(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162535
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/42 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
B60N2/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078124
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大木 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】荒井 巧
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087CD05
3B087DA05
3B087DE01
(57)【要約】
【課題】車両の後面衝突時に乗員の背部のシートバックへの入り込みが妨げられることを抑制する。
【解決手段】車両用シート10は、乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッション12と、乗員の背部をシート後方側から支持するシートバック14と、を備えている。シートバック14は、バックパッド20と、バックパッド20を覆うバックトリム22と、を有している。バックトリム22には、バックパッド20がシート後方側へ向けて押圧された際に、バックパッド20とバックトリム22との間のガスが排出されるガス排出孔24が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッションと、
バックパッドと、前記バックパッドを覆う被覆部材と、を有し、乗員の背部をシート後方側から支持するシートバックと、
前記バックパッドがシート後方側へ向けて押圧された際に、前記バックパッドと前記被覆部材との間のガスが排出されるガス排出部と、
を備えた車両用シート。
【請求項2】
前記ガス排出部は、前記被覆部材におけるシート後方側の面に形成されたガス排出孔となっている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記被覆部材におけるシート後方側の面には、複数の前記ガス排出孔が形成され、
シート幅方向の中央部に形成された前記ガス排出孔の大きさが、シート幅方向の両側部分に形成された前記ガス排出孔の大きさよりも大きくなっている請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記被覆部材におけるシート後方側の面には、複数の前記ガス排出孔が形成され、
前記被覆部材を厚み方向から見て、前記被覆部材の単位面積あたりに占める前記ガス排出孔の面積の割合を開口率とした場合において、
シート幅方向の中央部における前記開口率が、シート幅方向の両側部分における前記開口率よりも高くなっている請求項2に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記被覆部材におけるシート後方側の面には、ポケットが設けられており、
前記ガス排出孔が、前記被覆部材において前記ポケットの内部に位置する部分に形成されている請求項2に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記ガス排出孔が、前記被覆部材におけるシート後方側の面の下方側の部位に形成されている請求項2に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両の後面衝突時に乗員に作用する荷重を低減することを実現した車両用シートが開示されている。この文献に記載された車両用シートは、第1エアバッグ、第2エアバッグ及び第3エアバッグを備えている。第1エアバッグは、シートバックの上方側の部位の内部に設けられている。また、第2エアバッグは、シートバックの下方側の部位の内部に設けられている。さらに、第3エアバッグは、ヘッドレストの内部に設けられている。そして、車両の後面衝突時に、乗員の背部がシートバックにおいて第1エアバッグと対応する部位を押圧すると、第1エアバッグが圧縮されて、第1エアバッグ内の空気が第3エアバッグ内に移動する。これにより、第3エアバッグが膨張して、ヘッドレストの前部が前方側へ突出した状態となり、乗員の頭部に作用する荷重が第3エアバッグにより緩和される。また、乗員の頭部がヘッドレストにおいて第3エアバッグと対応する部位を押圧すると、第3エアバッグが圧縮されて、第3エアバッグ内の空気が第2エアバッグ内に移動する。