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特開2024-162550レジスト組成物及びレジストパターン形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162550
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】レジスト組成物及びレジストパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/039 20060101AFI20241114BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20241114BHJP
   C08F 220/18 20060101ALI20241114BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G03F7/039 601
G03F7/004 501
G03F7/004 503A
C08F220/18
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078151
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】染谷 康夫
(72)【発明者】
【氏名】大星 友希
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4J100
【Fターム(参考)】
2H197AA12
2H197CA06
2H197CA08
2H197CA09
2H197CA10
2H197CE01
2H197CE10
2H197GA01
2H197HA03
2H225AF24P
2H225AF25P
2H225AF53P
2H225AF54P
2H225AF63P
2H225AF67P
2H225AF68P
2H225AF83P
2H225AF99P
2H225AH17
2H225AH19
2H225AH36
2H225AH49
2H225AJ13
2H225AJ52
2H225AJ53
2H225AJ54
2H225AJ56
2H225AJ59
2H225AM22P
2H225AM23P
2H225AM32P
2H225AN38P
2H225AN39P
2H225AN63P
2H225AN65P
2H225BA01P
2H225BA26P
2H225CA12
2H225CB09
2H225CC03
2H225CC15
4J100AB07P
4J100AJ02R
4J100AJ02T
4J100AL03T
4J100AL08P
4J100AL08Q
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4J100AL08S
4J100AL08T
4J100AL14P
4J100BA03P
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4J100BA11P
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4J100BC03P
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4J100BC12S
4J100BC53P
4J100BC53Q
4J100BC84P
4J100BC84Q
4J100CA05
4J100DA01
4J100DA04
4J100FA03
4J100FA04
4J100JA38
4J100JA43
(57)【要約】
【課題】解像度に優れ、且つクラックが生じにくく、ボイドが発生しにくいレジスト組成物、及び該レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法を提供する。
【解決手段】露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物であって、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)と、可塑剤成分(Z)とを含有し、前記基材成分(A)は、明細書中に記載の一般式(a1-1)で表される酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位(a1)と、ラクトン含有環式基、-SO-含有環式基又はカーボネート含有環式基のいずれかを含む構成単位(a2)とを有し、かつ芳香環を含まない、樹脂成分(A1)を含み、前記可塑剤成分(Z)は、明細書中に記載の一般式(z1-1)で表される構成単位(z1)を有し、前記樹脂成分(A1)100質量部に対して、前記可塑剤成分(Z)の含有量が20質量部以下である、レジスト組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物であって、
酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)と、
露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)と、
可塑剤成分(Z)と
を含有し、
前記基材成分(A)は、下記一般式(a1-1)で表される酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位(a1)と、
ラクトン含有環式基、-SO-含有環式基又はカーボネート含有環式基のいずれかを含む構成単位(a2)とを有し、かつ芳香環を含まない、樹脂成分(A1)を含み、
前記可塑剤成分(Z)は、下記一般式(z1-1)で表される構成単位(z1)を有し、
前記樹脂成分(A1)100質量部に対して、前記可塑剤成分(Z)の含有量が20質量部以下である、レジスト組成物。
【化1】

〔一般式(a1-1)中、
R1は、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基である。
Va01は、2価の連結基である。
na01は、0~2の整数である。
Ra01は、鎖状のアルキル基である。
Ya01は炭素原子である。
Xa01は、Ya01と共に単環の脂環式炭化水素基を形成する基である。この単環の脂環式炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。〕
【化2】

〔一般式(z1-1)中、
Rは、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基である。
Vzは、単結合又はヘテロ原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基である。
Rzは水素原子又は下記一般式(z1-r-1)で表される基である。〕
【化3】

〔一般式(z1-r-1)中、
Rz01は、置換基を有していてもよい炭化水素基である。
Rz02は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基である。
Rz01とRz02とは相互に結合して環構造を形成していてもよい。
*は結合手である。〕
【請求項2】
前記可塑剤成分(Z)が酸解離性基を含まない、請求項1に記載のレジスト組成物。
【請求項3】
前記酸発生剤成分(B)がイオン性化合物を含む、請求項1又は2に記載のレジスト組成物。
【請求項4】
さらに、前記酸発生剤成分(B)から露光により発生する酸の拡散を制御する光崩壊性塩基成分(D)を含有する、請求項1又は2に記載のレジスト組成物。
【請求項5】
前記樹脂成分(A1)は、さらに、極性基含有脂肪族炭化水素基を含む構成単位(a3)を有する、請求項1又は2に記載のレジスト組成物。
【請求項6】
支持体上に、請求項1又は2に記載のレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、および前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程を含む、レジストパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト組成物及びレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィー技術においては、例えば基板の上にレジスト材料からなるレジスト膜を形成し、該レジスト膜に対して選択的露光を行い、現像処理を施すことにより、前記レジスト膜に所定形状のレジストパターンを形成する工程が行われる。レジスト膜の露光部が現像液に溶解する特性に変化するレジスト材料をポジ型、レジスト膜の露光部が現像液に溶解しない特性に変化するレジスト材料をネガ型という。
近年、半導体素子や液晶表示素子の製造においては、リソグラフィー技術の進歩により急速にパターンの微細化が進んでいる。微細化の手法としては、一般に、露光光源の短波長化(高エネルギー化)が行われている。具体的には、従来は、g線、i線に代表される紫外線が用いられていたが、現在では、KrFエキシマレーザーや、ArFエキシマレーザーを用いた半導体素子の量産が行われている。また、これらのエキシマレーザーより短波長(高エネルギー)のEUV(極端紫外線)や、EB(電子線)、X線などについても検討が行われている。
【0003】
レジスト材料には、これらの露光光源に対する感度、微細な寸法のパターンを再現できる解像性等のリソグラフィー特性が求められる。
このような要求を満たすレジスト材料として、従来、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分と、露光により酸を発生する酸発生剤成分と、を含有する化学増幅型レジスト組成物が用いられている。
上記現像液がアルカリ現像液(アルカリ現像プロセス)の場合、ポジ型の化学増幅型レジスト組成物としては、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂成分(ベース樹脂)と酸発生剤成分とを含有するものが一般的に用いられている。かかるレジスト組成物を用いて形成されるレジスト膜は、レジストパターン形成時に選択的露光を行うと、露光部において、酸発生剤成分から酸が発生し、該酸の作用によりベース樹脂の極性が増大して、レジスト膜の露光部がアルカリ現像液に対して可溶となる。そのためアルカリ現像することにより、レジスト膜の未露光部がパターンとして残るポジ型パターンが形成される。
一方で、このような化学増幅型レジスト組成物を、有機溶剤を含む現像液(有機系現像液)を用いた溶剤現像プロセスに適用した場合、ベース樹脂の極性が増大すると相対的に有機系現像液に対する溶解性が低下するため、レジスト膜の未露光部が有機系現像液により溶解、除去されて、レジスト膜の露光部がパターンとして残るネガ型のレジストパターンが形成される。このようにネガ型のレジストパターンを形成する溶剤現像プロセスをネガ型現像プロセスということがある。
【0004】
これまで、化学増幅型レジスト組成物のベース樹脂としては、例えばKrFエキシマレーザー(248nm)に対し、透明性が高いポリヒドロキシスチレン(PHS)やその水酸基を酸解離性の溶解抑制基で保護した樹脂(PHS系樹脂)が用いられてきた。また、例えばArFエキシマレーザー(193nm)に対し、(メタ)アクリル酸のカルボキシ基における水酸基を酸解離性の溶解抑制基で保護した樹脂((メタ)アクリル系樹脂)が用いられてきた。
【0005】
例えば、特許文献1には、リソグラフィー特性及び密着性に優れ、スカムが低減されたレジスト組成物、及び該レジスト組成物を用いるレジストパターン形成方法を提供することを目的とし、アルコール性水酸基を有する構成単位を有する高分子化合物(C)((C)成分)用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-168504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
最近では、リソグラフィー技術のさらなる進歩、応用分野の拡大等が進み、半導体素子等を製造する際には、微細なパターンを良好な形状で形成できる技術がいっそう求められる。
しかしながら、パターンの更なる微細化に伴い、パターンの硬度を上げると外部応力等によりレジストパターンにクラックが発生しやすくなるという問題がある。また、パターン中のレジスト部に発生するボイド(空孔)の影響により所望のレジストパターン形状が得られにくいという問題がある。さらに、従来のレジスト組成物を用いて、解像力をより良好なものとするには、未だ改良の余地がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、解像度に優れ、且つクラックが生じにくく、ボイドが発生しにくいレジスト組成物、及び該レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の第1の態様は、露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物であって、
酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)と、
露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)と、
可塑剤成分(Z)と
を含有し、
前記基材成分(A)は、下記一般式(a1-1)で表される酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位(a1)と、ラクトン含有環式基、-SO-含有環式基又はカーボネート含有環式基のいずれかを含む構成単位(a2)とを有し、かつ芳香環を含まない、樹脂成分(A1)を含み、
前記可塑剤成分(Z)は、下記一般式(z1-1)で表される構成単位(z1)を有し、
前記樹脂成分(A1)100質量部に対して、前記可塑剤成分(Z)の含有量が20質量部以下である、レジスト組成物。
【0010】
【化1】

【0011】
〔一般式(a1-1)中、
R1は、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基である。
Va01は、2価の連結基である。
na01は、0~2の整数である。
Ra01は、鎖状のアルキル基である。
Ya01は炭素原子である。
Xa01は、Ya01と共に単環の脂環式炭化水素基を形成する基である。この単環の脂環式炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。〕
【0012】
【化2】

【0013】
〔一般式(z1-1)中、
Rは、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基である。
Vzは、単結合又はヘテロ原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基である。
Rzは水素原子又は下記一般式(z1-r-1)で表される基である。〕
【0014】
【化3】

【0015】
〔一般式(z1-r-1)中、
Rz01は、置換基を有していてもよい炭化水素基である。
Rz02は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基である。
Rz01とRz02とは相互に結合して環構造を形成していてもよい。
*は結合手である。〕
【0016】
本発明の第2の態様は、支持体上に、前記第1の態様に係るレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、および前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程を含む、レジストパターン形成方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、解像度に優れ、且つクラックが生じにくく、ボイドが発生しにくいレジスト組成物、及び該レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書及び本特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。アルコキシ基中のアルキル基も同様である。
「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「ハロゲン化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であり、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「フッ素化アルキル基」又は「フッ素化アルキレン基」は、アルキル基又はアルキレン基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基をいう。
「構成単位」とは、高分子化合物(樹脂、重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「置換基を有していてもよい」と記載する場合、水素原子(-H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(-CH-)を2価の基で置換する場合との両方を含む。
「露光」は、放射線の照射全般を含む概念とする。
【0019】
「基材成分」とは、膜形成能を有する有機化合物であり、好ましくは分子量が500以上の有機化合物が用いられる。該有機化合物の分子量が500以上であることにより、膜形成能が向上し、加えて、ナノレベルのレジストパターンを形成しやすくなる。基材成分として用いられる有機化合物は、非重合体と重合体とに大別される。非重合体としては、通常、分子量が500以上4000未満のものが用いられる。以下「低分子化合物」という場合は、分子量が500以上4000未満の非重合体を示す。重合体としては、通常、分子量が1000以上のものが用いられる。以下「樹脂」、「高分子化合物」又は「ポリマー」という場合は、分子量が1000以上の重合体を示す。重合体の分子量としては、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量を用いるものとする。
【0020】
「アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、アクリル酸エステルのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「アクリル酸エステル」は、アクリル酸(CH=CH-COOH)のカルボキシ基末端の水素原子が有機基で置換された化合物である。
アクリル酸エステルは、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該α位の炭素原子に結合した水素原子を置換する置換基(Rα0)は、水素原子以外の原子又は基であり、例えば炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基等が挙げられる。また、置換基(Rα0)がエステル結合を含む置換基で置換されたイタコン酸ジエステルや、置換基(Rα0)がヒドロキシアルキル基やその水酸基を修飾した基で置換されたαヒドロキシアクリルエステルも含むものとする。なお、アクリル酸エステルのα位の炭素原子とは、特に断りがない限り、アクリル酸のカルボニル基が結合している炭素原子のことである。
