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特開2024-162537電池監視ユニット、電池システム、電流値導出方法、電流センサ監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162537
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】電池監視ユニット、電池システム、電流値導出方法、電流センサ監視方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/00 20060101AFI20241114BHJP
   G01R 31/3835 20190101ALI20241114BHJP
   G01R 31/396 20190101ALI20241114BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20241114BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G01R19/00 M
G01R31/3835
G01R31/396
H02J7/10 B
H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078128
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】トヨタバッテリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 透浩
(72)【発明者】
【氏名】湯野 徳人
(72)【発明者】
【氏名】田中 猛
(72)【発明者】
【氏名】近藤 和樹
【テーマコード(参考)】
2G035
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G035AA04
2G035AB03
2G035AC02
2G035AC14
2G035AD22
2G035AD26
2G035AD28
2G216BB15
2G216CB34
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB01
5G503CA11
5G503GD06
5H030AA10
5H030AS20
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】電池監視ユニット毎に電流センサを備えなくとも、電池セル群を流れる電流の電流値である電池セル群電流値を導出することができる電池監視ユニット、電池システム、電流値導出方法、電流センサ監視方法を提供する。
【解決手段】複数の電池セルを含む電池セル群のうちの少なくとも一つの電池セルを選択する選択部と、前記選択部により選択された前記電池セルの電圧を計測する電圧計測部と、前記電圧計測部による前記電池セルの電圧の計測を制御し、かつ前記電池セルの内部抵抗の値と、前記電圧計測部の計測結果とに基づいて、前記電池セル群を流れる電流の電流値である電池セル群電流値を導出する電圧監視制御部と、前記電圧監視制御部で導出した前記電池セル群電流値を出力する出力部と、を備えた電池監視ユニット。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを含む電池セル群のうちの少なくとも一つの電池セルを選択する選択部と、
前記選択部により選択された前記電池セルの電圧を計測する電圧計測部と、
前記電圧計測部による前記電池セルの電圧の計測を制御し、かつ前記電池セルの内部抵抗の値と、前記電圧計測部の計測結果とに基づいて、前記電池セル群を流れる電流の電流値である電池セル群電流値を導出する電圧監視制御部と、
前記電圧監視制御部で導出した前記電池セル群電流値を出力する出力部と、
を備えた電池監視ユニット。
【請求項2】
前記電圧監視制御部は、
前記電池セル群に電流を供給する電流源と前記電池セル群とが接続状態に遷移した際の前記電圧計測部の計測結果と、前記電流源と前記電池セル群とが非接続状態に遷移した際の前記電圧計測部の計測結果と、前記電池セルの内部抵抗の値とに基づいて、前記電池セル群電流値を導出する
請求項1に記載の電池監視ユニット。
【請求項3】
前記電圧監視制御部は、
前記電池セル群に電流を供給する電流源と前記電池セル群とが接続状態に遷移した際の前記電圧計測部の計測結果と、前記電池セルの内部抵抗の値とに基づいて第1の電流値を導出し、
前記電流源と前記電池セル群とが非接続状態に遷移した際の前記電圧計測部の計測結果と、前記電池セルの内部抵抗の値とに基づいて第2の電流値を導出し、
前記第1の電流値と前記第2の電流値とに基づいて、前記電池セル群電流値を導出する
請求項2に記載の電池監視ユニット。
【請求項4】
前記電圧監視制御部は、
前記選択部により選択された電池セル毎に、電池セルを流れる電流の電流値を導出し、
導出した電池セル毎の電流値に基づいて、前記電池セル群電流値を導出する
請求項2に記載の電池監視ユニット。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電池監視ユニットと、前記電池監視ユニットの監視対象である電池セル群とを含む電池ユニットを複数備えた電池システムであって、
前記電池監視ユニットから出力された前記電池セル群電流値が入力される主制御部と、 前記主制御部に接続され、かつ電流源と前記電池ユニットとの間の電流経路に設けられ、前記電流経路を流れる電流を検出する電流センサと、
前記電池ユニット毎に設けられ、前記電流経路への電池セル群の挿入及び非挿入を切り替える接続状態切替装置と、
を備えた電池システム。
【請求項6】
前記主制御部は、
前記接続状態切替装置により、複数の前記電池ユニットのいずれかに含まれる電池セル群を、前記電流経路に挿入させ、
挿入させた電池セル群を含む前記電池ユニットに含まれる前記電池監視ユニットから入力された前記電池セル群電流値と、前記電流センサの検出値とを比較し、
比較結果に基づいて、前記電流センサの故障の判定、及び前記検出値の補正値の導出の少なくとも一方を行う
請求項5に記載の電池システム。
【請求項7】
前記主制御部は、
前記電流センサの検出値の補正値として、
