(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162517
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 1/18 20060101AFI20241114BHJP
E06B 3/12 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
E06B1/18 Z
E06B3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078082
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】北島 拓也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 達也
【テーマコード(参考)】
2E014
【Fターム(参考)】
2E014AA02
2E014AA03
2E014BA02
2E014BB00
2E014BC00
(57)【要約】
【課題】施工効率の向上とともにコストの抑制を可能とする建具を提供する。
【解決手段】躯体の開口部7に配置される上枠21A及び下枠22Aを有し、上枠21A及び下枠22Aの内側に戸体4が配置され、上枠21Aは、開口部7に固定される躯体側上枠(第1の形材)70と、躯体側上枠70に結合されるとともに、戸体4側に配置される障子側上枠(第2の形材)80と、を含み、下枠22Aは、開口部7に固定される躯体側下枠(第1の形材)74と、躯体側下枠74に結合されるとともに、戸体4側に配置される障子側下枠(第2の形材)84と、を含み、上枠21Aは、躯体側上枠70と障子側上枠80とがカシメ結合により結合されるカシメ結合部400を有し、下枠22Aは、躯体側下枠74と障子側下枠84とがカシメ結合により結合されるカシメ結合部410を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の第1の形材と、前記第1の形材に少なくともその一部が重ねて結合される金属製の第2の形材と、を含む建具部材と、
前記建具部材に組み込まれる障子と、を備える建具であって、
前記建具部材は、前記第1の形材と前記第2の形材とがカシメ結合により結合されるカシメ結合部を有する、建具。
【請求項2】
前記建具部材は、前記第1の形材と前記第2の形材とが係合される係合部を更に有し、
前記カシメ結合部は、前記係合部により前記第1の形材及び前記第2の形材の動きが規制される向きでカシメ結合される、請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記カシメ結合部は、見込方向で当該建具の室内側に配置される、請求項1または2に記載の建具。
【請求項4】
前記建具部材は、躯体の開口部に配置される枠体を含み、
前記枠体の内側に前記障子が配置され、
前記枠体は、前記開口部に固定される躯体側枠体と、前記躯体側枠体に結合されるとともに、前記障子側に配置される障子側枠体と、を含み、
前記躯体側枠体が前記第1の形材を構成し、
前記障子側枠体が前記第2の形材を構成する、請求項1または2に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、枠組みされる枠体の内側に戸体や窓等の障子が組み込まれる建具において、建具を構成する形材の板状部分どうしをねじ止めする構造が知られている。例えば特許文献1には、下框の底板部と下框のガラス溝の溝底板部との間に取付けアタッチメントを配置し、ガラス溝の溝底板部と取付けアタッチメントの取付け板部とをねじ止めするガラス付建具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように形材どうしをねじ止めするにあたっては、例えば、一方側にねじ挿通孔を形成し、他方側にねじ孔を形成するため、加工に手間がかかったり、ねじ挿通孔やねじ孔の寸法誤差により施工に不具合が生じたりする。また、ねじ止めするためにはアルミの肉厚を大きくする必要があるとともに、多数のねじを使用する場合には部品点数が増大し、コスト面で不利になる。そこで本開示は、施工の効率が向上するとともにコストを抑制することができる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、金属製の第1の形材と、前記第1の形材に少なくともその一部が重ねて結合される金属製の第2の形材と、を含む建具部材と、前記建具部材に組み込まれる障子と、を備える建具であって、前記建具部材は、第1の形材と前記第2の形材とがカシメ結合により結合されるカシメ結合部を有する、建具に関する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係る建具を室外側から見た姿図である。
