(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162526
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】産生促進剤、化粧料組成物、及び化粧料の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/68 20060101AFI20241114BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20241114BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241114BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241114BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241114BHJP
A61K 31/164 20060101ALI20241114BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20241114BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20241114BHJP
【FI】
A61K8/68
A61K8/02
A61Q19/00
A61P43/00 111
A61P17/00
A61K31/164
A61K9/10
A61K47/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078104
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100226023
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 崇仁
(72)【発明者】
【氏名】堀川 洋
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA22
4C076BB31
4C076CC18
4C076EE23
4C076EE23F
4C076FF11
4C083AC431
4C083AC432
4C083AC641
4C083AC642
4C083CC01
4C083CC02
4C083CC03
4C083CC04
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD39
4C083EE12
4C083EE13
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA03
4C206GA04
4C206GA25
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA43
4C206MA83
4C206NA14
4C206ZA89
4C206ZC19
4C206ZC41
(57)【要約】
【課題】
特に皮膚に対して有用な機能を有する産生促進剤を提供すること。
【解決手段】
ヒアルロン酸合成酵素の産生促進剤であり、セラミド類の粒子を含む、水性分散体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミド類の粒子を含む、ヒアルロン酸合成酵素の産生促進剤。
【請求項2】
表皮組織に適用し、前記表皮組織におけるヒアルロン酸合成酵素の産生を促進するための、請求項1に記載の産生促進剤。
【請求項3】
セラミド類の粒子を含む、MKI67の産生促進剤。
【請求項4】
表皮組織に適用し、前記表皮組織におけるMKI67の産生を促進するための、請求項3に記載の産生促進剤。
【請求項5】
セラミド類の粒子を含む、繊維芽細胞増殖因子の産生促進剤。
【請求項6】
表皮組織に適用し、前記表皮組織における繊維芽細胞増殖因子の産生を促進するための、請求項5に記載の産生促進剤。
【請求項7】
前記繊維芽細胞増殖因子が、繊維芽細胞増殖因子1及び繊維芽細胞増殖因子2の少なくとも一方である、請求項5に記載の産生促進剤。
【請求項8】
前記粒子がヒト型セラミドを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の産生促進剤。
【請求項9】
前記粒子がセラミド1、セラミド2及びセラミド3のうち1種のみ又は2種のみを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の産生促進剤。
【請求項10】
前記粒子が200nm以下の平均粒子径を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の産生促進剤。
【請求項11】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油型の非イオン性界面活性剤を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の産生促進剤。
【請求項12】
水性分散体である請求項1~7のいずれか一項に記載の産生促進剤。
【請求項13】
請求項1~7のいずれか一項に記載の産生促進剤を含む、化粧料組成物。
