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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162545
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20241114BHJP
   F02M 35/024 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
E02F9/00 D
F02M35/024 501C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078140
(22)【出願日】2023-05-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 販売日:令和4年5月16日 販売した場所:信義 PETRA CO.,LTD(57,BUGOKGONGDAN 4-GIL,SONGAK-EUP,DANGJIN-SI,CHUNGCHEONGNAM-DO,31721 KOREA)
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】岸田 充弘
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015CA02
2D015CA03
(57)【要約】
【課題】排ガス規制への対応を図りつつ、組立性や保守性を向上させることができるエンジンパワーユニットの設置構造を備えた建設機械を提供する。
【解決手段】エンジンパワーユニット34に備えられた排ガス浄化装置40は、フロアフレーム27上の架台47に支持された支持状態で、油圧ポンプ装置37の上方に位置され、エンジンパワーユニット収容ハウス33は、フロアフレーム27に対して着脱可能に取り付けられたハウス本体55と、該ハウス本体の天板55aに対して着脱可能に取り付けられたカバー体56とを有し、ハウス本体55は、底部が開放され、天板55aには吊り動作によって支持状態の排ガス浄化装置40を上下方向に通すことが可能な開口部58が設けられ、カバー体56は、開口部58及びその上方に配置された排ガス浄化装置40の両方を覆うことが可能な大きさに形成されている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、該下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前部に設けられた作業装置とを備え、
前記上部旋回体は、機体フレームと、該機体フレーム上の幅方向一側部に設けられ、前記作業装置の駆動力を発生させるエンジンパワーユニットと、該エンジンパワーユニットを収容するハウスとを備えている建設機械において、
前記エンジンパワーユニットは、前記機体フレーム上に搭載されたエンジンと、該エンジンにおける冷却ファンの存在側とは反対側となる後部側に取り付けられた油圧ポンプ装置と、前記エンジンの吸気を浄化するエアクリーナと、前記エンジンの排気を浄化する排ガス浄化装置とを備え、
前記排ガス浄化装置は、前記機体フレーム上の架台に支持された支持状態で、前記油圧ポンプ装置の上方に位置され、
前記ハウスは、前記機体フレームに対して着脱可能に取り付けられたハウス本体と、該ハウス本体の天板に対して着脱可能に取り付けられたカバー体とを有し、
前記ハウス本体は、底部が開放され、前記天板には吊り動作によって前記支持状態の排ガス浄化装置を上下方向に通すことが可能な開口部が設けられ、
前記カバー体は、前記開口部及びその上方に配置された排ガス浄化装置の両方を覆うことが可能な大きさに形成されていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記開口部は、前記油圧ポンプ装置の上方領域から前記エンジンの上方領域にわたって延在する範囲を含むことを特徴とする請求項1記載の建設機械。
【請求項3】
前記カバー体は、前記エンジンの運転によって発生した熱気を遮断する遮熱板を設けることで内部にエアクリーナを設置して収容するエアクリーナ収容空間が画成されるとともに、該エアクリーナ収容空間に対して外気を導入する吸気口が設けられていることを特徴とする請求項2記載の建設機械。
【請求項4】