【
図2】実施形態に係る建具を室内側から見た姿図である。
【
図3】実施形態に係る建具であって、当該建具が備える上障子及び下障子が開いた状態を示す斜視図である。
【
図4】
図2のIV-IV線に対応する一部破断断面図である。
【
図7】実施形態のカシメ結合部を示す斜視図である。
【
図8】実施形態のカシメ結合部の配置例を示す建具の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しつつ実施形態について説明する。なお、本明細書において、「見付方向」とは、建物に形成された開口部に納められた建具における障子の面方向を意味し、「見込方向」とは、上記障子の厚さ方向(奥行方向)を意味する。また、「幅方向」とは、障子を正面から見た場合の左右方向を意味し、「上下方向」とは、障子を正面から見た場合の上下方向を意味する。また、「平行」とは、完全な平行だけでなく、一定の誤差範囲内の実質的な平行も含む。また、「垂直」とは、完全な垂直だけでなく、一定の誤差範囲内の実質的な垂直も含む。
【0008】
図1は、実施形態の建具1を室外側から見た姿図である。
図2は、建具1を室内側から見た姿図である。
図3は、建具1が備える上障子5及び下障子6が開いた状態を示す斜視図である。
【0009】
はじめに、
図1~
図3を参照して、建具1の基本構成について説明する。実施形態の建具1は、勝手口ドア等のドアである。建具1は、建物に形成された縦長矩形の開口部7に納められる。建具1は、建物の開口部7に取り付けられる枠体20と、枠体20の内側に開閉可能に配置される障子としての戸体4と、を備える。戸体4は、一方の側部が枠体20にヒンジ結合されたいわゆる開き戸である。
【0010】
枠体20は、上下にそれぞれ配置される上枠21A及び下枠22Aと、吊元側の縦枠23及び戸先側の縦枠24により矩形に枠組みされる。上枠21A及び下枠22Aは本開示に係る枠体ならびに建具部材の一例であって、幅方向(左右方向)に延びている。各縦枠23、24は、上下方向に延びている。戸体4は、スイング框体40と、スイング框体40に嵌め込まれる上障子5及び下障子6と、を備える。
【0011】
スイング框体40は、スイング上框41及びスイング下框42と、吊元側のスイング縦框43及び戸先側のスイング縦框44により矩形に枠組みされる。戸先側のスイング縦框44は、高さ方向の略中央部にドアノブ8aを有する。室内側のドアノブ8aの上下には、図示しない錠が配置される。
図2に示すように、戸先側のスイング縦框44は、当該錠を開閉するサムターン8b,8cを有する。サムターン8b、8cを回転させることにより、図示しないデッドボルトを操作して戸体4を施錠できるようになっている。
【0012】
上障子5は、框体50と、框体50に嵌め込まれて固定されたガラス55と、を備える。框体50は、上框51と、下框52と、吊元側の縦框53及び戸先側の縦框54と、により矩形に框組みされる。下障子6は、框体60と、框体60に嵌め込まれて固定されたガラス65と、を備える。框体60は、上框61と、下框62と、吊元側の縦框63及び戸先側の縦框64と、により矩形に框組みされる。
【0013】
上障子5及び下障子6は、採風窓の構造を備える。具体的には、下障子6は、スイング框体40内において見込方向かつ上下方向に移動可能、または、見付方向に移動可能に設けられている。すなわち、下障子6を室内側に引きながら引き上げているときには、下障子6は、見込方向(室内の方向)かつ見付方向(上方向)に移動しており、その後に、下障子6を上方へ引き上げているときには、下障子6は、上下方向にのみ移動する。上障子5及び下障子6は、いわゆるフラットスライド構造を備える。すなわち、上障子5と下障子6とにより構成される採風窓が閉鎖された状態では、下障子6は、上障子5の下方の同一平面内に配置される。
【0014】
建具1は、上下方向に延びるスイング縦框43及びスイング縦框44に沿って、上障子5を下方向に、下障子6を上方向にそれぞれ移動させることにより、室外と室内とを連通させて採風することができる。框体60の上框61は、下障子6を閉鎖状態に固定するための一対のスライドロック8dを有する。一対のスライドロック8dは、上框61の、戸先側と吊元側の両端にそれぞれ配置されている。
【0015】
