(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162548
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】オレフィン系樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 4/64 20060101AFI20241114BHJP
C08F 4/6592 20060101ALI20241114BHJP
C08F 210/16 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C08F4/64
C08F4/6592
C08F210/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078149
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 達也
【テーマコード(参考)】
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J100AA02Q
4J100AA03P
4J100CA04
4J100DA03
4J100DA24
4J128AA02
4J128AC26
4J128AC28
4J128AD05
4J128AD11
4J128AD13
4J128AE03
4J128AE05
4J128BA00A
4J128BA02B
4J128BB00A
4J128BB01B
4J128BC12B
4J128BC15B
4J128EA01
4J128EB02
4J128EB04
4J128EC02
4J128EF02
4J128FA02
4J128GA01
4J128GA19
(57)【要約】
【課題】本発明は、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂とを相溶化あるいは相容化し、耐衝撃性に優れた樹脂組成物を製造するのに有用な、グラフト型オレフィン系重合体を含むオレフィン系樹脂を、単一の反応器で一つの重合工程により製造し得る、オレフィン系樹脂の製造方法を提供することを課題としている。
【解決手段】特定式で表される遷移金属化合物[A]およびジメチルシリルビスインデニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物[B]を含む重合触媒の存在下、単一の反応器で、エチレンとプロピレンとを共重合させ、主鎖および側鎖から構成されるグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含む特定のオレフィン系樹脂(β)を製造する、オレフィン系樹脂の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化合物[A]および[B]を含む重合触媒の存在下、単一の反応器で、エチレンとプロピレンとを共重合させ、以下の要件(I)~(VI)を満たすオレフィン系樹脂(β)を製造する、オレフィン系樹脂の製造方法。
(I)主鎖および側鎖から構成されるグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含む。
(II)プロピレンから導かれる構造単位の割合が10~93質量%の範囲にあり、エチレンから導かれる構造単位の割合が7~90質量%(ただしプロピレンから導かれる構造単位と、エチレンから導かれる構造単位との合計を100質量%とする)の範囲にある。
(III)前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖がプロピレンとエチレンとの共重合体から構成され、主鎖中のプロピレンに由来する構造単位の含有量が76~99モル%、エチレンに由来する構造単位の含有量が1~24モル%の範囲にある。
(IV)前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖がエチレンとプロピレンとの共重合体から構成され、側鎖中のエチレンに由来する構造単位の含有量が80~99モル%、プロピレンに由来する構造単位の含有量が1~20モル%範囲にある。
(V)示差走査熱量分析(DSC)によって測定された融点(Tm)が40~160℃の範囲にある。
(VI)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)よりスチレン換算値として求められる重量平均分子量が、50,000~600,000の範囲にある。
[A]:下記一般式[A-1]または[A-2]で表される遷移金属化合物。
[B]:ジメチルシリルビスインデニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物。
【化1】
(一般式[A-1]中、Mは周期表第4族または第5族の遷移金属原子を示す。
mは1~4の整数を示す。
R
1~R
5は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。
R
6~R
8は炭化水素基であって、そのうち少なくとも一つは芳香族炭化水素基であり、また、mが2以上の整数の場合には、式[A-1]の構造単位相互間においてR
2~R
8で示される基のうち2個の基が連結されていてもよい。
nは、Mの価数を満たす数であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の整数である場合には、複数のXは互いに同一であっても、異なっていてもよく、また、Xで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。)
【化2】
(一般式[A-2]中、Mは、周期表第4族遷移金属原子であり、
nは、遷移金属化合物[A-2]が電気的に中性となるように選択される1~4の整数であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子であり、前記アニオン配位子は、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基または共役ジエン系誘導体基であり、nが2以上の場合は、複数存在するXで示される基は互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよく、
Qは、周期表第14族原子であり、
R
1、R
2、R
5、R
6、R
7、R
8、R
10、R
11、R
13およびR
14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~40の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基または硫黄含有基であり、
R
3およびR
4は、それぞれ独立に、炭素原子数1~40の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基もしくは硫黄含有基であり、
R
9およびR
12は、水素原子、炭素原子数1~40の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基または硫黄含有基であり(ただし、R
9は下記一般式[A-2-1]で表される置換基ではない。
【化3】
一般式[A-2-1]中、R
9a、R
9b、R
9c、R
9dおよびR
9eは、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基または硫黄含有基であり、
*は、インデニル環への結合を表す。)、
R
1~R
6のうちの隣接した置換基同士は、互いに結合して、置換基を有していてもよい環を形成してもよく、
R
7~R
12のうちの隣接した置換基同士は、互いに結合して、置換基を有していてもよい環を形成してもよく、
R
13およびR
14は、互いに結合してQを含む環を形成してもよく、この環は置換基を有していてもよい。)
【請求項2】
前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖を構成する前記共重合体の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)よりスチレン換算値として求められる重量平均分子量が、50,000~1,000,000の範囲にある、請求項1に記載のオレフィン系樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖を構成する前記共重合体の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)よりスチレン換算値として求められる重量平均分子量が、5,000~200,000の範囲にある、請求項1に記載のオレフィン系樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]の、側鎖1本あたりの、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)よりスチレン換算値として求められる重量平均分子量と、主鎖1本あたりの側鎖本数との積である、側鎖の合計重量平均分子量が、15,000~300,000の範囲にある、請求項1に記載のオレフィン系樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系樹脂の製造方法に関する。詳しくは、本発明は、グラフト型オレフィン系重合体を含むオレフィン系樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製品は様々な分野で用いられており、中でもポリオレフィン系樹脂材料からなる製品は各種容器等として広く用いられ、その生産量も多い。近年プラスチック製品のリサイクルが進められているが、ポリオレフィン系樹脂からなる使用済み製品や廃棄プラスチック類についても、さらなるリサイクルが求められている。
【0003】
ポリオレフィン系樹脂材料としては、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂とが多く用いられているが、両者は非相溶であるため、これらを混合して再生利用しようとしても、均一に分散せず物性が低下し、用途が限られるという問題がある。このため、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂とを相溶化あるいは相容化させる方法の開発が望まれていた。
【0004】
本発明者は鋭意研究の結果、プロピレンに由来する構造単位を多く含む主鎖と、エチレンに由来する構造単位を多く含む側鎖とを有するグラフト型オレフィン系重合体を含むオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂とを相溶化あるいは相容化に有用であることを見出した。
しかしながら、一般にグラフト型ポリマーは、多段重合により製造されるため、重合システムが複雑となり、生産コストが高いという問題を有する。またグラフト型ポリマーをリビング重合により製造する方法や極性基を用いて製造する方法も提案されてはいるが(特許文献1、2参照)、いずれも生産コストが高いという問題がある。
グラフト型ポリマーを単一工程で製造する方法としては、特定触媒を用いた方法が提案されてはいるが(特許文献3、4参照)、主鎖と側鎖とでポリマーの組成が大きく異なるグラフト型ポリマーを目的として選択的に製造するのは極めて困難であり、これらの技術では相容化剤として有用なグラフト型オレフィン系重合体を製造することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-204058号公報
【特許文献2】特開2009-102598号公報
【特許文献3】WO2015/147186号
【特許文献4】特開2019-199550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂とを相溶化あるいは相容化し、耐衝撃性に優れた樹脂組成物を製造するのに有用な、グラフト型オレフィン系重合体を含むオレフィン系樹脂を、単一の反応器で一つの重合工程により製造し得る、オレフィン系樹脂の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記のような状況に鑑みて鋭意研究した結果、特定の2種の遷移金属化合物を組み合わせて用いることにより、プロピレンに由来する構造単位を多く含む主鎖と、エチレンに由来する構造単位を多く含む側鎖とを有するグラフト型オレフィン系重合体を含み、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂との相容化剤として好適なオレフィン系樹脂を、単一の反応器で一つの重合工程により製造し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の一態様は、たとえば以下の〔1〕~〔4〕の事項に関する。
〔1〕
下記化合物[A]および[B]を含む重合触媒の存在下、単一の反応器で、エチレンとプロピレンとを共重合させ、以下の要件(I)~(VI)を満たすオレフィン系樹脂(β)を製造する、オレフィン系樹脂の製造方法。
(I)主鎖および側鎖から構成されるグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含む。
(II)プロピレンから導かれる構造単位の割合が10~93質量%の範囲にあり、エチレンから導かれる構造単位の割合が7~90質量%(ただしプロピレンから導かれる構造単位と、エチレンから導かれる構造単位との合計を100質量%とする)の範囲にある。
(III)前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖がプロピレンとエチレンとの共重合体から構成され、主鎖中のプロピレンに由来する構造単位の含有量が76~99モル%、エチレンに由来する構造単位の含有量が1~24モル%の範囲にある。
(IV)前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖がエチレンとプロピレンとの共重合体から構成され、側鎖中のエチレンに由来する構造単位の含有量が80~99モル%、プロピレンに由来する構造単位の含有量が1~20モル%範囲にある。
(V)示差走査熱量分析(DSC)によって測定された融点(Tm)が40~160℃の範囲にある。
(VI)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)よりスチレン換算値として求められる重量平均分子量が、50,000~600,000の範囲にある。
[A]:下記一般式[A-1]または[A-2]で表される遷移金属化合物。
[B]:ジメチルシリルビスインデニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物。
【0009】
【0010】
(一般式[A-1]中、Mは周期表第4族または第5族の遷移金属原子を示す。
mは1~4の整数を示す。
R1~R5は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。
R6~R8は炭化水素基であって、そのうち少なくとも一つは芳香族炭化水素基であり、また、mが2以上の整数の場合には、式[A-1]の構造単位相互間においてR2~R8で示される基のうち2個の基が連結されていてもよい。
nは、Mの価数を満たす数であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の整数である場合には、複数のXは互いに同一であっても、異なっていてもよく、また、Xで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。)
【0011】
【0012】
(一般式[A-2]中、Mは、周期表第4族遷移金属原子であり、
nは、遷移金属化合物[A-2]が電気的に中性となるように選択される1~4の整数であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子であり、前記アニオン配位子は、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基または共役ジエン系誘導体基であり、nが2以上の場合は、複数存在するXで示される基は互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよく、
Qは、周期表第14族原子であり、
R1、R2、R5、R6、R7、R8、R10、R11、R13およびR14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~40の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基または硫黄含有基であり、
R3およびR4は、それぞれ独立に、炭素原子数1~40の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基もしくは硫黄含有基であり、
R9およびR12は、水素原子、炭素原子数1~40の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基または硫黄含有基であり(ただし、R9は下記一般式[A-2-1]で表される置換基ではない。
【0013】
【0014】
一般式[A-2-1]中、R9a、R9b、R9c、R9dおよびR9eは、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基または硫黄含有基であり、
*は、インデニル環への結合を表す。)、
R1~R6のうちの隣接した置換基同士は、互いに結合して、置換基を有していてもよい環を形成してもよく、
R7~R12のうちの隣接した置換基同士は、互いに結合して、置換基を有していてもよい環を形成してもよく、
R13およびR14は、互いに結合してQを含む環を形成してもよく、この環は置換基を有していてもよい。)
【0015】
〔2〕
前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖を構成する前記共重合体の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)よりスチレン換算値として求められる重量平均分子量が、50,000~1,000,000の範囲にある、〔1〕に記載のオレフィン系樹脂の製造方法。
【0016】
〔3〕
前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖を構成する前記共重合体の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)よりスチレン換算値として求められる重量平均分子量が、5,000~200,000の範囲にある、〔1〕または〔2〕に記載のオレフィン系樹脂の製造方法。
【0017】
〔4〕
前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]の、側鎖1本あたりの、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)よりスチレン換算値として求められる重量平均分子量と、主鎖1本あたりの側鎖本数との積である、側鎖の合計重量平均分子量が、15,000~300,000の範囲にある、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のオレフィン系樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂とを相溶化あるいは相容化し、耐衝撃性に優れた樹脂組成物を製造するのに有用な、グラフト型オレフィン系重合体を含むオレフィン系樹脂を、単一の反応器で一つの重合工程により効率的かつ経済的に製造できる、オレフィン系樹脂の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明のオレフィン系樹脂の製造方法では、後述する特定の化合物[A]および[B]を含む重合触媒の存在下で、単一の反応器で、後述する特定のオレフィン系樹脂(β)を製造する。
【0020】
<重合触媒>
本発明のオレフィン系樹脂の製造方法で用いる重合触媒は、化合物[A]および化合物[B]を含む。
【0021】
化合物[A]
化合物[A]は、一般式[A-1]または[A-2]で表される遷移金属化合物である。以下、一般式[A-1]で表される遷移金属化合物を化合物[A-1]、一般式[A―2]で表される化合物を化合物[A-2]ともいう。
【0022】
・化合物[A-1]
化合物[A-1]は下記一般式[A-1]で表される化合物である。
【0023】
【0024】
一般式[A-1]中、N……Mは、一般的には配位していることを示すが、本発明においては配位していてもしていなくてもよい。
一般式[A-1]中、Mは周期表第4族または第5族の遷移金属原子を示す。具体的には、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタルなどの遷移金属原子であり、好ましくはチタン、ジルコニウム、ハフニウムなどの周期表第4族の遷移金属原子であり、より好ましくはジルコニウムである。
【0025】
mは1~4の整数を示す。mは好ましくは1または2であり、特に好ましくは2である。
【0026】
R1~R5は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。また、mが2以上の場合にはR1~R5で示される基のうち2個の基が連結されていてもよく、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0027】
炭化水素基として具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基などの炭素原子数が1~30、好ましくは1~20の直鎖状または分岐状のアルキル基;ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などの炭素原子数が2~30、好ましくは2~20の直鎖状または分岐状のアルケニル基;エチニル基、プロパルギル基など炭素原子数が2~30、好ましくは2~20の直鎖状または分岐状のアルキニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などの炭素原子数が3~30、好ましくは3~20の環状飽和炭化水素基;シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基などの炭素原子数5~30の環状不飽和炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素原子数が6~30、好ましくは6~20のアリール基;トリル基、イソプロピルフェニル基、tert-ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジ-tert-ブチルフェニル基などのアルキル置換アリール基などが挙げられる。