前記開口部は、周縁部が上方に折り返されて板端が上方に位置する折り返し形状を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関し、詳しくは、エンジンパワーユニットを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンを動力源とするエンジンパワーユニットを備えた杭打機やクレーン、油圧ショベルなどの建設機械は、エンジンの排気系に排ガス浄化装置が設置されており、高次の排ガス規制に対応できるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-188611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された建設機械は、エンジンを収容するハウスの天板上に排ガス浄化装置を設置しているので、エンジンと排ガス浄化装置とを接続する排気管を短くして排ガスの浄化能力を高めることができる利点がある。しかしながら、ハウスの天板上に排ガス浄化装置を設置すると建設機械の全高が増す要因になるため、輸送状態での寸法上の問題を引き起こしやすくなる。しかも、重量物である排ガス浄化装置は、ハウスと一体的に扱うには非常に不安定であることから、エンジンパワーユニットの組立作業ではハウスを被せた後でなければ取り付けが行えず、一方、エンジンなどの分解を伴う点検や保守ではハウスよりも先に取り外す必要があり、組立、分解のいずれの作業においても、作業工程の増加をもたらすという欠点がある。特に、ハウスを被せた状態で行われる排気管の接続分離作業は作業性が悪く、ハウスの天板上において排ガス浄化装置の位置の調整もその重量の大きさから行いにくいものとなっている。
【0005】
そこで本発明は、排ガス規制への対応を図りつつ、組立性や保守性を向上させることができるエンジンパワーユニットの設置構造を備えた建設機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の建設機械は、下部走行体と、該下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前部に設けられた作業装置とを備え、前記上部旋回体は、機体フレームと、該機体フレーム上の幅方向一側部に設けられ、前記作業装置の駆動力を発生させるエンジンパワーユニットと、該エンジンパワーユニットを収容するハウスとを備えている建設機械において、前記エンジンパワーユニットは、前記機体フレーム上に搭載されたエンジンと、該エンジンにおける冷却ファンの存在側とは反対側となる後部側に取り付けられた油圧ポンプ装置と、前記エンジンの吸気を浄化するエアクリーナと、前記エンジンの排気を浄化する排ガス浄化装置とを備え、前記排ガス浄化装置は、前記機体フレーム上の架台に支持された支持状態で、前記油圧ポンプ装置の上方に位置され、前記ハウスは、前記機体フレームに対して着脱可能に取り付けられたハウス本体と、該ハウス本体の天板に対して着脱可能に取り付けられたカバー体とを有し、前記ハウス本体は、底部が開放され、前記天板には吊り動作によって前記支持状態の排ガス浄化装置を上下方向に通すことが可能な開口部が設けられ、前記カバー体は、前記開口部及びその上方に配置された排ガス浄化装置の両方を覆うことが可能な大きさに形成されていることを特徴としている。
【0007】
また、前記開口部は、前記油圧ポンプ装置の上方領域から前記エンジンの上方領域にわたって延在する範囲を含むことを特徴としている。
【0008】
さらに、前記カバー体は、前記エンジンの運転によって発生した熱気を遮断する遮熱板を設けることで内部にエアクリーナを設置して収容するエアクリーナ収容空間が画成されるとともに、該エアクリーナ収容空間に対して外気を導入する吸気口が設けられていることを特徴としている。
【0009】
加えて、前記開口部は、周縁部が上方に折り返されて板端が上方に位置する折り返し形状を有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の建設機械によれば、架台で支持した排ガス浄化装置をエンジンよりも機体後方で、かつ、油圧ポンプ装置の上方に位置させるので、エンジンと排ガス浄化装置との間の短い排気管経路によって排ガス浄化機能を有利に働かせ、全高が増す問題に対してはハウスの天板の高さに依存せずに架台の設計変更のみで解決できることから、配置上の制約が多い排ガス規制対応をより柔軟に行えるようになる。
【0011】
しかも、ハウスを取り付ける前段階で排ガス浄化装置を架台に設置する構成としたので、ゆとりのある作業スペースをエンジンの周囲に確保した状態で、エンジンと排ガス浄化装置との間の排気管の接続作業を無理なく行うことができる。そして、クレーンで吊したハウス本体を上方から被せた後は、天板の開口部から現れた排ガス浄化装置をカバー体で覆うだけの簡単な吊り動作で組立作業を進めることができる。すなわち、排気系の組立容易化と相俟って、ハウスの一連の組立作業に関して排ガス浄化装置の設置やその位置の調整を伴わずに容易に行えることから、製造や保守において作業性のよいエンジンパワーユニットの設置構造を実現することができる。