戸体4は、室内側からドアノブ8aを把持して反時計回りに回動させ、図示しないデットボルトを操作しつつ、戸先側のスイング縦框44を室外側に押し出し、戸体4を図示しないヒンジを介して回動させることにより、開けることができる。
【0016】
上障子5のガラス55及び下障子6のガラス65は、例えば、複数枚(例えば、3枚)の板ガラスを備えた断熱性に優れる複層ガラスが用いられるが、これに限定されない。
【0017】
以上が、実施形態の建具1の基本構成である。次いで、
図4~
図8を参照して、本開示の実施形態に係る上枠21A及び下枠22Aについて詳述する。
図4は、建具1の縦断面図であって、
図2のIV-IV線に対応する断面図である。なお、
図4では、上障子5及び下障子6の図示を省略している。
図5は、
図4のV部拡大図である。
図6は、
図4のVI部拡大図である。
【0018】
なお、
図4は、
図2に示されない上側躯体2A及び下側躯体3Aを示している。上側躯体2Aは、上枠21Aの上方に配置される上側躯体フレーム210Aと、上枠21Aの室内側に配置される室内側躯体フレーム220Aと、壁材230Aと、を含む。これら上側躯体フレーム210A、室内側躯体フレーム220A及び壁材230Aに、上枠21Aが固定される。下側躯体3Aは、下枠22Aの下方に配置される下側躯体フレーム310Aと、床材320Aと、を含む。これら下側躯体フレーム310A及び床材320Aに、下枠22Aが固定される。
図5及び
図6も同様に、上側躯体2A及び下側躯体3Aをそれぞれ示している。
【0019】
(上枠21A)
図4及び
図5に示すように、上枠21Aは、躯体側上枠70と、障子側上枠80と、の2つの部材から構成される。躯体側上枠70は、上側躯体2Aの上側躯体フレーム210A側に配置され、この上側躯体フレーム210Aに固定される。障子側上枠80は、躯体側上枠70よりも見付方向の内側であって戸体4側に配置される。
【0020】
(上枠21Aの躯体側上枠70)
躯体側上枠70は、本開示の躯体側枠体ならびに第1の形材の一例である。
図5に示すように、躯体側上枠70は、ねじ101により上側躯体フレーム210Aに固定される。躯体側上枠70は、アルミニウム等の金属からなる形材であって、見込方向と平行な平板状のベース部710と、ベース部710の室外側の外側端部720と、ベース部710の室内側の内側端部730と、含む。ベース部710と外側端部720との間、及びベース部710と内側端部730との間のそれぞれには、タッピングホール部711、712が形成されている。
【0021】
外側端部720は、見込方向と平行な上下一対の上板部721及び下板部722と、これら上板部721と下板部722とを連結する見付方向と平行な連結板部723と、を含む。連結板部723の上端部及び中央部のそれぞれから、上下一対の位置決め片723a、723bが室内側に延びている。連結板部723の下端には、室内側に開口する第1係合溝724が形成されている。ねじ101は、室外側から、連結板部723の位置決め片723a、723bの間に通されて上側躯体フレーム210Aにねじ込まれる。
【0022】
内側端部730は、見込方向と平行な結合板部731と、結合板部731の室内側下端から垂下する垂下部732と、を含む。結合板部731は、ベース部710よりも下方に形成される。タッピングホール部712の下端に対応する部分であって結合板部731の室外側には、室内側に開口する第2係合溝733が形成されている。垂下部732の下端には、室外側に突出する第1係合片734が形成されている。
【0023】
(上枠21Aの障子側上枠80)
障子側上枠80は、本開示の障子側枠体ならびに第2の形材の一例である。
図5に示すように、障子側上枠80は、ねじ102により、室内側躯体フレーム220Aに取付け枠材90を介して固定される。障子側上枠80は、アルミニウム等の金属からなる断面略L字状の形材であって、見込方向と平行なベース部810と、ベース部810の室内側の端部から下方に垂下する垂下部811と、垂下部811の上方、かつ室内側に配置される結合板部813と、を含む。
【0024】
ベース部810の室外側端部には、躯体側上枠70の第1係合溝724に嵌入する先端嵌入部814が形成されている。第1係合溝724及び先端嵌入部814は、躯体側上枠70と障子側上枠80とを係合する係合部211を構成している。垂下部811の上端部には、室内側に突出するリブ状の突起815が形成されている。垂下部811の下端の室外側には、気密材装着部816が形成され、この気密材装着部816に、気密材817が装着される。気密材817は、閉状態の戸体4におけるスイング上框41の室内側の面に当接する。結合板部813の室外側の端部には、室外側に突出し、躯体側上枠70の第2係合溝733に嵌入する突出部818が形成されている。第2係合溝733及び突出部818は、躯体側上枠70と障子側上枠80とを係合する係合部212を構成している。