【0028】
上記炭化水素基は、水素原子がハロゲンで置換されていてもよく、たとえば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、クロロフェニル基などの炭素原子数1~30、好ましくは1~20のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。また、上記炭化水素基は、他の炭化水素基で置換されていてもよく、たとえば、ベンジル基、クミル基などのアリール基置換アルキル基などが挙げられる。
【0029】
さらにまた、上記炭化水素基は、ヘテロ環式化合物残基;アルコキシ基、アリーロキシ基、エステル基、エーテル基、アシル基、カルボキシル基、カルボナート基、ヒドロキシ基、ペルオキシ基、カルボン酸無水物基などの酸素含有基;アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアン酸エステル基、アミジノ基、ジアゾ基、アミノ基がアンモニウム塩となったものなどの窒素含有基;ボランジイル基、ボラントリイル基、ジボラニル基などのホウ素含有基;メルカプト基、チオエステル基、ジチオエステル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオアシル基、チオエーテル基、チオシアン酸エステル基、イソチアン酸エステル基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、チオカルボキシル基、ジチオカルボキシル基、スルホ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフェニル基などのイオウ含有基;ホスフィド基、ホスホリル基、チオホスホリル基、ホスファト基などのリン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を有していてもよい。
【0030】
これらのうち、特に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基などの炭素原子数1~30、好ましくは1~20の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素原子数6~30、好ましくは6~20のアリール基;これらのアリール基にハロゲン原子、炭素原子数1~30、好ましくは1~20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素原子数6~30、好ましくは6~20のアリール基またはアリーロキシ基などの置換基が1~5個置換した置換アリール基などが好ましい。
【0031】
酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基としては、上記例示したものと同様のものが挙げられる。ヘテロ環式化合物残基としては、ピロール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、トリアジンなどの含窒素化合物、フラン、ピランなどの含酸素化合物、チオフェンなどの含硫黄化合物などの残基、およびこれらのヘテロ環式化合物残基に炭素原子数が1~30、好ましくは1~20のアルキル基、アルコキシ基などの置換基がさらに置換した基などが挙げられる。
【0032】
ケイ素含有基としては、シリル基、シロキシ基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基など、具体的には、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチル-tert-ブチルシリル基、ジメチル(ペンタフルオロフェニル)シリル基などが挙げられる。これらの中では、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリフェニルシリル基などが好ましい。特にトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基が好ましい。炭化水素置換シロキシ基として具体的には、トリメチルシロキシ基などが挙げられる。
ゲルマニウム含有基およびスズ含有基としては、前記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムおよびスズに置換したものが挙げられる。
【0033】
次に上記で説明したR1~R5の例について、より具体的に説明する。アルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基などが挙げられる。
【0034】
アルキルチオ基として具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基等が挙げられる。アリーロキシ基として具体的には、フェノキシ基、2,6-ジメチルフェノキシ基、2,4,6-トリメチルフェノキシ基などが挙げられる。アリールチオ基として具体的には、フェニルチオ基、メチルフェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
【0035】
アシル基として具体的には、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、p-クロロベンゾイル基、p-メトキシベンゾイル基などが挙げられる。エステル基として具体的には、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、メトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、p-クロロフェノキシカルボニル基などが挙げられる。
【0036】
チオエステル基として具体的には、アセチルチオ基、ベンゾイルチオ基、メチルチオカルボニル基、フェニルチオカルボニル基などが挙げられる。アミド基として具体的には、アセトアミド基、N-メチルアセトアミド基、N-メチルベンズアミド基などが挙げられる。イミド基として具体的には、アセトイミド基、ベンズイミド基などが挙げられる。アミノ基として具体的には、ジメチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などが挙げられる。
【0037】
イミノ基として具体的には、メチルイミノ基、エチルイミノ基、プロピルイミノ基、ブチルイミノ基、フェニルイミノ基などが挙げられる。スルホンエステル基として具体的には、スルホン酸メチル基、スルホン酸エチル基、スルホン酸フェニル基などが挙げられる。スルホンアミド基として具体的には、フェニルスルホンアミド基、N-メチルスルホンアミド基、N-メチル-p-トルエンスルホンアミド基などが挙げられる。
【0038】
R1~R5は、これらのうちの2個以上の基、好ましくは互いに隣接する2個以上の基が互いに連結して脂肪環、芳香環または、窒素原子などの異原子を含む炭化水素環を形成していてもよく、これらの環はさらに置換基を有していてもよい。
上記一般式(I)のR1~R5のうち、R1については、炭素原子数1~20の炭化水素基であることが好ましく、具体的には、炭素原子数1~20の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基、炭素原子数3~20の脂環族炭化水素基、または炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基から選ばれる基であることが、適切な分子量範囲のオレフィン系樹脂(β)を合成することができるため好ましい。
【0039】
R6~R8は炭化水素基であって、そのうち少なくとも一つは芳香族炭化水素基であり、また、mが2以上の整数の場合には、式[A-1]の構造単位相互間においてR1~R8で示される基のうち2個の基が連結されていてもよい。
芳香族炭化水素基としては、アリール基、アルキル置換アリール基などが挙げられる。
【0040】
炭化水素基として具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基などの炭素原子数が1~30、好ましくは1~20の直鎖状または分岐状のアルキル基;ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などの炭素原子数が2~30、好ましくは2~20の直鎖状または分岐状のアルケニル基;エチニル基、プロパルギル基など炭素原子数が2~30、好ましくは2~20の直鎖状または分岐状のアルキニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などの炭素原子数が3~30、好ましくは3~20の環状飽和炭化水素基;シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基などの炭素原子数5~30の環状不飽和炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素原子数が6~30、好ましくは6~20のアリール基;トリル基、イソプロピルフェニル基、tert-ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジ-tert-ブチルフェニル基などのアルキル置換アリール基などが挙げられる。
【0041】
上記炭化水素基は、水素原子がハロゲンで置換されていてもよく、たとえば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、クロロフェニル基などの炭素原子数1~30、好ましくは1~20のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
【0042】
R6~R8のうち少なくとも一つは、アリール基、アルキル置換アリール基などの芳香族炭化水素基である。R6~R8のうち少なくとも一つが芳香族炭化水素基であることにより、重合性が向上する。
【0043】
mが2以上の整数の場合には、式[A-1]の構造単位相互間においてR2~R8で示される基のうち2個の基が連結されていてもよい。さらに、mが2以上の整数の場合には、R1同士、R2同士、R3同士、R4同士、R5同士、R6同士、R7同士、R8同士は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0044】
nは、Mの価数を満たす数である。具体的には0~5、好ましくは1~4、より好ましくは1~3の整数である。
【0045】
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の整数である場合には、複数のXは互いに同一であっても、異なっていてもよく、また、Xで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0046】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
炭化水素基としては、前記R1~R5で例示したものと同様のものが挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、アイコシル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの炭素原子数が3~30のシクロアルキル基;ビニル基、プロペニル基、シクロヘキセニル基などのアルケニル基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基などのアリールアルキル基;フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などのアリール基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの炭化水素基には、ハロゲン化炭化水素、具体的には炭素原子数1~20の炭化水素基の少なくとも一つの水素がハロゲンに置換した基も含まれる。
これらのうちでは、炭素原子数が1~20のものが好ましい。
【0047】
ヘテロ環式化合物残基としては、前記R1~R5で例示したものと同様のものが挙げられる。
【0048】
酸素含有基としては、前記R1~R5で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、ヒドロキシ基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基;フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、ナフトキシ基などのアリーロキシ基;フェニルメトキシ基、フェニルエトキシ基などのアリールアルコキシ基;アセトキシ基;カルボニル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
イオウ含有基としては、前記R1~R5で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、メチルスルフォネート基、トリフルオロメタンスルフォネート基、フェニルスルフォネート基、ベンジルスルフォネート基、p-トルエンスルフォネート基、トリメチルベンゼンスルフォネート基、トリイソブチルベンゼンスルフォネート基、p-クロルベンゼンスルフォネート基、ペンタフルオロベンゼンスルフォネート基などのスルフォネート基;メチルスルフィネート基、フェニルスルフィネート基、ベンジルスルフィネート基、p-トルエンスルフィネート基、トリメチルベンゼンスルフィネート基、ペンタフルオロベンゼンスルフィネート基などのスルフィネート基;アルキルチオ基;アリールチオ基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
窒素含有基として具体的には、前記R1~R5で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、アミノ基;メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基などのアルキルアミノ基;フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジナフチルアミノ基、メチルフェニルアミノ基などのアリールアミノ基またはアルキルアリールアミノ基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
ホウ素含有基として具体的には、BR4(Rは水素、アルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子等を示す)が挙げられる。リン含有基として具体的には、トリメチルホスフィン基、トリブチルホスフィン基、トリシクロヘキシルホスフィン基などのトリアルキルホスフィン基;トリフェニルホスフィン基、トリトリルホスフィン基などのトリアリールホスフィン基;メチルホスファイト基、エチルホスファイト基、フェニルホスファイト基などのホスファイト基(ホスフィド基);ホスホン酸基;ホスフィン酸基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
ケイ素含有基として具体的には、前記R1~R5で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、フェニルシリル基、ジフェニルシリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリシクロヘキシルシリル基、トリフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリトリルシリル基、トリナフチルシリル基などの炭化水素置換シリル基;トリメチルシリルエーテル基などの炭化水素置換シリルエーテル基;トリメチルシリルメチル基などのケイ素置換アルキル基;トリメチルシリルフェニル基などのケイ素置換アリール基などが挙げられる。
【0053】
ゲルマニウム含有基として具体的には、前記R1~R5で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、前記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムに置換した基が挙げられる。スズ含有基として具体的には、前記R1~R5で例示したものと同様のものが挙げられ、より具体的には、前記ケイ素含有基のケイ素をスズに置換した基が挙げられる。
【0054】
ハロゲン含有基として具体的には、PF6、BF4などのフッ素含有基、ClO4、SbCl6などの塩素含有基、IO4などのヨウ素含有基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アルミニウム含有基として具体的には、AlR4(Rは水素、アルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子等を示す)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
以上のような、上記一般式[A-1]で表される化合物[A-1]は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
このような遷移金属化合物(A-1)は、末端のビニル基の占める割合、エチレンの重合性および単一の反応器での重合において遷移化合物[B]と共重合性が異なる点で好ましい。
【0055】
・化合物[A-2]
化合物[A-2]は下記一般式[A-2]で表される遷移金属化合物である。
【0056】
【0057】
一般式[A-2]中、Mは、周期表第4族遷移金属原子であり、好ましくはジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、さらに好ましくはジルコニウム原子である。
nは、遷移金属化合物[A-2]が電気的に中性となるように選択される1~4の整数であり、好ましくは1または2である。
【0058】
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子であり、前記アニオン配位子は、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基または共役ジエン系誘導体基である。Xは、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20の炭化水素基または酸素含有基である。
nが2以上の場合は、複数存在するXは互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。また、前記環が複数存在する場合には、前記環は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0059】
前記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる、好ましくは塩素または臭素である。
【0060】
前記炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、1-プロピル基、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、1-ヘプチル基、1-オクチル基、iso-プロピル基、sec-ブチル基(ブタン-2-イル基)、tert-ブチル基(2-メチルプロパン-2-イル基)、iso-ブチル基(2-メチルプロピル基)、ペンタン-2-イル基、2-メチルブチル基、iso-ペンチル基(3-メチルブチル基)、ネオペンチル基(2,2-ジメチルプロピル基)、シアミル基(1,2-ジメチルプロピル基)、iso-ヘキシル基(4-メチルペンチル基)、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、テキシル基(2,3-ジメチルブタ-2-イル基)、4,4-ジメチルペンチル基などの直鎖状または分岐状のアルキル基;
【0061】
ビニル基、アリル基、プロペニル基(プロパ-1-エン-1-イル基)、iso-プロペニル基(プロパ-1-エン-2-イル基)、アレニル基(プロパ-1,2-ジエン-1-イル基)、ブタ-3-エン-1-イル基、クロチル基(ブタ-2-エン-1-イル基)、ブタ-3-エン-2-イル基、メタリル基(2-メチルアリル基)、ブタ-1,3-ジエニル基、ペンタ-4-エン-1-イル基、ペンタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-2-エン-1-イル基、iso-ペンテニル基(3-メチルブタ-3-エン-1-イル基)、2-メチルブタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-4-エン-2-イル基、プレニル基(3-メチルブタ-2-エン-1-イル基)などの直鎖状または分岐状のアルケニル基もしくは不飽和二重結合含有基;
【0062】
エチニル基、プロパ-2-イン-1-イル基、プロパルギル基(プロパ-1-イン-1-イル基)などの直鎖状または分岐状のアルキニル基もしくは不飽和三重結合含有基;
ベンジル基、2-メチルベンジル基、4-メチルベンジル基、2,4,6-トリメチルベンジル基、3,5-ジメチルベンジル基、クミニル基(4-iso-プロピルベンジル基)、2,4,6-トリ-iso-プロピルベンジル基、4-tert-ブチルベンジル基、3,5-ジ-tert-ブチルベンジル基、1-フェニルエチル基、ベンズヒドリル基(ジフェニルメチル基)などの芳香族含有直鎖状または分岐状のアルキル基および不飽和二重結合含有基;
【0063】
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロヘプタトリエニル基、ノルボルニル基、ノルボルネニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基などの環状飽和炭化水素基;
フェニル基、トリル基(メチルフェニル基)、キシリル基(ジメチルフェニル基)、メシチル基(2,4,6-トリメチルフェニル基)、クメニル基(iso-プロピルフェニル基)、ジュリル基(2,3,5,6-テトラメチルフェニル基)、2,6-ジ-iso-プロピルフェニル基、2,4,6-トリ-iso-プロピルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、terフェニル基、ビナフチル基、アセナフタレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ピレニル基、フェロセニル基などの芳香族置換基が挙げられる。
