(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162522
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】化粧シート及び化粧部材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20241114BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078087
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】折原 隆史
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA08A
4F100AA20A
4F100AA21A
4F100AA37A
4F100AK07A
4F100AK07C
4F100AK25E
4F100AK51B
4F100AK51D
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10E
4F100CA05A
4F100CA07A
4F100CB00B
4F100DG01
4F100EJ55
4F100EJ65
4F100GB08
4F100GB48
4F100HB31D
4F100JB16A
4F100JB16C
4F100JK02A
4F100JL09
4F100JL10A
4F100JL11B
4F100JL16A
4F100JN01C
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】リサイクル比率を向上しつつも、色味が不均一となることを抑制し、バージン樹脂材料を用いる場合と同等の強度を有し、製膜性および曲げ加工性が良好である化粧シート及びその化粧シートを備えた化粧部材を提供する。
【解決手段】化粧シート10は、少なくとも着色熱可塑性樹脂層1と、接着性樹脂層3と、透明熱可塑性樹脂層4と、がこの順に積層されており、着色熱可塑性樹脂層1は、層単体に対するリサイクル樹脂材料の含有割合が10質量%以上80質量%以下の範囲内であり、シート全体に対する該リサイクル樹脂材料の含有割合が5質量%以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも着色熱可塑性樹脂層と、接着性樹脂層と、透明熱可塑性樹脂層と、がこの順に積層されており、
前記着色熱可塑性樹脂層は、層単体に対するリサイクル樹脂材料の含有割合が10質量%以上80質量%以下の範囲内であり、
シート全体に対する前記リサイクル樹脂材料の含有割合が5質量%以上である
ことを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記着色熱可塑性樹脂層は、シートの流れ方向を示すMD方向における引張り強さが10N/mm2以上であり、前記MD方向と直交するTD方向における引張り強さが10N/mm2以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記着色熱可塑性樹脂層に対し耐候試験機を用いて所定時間の耐候試験を実施した場合に、
前記耐候試験の実施前後での前記着色熱可塑性樹脂層の色差ΔEが4以下であり、前記耐候試験の実施後において前記着色熱可塑性樹脂層に割れが生じない
ことを特徴とする請求項2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記着色熱可塑性樹脂層は、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、シリカ、クロム、アンチモン、チタン複合物、及びその他の酸化物のうちのいずれか一つ又は複数の無機物を含有する
ことを特徴とする請求項3に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記着色熱可塑性樹脂層は、紫外線吸収剤または光安定剤のうち少なくとも1種類以上を含有し、
前記紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤またはトリアジン系紫外線吸収剤のうち少なくとも一方である
ことを特徴とする請求項4に記載の化粧シート。
【請求項6】
前記着色熱可塑性樹脂層と前記接着性樹脂層との間に設けられた絵柄層と、
前記透明熱可塑性樹脂層上に設けられた表面保護層と、
前記着色熱可塑性樹脂層における前記絵柄層と反対側の面に設けられたプライマー層と、をさらに備える
ことを特徴とする請求項5に記載の化粧シート。
【請求項7】
基材と、
前記基材の少なくとも一方の面側に設けられた請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の化粧シートと、を備え、
前記基材は、金属系基材、木質系基材、または樹脂系基材のうちいずれかである
ことを特徴とする化粧部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化粧シート及び化粧部材に関し、特に、建築内装用および外装用、建具の表面や枠材、家電製品の表面材、床材等々の建築用資材に用いられる化粧シート及び化粧部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧シートとしては、塩化ビニル製のシートが用いられてきた。しかし、塩化ビニル樹脂は、焼却時に塩素ガスが発生し、酸性雨やダイオキシンの要因にもなると言われてきており、さらにはシートに添加された可塑剤のブリードアウトの問題も持ち上がっており、近年環境問題の観点から塩化ビニル樹脂を用いない化粧シートが要求されつつある。
【0003】
以上の理由により、近年、塩化ビニル製化粧シートに替わる化粧シートとしてオレフィン系樹脂を使用した化粧シートが多く提案されている。オレフィン系樹脂を使用した化粧シートとしては、例えば、特許文献1~5に記載したものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2-128843号公報
【特許文献2】特開平4-83664号公報
【特許文献3】特開平6-1881号公報
【特許文献4】特開平6-198831号公報
【特許文献5】特開平9-328562号公報
【0005】
化粧シートに用いるオレフィン系樹脂としては、石油由来のバージン樹脂材料(新規樹脂材料)を用いることが大半であったが、近年、リサイクル技術の向上と環境配慮の考えからリサイクル樹脂材料(再利用樹脂材料)への代替が注目されている。リサイクル樹脂材料としては、例えば製造時に切り落とされた樹脂フィルムの端材(工場廃材)や、不良品、使用済み廃材として回収された樹脂フィルム等が挙げられる。
しかし、化粧シートにリサイクル樹脂材料を用いる場合、リサイクル樹脂の添加量(リサイクル比率)を増加させることで色味が不均一となったり、バージンプラスチック材料のみを用いる場合と比較して強度(引張強度)、製膜適性、および化粧部材に貼り付ける際の曲げ加工性といった物性の低下が懸念されるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、リサイクル比率を向上しつつも、色味が不均一となることを抑制し、バージン樹脂材料を用いる場合と同等の強度を有し、製膜性および曲げ加工性が良好である化粧シート及びその化粧シートを備えた化粧部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る化粧シートは、少なくとも着色熱可塑性樹脂層と、接着性樹脂層と、透明熱可塑性樹脂層と、がこの順に積層されており、前記着色熱可塑性樹脂層は、層単体に対するリサイクル樹脂材料の含有割合が10質量%以上80質量%以下の範囲内であり、シート全体に対する前記リサイクル樹脂材料の含有割合が5質量%以上であることを特徴とする。
【0008】
また、本開示の一態様に係る化粧部材は、基材と、前記基材の少なくとも一方の面に設けられた上述の化粧シートと、を備え、前記基材は、金属系基材、木質系基材、または樹脂系基材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、リサイクル比率を向上しつつも、色味が不均一となることを抑制し、バージン樹脂材料を用いる場合と同等の強度を有し、製膜性および曲げ加工性が良好である化粧シート及びその化粧シートを備えた化粧部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態に係る化粧シート及び化粧部材の一構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態に係る化粧シート及び化粧部材について、図面を参照しつつ説明する。ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。本開示の範囲内にあるものであれば、必ずしも図面に示す順に積層してある必要はない。またこの図面に記載されていない層が付加されていても良い。また、以下に示す実施形態は、本開示の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本開示の技術的思想は、構成部品の材質、形状、及び構造等が下記のものに特定するものでない。本開示の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本開示の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0012】
(化粧シート及び化粧部材の構成)
図1に本実施形態に係る化粧シート及び化粧部材の一実施形態の断面構造を示す。
本実施形態に係る化粧シート10は、着色熱可塑性樹脂層1上(着色熱可塑性樹脂層1の一方の面側)に、絵柄層2、接着性樹脂層3、透明熱可塑性樹脂層(オレフィン樹脂層)4、表面保護層5をこの順に積層したものである。