以下、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されたアクリル酸エステルを、α置換アクリル酸エステルということがある。また、アクリル酸エステルとα置換アクリル酸エステルとを包括して「(α置換)アクリル酸エステル」ということがある。
【0021】
本明細書及び本特許請求の範囲において、化学式で表される構造によっては、不斉炭素が存在し、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得るものがある。その場合は一つの化学式でそれら異性体を代表して表す。それらの異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0022】
(レジスト組成物)
本発明の第1の態様に係るレジスト組成物は、露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物であって、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)(以下「(A)成分」ともいう)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)(以下「(B)成分」ともいう)と、可塑剤成分(Z)(以下「(Z)成分」ともいう)とを含有し、前記基材成分(A)は、一般式(a1-1)で表される酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位(a1)と、ラクトン含有環式基、-SO-含有環式基又はカーボネート含有環式基のいずれかを含む構成単位(a2)とを有し、かつ芳香環を含まない、樹脂成分(A1)(以下「(A1)成分」ともいう)を含み、前記可塑剤成分(Z)は、一般式(z1-1)で表される構成単位(z1)を有し、前記樹脂成分(A1)100質量部に対して、前記可塑剤成分(Z)の含有量が20質量部以下である。
かかるレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成すると、クラック耐性、ボイド耐性、及び優れた解像力を両立し、リソグラフィー特性が優れたレジスト膜を形成することができる。
【0023】
かかるレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成し、該レジスト膜に対して選択的露光を行うと、該レジスト膜の露光部では酸が発生し、該酸の作用により(A)成分の現像液に対する溶解性が変化する一方で、該レジスト膜の未露光部では(A)成分の現像液に対する溶解性が変化しないため、該レジスト膜の露光部と未露光部との間で現像液に対する溶解性の差が生じる。そのため、該レジスト膜を現像すると、該レジスト組成物がポジ型の場合はレジスト膜露光部が溶解除去されてポジ型のレジストパターンが形成され、該レジスト組成物がネガ型の場合はレジスト膜未露光部が溶解除去されてネガ型のレジストパターンが形成される。
【0024】
本明細書においては、レジスト膜露光部が溶解除去されてポジ型レジストパターンを形成するレジスト組成物をポジ型レジスト組成物といい、レジスト膜未露光部が溶解除去されてネガ型レジストパターンを形成するレジスト組成物をネガ型レジスト組成物という。本発明の実施形態に係るレジスト組成物は、ポジ型レジスト組成物であってもよく、ネガ型レジスト組成物であってもよい。また、本発明の実施形態に係るレジスト組成物は、レジストパターン形成時の現像処理にアルカリ現像液を用いるアルカリ現像プロセス用であってもよいし、該現像処理に有機溶剤を含む現像液(有機系現像液)を用いる溶剤現像プロセス用であってもよい。
【0025】
本発明の実施形態に係るレジスト組成物において、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する(A)成分は、酸の作用により極性が増大する一般式(a1-1)で表される酸分解性基を含む構成単位(a1)と、ラクトン含有環式基、-SO-含有環式基又はカーボネート含有環式基のいずれかを含む構成単位(a2)とを有し、かつ芳香環を含まない樹脂成分(A1)を含む。
【0026】
(A)成分は、露光により酸を発生してもよく、その場合、(A)成分は、「露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分」となる。(A)成分が露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分である場合、後述する(A1)成分が、露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する高分子化合物であることが好ましい。このような高分子化合物としては、露光により酸を発生する構成単位を有する樹脂を用いることができる。露光により酸を発生する構成単位としては、公知のものを用いることができる。
【0027】
本発明の実施形態に係るレジスト組成物において、基材成分(A)は酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するため、アルカリ現像プロセスにおいては、現像時に、レジスト膜のアルカリ現像液に対する溶解性が高まる。
また、本発明の実施形態に係るレジスト組成物において、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)は、例えば公知のものが挙げられる。
本発明の実施形態に係るレジスト組成物は、可塑剤成分(Z)を特定量含有させることで、クラック耐性とボイド発生の抑制とを両立させることができる。これは、前記レジスト組成物を用いて形成したレジスト膜中に可塑剤成分(Z)が存在することにより、レジスト膜の応力が緩和されるためと推測される。
【0028】
また、基材成分(A)が含む構成単位(a1)は単環構造を含むため、可塑剤成分(Z)と基材成分(A)中の単環構造の酸解離性基の組み合わせにより、膜中で適度な可塑効果が発揮されることで外部応力に対する影響が緩和され、クラックの発生が低減される。更に、レジスト膜の形成の際のボイド発生の要因となる生成物が、レジスト膜外へ放出されやすくなり、ボイドの発生を抑制し得る。そして適度な可塑効果によってレジスト膜中の反応性も向上し、加えて基材成分(A)中の単環構造の酸解離性基によって現像液溶解性が向上し、解像力も向上すると推測される。
【0029】
<(A)成分>
本発明の実施形態に係るレジスト組成物において、(A)成分は、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する。
(A1)成分を用いることにより、露光前後で基材成分の極性が変化するため、アルカリ現像プロセスだけでなく、溶剤現像プロセスにおいても、良好な現像コントラストを得ることができる。
(A)成分としては、少なくとも(A1)成分が用いられ、該(A1)成分とともに他の高分子化合物及び/又は低分子化合物を併用してもよい。
【0030】
アルカリ現像プロセスを適用する場合、該(A1)成分を含む基材成分は、露光前はアルカリ現像液に対して難溶性であり、例えば露光により(B)成分から酸が発生すると、該酸の作用により極性が増大してアルカリ現像液に対する溶解性が増大する。そのため、レジストパターンの形成において、該レジスト組成物を支持体上に塗布して得られるレジスト膜に対して選択的に露光すると、レジスト膜露光部はアルカリ現像液に対して難溶性から可溶性に変化する一方で、レジスト膜未露光部はアルカリ難溶性のまま変化しないため、アルカリ現像することによりポジ型レジストパターンが形成される。
【0031】
一方、溶剤現像プロセスを適用する場合、該(A1)成分を含む基材成分は、露光前は有機系現像液に対して溶解性が高く、例えば露光により(B)成分から酸が発生すると、該酸の作用により極性が高くなり、有機系現像液に対する溶解性が減少する。そのため、レジストパターンの形成において、当該レジスト組成物を支持体上に塗布して得られるレジスト膜に対して選択的に露光すると、レジスト膜露光部は有機系現像液に対して可溶性から難溶性に変化する一方で、レジスト膜未露光部は可溶性のまま変化しないため、有機系現像液で現像することにより、露光部と未露光部との間でコントラストをつけることができ、ネガ型レジストパターンが形成される。
【0032】
本発明の実施形態に係るレジスト組成物において、(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
・(A1)成分について
(A1)成分は、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂成分である。
(A1)成分は、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位(a1)と、ラクトン含有環式基、-SO-含有環式基又はカーボネート含有環式基のいずれかを含む構成単位(a2)とを有し、かつ芳香環を含まない樹脂成分である。
(A1)成分は、構成単位(a1)及び構成単位(a2)に加え、必要に応じてその他構成単位を有するものでもよい。
【0034】
≪構成単位(a1)≫
構成単位(a1)は、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位である。
「酸分解性基」は、酸の作用により、当該酸分解性基の構造中の少なくとも一部の結合が開裂し得る酸分解性を有する基である。
酸の作用により極性が増大する酸分解性基としては、例えば、酸の作用により分解して極性基を生じる基が挙げられる。
極性基としては、例えばカルボキシ基、水酸基、アミノ基、スルホ基(-SOH)等が挙げられる。これらのなかでも、構造中に-OHを含有する極性基(以下「OH含有極性基」ということがある。)が好ましく、カルボキシ基または水酸基がより好ましく、カルボキシ基が特に好ましい。
酸分解性基としてより具体的には、前記極性基が酸解離性基で保護された基(例えばOH含有極性基の水素原子を、酸解離性基で保護した基)が挙げられる。
【0035】
ここで「酸解離性基」とは、(i)酸の作用により、当該酸解離性基と該酸解離性基に隣接する原子との間の結合が開裂し得る酸解離性を有する基、又は、(ii)酸の作用により一部の結合が開裂した後、さらに脱炭酸反応が生じることにより、当該酸解離性基と該酸解離性基に隣接する原子との間の結合が開裂し得る基、の双方をいう。
酸分解性基を構成する酸解離性基は、当該酸解離性基の解離により生成する極性基よりも極性の低い基であることが必要で、これにより、酸の作用により該酸解離性基が解離した際に、該酸解離性基よりも極性の高い極性基が生じて極性が増大する。その結果、(A1)成分全体の極性が増大する。極性が増大することにより、相対的に、現像液に対する溶解性が変化し、現像液がアルカリ現像液の場合には溶解性が増大し、現像液が有機系現像液の場合には溶解性が減少する。
【0036】
酸解離性基としては、これまで、化学増幅型レジスト組成物用のベース樹脂の酸解離性基として提案されているものが挙げられる。
化学増幅型レジスト組成物用のベース樹脂の酸解離性基として提案されているものとして具体的には、「アセタール型酸解離性基」、「第3級アルキルエステル型酸解離性基」、「第3級アルキルオキシカルボニル酸解離性基」が挙げられる。
【0037】
構成単位(a1)は、下記一般式(a1-1)で表される酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位(a1)を含む。
【0038】
【化4】
【0039】
〔一般式(a1-1)中、
R1は、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基である。
Va01は、2価の連結基である。
na01は、0~2の整数である。
Ra01は、鎖状のアルキル基である。
Ya01は炭素原子である。
Xa01は、Ya01と共に単環の脂環式炭化水素基を形成する基である。この単環の脂環式炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。〕
【0040】
前記一般式(a1-1)中、R1が表す炭素原子数1~5のアルキル基は、炭素原子数1~5の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基は、前記炭素原子数1~5のアルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基である。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
R1としては、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子又はメチル基が最も好ましい。
【0041】
前記一般式(a1-1)中、Va01が表す2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が好適に挙げられる。
【0042】
Va01における2価の炭化水素基としての脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
該脂肪族炭化水素基として、より具体的には、直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、又は、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0043】
前記直鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が1~10であることが好ましく、炭素原子数1~6がより好ましく、炭素原子数1~4がさらに好ましく、炭素原子数1~3が最も好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]、ペンタメチレン基[-(CH-]等が挙げられる。
前記分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が2~10であることが好ましく、炭素原子数3~6がより好ましく、炭素原子数3又は4がさらに好ましく、炭素原子数3が最も好ましい。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基;-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-、-C(CHCH-CH-等のアルキルエチレン基;-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0044】
前記構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、前記直鎖状の脂肪族炭化水素基または前記分岐鎖状の脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素原子数が3~20であることが好ましく、炭素原子数3~12であることがより好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式であってもよく、単環式であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては炭素原子数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0045】
Va01がヘテロ原子を含む2価の連結基である場合、該連結基として好ましいものとしては、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-NH-、-NH-C(=NH)-(Hはアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい。)、-S-、-S(=O)-、-S(=O)-O-、一般式-Y21-O-Y22-、-Y21-O-、-Y21-C(=O)-O-、-C(=O)-O-Y21-、-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-、-Y21-O-C(=O)-Y22-または-Y21-S(=O)-O-Y22-で表される基[式中、Y21およびY22はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、Oは酸素原子であり、m”は0~3の整数である。]等が挙げられる。
前記へテロ原子を含む2価の連結基が-C(=O)-NH-、-C(=O)-NH-C(=O)-、-NH-、-NH-C(=NH)-の場合、そのHはアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい。該置換基(アルキル基、アシル基等)は、炭素原子数が1~10であることが好ましく、1~8であることがさらに好ましく、1~5であることが特に好ましい。
一般式-Y21-O-Y22-、-Y21-O-、-Y21-C(=O)-O-、-C(=O)-O-Y21-、-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-、-Y21-O-C(=O)-Y22-または-Y21-S(=O)-O-Y22-中、Y21およびY22は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。該2価の炭化水素基としては、前記Va01における2価の連結基としての説明で挙げた(置換基を有していてもよい2価の炭化水素基)と同様のものが挙げられる。
21としては、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基またはエチレン基が特に好ましい。
22としては、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチレン基、エチレン基またはアルキルメチレン基がより好ましい。該アルキルメチレン基におけるアルキル基は、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~3の直鎖状のアルキル基がより好ましく、メチル基が最も好ましい。
式-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-で表される基において、m”は0~3の整数であり、0~2の整数であることが好ましく、0または1がより好ましく、1が特に好ましい。つまり、式-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-で表される基としては、式-Y21-C(=O)-O-Y22-で表される基が特に好ましい。なかでも、式-(CHa’-C(=O)-O-(CHb’-で表される基が好ましい。該式中、a’は、1~10の整数であり、1~8の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。b’は、1~10の整数であり、1~8の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。
【0046】
上記の中でも、Va01としては、エステル結合[-C(=O)-O-]、エーテル結合(-O-)、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、またはこれらの組合せであることが好ましい。