【0064】
前記炭化水素基の中でも、メチル基、iso-ブチル基、ネオペンチル基、シアミル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基が好ましい。
【0065】
前記ハロゲン含有基としては、例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ビストリフルオロメチルフェニル基、ヘキサクロロアンチモン酸アニオンが挙げられる。
前記ハロゲン含有基の中でも、ペンタフルオロフェニル基が好ましい。
【0066】
前記ケイ素含有基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ-iso-プロピルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、トリス(トリメチルシリル)シリル基、トリメチルシリルメチル基などが挙げられる。
前記ケイ素含有基の中でも、トリメチルシリルメチル基が好ましい。
【0067】
前記酸素含有基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、アリルオキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ベンジルオキシ基、メトキシメトキシ基、フェノキシ基、2,6-ジメチルフェノキシ基、2,6-ジ-iso-プロピルフェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ基、2,4,6-トリメチルフェノキシ基、2,4,6-トリ-iso-プロピルフェノキシ基、アセトキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基、過塩素酸アニオン、過ヨウ素酸アニオンが挙げられる。
前記酸素含有基の中でも、メトキシ基、エトキシ基、iso-プロポキシ基、tert-ブトキシ基が好ましい。
【0068】
前記硫黄含有基としては、例えば、メシル基(メタンスルフォニル基)、フェニルスルホニル基、トシル基(p-トルエンスルホニル基)、トリフリル基(トリフルオロメタンスルホニル基)、ノナフリル基(ノナフルオロブタンスルホニル基)、メシラート基(メタンスルホナート基)、トシラート基(p-トルエンスルホナート基)、トリフラート基(トリフルオロメタンスルホナート基)、ノナフラート基(ノナフルオロブタンスルホナート基)が挙げられる。
前記硫黄含有基の中でも、トリフラート基(トリフルオロメタンスルホナート基)が好ましい。
【0069】
前記窒素含有基としては、例えば、アミノ基、シアノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アリルアミノ基、ジアリルアミノ基、ベンジルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、モルホリル基、ピロリル基、ビストリフリルイミド基などが挙げられる。
前記窒素含有基の中でも、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジニル基、ピロリル基、ビストリフリルイミド基が好ましい。
【0070】
前記リン含有基としては、例えば、ヘキサフルオロリン酸アニオンが挙げられる。
前記ホウ素含有基としては、例えば、テトラフルオロホウ酸アニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸アニオン、(メチル)(トリス(ペンタフルオロフェニル))ホウ酸アニオン、(ベンジル)(トリス(ペンタフルオロフェニル))ホウ酸アニオン、テトラキス((3,5-ビストリフルオロメチル)フェニル)ホウ酸アニオン、BR4(Rはそれぞれ独立に水素、アルキル基、置換基を有してもよいアリール基またはハロゲン原子等を示す。)で表される基が挙げられる。
【0071】
前記アルミニウム含有基としては、例えば、
【化6】
(Mは、前記一般式[A-2]中のMを表す。)
を形成可能な、AlR
4(Rは水素、アルキル基、置換基を有してもよいアリール基またはハロゲン原子等を示す)で表される基が挙げられる。
【0072】
前記共役ジエン系誘導体基としては、例えば、1,3-ブタジエニル基、イソプレニル基(2-メチル-1,3-ブタジエニル基)、ピペリレニル基(1,3-ペンタジエニル基)、2,4-ヘキサジエニル基、1,4-ジフェニル-1,3-ペンタジエニル基、シクロペンタジエニル基など、メタロシクロペンテン基が挙げられる。
【0073】
孤立電子対で配位可能な中性配位子としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどのエーテル類、トリエチルアミン、ジエチルアミンなどのアミン類、ピリジン、ピコリン、ルチジン、オキサゾリン、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、チオフェンなどの複素環式化合物、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィンなどの有機リン化合物が挙げられる。
【0074】
前記一般式[A-2]において、Qは、周期表第14族原子であり、たとえば炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子またはスズ原子であり、好ましくは炭素原子またはケイ素原子であり、より好ましくはケイ素原子である。
【0075】
前記一般式[A-2]において、
R1、R2、R5、R6、R7、R8、R10、R11、R13およびR14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~40の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基または硫黄含有基であり、
R3およびR4は、それぞれ独立に、炭素原子数1~40の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基もしくは硫黄含有基であり、
R9およびR12は、水素原子、炭素原子数1~40の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基または硫黄含有基であり(ただし、R9は下記一般式[A-2-1]で表される置換基ではない。
【0076】
【化7】
一般式[A-2-1]中、R
9a、R
9b、R
9c、R
9dおよびR
9eは、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基または硫黄含有基であり、
*は、インデニル環への結合を表す。
【0077】
R1~R14としての前記炭素原子数1~40の炭化水素基としては、炭素原子数1~20の炭化水素基が挙げられ、より具体的な例としては、上述したXの例として挙げられた炭化水素基の具体例が挙げられる。
【0078】
前記炭素原子数1~40の炭化水素基は、好ましくは、炭素原子数1~20の炭化水素基(但し、芳香族炭化水素基を除く)または炭素原子数6~40の芳香族炭化水素基である。前記の炭素原子数1~20の炭化水素基は、好ましくは炭素原子数1~20の脂肪族または脂環族の炭化水素基である。炭素原子数1~20の炭化水素基には、アリールアルキル基の様な芳香族構造を有する置換基も含まれる。
【0079】
前記炭素原子数1~40の炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、1-プロピル基、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、1-ヘプチル基、1-オクチル基、1-ノニル基、1-デカニル基、1-ウンデカニル基、1-ドデカニル基、1-エイコサニル基、iso-プロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、iso-ブチル基、ペンタン-2-イル基、2-メチルブチル基、iso-ペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基(1,1-ジメチルプロピル基)、シアミル基、ペンタン-3-イル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、iso-ヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基(2-メチルペンタン-2-イル基)、3-メチルペンタン-2-イル基、4-メチルペンタン-2-イル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、テキシル基、3-メチルペンタン-3-イル基、3,3-ジメチルブタ-2-イル基、ヘキサン-3-イル基、2-メチルペンタン-3-イル基、ヘプタン-4-イル基、2,4-ジメチルペンタン-2-イル基、3-エチルペンタン-3-イル基、4,4-ジメチルペンチル基、4-メチルヘプタン-4-イル基、4-プロピルヘプタン-4-イル基、2,3,3-トリメチルブタン-2-イル基、2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル基などの炭素原子数が1~40の直鎖状または分岐状のアルキル基;
【0080】
ビニル基、アリル基、プロペニル基、iso-プロペニル基、アレニル基、ブタ-3-エン-1-イル基、クロチル基、ブタ-3-エン-2-イル基、メタリル基、ブタ-1,3-ジエニル基、ペンタ-4-エン-1-イル基、ペンタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-2-エン-1-イル基、iso-ペンテニル基、2-メチルブタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-4-エン-2-イル基、プレニル基、2-メチル-ブタ-2-エン-1-イル基、ペンタ-3-エン-2-イル基、2-メチル-ブタ-3-エン-2-イル基、ペンタ-1-エン-3-イル基、ペンタ-2,4-ジエン-1-イル基、ペンタ-1,3-ジエン-1-イル基、ペンタ-1,4-ジエン-3-イル基、iso-プレニル基(2-メチル-ブタ-1,3-ジエン-1-イル基)、ペンタ-2,4-ジエン-2-イル基、ヘキサ-5-エン-1-イル基、ヘキサ-4-エン-1-イル基、ヘキサ-3-エン-1-イル基、ヘキサ-2-エン-1-イル基、4-メチル-ペンタ-4-エン-1-イル基、3-メチル-ペンタ-4-エン-1-イル基、2-メチル-ペンタ-4-エン-1-イル基、ヘキサ-5-エン-2-イル基、4-メチル-ペンタ-3-エン-1-イル基、3-メチル-ペンタ-3-エン-1-イル基、2,3-ジメチル-ブタ-2-エン-1-イル基、2-メチルペンタ-4-エン-2-イル基、3-エチルペンタ-1-エン-3-イル基、ヘキサ-3,5-ジエン-1-イル基、ヘキサ-2,4-ジエン-1-イル基、4-メチルペンタ-1,3-ジエン-1-イル基、2,3-ジメチル-ブタ-1,3-ジエン-1-イル基、ヘキサ-1,3,5-トリエン-1-イル基、2-(シクロペンタジエニル)プロパン-2-イル基、2-(シクロペンタジエニル)エチル基などの炭素原子数が2~40の直鎖状または分岐状のアルケニル基もしくは不飽和二重結合含有基;
【0081】
エチニル基、プロパ-2-イン-1-イル基、プロパルギル基、ブタ-1-イン-1-イル基、ブタ-2-イン-1-イル基、ブタ-3-イン-1-イル基、ペンタ-1-イン-1-イル基、ペンタ-2-イン-1-イル基、ペンタ-3-イン-1-イル基、ペンタ-4-イン-1-イル基、3-メチル-ブタ-1-イン-1-イル基、ペンタ-3-イン-2-イル基、2-メチル-ブタ-3-イン-1-イル基、ペンタ-4-イン-2-イル基、ヘキサ-1-イン-1-イル基、3,3-ジメチル-ブタ-1-イン-1-イル基、2-メチル-ペンタ-3-イン-2-イル基、2,2-ジメチル-ブタ-3-イン-1-イル基、ヘキサ-4-イン-1-イル基、ヘキサ-5-イン-1-イル基などの炭素原子数が2~40の直鎖状または分岐状のアルキニル基もしくは不飽和三重結合含有基;
【0082】
ベンジル基、2-メチルベンジル基、4-メチルベンジル基、2,4,6-トリメチルベンジル基、3,5-ジメチルベンジル基、クミニル基、2,4,6-トリ-iso-プロピルベンジル基、4-tert-ブチルベンジル基、3,5-ジ-tert-ブチルベンジル基、1-フェニルエチル基、ベンズヒドリル基、クミル基(2-フェニルプロパン-2-イル基)、2-(4-メチルフェニル)プロパン-2-イル基、2-(3,5-ジメチルフェニル)プロパン-2-イル基、2-(4-tert-ブチルフェニル)プロパン-2-イル基、2-(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)プロパン-2-イル基、3-フェニルペンタン-3-イル基、4-フェニルヘプタ-1,6-ジエン-4-イル基、1,2,3-トリフェニルプロパン-2-イル基、1,1-ジフェニルエチル基、1,1-ジフェニルプロピル基、1,1-ジフェニル-ブタ-3-エン-1-イル基、1,1,2-トリフェニルエチル基、トリチル基(トリフェニルメチル基)、トリ-(4-メチルフェニル)メチル基、2-フェニルエチル基、スチリル基(2-フェニルビニル基)、2-(2-メチルフェニル)エチル基、2-(4-メチルフェニル)エチル基、2-(2,4,6-トリメチルフェニル)エチル基、2-(3,5-ジメチルフェニル)エチル基、2-(2,4,6-トリ-iso-プロピルフェニル)エチル基、2-(4-tert-ブチルフェニル)エチル基、2-(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)エチル基、2-メチル-1-フェニルプロパン-2-イル基、3-フェニルプロピル基、シンナミル基(3-フェニルアリル基)、ネオフィル基(2-メチル-2-フェニルプロピル基)、3-メチル-3-フェニルブチル基、2-メチル-4-フェニルブタン-2-イル基、シクロペンタジエニルジフェニルメチル基、2-(1-インデニル)プロパン-2-イル基、(1-インデニル)ジフェニルメチル基、2-(1-インデニル)エチル基、2-(テトラヒドロ-1-インダセニル)プロパン-2-イル基、(テトラヒドロ-1-インダセニル)ジフェニルメチル基、2-(テトラヒドロ-1-インダセニル)エチル基、2-(1-ベンゾインデニル)プロパン-2-イル基、(1-ベンゾインデニル)ジフェニルメチル基、2-(1-ベンゾインデニル)エチル基、2-(9-フルオレニル)プロパン-2-イル基、(9-フルオレニル)ジフェニルメチル基、2-(9-フルオレニル)エチル基、2-(1-アズレニル)プロパン-2-イル基、(1-アズレニル)ジフェニルメチル基、2-(1-アズレニル)エチル基などの炭素原子数が7~40の芳香族含有直鎖状または分岐状のアルキル基および不飽和二重結合含有基;
【0083】
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、n-ブチルシクロペンタジエニル基、n-ブチル-メチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、1-メチルシクロペンチル基、1-アリルシクロペンチル基、1-ベンジルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、1-メチルシクロヘキシル基、1-アリルシクロヘキシル基、1-ベンジルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロヘプテニル基、シクロヘプタトリエニル基、1-メチルシクロヘプチル基、1-アリルシクロヘプチル基、1-ベンジルシクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロオクテニル基、シクロオクタジエニル基、シクロオクタトリエニル基、1-メチルシクロオクチル基、1-アリルシクロオクチル基、1-ベンジルシクロオクチル基、4-シクロヘキシル-tert-ブチル基、ノルボルニル基、ノルボルネニル基、ノルボルナジエニル基、2-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル基、7-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2-イル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、1-(2-メチルアダマンチル)、1-(3-メチルアダマンチル)、1-(4-メチルアダマンチル)、1-(2-フェニルアダマンチル)、1-(3-フェニルアダマンチル)、1-(4-フェニルアダマンチル)、1-(3,5-ジメチルアダマンチル)、1-(3,5,7-トリメチルアダマンチル)、1-(3,5,7-トリフェニルアダマンチル)、ペンタレニル基、インデニル基、フルオレニル基、インダセニル基、テトラヒドロインダセニル基、ベンゾインデニル基、アズレニル基などの炭素原子数が3~40の環状飽和および不飽和炭化水素基;
【0084】
フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、ジュリル基、2,6-ジ-iso-プロピルフェニル基、2,4,6-トリ-iso-プロピルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル基、アリルフェニル基、(ブタ-3-エン-1-イル)フェニル基、(ブタ-2-エン-1-イル)フェニル基、メタリルフェニル基、プレニルフェニル基、4-アダマンチルフェニル基、3,5-ジ-アダマンチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、terフェニル基、ビナフチル基、アセナフタレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ピレニル基、フェロセニル基などの炭素原子数が6~40の芳香族置換基などが挙げられる。
【0085】
前記炭素原子数が1~40の直鎖状または分岐状のアルキル基の中でも、メチル基、エチル基、1-プロピル基、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、1-ヘプチル基、1-オクチル基、iso-プロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、iso-ブチル基、iso-ペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ペンタン-3-イル基、iso-ヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、テキシル基、3-メチルペンタン-3-イル基、ヘプタン-4-イル基、2,4-ジメチルペンタン-2-イル基、3-エチルペンタン-3-イル基、4,4-ジメチルペンチル基、4-メチルヘプタン-4-イル基、4-プロピルヘプタン-4-イル基、2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル基などが好ましく、メチル基、エチル基、1-プロピル基、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、2,4-ジメチルペンタン-2-イル基、2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル基がより好ましい。
【0086】
前記炭素原子数が2~40の直鎖状または分岐状のアルケニル基もしくは不飽和二重結合含有基の中でも、ビニル基、アリル基、ブタ-3-エン-1-イル基、クロチル基、メタリル基、ペンタ-4-エン-1-イル基、プレニル基、ペンタ-1,4-ジエン-3-イル基、ヘキサ-5-エン-1-イル基、2-メチルペンタ-4-エン-2-イル基、2-(シクロペンタジエニル)プロパン-2-イル基、2-(シクロペンタジエニル)エチル基などが好ましく、ビニル基、アリル基、ブタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-4-エン-1-イル基、プレニル基、ヘキサ-5-エン-1-イル基がより好ましい。
【0087】
前記炭素原子数が2~40の直鎖状または分岐状のアルキニル基もしくは不飽和三重結合含有基の中でも、エチニル基、プロパ-2-イン-1-イル基、プロパルギル基、ブタ-2-イン-1-イル基、ブタ-3-イン-1-イル基、ペンタ-3-イン-1-イル基、ペンタ-4-イン-1-イル基、3-メチル-ブタ-1-イン-1-イル基、3,3-ジメチル-ブタ-1-イン-1-イル基、ヘキサ-4-イン-1-イル基、ヘキサ-5-イン-1-イル基などが好ましく、プロパ-2-イン-1-イル基、プロパルギル基、ブタ-2-イン-1-イル基、ブタ-3-イン-1-イル基がより好ましい。
【0088】
前記炭素原子数が7~40の芳香族含有直鎖状または分岐状のアルキル基および不飽和二重結合含有基の中でも、ベンジル基、2-メチルベンジル基、4-メチルベンジル基、2,4,6-トリメチルベンジル基、3,5-ジメチルベンジル基、クミニル基、2,4,6-トリ-iso-プロピルベンジル基、4-tert-ブチルベンジル基、3,5-ジ-tert-ブチルベンジル基、ベンズヒドリル基、クミル基、1,1-ジフェニルエチル基、トリチル基、2-フェニルエチル基、2-(4-メチルフェニル)エチル基、2-(2,4,6-トリメチルフェニル)エチル基、2-(3,5-ジメチルフェニル)エチル基、2-(2,4,6-トリ-iso-プロピルフェニル)エチル基、2-(4-tert-ブチルフェニル)エチル基、2-(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)エチル基、スチリル基、2-メチル-1-フェニルプロパン-2-イル基、3-フェニルプロピル基、シンナミル基、ネオフィル基、シクロペンタジエニルジフェニルメチル基、2-(1-インデニル)プロパン-2-イル基、(1-インデニル)ジフェニルメチル基、2-(1-インデニル)エチル基、2-(9-フルオレニル)プロパン-2-イル基、(9-フルオレニル)ジフェニルメチル基、2-(9-フルオレニル)エチル基などが好ましく、ベンジル基、ベンズヒドリル基、クミル基、1,1-ジフェニルエチル基、トリチル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、シンナミル基がより好ましい。
【0089】