透明熱可塑性樹脂層4の表面には凹凸模様が形成されており、その凹凸模様を構成する凹部(凹陥部)8には、表面保護層5を構成する樹脂が埋め込まれている。また、凹部8を構成する全ての面は、表面保護層5を構成する樹脂で覆われていてもよい。
本実施形態に係る化粧部材11は、基材7、化粧シート10をこの順に積層したものである。
【0013】
なお本実施形態に係る化粧シート10において、絵柄層2、表面保護層5及びプライマー層6は必須の構成ではなく、必要に応じて設けることができる。つまり、本実施形態に係る化粧シート10は、着色熱可塑性樹脂層1と接着性樹脂層3との間に設けられた絵柄層2と、透明熱可塑性樹脂層4上に設けられた表面保護層5と、着色熱可塑性樹脂層1における絵柄層2と反対側の面(他方の面側)に設けられたプライマー層と、をさらに備えてもよい。
したがって、本実施形態に係る化粧シート10は、少なくとも着色熱可塑性樹脂層1と、接着性樹脂層3と、透明熱可塑性樹脂層4と、がこの順に積層されていればよい。
以下、上述した各層の構成について詳しく説明する。
【0014】
[着色熱可塑性樹脂層]
着色熱可塑性樹脂層1は、化粧シート10の支持体となる構成である。本実施形態における着色熱可塑性樹脂層1は、不透明に着色されており、隠蔽性を有する。これにより、着色熱可塑性樹脂層1は、例えば化粧シート10と所定の化粧部材用基材(例えば基材7)とを貼り合わせて化粧部材を形成する際に、基材表面の色のばらつきや欠陥等を隠蔽することができる。
【0015】
着色熱可塑性樹脂層1は、絵柄層2をグラビア印刷などで設けることが可能なものであることが好ましい。着色熱可塑性樹脂層1に用いる熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体、1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン、6,10-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン-テトラフロロエチレン共重合体、エチレン-パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂等或いはそれらの2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等を使用できる。樹脂のグレードや組成は、そのほかにシーティングの容易さや印刷適性、曲げ加工に対する適性を考慮して選択することができる。
【0016】
着色熱可塑性樹脂層1の厚みは、30μm以上200μm以下の範囲内が好ましい。着色熱可塑性樹脂層1の厚さが30μm以上である場合、建具や造作材に貼り付けられた化粧シート10の耐傷性がさらに高くなる。また、着色熱可塑性樹脂層1の厚さが200μm以下である場合、化粧シート10の曲げ性が必要以上に高くなりすぎず、複雑な形状の建具や造作材に対しても、密着した状態で施工することができる。
【0017】
例えば、着色熱可塑性樹脂層1を構成する樹脂材料に顔料などの着色剤を混合、練りこむなどしておくことで、着色熱可塑性樹脂層1を着色することができる。着色剤としては、有機、無機顔料が使用できるが、無機顔料を用いることが好ましい。つまり、着色熱可塑性樹脂層1は、着色剤として無機物を含んでいることが好ましい。例えば着色熱可塑性樹脂層1は、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、シリカ、クロム、アンチモン、チタン複合物、及びその他の酸化物等のうちのいずれか一つ又は複数の無機物を含有することが好ましい。
【0018】
(リサイクル樹脂材料)
また、本実施形態に係る化粧シート10において、着色熱可塑性樹脂層1は、リサイクル樹脂材料を含有している。つまり、着色熱可塑性樹脂層1を構成する樹脂材料には、リサイクル樹脂材料が含まれる。これにより、環境に配慮した化粧シートの提供が可能となり、持続可能な社会へ貢献することができる。また着色熱可塑性樹脂層1にリサイクル樹脂材料を含有することにより、リサイクル樹脂材料を使用する場合に色味が不均一となることを抑制することができる。
【0019】
具体的には、着色熱可塑性樹脂層1は、層単体に対するリサイクル樹脂材料の含有割合が10質量%以上80質量%以下の範囲内である。さらに、化粧シート10全体に対する当該リサイクル樹脂材料の含有割合は、5質量%以上である。リサイクル樹脂材料の含有割合をこのように設定することにより、リサイクル比率を向上して環境に配慮しつつも、化粧シート10の硬さを調整してバージン樹脂材料を用いる場合と同等の強度(本例では、引張り強さ)を維持することができ、さらに化粧シート10の製膜性(本例では、押出適性)および化粧部材に貼り付ける際の曲げ加工性を良好とすることができる。化粧シート10における引張り強さについては、詳細を後述する。
また、不透明に着色されて隠蔽性を有する着色熱可塑性樹脂層1にリサイクル樹脂材料を添加することにより、従来よりも多い比率でリサイクル樹脂材料を使用する場合(リサイクル比率が高い場合)であっても、化粧シート10の色味バラツキが視認されづらい構成となる。つまり、着色熱可塑性樹脂層1にリサイクル樹脂を添加することにより、リサイクル比率を向上しつつも色味が不均一になることを抑制できる。
【0020】
また、リサイクル樹脂材料として用いる樹脂の種類は特に限定されないが、ポリプロピレンおよびポリエチレン等のオレフィン系樹脂を好適に用いることができる。また、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル等を用いてもよい。
リサイクル樹脂材料としては、例えば製造時に切り落とされた樹脂フィルムの端材(工場廃材)等を好適に用いることができる。また、不良品、使用済み廃材として回収された樹脂フィルム等を用いてもよい。
【0021】
[着色熱可塑性樹脂層の強度物性]
さらに化粧シート10における着色熱可塑性樹脂層1は、以下に示すような強度物性を有する。
【0022】
本実施形態に係る化粧シート10の着色熱可塑性樹脂層1は、引張り強さ(引張り強度)、すなわち破断強度が特定の条件を満たしている。ここで、引張り強さの単位は応力(MPa(=N/mm2))である。具体的には、着色熱可塑性樹脂層1は、MD方向における引張り強さ(NMD)が10N/mm2以上(NMD≧10)であり、TD方向における引張り強さ(NTD)が10N/mm2以上(NTD≧10)である。MD方向及びTD方向それぞれにおける引張り強さを上記のように設定することで着色熱可塑性樹脂層1の強度を向上し、化粧シート10にバージン樹脂材料を用いる場合と同等の強度を確実に付与することができる。また、製膜性および曲げ加工性をより確実に良好とすることができる。
【0023】
ここで、MD方向は、長尺シート状に形成される化粧シート10の長手方向であって、製造時における化粧シート10(着色熱可塑性樹脂層1)の流れ方向を示す。流れ方向は、製造方向または機械方向ともいう。またTD方向は、長尺シート状の化粧シートの短手方向(幅方向)であってMD方向と直交する方向を示す。
【0024】
本実施形態に係る化粧シート10において、着色熱可塑性樹脂層1における上記引張り強さは、JIS K 6251に準拠した引張試験により測定される。当該引張試験には、試験片打抜刃(引張 1号形 ダンベル状)でダンベル状に打ち抜いた試験片を用いる。引張試験の条件は、温度21℃から25℃(23±2℃)の環境下で引張速度50mm/minとする。引張試験には、例えば引張試験装置として「インストロン万能試験機 5966型」を用いることができる。
【0025】
本実施形態において、着色熱可塑性樹脂層1における引張り強さ(上記NMD,NTD)は、着色熱可塑性樹脂層1におけるリサイクル樹脂材料の含有割合を調整することで、制御することができる。具体的には、上述のようにリサイクル樹脂材料の含有割合を着色熱可塑性樹脂層1単体に対して10質量%以上80質量%以下の範囲内とし、化粧シート10全体に対して5質量%以上とすることで化粧シート10の引張り強さを調整することができる。
【0026】
(耐候剤)
化粧シート10の耐候性をより向上させるため、着色熱可塑性樹脂層1には紫外線吸収剤(UVA)や光安定剤(HALS)等の耐候剤の添加が一般的に用いられる。本実施形態において着色熱可塑性樹脂層1には耐候剤として紫外線吸収剤または光安定剤のうち少なくともいずれか一方が添加されている。つまり、着色熱可塑性樹脂層1は紫外線吸収剤または光安定剤等のうち少なくとも一方を含有している。着色熱可塑性樹脂層1は、紫外線吸収剤また光安定剤のうち一方のみを含有していてもよいし、紫外線吸収剤および光安定剤の両方を含有していてもよい。
【0027】
着色熱可塑性樹脂層1に添加する耐候剤としては、後述の透明熱可塑性樹脂層4に添加する耐候剤と同様の紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤)および光安定剤(ラジカル捕捉剤)を用いることができる
本実施形態において、着色熱可塑性樹脂層1に添加する紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤またはトリアジン系紫外線吸収剤のうち少なくとも一方であることが好ましい。これにより、着色熱可塑性樹脂層1に優れた耐候性を付与し、化粧シート10の耐候性をより確実に向上することができる。
【0028】
着色熱可塑性樹脂層1における紫外線吸収剤の含有量は、着色熱可塑性樹脂層1を構成する樹脂材料100質量部に対して、0.001質量部以上10質量部以下の範囲内が好ましく、0.05質量部以上5質量部以下の範囲内がより好ましい。
また、着色熱可塑性樹脂層1における光安定剤の含有量は、着色熱可塑性樹脂層1を構成する樹脂材料100質量部に対して、0.001質量部以上10質量部以下の範囲内が好ましく、0.05質量部以上5質量部以下の範囲内がより好ましい。