【0047】
前記一般式(a1-1)中、na01は、0~2の整数であり、0が好ましい。
【0048】
本発明の実施形態に係る構成単位(a1)は、上記極性基のうち、カルボキシ基を保護する酸解離性基として、下記の一般式(a1-r-1)で表される酸解離性基を含む。
【0049】
【化5】
【0050】
〔式(a1-r-1)中、
Ra01は、鎖状のアルキル基である。
Ya01は炭素原子である。
Xa01は、Ya01と共に単環の脂環式炭化水素基を形成する基である。この単環の脂環式炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。
*は結合手である。〕
【0051】
一般式(a1-1)及び式(a1-r-1)中、Ra01が表す鎖状のアルキル基は、炭素原子数が1~5であることが好ましく、炭素原子数が1~4がより好ましく、炭素原子数1または2がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基またはn-ブチル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。
【0052】
一般式(a1-1)及び式(a1-r-1)中、Xa01がYa01と共に形成する単環の脂環式炭化水素基は、モノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~12のものが好ましく、3~8のものがより好ましく、3~6のものがさらに好ましい。具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン等が挙げられる。
【0053】
前記式(a1-r-1)で表される基の具体例を以下に挙げる。
【0054】
【化6】
【0055】
以下に前記式(a1-1)で表される構成単位の具体例を示す。以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す。
【0056】
【化7】
【0057】
【化8】
【0058】
【化9】
【0059】
(A1)成分中の構成単位(a1)の割合は、該(A1)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、5~80モル%が好ましく、5~75モル%がより好ましく、10~70モル%がさらに好ましく、10~60モル%が更に好ましく、40~60モル%が特に好ましい。
構成単位(a1)の割合を、前記の好ましい範囲の下限値以上とすることによって、感度、解像性、ラフネス改善等のリソグラフィー特性が向上する。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、他の構成単位とのバランスを取ることができ、種々のリソグラフィー特性が良好となる。
【0060】
構成単位(a2)について:
(A1)成分は、構成単位(a1)に加えて、さらに、ラクトン含有環式基、-SO-含有環式基又はカーボネート含有環式基を含む構成単位(a2)(但し、構成単位(a1)に該当するものを除く)を有する。
構成単位(a2)のラクトン含有環式基、-SO-含有環式基又はカーボネート含有環式基は、(A1)成分をレジスト膜の形成に用いた場合に、レジスト膜の基板への密着性を高める上で有効なものである。また、構成単位(a2)を有することで、例えば酸拡散長を適切に調整する、レジスト膜の基板への密着性を高める、現像時の溶解性を適切に調整する等の効果により、解像力といったリソグラフィー特性等が良好となる。
【0061】
「ラクトン含有環式基」とは、その環骨格中に-O-C(=O)-を含む環(ラクトン環)を含有する環式基を示す。ラクトン環をひとつ目の環として数え、ラクトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。ラクトン含有環式基は、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。
構成単位(a2)におけるラクトン含有環式基としては、特に限定されることなく任意のものが使用可能である。具体的には、下記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表される基が挙げられる。
【0062】
【化10】
【0063】
[式中、Ra’21はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、-COOR”、-OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基またはシアノ基であり;R”は水素原子、アルキル基、ラクトン含有環式基、カーボネート含有環式基、又は-SO-含有環式基であり;A”は酸素原子(-O-)もしくは硫黄原子(-S-)を含んでいてもよい炭素原子数1~5のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子であり、n’は0~2の整数であり、m’は0または1である。*は結合手である。]
【0064】
前記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)中、Ra’21におけるアルキル基としては、炭素原子数1~6のアルキル基が好ましい。該アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基またはエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
Ra’21におけるアルコキシ基としては、炭素原子数1~6のアルコキシ基が好ましい。該アルコキシ基は、直鎖状または分岐鎖状であることが好ましい。具体的には、前記Ra’21におけるアルキル基として挙げたアルキル基と酸素原子(-O-)とが連結した基が挙げられる。
Ra’21におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
Ra’21におけるハロゲン化アルキル基としては、前記Ra’21におけるアルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。該ハロゲン化アルキル基としては、フッ素化アルキル基が好ましく、特にパーフルオロアルキル基が好ましい。
【0065】
Ra’21における-COOR”、-OC(=O)R”において、R”はいずれも水素原子、アルキル基、ラクトン含有環式基、カーボネート含有環式基、又は-SO-含有環式基である。
R”におけるアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、炭素原子数は1~15が好ましい。
R”が直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基の場合は、炭素原子数1~10であることが好ましく、炭素原子数1~5であることがさらに好ましく、メチル基またはエチル基であることが特に好ましい。
R”が環状のアルキル基の場合は、炭素原子数3~15であることが好ましく、炭素原子数4~12であることがさらに好ましく、炭素原子数5~10が最も好ましい。具体的には、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
R”におけるラクトン含有環式基としては、前記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表される基と同様のものが挙げられる。
R”におけるカーボネート含有環式基としては、後述のカーボネート含有環式基と同様であり、具体的には一般式(ax3-r-1)~(ax3-r-3)でそれぞれ表される基が挙げられる。
R”における-SO-含有環式基としては、後述の-SO-含有環式基と同様であり、具体的には一般式(a5-r-1)~(a5-r-4)でそれぞれ表される基が挙げられる。
Ra’21におけるヒドロキシアルキル基としては、炭素原子数が1~6であるものが好ましく、具体的には、前記Ra’21におけるアルキル基の水素原子の少なくとも1つが水酸基で置換された基が挙げられる。
【0066】
前記一般式(a2-r-2)、(a2-r-3)、(a2-r-5)中、A”における炭素原子数1~5のアルキレン基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基等が挙げられる。該アルキレン基が酸素原子または硫黄原子を含む場合、その具体例としては、前記アルキレン基の末端または炭素原子間に-O-または-S-が介在する基が挙げられ、例えば-O-CH-、-CH-O-CH-、-S-CH-、-CH-S-CH-等が挙げられる。A”としては、炭素原子数1~5のアルキレン基または-O-が好ましく、炭素原子数1~5のアルキレン基がより好ましく、メチレン基が最も好ましい。
【0067】
下記に一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表される基の具体例を挙げる。
【0068】
【化11】
【0069】
【化12】
【0070】
「-SO-含有環式基」とは、その環骨格中に-SO-を含む環を含有する環式基を示し、具体的には、-SO-における硫黄原子(S)が環式基の環骨格の一部を形成する環式基である。その環骨格中に-SO-を含む環をひとつ目の環として数え、該環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。-SO-含有環式基は、単環式基であってもよく多環式基であってもよい。
-SO-含有環式基は、特に、その環骨格中に-O-SO-を含む環式基、すなわち-O-SO-中の-O-S-が環骨格の一部を形成するスルトン(sultone)環を含有する環式基であることが好ましい。
-SO-含有環式基として、より具体的には、下記一般式(a5-r-1)~(a5-r-4)でそれぞれ表される基が挙げられる。
【0071】
【化13】
【0072】
[式中、Ra’51はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、-COOR”、-OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基またはシアノ基であり;R”は水素原子、アルキル基、ラクトン含有環式基、カーボネート含有環式基、又は-SO-含有環式基であり;A”は酸素原子もしくは硫黄原子を含んでいてもよい炭素原子数1~5のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子であり、n’は0~2の整数である。*は結合手である。]
【0073】
前記一般式(a5-r-1)~(a5-r-2)中、A”は、前記一般式(a2-r-2)、(a2-r-3)、(a2-r-5)中のA”と同様である。
Ra’51におけるアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、-COOR”、-OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基としては、それぞれ前記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)中のRa’21についての説明で挙げたものと同様のものが挙げられる。
下記に一般式(a5-r-1)~(a5-r-4)でそれぞれ表される基の具体例を挙げる。式中の「Ac」は、アセチル基を示す。*は結合手である。
【0074】
【化14】
【0075】
【化15】
【0076】
【化16】
【0077】
「カーボネート含有環式基」とは、その環骨格中に-O-C(=O)-O-を含む環(カーボネート環)を含有する環式基を示す。カーボネート環をひとつ目の環として数え、カーボネート環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。カーボネート含有環式基は、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。
カーボネート含有環式基としては、特に限定されることなく任意のものが使用可能である。具体的には、下記一般式(ax3-r-1)~(ax3-r-3)でそれぞれ表される基が挙げられる。
【0078】
【化17】
【0079】
[式中、Ra’x31はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、-COOR”、-OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基またはシアノ基であり;R”は水素原子、アルキル基、ラクトン含有環式基、カーボネート含有環式基、又は-SO-含有環式基であり;A”は酸素原子もしくは硫黄原子を含んでいてもよい炭素原子数1~5のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子であり、p’は0~3の整数であり、q’は0または1である。*は結合手である。]
【0080】
前記一般式(ax3-r-2)~(ax3-r-3)中、A”は、前記一般式(a2-r-2)、(a2-r-3)、(a2-r-5)中のA”と同様である。
Ra’ 31におけるアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、-COOR”、-OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基としては、それぞれ前記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)中のRa’21についての説明で挙げたものと同様のものが挙げられる。
下記に一般式(ax3-r-1)~(ax3-r-3)でそれぞれ表される基の具体例を挙げる。
【0081】
【化18】
【0082】
構成単位(a2)としては、なかでも、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位が好ましい。
かかる構成単位(a2)は、下記一般式(a2-1)で表される構成単位であることが好ましい。
【0083】
【化19】
【0084】
[式中、Rは水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基である。Ya21は単結合または2価の連結基である。La21は-O-、-COO-、-CON(R’)-、-OCO-、-CONHCO-又は-CONHCS-であり、R’は水素原子またはメチル基を示す。ただしLa21が-O-の場合、Ya21は-CO-にはならない。Ra21はラクトン含有環式基、カーボネート含有環式基、又は-SO-含有環式基である。]
【0085】
前記式(a2-1)中、Rは前記一般式(a1-1)中のR1と同じである。Rとしては、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子又はメチル基が特に好ましい。
【0086】
前記式(a2-1)中、Ya21における2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が好適に挙げられる。
【0087】
・置換基を有していてもよい2価の炭化水素基:
Ya21が置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である場合、該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でもよい。
【0088】
・・Ya21における脂肪族炭化水素基
脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。該脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
前記脂肪族炭化水素基としては、直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、又は構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0089】
・・・直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基
該直鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が1~10であることが好ましく、炭素原子数1~6がより好ましく、炭素原子数1~4がさらに好ましく、炭素原子数1~3が最も好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]、ペンタメチレン基[-(CH-]等が挙げられる。
該分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が2~10であることが好ましく、炭素原子数3~6がより好ましく、炭素原子数3又は4がさらに好ましく、炭素原子数3が最も好ましい。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基;-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-、-C(CHCH-CH-等のアルキルエチレン基;-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0090】
前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。該置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基、カルボニル基等が挙げられる。
【0091】
・・・構造中に環を含む脂肪族炭化水素基
該構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、環構造中にヘテロ原子を含む置換基を含んでいてもよい環状の脂肪族炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、前記環状の脂肪族炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、前記環状の脂肪族炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては前記と同様のものが挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が3~20であることが好ましく、炭素原子数3~12であることがより好ましい。
環状の脂肪族炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0092】
環状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基等が挙げられる。
前記置換基としてのアルキル基としては、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基であることがより好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基としては、炭素原子数1~5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基がさらに好ましい。