前記炭素原子数が3~40の環状飽和および不飽和炭化水素基の中でも、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、1-メチルシクロペンチル基、1-アリルシクロペンチル基、1-ベンジルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、1-メチルシクロヘキシル基、1-アリルシクロヘキシル基、1-ベンジルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロヘプテニル基、シクロヘプタトリエニル基、1-メチルシクロヘプチル基、1-アリルシクロヘプチル基、1-ベンジルシクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロオクテニル基、シクロオクタジエニル基、4-シクロヘキシル-tert-ブチル基、ノルボルニル基、2-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、ペンタレニル基、インデニル基、フルオレニル基などが好ましく、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、1-メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、1-メチルシクロヘキシル基、1-アダマンチル基がより好ましい。
【0090】
前記炭素原子数が6~40の芳香族置換基の中でも、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、2,6-ジ-iso-プロピルフェニル基、2,4,6-トリ-iso-プロピルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル基、アリルフェニル基、プレニルフェニル基、4-アダマンチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、terフェニル基、ビナフチル基、フェナントリル基、アントラセニル基、フェロセニル基などが好ましく、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、2,6-ジ-iso-プロピルフェニル基、2,4,6-トリ-iso-プロピルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル基、アリルフェニル基、4-アダマンチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基がより好ましい。
【0091】
前記ハロゲン含有基としては、例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、ドデカフルオロヘキシル基、6,6,6-トリフルオロヘキシル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、ジ-tert-ブチル-フルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ビストリフルオロメチルフェニル基、トリフルオロメトキシフェニル基、ビストリフルオロメトキシフェニル基、トリフルオロメチルチオフェニル基、ビストリフルオロメチルチオフェニル基、フルオロビフェニル基、ジフルオロビフェニル基、トリフルオロビフェニル基、テトラフルオロビフェニル基、ペンタフルオロビフェニル基、ジ-tert-ブチル-フルオロビフェニル基、トリフルオロメチルビフェニル基、ビストリフルオロメチルビフェニル基、トリフルオロメトキシビフェニル基、ビストリフルオロメトキシビフェニル基、トリフルオロメチルジメチルシリル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、フルオロフェノキシ基、ジフルオロフェノキシ基、トリフルオロフェノキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基、ジ-tert-ブチル-フルオロフェノキシ基、トリフルオロメチルフェノキシ基、ビストリフルオロメチルフェノキシ基、トリフルオロメトキシフェノキシ基、ビストリフルオロメトキシフェノキシ基、ジフルオロメチレンジオキシフェニル基、ビストリフルオロメチルフェニルイミノメチル基、トリフルオロメチルチオ基、などが挙げられる。
【0092】
前記ハロゲン含有基の中でも、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ビストリフルオロメチルフェニル基、トリフルオロメトキシフェニル基、ペンタフルオロビフェニル基、トリフルオロメチルビフェニル基、ビストリフルオロメチルビフェニル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基、ビストリフルオロメチルフェノキシ基、ビストリフルオロメチルフェノキシ基、ジフルオロメチレンジオキシフェニル基、トリフルオロメチルチオ基が好ましく、トリフルオロメチル基、フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ビストリフルオロメチルフェニル基、ペンタフルオロビフェニル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基がより好ましい。
【0093】
前記ケイ素含有基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ-iso-プロピルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、トリス(トリメチルシリル)シリル基、シクロペンタジエニルジメチルシリル基、ジ-n-ブチル(シクロペンタジエニル)シリル基、シクロペンタジエニルジフェニルシリル基、インデニルジメチルシリル基、ジ-n-ブチル(インデニル)シリル基、インデニルジフェニルシリル基、フルオレニルジメチルシリル基、ジ-n-ブチル(フルオレニル)シリル基、フルオレニルジフェニルシリル基、4-トリメチルシリルフェニル基、4-トリエチルシリルフェニル基、4-トリ-iso-プロピルシリルフェニル基、4-tert-ブチルジフェニルシリルフェニル基、4-トリフェニルシリルフェニル基、4-トリス(トリメチルシリル)シリルフェニル基、3,5-ビス(トリメチルシリル)フェニル基などが挙げられる。
【0094】
前記ケイ素含有基の中でも、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ-iso-プロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、シクロペンタジエニルジメチルシリル基、シクロペンタジエニルジフェニルシリル基、インデニルジメチルシリル基、インデニルジフェニルシリル基、フルオレニルジメチルシリル基、フルオレニルジフェニルシリル基、4-トリメチルシリルフェニル基、4-トリエチルシリルフェニル基、4-トリ-iso-プロピルシリルフェニル基、4-トリフェニルシリルフェニル基、3,5-ビス(トリメチルシリル)フェニル基などが好ましく、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、4-トリメチルシリルフェニル基、4-トリエチルシリルフェニル基、4-トリ-iso-プロピルシリルフェニル基、3,5-ビス(トリメチルシリル)フェニル基がより好ましい。
【0095】
前記酸素含有基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、アリルオキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、メタリルオキシ基、プレニルオキシ基、ベンジルオキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、トルイルオキシ基、iso-プロピルフェノキシ基、アリルフェノキシ基、tert-ブチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、iso-プロポキシフェノキシ基、アリルオキシフェノキシ基、ビフェニルオキシ基、ビナフチルオキシ基、メトキシメチル基、アリルオキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メトキシエチル基、アリルオキシエチル基、ベンジルオキシエチル基、フェノキシエチル基、メトキシプロピル基、アリルオキシプロピル基、ベンジルオキシプロピル基、フェノキシプロピル基、メトキシビニル基、アリルオキシビニル基、ベンジルオキシビニル基、フェノキシビニル基、メトキシアリル基、アリルオキシアリル基、ベンジルオキシアリル基、フェノキシアリル基、ジメトキシメチル基、ジ-iso-プロポキシメチル基、ジオキソラニル基、テトラメチルジオキソラニル基、ジオキサニル基、ジメチルジオキサニル基、メトキシフェニル基、iso-プロポキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、メチレンジオキシフェニル基、3,5-ジメチル-4-メトキシフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェニル基、フリル基、メチルフリル基、テトラヒドロフリル基、ピラニル基、テトラヒドロピラニル基、フロフリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基などが挙げられる。
【0096】
前記酸素含有基の中でも、炭素原子数1~20(好ましくは1~10)のアルコキシ基などが好ましく、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、iso-プロポキシ基、アリルオキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、プレニルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、トルイルオキシ基、iso-プロピルフェノキシ基、アリルフェノキシ基、tert-ブチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、ビフェニルオキシ基、ビナフチルオキシ基、アリルオキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシアリル基、ベンジルオキシアリル基、フェノキシアリル基、ジメトキシメチル基、ジオキソラニル基、テトラメチルジオキソラニル基、ジオキサニル基、ジメチルジオキサニル基、メトキシフェニル基、iso-プロポキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、メチレンジオキシフェニル基、3,5-ジメチル-4-メトキシフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェニル基、フリル基、メチルフリル基、テトラヒドロピラニル基、フロフリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基等などが好ましく、メトキシ基、iso-プロポキシ基、tert-ブトキシ基、アリルオキシ基、フェノキシ基、ジメトキシメチル基、ジオキソラニル基、メトキシフェニル基、iso-プロポキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、3,5-ジメチル-4-メトキシフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェニル基、フリル基、メチルフリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基がより好ましい。
【0097】
前記窒素含有基としては、例えば、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アリルアミノ基、ジアリルアミノ基、ジデシルアミノ基、ベンジルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、モルホリル基、アゼピニル基、ジメチルアミノメチル基、ジベンジルアミノメチル基、ピロリジニルメチル基、ジメチルアミノエチル基、ベンジルアミノメチル基、ベンジルアミノエチル基、ピロリジニルエチル基、ジメチルアミノビニル基、ベンジルアミノビニル基、ピロリジニルビニル基、ジメチルアミノプロピル基、ベンジルアミノプロピル基、ピロリジニルプロピル基、ジメチルアミノアリル基、ベンジルアミノアリル基、ピロリジニルアリル基、アミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジメチル-4-ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジ-iso-プロピル-4-ジメチルアミノフェニル基、ジュロリジニル基、テトラメチルジュロリジニル基、ピロリジニルフェニル基、ピロリルフェニル基、ピリジルフェニル基、キノリルフェニル基、イソキノリルフェニル基、インドリニルフェニル基、インドリルフェニル基、カルバゾリルフェニル基、ジ-tert-ブチルカルバゾリルフェニル基、ピロリル基、メチルピロリル基、フェニルピロリル基、ピリジル基、キノリル基、テトラヒドロキノリル基、iso-キノリル基、テトラヒドロ-iso-キノリル基、インドリル基、インドリニル基、カルバゾリル基、ジ-tert-ブチルカルバゾリル基、イミダゾリル基、ジメチルイミダゾリジニル基、ベンゾイミダソリル基、オキサゾリル基、オキサゾリジニル基、ベンゾオキサゾリル基などが挙げられる。
【0098】
前記窒素含有基の中でも、炭素原子数1~20(好ましくは1~10)のアミノ基などが好ましく、具体的にはアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アリルアミノ基、ベンジルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、モルホリル基、ジメチルアミノメチル基、ベンジルアミノメチル基、ピロリジニルメチル基、ジメチルアミノエチル基、ピロリジニルエチル基、ジメチルアミノプロピル基、ピロリジニルプロピル基、ジメチルアミノアリル基、ピロリジニルアリル基、アミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジメチル-4-ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジ-iso-プロピル-4-ジメチルアミノフェニル基、ジュロリジニル基、テトラメチルジュロリジニル基、ピロリジニルフェニル基、ピロリルフェニル基、カルバゾリルフェニル基、ジ-tert-ブチルカルバゾリルフェニル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基、テトラヒドロキノリル基、iso-キノリル基、テトラヒドロ-iso-キノリル基、インドリル基、インドリニル基、カルバゾリル基、ジ-tert-ブチルカルバゾリル基、イミダゾリル基、ジメチルイミダゾリジニル基、ベンゾイミダソリル基、オキサゾリル基、オキサゾリジニル基、ベンゾオキサゾリル基などが好ましく、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジニル基、ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジメチル-4-ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジ-iso-プロピル-4-ジメチルアミノフェニル基、ジュロリジニル基、テトラメチルジュロリジニル基、ピロリジニルフェニル基、ピロリル基、ピリジル基、カルバゾリル基、イミダゾリル基がより好ましい。
【0099】
前記硫黄含有基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、ベンジルチオ基、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、メチルチオメチル基、ベンジルチオメチル基、フェニルチオメチル基、ナフチルチオメチル基、メチルチオエチル基、ベンジルチオエチル基、フェニルチオエチル基、ナフチルチオエチル基、メチルチオビニル基、ベンジルチオビニル基、フェニルチオビニル基、ナフチルチオビニル基、メチルチオプロピル基、ベンジルチオプロピル基、フェニルチオプロピル基、ナフチルチオプロピル基、メチルチオアリル基、ベンジルチオアリル基、フェニルチオアリル基、ナフチルチオアリル基、メルカプトフェニル基、メチルチオフェニル基、チエニルフェニル基、メチルチエニルフェニル基、ベンゾチエニルフェニル基、ジベンゾチエニルフェニル基、ベンゾジチエニルフェニル基、チエニル基、テトラヒドロチエニル基、メチルチエニル基、チエノフリル基、チエノチエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、チエノベンゾフリル基、ベンゾジチエニル基、ジチオラニル基、ジチアニル基、オキサチオラニル基、オキサチアニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、チアゾリジニル基などが挙げられる。
【0100】
前記硫黄含有基の中でも、チエニル基、メチルチエニル基、チエノフリル基、チエノチエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、チエノベンゾフリル基、ベンゾジチエニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基が好ましい。
【0101】
前記一般式[A-2]において、R1~R6のうちの隣接した置換基同士(例:R1とR2、R2とR3、R3とR4、R4とR5、およびR5とR6)は、互いに結合して、置換基を有していてもよい環を形成してもよい。この場合に形成される環としては、インデニル環部分に縮環する、置換基を有していてもよい、飽和炭化水素(前記インデニル環部分の炭化水素を除く。)または不飽和炭化水素からなる5~8員環が好ましい。なお、環が複数存在する場合には、これらは互いに同一でも異なっていてもよい。本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、前記環はより好ましくは5又は6員環であり、この場合、前記環と母核のインデニル環部分とを併せた構造としては、例えば、ベンゾインデニル環、テトラヒドロインダセニル環、テトラヒドロベンゾインデニル環(これらは、置換基を有していてもよい。)が挙げられ、ベンゾインデニル環、テトラヒドロインダセニル環(これらは、置換基を有していてもよい。)が好ましい。
【0102】
R7~R12のうちの隣接した置換基同士(例:R7とR8、R8とR9、R9とR10、R10とR11、およびR11とR12)は、互いに結合して、置換基を有していてもよい環を形成してもよい。この場合に形成される環としては、インデニル環部分に縮環する、置換基を有していてもよい、飽和炭化水素(前記インデニル環部分の炭化水素を除く。)または不飽和炭化水素からなる5~8員環が好ましい。なお、環が複数存在する場合には、これらは互いに同一でも異なっていてもよい。本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、前記環はより好ましくは5又は6員環であり、この場合、前記環と母核のインデニル環部分とを併せた構造としては、例えば、ベンゾインデニル環、テトラヒドロインダセニル環、テトラヒドロベンゾインデニル環、テトラヒドロフルオレニル環、フルオレニル環(これらは、置換基を有していてもよい。)が挙げられ、ベンゾインデニル環、テトラヒドロインダセニル環(これらは、置換基を有していてもよい。)が好ましい。
【0103】
R13およびR14は、互いに結合してQを含む環を形成してもよい。この場合に形成される環としては、置換基を有していてもよい、3~8員環の飽和または不飽和環が好ましい。本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、前記環は好ましくは4~6員環であり、この場合、R13およびR14とQとを併せた構造として、例えば、置換シクロブタン環、置換シクロペンタン環、置換フルオレン環、置換シラシクロブタン(シレタン)環、置換シラシクロペンタン(シロラン)環、置換シラシクロヘキサン(シリナン)、置換シラフルオレン環が挙げられ、置換シクロペンタン環、置換シラシクロブタン環、置換シラシクロペンタン環が好ましい。
【0104】
前記一般式[A-2]において、
R1、R2、R5、R6、R7、R8、R10およびR11は、それぞれ独立に、好ましくは水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基または硫黄含有基であり、より好ましくは水素原子である。
【0105】
R3およびR4は、それぞれ独立に、好ましくは炭素原子数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基または硫黄含有基であり、より好ましくは炭素原子数1~20の炭化水素基、炭素原子数1~20のケイ素含有基、炭素原子数1~20の酸素含有基または炭素原子数1~20の窒素含有基であり、さらに好ましくは炭素原子数1~20の炭化水素基である。
【0106】
R9およびR12は、それぞれ独立に、好ましくは水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基または硫黄含有基であり、より好ましくは水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、炭素原子数1~20のケイ素含有基、炭素原子数1~20の酸素含有基または炭素原子数1~20の窒素含有基である。
【0107】
R13およびR14は、それぞれ独立に、好ましくは水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基または硫黄含有基であり、より好ましくは水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、炭素原子数1~20のケイ素含有基、炭素原子数1~20の酸素含有基または炭素原子数1~20の窒素含有基である。
なお、R7においては、酸素含有基、窒素含有基または硫黄含有基が、後述する複素環式芳香族基であってもよい。
【0108】
化合物[A-2]の好ましい態様としては、前記一般式[A-2]において、