【請求項14】
請求項1~7のいずれか一項に記載の産生促進剤を他の原料に配合する工程を含む、化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、産生促進剤、化粧料組成物、及び化粧料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミド類は、ヒトの角質層にも含まれており、皮膚内部からの水分の蒸散を抑制するとともに、自身が水分を保持することで皮膚の柔軟性やなめらかな外観を保つ機能を確保するために重要な役割を果たすことが知られている。そのため、セラミド類を配合した各種配合物が知られている(特許文献1~3及び非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-114235号公報
【特許文献2】特開2012-41518号公報
【特許文献3】特開2022-80694号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 2022, Vol. 86, No. 9,1240-1246
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、例えば、特許文献1、2等に記載されるように、セラミド類は、I型コラーゲンの産生促進作用を通じてしわ、たるみ等の皮膚の老化症状を予防又は改善することができることが知られているものの、本発明者が鋭意検討したところによれば、セラミド類の水性分散体にはI型コラーゲンの産生促進作用以外にも、有用な機能を有していることが判明した。また、非特許文献1では、水とDMSOと混合溶媒にセラミドを溶解した溶液の生理的な作用について評価が行われているものの、水性分散体に関する記載はない。
【0006】
本開示は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、特に皮膚に対して有用な機能を有する産生促進剤を提供することを目的とする。また、本開示は、そのような産生促進剤を含む化粧料組成物、及び化粧料の製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、以下の実施形態を含む。
[1]
セラミド類の粒子を含む、ヒアルロン酸合成酵素の産生促進剤。
[2]
表皮組織に適用し、前記表皮組織におけるヒアルロン酸合成酵素の産生を促進するための、[1]の産生促進剤。
[3]
セラミド類の粒子を含む、MKI67の産生促進剤。
[4]
表皮組織に適用し、前記表皮組織におけるMKI67の産生を促進するための、[3]の産生促進剤。
[5]
セラミド類の粒子を含む、繊維芽細胞増殖因子の産生促進剤。
[6]
表皮組織に適用し、前記表皮組織における繊維芽細胞増殖因子の産生を促進するための、[5]の産生促進剤。
[7]
前記繊維芽細胞増殖因子が、繊維芽細胞増殖因子1及び繊維芽細胞増殖因子2の少なくとも一方である、[5]又は[6]の産生促進剤。
[8]
前記粒子がヒト型セラミドを含む、[1]~[7]のいずれか一つの産生促進剤。
[9]
前記粒子がセラミド1、セラミド2及びセラミド3のうち1種のみ又は2種のみを含む、[1]~[8]のいずれか一つの産生促進剤。
[10]
前記粒子が200nm以下の平均粒子径を有する、[1]~[9]のいずれか一つの産生促進剤。
[11]
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油型の非イオン性界面活性剤を更に含む、[1]~[10]のいずれか一つの産生促進剤。
[12]
水性分散体である[1]~[11]のいずれか一つの産生促進剤。
[13]
[1]~[12]のいずれか一つの産生促進剤を含む、化粧料組成物。
[14]
[1]~[12]のいずれか一つの産生促進剤を他の原料に配合する工程を含む、化粧料の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、特に皮膚に対して有用な機能を有する産生促進剤を提供することができる。また、本開示によれば、そのような産生促進剤を含む化粧料組成物、及び化粧料の製造方法を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態に係る産生促進剤は、セラミド類の粒子を含み、以下の(1)~(3)の少なくとも一つに使用できるものである。
(1)ヒアルロン酸合成酵素(HAS)の産生促進剤
(2)MKI67の産生促進剤
(3)繊維芽細胞増殖因子(FGF)の産生促進剤
(1)の産生促進剤は、ヒアルロン酸の合成が促進されるため、皮膚の保湿機能が向上される。(2)の産生促進剤は、MKI67が細胞増殖の指標であり、細胞増殖が活発に行われるため、皮膚のターンオーバーが促進される。(3)の産生促進剤は、繊維芽細胞の増殖を促進することで、しわ、たるみ等の予防又は改善をすることができる。産生促進剤は、対象の因子の産生促進を促すことに加え、産生促進を阻害する化合物の生成を抑制する可能性(産生促進を阻害するタンパク質の生成を抑制している可能性)も考えられる。
【0010】
(1)~(3)の産生促進剤は、表皮組織に適用して使用してよい。すなわち、(1)~(3)の産生促進剤は、表皮組織に適用して表皮組織におけるヒアルロン酸合成酵素、MKI67、又は繊維芽細胞増殖因子の産生を促進するためのものであってよい。