【0029】
(着色熱可塑性樹脂層における耐候性)
また、本実施形態に係る化粧シート10は、着色熱可塑性樹脂層1に対し耐候試験機を用いて所定時間の耐候試験を実施した場合に、当該耐候試験の実施前後での着色熱可塑性樹脂層1の色差ΔEが4以下である(ΔE≦4.0を満足する)ことが好ましい。さらに、上記耐候試験の実施後において着色熱可塑性樹脂層1に割れ(クラック(ひび割れ、亀裂、白化等の外観変化))が生じないことが好ましい。これにより、化粧シート10の耐候性がさらに良好となり、着色熱可塑性樹脂層1の退色や劣化の進行を抑制して外装材等の用途に好適な化粧シートを提供することができる。
【0030】
本実施形態において、上記耐候試験は耐候性試験機(サンシャインウエザーメーター)を用いて実施するJIS B 7753に準じたカーボンアーク耐候性試験である。
また上記耐候試験における試験条件は、ブラックパネル温度60~66℃(63±3℃)とし、120分サイクル(光照射102分、光照射および水噴霧18分)とする。本実施形態では、上記耐候試験を計1000時間実施した後の着色熱可塑性樹脂層1と、上記耐候試験の実施前の着色熱可塑性樹脂層1との色差ΔEが4以下であることが好ましい。
なお、本実施形態における色差ΔEは、着色熱可塑性樹脂層1における耐候試験前におけるL*a*b*表色系による色と、耐候試験後におけるL*a*b*表色系による色との色差を示す。上記のうち、L*は明度を示す指標であり、a*、b*はそれぞれ色相と彩度を示す指標である。
【0031】
このように、本実施形態に係る化粧シート10は、カーボンアーク耐候性試験の実施前後における着色熱可塑性樹脂層1の色差ΔEが4以下であることが好ましい。さらに、カーボンアーク耐候性試験の実施後においてひび割れ等の外観変化が無いことがより好ましい。上述のように、着色熱可塑性樹脂層1に対し耐候剤(紫外線吸収剤、光安定剤)を添加することで、着色熱可塑性樹脂層1の退色や劣化の進行を抑制することができ、着色熱可塑性樹脂層1の耐候性を向上することが可能であるとともに、化粧シート10に優れた耐候性を付与することができる。
【0032】
[絵柄層]
絵柄層2は、隠蔽性あるいは意匠性を付与するための層であり、着色熱可塑性樹脂層1上に全面ベタあるいは部分的に絵柄インキを印刷することで設けることができる。
絵柄インキのバインダーとしては、例えば、硝化綿、セルロース、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル系等の単独もしくは各変成物の中から適宜選択すればよい。これらは水性や溶剤系、あるいはエマルジョン系でも問題はなく、且つ硬化方法も1液タイプでも、硬化剤を利用した2液タイプでも任意での選択が可能である。さらに、紫外線や電子線等の活性エネルギー線照射によりインキを硬化させることも可能である。
【0033】
絵柄インキの顔料としては、例えば、縮合アゾ、不溶性アゾ、キナクリドン、イソインドリン、アンスラキノン、イミダゾロン、コバルト、フタロシアニン、カーボン、酸化チタン、酸化鉄、雲母等のパール顔料等、公知の各種顔料を使用することができる。これらのインキ材料については、絵柄層2の下の着色熱可塑性樹脂層1や絵柄層2の上に積層される樹脂との接着性も考慮して選定する必要がある。
絵柄層2には、必要に応じて、例えば、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、分散剤などの各種添加剤を添加しても良い。絵柄層2を設ける方法としては、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、シルク印刷、静電印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷技法により、着色熱可塑性樹脂層1に直接施すことができる。なお、インキの塗布とは別に各種金属の蒸着やスパッタリングで金属調の意匠性を施すことも可能である。
【0034】
[接着性樹脂層]
接着性樹脂層3は、絵柄層2を設けた着色熱可塑性樹脂層1と透明熱可塑性樹脂層4とを貼り合わせるために設けられる。
接着性樹脂層3の構成材料としては、任意の樹脂系どうしの接着強度向上に寄与するものであるならば、特に限定は無く、例えば、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ系等種々の材料が使用できる。なお、接着性樹脂層3の構成材料としては、一般的には、塗膜凝集力の高い2液硬化型のポリウレタン系接着剤を用いることが多い。また、塗工方法も塗液粘度等によって適宜選択できる。接着性樹脂層3の層厚は、0.5μm~10μm程度が好適である。
【0035】
[透明熱可塑性樹脂層]
透明熱可塑性樹脂層(オレフィン樹脂層)4は、絵柄層2を保護するために必要に応じて設けることができ、絵柄を活かせるものであれば透明でも半透明でもよい。あるいは適宜艶消し模様やエンボス付与により表面凹凸(凹凸模様)を設けたものであっても良い。あるいはこの凹凸模様に着色剤を充填したものであってもよい。
本実施形態では、この凹凸模様を構成する凹部8に上述した表面保護層5が埋め込まれている。以下、この点について説明する。
透明熱可塑性樹脂層4の表面に設けられた凹凸模様の形状は、特に制限されるものではないが、凹凸模様を構成する凹部8の形状は、透明熱可塑性樹脂層4の裏面側(接着性樹脂層3)から表面側(表面保護層5)に向かって開口径が大きくなるような形状であることが好ましい。このような形状であれば、表面保護層組成物(塗液)をワイピングによって凹部8に埋め込む際に、その埋め込みが容易となる。
【0036】
また、凹部8を形成する側面は、傾斜面であることが好ましい。凹部8を形成する側面が傾斜面であれば、表面保護層組成物(塗液)をワイピングによって凹部8に埋め込む際に、その埋め込みが容易となる。
また、凹部8を形成する側面の全ては、表面保護層5で覆われていてもよい。
また、凹部8の深さは、透明熱可塑性樹脂層4の厚さ方向に対して、1μm以上100μm以下の範囲内が好ましく、10μm以上50μm以下の範囲内がより好ましく、20μm以上40μm以下の範囲内がさらに好ましい。凹部8の深さが上記数値範囲であれば、表面保護層組成物(塗液)をワイピングによって凹部8に埋め込む際にその埋め込みが容易となり、且つ表面保護層の剥落を防止することができる。
【0037】
また、凹部8は、表面保護層組成物(塗液)で全て満たされている(充填されている)
ことが好ましいが、凹部8の容積に対する表面保護層5の充填率は10%以上であれば好ましい。凹部8の容積に対する表面保護層5の充填率が10%以上であれば、凹部8における耐候性を向上させることができる。即ち、凹部8の容積に対する表面保護層5の充填率が10%以上であれば、導管部における白化の発生や破断の発生を低減することができる。また、上述のように、凹部8の容積に対する表面保護層5の充填率は100%であることが好ましいが、凹部8の容積に対する表面保護層5の充填率が80%以下であればより好ましく、凹部8の容積に対する表面保護層5の充填率が60%以下であればより好ましい。凹部8の容積に対する表面保護層5の充填率が80%以下であれば、凹部8において十分な触感を得ることができる。
また、凹部8の容積に対する表面保護層5の充填率を100%にすることで、凹部8に充填された表面保護層5の表面と、凹部8を備えない領域の透明熱可塑性樹脂層4の表面とを、所謂面一にしてもよい。
【0038】
透明熱可塑性樹脂層4としては、例えば、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリル等の合成樹脂、あるいはこれら合成樹脂の発泡体、エチレン-プロピレン共重合ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合ゴム、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合ゴム、ポリウレタン等のゴムなどが挙げられるが、その中でも特に、ポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン、の単独重合あるいはこれら2種以上の共重合樹脂、もしくはそれらの混合樹脂からなるものが好ましい。また、これらの樹脂中には、必要に応じて、例えば、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、酸化防止剤、加工安定剤、などの各種添加剤を添加しても良い。
【0039】
(紫外線吸収剤)
透明熱可塑性樹脂層4には、化粧シート10の耐候性を向上するため、紫外線吸収剤、光安定剤といった耐候剤を添加することが好ましい。