Mが、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、
Xが、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基または酸素含有基であり、
Qが、炭素原子またはケイ素原子であり、
R1、R2、R5、R6、R8、R10、R11、R13およびR14が、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、炭素原子数1~20のケイ素含有基、炭素原子数1~20の酸素含有基(たとえば、アルコキシ基)、炭素原子数1~20の窒素含有基(たとえば、アミノ基)または炭素原子数1~20の硫黄含有基であり、
R3およびR4が、それぞれ独立に、炭素原子数1~20の炭化水素基、炭素原子数1~20のケイ素含有基、炭素原子数1~20の酸素含有基、炭素原子数1~20の窒素含有基もしくは炭素原子数1~20の硫黄含有基であり、互いに結合して、置換基を有していてもよい環を形成してもよく、
R7が、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基、または複素環内に窒素、酸素、硫黄から選ばれる原子を少なくとも1つ含む、置換基を有していてもよい芳香族複素五員環置換基(たとえば、置換基を有していてもよい、フリル基、チエニル基)であり、
R9およびR12が、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、炭素原子数1~20のケイ素含有基、炭素原子数1~20の酸素含有基(たとえば、アルコキシ基)、炭素原子数1~20の窒素含有基(たとえば、アミノ基)または炭素原子数1~20の硫黄含有基である遷移金属化合物[A-2-I]が挙げられる。
【0109】
前記遷移金属化合物[A-2-I]のさらに好ましい態様としては、
前記一般式[A-2]において、
Qが、ケイ素原子であり、
R1、R2、R5、R6、R8、R10、R11、R13およびR14が、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、炭素原子数1~20のケイ素含有基、炭素原子数1~20の酸素含有基または炭素原子数1~20の窒素含有基であり、
R3およびR4が、それぞれ独立に、炭素原子数1~20の炭化水素基、炭素原子数1~20のケイ素含有基、炭素原子数1~20の酸素含有基または炭素原子数1~20の窒素含有基であり、互いに結合して、置換基を有していてもよい環を形成してもよく、
R9およびR12が、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、炭素原子数1~20のケイ素含有基、炭素原子数1~20の酸素含有基または炭素原子数1~20の窒素含有基である遷移金属化合物[A-2-II]が挙げられる。
【0110】
前記遷移金属化合物[A-2-II]のさらに好ましい態様としては、前記一般式[A-2]においてR1およびR6が水素原子である遷移金属化合物[A-2-III]が挙げられる。
前記遷移金属化合物[A-2-III]のさらに好ましい態様としては、前記一般式[A-2]においてR2およびR5が水素原子である遷移金属化合物[A-2-IV]が挙げられる。
【0111】
前記遷移金属化合物[A-2-IV]のさらに好ましい態様としては、前記一般式[A-2]においてR7およびR8が水素原子である遷移金属化合物[A-2-V]が挙げられる。
前記遷移金属化合物[A-2-V]のさらに好ましい態様としては、前記一般式[A-2]においてR10およびR11が水素原子である遷移金属化合物[A-2-VI]が挙げられる。
【0112】
前記遷移金属化合物[A-2-VI]のさらに好ましい態様としては、前記一般式[A-2]においてR3およびR4のうち少なくとも1つが、炭素原子数1~20の炭化水素基である(R3およびR4のうちの1つのみが炭素原子数1~20の炭化水素基の場合、他の1つは水素原子である。)遷移金属化合物[A-2-VII]が挙げられる。
【0113】
前記遷移金属化合物[A-2-VII]のさらに好ましい態様としては、前記一般式[A-2]においてR3およびR4が、それぞれ独立に炭素原子数1~20の炭化水素基であり、互いに結合して、置換基を有していてもよい環を形成してもよい遷移金属化合物[A-2-VIII]が挙げられる。
【0114】
前記遷移金属化合物[A-2-VII]または[A-2-VIII]のさらに好ましい態様としては、前記一般式[A-2]においてR9が、水素原子または炭素原子数1~20の炭化水素基であり、より好ましくは炭素原子数1~20の炭化水素基である遷移金属化合物[A-2-IX]が挙げられる。
【0115】
前記遷移金属化合物[A-2-VIII]のさらに好ましい態様としては、前記一般式[A-2]においてR12が、水素原子または炭素原子数1~20の炭化水素基であり、より好ましくは炭素原子数1~20の炭化水素基である遷移金属化合物[A-2-X]が挙げられる。
【0116】
前記一般式[A-2]において、R7の1つである、窒素、酸素および硫黄からなる群から選ばれる原子を少なくとも1つ含む母骨格を5員環(以下「複素5員環」ともいう。)とする、置換基を有していてもよい複素環式芳香族基としては、例えば、下記一般式[4a]~[4h]で表される基が挙げられる。
【0117】
【0118】
前記一般式[4a]~[4h]中、Chは酸素原子あるいは硫黄原子であり、Rdはそれぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~20の炭化水素基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
なお、前記一般式[4a]~[4h]中の波線はインデニル環との結合部位を示す。
【0119】
前記炭素原子数1~20の炭化水素基の例としては、上述したR1~R14としての前記炭素原子数1~40の炭化水素基の例として挙げたもののうち、炭素原子数が1~20のものが挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、1-プロピル基、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、1-ヘプチル基、1-オクチル基、iso-プロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、iso-ブチル基、iso-ペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、アリル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロオクテニル基、ノルボルニル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、ベンジル基、ベンズヒドリル基、クミル基、1,1-ジフェニルエチル基、トリチル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、シンナミル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、2,6-ジ-iso-プロピルフェニル基、2,4,6-トリ-iso-プロピルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル基、4-アダマンチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、terフェニル基、ビナフチル基、フェナントリル基、アントラセニル基、フェロセニル基が挙げられ、より好ましくは、メチル基、エチル基、1-プロピル基、1-ブチル基、iso-プロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、iso-ブチル基、アリル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、ビフェニル基、terフェニル基が挙げられる。
【0120】
Rdはそれぞれ独立に、隣接したRd同士で互いに結合して、複素5員環部分に縮環する、置換基を有していてもよい、複素5員環部分の原子と共に5~8員環を構成する飽和または不飽和炭化水素基を形成してもよい。前記5~8員環は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、好ましくは5又は6員環であり、この場合、この環と母核の複素5員環部分とを併せた構造として、例えば、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、カルバゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾピラゾール環などが挙げられる。
【0121】
前記一般式[4a]~[4h]で表される複素環式芳香族基の中でも、前記一般式[4a]で表される複素環式芳香族基が好ましい。
前記一般式[4a]で表される複素環式芳香族基の中でも、2-フリル基、5-メチル-2-フリル基、2-チエニル基、5-メチル-2-チエニル基が好ましい。
【0122】
以下に、前記属化合物[A-2]の具体例を示すが、本発明に係る化合物[A-2]はこれらに限定されるものではない。
便宜上、前記一般式[A-2]のMXn(金属部分)で表される部分を除いたリガンド構造を、2-インデニル環部分、1-インデニル環部分、インデニル環部分R1、R6およびR8置換基、インデニル環部分R2、R5、R9、およびR12置換基、インデニル環部分R3、R4、R10、およびR11置換基、1-インデニル環部分R7置換基、架橋部分の構造の7つに分ける。2-インデニル環部分の略称をα、1-インデニル環部分の略称をβ、インデニル環部分R1、R6およびR8置換基の略称をγ、インデニル環部分R2、R5、R9、およびR12置換基の略称をδ、インデニル環部分R3、R4、R19、およびR11置換基の略称をε、1-インデニル環部分R7置換基の略称をζ、架橋部分の構造の略称をηとし、各置換基の略称を[表1]~[表7]に示す。
【0123】
【0124】
【0125】
なお、前記[表1]~[表2]中の波線は架橋部分との結合部位を示す。
【0126】
【0127】
前記[表3]中のR1、R6およびR8置換基は、その組み合わせにおいて互いに同一でも異なっていてもよい。
【0128】
【0129】
前記[表4]中のR2、R5、R9、およびR12置換基は、その組み合わせにおいて互いに同一でも異なっていてもよい。ただし、R9置換基はδ-1、δ-20~δ-54とはならない。
【0130】
【0131】
前記[表5]中のR3、R4、R10、およびR11置換基は、その組み合わせにおいて互いに同一でも異なっていてもよい。ただし、R3、R4置換基はε-1とはならない。
【0132】
【0133】
【0134】
金属部分MXnの具体的な例示としては、TiF2、TiCl2、TiBr2、TiI2、Ti(Me)2、Ti(Bn)2、Ti(Allyl)2、Ti(CH2-tBu)2、Ti(1,3-ブタジエニル)、Ti(1,3-ペンタジエニル)、Ti(2,4-ヘキサジエニル)、Ti(1,4-ジフェニル-1,3-ペンタジエニル)、Ti(CH2-Si(Me)3)2、Ti(ОMe)2、Ti(ОiPr)2、Ti(NMe2)2、Ti(ОMs)2、Ti(ОTs)2、Ti(ОTf)2、ZrF2、ZrCl2、ZrBr2、ZrI2、Zr(Me)2、Zr(Bn)2、Zr(Allyl)2、Zr(CH2-tBu)2、Zr(1,3-ブタジエニル)、Zr(1,3-ペンタジエニル)、Zr(2,4-ヘキサジエニル)、Zr(1,4-ジフェニル-1,3-ペンタジエニル)、Zr(CH2-Si(Me)3)2、Zr(ОMe)2、Zr(ОiPr)2、Zr(NMe2)2、Zr(ОMs)2、Zr(ОTs)2、Zr(ОTf)2、HfF2、HfCl2、HfBr2、HfI2、Hf(Me)2、Hf(Bn)2、Hf(Allyl)2、Hf(CH2-tBu)2、Hf(1,3-ブタジエニル)、Hf(1,3-ペンタジエニル)、Hf(2,4-ヘキサジエニル)、Hf(1,4-ジフェニル-1,3-ペンタジエニル)、Hf(CH2-Si(Me)3)2、Hf(ОMe)2、Hf(ОiPr)2、Hf(NMe2)2、Hf(ОMs)2、Hf(ОTs)2、Hf(ОTf)2などが挙げられる。なお、上記において、Meはメチル基、Bnはベンジル基、tBuはtert-ブチル基、Si(Me)3はトリメチルシリル基、ОMeはメトキシ基、ОiPrはiso-プロポキシ基、NMe2はジメチルアミノ基、ОMsはメタンスルホナート基、ОTsはp-トルエンスルホナート基、ОTfはトリフルオロメタンスルホナート基である。
【0135】
上記の表記に従えば、2-インデニル環部分が[表1]中のα-3、1-インデニル環部分が[表2]中のβ-1、インデニル環部分R1、R6およびR8置換基がいずれも[表3]中のγ-1、2-インデニル環部分R2およびR5置換基がいずれも[表4]中のδ-1、1-インデニル環部分R7置換基が[表6]中のζ-30、1-インデニル環部分R9置換基が[表4]中のδ-2、1-インデニル環部分R12置換基が[表4]中のδ-3、架橋部分が[表7]中のη-20の組み合わせで構成され、金属部分のMXnがZrCl2の場合は、下記式[A-2-(1)]で表される化合物を例示している。
【0136】
【0137】
また、2-インデニル環部分が[表1]中のα-3、1-インデニル環部分が[表2]中のβ-1、インデニル環部分R1、R6およびR8置換基がいずれも[表3]中のγ-1、インデニル環部分R2、R5、R9およびR12置換基がいずれも[表4]中のδ-2、インデニル環部分R10およびR11置換基がいずれも[表5]中のε-1、1-インデニル環部分R7置換基が[表6]中のζ-2、架橋部分が[表7]中のη-20の組み合わせで構成され、金属部分のMXnがZrCl2の場合は、下記式[A-2-(2)]で表される化合物を例示している。
【0138】
【0139】
また、2-インデニル環部分が[表1]中のα-3、1-インデニル環部分が[表2]中のβ-1、2-インデニル環部分R1およびR6置換基がいずれも[表3]中のγ-2、2-インデニル環部分R2およびR5置換基がいずれも[表4]中のδ-1、1-インデニル環部分R7置換基が[表6]中のζ-12、1-インデニル環部分R8置換基が[表3]中のγ-1、1-インデニル環部分R9置換基が[表4]中のδ-4、1-インデニル環部分R10置換基が[表5]中のε-1、1-インデニル環部分R11置換基が[表5]中のε-12、1-インデニル環部分R12置換基が[表4]中のδ-3、架橋部分が[表7]中のη-31の組み合わせで構成され、金属部分のMXnがHfMe2の場合は、下記式[A-2-(3)]で表される化合物を例示している。
【0140】
【0141】
また、2-インデニル環部分が[表1]中のα-1、1-インデニル環部分が[表2]中のβ-1、2-インデニル環部分R1およびR6置換基がいずれも[表3]中のγ-1、2-インデニル環部分R2およびR5置換基が[表4]中のδ-1、2-インデニル環部分R3およびR4置換基が[表5]中のε-2、1-インデニル環部分R10およびR11置換基が[表5]中のε-1、1-インデニル環部分R7置換基が[表6]中のζ-1、1-インデニル環部分R8置換基が[表3]中のγ-9、1-インデニル環部分R9置換基が[表4]中のδ-5、R12置換基が[表4]中のδ-22、架橋部分が[表7]中のη-4の組み合わせで構成され、金属部分のMXnがTi(1,3-ペンタジエニル)の場合は、下記式[A-2-(4)]で表される化合物を例示している。
【0142】
【0143】
また、前記遷移金属化合物(A-2)は、架橋部分を挟んで中心金属と結合するインデニル環部分の面が2方向存在する(表面と裏面)。故に、2-インデニル環部分に対称面が存在しない場合、一例として下記一般式[A-2-(5a)]あるいは[A-2-(5b)]で示される2種類の構造異性体が存在する。
【0144】
【0145】
同様に、架橋部分の置換基R13とR14が同一でない場合にも、一例として下記一般式[A-2-(6a)]あるいは[A-2-(6b)]で示される2種類の構造異性体が存在する。
【0146】
【0147】
これら構造異性体混合物の精製、分取、あるいは構造異性体の選択的な製造は、公知の方法によって可能であり、特に製造法が限定されるわけではない。公知の製造方法としては、前記遷移金属化合物[A]の製造方法として挙げたものの他に、特開平10-109996号公報、「Оrganometallics 1999,18,5347.」、「Оrganometallics 2012,31,4340.」、特表2011-502192号公報などに開示された製造方法が挙げられる。
【0148】
なお、化合物[A-2]は、前記一般式[A-2]を満たす範囲内で、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよく、構造異性体混合物を用いてもよく、構造異性体を1種単独で用いてもよく、2種以上の構造異性体混合物を用いてもよい。
【0149】
前記化合物[A-2]は、従来公知の方法を利用して製造することができ、たとえば特開2019-59933号公報の[0097]~[0115]に記載の方法、または特開2019-59724号公報の[0098]~[0116]に記載の方法において、R1~R14、Q、M、Xおよびnを上記一般式[A-2]に記載されたものと同義に読み替えることによって製造することができる。
【0150】
本発明において、化合物[A]としては、上述の化合物[A-1]または[A-2]を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0151】
化合物[B]
化合物[B]は、ジメチルシリルビスインデニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物である。
化合物[B]としては、ジメチルシリルビスインデニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物であればいずれも用いることができるが、たとえば特開平6-100579、特表2001-525461、特開2005-336091、特開2009-299046、特開平11-130807、特開2008-285443等により開示されている化合物を好適に用いることができる。
【0152】
上記化合物[B]としてより具体的には、架橋ビス(インデニル)ジルコノセン類又はハフノセン類からなる群から選択される化合物を好適な例として挙げることができる。より好ましくは、ジメチルシリル架橋ビス(インデニル)ジルコノセン又はハフノセンである。さらに好ましくは、ジメチルシリル架橋ビス(インデニル)ジルコノセンであり、ジルコノセンを選択することで、所望のグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含むオレフィン系樹脂(β)を効率よく製造することができる。
【0153】
より具体的には、ジメチルシリル-ビス{1-(2-n-プロピル-4-(9-フェナントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジメチル等を好適な化合物として用いることができる。
以上のような化合物[B]は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0154】
本発明では、上述した化合物[A]および化合物[B]を含む重合触媒を用いることにより、後述するオレフィン系樹脂(β)を、単一の反応器でエチレンとプロピレンとを共重合させて製造することができる。
【0155】
重合触媒中における化合物[A]と化合物[B]の含有割合、すなわち重合系中における化合物[A]と化合物[B]の含有割合は、特に限定されるものではないが、化合物[A]と化合物[B]の合計100質量部中において、通常化合物[A]を1~99質量部、化合物[B]を99~1質量部の割合で、好ましくは化合物[A]を5~95質量部、化合物[B]を5~95質量部の割合で、より好ましくは化合物[A]を10~90質量部、化合物[B]を10~90質量部の割合で、さらに好ましくは化合物[A]を15~85質量部、化合物[B]を15~85質量部の割合で含有することが望ましい。
【0156】
その他の触媒成分
本発明に係る重合触媒は、上述した化合物[A]および化合物[B]を含んでいればよく、特に限定されるものではないが、本発明の効果が損なわれない範囲で、前記化合物[A]および前記化合物[B]以外の遷移金属化合物を含んでもよい。
また、本発明に係る重合触媒は、必要に応じて、上述した化合物[A]および化合物[B]以外のその他の触媒成分を含んでいてもよい。
【0157】
その他の触媒成分としては、(C1)有機金属化合物、(C2)有機アルミニウムオキシ化合物、および(C3)化合物[A]および/または化合物[B]の遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物、から選ばれる触媒成分(C)を含むことが好ましい。
以下、(C1)~(C3)の化合物について順次説明する。
【0158】
((C1)有機金属化合物)
本発明で用いられる(C1)有機金属化合物として、具体的には下記の一般式(C1-a)で表わされる有機アルミニウム化合物、一般式(C1-b)で表わされる周期表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物、および一般式(C1-c)で表わされる周期表第2族または第12族金属のジアルキル化合物が挙げられる。なお、(C1)有機金属化合物には、後述する(C2)有機アルミニウムオキシ化合物は含まないものとする。
【0159】
Ra
pAl(ORb)qHrYs …(C1-a)
上記一般式(C1-a)中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、Yはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3、qは0≦q<3、rは0≦r<3、sは0≦s<3の数であり、かつp+q+r+s=3である。)
【0160】
M3AlRc
4 …(C1-b)
上記一般式(C1-b)中、M3はLi、NaまたはKを示し、Rcは炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示す。)
【0161】
RdReM4 …(C1-c)
上記一般式(C1-c)中、RdおよびReは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、M4はMg、ZnまたはCdである。
【0162】