【0011】
(1)の産生促進剤が対象とするヒアルロン酸合成酵素は、ヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)であってよい。
【0012】
(3)の産生促進剤が対象とする繊維芽細胞増殖因子は、繊維芽細胞増殖因子1(FGF1)であってよく、繊維芽細胞増殖因子2(FGF2)であってよく、それらの両方であってもよい。
【0013】
<セラミド類の粒子>
本実施形態の産生促進剤は、セラミド類の粒子を含む。セラミド類として、セラミド、セラミドの誘導体、及びセラミドの類似体等が挙げられる。セラミドは、スフィンゴシンのアミノ基と脂肪酸のカルボキシル基とがアミド結合した構造を有する化合物である。セラミドの誘導体としては、糖修飾セラミド等が挙げられる。また、セラミド類自体としては、フィトスフィンゴシンのアミノ基と脂肪酸のカルボキシル基とがアミド結合した構造を有する化合物及びその誘導体が挙げられる。
【0014】
セラミド類は、天然由来のものであっても、合成品であってもよい。天然由来のセラミド類としては、動物由来のもの、小麦、米、米ぬか、大豆、黍、ホウレンソウ等の植物より抽出したもの、などが挙げられる。
【0015】
粒子に含まれるセラミド類は、ヒト型セラミドであってもよい。ヒト型セラミドは、ヒト皮膚の主に角層に含まれるセラミドであり、セラミド1~7が挙げられる。老化や光老化により角層中に含まれるセラミド量が低下することから、角層中にセラミド量を増加させることで保湿機能や皮膚バリア機能を向上させることができるため、粒子は、セラミド1~7の7種類のセラミドのうち1種のみを含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよく、セラミド1、セラミド2及びセラミド3のうち1種のみ又は2種のみを含んでいてよい。本実施形態の水性分散体は、特にヒト皮膚角層中で最も多く含まれているセラミド2を含むと好ましく、セラミド2のみを含んでいるとより好ましい。
【0016】
セラミド類の粒子は、セラミド類以外の成分を含んでいてもよい。セラミド類の粒子におけるセラミド類の含有量は、セラミド類の粒子の総量に対して70質量%以上であると好ましく、80質量%以上であるとより好ましい。また、セラミド類の粒子におけるセラミド類の含有量の上限は、特に制限されず、セラミド類の粒子の総量に対して実質的に100質量%であってもよいが、95質量%であってもよい。
【0017】
セラミド類の粒子は、保存安定性を高める観点から、200nm以下の平均粒子径を有していてよく、170nm以下であってよく、160nm以下であってよい。上記セラミド類の粒子の平均粒子径の下限は、特に制限はないが、保存安定性の観点から、セラミド類の粒子の平均粒子径は、1nm以上であってよく、5nm以上であってよい。粒子の平均粒子径は、動的光散乱法により測定することができ、具体的な装置としては、ZetasizerNano(Malvern社製)等を挙げることができる。粒子の平均粒子径は、個数基準での累積粒度分布における累積50%となる粒子径(d50)であってよい。また、同様に動的光散乱法により、粒子のセラミド類の多分散指数も測定することができる。
【0018】
本実施形態のセラミド類の粒子は、水性分散体に含まれていてよい。すなわち、本実施形態の産生促進剤は、セラミドの粒子と、連続相である水性媒体を含む。
【0019】
本実施形態の産生促進剤は、水性分散体を4℃で1年間保管した場合、保管後のセラミド類の粒子の平均粒子径の変化率が25%以内であり、多分散指数の変化率が30%以内であるとの条件、及び当該化粧料用水性分散体における炭素数10~30の脂肪酸又はその塩の含有量が1質量%以下であるとの条件の少なくとも一方を満たしてもよい。
このような水性分散体は、化粧料に配合した際に、化粧料に配合される各種添加剤との相性も良く、様々な化粧料処方において凝集物の発生を抑制することができ、広いpH、温度等の範囲でも、凝集物の発生が抑制できる。そのため、本実施形態の化粧料用水性分散体は、保存安定性に優れ、配合性、水性分散体の外観等にも優れる。また、本実施形態の水性分散体は、皮膚透過性に優れる傾向にある。
【0020】
本実施形態の産生促進剤は、上記のとおり、化粧料に配合される成分として優れており、化粧料用水性分散体として使用することができる。また、後述のとおり、本実施形態の水性分散体は、I型プロコラーゲンの産生を促進する作用があるため、I型プロコラーゲン産生促進剤としても使用できる。
【0021】
本実施形態の産生促進剤は、水性分散体を4℃で1年間保管した場合に、保管後の上記セラミド類の粒子の平均粒子径の変化率は25%以内であってよく、保管後の多分散指数の変化率が30%以内であってよい。保管条件としては、更に暗所で振動等がない場所で保管してもよい。保管後のセラミド類の粒子の平均粒子径の変化率は、保管終了時点での平均粒子径と保管開始時点の平均粒子径との差の絶対値を、保管開始時点の平均粒子径で除したものである。
【0022】
同様に保管後のセラミド類の粒子の多分散指数の変化率は、保管終了時点での多分散指数と保管開始時点での多分散指数との差の絶対値を、保管開始時点での多分散指数で除したものである。
【0023】