上記のうち、紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、5,5’-メチレンビス(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン)等の2-ヒドロキシベンゾフェノン類;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ第三ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-3’-第三ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-5’-第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2,2’-メチレンビス(4-第三オクチル-6-(ベンゾトリアゾリル)フェノール)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-第三ブチル-5’-カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾール等の2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4-ジ第三ブチルフェニル-3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、2,4-ジ第三アミルフェニル-3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル-3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2-エチル-2’-エトキシオキザニリド、2-エトキシ-4’-ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル-α-シアノ-β、β-ジフェニルアクリレート、メチル-2-シアノ-3-メチル-3-(p-メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジ第三ブチルフェニル)-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-4,6-ジフェニル-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシ-5-メチルフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジ第三ブチルフェニル)-s-トリアジン等のトリアリールトリアジン類が挙げられる。また、透明熱可塑性樹脂層4において上述した紫外線吸収剤の含有量は、樹脂材料(例えばオレフィン系樹脂)100質量部に対して、0.001質量部以上10質量部以下の範囲内が好ましく、より好ましくは、0.05質量部以上5質量部以下の範囲内である。
なお、上述したベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤であれば、透明熱可塑性樹脂層4におけるその含有量は、樹脂材料(例えばオレフィン系樹脂)100質量部に対して、0.5質量部以上50質量部以下の範囲内が好ましく、より好ましくは、1質量部以上30質量部以下の範囲内である。
【0040】
また、上述のトリアジン系紫外線吸収剤およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、着色熱可塑性樹脂層1に用いる紫外線吸収剤としても好適に用いることができる。
【0041】
上記のうち、ラジカル捕捉剤としては、ヒンダードアミン系化合物が好適に用いられる。本実施形態では、例えば、1-オキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルステアレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,4,4-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-ブチル-2-(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノ-ル/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-モルホリノ-s-トリアジン重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-第三オクチルアミノ-s-トリアジン重縮合物、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8,12-テトラアザドデカン、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8-12-テトラアザドデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕アミノウンデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕アミノウンデカン等のヒンダードアミン系化合物が挙げられる。また、上述したラジカル捕捉剤の含有量は、樹脂材料(例えばオレフィン系樹脂)100質量部に対して、0.001質量部以上10質量部以下の範囲内が好ましく、より好ましくは、0.05質量部以上5質量部以下の範囲内である。
【0042】
上述のラジカル捕捉剤は、着色熱可塑性樹脂層1に用いる光安定剤としても好適に用いることができる。
【0043】
上記のうち、酸化防止剤には、フェノール系のものが好適に用いられる。本実施形態では、例えば、2,6-ジ第三ブチル-p-クレゾール、2,6-ジフェニル-4-オクタデシロキシフェノール、ジステアリル(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート、1,6-ヘキサメチレンビス〔(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4’-チオビス(6-第三ブチル-m-クレゾール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-第三ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-第三ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(6-第三ブチル-m-クレゾール)、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ第三ブチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(4-第二ブチル-6-第三ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-第三ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、2-第三ブチル-4-メチル-6-(2-アクリロイルオキシ-3-第三ブチル-5-メチルベンジル)フェノール、ステアリル(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔3-(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル〕メタン、チ
オジエチレングリコールビス〔(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6-ヘキサメチレンビス〔(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ビス〔3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、ビス〔2-第三ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-第三ブチル-5-メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5-トリス〔(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-{(3-第三ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3-第三ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕などが挙げられる。また、透明熱可塑性樹脂層4において上述した酸化防止剤の含有量は、樹脂材料(例えばオレフィン系樹脂)100質量部に対して、0.001質量部以上10質量部以下の範囲内が好ましく、より好ましくは、0.05質量部以上5質量部以下の範囲内である。
【0044】
上記のうち、加工安定剤には、リン系のものが好適に用いられる。本実施形態では、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス〔2-第三ブチル-4-(3-第三ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルチオ)-5-メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ第三ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4’-n-ブチリデンビス(2-第三ブチル-5-メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10-ジハイドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、2,2’-メチレンビス(4,6-第三ブチルフェニル)-2-エチルヘキシルホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-第三ブチルフェニル)-オクタデシルホスファイト、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2-〔(2,4,8,10-テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン-6-イル)オキシ〕エチル)アミン、2-エチル-2-ブチルプロピレングリコールと2,4,6-トリ第三ブチルフェノールのホスファイトなどが挙げられる。また、透明熱可塑性樹脂層4において上述した加工安定剤の含有量は、樹脂材料(例えばオレフィン系樹脂)100質量部に対して、0.001質量部以上10質量部以下の範囲内が好ましく、より好ましくは、0.05質量部以上5質量部以下の範囲内である。
【0045】