【0012】
また、天板の開口部が油圧ポンプ装置の上方領域からエンジンの上方領域にわたって延在する範囲を含むので、エンジン整備のためにハウス本体を取り外す大掛かりな作業をなくし、大きく開いた開口部から覗くエンジンに対してその点検や保守のためのクレーン作業が行えることから、作業の安全や効率化のより一層の向上に資するものである。
【0013】
さらに、カバー体の内部に遮熱板を設けてエアクリーナ収容空間を画成しているので、エンジンとエアクリーナとの間の短い吸気管経路によって燃焼効率を高めながら、エンジンの運転がもたらす熱影響を少なくすることができる。その上、設置状態のエアクリーナをカバー体と一体的に扱えることから、カバー体を取り外す動作のみでエンジンの上方に所望の作業空間を作ることができる。一方、カバー体を取り付ける際には、これに従ってエアクリーナの位置が定まるので、吸気系の組立作業も効率的に行え、しかも、組立誤差はゴムホースなどからなる吸気管の接続作業(後工程)で吸収できることから作業条件も良好である。
【0014】
加えて、カバー体で覆われる開口部の周縁部において、板端が上方に位置する折り返し形状を有しているので、簡単な構成で雨水のハウス内への侵入を防止することができる。とりわけ、カバー体の取付状態で生じる天板との隙間は僅かであるから、雨水の侵入のおそれに対し、折り返し形状を極力小さく形成して対応できるといった利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一形態例を示す杭打機の側面図である。
図2】同じくベースマシンの側面図である。
図3】同じく平面図である。
図4】同じくエンジンパワーユニットの側面図である。
図5】同じく平面図である。
図6】同じく要部側面図である。
図7】同じく要部前面図である。
図8】同じく要部後面図である。
図9】同じく要部平面図である。
図10】同じくエンジンパワーユニット収容ハウスの側面図である。
図11図10のXI-XI断面図である。
図12図10のXII-XII断面図である
図13】同じく要部拡大断面側面図である。
図14】同じくハウス本体の天板に対してカバー体を取り付ける吊り動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1乃至図14は、本発明を建設機械の一つである杭打機に適用したもので、杭打機11は、図1に示すように、クローラ12aを備えた下部走行体12と、該下部走行体12の上部に旋回ベアリング13を介して旋回可能に設けられた上部旋回体14とからなるベースマシン(機体)と、上部旋回体14の前部に着脱可能に設けられたリーダブラケット15と、該リーダブラケット15の前端部に起伏可能に設けられたリーダ16と、リーダブラケット15の両側部に設けられた左右一対のフロントジャッキ17,17と、上部旋回体14の後部に設けられた左右一対のアウトリガジャッキ18,18と、リーダ16を上部旋回体14の後部から支持する左右一対のバックステー19,19と、上部旋回体14の後部上方に設けられた起伏可能なガントリ20とを備えている。また、上部旋回体14の後端部には安定用のカウンタウエイト21が搭載されている。
【0017】
リーダ16の前部側には、リーダ16の長手方向に平行に設けられた左右一対のガイドパイプ22,22と、各ガイドパイプ22,22の機体幅方向外面側をそれぞれ摺動可能に抱持するガイドギブ23を介してリーダ16の前面に沿って昇降可能に設けられた作業装置の一つであるオーガ24とを備えている。そして、リーダ16を鉛直方向に起立させた作業姿勢(図1)では、オーガ24で鋼管杭やスクリューロッド25などの施工部材を把持した状態で、これらを回転させながら地中に埋設することによって杭打ち施工が行われる。一方、リーダ16やバックステー19などの大型部品を分解した輸送姿勢(図示せず)では、ベースマシンの全高を抑えた状態で輸送車の荷台上に積載される。
【0018】
上部旋回体14は、図2及び図3に示すように、旋回ベアリング13が取り付けられるメインフレーム26と、該メインフレーム26の機体幅方向両側部に設けられたフロアフレーム27,28とからなる機体フレームを備えており、上述の各種大型部品は主にメインフレーム26に装着されている。また、右側のフロアフレーム28上の前部には、オーガ24や上部旋回体14、下部走行体12などを駆動させる操作がなされる運転室29が設置され、メインフレーム26上の中央部には、ウインチ搭載部30が設けられ、例えば、オーガ昇降用ウインチ装置など複数のウインチ装置が搭載されている。オーガ昇降用ウインチ装置からのロープは、リーダ16の頂部に設けられたトップシーブブロック31を介してオーガ24に連結され(図1)、ウインチ操作を行うことによってオーガ24を昇降させることができる。