前記置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、その環構造を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子を含む置換基で置換されてもよい。該ヘテロ原子を含む置換基としては、-O-、-C(=O)-O-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)-O-が好ましい。
【0093】
・ヘテロ原子を含む2価の連結基:
Ya21がヘテロ原子を含む2価の連結基である場合、該連結基として好ましいものとしては、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-NH-、-NH-C(=NH)-(Hはアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい。)、-S-、-S(=O)-、-S(=O)-O-、一般式-Y21-O-Y22-、-Y21-O-、-Y21-C(=O)-O-、-C(=O)-O-Y21-、-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-、-Y21-O-C(=O)-Y22-または-Y21-S(=O)-O-Y22-で表される基[式中、Y21およびY22はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、Oは酸素原子であり、m”は0~3の整数である。]等が挙げられる。
前記へテロ原子を含む2価の連結基が-C(=O)-NH-、-C(=O)-NH-C(=O)-、-NH-、-NH-C(=NH)-の場合、そのHはアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい。該置換基(アルキル基、アシル基等)は、炭素原子数が1~10であることが好ましく、1~8であることがさらに好ましく、1~5であることが特に好ましい。
一般式-Y21-O-Y22-、-Y21-O-、-Y21-C(=O)-O-、-C(=O)-O-Y21-、-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-、-Y21-O-C(=O)-Y22-または-Y21-S(=O)-O-Y22-中、Y21およびY22は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。該2価の炭化水素基としては、前記Ya21における2価の連結基としての説明で挙げた(置換基を有していてもよい2価の炭化水素基)と同様のものが挙げられる。
21としては、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基またはエチレン基が特に好ましい。
22としては、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチレン基、エチレン基またはアルキルメチレン基がより好ましい。該アルキルメチレン基におけるアルキル基は、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~3の直鎖状のアルキル基がより好ましく、メチル基が最も好ましい。
式-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-で表される基において、m”は0~3の整数であり、0~2の整数であることが好ましく、0または1がより好ましく、1が特に好ましい。つまり、式-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-で表される基としては、式-Y21-C(=O)-O-Y22-で表される基が特に好ましい。なかでも、式-(CHa’-C(=O)-O-(CHb’-で表される基が好ましい。該式中、a’は、1~10の整数であり、1~8の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。b’は、1~10の整数であり、1~8の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。
【0094】
上記の中でも、Ya21としては、単結合、エステル結合[-C(=O)-O-]、エーテル結合(-O-)、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又はこれらの組合せであることが好ましい。
【0095】
前記式(a2-1)中、Ra21はラクトン含有環式基、-SO-含有環式基またはカーボネート含有環式基である。
Ra21におけるラクトン含有環式基、-SO-含有環式基、カーボネート含有環式基としてはそれぞれ、前述した一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表される基、一般式(a5-r-1)~(a5-r-4)でそれぞれ表される基、一般式(ax3-r-1)~(ax3-r-3)でそれぞれ表される基が好適に挙げられる。
中でも、ラクトン含有環式基または-SO-含有環式基が好ましく、前記一般式(a2-r-1)、(a2-r-2)、(a2-r-6)または(a5-r-1)でそれぞれ表される基がより好ましい。具体的には、前記化学式(r-lc-1-1)~(r-lc-1-7)、(r-lc-2-1)~(r-lc-2-18)、(r-lc-6-1)、(r-sl-1-1)、(r-sl-1-18)でそれぞれ表される、いずれかの基がより好ましい。
【0096】
以下に前記式(a2-1)で表される構成単位の好ましい具体例を示す。以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す。
【0097】
【化20】
【0098】
(A1)成分が有する構成単位(a2)は、1種でもよく2種以上でもよい。
(A1)成分が構成単位(a2)を有する場合、構成単位(a2)の割合は、当該(A1)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、5~60モル%であることが好ましく、10~60モル%であることがより好ましく、20~55モル%であることがさらに好ましく、30~50モル%が特に好ましい。
構成単位(a2)の割合を好ましい下限値以上とすると、前述した効果によって、構成単位(a2)を含有させることによる効果が充分に得られ、上限値以下であると、他の構成単位とのバランスを取ることができ、種々のリソグラフィー特性が良好となる。
【0099】
≪その他構成単位≫
(A1)成分は、上述した構成単位(a1)及び構成単位(a2)に加え、必要に応じてその他構成単位を有するものでもよい。
その他構成単位としては、例えば、極性基含有脂肪族炭化水素基を含む構成単位(a3)などが挙げられる。
【0100】
本発明の実施形態に係るレジスト組成物においては、ArFによるリソグラフィーでの特性をより高められやすいことからであるため、(A1)成分は構成単位として、スチレン若しくはスチレン誘導体から誘導される構成単位(st);ヒドロキシスチレン若しくはヒドロキシスチレン誘導体から誘導される構成単位を含まないことが好ましい。
【0101】
構成単位(a3)について:
(A1)成分は、構成単位(a1)及び構成単位(a2)に加えて、さらに、極性基含有脂肪族炭化水素基を含む構成単位(a3)(但し、構成単位(a1)又は構成単位(a2)に該当するものを除く)を有するものでもよい。すなわち、前記樹脂成分(A1)は、さらに、極性基含有脂肪族炭化水素基を含む構成単位(a3)を有することが好ましい。
(A1)成分が構成単位(a3)を有することにより、(A)成分の親水性が高まり、解像性の向上に寄与する。また、酸拡散長を適切に調整することができる。
【0102】
極性基としては、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基等が挙げられ、特に水酸基が好ましい。
脂肪族炭化水素基としては、炭素原子数1~10の直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基(好ましくはアルキレン基)や、環状の脂肪族炭化水素基(環式基)が挙げられる。該環式基としては、単環式基でも多環式基でもよく、例えばArFエキシマレーザー用レジスト組成物用の樹脂において、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。
【0103】
該環式基が単環式基である場合、炭素原子数は3~10であることがより好ましい。その中でも、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、またはアルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基を含有する脂肪族単環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位がより好ましい。該単環式基としては、モノシクロアルカンから2個以上の水素原子を除いた基を例示できる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタンなどのモノシクロアルカンから2個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。これらの単環式基の中でも、シクロペンタンから2個以上の水素原子を除いた基、シクロヘキサンから2個以上の水素原子を除いた基が工業上好ましい。
【0104】
該環式基が多環式基である場合、該多環式基の炭素原子数は7~30であることがより好ましい。その中でも、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、またはアルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基を含有する脂肪族多環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位がより好ましい。該多環式基としては、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどから2個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから2個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。これらの多環式基の中でも、アダマンタンから2個以上の水素原子を除いた基、ノルボルナンから2個以上の水素原子を除いた基、テトラシクロドデカンから2個以上の水素原子を除いた基が工業上好ましい。
【0105】
構成単位(a3)としては、極性基含有脂肪族炭化水素基を含むものであれば特に限定されることなく任意のものが使用可能である。
構成単位(a3)としては、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位であって極性基含有脂肪族炭化水素基を含む構成単位が好ましい。
構成単位(a3)としては、極性基含有脂肪族炭化水素基における炭化水素基が炭素原子数1~10の直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基のときは、アクリル酸のヒドロキシエチルエステルから誘導される構成単位が好ましい。
また、構成単位(a3)としては、極性基含有脂肪族炭化水素基における該炭化水素基が多環式基のときは、下記の式(a3-1)で表される構成単位、式(a3-2)で表される構成単位、式(a3-3)で表される構成単位が好ましいものとして挙げられ;単環式基のときは、式(a3-4)で表される構成単位が好ましいものとして挙げられる。
【0106】
【化21】
【0107】
[式中、Rは前記と同じであり、jは1~3の整数であり、kは1~3の整数であり、t’は1~3の整数であり、lは0~5の整数であり、sは1~3の整数である。]
【0108】
式(a3-1)中、jは、1又は2であることが好ましく、1であることがさらに好ましい。jが2の場合、水酸基が、アダマンチル基の3位と5位に結合しているものが好ましい。jが1の場合、水酸基が、アダマンチル基の3位に結合しているものが好ましい。
jは1であることが好ましく、水酸基が、アダマンチル基の3位に結合しているものが特に好ましい。
【0109】
式(a3-2)中、kは1であることが好ましい。シアノ基は、ノルボルニル基の5位または6位に結合していることが好ましい。
【0110】
式(a3-3)中、t’は1であることが好ましい。lは1であることが好ましい。sは1であることが好ましい。これらは、アクリル酸のカルボキシ基の末端に、2-ノルボルニル基または3-ノルボルニル基が結合していることが好ましい。フッ素化アルキルアルコールは、ノルボルニル基の5又は6位に結合していることが好ましい。
【0111】
式(a3-4)中、t’は1又は2であることが好ましい。lは0又は1であることが好ましい。sは1であることが好ましい。フッ素化アルキルアルコールは、シクロヘキシル基の3又は5位に結合していることが好ましい。
【0112】
(A1)成分が有する構成単位(a3)は、1種でも2種以上でもよい。
(A1)成分が構成単位(a3)を有する場合、構成単位(a3)の割合は、当該(A1)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して1~30モル%であることが好ましく、2~25モル%がより好ましく、5~20モル%がさらに好ましい。
構成単位(a3)の割合を好ましい下限値以上とすることにより、前述した効果によって、構成単位(a3)を含有させることによる効果が充分に得られ、好ましい上限値以下であると、他の構成単位とのバランスを取ることができ、種々のリソグラフィー特性が良好となる。
【0113】
レジスト組成物が含有する(A1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の実施形態に係るレジスト組成物において、(A1)成分は、構成単位(a1)と構成単位(a2)との繰り返し構造を有する高分子化合物が挙げられる。
好ましい(A1)成分としては、構成単位(a1)と構成単位(a2)とその他構成単位との繰り返し構造を有する高分子化合物が挙げられる。前記他の構成単位としては、構成単位(a3)等が挙げられる。
上記2つの各構成単位の組み合わせに加えて、さらに3つ目又は3つ以上の構成単位として、上記で説明した構成単位を適宜所望の効果に合わせて組み合わせてもよい。3つ以上の構成単位の組み合せとしては、例えば、構成単位(a1)と構成単位(a2)と構成単位(a3)との組合せ等が挙げられる。
(A1)成分の好ましい例としては、構成単位(a1)と構成単位(a2)との繰り返し構造を有する高分子化合物;構成単位(a1)と構成単位(a2)と構成単位(a3)との繰り返し構造を有する高分子化合物が挙げられる。
【0114】
かかる(A1)成分は、各構成単位を誘導するモノマーを重合溶媒に溶解し、ここに、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスイソ酪酸ジメチル(例えばV-601など)等のラジカル重合開始剤を加えて重合することにより製造することができる。
あるいは、かかる(A1)成分は、構成単位(a1)及び構成単位(a2)を誘導するモノマーと、必要に応じて構成単位(a1)以外の構成単位を誘導するモノマーと、を重合溶媒に溶解し、ここに、上記のようなラジカル重合開始剤を加えて重合し、その後、脱保護反応を行うことにより製造することができる。
なお、重合の際に、例えば、HS-CH-CH-CH-C(CF-OHのような連鎖移動剤を併用して用いることにより、末端に-C(CF-OH基を導入してもよい。このように、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基が導入された共重合体は、現像欠陥の低減やLER(ラインエッジラフネス:ライン側壁の不均一な凹凸)の低減に有効である。
【0115】
(A1)成分の重量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算基準)は、特に限定されるものではなく、1000~50000が好ましく、2000~30000がより好ましく、3000~20000がさらに好ましい。
(A1)成分のMwがこの範囲の好ましい上限値以下であると、レジストとして用いるのに充分なレジスト溶剤への溶解性があり、この範囲の好ましい下限値以上であると、耐ドライエッチング性やレジストパターン断面形状が良好である。
(A1)成分の分散度(Mw/Mn)は、特に限定されず、1.0~4.0が好ましく、1.0~3.0がより好ましく、1.0~2.0が特に好ましい。なお、Mnは数平均分子量を示す。
【0116】
・(A1)成分以外の基材成分について
本発明の実施形態に係るレジスト組成物は、(A)成分として、前記(A1)成分に該当しない、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分を併用してもよい。前記(A1)成分に該当しない基材成分としては、特に限定されず、化学増幅型レジスト組成物用の基材成分として従来から知られている多数のものから任意に選択して用いることができ、高分子化合物又は低分子化合物の1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0117】
(A)成分中の(A1)成分の割合は、(A)成分の総質量に対し、25質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、75質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。前記割合が25質量%以上であると、種々のリソグラフィー特性に優れたレジストパターンが形成されやすくなる。
【0118】
本発明の実施形態に係るレジスト組成物中、(A)成分の含有量は、3~25質量%が好ましく、5~20質量%より好ましく、8~16質量%がさらに好ましい。
【0119】
<(Z)成分>
(Z)成分は、下記一般式(z1-1)で表される構成単位(z1)を有する可塑剤成分である。
構成単位(z1)は酸解離性基を含まないことが好ましい。ここで「酸解離性基」とは、(i)酸の作用により、当該酸解離性基と該酸解離性基に隣接する原子との間の結合が開裂し得る酸解離性を有する基、又は、(ii)酸の作用により一部の結合が開裂した後、さらに脱炭酸反応が生じることにより、当該酸解離性基と該酸解離性基に隣接する原子との間の結合が開裂し得る基、の双方をいう。
可塑剤成分(Z)が酸解離性基を含まないことが好ましい。すなわち、(Z)成分を構成する全構成単位が酸解離性基を含まないことが好ましい。(Z)成分を構成する全構成単位が酸解離性基を含まないことにより、(Z)成分は、酸の作用により脱保護反応が生じない。
【0120】
【化22】
【0121】
[式中、Rは、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基である。Vzは、単結合又はヘテロ原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基である。Rzは水素原子又は下記一般式(z1-r-1)で表される基である。]
【0122】
【化23】
【0123】