前記一般式(C1-a)で表わされる有機アルミニウム化合物としては、次のような一般式(C-1a-1)~(C-1a-4)で表わされる化合物を例示できる。
Ra
pAl(ORb)3-p …(C-1a-1)
(式(C-1a-1)中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、pは好ましくは1.5≦p≦3の数である。)で表される有機アルミニウム化合物、
【0163】
Ra
pAlY3-p …(C-1a-2)
(式(C-1a-2)中、Raは炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、Yはハロン原子を示し、pは好ましくは0<p<3の数である。)で表される有機アルミニウム化合物、
Ra
pAlH3-p …(C-1a-3)
(式(C-1a-3)中、Raは炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、pは好ましくは2≦p<3の数である。)で表される有機アルミニウム化合物、
【0164】
Ra
pAl(ORb)qYs …(C-1a-4)
(式(C-1a-4)中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、Yはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3、qは0≦q<3、sは0≦s<3の数であり、かつp+q+s=3である。)で表される有機アルミニウム化合物。
【0165】
一般式(C1-a)に属する有機アルミニウム化合物としてより具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリn-アルキルアルミニウム;
トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec-ブチルアルミニウム、トリtert-ブチルアルミニウム、トリ2-メチルブチルアルミニウム、トリ3-メチルブチルアルミニウム、トリ2-メチルペンチルアルミニウム、トリ3-メチルペンチルアルミニウム、トリ4-メチルペンチルアルミニウム、トリ2-メチルヘキシルアルミニウム、トリ3-メチルヘキシルアルミニウム、トリ2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;
トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;
トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウム;
ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;
(i-C4H9)xAly(C5H10)z(式中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである。)などで表されるトリイソプレニルアルミニウムなどのトリアルケニルアルミニウム;
【0166】
イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシド、イソブチルアルミニウムイソプロポキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド;
ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
Ra
2.5Al(ORb)0.5で表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示す);
ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシド)、エチルアルミニウムビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシド)、ジイソブチルアルミニウム(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシド)、イソブチルアルミニウムビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシド)などのジアルキルアルミニウムアリーロキシド;
【0167】
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;
エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;
エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;
エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
【0168】
また(C1-a)に類似する化合物も本発明に使用することができ、そのような化合物として例えば、窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。このような化合物として具体的には、(C2H5)2AlN(C2H5)Al(C2H5)2などを挙げることができる。
【0169】
前記一般式(C1-b)に属する化合物としては、LiAl(C2H5)4、LiAl(C7H15)4などを挙げることができる。
前記一般式(C1-c)に属する化合物としては、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛、ジ-n-プロピル亜鉛、ジイソプロピル亜鉛、ジ-n-ブチル亜鉛、ジイソブチル亜鉛、ビス(ペンタフルオロフェニル)亜鉛、ジメチルカドミウム、ジエチルカドミウムなどを挙げることができる。
【0170】
またその他にも、(C1)有機金属化合物としては、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、プロピルマグネシウムブロミド、プロピルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリドなどを使用することもできる。
【0171】
また重合系内で上記有機アルミニウム化合物が形成されるような化合物、例えばハロゲン化アルミニウムとアルキルリチウムとの組み合わせ、またはハロゲン化アルミニウムとアルキルマグネシウムとの組み合わせなどを、前記(C1)有機金属化合物として使用することもできる。
上記のような(C1)有機金属化合物は、1種類単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0172】
(C1)有機金属化合物は、(C1)有機金属化合物と、オレフィン重合用触媒に含まれる遷移金属化合物中の遷移金属原子(M)とのモル比(C1/M)が、通常0.01~100,000、好ましくは0.05~50,000となるような量で用いられる。
【0173】
((C2)有機アルミニウムオキシ化合物)
本発明で用いられる(C2)有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2-78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。(C2)有機アルミニウムオキシ化合物としては、具体的には、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン等が挙げられる。
従来公知のアルミノキサンは、例えば下記(1)~(3)のような方法によって製造することができ、通常、炭化水素溶媒の溶液として得られる。
【0174】
(1)吸着水を含有する化合物または結晶水を含有する塩類、例えば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水または結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法。
【0175】
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷または水蒸気を作用させる方法。
【0176】
(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0177】
なお前記アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また回収された上記のアルミノキサンの溶液から溶媒または未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、得られたアルミノキサンを溶媒に再溶解またはアルミノキサンの貧溶媒に懸濁させてもよい。
【0178】
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として具体的には、前記一般式(C1-a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
【0179】
これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。
上記のような有機アルミニウム化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0180】
アルミノキサンの調製に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ガソリン、灯油、軽油などの石油留分または上記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のハロゲン化物とりわけ、塩素化物、臭素化物などの炭化水素溶媒が挙げられる。さらにエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を用いることもできる。これらの溶媒のうち特に芳香族炭化水素または脂肪族炭化水素が好ましい。
【0181】
また本発明で用いられるベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で通常10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であるもの、すなわち、ベンゼンに対して不溶性または難溶性であることが好ましい。
【0182】
本発明で用いられる(C2)有機アルミニウムオキシ化合物としては、下記一般式(III)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることもできる。
【0183】
【化15】
(一般式(III)中、R
17は炭素原子数が1~10の炭化水素基を示し、4つのR
18は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1~10の炭化水素基を示す。)
【0184】
前記一般式(III)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物は、下記一般式(IV)で表されるアルキルボロン酸と、有機アルミニウム化合物とを、不活性ガス雰囲気下に不活性溶媒中で、-80℃~室温の温度で1分~24時間反応させることにより製造できる。
R19-B(OH)2 …(IV)
(一般式(IV)中、R19は前記一般式(III)におけるR17と同じ基を示す。)
【0185】
前記一般式(IV)で表されるアルキルボロン酸の具体的な例としては、メチルボロン酸、エチルボロン酸、イソプロピルボロン酸、n-プロピルボロン酸、n-ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、n-ヘキシルボロン酸、シクロヘキシルボロン酸、フェニルボロン酸、3,5-ジフルオロフェルニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸などが挙げられる。これらの中では、メチルボロン酸、n-ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、3,5-ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸が好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0186】
このようなアルキルボロン酸と反応させる有機アルミニウム化合物として具体的には、前記一般式(C1-a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
【0187】
前記有機アルミニウム化合物としては、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、特にトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
オレイン重合用触媒が、(C2)有機アルミニウムオキシ化合物を含むと、オレフィン化合物に対しての重合活性が高いものとなるため好ましい。
【0188】
上記のような(C2)有機アルミニウムオキシ化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
有機アルミニウムオキシ化合物(C2)は、有機アルミニウムオキシ化合物(C2)中のアルミニウム原子と、オレフィン重合用触媒に含まれる遷移金属化合物中の遷移金属原子(M)とのモル比(C2/M)が、通常10~500,000、好ましくは20~100,000となるような量で用いられる。
【0189】
((C3)遷移金属化合物(化合物[A]および/または化合物[B])と反応してイオン対を形成する化合物)
(C3)遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物は、オレフィン重合用触媒に含まれる、上述した化合物[A]および/または化合物[B]の遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物である。
【0190】
本発明で用いられる、(C3)遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物(以下、「イオン化イオン性化合物」ともいう。)としては、特表平1-501950号公報、特表平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、USP-5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
【0191】
具体的には、前記ルイス酸としては、BR3(Rは、フッ素、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素である。)で示される化合物が挙げられ、例えばトリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4-フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p-トリル)ボロン、トリス(o-トリル)ボロン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ボロンなどである。
前記イオン性化合物としては、例えば下記一般式(V)で表される化合物が挙げられる。
【0192】
【化16】
(一般式(V)中、R
20はH
+、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオンまたは遷移金属を有するフェロセニウムカチオンであり、R
21~R
24は、互いに同一でも異なっていてもよく、有機基、好ましくはアリール基または置換アリール基である。)
【0193】
前記カルボニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンなどが挙げられる。
【0194】
前記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n-ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン;ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
【0195】
前記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
【0196】
R15としては、カルボニウムカチオンおよびアンモニウムカチオンが好ましく、特にトリフェニルカルボニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
【0197】
またイオン性化合物として、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などを挙げることもできる。
【0198】
前記トリアルキル置換アンモニウム塩として具体的には、例えばトリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(o-トリル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(m,m-ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(o-トリル)ホウ素などが挙げられる。
【0199】
前記N,N-ジアルキルアニリニウム塩として具体的には、例えばN,N-ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N-ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル
)ホウ素、N,N,2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0200】
前記ジアルキルアンモニウム塩として具体的には、例えばジ(1-プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0201】
さらにイオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、N,N-ジエチルアニリニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、下記式(VI)または(VII)で表されるホウ素化合物などを挙げることもできる。
【0202】
【化17】
(式(VI)中、Etはエチル基を示す。)
【0203】
【化18】
(式(VII)中、Etはエチル基を示す。)
【0204】
イオン化イオン性化合物(化合物[C3])の例であるボラン化合物として具体的には、例えば、デカボラン;
ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ウンデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカクロロデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカクロロドデカボレートなどのアニオンの塩;
トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ドデカハイドライドドデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0205】
イオン化イオン性化合物の例であるカルボラン化合物として具体的には、例えば4-カルバノナボラン、1,3-ジカルバノナボラン、6,9-ジカルバデカボラン、ドデカハイドライド-1-フェニル-1,3-ジカルバノナボラン、ドデカハイドライド-1-メチル-1,3-ジカルバノナボラン、ウンデカハイドライド-1,3-ジメチル-1,3-ジカルバノナボラン、7,8-ジカルバウンデカボラン、2,7-ジカルバウンデカボラン、ウンデカハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボラン、ドデカハイドライド-11-メチル-2,7-ジカルバウンデカボラン、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバドデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-トリメチルシリル-1-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムブロモ-1-カルバドデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム6-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム6-カルウンバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム7-カルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム7,8-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム2,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムドデカハイドライド-8-メチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-エチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-ブチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-アリル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-9-トリメチルシリル-7,8-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-4,6-ジブロモ-7-カルバウンデカボレートなどのアニオンの塩;
【0206】
トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-1,3-ジカルバノナボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)銅酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)金酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(トリブロモオクタハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)マンガン酸塩(IV)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0207】