保管後のセラミド類の粒子の平均粒子径及び多分散指数の変化率は、いずれも百分率で表す。
【0024】
保管開始時点は、水性分散体の製造直後であってもよく、製造後の任意の時点であってもよい。保管終了時点は、保管開始から1年時点であり、1年2か月時点であってもよく、1年5か月時点であってもよい。
【0025】
保管は、水性分散体の水分の蒸散を防ぐことができる環境下で行われ、例えば、水性分散体を密閉した容器内に保管することが好ましい。
【0026】
4℃で一年間保管した後のセラミド類の粒子の平均粒子径の変化率は、22%であると好ましい。4℃で一年間保管した後のセラミド類の粒子の多分散度の変化率は、28%であると好ましい。
【0027】
水性分散体におけるセラミド類の粒子の多分散指数は、0.5以下であってよく、0.4以下であってもよい。
【0028】
なお、「以内」とは、0から所定の上限までの範囲を指すものとする。保管後の平均粒子径の変化率は、実質的に0%であってもよいが、0%より大きくてもよく、0.1%以上であってもよい。また、保管後の多分散指数の変化率は、実質的に0%であってもよいが、0%より大きくてもよく、0.1%以上であってもよい。
【0029】
また、上記セラミド類の粒子の個数基準での累積粒度分布における累積90%となる粒子径(d90)は、400nm以下であると好ましく、350nm以下であるとより好ましく、300nm以下であると更に好ましい。
【0030】
また、上記セラミド類の粒子の多分散指数は、製造コストの低減の観点から、0.1以上であると好ましく、0.15以上であるとより好ましく、0.2以上であると更に好ましい。上記セラミド類の粒子の多分散指数は、化粧品への配合性や外観向上の観点から、0.5以下であってよく、0.4以下であってよい。セラミド類の粒子の多分散指数は、上述の動的光散乱法により測定することができる。
【0031】
本実施形態のセラミド類の粒子は、脂質を適宜配合してもよい。
【0032】
脂質としては、例えば、リン脂質、炭素数10~30の脂肪酸又はその塩が挙げられる。
【0033】
リン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、大豆レシチン、卵黄レシチン等の天然リン脂質、天然リン脂質中の不飽和炭素鎖を水素により飽和とした水素添加大豆リン脂質、水素添加卵黄リン脂質等の水素添加リン脂質、ジオレイルホスファチジルコリン等の合成リン脂質等が挙げられる。
【0034】
炭素数10~30の脂肪酸又はその塩としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リノール酸、αリノレン酸、γリノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、エルカ酸等、及びこれらの塩が挙げられる。なお、本実施形態の水性分散体における炭素数10~30の脂肪酸又はその塩の含有量は、1質量%以下であってもよく、0.5質量%以下であってもよく、0.1質量%であってもよく、実質的に0質量%であってもよい(つまり、水性分散体は、炭素数10~30の脂肪酸又はその塩を含まなくてもよい)。
【0035】
脂質は1種類又は2種類以上含まれていても良い。
【0036】
セラミド類の粒子は、界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としては、特に限定されず、一般的に化粧品で使用されるようなアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が使用できる。
アニオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリエチレングリコール(PEG)脂肪酸アミドモノエタノールアミド(MEA)硫酸塩、アルキルメチルタウリン塩、オレフィンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、脂肪酸塩、アシルアミノ酸塩、アルキル乳酸塩、アルキルイセチオン酸塩等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジポリオキシエチレンオレイルメチルアンモニウム、塩化ポリオキシエチレンベヘニルリルメチレンアンモニウム、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(C12-18)ジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルジメチルアンモニウム、メチル硫酸ジココイルエチルヒドロキシエチルアンモニウム、ヤシ油アルキルプロピレングリコール(PG)ジモニウムクロリドリン酸、リノール酸アミドプロピルプロピレングリコール(PG)ジモニウムクロリドリン酸、ステアラミドプロピルメチルアミン、ジメチルステアラミン、ポリオキシエチレン(POE)ヤシ油アルキルアミン等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルベタイン型両性界面活性剤、ラウリン酸アミドプロピルベタイン等のアミドベタイン型両性界面活性剤、ヒドロキシアルキル(C12-14)ヒドロキシエチルサルコシン等のカルボイシベタイン型の両性界面活性剤、ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタイン等のアミドスルホベタイン型の両性界面活性剤、ココアンホジ酢酸ナトリウム等のイミダゾリニウムベタイン型の両性界面活性剤、ラウラミノプロピオン酸ナトリウム等のプロピオン酸型の両性界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキシド等のアミンオキシド型の両性界面活性剤、N-[3-アルキル(12,14)オキシ-2-ヒドロキシプロピル]-L-アルギニン塩酸塩等のアミノ酸型の界面活性剤等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、モノグリセリン脂肪酸エステル型の非イオン性界面活性剤、ポリグリセリン脂肪酸エステル型の非イオン性界面活性剤、ソルビタン及びポリオキシエチレンソルビタン型の非イオン性界面活性剤、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット型の非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油型の非イオン性界面活性剤、ピロリドンカルボン酸(PCA)イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油型の非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン脂肪酸型の非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリン型の非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型の非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル型の非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー型の非イオン性界面活性剤、アルカノールアミド型の非イオン性界面活性剤、ショ糖エステル型の非イオン性界面活性剤、アルキルグリコシド型の非イオン性界面活性剤、ジステアリン酸ポリエチレングリコール(PEG)型の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。本実施形態の水性分散体は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油型の非イオン性界面活性剤を含むと好ましい。当該ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油型の非イオン性界面活性剤は水添されていてもよい。また、本実施形態の水性分散体は、ポリグリセリン脂肪酸エステル型の非イオン性界面活性剤を含まなくてよい。なお、水性分散体は、水以外の成分として、セラミド類及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油型の非イオン性界面活性剤のみを含むものであってもよい。
これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。水性分散体中の界面活性剤の量は、皮膚への刺激性及び配合性等の観点から、水性分散体の総量に対して0.01~80質量%であってよく、0.1~50質量%であってよく、0.5~40質量%であってよく、3~30質量%であってよく、5~35質量%であってよい。
【0037】
セラミド類の粒子がポリオキシエチレン硬化ヒマシ油型の非イオン性界面活性剤を含む場合、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油型の非イオン性界面活性剤の含有量は、0.01~80質量%であってよく、0.1~50質量%であってよく、0.5~40質量%であってよく、3~30質量%であってよく、5~35質量%であってよい。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油型の非イオン性界面活性剤の含有量は、水性分散体の総量に対するポリオキシエチレン硬化ヒマシ油型の非イオン性界面活性剤の配合量であってもよい。
【0038】
セラミド類の粒子を含む水性分散体におけるセラミド類の含有量は、配合性等の観点から、水性分散体の総量に対して0.01~50質量%であると好ましく、0.05~30質量%であるとより好ましく、0.1~10質量%であると更に好ましい。水性分散体におけるセラミド類の含有量は、5質量%以下であってよく、3質量%以下であってよく、0.001~2質量%であってよく、0.005~1質量%であってよく、0.01~0.5質量%であってもよい。
【0039】
上記セラミド類の粒子におけるセラミド2の含有量の下限は、特に制限されないが、皮膚の保湿機能や皮膚バリア性を向上させる観点から、セラミド類の粒子の総量に対して、70質量%であると好ましく、80質量%であるとより好ましい。上記セラミド類の粒子におけるセラミド2の含有量の上限は、特に制限されないが、セラミド類の粒子がセラミド2からなるものであってもよく、セラミド類の粒子が、99.5質量%以下のセラミドを含んでいてもよい。
【0040】