[式(z1-r-1)中、Rz01は、置換基を有していてもよい炭化水素基である。Rz02は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基である。Rz01とRz02とは相互に結合して環構造を形成していてもよい。*は結合手である。]
【0124】
≪構成単位(z1)≫
前記式(z1-1)中、Rは、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基である。
Rにおける炭素原子数1~5のアルキル基は、炭素原子数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
Rにおける炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基は、前記炭素原子数1~5のアルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基である。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
Rとしては、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基がより好ましく、水素原子又はメチル基がさらに好ましい。
【0125】
前記式(z1-1)中、Vzにおけるヘテロ原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基としては、例えば、置換基を有してもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の炭化水素基が好適なものとして挙げられる。
【0126】
Vzが置換基を有してもよい2価の炭化水素基である場合、該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基を挙げることができる。
脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。該脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
【0127】
前記脂肪族炭化水素基としては、直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、又は構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0128】
直鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が1~10であることが好ましく、炭素原子数1~6がより好ましく、炭素原子数1~4がさらに好ましく、炭素原子数1~3が最も好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]、ペンタメチレン基[-(CH-]等が挙げられる。
【0129】
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が2~10であることが好ましく、炭素原子数3~6がより好ましく、炭素原子数3又は4がさらに好ましく、炭素原子数3が最も好ましい。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基;-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-、-C(CHCH-CH-等のアルキルエチレン基;-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0130】
前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。該置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基、カルボニル基等が挙げられる。
【0131】
構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、環構造中にヘテロ原子を含む置換基を含んでもよい環状の脂肪族炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、前記環状の脂肪族炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、前記環状の脂肪族炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては前記と同様のものが挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が3~20であることが好ましく、炭素原子数3~12であることがより好ましい。
環状の脂肪族炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0132】
環状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基等が挙げられる。
前記置換基としてのアルキル基としては、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基であることがより好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基としては、炭素原子数1~5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基がさらに好ましい。
前記置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、その環構造を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子を含む置換基で置換されてもよい。該ヘテロ原子を含む置換基としては、-O-、-C(=O)-O-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)-O-が好ましい。
【0133】
Vzがヘテロ原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基である場合、Vzは酸解離性基を含まないことが好ましい。
なかでも、Vzとしては、単結合、-C(=O)-O-Y21-又は-C(=O)-O-Y21-O-C(=O)-Y22-が好ましく、単結合がより好ましい。Y21およびY22は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。該2価の炭化水素基としては、前記Ya21における2価の連結基としての説明で挙げた「置換基を有していてもよい2価の炭化水素基」と同様のものが挙げられる。
【0134】
前記式(z1-1)中、Rzは水素原子又は前記一般式(z1-r-1)で表される基である。
前記式(z1-r-1)中、Rz01における置換基を有していてもよい炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は環状の炭化水素基が挙げられる。
Rz01における直鎖状のアルキル基は、炭素原子数1~10であることが好ましく、炭素原子数1~5であることがより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。
Rz01における分岐鎖状のアルキル基としては、炭素原子数が3~10であることが好ましく、炭素原子数3~5がより好ましい。具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、2,2-ジメチルブチル基等が挙げられる。
Rz01における直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を構成する炭素原子の一部は酸素原子(-O-)で置換されていてもよい。ただし、前記式(z1-r-1)中、Rz01は酸解離性基を含まないことが好ましい。したがって、前記式(z1-r-1)において、Rz01における直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を構成する炭素原子の一部は酸素原子(-O-)で置換されていている場合であっても、アセタール型酸解離性基は含まれないことが好ましい。
【0135】
Rz01における環状の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でもよく、また、多環式基でも単環式基でもよい。
単環式基である脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式基である脂肪族炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0136】
Rz01における環状の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。該置換基としては、例えば、-RP1、-RP2-O-RP1、-RP2-CO-RP1、-RP2-CO-ORP1、-RP2-O-CO-RP1、-RP2-OH、-RP2-CN又は-RP2-COOH(以下これらの置換基をまとめて「Ra05」ともいう。)等が挙げられる。
【0137】
ここで、RP1は、炭素原子数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基、炭素原子数3~20の1価の脂肪族環状飽和炭化水素基である。また、RP2は、単結合、炭素原子数1~10の2価の鎖状飽和炭化水素基、又は炭素原子数3~20の2価の脂肪族環状飽和炭化水素基である。但し、RP1及びRP2の鎖状飽和炭化水素基、及び脂肪族環状飽和炭化水素基の有する水素原子の一部又は全部はフッ素原子で置換されていてもよい。上記脂肪族環状炭化水素基は、上記置換基を1種単独で1つ以上有していてもよいし、上記置換基のうち複数種を各1つ以上有していてもよい。
【0138】
炭素原子数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。
炭素原子数3~20の1価の脂肪族環状飽和炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基等の単環式脂肪族飽和炭化水素基;ビシクロ[2.2.2]オクタニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカニル基、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカニル基、アダマンチル基等の多環式脂肪族飽和炭化水素基が挙げられる。
【0139】
前記式(z1-r-1)中、Rz02における置換基を有していてもよい炭化水素基は、Rz01おける置換基を有していてもよい炭化水素基と同様である。
【0140】
前記式(z1-r-1)中、Rz01とRz02とは相互に結合して環構造を形成する場合、該環構造としては、モノシクロアルカン又はポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が挙げられる。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0141】
前記式(z1-r-1)中、Rz01が直鎖状のアルキル基又は直鎖状のアルコキシ基であり、且つ、Rz02が水素原子であるか、Rz01とRz02とは相互に結合して環構造を形成することが好ましい。
【0142】
(Z)成分が有する構成単位(z1)は、1種でもよく2種以上でもよい。
なかでも、(Z)成分が構成単位(z1)として、下記一般式(z1-1-1)で表される構成単位(以下、「構成単位(z1-1-1)」という場合がある)及び下記一般式(z1-1-2)で表される構成単位(以下、「構成単位(z1-1-2)」という場合がある)を有することが好ましい。
【0143】
【化24】
【0144】
[式中、R01及びR02は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基である。Vz01は、単結合、-C(=O)-O-Y21-又は-C(=O)-O-Y21-O-C(=O)-Y22-である。Y21およびY22はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、Oは酸素原子である。Rz10は、直鎖状のアルキル基、-Rz11-O-Rz12又は1価の脂環式炭化水素基である。Rz11は、直鎖状のアルキレン基であり、Rz12は、直鎖状のアルキル基である。]
【0145】
前記式(z1-1-1)及び(z1-1-2)中、R01及びR02は、前記式(z1-1)中のRと同様である。なかでも、R01は、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。R02は、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
【0146】
前記式(z1-1-1)中、Vz01が-C(=O)-O-Y21-又は-C(=O)-O-Y21-O-C(=O)-Y22-である場合、Y21としては、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基またはエチレン基が特に好ましい。Y22としては、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチレン基、エチレン基またはアルキルメチレン基がより好ましい。該アルキルメチレン基におけるアルキル基は、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~3の直鎖状のアルキル基がより好ましく、メチル基が最も好ましい。
なかでも、Vz01としては、単結合が好ましい。
【0147】
前記式(z1-1-2)中、Rz10における直鎖状のアルキル基は、炭素原子数1~10であることが好ましく、炭素原子数1~5であることがより好ましい。
前記式(z1-1-2)中、Rz10が-Rz11-O-Rz12である場合、Rz11は、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキレン基が好ましく、メチレン基またはエチレン基がより好ましい。Rz12は、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。
前記式(z1-1-2)中、Rz10における1価の脂環式炭化水素基は、多環式基でも単環式基でもよい。
単環式基である脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式基である脂肪族炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0148】
なかでも、(Z)成分が構成単位(z1-1-2)として、下記一般式(z1-2-21)で表される構成単位(以下、「構成単位(z1-2-21)」という場合がある)と、下記一般式(z1-2-22)で表される構成単位(以下、「構成単位(z1-2-22)」という場合がある)とを含むことが好ましい。
【0149】
【化25】
【0150】
[式中、R21及びR22は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基である。Rz11は、直鎖状のアルキレン基である。Rz12は、直鎖状のアルキル基である。Rz13は、直鎖状のアルキル基又は1価の脂環式炭化水素基である。]
【0151】
前記式(z1-1-21)及び(z1-1-22)中、R21及びR22は、前記式(z1-1-2)中のR02と同様である。
前記式(z1-1-21)中、Rz11及びRz12は、前記式(z1-1-2)中のRz11及びRz12と同様である。
前記式(z1-1-21)中、Rz13における直鎖状のアルキル基又は1価の脂環式炭化水素基は、前記式(z1-1-2)中のRz10における直鎖状のアルキル基又は1価の脂環式炭化水素基と同様である。
【0152】
以下に、構成単位(z1)の具体例を示す。以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。
【0153】
【化26】

【0154】
(Z)成分中の構成単位(z1)の割合は、該(Z)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、50~100モル%が好ましく、60~100モル%がより好ましく、70~100モル%が更に好ましく、100モル%であってもよい。
構成単位(z1)の割合を、前記の好ましい範囲内とすることによって、クラックの発生を抑制しやすくなると共に、ボイドの発生を抑制しやすくなる。
【0155】
(Z)成分が、構成単位(z1)として、前記構成単位(z1-1-1)及び前記構成単位(z1-1-2)を含有する場合、(Z)成分中の構成単位(z1-1-1)の割合は、該(Z)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、1~30モル%が好ましく、3~25モル%がより好ましく、5~20モル%が更に好ましい。また、(Z)成分中の構成単位(z1-1-2)の割合は、該(Z)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、70~99モル%が好ましく、75~97モル%がより好ましく、80~95モル%が更に好ましい。
構成単位(z1-1-1)及び(z1-1-2)の割合を、前記の好ましい範囲内とすることによって、クラックの発生を抑制しやすくなると共に、ボイドの発生を抑制しやすくなる。
【0156】
(Z)成分が、構成単位(z1)として、前記構成単位(z1-1-1)、前記構成単位(z1-1-21)及び前記構成単位(z1-1-22)を含有する場合、(Z)成分中の構成単位(z1-1-1)の割合は、該(Z)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、1~30モル%が好ましく、3~25モル%がより好ましく、5~20モル%が更に好ましい。また、(Z)成分中の構成単位(z1-1-21)の割合は、該(Z)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、10~99モル%が好ましく、15~97モル%がより好ましく、20~95モル%が更に好ましく、20~70モル%が更に好ましい。また、(Z)成分中の構成単位(z1-1-22)の割合は、該(Z)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、0~80モル%が好ましく、10~75モル%がより好ましく、15~70モル%が更に好ましく、20~65モル%が更に好ましい。
構成単位(z1-1-1)、構成単位(z1-1-21)及び構成単位(z1-1-22)の割合を、前記の好ましい範囲内とすることによって、クラックの発生を抑制しやすくなると共に、ボイドの発生を抑制しやすくなる。
【0157】
≪その他構成単位≫
(Z)成分は、上述した構成単位(z1)に加え、必要に応じてその他構成単位を有するものでもよい。
その他構成単位としては、前記構成単位(a1)、(a3)等が挙げられる。
【0158】