イオン化イオン性化合物の例であるヘテロポリ化合物は、ケイ素、リン、チタン、ゲルマニウム、ヒ素および錫から選ばれる原子と、バナジウム、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種または2種以上の原子とを含む化合物である。具体的には、リンバナジン酸、ゲルマノバナジン酸、ヒ素バナジン酸、リンニオブ酸、ゲルマノニオブ酸、シリコノモリブデン酸、リンモリブデン酸、チタンモリブデン酸、ゲルマノモリブデン酸、ヒ素モリブデン酸、錫モリブデン酸、リンタングステン酸、ゲルマノタングステン酸、錫タングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンタングストバナジン酸、ゲルマノタングストバナジン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、ゲルマノモリブドタングストバナジン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドニオブ酸、およびこれらの酸の塩が挙げられるが、この限りではない。また、前記塩としては、前記酸の、例えば周期表第1族または2族の金属、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等との塩、トリフェニルエチル塩等の有機塩が挙げられる。
【0208】
イオン化イオン性化合物の例であるイソポリ化合物は、バナジウム、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種の原子の金属イオンから構成される化合物であり、金属酸化物の分子状イオン種であるとみなすことができる。具体的には、バナジン酸、ニオブ酸、モリブデン酸、タングステン酸、およびこれらの酸の塩が挙げられるが、この限りではない。また、前記塩としては、前記酸の例えば周期表第1族または第2族の金属、具体的にはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等との塩、トリフェニルエチル塩等の有機塩が挙げられる。
【0209】
上記のようなイオン化イオン性化合物((C3)オレフィン重合用触媒に含まれる遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物)は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0210】
イオン化イオン性化合物(C3)は、イオン化イオン性化合物(C3)と、オレフィン重合用触媒に含まれる遷移金属化合物中の遷移金属原子(M)とのモル比(C3/M)が、通常1~10、好ましくは1~5となるような量で用いられる。
【0211】
<重合>
本発明のオレフィン系樹脂の製造方法では、上述した重合触媒の存在下で、単一の反応器で、エチレンとプロピレンとを共重合させる重合工程を有する。
【0212】
重合工程は、上述した化合物[A]および化合物[B]を含む重合触媒の存在下で、エチレンおよびプロピレンを重合して、後述するグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含むオレフィン系樹脂(β)を製造する工程であり、好ましくは溶液(溶解)重合において実施可能である。
【0213】
重合工程では、重合反応器中において、上述した化合物[A]および化合物[B]を含む重合触媒の存在下で、エチレンとプロピレンの共重合を行う。重合条件については、後述するオレフィン系樹脂(β)が得られる範囲内の条件であればよく、特に限定されるものではないが、たとえば、脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素を重合溶媒として用いて、上述した化合物[A]および化合物[B]を含む重合触媒を導入した重合反応器中に、エチレンとプロピレンとを導入して共重合を行い、重合反応液を得る工程であることが好ましい。
【0214】
本発明では、重合工程において、本発明の目的を損なわない範囲で、エチレンおよびプロピレンとともに、炭素原子数4~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種のモノマーを共重合成分として用いてもよい。共重合成分として用いられる炭素原子数4~20のα-オレフィンの具体例としては、1-ブテン、2-メチル-1-プロペン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、2-エチル-1-ブテン、2,3-ジメチル-1-ブテン、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、メチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ペンテン、エチル-1-ペンテン、トリメチル-1-ブテン、メチルエチル-1-ブテン、1-オクテン、メチル-1-ペンテン、エチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ヘキセン、プロピル-1-ヘプテン、メチルエチル-1-ヘプテン、トリメチル-1-ペンテン、プロピル-1-ペンテン、ジエチル-1-ブテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン等を挙げることができる。この中でも1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンのα-オレフィンを好ましく用いることができる。
【0215】
なお、エチレン、プロピレン、および、炭素原子数4~20のα-オレフィンは、ナフサ由来原料であってもバイオナフサ由来原料であっても、ナフサ由来原料とバイオナフサ由来原料を併用したものであっても良い。
【0216】
共重合成分として用いられる炭素原子数4~20のα-オレフィンの使用量は、エチレンおよびプロピレンを含むモノマー全量中において、通常0~19モル%、好ましくは0~15モル%、より好ましくは0~10モル%、さらに好ましくは0~5モル%である。本発明においては、エチレンおよびプロピレン以外の共重合モノマーを用いないことも好ましい一態様である。
【0217】
重合工程で用いる重合溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素などが挙げられる。具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられ、これらを1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0218】
重合工程での重合温度は、15℃~200℃の範囲が好ましく、より好ましくは、20℃~150℃の範囲である。
重合工程での重合圧力は、通常は常圧~10MPaゲージ圧、好ましくは常圧~5MPaゲージ圧の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。重合反応を連続式で行う場合には、本発明に係るオレフィン系樹脂(β)をより効率的かつ経済的に製造できるため好ましい。
【0219】
重合工程での反応時間(重合反応を連続式で実施する場合には平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度などの条件によっても異なるが、通常0.5分間~5時間、好ましくは5分間~3時間、さらに好ましくは10分間~2時間である。
【0220】
重合工程で得られるオレフィン系樹脂(β)の分子量(重量平均分子量)は、重合系内に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによっても調節することができる。また、上述した触媒成分(C)の使用によって調節することもでき、たとえば、トリイソブチルアルミニウム、メチルアルミノキサン、ジエチル亜鉛等の使用が挙げられる。水素を添加する場合、その量はオレフィン1kgあたり0.001~100NL程度が適当である。得られるオレフィン系樹脂(β)中に含まれるグラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖の数の向上のためには、無水素条件で行うことも好ましい一態様である。
【0221】
本発明では、このような重合工程により、後述するオレフィン系樹脂(β)を、単一の反応器内で(いわゆるワンポットで)、一段階の重合工程により好適に製造することができる。すなわち本発明のオレフィン系樹脂の製造方法では、簡素化した設備および工程により効率的かつ経済的に後述するオレフィン系樹脂(β)を製造することができる。
【0222】
本発明のオレフィン系樹脂の製造方法では、上述した重合工程に加え、必要に応じて、重合工程で生成する重合体を回収する工程を含んでも良い。本工程は、重合工程での生成物から有機溶剤を分離して重合体であるオレフィン系樹脂を取り出す工程であり、溶媒濃縮、押し出し脱気、ペレタイズ、晶析等の公知の工程を、特段制限なく採用することができる。また、本発明のオレフィン系樹脂の製造方法では、重合工程において副生するグラフト型オレフィン系重合体[R1]以外のエチレンとプロピレンの共重合体や低重合物の少なくとも一部を、分離あるいは除去する工程を必要に応じて有してもよい。
【0223】
<オレフィン系樹脂(β)>
本発明に係るオレフィン系樹脂(β)は、下記要件(I)~(VI)を満たす。
【0224】
要件(I):主鎖および側鎖から構成されるグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含む。
本発明において「グラフト(共)重合体」あるいは「グラフト型重合体」という語は、主鎖に対し側鎖が1本以上結合したポリマーを意味する。
【0225】
要件(II):プロピレンから導かれる構造単位の割合が10~93質量%の範囲にあり、エチレンから導かれる構造単位の割合が7~90質量%(ただしプロピレンから導かれる構造単位と、エチレンから導かれる構造単位との合計を100質量%とする)の範囲にある。
【0226】
オレフィン系重合体(β)のプロピレンから導かれる構造単位の割合は、プロピレンから導かれる構造単位と、エチレンから導かれる構造単位との合計100質量%中において、好ましくは15~88質量%、より好ましくは20~83質量%、さらに好ましくは20~78質量%である。また、オレフィン系重合体(β)のエチレンから導かれる構造単位の割合は、プロピレンから導かれる構造単位と、エチレンから導かれる構造単位との合計100質量%中において、好ましくは12~85質量%、より好ましくは17~80質量%、さらに好ましくは22~80質量%である。本発明に係るオレフィン系重合体(β)は、プロピレンから導かれる構造単位の割合およびエチレンから導かれる構造単位の割合が上記の範囲を満たすことにより、プロピレン系重合体およびエチレン系重合体の両方に対して高い相容性を有する。
【0227】
本発明に係るオレフィン系樹脂(β)は、本発明の目的を損なわない範囲で、エチレンおよびプロピレンから導かれる構造単位以外のその他の構造単位を有していてもよい。その他の構造単位としては、上述した共重合成分である炭素原子数4~20のα-オレフィンから導かれる構造単位が挙げられる。その他の構造単位の割合は、オレフィン系樹脂(β)の全構造単位中において、通常0~19モル%、好ましくは0~15モル%、より好ましくは0~10モル%、さらに好ましくは0~5モル%である。本発明においては、エチレンおよびプロピレン以外の構造単位を含まず、オレフィン系樹脂(β)が、プロピレンから導かれる構造単位と、エチレンから導かれる構造単位のみから構成されることが特に好ましい態様である。
【0228】
要件(III):前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖がプロピレンとエチレンとの共重合体から構成され、主鎖中のプロピレンに由来する構造単位の含有量が76~99モル%、エチレンに由来する構造単位の含有量が1~24モル%の範囲にある。
【0229】
グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖中のプロピレンに由来する構造単位の含有量は、好ましくは78~99モル%、より好ましくは78~96モル%、さらに好ましくは78~93モル%、特に好ましくは78~90モル%であり、グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖中のエチレンに由来する構造単位の含有量は、好ましくは1~22モル%、より好ましくは4~22モル%、さらに好ましくは7~22モル%、特に好ましくは10~22モル%である。
【0230】
要件(IV):前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖がエチレンとプロピレンとの共重合体から構成され、側鎖中のエチレンに由来する構造単位の含有量が80~99モル%、プロピレンに由来する構造単位の含有量が1~20モル%範囲にある。
【0231】
グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖中のエチレンに由来する構造単位の含有量は、好ましくはが85~99モル%であり、グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖中のプロピレンに由来する構造単位の含有量は、好ましくは1~15モル%である。
【0232】
本発明に係るグラフト型オレフィン系重合体[R1]は、上記要件(III)および(IV)で特定されるとおり、プロピレンからなる構造単位を主として有するプロピレン・エチレン共重合体からなる主鎖と、エチレンからなる構造単位を主として有するエチレン・プロピレン共重合体からなる側鎖とを有するグラフト型共重合体である。このように主鎖と側鎖との構成が大きく異なるグラフト共重合体は、単一の反応器内あるいは一段階の重合反応で製造することは通常困難であるが、本発明では上述した特定の重合触媒を用いることにより、単一の反応器内での重合反応で、主鎖と側鎖の構成が大きく異なるグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含むオレフィン系樹脂(β)を製造することができる。
【0233】
要件(V):示差走査熱量分析(DSC)によって測定された融点(Tm)が40~160℃の範囲にある。
オレフィン系樹脂(β)の融点(Tm)は、好ましくは45~150℃、より好ましくは50~130℃、さらに好ましくは50~110℃の範囲であることが望ましい。
【0234】
要件(VI):ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)よりスチレン換算値として求められる重量平均分子量が、50,000~600,000の範囲にある。
オレフィン系樹脂(β)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは50,000~400,000、より好ましくは50,000~300,000の範囲であることが望ましい。
本発明に係るオレフィン系樹脂(β)は、上述の融点(Tm)および重量平均分子量(Mw)を満たすことにより、ポリエチレンとポリプロピレンとを相容化させる相容剤の用途に好適に用いることができる。
【0235】
本発明に係るオレフィン系樹脂(β)中にグラフト型オレフィン系重合体[R1]が含まれることは、オレフィン系樹脂(β)中の主鎖部分および側鎖部分の含有量比およびGPCのピーク分離を組み合わせることにより確認することができる。例えばGPCを用いて測定した分子量分布曲線からピーク分離を行うことで、各部分の構成割合を求めることができ、そこからグラフト型オレフィン系重合体[R1]の生成を確認することができる。このほか種々分析手法を用いることにより確認することができ、確認の手段は特段限定されるものではない。
【0236】
グラフト型オレフィン系重合体[R1]は、主鎖を構成する前記共重合体の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)よりスチレン換算値として求められる重量平均分子量が、好ましくは50,000~1,000,000の範囲、より好ましくは50,000~600,000の範囲、さらに好ましくは50,000~300,000の範囲にあることが望ましい。
【0237】
グラフト型オレフィン系重合体[R1]は、側鎖を構成する前記共重合体の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)よりスチレン換算値として求められる重量平均分子量が、好ましくは5,000~200,000の範囲、より好ましくは5,000~150,000の範囲、さらに好ましくは5,000~100,000の範囲にあることが望ましい。
【0238】
また、グラフト型オレフィン系重合体[R1]は、側鎖1本あたりの、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)よりスチレン換算値として求められる重量平均分子量と、主鎖1本あたりの側鎖本数との積である、側鎖の合計重量平均分子量が、好ましくは15,000~500,000の範囲、より好ましくは15,000~300,000の範囲、さらに好ましくは15,000~200,000の範囲、特に好ましくは150,000~100,000の範囲にあることが望ましい。
【0239】
上述したグラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖の重量平均分子量、側鎖の重量平均分子量、合計重量平均分子量のうちの一つ以上、好ましくは二つ以上、より好ましくはすべてが、上述の好ましい範囲を満たす場合には、それを含むオレフィン系樹脂(β)が、廃棄プラスチックなどのポリオレフィン系材料との相容性に優れたものとなり、これを含むオレフィン系樹脂組成物の成形体が耐衝撃性に優れるものとなるため好ましい。
【0240】
<オレフィン系樹脂(β)の用途>
本発明に係るオレフィン系樹脂(β)は、プロピレン系樹脂、エチレン系樹脂との相溶性が高いことから、プロピレン系樹脂およびエチレン系樹脂の1種以上と、オレフィン系樹脂(β)とを含有する樹脂組成物、ならびに該樹脂組成物からなる成形体を製造する用途に好適に用いることができる。これらのうちでも、オレフィン系樹脂(β)とともに、プロピレン系樹脂の1種以上と、エチレン系樹脂の1種以上とを含有する樹脂組成物およびその成形体の用途に好適に使用することができる。本発明に係るオレフィン系樹脂(β)とともに、プロピレン系樹脂の1種以上と、エチレン系樹脂の1種以上とを含有する樹脂組成物では、通常相容化が困難なプロピレン系樹脂とエチレン系樹脂とが好適に相容化され、均質に分散した樹脂組成物とすることができ、樹脂組成物が成形性に優れるとともに、該樹脂組成物から得られる成形体が耐衝撃性に優れたものとなるため好ましい。
【0241】
また、本発明に係るオレフィン系樹脂(β)は、プロピレン系樹脂およびエチレン系樹脂という主なポリオレフィン樹脂に対して相容性が高いことから、詳細な分別が困難なポリオレフィン系廃プラスチックの相容化剤としても好適に用いることができる。本発明に係るオレフィン系樹脂(β)をポリオレフィン系廃プラスチックの相容化剤として用いた場合には、リサイクルして得られる成形品の耐衝撃性を改善することができるため好ましい。
【0242】
プロピレン系樹脂の1種以上および/またはエチレン系樹脂の1種以上と、オレフィン系樹脂(β)とを含有する樹脂組成物におけるオレフィン系樹脂(β)の含有割合は、特に限定されるものではないが、たとえば0.1質量%以上、好ましくは1~50質量%、より好ましくは2~30質量%である。樹脂組成物がこのような量でオレフィン系樹脂(β)を含有することにより、樹脂成分が好適な相容性を奏することができる。
【0243】
このようなオレフィン系樹脂(β)を含有する樹脂組成物は、公知の成形方法により成形体の製造に供することができる。成形方法としては、例えば、押出成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、パウダースラッシュ成形、カレンダー成形、発泡成形等の公知の成形方法が挙げられる。
【0244】
本発明に係るオレフィン系樹脂(β)を含有する上述の樹脂組成物から得られた成形体は、含まれる樹脂成分が高度に分散したものとなることことから、耐衝撃性に優れる。本発明に係るオレフィン系樹脂(β)を含む樹脂組成物は、プロピレン系樹脂とエチレン系樹脂の両方を含有する場合であっても、各成分が高度に分散することから、従来公知の相容化剤を用いた場合と比較して成形体が耐衝撃性に優れたものとなる。
【0245】
このような成形体は、公知の用途に制限なく用いることができ、たとえば、ドアトリム、リアーパッケージトリム、インストルメントパネル、ガスケット、シートバックガーニッシュ、コラムカバー、バンパー、フェンダー、サイドモール、ホイールカバー、マッドガード、ミラーカバー、計器盤、外部ドア、ボンネット、スポイラー、風よけ、ハブキャップ、鏡枠、ボディーパネル、保護用サイドモールディング、靴底、靴のミッドソール、インナーソール、ソール、サンダル、自動車用電線または機器用電線の電線シース、電線の絶縁体、その他針金・ケーブルの被覆、家電製品のハウジング、パッキン、ホットプレート、炊飯ジャー、ポットのボディーや洗濯機等の家電製品部材、バッテリー容器等の容器、電子部品包装用フィルム、防水シート、床材、天井材、壁紙、建材部品包装用シート、フローリングマット、床仕上げ材、ブラインド、パイプ、化粧シートまたは建材保護シート、テレビキャビネット、ステレオスピーカーボックス、ビデオキャビネット、各種収納家具、ユニット家具等の家電製品や家具製品、ドア、ドア枠、窓枠、廻縁、巾木、開口枠等の住宅部材、厨房、収納家具扉等の家具部材、オフィスフロアマット、カーペット滑り止めパッド、低温ヒートシーラブルフィルム、イージーピールフィルム、パッケージングフィルム、薬品個別包装材、グリップ、ガスケット、多層ホース、輸液ボトル、シャンプー等のサニタリー用ボトル、化粧品用ボトル・ケース、キャップ、キャップライナー、飲料水キャップのライナー、筆記用具等の文具用品、玩具、レジャー用品、使い捨ておむつ、使い捨て下着、生理用ナプキンなどの衛生用部材および伸縮性部材、衣装ケース、バケツ、洗面器、調理器具、その他各種ケース、コンテナ、農業のフィルム、運動場の設備、ボート・水上船の部品、ガーデン・ファーニチャ、培養に用いるローラーボトル及び培地ボトル、オムツタブ、滅菌ラップ、雑巾、寝具類、食品包装用フィルム、レトルト食器用容器、食品包装用トレイや飲料用カップ・ボトル、その他各種ボトル、カップ、シート、フィルム、チューブ、シリンジ、注射器の注射筒、アンプル、シャーレ等の医療用器、医療ケース、包帯静脈注射用のバッグ、ポーチ及びボトルのような液体貯蔵用コンテナ、医療用ガウン・エプロン、外科用ドレープ、家電・住宅用照明器具のカバー、自動車内装照明カバー、電気・電子部品におけるLEDランプカバー、その他表示装置のカバー、太陽電池封止用シートなどに使用できる。