透明熱可塑性樹脂層4の膜厚としては15μm以上150μm以下の範囲内が好適である。着色熱可塑性樹脂層1と透明熱可塑性樹脂層4とを積層する方法としては、接着性樹脂層3を介して貼り合わせるドライラミネート法や、接着性樹脂層3を設けた着色熱可塑性樹脂層1上に透明樹脂をTダイから溶融押出しして製膜しながら貼り合わせる押出しラミネート法などを用いることができる。
【0046】
[表面保護層]
本実施形態に係る表面保護層5は、シクロヘキシル(メタ)アクリレートをモノマー成分として含有するアクリル系樹脂組成物を主成分としている。なお、本実施形態において、シクロヘキシル(メタ)アクリレートとは、シクロヘキシルアクリレート又はシクロヘキシルメタクリレートを意味する。シクロヘキシル(メタ)アクリレートをモノマー成分として含有させることで、水に対する親和性を低下させることができ、加水分解などによる劣化を抑制することができる。
シクロヘキシル(メタ)アクリレートの含有量としては、全てのアクリル系樹脂組成物のモノマー成分のうち、即ち表面保護層5の主成分となるアクリル系樹脂組成物のモノマー成分のうち、シクロヘキシル(メタ)アクリレートが5質量%以上50質量%以下の範囲内となることが望ましい。シクロヘキシル(メタ)アクリレートの含有量を5質量%以上とすることで、充分な劣化抑制効果を得ることができる。また、シクロヘキシル(メタ)アクリレートの含有量を50質量%以下とすることで、表面硬度維持向上や耐汚染性向上や表面の艶調節という化粧シートの表面保護層5の諸性能を大きく変えることなく、経時の高耐候性を付与することが可能になる。ここで、上述した「主成分」とは、表面保護層5を構成するアクリル系樹脂組成物の含有量が、表面保護層5全体の質量に対して、50質量%以上であることを意味する。
【0047】
本実施形態に係る表面保護層5に用いることができるアクリル系樹脂組成物のモノマー成分としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレートの他に、例えば、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルブチル(メタ)アクリレート、ジメチルシクロヘキサンモノ(メタ)アクリレート、ジメチルシクロヘキサンジ(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキサンモノ(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキサンジ(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキサントリ(メタ)アクリレート、テトラメチルシクロヘキサンモノ(メタ)アクリレート、テトラメチルシクロヘキサンジ(メタ)アクリレート、テトラメチルシクロヘキサントリ(メタ)アクリレート、テトラメチルシクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、フェノキシシクロヘキシルメチ
ル(メタ)アクリレート、メトキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの内、異性体を含むものは、各異性体単独および/または各異性体混合物でもよい。
【0048】
また、本実施形態において、表面保護層5は、上述したシクロヘキシル(メタ)アクリレートをモノマー成分として含有するアクリル系樹脂組成物と、後述する紫外線吸収剤等の耐候剤とを含む塗液を、化粧シートの最表面に塗工して形成してもよい。例えば、上述したるアクリル系樹脂組成物と耐候剤とを含む塗液を、凹部8を備えた透明熱可塑性樹脂層4上に塗工した後、ワイピングすることで、凹部8内にその塗液を埋め込んで表面保護層5を形成してもよい。
表面保護層5を形成するための塗液の硬化方法としては、例えば、1液硬化タイプ、硬化剤を用いる2液硬化タイプ、あるいは紫外線や電離放射線等を照射して硬化する活性エネルギー線硬化タイプのいずれも使用可能であるが、耐候性を考慮すると2液硬化タイプ若しくは活性エネルギー線硬化タイプが好ましく、各種基材に貼り合わされて化粧部材となった後の後加工性を考慮するならば、イソシアネート硬化によって架橋される2液硬化タイプが望ましい。
【0049】
2液硬化タイプのアクリル系樹脂組成物としては、例えば、水酸基、アミノ基およびカルボキシル基から選ばれる1種以上の官能基を一分子内に2個以上有するアクリル系樹脂と、その官能基と反応し得るイソシアネート基を一分子内に2個以上有するポリイソシアネート化合物とを含有する組成物が好ましい。特に好ましくは、水酸基を一分子内に2個以上有するアクリルポリオールと、ポリイソシアネート化合物とを含有する組成物である。
【0050】
水酸基を一分子内に2個以上有するアクリルポリオールとしては、上述したシクロヘキシル(メタ)アクリレートに加えて、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートをモノマー成分として含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体が利用できる。一方、イソシアネート基を一分子内に2個以上有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)およびこれらの水添化合物、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)や、これらから選ばれる1種類以上の化合物を公知の技術により合成した3量体タイプ、TMPアダクトタイプ、ビュレットタイプ等が挙げられる。また、これらの異なるタイプのポリイソシアネートから選ばれる1種類以上を混合した組成物を使用することができる。なかでも、HDI、もしくはHDIの3量体タイプ、TMPアダクトタイプ、ビュレットタイプが耐候性の観点からも好ましい。上述した樹脂成分に対するイソシアネート化合物の含有量は任意に設定できるが、水酸基/イソシアネート基の当量比が1/1~1/3程度となるように設定することが望ましい。特に水酸基の当量がイソシアネート基の当量よりも多くなると、架橋が充分に進まずに表面保護層5に所望の性能が付加されず、好ましくない場合がある。
【0051】
表面保護層5を形成するための塗液の硬化方法を活性エネルギー線硬化とする場合は、活性エネルギー線硬化タイプのアクリル系樹脂組成物としては、公知の(メタ)アクリロイル基を有するモノマー、オリゴマー等が使用でき、これらのモノマー、オリゴマーに加えて、上述したシクロヘキシル(メタ)アクリレートを配合すれば良い。
【0052】
<紫外線吸収剤>
化粧シート10の耐候性をより向上させるため、表面保護層5には紫外線吸収剤やラジカル捕捉剤等の耐候剤の添加が一般的に用いられる。紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール系、ヒドロキシフェニルトリアジン系、ベンゾフェノン系など公知のものが使用で
きる。それらのなかでもヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤を選定すれば、トリアジン骨格がブリードを抑制すること、またトリアジン骨格がベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤やベンゾフェノン系の紫外線吸収剤の骨格と比較して化学的に安定であることなどにより、長期に亘る紫外線吸収性能を保持することが可能となる。
【0053】
ヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤としては、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノール、2-(2ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2-〔4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル〕-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-エチル-ヘキサノイックアシッド、2-[4-(4,6-ジフェニル-[1,3,5]トリアジン-2-イル)-3-ヒドロキシ-フェノキシ]-エチルエステル、オクタノイックアシッド、2-[4-(4,6-ジフェニル-[1,3,5]トリアジン-2-イル)-3-ヒドロキシ-フェノキシ]-エチルエステル、2,4,6-トリス{2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)}-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-イソ-オクチルオキシフェニル)-s-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられるが、本実施形態においては、表面保護層5に、下記式(1)に示す2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジンの構造を有するものを少なくとも1種含有することが好ましい。
【0054】
【化1】
これは、上記式(1)の構造を持つ紫外線吸収剤が化学的に安定しており、長期に亘る紫外線吸収性能が持続するという特徴を持ち、且つ下記式(2)の構造を有するものよりも長波長側に光吸収のピークを有しているため、長期に亘る紫外線吸収性能が持続するためである。
【0055】
【0056】
本実施形態においては、上述した式(1)に示す構造を有するものを含めた全てのヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤の添加量は、アクリル系樹脂組成物100質量部に対して1質量部以上30質量部以下の範囲内であることが好ましい。上述した紫外線吸収剤の添加量を1質量部以上とすることで、耐候性向上効果が発揮され、30質量部以下とすることで表面保護層5の耐候性以外の物性への影響を実用上問題ないレベルに抑えることができる。