(Z)成分が構成単位(a1)を有する場合、(Z)成分中の構成単位(a1)の割合は、(Z)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、10~60モル%であることが好ましく、20~55モル%がより好ましく、30~50モル%がさらに好ましい。
構成単位(a1)の割合を下限値以上とすることにより、感度がより高められやすくなる。一方、上限値以下とすることにより、他の構成単位とのバランスをとりやすくなる。
【0159】
レジスト組成物が含有する(Z)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の実施形態に係るレジスト組成物において、(Z)成分は、構成単位(z1)の繰り返し構造を有する高分子化合物が挙げられる。
好ましい(Z)成分としては、構成単位(z1-1-1)と構成単位(z1-1-21)との繰り返し構造を有する高分子化合物;構成単位(z1-1-1)と構成単位(z1-1-21)と構成単位(z1-1-22)との繰り返し構造を有する高分子化合物が挙げられる。
【0160】
かかる(Z)成分は、各構成単位を誘導するモノマーを重合溶媒に溶解し、ここに、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスイソ酪酸ジメチル(例えばV-601など)等のラジカル重合開始剤を加えて重合することにより製造することができる。
あるいは、かかる(Z)成分は、構成単位(z1)を誘導するモノマーと、必要に応じて構成単位(z1)以外の構成単位を誘導するモノマーと、を重合溶媒に溶解し、ここに、上記のようなラジカル重合開始剤を加えて重合することにより製造することができる。
なお、重合の際に、例えば、HS-CH-CH-CH-C(CF-OHのような連鎖移動剤を併用して用いることにより、末端に-C(CF-OH基を導入してもよい。このように、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基が導入された共重合体は、現像欠陥の低減やLER(ラインエッジラフネス:ライン側壁の不均一な凹凸)の低減に有効である。
【0161】
(Z)成分の重量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算基準)は、特に限定されるものではなく、5000~200000が好ましく、10000~150000がより好ましく、15000~100000がさらに好ましい。
(Z)成分のMwが上記の好ましい範囲内であると、クラックの発生を抑制しやすくなると共に、ボイドの発生を抑制しやすくなる。
(Z)成分の分散度(Mw/Mn)は、特に限定されず、1.0~7.0が好ましく、2.0~6.0がより好ましく、3.0~6.0が特に好ましい。なお、Mnは数平均分子量を示す。
【0162】
本発明の実施形態に係るレジスト組成物において、(Z)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0163】
本発明の実施形態に係るレジスト組成物は、樹脂成分(A1)100質量部に対して、前記可塑剤成分(Z)の含有量が20質量部以下である。
本発明の実施形態に係るレジスト組成物中、(Z)成分の含有量は、レジスト組成物中の樹脂成分(A1)100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましい。(Z)成分の含有量が20質量部超であると、クラックの発生及びボイドの発生を抑制できるものの、解像力の低下が生じてしまう。一方、樹脂成分(A1)100質量部に対して、可塑剤成分(Z)の含有量は0.05質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましい。(Z)成分の含有量を0.05質量部以上とすることにより、クラックの発生を抑制すると共に、ボイドの発生を抑制しやすくなる。(Z)成分の含有量は、例えば、レジスト組成物中の樹脂成分(A1)100質量部に対して、0.05~20質量部が好ましく、0.1~10質量部より好ましく、0.5~5質量部がさらに好ましい。
【0164】
<その他成分>
本発明の実施形態に係るレジスト組成物は、上述した(A)成分及び(Z)成分に加え、その他成分をさらに含有してもよい。その他成分としては、例えば以下に示す(B)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分、(S)成分などが挙げられる。
【0165】
≪酸発生剤成分(B)≫
本発明の実施形態に係るレジスト組成物は、(A)成分及び(Z)成分に加えて、さらに、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)(以下「(B)成分」という。)を含有する。
(B)成分としては、特に限定されず、これまで化学増幅型レジスト組成物用の酸発生剤として提案されているものを用いることができる。
このような酸発生剤としては、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤;ビスアルキル又はビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類などのジアゾメタン系酸発生剤;ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤など多種のものが挙げられる。
(B)成分としては、イオン性化合物を含むことが好ましく、オニウム塩からなる化合物(B1)(以下、「(B1)成分」という。)を含むことが好ましい。
【0166】
・(B1)成分について
(B1)成分としては、例えば、下記の一般式(b-1)で表される化合物(以下「(b-1)成分」ともいう)、一般式(b-2)で表される化合物(以下「(b-2)成分」ともいう)又は一般式(b-3)で表される化合物(以下「(b-3)成分」ともいう)が挙げられる。
【0167】
【化27】
【0168】
[式中、R101及びR104~R108は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。R104とR105とは相互に結合して環構造を形成していてもよい。R102は、炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基又はフッ素原子である。Y101は、酸素原子を含む2価の連結基又は単結合である。V101~V103は、それぞれ独立に、単結合、アルキレン基又はフッ素化アルキレン基である。L101~L102は、それぞれ独立に、単結合又は酸素原子である。L103~L105は、それぞれ独立に、単結合、-CO-又は-SO-である。mは1以上の整数であって、M’m+はm価のオニウムカチオンである。]
【0169】
{アニオン部}
・(b-1)成分におけるアニオン
式(b-1)中、R101は、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。
【0170】
置換基を有していてもよい環式基:
該環式基は、環状の炭化水素基であることが好ましく、該環状の炭化水素基は、芳香族炭化水素基であってもよく、脂肪族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。また、脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
【0171】
101における芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。該芳香族炭化水素基の炭素原子数は3~30であることが好ましく、5~30であることがより好ましく、5~20がさらに好ましく、6~15が特に好ましく、6~10が最も好ましい。但し、該炭素原子数には、置換基における炭素原子数を含まないものとする。
101における芳香族炭化水素基が有する芳香環として具体的には、ベンゼン、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、又はこれらの芳香環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環などが挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
101における芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香環から水素原子を1つ除いた基(アリール基:例えば、フェニル基、ナフチル基など)、前記芳香環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)等が挙げられる。前記アルキレン基(アリールアルキル基中のアルキル鎖)の炭素原子数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0172】
101における環状の脂肪族炭化水素基は、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基が挙げられる。
この構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を1個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素原子数が3~20であることが好ましく、3~12であることがより好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~30のものが好ましい。中でも、該ポリシクロアルカンとしては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等の架橋環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカン;ステロイド骨格を有する環式基等の縮合環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカンがより好ましい。
【0173】
なかでも、R101における環状の脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンまたはポリシクロアルカンから水素原子を1つ以上除いた基が好ましく、ポリシクロアルカンから水素原子を1つ除いた基がより好ましく、アダマンチル基、ノルボルニル基が特に好ましく、アダマンチル基が最も好ましい。
【0174】
脂環式炭化水素基に結合してもよい、直鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が1~10であることが好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましく、1~3が最も好ましい。直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]、ペンタメチレン基[-(CH-]等が挙げられる。
脂環式炭化水素基に結合してもよい、分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が2~10であることが好ましく、3~6がより好ましく、3又は4がさらに好ましく、3が最も好ましい。分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基;-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-、-C(CHCH-CH-等のアルキルエチレン基;-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0175】
また、R101における環状の炭化水素基は、複素環等のようにヘテロ原子を含んでいてもよい。具体的には、前記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表されるラクトン含有環式基、前記一般式(a5-r-1)~(a5-r-4)でそれぞれ表される-SO-含有環式基、その他下記化学式(r-hr-1)~(r-hr-16)でそれぞれ表される複素環式基が挙げられる。
【0176】
【化28】
【0177】
101の環式基における置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基等が挙げられる。
置換基としてのアルキル基としては、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基が最も好ましい。
置換基としてのアルコキシ基としては、炭素原子数1~5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、炭素原子数1~5のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基等の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
置換基としてのカルボニル基は、環状の炭化水素基を構成するメチレン基(-CH-)を置換する基である。
【0178】
置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基:
101の鎖状のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよい。
直鎖状のアルキル基としては、炭素原子数が1~20であることが好ましく、1~15であることがより好ましく、1~10が最も好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基等が挙げられる。
分岐鎖状のアルキル基としては、炭素原子数が3~20であることが好ましく、3~15であることがより好ましく、3~10が最も好ましい。具体的には、例えば、1-メチルエチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基などが挙げられる。
【0179】
置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基:
101の鎖状のアルケニル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよく、炭素原子数が2~10であることが好ましく、2~5がより好ましく、2~4がさらに好ましく、3が特に好ましい。直鎖状のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、ブチニル基などが挙げられる。分岐鎖状のアルケニル基としては、例えば、1-メチルビニル基、2-メチルビニル基、1-メチルプロペニル基、2-メチルプロペニル基などが挙げられる。
鎖状のアルケニル基としては、上記の中でも、直鎖状のアルケニル基が好ましく、ビニル基、プロペニル基がより好ましく、ビニル基が特に好ましい。
【0180】
101の鎖状のアルキル基またはアルケニル基における置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、上記R101における環式基等が挙げられる。
【0181】
上記の中でも、R101は、置換基を有していてもよい環式基が好ましく、置換基を有していてもよい環状の炭化水素基であることがより好ましい。より具体的には、フェニル基、ナフチル基、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;前記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表されるラクトン含有環式基;前記一般式(a5-r-1)~(a5-r-4)でそれぞれ表される-SO-含有環式基などが好ましい。
【0182】
式(b-1)中、Y101は、単結合または酸素原子を含む2価の連結基である。
101が酸素原子を含む2価の連結基である場合、該Y101は、酸素原子以外の原子を含有してもよい。酸素原子以外の原子としては、例えば炭素原子、水素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
酸素原子を含む2価の連結基としては、例えば、酸素原子(エーテル結合:-O-)、エステル結合(-C(=O)-O-)、オキシカルボニル基(-O-C(=O)-)、アミド結合(-C(=O)-NH-)、カルボニル基(-C(=O)-)、カーボネート結合(-O-C(=O)-O-)等の非炭化水素系の酸素原子含有連結基;該非炭化水素系の酸素原子含有連結基とアルキレン基との組み合わせ等が挙げられる。この組み合わせに、さらにスルホニル基(-SO-)が連結されていてもよい。かかる酸素原子を含む2価の連結基としては、例えば下記一般式(y-al-1)~(y-al-7)でそれぞれ表される連結基が挙げられる。
【0183】
【化29】

【0184】
[式中、V’101は単結合または炭素原子数1~5のアルキレン基であり、V’102は炭素原子数1~30の2価の飽和炭化水素基である。]
【0185】
V’102における2価の飽和炭化水素基は、炭素原子数1~30のアルキレン基であることが好ましく、炭素原子数1~10のアルキレン基であることがより好ましく、炭素原子数1~5のアルキレン基であることがさらに好ましい。
【0186】
V’101およびV’102におけるアルキレン基としては、直鎖状のアルキレン基でもよく分岐鎖状のアルキレン基でもよく、直鎖状のアルキレン基が好ましい。
V’101およびV’102におけるアルキレン基として、具体的には、メチレン基[-CH-];-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基;エチレン基[-CHCH-];-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-等のアルキルエチレン基;トリメチレン基(n-プロピレン基)[-CHCHCH-];-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基;テトラメチレン基[-CHCHCHCH-];-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基;ペンタメチレン基[-CHCHCHCHCH-]等が挙げられる。
また、V’101又はV’102における前記アルキレン基における一部のメチレン基が、炭素原子数3~12の2価の脂肪族環式基で置換されていてもよい。当該脂肪族環式基は、環状の脂肪族炭化水素基(単環式の脂肪族炭化水素基、多環式の脂肪族炭化水素基)から水素原子をさらに1つ除いた2価の基が好ましい。
該環状の脂肪族炭化水素基は、多環式基でも単環式基でもよい。
【0187】
単環式基である脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式基である脂肪族炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0188】
該環状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、上述のRa05と同様の基が挙げられる。
【0189】
2価の脂肪族環式基としては、シクロへキシレン基、1,5-アダマンチレン基または2,6-アダマンチレン基がより好ましい。
【0190】
101としては、エステル結合を含む2価の連結基、またはエーテル結合を含む2価の連結基が好ましく、上記式(y-al-1)~(y-al-5)でそれぞれ表される連結基がより好ましい。