【0025】
(取付け枠材90)
取付け枠材90は、例えば樹脂製の形材であって、室内側躯体フレーム220A及び壁材230Aに固定される。取付け枠材90は、障子側上枠80の垂下部811に室内側から対向してこの垂下部811と平行に配置される第1固定部910と、第1固定部910の上端から室内側に垂直に延びる第2固定部920と、を含む。第2固定部920は、上方に延びる前後一対の弾性片921、922を有する。これら弾性片921、922のうち、室外側の弾性片921の上端には、障子側上枠80の垂下部811の突起815に弾性的に係合する第1係合端部921aが形成されている。室内側の弾性片922の上端には、躯体側上枠70の垂下部732の第1係合片734に弾性的に係合する第2係合端部922aが形成されている。
【0026】
第1固定部910は、室内側から室内側躯体フレーム220Aに通されるねじ102が貫通され、そのねじ102が障子側上枠80の垂下部811にねじ込まれることにより、室内側躯体フレーム220Aに固定される。これにより、障子側上枠80は、取付け枠材90を介して室内側躯体フレーム220Aに固定される。第2固定部920は、見付方向内側から第2固定部920の室内側端部に通されるねじ103が貫通され、そのねじ103が、取付け部材103aを介して壁材230Aにねじ込まれることにより、壁材230Aに固定される。
【0027】
(上枠21Aの組み立てと施工)
躯体側上枠70の第1係合溝724に、障子側上枠80の先端嵌入部814が嵌入されて係合されるとともに、躯体側上枠70の第2係合溝733に、障子側上枠80の突出部818が嵌入されて係合される。これにより、上枠21Aは、躯体側上枠70と障子側上枠80とが係合される係合部211、212を有することとなる。そして、躯体側上枠70の結合板部731と障子側上枠80の結合板部813とが、カシメ結合される。すなわち、上枠21Aは、躯体側上枠70と障子側上枠80とがカシメ結合により結合されるカシメ結合部400を有する。これにより、上枠21Aが組み立てられる。
【0028】
室外側の係合部211及び室内側の係合部212は、見付方向において互いに若干オフセットしているものの、見込方向にほぼ沿った位置で互いに離間している。そしてカシメ結合部400は、室内側の係合部212に近接してこの係合部212の見込方向室内側に位置している。カシメ結合部400は、建具1全体としてみた場合に、当該建具1の室内側に配置される。
【0029】
図7は、カシメ結合部400を示している。カシメ結合部400は、躯体側上枠70の結合板部731と障子側上枠80の結合板部813とを重ね、躯体側上枠70の結合板部731側からカシメ用の打ち込みピン等の工具を打ち込んで結合板部731と結合板部813とを塑性変形させ、互いに圧着した状態とすることにより形成される。カシメ結合部400は、係合部211、212によって躯体側上枠70と障子側上枠80との動きが規制される向きである上下方向でカシメられている。
【0030】
次いで、障子側上枠80の突起815に、取付け枠材90の第1係合端部921aが係合されるとともに、躯体側上枠70の第1係合片734に、取付け枠材90の第2係合端部922aが係合されて、取付け枠材90が上枠21Aに組み込まれる。躯体側上枠70、障子側上枠80及び取付け枠材90は、予め工場等においてこのように組み立てられ、必要に応じて施工現場に運搬されて施工される。
【0031】
施工にあたっては、躯体側上枠70における外側端部720の位置決め片723a、723bが、対応する上側躯体フレーム210Aの室外側の面に当接されて位置決めがなされ、外側端部720がねじ101によって上側躯体フレーム210Aに締結される。また、取付け枠材90の第1固定部910及び障子側上枠80の垂下部811が、ねじ102によって室内側躯体フレーム220Aに締結され、取付け枠材90の室内側の端部が、ねじ103により取付け部材103aを介して壁材230Aに締結される。
【0032】