前記電池セル群電流値が、前記検出値から前記電流センサの誤差を減算した値よりも小さい場合は、前記検出値から前記誤差及び前記電池セル群電流値を減算した第1補正値を導出し、
前記検出値に前記誤差を加算した値が、前記電池セル群電流値よりも小さい場合は、前記電池セル群電流値から前記誤差及び前記検出値を減算した第2補正値を導出する
請求項6に記載の電池システム。
【請求項8】
前記主制御部は、
前記電池ユニット毎に、前記第1補正値または前記第2補正値を導出した場合、前記電池ユニット毎に導出された前記第1補正値または前記第2補正値のうち、最小の値を前記電流センサの検出値の補正値とする
請求項7に記載の電池システム。
【請求項9】
プロセッサが、
複数の電池セルを含む電池セル群のうちの少なくとも一つの電池セルを選択し、
選択された前記電池セルの電圧を計測し、
前記電池セルの内部抵抗の値と、前記電池セルの電圧の計測結果とに基づいて、前記電池セル群を流れる電流の電流値である電池セル群電流値を導出し、
導出した前記電池セル群電流値を出力する、
電流値導出方法。
【請求項10】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電池監視ユニットと、前記電池監視ユニットの監視対象である電池セル群とを含む電池ユニットを複数備えた電池システムであって、前記電池監視ユニットから出力された前記電池セル群電流値が入力される主制御部と、前記主制御部に接続された電流センサと、前記電池ユニット毎に設けられ、前記電流センサによって検出される電流が流れる電流経路への電池セル群の挿入及び非挿入を切り替える接続状態切替装置と、を備えた電池システムの前記主制御部が、
前記接続状態切替装置により、複数の前記電池ユニットのいずれかに含まれる電池セル群を、前記電流経路に挿入させ、
挿入させた電池セル群を含む前記電池ユニットに含まれる前記電池監視ユニットから入力された前記電池セル群電流値と、前記電流センサの検出値とを比較し、
比較結果に基づいて、前記電流センサの故障の判定、及び前記検出値の補正値の導出の少なくとも一方を行う
電流センサ監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池監視ユニット、電池システム、電流値導出方法、電流センサ監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の電池セルを含む電池セル群を有する電池ユニットを、複数備えた電池システムが知られている。このような電池システムでは、各電池ユニットが有する電池セル群の充放電が行われる。そのため、電池ユニット毎に、充放電状態の監視のために用いられる電流センサを備えた電池監視ユニットを備えた電池システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-129354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術のように、電池監視ユニット毎に、電流センサを備える場合、電池ユニットの数に応じて、電池システムが備える電流センサの数が増加する。そのため、電池システム全体では、電流センサの数が多くなってしまうという問題があった。
【0005】
本開示は、上記事情を考慮して成されたもので、電池監視ユニット毎に電流センサを備えなくとも、電池セル群を流れる電流の電流値である電池セル群電流値を導出することができる電池監視ユニット、電池システム、電流値導出方法、電流センサ監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本開示の第1の態様の電池監視ユニットは、複数の電池セルを含む電池セル群のうちの少なくとも一つの電池セルを選択する選択部と、前記選択部により選択された前記電池セルの電圧を計測する電圧計測部と、前記電圧計測部による前記電池セルの電圧の計測を制御し、かつ前記電池セルの内部抵抗の値と、前記電圧計測部の計測結果とに基づいて、前記電池セル群を流れる電流の電流値である電池セル群電流値を導出する電圧監視制御部と、前記電圧監視制御部で導出した前記電池セル群電流値を出力する出力部と、を備える。
【0007】
第2の態様の電池監視ユニットは、第1の態様の電池監視ユニットにおいて、前記電圧監視制御部は、前記電池セル群に電流を供給する電流源と前記電池セル群とが接続状態に遷移した際の前記電圧計測部の計測結果と、前記電流源と前記電池セル群とが非接続状態に遷移した際の前記電圧計測部の計測結果と、前記電池セルの内部抵抗の値とに基づいて、前記電池セル群電流値を導出する。
【0008】
第3の態様の電池監視ユニットは、第2の態様の電池監視ユニットにおいて、前記電圧監視制御部は、前記電池セル群に電流を供給する電流源と前記電池セル群とが接続状態に遷移した際の前記電圧計測部の計測結果と、前記電池セルの内部抵抗の値とに基づいて第1の電流値を導出し、前記電流源と前記電池セル群とが非接続状態に遷移した際の前記電圧計測部の計測結果と、前記電池セルの内部抵抗の値とに基づいて第2の電流値を導出し、前記第1の電流値と前記第2の電流値とに基づいて、前記電池セル群電流値を導出する。
【0009】
第4の態様の電池監視ユニットは、第2の態様の電池監視ユニットにおいて、前記電圧監視制御部は、前記選択部により選択された電池セル毎に、電池セルを流れる電流の電流値を導出し、導出した電池セル毎の電流値に基づいて、前記電池セル群電流値を導出する。
【0010】
また、本開示の第5の態様の電池システムは、本開示の電池監視ユニットと、前記電池監視ユニットの監視対象である電池セル群とを含む電池ユニットを複数備えた電池システムであって、前記電池監視ユニットから出力された前記電池セル群電流値が入力される主制御部と、前記主制御部に接続され、かつ電流源と前記電池ユニットとの間の電流経路に設けられ、前記電流経路を流れる電流を検出する電流センサと、前記電池ユニット毎に設けられ、前記電流経路への電池セル群の挿入及び非挿入を切り替える接続状態切替装置と、を備える。
【0011】
第6の態様の電池システムは、第5の態様の電池システムにおいて、前記主制御部は、前記接続状態切替装置により、複数の前記電池ユニットのいずれかに含まれる電池セル群を、前記電流経路に挿入させ、挿入させた電池セル群を含む前記電池ユニットに含まれる前記電池監視ユニットから入力された前記電池セル群電流値と、前記電流センサの検出値とを比較し、比較結果に基づいて、前記電流センサの故障の判定、及び前記検出値の補正値の導出の少なくとも一方を行う。