また、表面保護層5に添加する紫外線吸収剤として、上述した式(1)に示す構造を有するヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を用いた場合には、その添加量は、アクリル系樹脂組成物100質量部に対して1質量部以上20質量部以下の範囲内であることが好ましく、5質量部以上15質量部以下の範囲内であることがより好ましく、8質量部以上12質量部以下の範囲内であることがさらに好ましい。式(1)に示す構造を有するヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤の添加量を1質量部以上とすることで、耐候性向上効果が発揮され、20質量部以下とすることで表面保護層5の耐候性以外の物性への影響を実用上問題ないレベルに抑えることができる。
【0057】
また、本実施形態においては、表面保護層5中のヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤として、上述した式(1)に示す構造を有するものと、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノール(上述した式(2)に相当)の構造を有するものを併用することで、更に優れた耐候性能が付与される。これは、式(2)に示すヒドロキシフェニルト
リアジン系の紫外線吸収剤が、紫外線の中でも相対的に高エネルギーである短波長領域の紫外線吸収能力が高く、且つほぼ同等の波長領域を吸収する他の紫外線吸収剤と比較して化学的に安定なため、併用により紫外線を吸収する波長領域が広くなるためである。
本実施形態においては、表面保護層5における上述した式(1)に示す構造を有するヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤の添加量を、上述した式(2)に示す構造を有するヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下の範囲内とすることが好ましく、20質量部以上100質量部以下の範囲内とすることがより好ましく、40質量部以上80質量部以下の範囲内とすることがさらに好ましい。式(1)に示す構造を有するヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤の添加量を上記数値範囲内とすることで、さらに優れた耐候性を付与することができる。
【0058】
(表面保護層における紫外線吸収剤の他の例)
以上、表面保護層5に添加可能なヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤について説明したが、本実施形態において使用可能なヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤はこれらに限定されるものではない。本実施形態に係る表面保護層5は、例えば、下記一般式(3)で表される構造を有するヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を含有していてもよい。また、表面保護層5は、下記一般式(4)で表される構造を有する紫外線吸収剤を含有していてもよい。具体的には、下記式(5)に示す、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-(2-エチルヘキシルオキシ)フェニル)]-6-(4-メトキシフェニル)-s-トリアジンを含有していてもよいし、下記式(6)に示すヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を含有していてもよい。
【0059】
【0060】
なお、一般式(3)中、R1からR3はそれぞれ独立し、水素原子またはメチル基またはフェニル基またはアルコキシ基を示し、かつ少なくとも2つがカルボニル基を含まない炭素数8から18のアルコキシ基であり、R4、R5はそれぞれ独立し、ヒドロキシル基またはメチル基または水素原子を示し、R6からR8はそれぞれ独立し、メチル基または水素原子を示す。
【0061】
【0062】
なお、一般式(4)中、R1、R2は炭素数8から18のアルコキシ基、R3は炭素数1から4のアルコキシ基、R4はヒドロキシル基、R5からR8は水素原子を示す。
【0063】
【0064】
【0065】
更に、紫外線吸収剤として、ヒドロキシフェニルトリアジン系とベンゾトリアゾール系のものを併用することで、その相互作用により、更に優れた耐候性能を付与することができる。これは、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤が、ヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤よりも、更に長波長側に吸収のピークを持つため、併用により紫外線を吸収する波長領域を更に広くするためである。ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤の添加量としては、アクリル系樹脂組成物100質量部に対して、1質量部以上30質量部以
下の範囲内が好適であり、1質量部以上添加することで、所望の効果を得ることができ、30質量部以下とすることで、耐候剤のブリードアウトを抑制することができる。但し、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤は、長波長側に吸収ピークがあるために、黄色味を帯びている場合があり、色相に注意を必要とする場合には、添加量を抑制すると良い。
【0066】
ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ第三ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-3’-第三ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-5’-第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2,2’-メチレンビス(4-第三オクチル-6-(ベンゾトリアゾリル)フェノール)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-第三ブチル-5’-カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられるが、これに限るものではない。
【0067】
<ラジカル捕捉剤>
更に光安定剤として、ヒンダードアミン系のラジカル捕捉剤を併用することで、化粧シート10の耐候性能は更に向上させることができる。本実施形態で使用可能なヒンダードアミン系のラジカル捕捉剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、メチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート、1-オキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルステアレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,4,4-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-ブチル-2-(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノ-ル/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-モルホリノ-s-トリアジン重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-第三オクチルアミノ-s-トリアジン重縮合物、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8,12-テトラアザドデカン、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8-12-テトラアザドデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕アミノウンデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕アミノウンデカン、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネートシクロヘキサンと過酸化N-ブチル2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミン-2,4,6-トリクロロ1,3,5-トリアジンとの反応生成物と2-アミノエタノールとの反応生成物などが挙げられるが、これに限るものではない。
【0068】
表面保護層5におけるヒンダードアミン系のラジカル捕捉剤の添加量としては、アクリル系樹脂組成物100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下の範囲内が好適であり、1質量部以上添加することで、所望の効果を得ることができ、30質量部以下とすることで、耐候剤のブリードアウトを抑制することができる他、表面保護層5の他の物性への影響を抑えることができる。
【0069】
本実施形態における表面保護層5の厚みは、紫外線吸収剤の添加量が同じであれば、厚膜化した方が良好な耐候性能を得ることができるが、化粧シート10の柔軟性は損なわれ、後加工時などに化粧シート10の表層へのクラックが入り易くなるなどの問題が起きやすくなる。逆に薄膜化すると、耐候性能が損なわれてしまうという問題がある。そのため、表面保護層5の厚さは2μm以上20μm以下の範囲内が好適である。同様の理由により、化粧シート10の総厚としては、40μm以上300μm以下の範囲内であれば、耐候性能と後加工性が両立できる。