【0019】
さらに、右側のフロアフレーム28上の後部には、油圧モータなどの油圧機器及びこれを収容するハウス32が設けられている。一方、左側のフロアフレーム27上には、ディーゼルエンジン(以下、エンジンという)の駆動を受けて圧油を供給するためのエンジンパワーユニット(油圧源装置)及びこれを収容するハウス(エンジンパワーユニット収容ハウス)33が設けられている。各ハウス32,33は、機体前後方向(図3の左右方向)に延びた略矩形箱状をなし、底部が開放され、クレーンの吊り動作(巻上・巻下)によってエンジンやこれに付属する複数の関連機器などを覆脱可能に覆設されている。そして、下部開口(開放部)の縁部を折曲げ形成したフランジでボルト締結されることにより、対応するフロアフレーム27,28に各ハウス32,33がそれぞれ取り付けられる。また、各ハウス32,33の外側面には複数の扉35が設けられている。なお、エンジンパワーユニット収容ハウス33は、詳細は後述するが、ハウス本体55の上部にカバー体56,57が設けられた2段式になっている。
【0020】
エンジンパワーユニット34は、図4及び図5に示すように、主に、フロアフレーム27上に防振状態で搭載されたエンジン36と、該エンジン36における冷却ファン36aの存在側とは反対側となる後部側に取り付けられた油圧ポンプ装置(多連ポンプ)37と、作動油を貯留した作動油タンク38と、エンジン36の吸気を浄化するエアクリーナ39と、エンジン36の排気を浄化する排ガス浄化装置40とを備えている。
【0021】
また、フロアフレーム27上のエンジン36の前部側には、つまり冷却ファン36aによる冷却風の流れ方向の上流側には、冷却ファン36aと対面して配置された熱交換装置の一つとしてラジエータ41が設けられている。さらに、エンジンパワーユニット収容ハウス33の前部側であってラジエータ41よりも上流側には熱交換装置上流室33aが設けられ、内部には接続管でエンジン36に接続された燃料タンク42と、エンジン36の排気経路に供給するNOx還元用の液体還元剤として尿素水を貯留した還元剤タンク(尿素水タンク)43とが互いに前後方向に横並びの関係で位置され、それぞれフロアフレーム27に設けられている。なお、実施形態における作動油タンク38は、左側のフロアフレーム27上の最後部に設けられているが、杭打機11の仕様に応じて反対側(右側)のフロアフレーム28上に設けられてもよい。
【0022】
エンジン36の側方部から上方に延びる吸気管(ゴムホース)44には、ハウス33内に設置したエアクリーナ39が接続されており、該エアクリーナ39で吸い込んだ新気(外部空気)をエンジン36の各気筒に対して供給可能になっている。一方、エンジン36の後端側部から上向きのベローズ管45を介して上方に延びる排気管46には、やぐら状の架台47で支持した排ガス浄化装置40が接続されている。エアクリーナ39と排ガス浄化装置40とは、図4から見てとれるように、配置上、一体となってエンジンパワーユニット34の全高を規定するものであるが、前後方向の関係は、エアクリーナ39がエンジン36の上方に設置され、排ガス浄化装置40が油圧ポンプ装置37の上方に設置されている。
【0023】
エアクリーナ39は、交換可能なエレメント(エアフィルタ)によって吸気を濾過する装置であり、概ね円柱形状の外形を有し、図13にも示すように、吸込口39aを上にして機体幅方向に沿う横向きに設置した状態で、下端部に設けられた継手39bを介して吸気管44が接続されている。エレメントの交換作業は、円板状の蓋体39cを取り外して行われる。
【0024】
排ガス浄化装置40は、尿素水を還元剤とするSCR(Selective Catalytic Reduction:選択還元型触媒)、DPF(図示せず)や、SCRに対して上流側に配置されて排ガスに尿素水を噴射する噴射ノズルなどを有している。これにより、燃焼後の排ガスは、排ガス浄化装置40で浄化処理がなされた後、排気管48に案内されて排気出口48aから外部に排出される(図6なども参照)。具体的には、尿素水が噴射されると、高温雰囲気下の尿素水の分解反応でアンモニアが生成され、該アンモニアによって排ガス中のNOxが還元されて水と窒素に分解(無害化)されるようになっている。
【0025】