【0012】
第7の態様の電池システムは、第6の態様の電池システムにおいて、前記主制御部は、前記電流センサの検出値の補正値として、前記電池セル群電流値が、前記検出値から前記電流センサの誤差を減算した値よりも小さい場合は、前記検出値から前記誤差及び前記電池セル群電流値を減算した第1補正値を導出し、前記検出値に前記誤差を加算した値が、前記電池セル群電流値よりも小さい場合は、前記電池セル群電流値から前記誤差及び前記検出値を減算した第2補正値を導出する。
【0013】
第8の態様の電池システムは、第7の態様の電池システムにおいて、前記主制御部は、前記電池ユニット毎に、前記第1補正値または前記第2補正値を導出した場合、前記電池ユニット毎に導出された前記第1補正値または前記第2補正値のうち、最小の値を前記電流センサの検出値の補正値とする。
【0014】
また、本開示の第9の態様の電流値導出方法は、プロセッサが、複数の電池セルを含む電池セル群のうちの少なくとも一つの電池セルを選択し、選択された前記電池セルの電圧を計測し、前記電池セルの内部抵抗の値と、前記電池セルの電圧の計測結果とに基づいて、前記電池セル群を流れる電流の電流値である電池セル群電流値を導出し、導出した前記電池セル群電流値を出力する。
【0015】
また、本開示の第10の態様の電流センサ監視方法は、本開示の電池監視ユニットと、記電池監視ユニットの監視対象である電池セル群とを含む電池ユニットを複数備えた電池システムであって、前記電池監視ユニットから出力された前記電池セル群電流値が入力される主制御部と、前記主制御部に接続された電流センサと、前記電池ユニット毎に設けられ、前記電流センサによって検出される電流が流れる電流経路への電池セル群の挿入及び非挿入を切り替える接続状態切替装置と、を備えた電池システムの前記主制御部が、前記接続状態切替装置により、複数の前記電池ユニットのいずれかに含まれる電池セル群を、前記電流経路に挿入させ、挿入させた電池セル群を含む前記電池ユニットに含まれる前記電池監視ユニットから入力された前記電池セル群電流値と、前記電流センサの検出値とを比較し、比較結果に基づいて、前記電流センサの故障の判定、及び前記検出値の補正値の導出の少なくとも一方を行う。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、電池監視ユニット毎に電流センサを備えなくとも、電池セル群を流れる電流の電流値である電池セル群電流値を導出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態の電池監視ユニットの構成の一例を表す構成図である。
図2】実施形態の電圧監視制御部のハードウェア構成の一例を表し構成図である。
図3】実施形態の電池システムにおける構成の一例を表した構成図である。
図4】実施形態の主制御部のハードウェア構成の一例を表し構成図である。
図5】実施形態の電圧監視制御部の構成の一例を示す機能ブロック図である。
図6】実施形態の選択部による電池セルの選択を説明するための図である。
図7】実施形態の電流源から電流経路を流れる電流について説明するための図である。
図8】実施形態の電池セル群電流値の導出方法を説明するためのタイミングチャートである。
図9】実施形態の電圧監視制御部において実行される電流値導出処理の流れの一例を表すフローチャートである。
図10】実施形態の主制御部の構成の一例を示す機能ブロック図である。
図11】実施形態の主制御部において実行される電流センサ監視処理の流れの一例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は本発明を限定するものではない。
【0019】
まず、本実施形態の電池監視ユニットの構成について説明する。図1には、本実施形態の電池監視ユニット34の構成の一例を表す構成図が示されている。
【0020】
図1に示すように、電池監視ユニット34は、電池セル群32に含まれる電池セル33-1~33-mの監視を行う機能を有しており、電池セル群32と共に電池監視ユニット34に備えられる。なお、以下では、電池セル33-1~33-m等について、個々を示す場合は個々を表す1~mの符号を付し、総称する場合は、個々を表す符号1~mの記載を省略する。
【0021】
電池セル群32は、直列に接続された複数の電池セル33を含んだ組電池である。なお、図1では、電池セル群32がm個(m>2)の電池セル33(33-1~33-m)を備える場合について示されているが、電池セル群32が備える電池セル33の数は、m個に限定されない。
【0022】
電池セル33は、繰り返し充電が可能な蓄電デバイスである二次電池である。一例として、本実施形態では、電池セル33として、リチウムイオン二次電池である単電池を用いている。なお、リチウムイオン二次電池とは、電解質イオンとしてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電子の移動により充放電が実現される二次電池のことをいう。
【0023】
電池セル群32の一端は、電流センサ12を介して電流源14(いずれも図3参照)に接続されており、電池セル群32には、電流源14から供給された電流が流れる。一方、電池セル群32の他端は、グランドに接続されている。また、各電池セルは、端子35(35-1~35-m+1)を介して、電池監視ユニット34の選択部40に接続されている。
【0024】
一方、電池監視ユニット34は、図1に示すように、選択部40、電圧計測部42、電圧監視制御部44、及び通信部46を備える。選択部40は、電池セル群32に含まれる複数の電池セル群32のうちから、電圧監視制御部44の制御に応じて任意の電池セル33を選択し、選択した電池セル33の両端と電圧計測部42とを電気的に接続する機能を有する。一例として本実施形態の選択部40は、電池セル群32(電池セル33)と電圧計測部42との間に設けられた複数のスイッチング素子(図示省略)を含んでいる。電圧監視制御部44によってスイッチング素子のオン及びオフが制御されることにより、任意の電池セル33を選択する。
【0025】
電圧計測部42は、選択部40によって選択された電池セル33の電圧を検出する機能を有する。電圧計測部42が検出した電圧値は、電圧監視制御部44に出力される。
【0026】