【実施例0246】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0247】
<測定、評価方法>
以下の実施例および比較例において、各物性は、以下の方法により測定あるいは評価した。
【0248】
[分子量測定]
ポリマーサンプルの分子量および分子量分布は、カラムとして東ソー株式会社製TSKgel GMH6-HTを2本、および、TSKgel GMH6-HTLを2本(カラムサイズはいずれも内径7.5mm、長さ300mm)を直列接続した、ゲル浸透クロマトグラフ(東ソー株式会社製HLC-8321 GPC/HT型)を用いて測定した。移動相媒体は、o-ジクロロベンゼンに酸化防止剤としてBHT(和光純薬工業)0.025質量%を添加した媒体を用い、試料濃度0.15%(W/V)、流速1.0ml/分、140℃で測定した。標準ポリスチレンは、分子量が590~20,600,000については東ソー社製を用いた。得られたクロマトグラムはWaters製データ処理ソフトEmpower3を用いて、公知の方法によって、標準ポリスチレンサンプルを使用した検量線を用いて解析することで、数平均分子量Mn、重量平均分子量Mwおよび分子量分布Mw/Mnを算出した。
【0249】
[融点(Tm)、融解熱量(ΔH)、ガラス転移温度(Tg)の測定]
融点(Tm)、融解熱量(ΔH)およびガラス転移温度(Tg)は、以下の条件でDSC測定を行い、求めた。
示差走査熱量計〔SII社 DSC220〕を用いて、約5.0mgの試料を窒素雰囲気下で30℃から昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度で10分間保持した。さらに降温速度10℃/minで30℃まで冷却し、その温度で5分間保持した後、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温した。この2度目の昇温の際に観測される吸熱ピークを融解ピークとし、融解ピークが現れる温度を融点(Tm)として求めた。また、融解熱量(ΔH)は前記融解ピークの面積を算出し求めた。なお融解ピークが多峰性の場合は、全体の融解ピークの面積を算出し求めた。ガラス転移温度(Tg)は、2度目の昇温の際に、比熱の変化によりDSC曲線が屈曲し、ベースラインが平行移動する形で感知される。この屈曲より低温のベースラインの接線と、屈曲した部分で傾きが最大となる点の接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)とした。
【0250】
[各モノマー成分の組成]
後述のオレフィン系樹脂(β)の主鎖については、エチレンとプロピレンの共重合体の各モノマーから導かれる繰り返し単位は、エチレンの組成比(モル%)と融点(Tm)(℃)との相関による検量線より算出した。検量線の作成方法は、後述する実施例および比較例において、化合物(A-1-1、A-1-2、1)を用いない以外は同様に重合を実施し、さらに、連続供給するプロピレンとエチレンの供給割合を変化させることにより、エチレン組成割合の異なる複数のプロピレン-エチレン共重合体樹脂を得た。得られたプロピレン-エチレン共重合体樹脂について、後述の核磁気共鳴スペクトル分析で、エチレンの組成比を測定し、検量線を作成した。
【0251】
後述のオレフィン系樹脂(β)の側鎖については、エチレンとプロピレンの共重合体の各モノマーから導かれる繰り返し単位は、エチレンの組成比(モル%)と融点(Tm)(℃)との相関による検量線より算出した。検量線の作成方法は、後述する実施例および比較例において、化合物(B-1、2)を用いない以外は同様に重合を実施し、さらに、連続供給するプロピレンとエチレンの供給割合を変化させることにより、エチレン組成割合の異なる複数のプロピレン-エチレン共重合体樹脂を得た。得られたプロピレン-エチレン共重合体樹脂について、後述の核磁気共鳴スペクトル分析で、エチレンの組成比を測定し、検量線を作成した。
【0252】
(核磁気共鳴スペクトル分析:測定条件)
装置:日本電子製ECX400P型核磁気共鳴装置、測定核:1H(400MHz);13C (125MHz)、測定モード:シングルパルス、パルス幅:45°(5.25μ秒)、ポイント数:32k、測定範囲:20ppm(-4~16ppm)、繰り返し時間:7.0秒、積算回数:64回、測定溶媒:オルトジクロロベンゼン-d4、試料濃度:ca.20mg/0.6mL、測定温度:120℃、ウインドウ関数:exponential(BF:0.12Hz)、ケミカルシフト基準:オルトジクロロベンゼン(7.1ppm)。
エチレンとプロピレン系共重合体のエチレンおよびプロピレンの割合は125MHz 13C-NMR(日本電子ECX400P)から得られるエチレンに由来するピーク強度およびプロピレンに由来するピーク強度(積分値)によって測定、定量した。
【0253】
[末端ビニル率の測定]
末端不飽和環状オレフィン系共重合体の末端ビニル率の測定は、400MHz 1H-NMR(日本電子ECX400P)から得られる不飽和結合に由来するピークの強度比から末端の総不飽和量中のビニル基量として末端ビニル率を定量した。
【0254】
[マクロモノマーの割合]
後述のオレフィン系樹脂(β)については、オレフィン系樹脂に含まれるマクロモノマーの割合は以下の方法で算出した。
すなわち、マクロモノマーに由来する融解熱量ΔH(J/g)とマクロモノマー含量(重量%)との相関による検量線によりマクロモノマーの割合を算出した。
検量線の作成方法:後述する実施例および比較例において、化合物(B-1、2)を使用しない以外は同様に実施し、末端不飽和ポリエチレンを得た。回分式重合法により、得られた末端不飽和ポリエチレンとプロピレンとエチレンを化合物(B-1、2)を含む重合触媒により共重合した。ここで、末端不飽和ポリエチレンの装入量を変化させることにより、含まれるマクロモノマーの割合が異なるオレフィン系樹脂を複数種類採取した。得られた複数のオレフィン系樹脂のマクロモノマー含量(重量%)は、末端不飽和ポリエチレンの装入量とオレフィン樹脂の生成量の比から求め、融解熱量ΔH(J/g)は上述の方法により測定し、両数値の相関から検量線を作成した。
【0255】
[グラフト型オレフィン系重合体[R1]の確認]
ゲル浸透クロマトグラフにより得られるクロマトグラムをピーク分離することにより、マクロモノマーが消費されていることを確認し、グラフト型オレフィン系重合体[R1-1]~[R1-5]、[R1’-1]、[R1’-2]が生成していることを確認した。
【0256】
[側鎖本数の算出]
ゲル浸透クロマトグラフにより得られるクロマトグラムをピーク分離することにより、下記式により算出した。
(マクロモノマーの消費量÷マクロモノマーの数平均分子量)÷(主鎖の含量÷主鎖の数平均分子量)
【0257】
<試薬等>
以下の実施例および比較例においては、以下の試薬・化合物等を用いた。
トルエンは、GlassContour社製有機溶媒精製装置を用いて精製したものを用いた。
n-ヘプタンは富士フィルム和光純薬株式会社の高分子用を500mLアルミナカラムに通して用いた。
アイソパーE(エクソンモービルケミカル社製の炭化水素混合物の商品名)は500mLアルミナカラムに通して用いた。
アルミナカラムはE. Merck社の活性アルミナ90(中性, 活性度I)を150℃、4時間以上で乾燥処理したものを用いた。
メチルアルミノキサンとしては、東ソーファインケム社製の10wt%メチルアルミノキサン/トルエン溶液 MMAO-3Aを用いた。
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートは、旭硝子株式会社製のトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートをトルエンで0.3mMに希釈して用いた。
【0258】
重合触媒中の化合物[A]に相当する触媒成分として使用した(A-1-1)、(A-1-2)および化合物(1)としては、公知の方法に従って合成した下記式で表される化合物を用いた。
【0259】
【0260】
【0261】
【0262】
重合触媒中の化合物[B]に相当する触媒成分として使用した(B-1)および化合物(2)としては、公知の方法に従って合成した下記式で表される化合物を用いた。
【0263】
【0264】
【0265】
[実施例1]
<オレフィン系樹脂(β-1)の製造>
容積950mLの連続重合器に、その一つの供給口から、脱水精製したn-ヘプタンを804mL/hrの速度で供給し、同時に連続重合器の別の供給口から、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(0.3mmol/L)を39mL/hrの速度で、MMAO-3Aのトルエン溶液(25mmol/L)を57mL/hrの速度で、前記式(B-1)で表される遷移金属化合物のトルエン溶液(0.05mmol/L)を8mL/hrの速度で、前記式(A-1-1)で表される遷移金属化合物のトルエン溶液(0.06mmol/L)を42mL/hrの速度で連続的に供給した(成分全体の供給速度:950mL/hr)。また、同時に連続重合器の別の供給口から、プロピレンを924 g/hrの割合で、エチレンを234 g/hrの割合で連続供給し、重合温度110℃、全圧0.82MPa-G、滞留時間約60min、攪拌回転数970rpmの条件下で連続溶液重合を行った。重合器で生成したプロピレン/エチレン/ポリエチレングラフト型共重合体のヘプタン溶液は、重合器上壁部に設けられた排出口を介して流量約950mL/hrの速度で連続的に排出させ、採取瓶に重合反応液を回収した。得られた重合反応液を130℃にて10時間減圧乾燥した。その結果、オレフィン系樹脂(β-1)が約159g/hrの生産スピードで得られた。ゲル浸透クロマトグラフにより、末端不飽和ポリエチレンが消費されていることを確認し、グラフト型オレフィン系重合体[R1-1]が生成していることを確認した。オレフィン系樹脂(β-1)の分析結果を表8に示す。
【0266】
[実施例2]
<オレフィン系樹脂(β-2)の製造>
容積950mLの連続重合器に、その一つの供給口から、脱水精製したアイソパーEを835mL/hrの速度で供給し、同時に連続重合器の別の供給口から、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(0.3mmol/L)を18mL/hrの速度で、MMAO-3Aのトルエン溶液(25mmol/L)を57mL/hrの速度で、前記式(B-1)で表される遷移金属化合物のトルエン溶液(0.05mmol/L)を8mL/hrの速度で、前記式(A-1-2)で表される遷移金属化合物のトルエン溶液(0.03mmol/L)を32mL/hrの速度で連続的に供給した(成分全体の供給速度:950mL/hr)。また、同時に連続重合器の別の供給口から、プロピレンを924 g/hrの割合で、エチレンを234 g/hrの割合で連続供給し、重合温度110℃、全圧0.78MPa-G、滞留時間約60min、攪拌回転数970rpmの条件下で連続溶液重合を行った。 重合器で生成したプロピレン/エチレン/ポリエチレングラフト型共重合体のアイソパーE溶液は、重合器上壁部に設けられた排出口を介して流量約950mL/hrの速度で連続的に排出させ、採取瓶に重合反応液を回収した。得られた重合反応液を130℃にて10時間減圧乾燥した。その結果、オレフィン系樹脂(β-2)が約148g/hrの生産スピードで得られた。ゲル浸透クロマトグラフにより、末端不飽和ポリエチレンが消費されていることを確認し、グラフト型オレフィン系重合体[R1-2]が生成していることを確認した。オレフィン系樹脂(β-2)の分析結果を表8に示す。
【0267】
[実施例3]
<オレフィン系樹脂(β-3)の製造>
容積950mLの連続重合器に、その一つの供給口から、脱水精製したアイソパーEを866mL/hrの速度で供給し、同時に連続重合器の別の供給口から、MMAO-3Aのトルエン溶液(25mmol/L)を57mL/hrの速度で、前記式(B-1)で表される遷移金属化合物のトルエン溶液(0.07mmol/L)を17mL/hrの速度で、前記式(A-1-2)で表される遷移金属化合物のトルエン溶液(0.05mmol/L)を10mL/hrの速度で連続的に供給した(成分全体の供給速度:950mL/hr)。また、同時に連続重合器の別の供給口から、プロピレンを894g/hrの割合で、エチレンを195g/hrの割合で連続供給し、重合温度110℃、全圧0.78MPa-G、滞留時間約60min、攪拌回転数970rpmの条件下で連続溶液重合を行った。 重合器で生成したプロピレン/エチレン/ポリエチレングラフト型共重合体のアイソパーE溶液は、重合器上壁部に設けられた排出口を介して流量約950mL/hrの速度で連続的に排出させ、採取瓶に重合反応液を回収した。得られた重合反応液を130℃にて10時間減圧乾燥した。その結果、オレフィン系樹脂(β-3)が約135g/hrの生産スピードで得られた。ゲル浸透クロマトグラフにより、末端不飽和ポリエチレンが消費されていることを確認し、グラフト型オレフィン系重合体[R1-3]が生成していることを確認した。オレフィン系樹脂(β-3)の分析結果を表8に示す。
【0268】
[実施例4]
<オレフィン系樹脂(β-4)の製造>
容積950mLの連続重合器に、その一つの供給口から、脱水精製したアイソパーEを859mL/hrの速度で供給し、同時に連続重合器の別の供給口から、MMAO-3Aのトルエン溶液(25mmol/L)を57mL/hrの速度で、前記式(B-1)で表される遷移金属化合物のトルエン溶液(0.07mmol/L)を11mL/hrの速度で、前記式(A-1-2)で表される遷移金属化合物のトルエン溶液(0.05mmol/L)を23mL/hrの速度で連続的に供給した(成分全体の供給速度:950mL/hr)。また、同時に連続重合器の別の供給口から、プロピレンを894g/hrの割合で、エチレンを229g/hrの割合で連続供給し、重合温度110℃、全圧0.78MPa-G、滞留時間約60min、攪拌回転数970rpmの条件下で連続溶液重合を行った。重合器で生成したプロピレン/エチレン/ポリエチレングラフト型共重合体のアイソパーE溶液は、重合器上壁部に設けられた排出口を介して流量約950mL/hrの速度で連続的に排出させ、採取瓶に重合反応液を回収した。得られた重合反応液を130℃にて10時間減圧乾燥した。その結果、オレフィン系樹脂(β-4)が約96g/hrの生産スピードで得られた。ゲル浸透クロマトグラフにより、末端不飽和ポリエチレンが消費されていることを確認し、グラフト型オレフィン系重合体[R1-4]が生成していることを確認した。オレフィン系樹脂(β-4)の分析結果を表8に示す。
【0269】
[実施例5]
<オレフィン系樹脂(β-5)の製造>
容積950mLの連続重合器に、その一つの供給口から、脱水精製したアイソパーEを855mL/hrの速度で供給し、同時に連続重合器の別の供給口から、MMAO-3Aのトルエン溶液(25mmol/L)を57mL/hrの速度で、前記式(B-1)で表される遷移金属化合物のトルエン溶液(0.07mmol/L)を12mL/hrの速度で、前記式(A-1-2)で表される遷移金属化合物のトルエン溶液(0.05mmol/L)を26mL/hrの速度で連続的に供給した(成分全体の供給速度:950mL/hr)。また、同時に連続重合器の別の供給口から、プロピレンを894 g/hrの割合で、エチレンを191 g/hrの割合で連続供給し、重合温度110℃、全圧0.78MPa-G、滞留時間約60min、攪拌回転数970rpmの条件下で連続溶液重合を行った。 重合器で生成したプロピレン/エチレン/ポリエチレングラフト型共重合体のアイソパーE溶液は、重合器上壁部に設けられた排出口を介して流量約950mL/hrの速度で連続的に排出させ、採取瓶に重合反応液を回収した。得られた重合反応液を130℃にて10時間減圧乾燥した。その結果、オレフィン系樹脂(β-5)が約81g/hrの生産スピードで得られた。ゲル浸透クロマトグラフにより、末端不飽和ポリエチレンが消費されていることを確認し、グラフト型オレフィン系重合体[R1-5]が生成していることを確認した。オレフィン系樹脂(β-5)の分析結果を表8に示す。
【0270】
[比較例1]
<オレフィン系樹脂(β’-1)の製造>
容積950mLの連続重合器に、その一つの供給口から、脱水精製したn-ヘプタンを785mL/hrの速度で供給し、同時に連続重合器の別の供給口から、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(0.3mmol/L)を43mL/hrの速度で、MMAO-3Aのトルエン溶液(25mmol/L)を57mL/hrの速度で、前記式(B-1)で表される遷移金属化合物のトルエン溶液(0.05mmol/L)を8mL/hrの速度で、前記式化合物(1)で表される遷移金属化合物のトルエン溶液(0.05mmol/L)を57mL/hrの速度で連続的に供給した(成分全体の供給速度:950mL/hr)。また、同時に連続重合器の別の供給口から、プロピレンを924 g/hrの割合で、エチレンを234 g/hrの割合で連続供給し、重合温度110℃、全圧0.82MPa-G、滞留時間約60min、攪拌回転数970rpmの条件下で連続溶液重合を行った。重合器で生成したプロピレン/エチレン/ポリエチレングラフト型共重合体のヘプタン溶液は、重合器上壁部に設けられた排出口を介して流量約950mL/hrの速度で連続的に排出させ、採取瓶に重合反応液を回収した。得られた重合反応液を130℃にて10時間減圧乾燥した。その結果、オレフィン系樹脂(β’-1)が約111g/hrの生産スピードで得られた。ゲル浸透クロマトグラフにより、末端不飽和ポリエチレンが消費されていることを確認し、グラフト型オレフィン系重合体[R1’-1]が生成していることを確認した。オレフィン系樹脂(β’-1)の分析結果を表8に示す。
【0271】
[比較例2]
<オレフィン系樹脂(β’-2)の製造>
容積950mLの連続重合器に、その一つの供給口から、脱水精製したアイソパーEを811mL/hrの速度で供給し、同時に連続重合器の別の供給口から、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(1mmol/L)を27mL/hrの速度で、MMAO-3Aのトルエン溶液(25mmol/L)を57mL/hrの速度で、前記式化合物(2)で表される遷移金属化合物のトルエン溶液(0.2mmol/L)を31mL/hrの速度で、前記式(A-1-2)で表される遷移金属化合物のトルエン溶液(0.02mmol/L)を24mL/hrの速度で連続的に供給した(成分全体の供給速度:950mL/hr)。また、同時に連続重合器の別の供給口から、プロピレンを942 g/hrの割合で、エチレンを90 g/hrの割合で連続供給し、重合温度100℃、全圧0.78MPa-G、滞留時間約60min、攪拌回転数970rpmの条件下で連続溶液重合を行った。重合器で生成したプロピレン/エチレン/ポリエチレングラフト型共重合体のアイソパーE溶液は、重合器上壁部に設けられた排出口を介して流量約950mL/hrの速度で連続的に排出させ、採取瓶に重合反応液を回収した。得られた重合反応液を130℃にて10時間減圧乾燥した。その結果、オレフィン系樹脂(β’-2)が約148g/hrの生産スピードで得られた。ゲル浸透クロマトグラフにより、末端不飽和ポリエチレンが消費されていることを確認し、グラフト型オレフィン系重合体[R1’-2]が生成していることを確認した。オレフィン系樹脂(β’-2)の分析結果を表8に示す。
【0272】
【0273】
[実施例6~10および比較例3~5]
オレフィン系樹脂組成物の調製
(株)東洋精機製作所製ラボプラストミルに、表9に記載の原材料を、表9に記載の配合比(質量部)で入れ、200℃、60rpmの条件で約5分間溶融混錬することで、オレフィン系樹脂組成物を調製した。
原材料のオレフィン系樹脂(β-1)~(β-5)、(β’-1)、(β’-2)は、それぞれ上記実施例1~5、比較例1、2で得たものである。
原材料のプロピレン系樹脂(α1)およびエチレン系樹脂(α2)としては、以下のものを用いた。
[プロピレン系樹脂(α1)]
市販のホモプロピレン((株)プライムポリマー製、商品名:プライムポリプロF113G、MFR(230℃、2.16kg荷重)=3.0g/10分)を用いた。
[エチレン系樹脂(α2)]
市販のメタロセン直鎖状低密度ポリエチレン((株)プライムポリマー製、商品名:エボリューSP2540、MFR(190℃、2.16kg荷重)=3.8g/10分)を用いた。
【0274】
成形体物性の測定
調製したオレフィン系樹脂組成物の成形体物性値を、以下の方法により測定した。結果を表9に示す。
[アイゾット(Izod)衝撃強度]
200℃に設定した油圧式熱プレス成形機を用いて、オレフィン系樹脂組成物を6分間加熱後、10MPaの加圧下で2分間成形した。その後、20℃、10MPaの加圧下で2分間冷却することで、厚み3mmのシートを作製した。
成形から室温で72時間経過後、作製したシートから、ASTM D256に準拠して、下記の条件で試験を行った時の、アイゾット(Izod)衝撃強度を測定した。
<試験条件>
ハンマー容量:3.92J
空振り角度:149.0℃
ノッチは機械加工である
温度:23℃
【0275】
【0276】
表8に示されるように、メタロセン化合物(化合物(1))を用いた比較例1では、プロピレンの共重合性が高く、それにより側鎖のエチレン組成が低下および側鎖の合計分子量が低く本発明の要件を満たす共重合体は得られない結果となった。メタロセン化合物(化合物(2))を用いた比較例2では、プロピレンの共重合性が低いために、所望の主鎖プロピレン組成を得るためにはエチレンの装入量を低減する必要があり、それにより側鎖のエチレン組成が低下および分子量が低下し、かつ、化合物(2)のマクロモノマー共重合性能が低いためマクロモノマーの転化率が低くなることで、側鎖の合計分子量が低く本発明の要件を満たす共重合体は得られない結果となった。
また表9に示されるように、本発明の要件を満たす共重合体を含む実施例のオレフィン系樹脂組成物は、アイゾット(Izod)衝撃強度が比較例のオレフィン系樹脂組成物よりも高く耐衝撃性に優れることから、適切な触媒を組み合わせることにより、単一の反応器で主鎖と側鎖とで組成の異なるグラフト共重合体の合成が可能であった。