これにより、第2エアバッグが膨張して、シートバックの下方側の部位が前方側へ突出した状態となり、乗員の腰部に作用する荷重が第2エアバッグにより緩和される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載された構成は、車両の後面衝突時に乗員に作用する荷重を低減するという観点では有用な構成ではあるが、車両の後面衝突時に乗員の背部のシートバックへの入り込みが妨げられることを抑制するという観点では改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、車両の後面衝突時に乗員の背部のシートバックへの入り込みが妨げられることを抑制することができる車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の車両用シートは、乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッションと、バックパッドと、前記バックパッドを覆う被覆部材と、を有し、乗員の背部をシート後方側から支持するシートバックと、前記バックパッドがシート後方側へ向けて押圧された際に、前記バックパッドと前記被覆部材との間のガスが排出されるガス排出部と、を備えている。
【0007】
第1の態様の車両用シートでは、車両の後面衝突時に、乗員の背部がバックパッドをシート後方側へ向けて押圧すると、バックパッドと被覆部材との間のガスがガス排出部を通じて排出される。これにより、バックパッドと被覆部材との間のガスの圧力が高まることが抑制され、乗員の背部のシートバックへの入り込みが妨げられることを抑制することができる。
【0008】
第2の態様の車両用シートは、第1の態様の車両用シートにおいて、前記ガス排出部は、前記被覆部材におけるシート後方側の面に形成されたガス排出孔となっている。
【0009】
第2の態様の車両用シートでは、乗員の背部がバックパッドをシート後方側へ向けて押圧すると、バックパッドと被覆部材との間のガスが被覆部材に形成されたガス排出孔を通じて排出される。これにより、バックパッドと被覆部材との間のガスの圧力が高まることが抑制され、乗員の背部のシートバックへの入り込みが妨げられることを抑制することができる。
【0010】
第3の態様の車両用シートは、第2の態様の車両用シートにおいて、前記被覆部材におけるシート後方側の面には、複数の前記ガス排出孔が形成され、シート幅方向の中央部に形成された前記ガス排出孔の大きさが、シート幅方向の両側部分に形成された前記ガス排出孔の大きさよりも大きくなっている。
【0011】
第3の態様の車両用シートでは、シート幅方向の中央部に形成されたガス排出孔の大きさが、シート幅方向の両側部分に形成されたガス排出孔の大きさよりも大きくなっている。これにより、乗員の背部において背骨と対応する範囲のシートバックへの入り込みが妨げられることをより効果的に抑制することができる。
【0012】
第4の態様の車両用シートは、第2の態様又は第3の態様の車両用シートにおいて、前記被覆部材におけるシート後方側の面には、複数の前記ガス排出孔が形成され、前記被覆部材を厚み方向から見て、前記被覆部材の単位面積あたりに占める前記ガス排出孔の面積の割合を開口率とした場合において、シート幅方向の中央部における前記開口率が、シート幅方向の両側部分における前記開口率よりも高くなっている。
【0013】
第4の態様の車両用シートでは、シート幅方向の中央部における開口率が、シート幅方向の両側部分における開口率よりも高くなっている。これにより、乗員の背部において背骨と対応する範囲のシートバックへの入り込みが妨げられることをより効果的に抑制することができる。
【0014】
第5の態様の車両用シートは、第2の態様~第4の態様のいずれか1つの態様の車両用シートにおいて、前記被覆部材におけるシート後方側の面には、ポケットが設けられており、前記ガス排出孔が、前記被覆部材において前記ポケットの内部に位置する部分に形成されている。
【0015】
第5の態様の車両用シートでは、ガス排出孔が、被覆部材においてポケットの内部に位置する部分に形成されている。これにより、ガス排出孔が形成されることに伴う被覆部材の外観への影響を抑制することができる。
【0016】
第6の態様の車両用シートは、第2の態様~第6の態様のいずれか1つの態様の車両用シートにおいて、前記ガス排出孔が、前記被覆部材におけるシート後方側の面の下方側の部位に形成されている。
【0017】
第6の態様の車両用シートでは、ガス排出孔が、被覆部材におけるシート後方側の面の下方側の部位に形成されている。これにより、乗員の腰部と対応する範囲のシートバックへの入り込みが妨げられることをより効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る車両用シートは、車両の後面衝突時に乗員の背部のシートバックへの入り込みが妨げられることを抑制することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係る車両用シートを斜め後方側から見た斜視図である。
【
図2】シートバックを前後方向及び左右方向に沿って切断した断面を示す断面図である。
【