電圧監視制御部44は、電池監視ユニット34全体を制御し、電圧計測部42による電池セル33の電圧の計測を制御する機能を有する。本実施形態の電圧監視制御部44は、電圧計測部42の検出結果に基づいて、電池セル群32の充電及び放電を制御する。また、電圧監視制御部44は、電圧計測部42の検出結果と、電池セル33の内部抵抗を表す内部抵抗値情報55とに基づいて、電池セル群32を流れる電流の電流値である電池セル群電流値を導出する。本実施形態では内部抵抗値情報55の一例として、各電池セル33の内部抵抗値を用いている。なお、電池セル33の劣化等により、内部抵抗値が変動する場合があるため、内部抵抗値情報55は適切なタイミングで更新することが好ましい。
【0027】
このような電圧監視制御部44としては、例えば、MPU(Micro Processing Unit)等を適用することができる。図2には、電圧監視制御部44のハードウェア構成の一例が示されている。図2に示すように、本実施形態の電圧監視制御部44は、CPU(Central Processing Unit)50、RAM(Random Access Memory)52、及びROM(Read Only Memory)54を含む。CPU50、RAM52、及びROM54は、システムバスやコントロールバス等のバス59を介して相互に各種情報の授受が可能に接続されている。RAM52は、各種データを一時的に記憶するメモリである。ROM54は、CPU50で実行される、電流値導出プログラム56(詳細後述)を含む各種プログラム及び上述した内部抵抗値情報55等が予め記憶されている。CPU50は、プロセッサの一例であり、ROM54に記憶されている電流値導出プログラム56等のプログラムを実行することにより、電池監視ユニット34の制御を行う。
【0028】
通信部46は、電圧監視制御部44による電池セル33の電圧の監視結果、及び電圧監視制御部44により導出された電池セル群電流値等を主制御部10に送信する機能を有する。なお、通信部46と主制御部10との間の通信は、WiFi(登録商標)又はBluetooth(登録商標)等の無線通信であってもよいし、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよい。
【0029】
次に、本実施形態の電池システム1の構成について説明する。図3には、電池システム1の構成の一例を表す構成図が示されている。図3に示すように本実施形態の電池システム1は、上述した電池監視ユニット34及び電池監視ユニット34の監視対象である電池セル群32の組み合わせである電池ユニット30を複数(図3では、n個;30-1~30-n)備えている。なお、以下では、電池ユニット30同様、電池システム1においてn個備える装置等については、個々を示す場合は個々を表す1~nの符号を付し、総称する場合は、個々を表す符号1~nの記載を省略する。
【0030】
また、電池システム1は、主制御部10と、電流センサ12と、電流源14と、接続状態切替装置20(20-1~20-n)と、を備える。
【0031】
電流源14は、電流経路13に接続されており、各電池ユニット30に備えられた電池セル群32に含まれる電池セル33の充電及び放電を行うための電流を電流経路13によって供給する機能を有する。
【0032】
電流センサ12は、かつ電流源14と電池ユニット30との間の電流経路13に設けられ、電流経路13を流れる電流を検出する機能を有する。電流センサ12は主制御部10に接続されており、検出した電流経路13を流れる電流の電流値を主制御部10に出力する。
【0033】
接続状態切替装置20は、電池ユニット30毎に設けられ、電流経路13への電池セル群32の挿入及び非挿入を切り替える機能を有する。図3に示すように、本実施形態の接続状態切替装置20は、ドライバモジュール22及び電力切替モジュール24を備える。電力切替モジュール24は、電流経路13との接続状態を切り替えるためのスイッチ25aと、電池ユニット30との接続状態を切り替えるためのスイッチ25bと、を含む。
【0034】
ドライバモジュール22は、主制御部10と接続されており、主制御部10の制御に応じて、電力切替モジュール24に含まれるスイッチ25a、25bのオン及びオフを制御する。具体的には、電流経路13に電池セル群32を挿入する場合、スイッチ25aをオン状態にし、また、スイッチ25bをオフ状態にする制御を行い、接続状態切替装置20と電池ユニット30に含まれる電池セル群32とを接続状態にする。一方、電流経路13に電池セル群32を非挿入する場合、スイッチ25aをオン状態にし、また、スイッチ25bをオフ状態にする制御を行い、接続状態切替装置20と電池ユニット30に含まれる電池セル群32とを非接続状態にする。
【0035】
主制御部10は、電池システム1の全体を制御する機能を有する。上述したように、主制御部10は、ドライバモジュール22により、電流経路13への電池セル群32の挿入及び非挿入を制御する機能を有する。また、主制御部10には、電流センサ12によって検出された電流経路13を流れる電流の電流値が入力され、さらに、主制御部10には、電池ユニット30の電流センサ12から出力された電池セル群電流値が入力される。本実施形態の主制御部10は、電流センサ12の検出値である電流値と、電池監視ユニット34の通信部46から入力された電池セル群電流値とを比較し、比較結果に基づいて、電流センサ12の故障の判定、及び電流センサ12の検出値の補正値の導出を行う。
【0036】
このような主制御部10としては、例えば、コンピュータ等を適用することができる。図4には、主制御部10のハードウェア構成の一例が示されている。図4に示すように、本実施形態の主制御部10は、CPU60、RAM62、ROM64、通信部66、及び記憶部67を含む。CPU60、RAM62、ROM64、通信部66、及び記憶部67は、システムバスやコントロールバス等のバス69を介して相互に各種情報の授受が可能に接続されている。RAM62は、各種データを一時的に記憶するメモリである。ROM64は、CPU60で実行される、電流センサ監視プログラム65(詳細後述)を含む各種プログラム等が予め記憶されている。CPU60は、プロセッサの一例であり、ROM64に記憶されている電流センサ監視プログラム65等のプログラムを実行することにより、電流センサ12の故障の判定や、電流センサ12の検出値の補正値の導出を行う。
