部及び前記第4配線部の前記第2方向における他方端部は、前記第1配線層に電気的に接続されており、
前記第1配線部、前記第2配線部、前記第3配線部及び前記第4配線部は、平面視において前記隆起部と重なる位置で前記発熱体膜が露出するように部分的に除去されている、サーマルプリントヘッド。
【0053】
<付記2>
第1パッド、第2パッド及び第3パッドとをさらに備え、
前記第1配線部の前記第2方向における他方端部及び前記第3配線部の前記第2方向における他方端部は、それぞれ、前記第1パッド及び前記第2パッドに電気的に接続されており、
前記第1配線層は、前記第3パッドに電気的に接続されており、
前記第1パッド、前記第2パッド及び前記第3パッドは、平面視において前記第1方向に沿って並んでいる、付記1に記載のサーマルプリントヘッド。
【0054】
<付記3>
前記第1配線層は、前記絶縁膜上の全面にわたって配置されている、付記1又は付記2に記載のサーマルプリントヘッド。
【0055】
<付記4>
前記第1配線層の厚さは、前記第2配線層の厚さよりも大きい、付記1から付記3のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【0056】
<付記5>
前記基板の構成材料は、シリコンである、付記1から付記4のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【0057】
以上のように本開示の実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むことが意図される。
【符号の説明】
【0058】
10 基板、10a 主面、10b 主面、11 隆起部、12 絶縁膜、13 グレーズ層、20 配線層、21 密着層、30 層間絶縁膜、31 コンタクト、32 コンタクト、40 発熱体膜、41 伝熱抑制層、50 配線層、51,51a,51b 配線部、52,52a,52b 配線部、53 中継部、60 層間絶縁膜、61,62 貫通穴、71 パッド、72 パッド、100 サーマルプリントヘッド、100a 第1端、100b 第2端、DR1 第1方向、DR2 第2方向、S1 準備工程、S2 隆起部形成工程、S3 グレーズ層形成工程、S4 絶縁膜形成工程、S5 第1配線層形成工程、S6 第1層間絶縁膜形成工程、S7 第2配線層形成工程、S8 第2層間絶縁膜形成工程、S9 パッド形成工程、S10 個片化工程、T1,T2 厚さ。