障子側上枠80の先端嵌入部814が躯体側上枠70の第1係合溝724に嵌入されて係合されるとともに、障子側上枠80の突出部818が躯体側上枠70の第2係合溝733に嵌入されて係合される。すなわち、上枠21Aは、障子側上枠80と躯体側上枠70とが係合される係合部211,212を有する。これにより、障子側上枠80と躯体側上枠70との上下方向の動きが規制される。また、これに加え、上枠21Aは、躯体側上枠70の結合板部731と障子側上枠80の結合板部813とが上下方向でカシメ結合されたカシメ結合部400を有するので、障子側上枠80と躯体側上枠70との見込方向及び幅方向(カシメ結合の向きに交差する方向)への動きも規制される。これにより、障子側上枠80と躯体側上枠70とのがたつきを抑制することができる。また、ねじ止めによる結合と異なり、カシメ結合を行うことにより、加工に手間がかかったり、ねじ挿通孔やねじ孔の寸法誤差により施工に不具合が生じたりする事態を回避することができるとともに、部品点数を削減することができる。
【0033】
(下枠22A)
次に、
図4及び
図6を参照して、下枠22Aを説明する。下枠22Aは、躯体側下枠74と、障子側下枠84と、の2つの部材から構成される。躯体側下枠74は、下側躯体フレーム310A側に配置され、この下側躯体フレーム310Aに固定される。障子側下枠84は、躯体側下枠74よりも見付方向の内側であって戸体4側に配置される。
【0034】
(下枠22Aの躯体側下枠74)
躯体側下枠74は、本開示の躯体側枠体ならびに第1の形材の一例である。
図6に示すように、躯体側下枠74は、ねじ104により下側躯体フレーム310Aに固定される。躯体側下枠74は、アルミニウム等の金属からなる形材であって、見込方向と概ね平行な平板状のベース部740と、ベース部740の室外側に配置される外側端部750と、ベース部740の室内側に配置される内側端部760と、含む。
【0035】
外側端部750は、ベース部740の室外側端部から下方に傾斜する傾斜部751と、傾斜部751の下端から垂下する垂下部752と、垂下部752の上下端から室外側に延びる上下一対の上板部753及び下板部754と、垂下部752から室内側に延びる上下一対の位置決め片755と、傾斜部751に設けられたタッピングホール部756と、を含む。タッピングホール部756の室外側には、室外側に突出する突出部757が形成されている。タッピングホール部756と傾斜部751の上端との間には、連通孔758が設けられている。連通孔758は、建具1の幅方向(
図5で紙面表裏方向)に間隔をおいて複数配置されている。ねじ104は、室外側から、垂下部752の上下の位置決め片755の間に通されて下側躯体フレーム310Aにねじ込まれる。
【0036】
内側端部760は、ベース部740の室内側の端部から上方に傾斜する傾斜部761と、傾斜部761の上端から室内側に延びる見込方向と平行な結合板部762と、結合板部762の室内側の端部から上下に延びる見付方向と平行な内側端板部763と、を含む。傾斜部761の両端には、タッピングホール部764、765が設けられている。タッピングホール部764の下部には、下側躯体フレーム310Aに当接して躯体側下枠74の上下方向の位置を定める位置決め片764aが形成されている。内側端板部763の上下方向中央部には、室外側に突出する断面L字状の第2係合片766が形成されている。内側端板部763の上部には、室外側に突出する第3係合片767が形成されている。内側端板部763の下端は、床材320Aの上面に当接し、これにより躯体側下枠74の上下方向の位置が定まる。
【0037】
(下枠22Aの障子側下枠84)
障子側下枠84は、本開示の障子側枠体ならびに第2の形材の一例である。障子側下枠84は、アルミニウム等の金属からなる断面略L字状の形材であって、見込方向と平行なベース部840と、ベース部840の室内側の内側端部842と、を含む。ベース部840の室外側の先端には、躯体側下枠74の突出部757が嵌入する室外側先端係合溝841が形成されている。突出部757及び室外側先端係合溝841は、躯体側下枠74と障子側下枠84とを係合する係合部221を構成している。
【0038】
内側端部842は、断面略L字状の形状を有し、見込方向と平行な第1結合板部843と、第1結合板部843の室外側端部から上方に立ち上がる第2結合板部846と、を含む。第1結合板部843の室内側の先端には、躯体側下枠74の第2係合片766に係合する室内側先端係合片844が形成されている。第2係合片766及び室内側先端係合片844は、躯体側下枠74と障子側下枠84とを係合する係合部222を構成している。第2結合板部846の下端には、室外側に開口する第3係合溝847が形成されている。
【0039】