【0037】
一方、通信部66は、電流センサ12や電池監視ユニット34の通信部46と通信を行う機能を有する。なお、電流センサ12や通信部46との通信は、WiFi(登録商標)又はBluetooth(登録商標)等の無線通信であってもよいし、有線通信であってもよい。また、記憶部67は、上述したCPU60が導出した電流センサ12の検出値の補正値68等が記憶される。このような記憶部67としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、及びSD(Secure Digital)カード等が挙げられる。
【0038】
次に、本実施形態の電池システム1及び電池監視ユニット34の作用について説明する。まず、電池監視ユニット34の電圧監視制御部44による、電池セル群32を流れる電池セル群電流値の導出方法について説明する。本実施形態の電圧監視制御部44は、電池セル群32に含まれる電池セル33毎に、各電池セル33を流れる電流の電流値を導出した後、電池セル群32を流れる電池セル群電流値を導出する。図5には、電圧監視制御部44における電池セル群電流値の導出に係わる機能的な構成を表すブロック図が示されている。図5に示すように、電圧監視制御部44は、選択指示部70、モニタ部72、電池セル電流導出部74、及び電池セル群電流値導出部76を備える。
【0039】
選択指示部70は、電池セル群32に含まれるm個の電池セル33のうちから電流値の導出対象となる電池セル33を選択するよう、選択部40に指示する機能を有する。一例として、図6には、電池セル33-1を流れる電流の電流値を導出するために、選択部40により電池セル33-1が選択された状態が示されている。図6に示すように、電池セル33-1を選択する場合、選択部40によって、電池セル33-1の高電位側に接続された端子35-1と、低電位側に接続された端子35-2とが電圧計測部42に接続される。
【0040】
モニタ部72は、電圧計測部42から出力された検出値(電圧値Vcell)をモニタし、モニタした結果を電池セル電流導出部74に出力する機能を有する。電池セル群電流値の導出を行う場合、電池システム1の主制御部10は、接続状態切替装置20により、電池セル群電流値の導出対象となる電池セル群32を電流経路13に挿入させる。図7には、電池ユニット30-1に含まれる電池セル群32が導出対象である場合の電池システム1の状態が示されている。図7に示すように、電池ユニット30-1に含まれる電池セル群32を流れる電池セル群電流値Icの導出を行う場合、電池ユニット30-1に含まれる電池セル群32が、電流経路13に挿入される。一方、電池ユニット30-2~30-nの各々に含まれる電池セル群32は、電流経路13に非挿入とされる。具体的には、電池ユニット30-1に対応する接続状態切替装置20-1の電力切替モジュール24に含まれるスイッチ25aはオフ状態とされ、スイッチ25bはオン状態とされる。また、電池ユニット30-2~30-nに対応する接続状態切替装置20-2~20-nの電力切替モジュール24に含まれるスイッチ25aはオン状態とされ、スイッチ25bはオフ状態とされる。これにより、電池ユニット30-1の電池セル群32には、電流源14から出力された電流Ioに応じた電流が、電流センサ12を介して流れる。さらに、主制御部10は、電池セル群32を電流源14に挿入させてから所定時間経過した後、挿入させた電池セル群32を電流源14に非挿入とさせる。具体的には、主制御部10は、接続状態切替装置20の電力切替モジュール24に含まれるスイッチ25aをオン状態にさせ、スイッチ25bをオフ状態にさせる。
【0041】
電池監視ユニット34のモニタ部72は、主制御部10によって電池セル群32が電流経路13に非挿入されている状態から、挿入されている状態に遷移し、さらに非挿入されている状態に遷移するまでの期間を少なくとも含む期間における、電圧計測部42から出力された電圧値Vcellの変化をモニタする。モニタ部72は、モニタした電圧値Vcellを電池セル電流導出部74に出力する。上述した図6に示した例では、電圧計測部42は、電池セル33-1の電圧の検出値(電圧値Vcell#1)を電圧監視制御部44に出力する。モニタ部72は、電池セル33-1の電圧の電圧値Vcell#1をモニタして、電池セル電流導出部74に出力する。
【0042】
電池セル電流導出部74は、電池セル33の電圧の電圧値Vcellに基づいて、その電池セル33を流れる電流を導出する機能を有する。
【0043】
図8には、電流経路13を流れる電流Ioの電流値と、電圧計測部42で計測した電池セル33の電圧の電圧値Vcellと、電池セル33を流れる電流の推定された電流値Icellと、電力切替モジュール24のスイッチ25aの状態との関係の一例を表したタイミングチャートが示されている。タイミングt0~t3は充電期間である。本実施形態では、充電を行う場合、電流源14から供給される電流Ioの電流値は正(+:プラス)の値となり、電圧値Vcellも正の値となる。
【0044】
図8のタイミングt1で、電力切替モジュール24のスイッチ25aがオン状態になると、電流経路13に電池セル群32が挿入された状態となり、電池セル33-1には電流Ioに応じた電流が流れる。これにより、電圧値Vcellは、V1からV2(V2>V1)に急峻に変化する。その後、タイミングt1~t2の間は、電圧Vcell-1の電圧値は、V2からV4(V4>V2)に徐々に変化する。さらに、タイミングt2でスイッチ25aがオフ状態になると、電流経路13に電池セル群32が非挿入された状態となり、電池セル33に電流が流れなくなる。これにより、電圧値Vcellは、V4からV3(V3<V4)に急峻に変化する。
【0045】
一方、タイミングt3~t7は放電期間である。本実施形態では、放電を行う場合、電流源14から供給される電流Ioの電流値は負(-:マイナス)の値となり、電圧値Vcellも負の値となる。
【0046】
タイミングt4で、電力切替モジュール24のスイッチ25aがオン状態になると、上述したように、電流経路13に電池セル群32が挿入された状態となり、電池セル群32に電流が流れる。これにより、電圧値Vcellは、V1からV2(V2<V1)に急峻に変化する。その後、タイミングt4~t5の間は、電圧値Vcell-1がV2からV4(V4<V2)に徐々に変化する。さらに、タイミングt5でスイッチ25aがオフ状態になると、上述したように、電流経路13に電池セル群32が非挿入された状態となり、電池セル33に電流が流れなくなる。これにより、電圧値Vcellは、V4からV3(V3>V4)に急峻に変化する。