【0191】
式(b-1)中、V101は、単結合、アルキレン基又はフッ素化アルキレン基である。V101におけるアルキレン基、フッ素化アルキレン基は、炭素原子数1~4であることが好ましい。V101におけるフッ素化アルキレン基としては、V101におけるアルキレン基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基が挙げられる。なかでも、V101は、単結合、又は炭素原子数1~4の直鎖状のフッ素化アルキレン基であることが好ましい。
【0192】
式(b-1)中、R102は、フッ素原子又は炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基である。R102は、フッ素原子または炭素原子数1~5のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、フッ素原子であることがより好ましい。
【0193】
前記式(b-1)で表されるアニオン部の具体例としては、例えば、Y101が単結合となる場合、トリフルオロメタンスルホネートアニオンやパーフルオロブタンスルホネートアニオン等のフッ素化アルキルスルホネートアニオンが挙げられ;Y101が酸素原子を含む2価の連結基である場合、下記式(an-1)~(an-3)のいずれかで表されるアニオンが挙げられる。
【0194】
【化30】
【0195】
[式中、R”101は、置換基を有していてもよい脂肪族環式基、上記の化学式(r-hr-1)~(r-hr-6)でそれぞれ表される1価の複素環式基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基である。R”102は、置換基を有していてもよい脂肪族環式基、前記一般式(a2-r-1)、(a2-r-3)~(a2-r-7)でそれぞれ表されるラクトン含有環式基、又は前記一般式(a5-r-1)~(a5-r-4)でそれぞれ表される-SO-含有環式基である。R”103は、置換基を有していてもよい芳香族環式基、置換基を有していてもよい脂肪族環式基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。V”101は、単結合、炭素原子数1~4のアルキレン基、又は炭素原子数1~4のフッ素化アルキレン基である。R102は、フッ素原子又は炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基である。v”はそれぞれ独立に0~3の整数であり、q”はそれぞれ独立に0~20の整数であり、n”は0または1である。]
【0196】
R”101、R”102およびR”103の置換基を有していてもよい脂肪族環式基は、前記式(b-1)中のR101における環状の脂肪族炭化水素基として例示した基であることが好ましい。前記置換基としては、前記式(b-1)中のR101における環状の脂肪族炭化水素基を置換してもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0197】
R”103における置換基を有していてもよい芳香族環式基は、前記式(b-1)中のR101における環状の炭化水素基における芳香族炭化水素基として例示した基であることが好ましい。前記置換基としては、前記式(b-1)中のR101における該芳香族炭化水素基を置換してもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0198】
R”101における置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基は、前記式(b-1)中のR101における鎖状のアルキル基として例示した基であることが好ましい。
R”103における置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基は、前記式(b-1)中のR101における鎖状のアルケニル基として例示した基であることが好ましい。
【0199】
・(b-2)成分におけるアニオン
式(b-2)中、R104、R105は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、または置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、それぞれ、式(b-1)中のR101と同様のものが挙げられる。ただし、R104、R105は、相互に結合して環を形成していてもよい。
104、R105は、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基が好ましく、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のフッ素化アルキル基であることがより好ましい。
該鎖状のアルキル基の炭素原子数は、1~10であることが好ましく、より好ましくは炭素原子数1~7、さらに好ましくは炭素原子数1~3である。R104、R105の鎖状のアルキル基の炭素原子数は、上記炭素原子数の範囲内において、レジスト用溶剤への溶解性も良好である等の理由により、小さいほど好ましい。また、R104、R105の鎖状のアルキル基においては、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、酸の強度が強くなり、また、250nm以下の高エネルギー光や電子線に対する透明性が向上するため好ましい。前記鎖状のアルキル基中のフッ素原子の割合、すなわちフッ素化率は、好ましくは70~100%、さらに好ましくは90~100%であり、最も好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキル基である。
式(b-2)中、V102、V103は、それぞれ独立に、単結合、アルキレン基、またはフッ素化アルキレン基であり、それぞれ、式(b-1)中のV101と同様のものが挙げられる。
式(b-2)中、L101、L102は、それぞれ独立に単結合又は酸素原子である。
【0200】
・(b-3)成分におけるアニオン
式(b-3)中、R106~R108は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、それぞれ、式(b-1)中のR101と同様のものが挙げられる。
式(b-3)中、L103~L105は、それぞれ独立に、単結合、-CO-又は-SO-である。
【0201】
上記の中でも、(B)成分のアニオン部としては、(b-1)成分におけるアニオンが好ましい。この中でも、フッ素化アルキルスルホネートアニオン又は上記の一般式(an-1)~(an-3)のいずれかで表されるアニオンがより好ましく、フッ素化アルキルスルホネートアニオン、又は一般式(an-1)及び(an-2)のいずれかで表されるアニオンがさらに好ましい。
【0202】
{カチオン部}
前記の式(b-1)、式(b-2)、式(b-3)中、M’m+は、m価のオニウムカチオンを表す。この中でも、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオンが好ましい。
mは、1以上の整数である。
【0203】
好ましいカチオン部((M’m+1/m)としては、下記の一般式(ca-1)~(ca-3)でそれぞれ表される有機カチオンが挙げられる。
【0204】
【化31】
【0205】
[式中、R201~R207は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアリール基、アルキル基またはアルケニル基を表す。R201~R203、R206~R207は、相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成してもよい。R208~R209は、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1~5のアルキル基を表す。R210は、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、又は置換基を有していてもよい-SO-含有環式基である。L201は、-C(=O)-または-C(=O)-O-を表す。]
【0206】
上記の一般式(ca-1)~(ca-3)中、R201~R207におけるアリール基としては、炭素原子数6~20の無置換のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
201~R207におけるアルキル基としては、鎖状又は環状のアルキル基であって、炭素原子数1~30のものが好ましい。
201~R207におけるアルケニル基としては、炭素原子数が2~10であることが好ましい。
201~R207が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、カルボニル基、シアノ基、アミノ基、アリール基、下記の一般式(ca-r-1)~(ca-r-7)でそれぞれ表される基が挙げられる。
【0207】
【化32】
【0208】
[式中、R’201は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。]
【0209】
置換基を有していてもよい環式基:
該環式基は、環状の炭化水素基であることが好ましく、該環状の炭化水素基は、芳香族炭化水素基であってもよく、脂肪族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。また、脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
【0210】
R’201における芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。該芳香族炭化水素基の炭素原子数は3~30であることが好ましく、炭素原子数5~30がより好ましく、炭素原子数5~20がさらに好ましく、炭素原子数6~15が特に好ましく、炭素原子数6~10が最も好ましい。ただし、該炭素原子数には、置換基における炭素原子数を含まないものとする。
R’201における芳香族炭化水素基が有する芳香環として具体的には、ベンゼン、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、又はこれらの芳香環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環などが挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
R’201における芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香環から水素原子を1つ除いた基(アリール基:例えばフェニル基、ナフチル基など)、前記芳香環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えばベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)等が挙げられる。前記アルキレン基(アリールアルキル基中のアルキル鎖)の炭素原子数は、1~4であることが好ましく、炭素原子数1~2がより好ましく、炭素原子数1が特に好ましい。
【0211】
R’201における環状の脂肪族炭化水素基は、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基が挙げられる。
この構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を1個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素原子数が3~30であることが好ましく、3~12であることがより好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~30のものが好ましい。中でも、該ポリシクロアルカンとしては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等の架橋環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカン;ステロイド骨格を有する環式基等の縮合環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカンがより好ましい。
【0212】
なかでも、R’201における環状の脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンまたはポリシクロアルカンから水素原子を1つ以上除いた基が好ましく、ポリシクロアルカンから水素原子を1つ除いた基がより好ましく、アダマンチル基、ノルボルニル基が特に好ましく、アダマンチル基が最も好ましい。
【0213】
脂環式炭化水素基に結合してもよい、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が1~10であることが好ましく、炭素原子数1~6がより好ましく、炭素原子数1~4がさらに好ましく、炭素原子数1~3が特に好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]、ペンタメチレン基[-(CH-]等が挙げられる。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基;-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-、-C(CHCH-CH-等のアルキルエチレン基;-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0214】
また、R’201における環状の炭化水素基は、複素環等のようにヘテロ原子を含んでいてもよい。具体的には、前記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表されるラクトン含有環式基、前記一般式(a5-r-1)~(a5-r-4)でそれぞれ表される-SO-含有環式基、その他上記の化学式(r-hr-1)~(r-hr-16)でそれぞれ表される複素環式基が挙げられる。
【0215】
R’201の環式基における置換基としては、たとえば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基等が挙げられる。
置換基としてのアルキル基としては、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基が最も好ましい。
置換基としてのアルコキシ基としては、炭素原子数1~5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、炭素原子数1~5のアルキル基、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基等の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
置換基としてのカルボニル基は、環状の炭化水素基を構成するメチレン基(-CH-)を置換する基である。
【0216】
置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基:
R’201の鎖状のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよい。
直鎖状のアルキル基としては、炭素原子数が1~20であることが好ましく、炭素原子数1~15であることがより好ましく、炭素原子数1~10が最も好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基等が挙げられる。
分岐鎖状のアルキル基としては、炭素原子数が3~20であることが好ましく、炭素原子数3~15であることがより好ましく、炭素原子数3~10が最も好ましい。具体的には、例えば、1-メチルエチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基などが挙げられる。
【0217】
置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基:
R’201の鎖状のアルケニル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよく、炭素原子数が2~10であることが好ましく、炭素原子数2~5がより好ましく、炭素原子数2~4がさらに好ましく、炭素原子数3が特に好ましい。直鎖状のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、ブチニル基などが挙げられる。分岐鎖状のアルケニル基としては、例えば、1-メチルビニル基、2-メチルビニル基、1-メチルプロペニル基、2-メチルプロペニル基などが挙げられる。
鎖状のアルケニル基としては、上記の中でも、直鎖状のアルケニル基が好ましく、ビニル基、プロペニル基がより好ましく、ビニル基が特に好ましい。
【0218】
R’201の鎖状のアルキル基またはアルケニル基における置換基としては、たとえば、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、上記R’201における環式基等が挙げられる。
【0219】
R’201の置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基は、上述したものの他、置換基を有していてもよい環式基又は置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基として、上述の式(a1-r-2)で表される酸解離性基と同様のものも挙げられる。
【0220】
なかでも、R’201は、置換基を有していてもよい環式基が好ましく、置換基を有していてもよい環状の炭化水素基であることがより好ましい。より具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;前記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表されるラクトン含有環式基;前記一般式(a5-r-1)~(a5-r-4)でそれぞれ表される-SO-含有環式基などが好ましい。
【0221】
上記の一般式(ca-1)~(ca-34)中、R201~R203、R206~R207、R211~R212は、相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成する場合、硫黄原子、酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子や、カルボニル基、-SO-、-SO-、-SO-、-COO-、-CONH-または-N(R)-(該Rは炭素原子数1~5のアルキル基である。)等の官能基を介して結合してもよい。形成される環としては、式中のイオウ原子をその環骨格に含む1つの環が、イオウ原子を含めて、3~10員環であることが好ましく、5~7員環であることが特に好ましい。形成される環の具体例としては、例えばチオフェン環、チアゾール環、ベンゾチオフェン環、チアントレン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、9H-チオキサンテン環、チオキサントン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、テトラヒドロチオフェニウム環、テトラヒドロチオピラニウム環等が挙げられる。