水性分散体は、上記セラミド類の粒子と共に、連続相である水性媒体を含む。水性媒体としては、水自体であってもよいが、水と共に有機溶媒、添加剤等の他の成分等を含んでいてもよい。添加剤としては、酸化防止剤や防腐剤等を含んでいてもよい。酸化防止剤としては、例えばアスコルビン酸等が挙げられる。防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、1,2ヘキサンジオール、クエン酸、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0041】
本実施形態のセラミド類の粒子を含む水性分散体は、マイクロ流体デバイス等により、セラミド類を含む原料を水性媒体に分散させることにより製造することができる。セラミド類を含む原料としては、セラミド類自体であってもよいが、天然由来のセラミド類としては、牛脳より抽出したもの、小麦、米、米ぬか、大豆、黍、ホウレンソウ等の植物より抽出したものなどの天然由来の抽出物であってもよい。例えば、Eur.J.Pharm.Biopharm.117,286~291(2017)記載の方法や、Eur.J.Pharm.Biopharm.63,128~133(2006)記載のマイクロ流体デバイスを用いた水性分散体の調製方法が利用できる。
【0042】
本実施形態の水性分散体は所望に応じて、セラミド類の粒子以外の粒子(「その他の粒子」という)を適宜含んでいても良い。その他の粒子は1種または2種以上含んでいても良く、そのような粒子としては、例えば平均粒子径が50nm以下のビタミンEの粒子、平均粒子径が200nm以下の金粒子、及び平均粒子径が200nm以下のクルクミノイドの粒子が挙げられる。上記ビタミンEの粒子はビタミンE以外の成分を含んでいてもよく、ビタミンEの粒子の総量に対してビタミンEを70質量%以上含有することが好ましい。上記金の粒子は金以外の成分を含んでいてもよく、金の粒子の総量に対して金を70質量%以上含有することが好ましい。上記クルクミノイドの粒子はクルクミノイド以外の成分を含んでいてもよく、クルクミノイドの粒子の総量に対してクルクミノイドを70質量%以上含有することが好ましい。
【0043】
<化粧料組成物>
本実施形態の産生促進剤は、通常化粧料に配合される成分(化粧料用添加剤)を配合することにより、化粧料組成物とすることができる。化粧料組成物における、上記セラミド類の粒子の含有量は、化粧料組成物におけるセラミド類の粒子の保存安定性をより高める観点から、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上である。また、化粧料としての性能を確保する観点から、好ましくは50質量%以下である。各種成分としては、以下に説明するものが挙げられる。
【0044】
上記化粧料用添加剤としては、例えば、油性成分、粉体成分、油ゲル化剤、水性成分、水溶性高分子、紫外線吸収剤、酸化防止剤、美容成分、防腐剤などが挙げられ、これらの添加剤は、各種の効果を付与するために適宜配合することができる。
【0045】
油性成分としては、動物油、植物油、合成油等の起源及び、固形、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、エステル油類、硬化油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類等が挙げられる。具体的には、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックス、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン等の炭化水素類、モクロウ、ミンク油、オリーブ油、アボカド油、ヒマシ油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ等のロウ類、ロジン酸ペンタエリスリットエステル、ホホバ油、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、イソノナン酸イソトリデシル、2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール等のエステル類、オレイン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール類、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、トリメチルシロキケイ酸、架橋型ポリエーテル変性メチルポリシロキサン、メタクリル変性メチルポリシロキサン、オレイル変性メチルポリシロキサン、ポリビニルピロリドン変性メチルポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン等のシリコーン油類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類、イソステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸等の油性ゲル化剤類等が挙げられ、これらの1種又は2種以上用いることができる。これらの中でもトリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、イソノナン酸イソノニル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール等の低分子量エステル油が、伸び広がりや付着性の観点から好ましい。