【0047】
図8に示したように、タイミングt1、t4の各々において電池セル33を流れる電流の電流値I1(以下、第1の電流値I1という)は、電圧値Vcellの電圧値V1、V2と電池セル33の内部抵抗値とから下記(1)により導出できる。なお、電池セル33の内部抵抗値をDCIRとする。
【0048】
I1=|V2-V1|/DCIR ・・・(1)
【0049】
また、タイミングt2、t5の各々において電池セル33を流れる電流の電流値I2(以下、第2の電流値I2という)は、電圧Vcellの電圧値V3、V4と電池セル33の内部抵抗値DCIRとから下記(2)式により導出できる。
【0050】
I2=|V4-V3|/DCIR ・・・(2)
【0051】
本実施形態の電池セル電流導出部74は、1つの電池セル33を流れる電流の電流値Icellを下記(3)式により導出する。
【0052】
Icell=(I1+I2)/2 ・・・(3)
【0053】
電池セル電流導出部74は、電池セル33毎に、上記(1)~(3)式により、各電池セル33を流れる電流の電流値Icell(Icell#1~Icell#m)を導出する。電池セル電流導出部74は、導出した、各電池セル33を流れる電流の電流値Icellを電池セル群電流値導出部76に出力する。
【0054】
電池セル群電流値導出部76は、各電池セル33を流れる電流の電流値Icellから、電池セル群32を流れる電流の電池セル群電流値Icを導出する機能を有する。具体的には、電池セル群電流値導出部76は、下記の(4)式により、電池セル群電流値Icを導出し、導出した電池セル群電流値Icを通信部46に出力する。
Ic=(Icell#1+Icell#2+・・・+Icell#m)/m ・・・(4)
【0055】
図9には、電圧監視制御部44において実行される電流値導出処理の一例のフローチャートが示されている。電圧監視制御部44のCPU50が電流値導出プログラム56を実行することにより、図9に示した電流値導出処理が実行される。なお、図9に示した電流値導出処理は、充電状態または、放電状態のいずれか一方において実行される。
【0056】
図9のステップS100でモニタ部72は、上述したように、電圧計測部42により検出された電圧値のモニタを開始する。
【0057】
次のステップS102で選択指示部70は、上述したように、選択部40により、電流値の導出対象となる電池セル33を選択させる。
【0058】
次のステップS104でモニタ部72は、電圧計測部42から入力される検出値(電圧値)が2回、急峻に変化したが否かを判定する。具体的には、モニタ部72は、充電状態の場合は、タイミングt2を超えたか否かを判定し、放電状態の場合は、タイミングt5を超えたか否かを判定する。モニタしている電圧値Vcellが2回、急峻に変化するまで、ステップS104の判定が否定判定となる。一方、モニタしている電圧値が2回、急峻に変化するとステップS104の判定が肯定判定となり、ステップS106へ移行する。
【0059】
ステップS106で選択指示部70は、選択部40により、選択中の電池セル33の選択を終了させる。これにより、電池セル33と電圧計測部42とが非接続となる。
【0060】
次のステップS108で電池セル電流導出部74は、上述したように、上記(1)式を用い、第1の電流値I1を導出する。
【0061】
次のステップS110で電池セル電流導出部74は、上述したように、上記(2)式を用い、第2の電流値I2を導出する。
【0062】
次のステップS112で電池セル電流導出部74は、上述したように、上記ステップS108で導出した第1の電流値I1と、上記ステップS110で導出した第2の電流値I2とから、上記(3)式を用い、電池セル33を流れる電流の電流値Icellを導出する。電池セル電流導出部74は、導出した電流値Icellを電池セル群電流値導出部76に出力する。
【0063】
次のステップS114で電池セル電流導出部74は、電池セル群32に含まれる全ての電池セル33について、電流値Icellを導出したか否かを判定する。未だ、電流値Icellを導出していない電池セル33がある場合、ステップS114の判定が否定判定となり、ステップS102に戻り、ステップS102~S112の処理を繰り返す。一方、全ての電池セル33について、電流値Icellを導出した場合、ステップS114の判定が肯定判定となり、ステップS116へ移行する。
【0064】
ステップS116で電池セル群電流値導出部76は、上述したように、上記(4)式を用い、電池セル群電流値Icを導出する。
【0065】
次のステップS118で電池セル群電流値導出部76は、上記ステップS116で導出した電池セル群電流値Icを、通信部46を介して主制御部10に出力する。
【0066】
次のステップS120でモニタ部72は、電圧計測部42により検出された電圧値のモニタを終了する。ステップS120の処理が終了すると、図9に示した電流値導出処理が終了する。
【0067】
次に、電池システム1の主制御部10による、電流センサ12の故障の判定方法、及び電流センサ12の検出値の補正値の導出方法について説明する。図10には、主制御部10における電流センサ12の故障の判定、及び電流センサ12の検出値の補正値の導出に係わる機能的な構成を表すブロック図が示されている。図10に示すように、主制御部10は、電池セル群挿入制御部80、検出値取得部82、電池セル群電流値取得部84、及び関心領域検出部85を備える。
【0068】
電池セル群挿入制御部80は、電流経路13に対する電池セル群32の挿入状態を制御する機能を有する。本実施形態の電池セル群挿入制御部80は、上述したように、ドライバモジュール22に対して、電力切替モジュール24に含まれるスイッチ25a、25bのオン状態及びオフ状態を制御するように指示を出力し、測定対象の電池セル群32のみが電流経路13に挿入された状態とする。
【0069】