架台47は、図6乃至図9に示すように、パイプ材や断面形状がL形状、ハット形状の鋼材を主要な構成部品に用いることで剛性が高められ、基本的には、エンジン36後方のフロアフレーム27上に設置した前後一対の門型フレーム49,50と、該門型フレーム49,50間の前後方向に平行に渡された2本の縦梁(例えばハット鋼)51,51とを組み合わせてやぐら状に形成したもので、門型フレーム49,50の各脚柱(例えば丸パイプ)49a,50aの下端がフロアフレーム27にボルト締結されることにより、油圧ポンプ装置37を跨ぐように枠組みされる。
【0026】
前後一対の門型フレーム49,50は、油圧ポンプ装置37の配管などを考慮して、前側門型フレーム49の脚柱49a,49a間寸法よりも後側門型フレーム50の脚柱50a,50a間寸法の方が小さく幅狭に設定されている(図7及び図8)。また、門型フレーム49,50の上面を構成する横梁49b,50bは、対応する脚柱49a,50a間において平面視で略ハ字状(図9では逆ハ字状)に渡され、板面裏側(下面側)には排ガス浄化装置40の支持強度を高めるために必要な補強が施されている。なお、本実施形態例では、後側門型フレーム50の横梁50bは、脚柱50a,50a間寸法より長く、縦梁51,51が載置可能な位置まで延設され、延設された板面の先端から脚柱に向けて高さが増していく略三角形の補強板が延設された板面裏側に垂設されている(図8)。
【0027】
このように構成された架台47は、油圧ポンプ装置37や作動油タンク38などの油圧系部品の搭載作業を終えた状態で、フロアフレーム27に対して組み付けられる。ここで、排ガス浄化装置40の架台47上への設置は、2本の縦梁51,51と直角をなして取り付けられる前後一対のブラケット(例えばアングル鋼)52,53が介在される。ブラケット52,53は、あらかじめ排ガス浄化装置40の基部40aにボルト締結され、クレーンの吊り動作(巻下)によって排ガス浄化装置40を架台47に近づけていくと、ブラケット52,53の下面が縦梁51,51の上面にそれぞれ当接される。
【0028】
ブラケット52,53と縦梁51,51とは、長手方向に延びる長孔としたボルト孔を互いに重ね合わせた状態で、ボルト・ナットにて仮止めが行われる。これにより、長孔分の移動量を得て、排ガス浄化装置40の位置を必要な分だけ前後左右方向に調整することができる。また、門型フレーム49,50の横梁49b,50bに対して縦梁51,51を相対的に移動させる長孔対応もとられており、全体として、排ガス浄化装置40の前後方向の調整量を増やすことができる。
【0029】
このようにして設置された排ガス浄化装置40は、架台47に支持された支持状態で、エンジン36よりも機体後方で、かつ、油圧ポンプ装置37の上方に位置される。そして、所定の手順で排気管46,48を接続し、排気系の一連の配管作業が完了すると、排気管経路の中間部分がU字状ボルト54を備えた固定手段によって架台47に固定される。
【0030】
以下では、エンジンパワーユニット34を収容するハウス33の詳細な構造について、図10乃至図14を参照しながら説明する。エンジンパワーユニット収容ハウス33は、図10乃至図12に示すように、フロアフレーム27に対して着脱可能に取り付けられたハウス本体55と、該ハウス本体55の天板55aに対して着脱可能に取り付けられたカバー体56,57とを有して構成されている(図2なども参照)。
【0031】
ハウス本体55は、矩形箱状の底部が開放され、図示は省略するが、扉35のある外側面を除いた各面に通気用の孔(例えば複数の小孔を備えたパンチングメタル構造)や、開閉可能な点検口などが設けられている。また、図11などに示すように、天板55aにはクレーンの吊り動作(巻上・巻下)によって架台47上(支持状態)の排ガス浄化装置40を上下方向に通すことが可能な開口部58が設けられている。
【0032】
開口部58は、天板55aの長手方向(前後方向)に延びる矩形状を有し、ハウス本体55の取付状態で、油圧ポンプ装置37の位置を基準にその上方領域からエンジン36の上方領域にわたって延在する前方側の範囲を含んでいる。なお、杭打機11の仕様にもよるが、実施形態における開口部58は、作動油タンク38の上方領域も含めて広げられ、この後方側の範囲に対応して、カバー体56の後部に連続する別体のカバー体(後部カバー)57が設けられている(図4なども参照)。
【0033】
また、開口部58は、周縁部(4辺)が上方に直角に折り返されることで、板端が天板55aよりも上方に位置する折り返し形状58aを有している。折り返し形状58aは、図12などに示すように、ハウス本体55に占める部分としてはごく僅かなものであり、例えば、天板55aから板端までの高さ寸法が30mm程度である。