【0046】
粉体成分としては、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的には、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青等の有色無機顔料、タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、カオリン、炭化珪素、ベントナイト、スメクタイト、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、珪ソウ土、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素、シリカ等の白色体質粉体、二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄被覆雲母チタン、酸化鉄雲母、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等の光輝性粉体、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン-アクリル共重合体等のコポリマー樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体、ステアリン酸亜鉛、N-アシルリジン等の有機低分子性粉体、澱粉、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体、赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号等の有機顔料粉体、赤色3号、赤色104号、赤色106号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料粉体あるいは更にアルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン二酸化珪素、酸化亜鉛二酸化珪素等の複合粉体、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末のラメ剤、タール色素、天然色素等が挙げられ、これら粉体はその1種又は2種以上を用いることができ、更に複合化したものを用いても良い。尚、これら粉体成分は、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、レシチン、水素添加レシチン、コラーゲン、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックスクワランス、ロウ、界面活性剤等の1種又は2種以上を用いて表面処理を施してあっても良い。
【0047】
油ゲル化剤としては、デキストリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、疎水性煙霧状シリカ、有機変性ベントナイト等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いてもよい。
【0048】
水性成分としては、水及び水に可溶な成分であれば何れでもよく、水の他に、例えば、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液等が挙げられる。
【0049】
水溶性高分子としては、グアーガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等の天然系のもの、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の半合成系のもの、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成系のものを挙げることができる。
【0050】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等が挙げられる。
【0051】
酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール等のビタミンE、アスコルビン酸等が挙げられる。
【0052】
美容成分としては、例えばビタミン類、タンパク質、消炎剤、生薬等が挙げられる。
【0053】
防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0054】
また、上記以外の各種成分としては、例えば、保湿剤、皮膜形成剤、褪色防止剤、消泡剤、香料、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタンなどのフッ素系油剤;多価アルコール、糖類、アミノ酸、各種ポリマー、エタノール、増粘剤、pH調整剤、血行促進剤、冷感剤、殺菌剤、皮膚賦活剤なども、本開示の効果を損なわない範囲内で配合可能である。
【0055】