【0070】
本実施形態における表面保護層5を設ける方法としては、例えば、グラビアコート、リバースコート、グラビアリバースコート、ダイコート、フローコートなど、公知の各種コート方式が利用可能である。さらに、本実施形態における表面保護層5には、必要に応じて、例えば、減摩剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤などの各種添加剤を加えても良い。
[プライマー層]
プライマー層6は、接着剤で構成された層であり、化粧材用基材である基材7と着色熱可塑性樹脂層1とを貼り合せるための層である。プライマー層6は必須の構成ではなく、必要に応じて設けることができる。例えば基材7側にプライマー層に相当する層が設けられる場合には、プライマー層6を省略することができる。
プライマー層6を構成する接着剤としては、例えば、ウレタン系、アクリル系、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル系等を採用することができる。特に、本実施形態においては、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの配合による2液硬化型ウレタン系の接着剤等が好ましい。また、これらの材料にシリカや硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機質粉末を添加してプライマー層6を形成すると、巻取保存時のブロッキングの防止や、投錨効果による接着力の向上に有効である。
プライマー層6の層厚は、0.5μm~6μm程度が好適である。
なお、プライマー層6の構成材料として、上述した接着性樹脂層3の構成材料と同じものを用いてもよい。
【0071】
[基材]
本実施形態では、上述した化粧シート10を基材7に貼り合せて、化粧部材11としてもよい。本実施形態に係る化粧部材11は、基材7と、基材7の少なくとも一方の面側に設けられた請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の化粧シートと、を備える。化粧部材11における基材7は、金属系基材、木質系基材、または樹脂系基材のうちいずれかである。具体的には、化粧シート10を、鋼板・アルミ板などの金属系基材、MDFなどの木質系基材、またはPETなどの樹脂系基材上に貼り合わせることにより、高い耐候性能を有する化粧部材11を得ることができ、屋外用途などに使用した場合でも、経時での意匠性低下が殆ど見られない。
【0072】
(化粧シート及び化粧部材の製造方法)
以下、本実施形態に係る化粧シート10の製造方法の一例について、簡単に説明する。
上述した着色熱可塑性樹脂層1、絵柄層2及び接着性樹脂層3をこの順に積層する。
次に、接着性樹脂層3上に透明熱可塑性樹脂層4を形成すると同時に、透明熱可塑性樹脂層4の表面にエンボス加工により凹凸模様を形成する。
次に、凹凸模様を形成した透明熱可塑性樹脂層4の表面に表面保護層5を形成するための塗液を塗布する。
最後に、この塗液を、凹凸模様を構成する凹部8に埋め込むようにワイピングし、塗液を硬化させることで、透明熱可塑性樹脂層4上に表面保護層5を形成する。
こうして、本実施形態に係る化粧シート10を形成する。
【0073】
以下、本実施形態に係る化粧部材11の製造方法の一例について、簡単に説明する。
上述した化粧シート10と基材7とを、上述したプライマー層6を介して貼り合せる。
最後に、プライマー層6を硬化させて化粧部材11を形成する。
【0074】
(本実施形態の効果)
本実施形態に係る化粧シート10及び化粧部材11は、以下の効果を有する。
(1)
本実施形態に係る化粧シート10は、少なくとも着色熱可塑性樹脂層1と、接着性樹脂層3と、透明熱可塑性樹脂層4と、がこの順に積層されており、着色熱可塑性樹脂層1は、層単体に対するリサイクル樹脂材料の含有割合が10質量%以上80質量%以下の範囲内であり、シート全体に対する該リサイクル樹脂材料の含有割合が5質量%以上である。
この構成によれば、リサイクル比率を向上しつつも、色味が不均一となることを抑制し、バージン樹脂材料を用いる場合と同等の強度を有し、製膜性および曲げ加工性が良好である化粧シートを提供することができる。
(2)
また本実施形態に係る化粧シート10において着色熱可塑性樹脂層1は、シートの流れ方向を示すMD方向における引張り強さが10N/mm2以上であり、該MD方向と直交するTD方向における引張り強さが10N/mm2以上である。
この構成によれば、着色熱可塑性樹脂層1の強度を向上し、化粧シート10にバージン樹脂材料を用いる場合と同等の強度を確実に付与することができる。また、製膜性および曲げ加工性をより確実に良好とすることができる
【0075】
(3)
また本実施形態に係る化粧シート10は、着色熱可塑性樹脂層1に対し耐候試験機を用いて所定時間の耐候試験を実施した場合に、該耐候試験の実施前後での着色熱可塑性樹脂層1の色差ΔEが4以下であり、該耐候試験の実施後において着色熱可塑性樹脂層1に割れが生じない。
この構成によれば、化粧シート10の耐候性がさらに良好となり、着色熱可塑性樹脂層1の退色や劣化の進行を抑制して外装材等の用途に好適な化粧シートを提供することができる。
(4)
また、本実施形態に係る化粧シート10における着色熱可塑性樹脂層1は、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、シリカ、クロム、アンチモン、チタン複合物、及びその他の酸化物のうちのいずれか一つ又は複数の無機物を含有する。
この構成によれば、着色熱可塑性樹脂層1を良好に着色して隠蔽性を向上することができる。
【0076】
(5)
また、本実施形態に係る化粧シート10における着色熱可塑性樹脂層1は、紫外線吸収剤または光安定剤のうち少なくとも1種類以上を含有し、該紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤またはトリアジン系紫外線吸収剤のうち少なくとも一方である。
この構成によれば、着色熱可塑性樹脂層1に優れた耐候性を付与して化粧シート10の耐候性を向上することができる。
(6)
また、本実施形態に係る化粧シート10は、着色熱可塑性樹脂層1と接着性樹脂層3との間に設けられた絵柄層2と、透明熱可塑性樹脂層4上に設けられた表面保護層5と、着色熱可塑性樹脂層1における絵柄層2と反対側の面に設けられたプライマー層6と、をさらに備える。
この構成によれば、化粧シート10における意匠性、表面物性(表面硬度維持、耐汚染性、表面の艶調節)、基材密着性を向上することができる。
【0077】
(7)
本実施形態に係る化粧部材11は、基材7と、基材7の少なくとも一方の面側に設けられた化粧シート10と、を備え、基材7は、金属系基材、木質系基材、または樹脂系基材のうちいずれかである。
この構成によれば、リサイクル比率を向上しつつも、色味が不均一となることを抑制し、バージン樹脂材料を用いる場合と同等の強度を有し、製膜性および曲げ加工性が良好である化粧部材を提供することができる。
【0078】
<実施例>
以下、実施例及び比較例を示して本開示を詳細に説明するが、本開示は下記例に制限されるものではない。
(実施例1)
隠蔽性のある着色ポリエチレン樹脂による着色熱可塑性樹脂層の一方の面にコロナ放電処理を施した後、当該一方の面上に2液型ウレタンインキ(V180:東洋インキ(株)製)をグラビア印刷して絵柄層を設けた。次に、絵柄層を備えた着色熱可塑性樹脂層上に、ウレタン系接着剤層、透明な接着性樹脂層を介して、透明熱可塑性樹脂層と、アクリル系樹脂組成物を主成分とする表面保護層とをこの順に形成した。
次いで、着色熱可塑性樹脂層の多方の面にコロナ放電処理を施した後、プライマー層(厚み1~2μm)を形成し、実施例1による化粧シートを得た。
その後、プライマー層側にジャパンコーティングレジン製BA-10L(硬化剤:BA-11B)を用いてMDF(Medium density fiberboard:中質繊維)を貼り合わせることで実施例1による化粧部材を得た。本実施例による各層の構成を以下に示す。
〔着色熱可塑性樹脂層〕
材質:ポリプロピレン、厚み:60μm
リサイクル樹脂材料(ポリプロピレン)・・・40質量%
紫外線吸収剤(チヌビン326;BASFジャパン(株)製)・・・0.25質量部
光安定剤(チヌビンXT55;BASFジャパン(株)製) ・・・0.5質量部
〔透明熱可塑性樹脂層〕
材質:ポリプロピレン、厚み:70μm
透明ホモポリプロピレン樹脂(プライムPP;(株)プライムポリマー製)・・・99質量部
紫外線吸収剤(チヌビン326;BASFジャパン(株)製)・・・0.5質量部
光安定剤(チヌビンXT55;BASFジャパン(株)製)・・・0.5質量部
〔表面保護層〕
厚み:5μ
主剤(メチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート=80/20)・・・90質量部
紫外線吸収剤(チヌビン329);BASFジャパン(株)製)・・・6質量部
光安定剤(チヌビン292;BASFジャパン(株)製 ・・・4質量部
硬化剤(タケネートD170;三井化学(株)) ・・・10質量部
溶剤(酢酸エチル)・・・240質量部
〔シート総厚〕
140μm(うち10μmは、接着性樹脂層、表面保護及びプライマー層の合計)
〔シート全体でのリサイクル樹脂材料の含有割合〕
含有割合:17.1質量%
【0079】
(実施例2)
着色熱可塑性樹脂層においてリサイクル樹脂材料(ポリプロピレン)の添加量(含有割合)を80質量%、シート全体での該添加量を34.3質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例2による化粧シートおよび化粧部材を得た。