検出値取得部82は、電流センサ12の検出値(電流値Is)を取得する機能を有する。検出値取得部82は、取得した電流値Isを比較部86に出力する。なお、本実施形態では、記憶部67に補正値68が記憶されている場合、検出値取得部82は、取得した電流値Isを記憶されている補正値68によって補正した補正済みの電流値Isを、電流センサ12で検出した電流値Isとして比較部86に出力する。移行、比較部86では、補正済みの電流値Isを、電流源14による検出値と同様に扱う。
【0070】
電池セル群電流値取得部84は、各電池ユニット30の電池監視ユニット34の通信部46から、電圧監視制御部44が導出した電池セル群電流値Icを取得する機能を有する。具体的には、本実施形態の電池セル群電流値取得部84は、電池ユニット30-1~30-nから、電池セル群電流値Ic#1~Ic#nを取得する。電池セル群電流値取得部84は、取得した電池セル群電流値Icを比較部86に出力する。
【0071】
比較部86は、故障判定部87及び補正値導出部88を含み、電流源14の故障の判定、及び電流源14の検出値の補正値の導出を行う機能を有する。電流センサ12に故障やずれ等がない場合、電流源14から出力された電流Ioの電流値と、電流センサ12が検出した電流値Isとは、同一となる。また、電流センサ12が検出した電流値Isと電池セル群電流値Icとは、同一となる。そこで、比較部86は、電流センサ12が検出した電流値Isと、電池セル群電流値Icとを比較し、比較結果に基づいて故障判定部87が故障の有無を判定し、補正値導出部88が電流センサ12の検出値の補正値を導出する。
【0072】
故障判定部87は、予め定められた故障の基準を満たす場合、電流センサ12に故障が生じていると判定する。故障の基準の具体的な内容は、限定されず、電流センサ12の仕様等により、予め定めておけばよい。故障の基準の例としては、電流センサ12が検出した電流値Isが所定期間以上、同一の値を示しており、値が固着している場合や、電流センサ12が検出した電流値Isと、電池セル群電流値Icとの差が、電流センサ12の仕様から想定される差以上となった場合等が挙げられる。
【0073】
また、補正値導出部88は、電池ユニット30毎に、補正値を導出し、導出した補正値に基づいて、電流センサ12が検出した電流値Isを補正するための最終的な補正値を導出する。
【0074】
補正値導出部88は、電池セル群電流値Icが、電流値Isから電流センサ12の誤差を減算した値よりも小さい場合は、下記(5)式に示すように、電流値Isから誤差及び電池セル群電流値Icを減算した第1補正値を導出する。
第1補正値=Is-センサ誤差-Ic#1 ・・・(5)
【0075】
一方、補正値導出部88は、電流値Isに電流センサ12の誤差を加算した値が、電池セル群電流値Icよりも小さい場合は、下記(6)式に示すように、電池セル群電流値Icから誤差及び電流値Isを減算した第2補正値を導出する。
第2補正値-Ic#1-Is<センサ誤差 ・・・(6)
【0076】
補正値導出部88は、各電池セル33の全てにおける電池セル群電流値Icについて、上記の条件に当てはまる場合、上記(5)式、または(6)式により、第1補正値または第2補正値を導出する。補正値導出部88が導出した第1補正値または第2補正値は、補正値68として主制御部10の記憶部67に記憶される(図4参照)。
【0077】
図11には、主制御部10において実行される電流センサ監視処理の一例のフローチャートが示されている。主制御部10のCPU60が電流センサ監視プログラム65を実行することにより、図11に示した電流センサ監視処理が実行される。
【0078】
図11のステップS200で電池セル群挿入制御部80は、上述したように、選択した電池ユニット30を、電流経路13に挿入させる。
【0079】
次のステップS202で電池セル群挿入制御部80は選択した電池ユニット30を電流源14に挿入させてから所定時間が経過したか否かを判定する。ここでは、図8に示したタイミングt1からt2までの時間、及びタイミングt4からt5までの時間が所定時間として予め定められており、この所定時間が経過したか否かを判定する。
【0080】
所定時間が経過するまで、ステップS202の処理が否定判定となる。一方、所定時間が経過すると、ステップS202の判定が肯定判定となり、ステップS204は移行する。
【0081】
ステップS204で電池セル群挿入制御部80は、上述したように、上記ステップS200で電流経路13に挿入した電池セル33を、非挿入とさせる。
【0082】
次のステップS206で電池セル群電流値取得部84は、上述したように、上記ステップS200で電流センサ12に挿入させた電池ユニット30の電池監視ユニット34の通信部46から出力された電池セル群電流値Icを取得する。電池セル群電流値取得部84は、取得した電池セル群電流値Icを比較部86に出力する。
【0083】
次のステップS208で電池セル群電流値取得部84は、全ての電池ユニット30について、電池セル群電流値Icを取得したか否かを判定する。未だ電池セル群電流値Icを取得していない電池セル33が存在する場合、ステップS208の判定が否定判定となり、ステップS200に戻り、ステップS200~S206の処理を繰り返す。一方、全ての電池ユニット30について、電池セル群電流値Icを取得した場合、ステップS208の判定が肯定判定となり、ステップS210へ移行する。
【0084】
ステップS210で検出値取得部82は、上述したように、電流センサ12の検出値(電流値Is)を取得する。検出値取得部82は、取得した電流値Isを比較部86に出力する。
【0085】
次のステップS212で比較部86は、上述したように、電流値Isと、各電池ユニット30の電池セル群電流値Icとを比較する。
【0086】
次のステップS214で故障判定部87は、上述したように、予め定められた故障の基準に基づいて、電流センサ12が故障しているか否かを判定する。予め定められた故障の基準を満たす場合、ステップS214の判定が肯定判定となり、ステップS216へ移行する。
【0087】
ステップS216で故障判定部87は、所定の故障対応処理を行う。故障対応処理は特に限定されないが、例えば、警告を表す情報を外部に出力したり、充電及び放電を禁止する処理を行ったりすること等が挙げられる。ステップS216の処理が終了すると、図11に示した電流センサ監視処理が終了する。
【0088】