また本実施形態の化粧料組成物は、その剤形や製品形態が特に限定されるものではなく、油中水型、水中油型、水分散型、プレス状、固形剤、パウダーなどの剤形とすることができ、また製品形態(化粧料)としては、洗顔フォーム・クリーム、クレンジング、マッサージクリーム、パック、化粧水、乳液、クリーム、美容液、化粧下地、日焼け止めなどの皮膚用化粧料、ファンデーション、水白粉、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、アイブロウ、コンシーラー、口紅、リップクリーム等の仕上げ用化粧料、ヘアミスト、シャンプー、リンス、トリートメント、ヘアトニック、ヘアクリーム、ポマード、チック、液体整髪料、セットローション、ヘアスプレー、染毛料等の頭髪用化粧料、パウダースプレー、ロールオン等の制汗剤などを例示することができる。この中でも、ファンデーション、フェースパウダーなど固形状製剤等が本開示の効果が発揮されやすい化粧料である。
【0056】
上記化粧料組成物、又は化粧料を製造する方法としては、特に限定されず、本実施形態水性分散体を、化粧料を作製するための他の原料(化粧料用添加剤等)に配合する工程を含むものであればよい。
【実施例0057】
[実施例1]
<セラミド類の粒子を含有する水性分散体の調製>
公知のマイクロ流体デバイスを用いた水性分散体の調製方法により、セラミド2(商品名:セラミドTIC-001、高砂香料工業社製)を、界面活性剤を含む水溶液に分散させて、セラミド2の粒子を含む透明な水性分散体を得た。得られた水性分散体について動的光散乱測定装置(商品名:Zetasizer Nano、Malvern社製)を用いてセラミド2の粒子の平均粒子径(個数基準)を測定したところ、153.8nmであり、多分散指数は0.383であった。なお、動的光散乱法による測定は、分散媒体の屈折率=1.33、試料の屈折率=1.46、試料の粘度(cP)=0.89の実験条件で行った。なお、上記水性分散体の各成分の配合量は、仕込み量で、0.13質量%のセラミド2、18質量%のPEG-80水添ヒマシ油(非イオン性界面活性剤)、及び残部の水である。
【0058】
<三次元皮膚モデルを用いた機能評価>
ヒト皮膚全層モデルであるT-skin(ニコダームリサーチ社製)を用いてセラミド類水性分散体の生理機能評価を実施した。6-well Cell Culture Plate(GREINER BIO-ONE社製)にT-skin Culture Medium(ニコダームリサーチ社製)を2mL/wellで添加した。T-skin Culture Mediumを添加した6-well Multiwell Cell Culture Plateにニコダームリサーチ社から納品されたT-skinを移し、37℃、5体積%CO2の条件下で24時間培養した。24時間培養後、T-skinの表皮上に、1.13mL/well(T-skinの表面積1cm2に対して、1mL)となるように、リン酸緩衝液(D-PBS(-)、富士フイルム和光純薬株式会社製)、並びに上述のセラミド類水性分散体をそれぞれ添加し、37℃、5体積%CO2の条件下で8時間培養した。培養終了後T-skinを回収し、ピンセットを用いてT-skinの表皮、真皮、フィルム層をそれぞれ剥離した。表皮部分のみをRNAlater(ThermoFisher社)を用いてRNAの安定化処理を行った後、miRNeasymini kit(Qiagen社)を用いてQiagen社推奨の方法でtotal RNA を抽出した。超微量分光光度計NanoDrop One(ThermoFisher社)及びバイオアナライザ(Agilent社)を用いて、RNA濃度、純度(260/280、260/230)、RNAの分解度の指標であるRIN値を測定し、260/280及び260/280が1.7以上、RIN値が7以上であることを確認後、各total RNAからReverTra Ace(登録商標)qPCR RT MasterMix(TOYOBO)を使用してcDNA合成を行った。cDNA合成の条件はTOYOBO開示の推奨プロトコルに従って実施した。QIAcuity One(Qiagen社)及びQIAcuity probe PCR kit(Qiagen社)を用いてQiagen社推奨のプロトコルに従って定量PCRを実施した。なお定量PCRでは以下のThermoFisher社から購入したTagman probeを使用し、duplicateで実験を実施した。
・GAPDH(グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ)(Hs99999905 m1)
・HAS3(Hs00193436 m1)
・MKI67(Hs04260396 g1)
・FGF1(Hs01092738 m1)
・FGF2(Hs00266645 m1)
GAPDHを内在性コントロールとして使用して以下式に従って各遺伝子のコピー数の補正を行った後、リン酸緩衝液添加区を1とした場合のセラミド類水性分散体の各遺伝子発現量の相対値を算出した。結果を表1に示す。
【0059】
【0060】
上記結果からセラミド類水性分散体には、ヒアルロン酸合成酵素(HAS3)の遺伝子発現量が向上していることから皮膚の保湿向上効果、増殖細胞マーカーであるMKI67の遺伝子発現量が向上していることから表皮のターンオーバー促進、及び線維芽細胞増殖因子であるFGF1及びFGF2の遺伝子発現量が促進していることから真皮線維芽細胞の増殖が促進によるシワ改善効果が期待されることがわかった。