障子側下枠84には、取付け枠材94が取り付けられる。取付け枠材94は、例えば樹脂製の形材であって、見込方向と平行な上板部941と、上板部941の室外側端部から垂下する室外側垂下部942と、上板部941の室内側端部から垂下する室内側垂下部943と、を含む。取付け枠材94の室外側の上端部には、気密材装着部944が形成され、この気密材装着部944に、気密材945が装着される。気密材945は、閉状態の戸体4におけるスイング下框42の室内側の面に当接する。室外側垂下部942の下端には、障子側下枠84の第3係合溝847に係合する係合凸部946が形成されている。室内側垂下部943における上下方向中央部の室内側には、躯体側下枠74の第3係合片767に係合する第4係合片947が形成されている。
【0040】
(下枠22Aの組み立てと施工)
障子側下枠84の室外側先端係合溝841に、躯体側下枠74の突出部757が係合されるとともに、躯体側下枠74の第2係合片766に、障子側下枠84の室内側先端係合片844が係合される。これにより、下枠22Aは、躯体側下枠74と障子側下枠84とが係合される係合部221、222を有することとなる。そして、躯体側下枠74の結合板部762と障子側下枠84の第1結合板部843とが、カシメ結合される。すなわち、下枠22Aは、躯体側下枠74と障子側下枠84とがカシメ結合により結合されるカシメ結合部410を有する。これにより、下枠22Aが組み立てられる。このカシメ結合部410は、
図7に示した上枠21A側のカシメ結合部400と同様に形成される。例えば、躯体側下枠74の結合板部762と障子側下枠84の第1結合板部843とを重ね、障子側下枠84の第1結合板部843側からカシメ用の打ち込みピン等の工具を打ち込んで第1結合板部843と結合板部762とを塑性変形させ、互いに圧着した状態とすることにより、カシメ結合部410が形成される。カシメ結合部410は、係合部221、222によって躯体側下枠74と障子側下枠84との動きが規制される向きである上下方向でカシメられている。
【0041】
次いで、障子側下枠84の第3係合溝847に、取付け枠材94の係合凸部946が係合されるとともに、障子側下枠84の第3係合片767に、取付け枠材94の第4係合片947が係合されて、取付け枠材94が下枠22Aに組み込まれる。躯体側下枠74、障子側下枠84及び取付け枠材94は、予め工場等においてこのように組み立てられ、必要に応じて施工現場に運搬されて施工される。
【0042】
施工にあたっては、躯体側下枠74の位置決め片764a及び内側端板部763の下端のそれぞれが、下側躯体フレーム310A及び床材320Aの上面に当接されて位置決めされた状態で、躯体側下枠74の外側端部750がねじ104によって下側躯体フレーム310Aに締結される。また、躯体側下枠74及び取付け枠材94に、上方から嵌合された固定板材110がねじ105により取付け部材105aを介して床材320Aに固定される。
【0043】
躯体側下枠74の突出部757が障子側下枠84の室外側先端係合溝841に嵌入されて係合されるとともに、躯体側下枠74の第2係合片766に障子側下枠84の室内側先端係合片844が係合される。すなわち、下枠22Aは、障子側下枠84と躯体側下枠74とが係合される係合部221、222を有する。これにより、障子側下枠84と躯体側下枠74との上下方向の動きが規制される。また、これに加え、下枠22Aは、躯体側下枠74の結合板部762と障子側下枠84の第1結合板部843とが上下方向でカシメ結合されたカシメ結合部410を有するので、障子側下枠84と躯体側下枠74との見込方向及び幅方向(カシメ結合の向きに交差する方向)への動きも規制される。これにより、障子側下枠84と躯体側下枠74とのがたつきを抑制することができる。また、ねじ止めによる結合と異なり、カシメ結合を行うことにより、加工に手間がかかったり、ねじ挿通孔やねじ孔の寸法誤差により施工に不具合が生じたりする事態を回避することができるとともに、部品点数を削減することができる。
【0044】
以上が実施形態に係る建具1であり、この建具1は、躯体の開口部7に配置される上枠21A及び下枠22Aを含み、上枠21A及び下枠22Aの内側に戸体4が配置され、上枠21Aは、開口部7に固定される金属製の躯体側上枠(第1の形材)70と、躯体側上枠70に結合されるとともに、戸体4側に配置される金属製の障子側上枠(第2の形材)80と、を含み、下枠22Aは、開口部7に固定される金属製の躯体側下枠(第1の形材)74と、躯体側下枠74に結合されるとともに、戸体4側に配置される金属製の障子側下枠(第2の形材)84と、を含み、上枠21Aは、躯体側上枠70と障子側上枠80とがカシメ結合により結合されるカシメ結合部400を有し、下枠22Aは、躯体側下枠74と障子側下枠84とがカシメ結合により結合されるカシメ結合部410を有する。
【0045】