一方、故障判定部87が、電流センサ12が故障していないと判定した場合、ステップS214の処理が否定判定となり、ステップS218へ移行する。ステップS218で補正値導出部88は、上述したように、電池セル群電流値Icが、電流値Isから電流センサ12の誤差Sを減算した値よりも小さいか否かを判定する。電池セル群電流値Icが、電流値Isから電流センサ12の誤差Sを減算した値よりも小さい場合、ステップS218の判定が肯定判定となり、ステップS220へ移行する。ステップS220で補正値導出部88は、上記(5)式により、電池ユニット30毎の第1補正値を導出する。そして、そのうちの最小値を最終的な第1補正値とした後、ステップS226へ移行する。
【0089】
一方、電池セル群電流値Icが、電流値Isから電流センサ12の誤差Sを減算した値よりも小さくない場合、ステップS218の判定が否定判定となり、ステップS222へ移行する。ステップS222で補正値導出部88は、上述したように、電流値Isに電流センサ12の誤差を加算した値が、電池セル群電流値Icよりも小さいか否かを判定する。電流値Isに電流センサ12の誤差を加算した値が、電池セル群電流値Icよりも小さい場合、ステップS222の判定が肯定判定となり、ステップS224へ移行する。ステップS224で補正値導出部88は、上記(6)式により、電池ユニット30毎の第2補正値を導出する。そして、そのうちの最小値を最終的な第2補正値とした後、ステップS226へ移行する。
【0090】
ステップS226で補正値導出部88は、上記ステップS220で導出した第1補正値、または上記ステップS224で導出した第2補正値を、記憶部67に補正値68として記憶させる。なお、既に以前に行った電流センサ監視処理により導出された補正値が補正値68として記憶されている場合、その補正値に、今回の電流センサ監視処理において導出した補正値を加算した値を補正値68として記憶部67に記憶させる。ステップS226の処理が終了すると、図11に示した電流センサ監視処理が終了する。
【0091】
一方、電流値Isに電流センサ12の誤差を加算した値が、電池セル群電流値Icよりも小さくない場合、ステップS222の判定が否定判定となる。この場合、電流センサ12で検出した電流値Isが適正な値とみなせるため、補正等を行う必要がない。そのため、ステップS222で否定判定となった場合、図11に示した電流センサ監視処理が終了する。
【0092】
以上説明したように、上記実施形態の電池監視ユニット34によれば、電池監視ユニット34毎に電流センサを備えなくとも、電池セル群32を流れる電流の電流値である電池セル群電流値Icを導出することができる。
【0093】
これにより、電池システム1の主制御部10は、各電池監視ユニット34から取得した電池セル群電流値Icを用い、電流センサ12の故障の判定及び電流センサ12の検出値の補正値を導出することができる。
【0094】
従って、上記実施形態の電池監視ユニット34及び電池システム1によれば、電池システム1全体として、備える電流センサの数を削減することができる。
【0095】
なお、上記実施形態では電池セル群32が備える電池セル33毎に導出した電池セル33を流れる電流の電流値Icellを用いて電池セル群電流値Icを導出する形態について説明したが、電池セル群電流値Icを導出する方法は本形態に限定されない。例えば、2つ以上の電池セル33を選択部40によって、選択し、選択した2つ以上の電池セル33を流れる電流の電流値を用いて電池セル群電流値Icを導出する形態としてもよい。
【0096】
上記各実施形態において、例えば選択指示部70、モニタ部72、電池セル電流導出部74、電池セル群電流値導出部76、電池セル群挿入制御部80、検出値取得部82、電池セル群電流値取得部84、及び比較部86といった各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、上述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device :PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0097】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0098】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態が挙げられる。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態が挙げられる。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0099】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【0100】
また、上記各実施形態では、電流値導出プログラム56が電圧監視制御部44のROM54に予め記憶(インストール)されており、また、電流センサ監視プログラム65が主制御部10のROM64に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。電流値導出プログラム56及び電流センサ監視プログラム65の各々は、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、電流値導出プログラム56及び電流センサ監視プログラム65は、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0101】
その他、上記各実施形態で説明した電池システム1、接続状態切替装置20、及び電池ユニット30等の構成及び動作等は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることはいうまでもない。また、上記各実施形態を適宜組み合わせてもよいこともいうまでもない。
【符号の説明】
【0102】
1 電池システム
10 主制御部
12 電流センサ
14 電流源
20-1~20-n 接続状態切替装置
22 ドライバモジュール
24 電力切替モジュール
30、30-1~30-n 電池ユニット
32 電池セル群
33-1~33-m 電池セル
34 電池監視ユニット
40 選択部
42 電圧計測部
44 電圧監視制御部
46 通信部
55 内部抵抗値情報
50、60 CPU
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11