(実施例3)
着色熱可塑性樹脂層においてリサイクル樹脂材料(ポリプロピレン)の添加量(含有割合)を12質量%、シート全体での該添加量を5.1質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例3による化粧シートおよび化粧部材を得た。
(実施例4)
着色熱可塑性樹脂に耐候剤を添加しなかった。それ以外は、実施例1と同様にして実施例4による化粧シートおよび化粧部材を得た。
【0080】
(比較例1)
着色熱可塑性樹脂層においてリサイクル樹脂材料(ポリプロピレン)の添加量(含有割合)を85質量%、シート全体での該添加量を36.4質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして比較例1による化粧シートおよび化粧部材を得た。
【0081】
<評価>
上記実施例及び比較例で得られた化粧シートについて、以下の方法で色味の均一性、着色熱可塑性樹脂層の引張り強さ(強度)、着色熱可塑性樹脂層の耐候性、化粧シートの耐候性、製膜適性、および曲げ加工性を評価した。
【0082】
(色味の均一性)
各実施例および比較例の化粧シートについて、ロット間で色味にバラつきが無いか(色味に均一性があるか)を目視で確認した。
〇:目視でロット間の色味のバラつきが確認されず、色味が均一である。
△:一部に目視でロット間の軽微な色味のバラつきが確認されるが、おおむね色味が均一である。
×:全体的にロット間での色味のバラつきが確認される。
【0083】
(着色熱可塑性樹脂層の引張り強さ評価)
各実施例および比較例の化粧シートの着色熱可塑性樹脂層に対し、JIS K 6251に準拠した引張試験を実施した。試験片として試験片打抜刃(引張 1号形 ダンベル状)でダンベル状に打ち抜いた試験片を用いた。引張試験の条件は、温度23±2℃の環境下で、引張速度50mm/minとし、MD方向およびTD方向のそれぞれについて引張り強さを測定した。引張試験装置としては、「インストロン万能試験機 5966型」を用いた。測定された引張り強さについて以下の基準で評価した。
◎:MD方向で20N以上、且つTD方向で20N以上
〇:MD方向で10N以上、且つTD方向で10N以上
×:MD方向で10N未満、且つTD方向で10N未満
本実施例では「〇」以上を、バージン樹脂製の化粧シートと引張り強さが同等とみなして合格とした。
【0084】
(着色熱可塑性樹脂層の耐候性評価)
各実施例および比較例の化粧シートの着色熱可塑性樹脂層に対し、耐候性試験機(サンシャインウエザーメーター:SWOM)を用いてJIS B 7753に準じたカーボンアーク耐候性試験を実施した。耐候性試験機としては「スガ試験機株式会社」製の装置を用いた。試験条件は、ブラックパネル温度60~66℃(63±3℃)、120分サイクル(光照射102分、光照射および水噴霧18分)とし、上記耐候性試験の実施前後における着色熱可塑性樹脂層1の色差ΔEについて以下の基準で評価した。
◎:耐候性試験1500h実施後において、試験実施前との色差が△E=4以下であり、著しい外観変化(クラック、変色)なし
〇:耐候性試験1000h実施後において、試験実施前との色差が△E=4以下であり、著しい外観変化なし
△:耐候性試験1000h実施後において、試験実施前との色差が△E=4以下であり、目視可能な軽微な外観変化あり
×耐候性試験1000h実施後において、試験実施前との色差が△E=4を超過し、著しい外観変化あり
本実施例では「△」以上を合格とした。
【0085】
(化粧シートの耐候性評価)
各実施例および比較例の化粧シートに対し、上記着色熱可塑性樹脂層の耐候性評価と同等の耐候性試験を実施して試験結果を以下のように評価した。
◎:耐候性試験2000h実施で著しい外観変化(クラック、変色)無し
〇:耐候性試験1500h実施で著しい外観変化無し
△:耐候性試験1000h実施で目視可能な軽微な外観変化有り
×:耐候性試験1000h実施で著しい外観変化有り
本実施例では「△」以上を合格とした。
【0086】
(曲げ加工性評価)
Vカット試験により、曲げ加工性を評価した。
各実施例および比較例の化粧部材について、Vカット加工を実施し、折り曲げ頂上部の外観状態を確認した。Vカット加工としては、評価シートにおいて化粧シートが張り付けられていない面側から基板(MDFボード)と化粧シートとを貼り合わせている境界まで、化粧シートにキズが付かないようにV型の溝を入れた。次に、化粧シートを貼付した面が山折りとなるようにして、評価シートを当該V型の溝に沿って90度まで折り曲げて、折り曲げ頂上部に白化やクラック(亀裂・ひび割れ)等の異常がみられるかどうかを目視により判定した。その際、Vカット加工適性(折り曲げ白化の有無)を確認して、バージン樹脂製の化粧シートと同等の曲げ加工性を有するかについて評価を行った。
評価基準は、下記のとおりとした。
〇:白化やクラックは確認されず、バージン樹脂製の化粧シートと同等の加工性を有する
△:軽微な白化、クラックあり
×:著しい白化、クラックあり
本実施例では、「○」以上を合格とした。
【0087】
(製膜適性(押出適性))
生産ラインにおいて、着色熱可塑性樹脂層を押出成形する際に支障がなくバージン樹脂製の化粧シートと同等の押出適性を有するものを「〇」と評価し、押出成形が困難なものを「△」と評価し、押出成形が不可能なものを「×」と評価した。
なお、本実施例では、「○」を合格とした。
【0088】
上述した方法を用いて、各種の性能を評価した結果を表1に示す。
【0089】
【0090】
表1に示すように、実施例1~4の化粧シートにおける着色熱可塑性樹脂層1は、層単体に対するリサイクル樹脂材料の含有割合が10質量%以上80質量%以下の範囲内であり、シート全体に対する該リサイクル樹脂材料の含有割合が5質量%以上である。
これにより、実施例1から実施例4の化粧シートでは、化粧シートの色味の均一性、着色熱可塑性樹脂層の引張り強さ(強度)、製膜適性、および曲げ加工性の評価がいずれも「〇」以上であり、合格となった。つまり、実施例1~4の化粧シートは、リサイクル比率を向上しつつも、色味が不均一となることを抑制し、バージン樹脂材料を用いる場合と同等の強度を有し、製膜性および曲げ加工性が良好であることが分かった。
【0091】
また、実施例1~3の化粧シートは、いずれも着色熱可塑性樹脂層に耐候剤(紫外線吸収剤、光安定剤)を添加していることから、着色熱可塑性樹脂層および化粧シート全体の耐候性の評価結果がいずれも「〇」以上であって優れた耐候性を有することが分かった。
【0092】
一方、比較例1の化粧材は、着色熱可塑性樹脂層1単体におけるリサイクル樹脂材料の含有割合が10質量%以上80質量%以下の範囲内という条件を満たしておらず、引張り強さ(引張強度)、製膜適性、曲げ加工性がいずれも不合格となり、色味の均一性も実施例1~4と比較して劣る結果となった。
【0093】
なお、本開示の化粧シートおよび化粧材は、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。
【0094】
また、例えば、本開示は以下のような構成を取ることができる。
(1)
少なくとも着色熱可塑性樹脂層と、接着性樹脂層と、透明熱可塑性樹脂層と、がこの順に積層されており、
前記着色熱可塑性樹脂層は、層単体に対するリサイクル樹脂材料の含有割合が10質量%以上80質量%以下の範囲内であり、
シート全体に対する前記リサイクル樹脂材料の含有割合が5質量%以上である
ことを特徴とする化粧シート。
(2)
前記着色熱可塑性樹脂層は、シートの流れ方向を示すMD方向における引張り強さが10N/mm2以上であり、前記MD方向と直交するTD方向における引張り強さが10N/mm2以上である
ことを特徴とする上記(1)に記載の化粧シート。
(3)
前記着色熱可塑性樹脂層に対し耐候試験機を用いて所定時間の耐候試験を実施した場合に、
前記耐候試験の実施前後での前記着色熱可塑性樹脂層の色差ΔEが4以下であり、前記耐候試験の実施後において前記着色熱可塑性樹脂層に割れが生じない
ことを特徴とする上記(1)または(2)に記載の化粧シート。
(4)
前記着色熱可塑性樹脂層は、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、シリカ、クロム、アンチモン、チタン複合物、及びその他の酸化物のうちのいずれか一つ又は複数の無機物を含有する
ことを特徴とする上記(1)から(3)のいずれか1項に記載の化粧シート。
(5)
前記着色熱可塑性樹脂層は、紫外線吸収剤または光安定剤のうち少なくとも1種類以上を含有し、
前記紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤またはトリアジン系紫外線吸収剤のうち少なくとも一方である
ことを特徴とする上記(1)から(4)のいずれか1項に記載の化粧シート。
(6)
前記着色熱可塑性樹脂層と前記接着性樹脂層との間に設けられた絵柄層と、
前記透明熱可塑性樹脂層上に設けられた表面保護層と、
前記着色熱可塑性樹脂層における前記絵柄層と反対側の面に設けられたプライマー層と、をさらに備える
ことを特徴とする上記(1)から(5)のいずれか1項に記載の化粧シート。
(7)
基材と、
前記基材の少なくとも一方の面側に設けられた上記(1)から(6)のいずれか1項に記載の化粧シートと、を備え、
前記基材は、金属系基材、木質系基材、または樹脂系基材のうちいずれかである
ことを特徴とする化粧部材。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本開示は、建築内装用および外装用、建具の表面や枠材、家電製品の表面材、床材等々の建築用資材の表面化粧材などに好適な技術である。
【符号の説明】
【0096】
1 着色熱可塑性樹脂層
2 絵柄層
3 接着性樹脂層
4 透明熱可塑性樹脂層
5 表面保護層
6 プライマー層
7 基材
8 凹部
10 化粧シート
11 化粧部材