このようにカシメ結合部400、410を有し、かつ、ねじ止めによる結合部を有さない実施形態によれば、互いに結合される各上枠70、80及び各下枠74、84にねじ止めのためのねじ挿通孔及びねじ孔を形成する必要がなく、製造時の工程数を少なくすることができる。また、加工に手間がかかったり、ねじ挿通孔やねじ孔の寸法誤差により施工に不具合が生じたりする事態を回避することができるため、施工の効率が向上するとともに、部品点数を削減することができる。更に、ねじ孔の形成には所要の肉厚が必要であるが、ねじ孔を形成しないため、形材からなる各上枠70、80及び各下枠74、84の肉厚を薄くすることができ、その結果、材料(例えば、アルミニウム)の使用量を削減することができ、コストを抑制できる。
【0046】
実施形態に係る建具1は、上枠21Aにおいて、躯体側上枠70と障子側上枠80とが係合される係合部211、212を有し、下枠22Aにおいて、躯体側下枠74と障子側下枠84とが係合される係合部221、222を有する。そして、上枠21A側のカシメ結合部400は、係合部211、212により躯体側上枠70及び障子側上枠80の動きが規制される上下方向の向きでカシメ結合され、下枠22A側のカシメ結合部410は、係合部221、222により躯体側下枠74及び障子側下枠84の動きが規制される上下方向の向きでカシメ結合される。これにより、各上枠70、80及び各下枠74、84は見込方向及び幅方向(カシメ結合の向きに交差する方向)への動きも規制されるため、各上枠70、80及び各下枠74、84のがたつきが、より一層抑制される。
【0047】
実施形態に係る建具1において、カシメ結合部400は、建具1全体としてみた場合に、当該建具1の室内側に配置される。これにより、カシメ結合部400を樹脂形材で覆われる室内側に配置することで、施工後にカシメ結合部400を見えにくくすることができる。また、耐風圧強度上、戸体4が室外側に圧された場合に、上側に浮き上がるような力がかかりやすい屋内側の位置にカシメ結合部400を配置することで、この浮き上がる力を抑えることができる。
【0048】
なお、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれる。
【0049】
例えば、上記実施形態は、上枠21Aを及び下枠22Aのそれぞれを、躯体側と障子側の2部材で構成し、それら2部材をカシメ結合しているが、各縦枠23、24も同様に2部材で構成するとともに、それら2部材をカシメ結合により結合してもよい。また、枠体20に限らず、例えば、窓を構成する框等にも本開示の構成を適用することができる。
【0050】
また、上記実施形態において、係合によって障子側上枠80と躯体側上枠70,77との動きが規制される向きや、係合によって障子側下枠84と躯体側下枠74との動きが規制される向きは、上下方向であり、これに対応してカシメ結合の向きも上下方向である例について説明したが、この例に限られない。係合により当該動きが規制される向きが変われば、これに対応してカシメ結合の向きを変えてもよい。また、当該動きが規制される向きと、カシメ結合の向きとが対応していなくてもよい。また、躯体側と障子側の2部材が係合されておらずカシメ結合のみによって結合されていてもよい。
【0051】
カシメ結合する箇所については、例えば
図8に示すように、下枠22Aには左右両側に4箇所ずつのカシメ結合部410を設け、上枠21Aには左右両側に1箇所ずつのカシメ結合部400を設け、比較的高い強度が望まれる下枠22Aのカシメ結合部410を多くすると好ましい。なお、
図8では、縦枠23、24に複数のカシメ結合部450を設けており、この場合には、戸先側の縦枠24よりも高い強度を要する吊元側の縦枠23のカシメ結合部450を多く設けている。なお、カシメ結合する箇所についてはこれに限定されず、例えば強度に対応するなどして適宜に設定される。
【0052】
上記実施形態では、建具1は、採風窓を有するドアにより構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、障子としては、開き戸のほかに、引き戸、各種窓等、いかなる障子にも適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 建具
2A 上側躯体(躯体)
3A 下側躯体(躯体)
4 戸体(障子)
7 開口部
21A 上枠(建具部材、枠体)
22A 下枠(建具部材、枠体)
70 躯体側上枠(第1の形材、躯体側枠体)
74 躯体側下枠(第1の形材、躯体側枠体)
80 障子側上枠(第2の形材、障子側枠体)
84 障子側下枠(第2の形材、障子側枠体)
211、212、221、222 係合部
400、410 カシメ結合部