図3】第2実施形態に係る車両用シートを斜め後方側から見た斜視図である。
【
図4】第3実施形態に係る車両用シートを斜め後方側から見た斜視図である。
【
図5】第4実施形態に係る車両用シートを斜め後方側から見た斜視図である。
【
図8】ガス排出孔が硬質ボードに形成された例を示す
図1に対応する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
図1及び
図2を用いて、本発明の第1実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、図中に示す矢印FR、矢印UP、矢印RH及び矢印LHは、車両用シート10に着座した乗員から見たシート前方側、上方側、右側及び左側をそれぞれ示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下、シート左右方向の左右を示すものとする。また、シート左右方向は、シート幅方向と一致している。
【0021】
図1に示されるように、本実施形態の車両用シート10は、乗員(着座乗員)の臀部を下方側から支持するシートクッション12と、乗員の背部Pを後方側から支持するシートバック14と、乗員の頭部を後方側から支持するヘッドレスト16と、を備えている。
【0022】
図1及び
図2に示されるように、シートバック14は、当該シートバック14の骨格を構成するバックフレーム18と、バックフレーム18に取付けられたバックパッド20と、バックパッド20を覆う被覆部材としてのバックトリム22と、を含んで構成されている。
【0023】
バックパッド20は、一例としてポリウレタンフォーム等の樹脂発泡体を用いて形成されている。このバックパッド20は、当該バックパッド20の左右方向の中央部分を構成するメイン部20Aを備えている。また、バックパッド20は、当該バックパッド20の左右方向の両側部分を構成すると共にメイン部20Aに対して前方側へ突出している左右一対のサイドサポート部20Bを備えている。
【0024】
バックトリム22は、一例として革や合成皮革を用いて形成されている。このバックトリム22は、バックパッド20のメイン部20Aを前方側から覆うメイン部被覆部22Aと、左右一対のサイドサポート部20Bを前方側及びシート幅方向外側から覆うサイドサポート部被覆部22Bと、を備えている。また、バックトリム22は、メイン部20A及び左右一対のサイドサポート部20Bを後方側から覆う背面被覆部22Cを備えている。
【0025】
図1に示されるように、バックトリム22におけるシート後方側の面を構成する背面被覆部22Cには、ガス排出部としての複数のガス排出孔24が形成されている。これらのガス排出孔24は、バックパッド20がシート後方側へ向けて押圧された際にバックパッド20とバックトリム22との間のガス(空気)が排出される流路となっている。
【0026】
具体的には、背面被覆部22Cの左右方向の中央部における上方側の部分には、左右方向に間隔をあけて配置された2個のガス排出孔24が形成されている。また、背面被覆部22Cの左右方向の中央部及び上下方向の中央部には、左右方向に間隔をあけて配置された2個のガス排出孔24が形成されている。さらに、背面被覆部22Cの左右方向の中央部における下方側の部分には、左右方向に間隔をあけて配置された2個のガス排出孔24が形成されている。これら6個のガス排出孔24の形状は円形となっている。
【0027】
図1及び
図2に示されるように、以上説明した本実施形態の車両用シート10では、車両の後面衝突時に、乗員の背部Pがバックパッド20を後方側へ向けて押圧すると、バックパッド20とバックトリム22との間のガスがバックトリム22の背面被覆部22Cに形成された複数のガス排出孔24を通じて排出される。これにより、バックパッド20とバックトリム22との間のガスの圧力が高まることが抑制され、乗員の背部Pのシートバック14への入り込みが妨げられることを抑制することができる。
【0028】
また、本実施形態の車両用シート10では、2個のガス排出孔24が、乗員の腰部と対応する部分である背面被覆部22Cの下方側の部位に形成されている。これにより、乗員の腰部と対応する範囲のシートバック14への入り込みが妨げられることをより効果的に抑制することができる。
【0029】
(第2実施形態)
次に、
図3を用いて、本発明の第2実施形態に係る車両用シート26について説明する。なお、第2実施形態に係る車両用シート26において前述の第1実施形態に係る車両用シート10と対応する部材及び部分には、第1実施形態に係る車両用シート10と対応する部材及び部分と同じ符号を付して、その説明を省略することがある。
【0030】
図3に示されるように、本実施形態の車両用シート26では、第1実施形態に係る車両用シート10よりも多くのガス排出孔24が背面被覆部22Cに形成されている。
【0031】