【0034】
カバー体56は、矩形箱状の底部が開放され、ハウス本体55の開口部58及びその上方に配置された排ガス浄化装置40の両方を覆うことが可能な大きさに形成されている。カバー体56の外側面は、図10に示すように、排気出口48aに対応した中央位置に開口56aが設けられ(図7)、前部側には、後述するエアクリーナ収容空間を開閉するための扉59が設けられている。すなわち、カバー体56は、排ガス浄化装置40及びその排気管46,48、エアクリーナ39を一体で収容するのに丁度よい大きさの空間を有している(図4)。
【0035】
また、カバー体56は、図13に示すように、エンジン36の運転によって発生した熱気を遮断するL形状の遮熱板56bを設けることで、内部にエアクリーナ39を設置して収容する、エンジンパワーユニット34を収容する空間から独立した直方体のエアクリーナ収容空間Sが画成され、前面にはエアクリーナ収容空間Sに対して外気(矢印にて図示)を導入する吸気口56cが設けられている。遮熱板56bは、カバー体56と同じ金属製のもので、エアクリーナ収容空間Sの底面を規定する内面にエアクリーナ39を設置するための取付座56dが設けられている。
【0036】
このように構成された杭打機11では、製造現場においてエンジンパワーユニット34を搭載する際、フロアフレーム27上に、エンジン36などの大物部品から順に各種部品が搭載され、その後、エンジン36の後部側の出力軸に油圧ポンプ装置37が連結されるとともに、燃料タンク42や作動油タンク38などの配管接続が行われる。
【0037】
ここで、架台47の組立作業は、作業指示に基づいて種々の態様で行われるが、例えば、門型フレーム49,50及び縦梁51は、仮組み状態(サブアセンブリ状態)でフロアフレーム27上の定位置に吊り込まれる。このようにして構成部品を一体的に組み上げることにより、油圧ポンプ装置37を跨ぐやぐら状の架台47が完成する。そして、架台47上に排ガス浄化装置40を設置し、ブラケット52,53を介して排ガス浄化装置40の位置を前後左右に調整しながら排気管46,48の接続作業を終えると、排ガス浄化装置40が架台47上に安定的に支持され、エンジンパワーユニット収容ハウス33の取り付けが可能な状態となる。
【0038】
次いで、ハウス本体55及びカバー体56,57が用意され、そのうちのカバー体56にはエアクリーナ39が設置される。一方、ハウス本体55には吊り治具がセットされ、クレーンで吊したハウス本体55を上方から被せていく。ここで、クレーンの巻下げ動作によって、燃料タンク42やエンジン36、油圧ポンプ装置37などの各種部品がハウス本体55の下部開口(開放部)を通じて一体で収容され、これに伴い、天板55aの開口部58を排ガス浄化装置40が通過し、その結果、排ガス浄化装置40が開口部58の上方に配置される。このとき、架台47の上面(縦梁51の上面)とハウス本体55の天板55aとは、互いに高さ方向に整合した状態(高さ方向の位置がほぼ同一となった状態)となる(図6)。
【0039】
フロアフレーム27上にハウス本体55を取り付けた後は、カバー体56に吊り治具がセットされ、図14に示すように、クレーンで吊したカバー体56を上方から被せていく。ここで、クレーンの巻下げ動作によって、排ガス浄化装置40がカバー体56の下部開口(開放部)を通じて排気管46,48と一体で収容され、これに伴い、エアクリーナ39がエンジン36の上方に配置される。このとき、カバー体56は、開口部58の折り返し形状58aを覆う形でハウス本体55の天板55a上に取り付けられる(図12)。そして、カバー体56の内部(エアクリーナ収容空間S)に設置されたエアクリーナ39に対して、継手39bを介して吸気管44が接続される。最後に、残りのカバー体(後部カバー)57が吊り込まれて開口部58の後部側が覆われ、エンジンパワーユニット34の搭載が完了した状態となる(図4)。
【0040】
その後、複数の工程を経て、上部旋回体14には各種大型部品が装着されて機体の組み立てが行われる。そして、完成した杭打機11は、エンジン36を駆動することでエンジンパワーユニット34から必要となる動力が、例えば、オーガ昇降用ウインチ装置を作動させる圧油が得られ、オーガ24の昇降を含む各種動作によって杭打ち機能を発揮できる状態となる(図1)。
【0041】
このように、本発明の建設機械によれば、架台47で支持した排ガス浄化装置40をエンジン36よりも機体後方で、かつ、油圧ポンプ装置37の上方に位置させるので、エンジン36と排ガス浄化装置40との間の短い排気管経路によって排ガス浄化機能を有利に働かせ、全高が増す問題に対してはハウス本体55の天板55aの高さに依存せずに架台47の設計変更(脚柱49a,50aの短縮化)のみで解決できることから、配置上の制約が多い排ガス規制対応をより柔軟に行えるようになる。