詳述すると、背面被覆部22Cの左右方向の中央部には、左右方向に2列で配列された12個のガス排出孔24が上下方向に沿って形成されている。なお、これら12個のガス排出孔24を第1ガス排出孔24Aと呼ぶことにする。第1ガス排出孔24Aの形状は円形となっている。
【0032】
また、背面被覆部22Cにおいて12個の第1ガス排出孔24Aが形成された部分に対して右側の部分には、5個のガス排出孔24が上下方向に沿って形成されている。また、背面被覆部22Cにおいて12個の第1ガス排出孔24Aが形成された部分に対して左側の部分には、5個のガス排出孔24が上下方向に沿って形成されている。すなわち、背面被覆部22Cにおいて12個の第1ガス排出孔24Aが形成された部分に対して左右の両側には、10個のガス排出孔24が形成されている。なお、これら10個のガス排出孔24を第2ガス排出孔24Bと呼ぶことにする。第2ガス排出孔24Bの形状は円形となっている。
【0033】
また、背面被覆部22Cにおける右側の端部には、4個のガス排出孔24が上下方向に沿って形成されている。また、背面被覆部22Cにおける左側の端部には、4個のガス排出孔24が上下方向に沿って形成されている。すなわち、背面被覆部22Cにおける左右方向の両端部には、8個のガス排出孔24が形成されている。なお、これら8個のガス排出孔24を第3ガス排出孔24Cと呼ぶことにする。第3ガス排出孔24Cの形状は円形となっている。
【0034】
また、本実施形態では、第2ガス排出孔24Bの内径が、第3ガス排出孔24Cの内径よりも大きな内径に設定されている。また、第1ガス排出孔24Aの内径が、第2ガス排出孔24Bの内径よりも大きな内径に設定されている。
【0035】
ここで、バックトリム22を厚み方向から見て、バックトリム22の単位面積あたりに占めるガス排出孔24の面積の割合を開口率と定義することにする。そして、本実施形態では、背面被覆部22Cのシート幅方向の中央部における開口率が、シート幅方向の両側部分における開口率よりも高くなっている。
【0036】
以上説明した本実施形態の車両用シート26では、車両の後面衝突時に、乗員の背部P(
図2参照)がバックパッド20を後方側へ向けて押圧すると、バックパッド20とバックトリム22との間のガスがバックトリム22の背面被覆部22Cに形成された複数のガス排出孔24を通じて排出される。これにより、バックパッド20とバックトリム22との間のガスの圧力が高まることが抑制され、乗員の背部Pのシートバック14への入り込みが妨げられることを抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態の車両用シート26では、シート幅方向の中央部に形成された第1ガス排出孔24Aの大きさが、シート幅方向の両側部分に形成された第2ガス排出孔24B及び第2ガス排出孔24Bの大きさよりも大きくなっている。また、本実施形態の車両用シート26では、背面被覆部22Cのシート幅方向の中央部における開口率が、シート幅方向の両側部分における開口率よりも高くなっている。これにより、乗員の背部Pにおいて背骨と対応する範囲のシートバック14への入り込みが妨げられることをより効果的に抑制することができる。
【0038】
(第3実施形態)
次に、
図4を用いて、本発明の第3実施形態に係る車両用シート28について説明する。なお、第3実施形態に係る車両用シート28において既に説明した車両用シート10、26と対応する部材及び部分には、既に説明した車両用シート10、26と対応する部材及び部分と同じ符号を付して、その説明を省略することがある。
【0039】
図3に示されるように、本実施形態に係る車両用シート28では、複数のガス排出孔24が背面被覆部22Cの3箇所において集中するように配置されている。ここで、背面被覆部22Cの3箇所において集中して配置された複数のガス排出孔24をそれぞれ第1ガス排出孔群30A、第2ガス排出孔群30B及び第3ガス排出孔群30Cと呼ぶことにする。
【0040】
第1ガス排出孔群30A、第2ガス排出孔群30B及び第3ガス排出孔群30Cは、12個の第1ガス排出孔24Aと、10個の第2ガス排出孔24Bと、8個の第3ガス排出孔24Cと、を備えている。第1ガス排出孔24A及び第2ガス排出孔24Bの形状は、左右方向を長手方向とする楕円形となっている。また、第3ガス排出孔24Cの形状は、円形となっている。そして、第1ガス排出孔群30Aは、背面被覆部22Cにおける左右方向の中央部及び上下方向の中央部に配置されている。また、第2ガス排出孔群30B及び第3ガス排出孔群30Cは、背面被覆部22Cの上部における右側及び左側にそれぞれ配置されている。
【0041】
以上説明した本実施形態の車両用シート28では、車両の後面衝突時に、乗員の背部P(
図2参照)がバックパッド20を後方側へ向けて押圧すると、バックパッド20とバックトリム22との間のガスがバックトリム22の背面被覆部22Cに形成された複数のガス排出孔24を通じて排出される。これにより、バックパッド20とバックトリム22との間のガスの圧力が高まることが抑制され、乗員の背部Pのシートバック14への入り込みが妨げられることを抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態の車両用シート28では、第1ガス排出孔群30A、第2ガス排出孔群30B及び第3ガス排出孔群30Cが背面被覆部22Cにおける上記の部分に配置されている。これにより、乗員の背部Pにおいて背骨と対応する範囲のシートバック14への入り込みが妨げられることをより効果的に抑制することができると共に、乗員の背部Pにおいて肩甲骨と対応する範囲のシートバック14への入り込みが妨げられることをより効果的に抑制することができる。
【0043】
(第4実施形態)
次に、
図5を用いて、本発明の第4実施形態に係る車両用シート32について説明する。なお、第4実施形態に係る車両用シート32において既に説明した車両用シート10、26、28と対応する部材及び部分には、既に説明した車両用シート10、26、28と対応する部材及び部分と同じ符号を付して、その説明を省略することがある。
【0044】
図5に示されるように、本実施形態に係る車両用シート32では、バックトリム22の背面被覆部22Cにポケット形成部材34が接合されている。これにより、背面被覆部22Cとポケット形成部材34との間には、ポケット36が形成されている。このポケット36には、乗員の手荷物等を上方側から格納することが可能となっている。また、複数のガス排出孔24が、背面被覆部22Cにおいてポケット36の内部に位置する部分に形成されている。
【0045】
以上説明した本実施形態の車両用シート32では、複数のガス排出孔24が、背面被覆部22Cにおいてポケット36の内部に位置する部分に形成されている。これにより、複数のガス排出孔24が形成されることに伴うバックトリム22の外観への影響を抑制することができる。
【0046】
(ガス排出孔24の設定について)
次に、ガス排出孔24の設定の具体例について説明する。
【0047】
図1及び
図2に示されるように、本願出願の発明者は、背面被覆部22Cにおいて矢印H及び矢印Wで示された寸法の範囲にガス排出孔24を形成することで、バックパッド20とバックトリム22との間のガスが効率よく排出され、バックパッド20とバックトリム22との間の圧力を効果的に低減できることを発見した。具体的には、背面被覆部22Cの下端から上方側へH=450~550mmの範囲かつ左右方向の中央部における左右方向のW=300~350mmの範囲にガス排出孔24を形成することで、バックパッド20とバックトリム22との間の圧力を効果的に低減できることを発見した。
【0048】
また、本願出願の発明者は、ガス排出孔24の孔径を0.5~10mmの範囲に設定すると共に隣り合うガス排出孔24の間隔を2mm以上に設定することで、バックパッド20とバックトリム22との間のガスが排出される効果が得られることを発見した。また、ガス排出孔24の孔径を1.0~3.0mmの範囲に設定することで、バックトリム22の外観がガス排出孔24によって損なわれることを抑制しつつ、バックパッド20とバックトリム22との間のガスが効率よく排出されることを発見した。
【0049】
なお、以上説明した各実施形態の車両用シート10、26、28、32では、ガス排出孔24の形状を円形や楕円形とした例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図6に示されるように、Y字形状のガス排出孔24としてもよい。このように、ガス排出孔24の形状は、バックトリム22の意匠等を考慮して適宜設定すればよい。また、
図7に示された例のように、複数のガス排出孔24が模様を形成するようにしてもよい。
【0050】
また、以上説明した各実施形態の車両用シート10、26、28、32では、バックパッド20とバックトリム22との間のガスを背面被覆部22Cに形成されたガス排出孔24を通じて排出させた例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図8に示されるように、バックパッド20とバックトリム22との間のガスを硬質ボード38(一例として、バックボードや金属板やプラスチック段ボールを用いて形成された被覆パネル等)に形成されたガス排出孔24を通じて排出させる構成にしてもよい。なお、硬質ボード38は、被覆部材の一例である。また、バックパッド20とバックトリム22との間の空間とシートクッション12の下方側の空間とを連通させるチューブ状のガス排出部を設けて、バックパッド20とバックトリム22との間のガスをチューブ状のガス排出部を通じて排出させた構成としてもよい。
【0051】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 シートバック
20 バックパッド
22 バックトリム(被覆部材)
24 ガス排出孔(ガス排出部)
26 車両用シート
28 車両用シート
32 車両用シート
36 ポケット
38 硬質ボード(被覆部材)