【0042】
しかも、ハウス本体55を取り付ける前段階で排ガス浄化装置40を架台47に設置する構成としたので、ゆとりのある作業スペースをエンジン36の周囲に確保した状態で、エンジン36と排ガス浄化装置40との間の排気管46の接続作業を無理なく行うことができる。そして、クレーンで吊したハウス本体55を上方から被せた後は、天板55aの開口部58から現れた排ガス浄化装置40をカバー体56で覆うだけの簡単な吊り動作で組立作業を進めることができる。すなわち、排気系の組立容易化と相俟って、エンジンパワーユニット収容ハウス33の一連の組立作業に関して排ガス浄化装置40の設置やその位置の調整を伴わずに容易に行えることから、製造や保守において作業性のよいエンジンパワーユニット34の設置構造を実現することができる。
【0043】
また、天板55aの開口部58が油圧ポンプ装置37の上方領域からエンジン36の上方領域にわたって延在する範囲を含むので、エンジン整備のためにハウス本体55を取り外す大掛かりな作業をなくし、大きく開いた開口部58から覗くエンジン36に対してその点検や保守のためのクレーン作業が行えることから、作業の安全や効率化のより一層の向上に資するものである。
【0044】
さらに、カバー体56の内部に遮熱板56bを設けてエアクリーナ収容空間Sを画成しているので、エンジン36とエアクリーナ39との間の短い吸気管経路によって燃焼効率を高めながら、エンジン36の運転がもたらす熱影響を少なくすることができる。その上、設置状態のエアクリーナ39をカバー体56と一体的に扱えることから、カバー体56を取り外す動作のみでエンジン36の上方に所望の作業空間を作ることができる。一方、カバー体56を取り付ける際には、これに従ってエアクリーナ39の位置が定まるので、吸気系の組立作業も効率的に行え、しかも、組立誤差はゴムホースなどからなる吸気管44の接続作業(後工程)で吸収できることから作業条件も良好である。
【0045】
なお、本発明は、前記形態例に限定されるものではなく、エンジンパワーユニットを構成する各種装置や構造体、ハウスに代表される収容体の形状、配置などは、建設機械の仕様に応じて適宜変更することができる。また、建設機械として杭打機を例示したが、これに限られず、アースドリルやクレーンなど、掘削装置や荷役装置の動力源としてエンジンパワーユニットを備えた各種建設機械に適用することができる。この場合、架台上に設置された排ガス浄化装置によって、エンジンパワーユニットの製造・保守における作業性が大きく向上し、モデルチェンジや新型開発を円滑に進めることが可能となる。
【0046】
とりわけ、杭の埋設や地盤改良などを行う杭打機は、施工位置にジャッキを接地して長時間その場に止まることから、ハウス内に設けられた遮熱板と開口部との相互作用によって、排ガス規制対応における温度管理の面だけでなく、油圧系の温度管理の面においても有効なものとなる。
【符号の説明】
【0047】
11…杭打機、12…下部走行体、12a…クローラ、13…旋回ベアリング、14…上部旋回体、15…リーダブラケット、16…リーダ、17…フロントジャッキ、18…アウトリガジャッキ、19…バックステー、20…ガントリ、21…カウンタウエイト、22…ガイドパイプ、23…ガイドギブ、24…オーガ、25…スクリューロッド、26…メインフレーム、27,28…フロアフレーム、29…運転室、30…ウインチ搭載部、31…トップシーブブロック、32…ハウス、33…エンジンパワーユニット収容ハウス、33a…熱交換装置上流室、34…エンジンパワーユニット、35…扉、36…エンジン、36a…冷却ファン、37…油圧ポンプ装置、38…作動油タンク、39…エアクリーナ、39a…吸込口、39b…継手、39c…蓋体、40…排ガス浄化装置、40a…基部、41…ラジエータ、42…燃料タンク、43…還元剤タンク、44…吸気管、45…ベローズ管、46…排気管、47…架台、48…排気管、48a…排気出口、49…前側門型フレーム、49a…脚柱、49b…横梁、50…後側門型フレーム、50a…脚柱、50b…横梁、51…縦梁、52,53…ブラケット、54…U字状ボルト、55…ハウス本体、55a…天板、56…カバー体、56a…開口、56b…遮熱板、56c…吸気口、56d…取付座、57…カバー体(後部カバー)、58…開口部、58a…折り返し形状、59…扉
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