【0222】
208~R209は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~5のアルキル基を表し、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基が好ましく、アルキル基となる場合、相互に結合して環を形成してもよい。
【0223】
210は、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、又は置換基を有していてもよい-SO-含有環式基である。
210におけるアリール基としては、炭素原子数6~20の無置換のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
210におけるアルキル基としては、鎖状又は環状のアルキル基であって、炭素原子数1~30のものが好ましい。
210におけるアルケニル基としては、炭素原子数が2~10であることが好ましい。
210における、置換基を有していてもよい-SO-含有環式基としては、「-SO-含有多環式基」が好ましく、上記一般式(a5-r-1)で表される基がより好ましい。
【0224】
201は、それぞれ独立に、アリーレン基、アルキレン基又はアルケニレン基を表す。
201におけるアリーレン基は、上述の式(b-1)中のR101における芳香族炭化水素基として例示したアリール基から水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
201におけるアルキレン基、アルケニレン基は、上述の式(b-1)中のR101における鎖状のアルキル基、鎖状のアルケニル基として例示した基から水素原子1つを除いた基が挙げられる。
【0225】
201は、(x+1)価、すなわち2価または3価の連結基である。
201における2価の連結基としては、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基が好ましく、上述の一般式(a2-1)中のYa21と同様の、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基が例示できる。W201における2価の連結基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、環状であることが好ましい。なかでも、アリーレン基の両端に2個のカルボニル基が組み合わされた基が好ましい。アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、フェニレン基が特に好ましい。
201における3価の連結基としては、前記W201における2価の連結基から水素原子を1個除いた基、前記2価の連結基にさらに前記2価の連結基が結合した基などが挙げられる。W201における3価の連結基としては、アリーレン基に2個のカルボニル基が結合した基が好ましい。
【0226】
前記式(ca-1)で表される好適なカチオンとして具体的には、下記の化学式(ca-1-1)~(ca-1-68)でそれぞれ表されるカチオンが挙げられる。
【0227】
【化33】
【0228】
【化34】
【0229】
【化35】
【0230】
[式中、g1、g2、g3は繰返し数を示し、g1は1~5の整数であり、g2は0~20の整数であり、g3は0~20の整数である。]
【0231】
【化36】
【0232】
【化37】
【0233】
【化38】
【0234】
[式中、R”201は水素原子又は置換基であって、該置換基としては前記R201~R207が有していてもよい置換基として挙げたものと同様である。]
【0235】
前記式(ca-2)で表される好適なカチオンとして具体的には、ジフェニルヨードニウムカチオン、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムカチオン等が挙げられる。
【0236】
前記式(ca-3)で表される好適なカチオンとして具体的には、下記式(ca-3-1)~(ca-3-6)でそれぞれ表されるカチオンが挙げられる。
【0237】
【化39】
【0238】
上記の中でも、カチオン部((M’m+1/m)は、一般式(ca-1)で表されるカチオンが好ましい。一般式(ca-1)で表されるカチオンとしては、上記式(ca-1-1)~(ca-1-54)のいずれかで表されるカチオンが好ましく、上記式(ca-1-1)~(ca-1-15)のいずれかで表されるカチオンがより好ましい。
【0239】
・(B2)成分について
(B)成分は、上記(B1)成分に該当しない酸発生剤成分(以下「(B2)成分」という。)を含有してもよい。(B2)成分は、露光により酸を発生するもので、且つ上記の(B1)成分に該当しないものであれば特に限定されず、公知のものから任意に選択することができる。(B2)成分としては、例えば、オキシムスルホネート系酸発生剤;ビスアルキル又はビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類などのジアゾメタン系酸発生剤;ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤など多種のものが挙げられる。
【0240】
本発明の実施形態に係るレジスト組成物において、(B)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の実施形態に係るレジスト組成物中、(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.5~20質量部が好ましく、1~10質量部がより好ましく、1~5質量部がさらに好ましい。
(B)成分の含有量を、前記の好ましい範囲とすることで、パターン形成が充分に行われる。また、レジスト組成物の各成分を有機溶剤に溶解した際、均一な溶液が得られやすく、レジスト組成物としての保存安定性が良好となるため好ましい。
【0241】
≪塩基成分(D)≫
本発明の実施形態に係るレジスト組成物は、(A)成分、(B)成分、及び(Z)成分に加えて、さらに、露光により発生する酸をトラップ(すなわち、酸の拡散を制御)する塩基成分((D)成分)を含有してもよい。(D)成分は、レジスト組成物において露光により発生する酸をトラップするクエンチャー(酸拡散制御剤)として作用するものである。
(D)成分としては、例えば、露光により分解して酸拡散制御性を失う光崩壊性塩基(D1)(以下「(D1)成分」という。)、該(D1)成分に該当しない含窒素有機化合物(D2)(以下「(D2)成分」という。)等が挙げられる。これらの中でも、解像力の観点から、光崩壊性塩基(D1)((D1)成分)が好ましい。
【0242】
・(D1)成分について
(D1)成分を含有するレジスト組成物とすることで、レジストパターンを形成する際に、レジスト膜の露光部と未露光部とのコントラストをより向上させ、解像力を向上させることができる。
(D1)成分としては、露光により分解して酸拡散制御性を失うものであれば特に限定されず、下記一般式(d1-1)で表される化合物(以下「(d1-1)成分」という。)、下記一般式(d1-2)で表される化合物(以下「(d1-2)成分」という。)及び下記一般式(d1-3)で表される化合物(以下「(d1-3)成分」という。)からなる群より選ばれる1種以上の化合物が好ましい。
(d1-1)~(d1-3)成分は、レジスト膜の露光部においては分解して酸拡散制御性(塩基性)を失うためクエンチャーとして作用せず、レジスト膜の未露光部においてクエンチャーとして作用する。
【0243】
【化40】
【0244】
[式中、Rd~Rdは置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。但し、式(d1-2)中のRdにおける、S原子に隣接する炭素原子にはフッ素原子は結合していないものとする。Ydは単結合又は2価の連結基である。mは1以上の整数であって、Mm+はそれぞれ独立にm価の有機カチオンである。]
【0245】
{(d1-1)成分}
・・アニオン部
式(d1-1)中、Rdは、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、それぞれ前記R’201と同様のものが挙げられる。
これらのなかでも、Rdとしては、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい脂肪族環式基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基が好ましい。これらの基が有していてもよい置換基としては、水酸基、オキソ基、アルキル基、アリール基、フッ素原子、フッ素化アルキル基、上記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表されるラクトン含有環式基、エーテル結合、エステル結合、またはこれらの組み合わせが挙げられる。エーテル結合やエステル結合を置換基として含む場合、アルキレン基を介していてもよく、この場合の置換基としては、上記式(y-al-1)~(y-al-5)でそれぞれ表される連結基が好ましい。
前記芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ビシクロオクタン骨格を含む多環構造(ビシクロオクタン骨格とこれ以外の環構造とからなる多環構造)が好適に挙げられる。
前記脂肪族環式基としては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
前記鎖状のアルキル基としては、炭素原子数が1~10であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖状のアルキル基;1-メチルエチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基等の分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
【0246】
前記鎖状のアルキル基が置換基としてフッ素原子又はフッ素化アルキル基を有するフッ素化アルキル基である場合、フッ素化アルキル基の炭素原子数は、1~11が好ましく、1~8がより好ましく、1~4がさらに好ましい。該フッ素化アルキル基は、フッ素原子以外の原子を含有してもよい。フッ素原子以外の原子としては、例えば酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
Rdとしては、直鎖状のアルキル基を構成する一部又は全部の水素原子がフッ素原子により置換されたフッ素化アルキル基であることが好ましく、直鎖状のアルキル基を構成する水素原子の全てがフッ素原子で置換されたフッ素化アルキル基(直鎖状のパーフルオロアルキル基)であることが特に好ましい。
【0247】
以下に(d1-1)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0248】
【化41】
【0249】
・・カチオン部
式(d1-1)中、Mm+は、m価の有機カチオンである。
m+の有機カチオンとしては、前記一般式(ca-1)~(ca-3)でそれぞれ表されるカチオンと同様のものが好適に挙げられ、前記一般式(ca-1)で表されるカチオンがより好ましく、前記式(ca-1-1)~(ca-1-68)でそれぞれ表されるカチオンがさらに好ましい。
(d1-1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0250】
{(d1-2)成分}
・・アニオン部
式(d1-2)中、Rdは、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、前記R’201と同様のものが挙げられる。
但し、Rdにおける、S原子に隣接する炭素原子にはフッ素原子は結合していない(フッ素置換されていない)ものとする。これにより、(d1-2)成分のアニオンが適度な弱酸アニオンとなり、(D)成分としてのクエンチング能が向上する。
Rdとしては、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい脂肪族環式基であることが好ましい。鎖状のアルキル基としては、炭素原子数1~10であることが好ましく、3~10であることがより好ましい。脂肪族環式基としては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等から1個以上の水素原子を除いた基(置換基を有していてもよい);カンファー等から1個以上の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
Rdの炭化水素基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、前記式(d1-1)のRdにおける炭化水素基(芳香族炭化水素基、脂肪族環式基、鎖状のアルキル基)が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0251】
以下に(d1-2)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0252】
【化42】
【0253】
・・カチオン部
式(d1-2)中、Mm+は、m価の有機カチオンであり、前記式(d1-1)中のMm+と同様である。
(d1-2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0254】
{(d1-3)成分}
・・アニオン部
式(d1-3)中、Rdは置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、前記R’201と同様のものが挙げられ、フッ素原子を含む環式基、鎖状のアルキル基、又は鎖状のアルケニル基であることが好ましい。中でも、フッ素化アルキル基が好ましく、前記Rdのフッ素化アルキル基と同様のものがより好ましい。
【0255】
式(d1-3)中、Rdは、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、前記R’201と同様のものが挙げられる。
なかでも、置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、環式基であることが好ましい。
Rdにおけるアルキル基は、炭素原子数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。Rdのアルキル基の水素原子の一部が水酸基、シアノ基等で置換されていてもよい。
Rdにおけるアルコキシ基は、炭素原子数1~5のアルコキシ基が好ましく、炭素原子数1~5のアルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基が挙げられる。なかでも、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0256】
Rdにおけるアルケニル基は、前記R’201におけるアルケニル基と同様のものが挙げられ、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、1-メチルプロペニル基、2-メチルプロペニル基が好ましい。これらの基はさらに置換基として、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基を有していてもよい。
【0257】
Rdにおける環式基は、前記R’201における環式基と同様のものが挙げられ、シクロペンタン、シクロヘキサン、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた脂環式基、又は、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基が好ましい。Rdが脂環式基である場合、レジスト組成物が有機溶剤に良好に溶解することにより、リソグラフィー特性が良好となる。また、Rdが芳香族基である場合、EUV等を露光光源とするリソグラフィーにおいて、該レジスト組成物が光吸収効率に優れ、感度やリソグラフィー特性が良好となる。
【0258】
式(d1-3)中、Ydは、単結合または2価の連結基である。
Ydにおける2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基(脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基)、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が挙げられる。これらはそれぞれ、上記式(a2-1)中のYa21における2価の連結基についての説明のなかで挙げた、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基と同様のものが挙げられる。
Ydとしては、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、アルキレン基又はこれらの組み合わせであることが好ましい。アルキレン基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であることがより好ましく、メチレン基又はエチレン基であることがさらに好ましい。
【0259】
以下に(d1-3)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0260】
【化43】
【0261】
【化44】
【0262】
・・カチオン部
式(d1-3)中、Mm+は、m価の有機カチオンであり、前記式(d1-1)中のMm+と同様である。
(d1-3)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0263】
(D1)成分は、上記(d1-1)~(d1-3)成分のいずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
レジスト組成物が(D1)成分を含有する場合、レジスト組成物中、(D1)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.05~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましく、0.2~5質量部がさらに好ましい。
(D1)成分の含有量が好ましい下限値以上であると、特に良好なリソグラフィー特性及びレジストパターン形状が得られやすい。一方、上限値以下であると、感度を良好に維持でき、スループットにも優れる。
【0264】
(D1)成分の製造方法:
前記の(d1-1)成分、(d1-2)成分の製造方法は、特に限定されず、公知の方法により製造することができる。
また、(d1-3)成分の製造方法は、特に限定されず、例えば、US2012-0149916号公報に記載の方法と同様にして製造される。
【0265】
・(D2)成分について
(D)成分としては、上記の(D1)成分に該当しない含窒素有機化合物成分(以下「(D2)成分」という。)を含有することが好ましい。
(D2)成分としては、酸拡散制御剤として作用するもので、かつ、(D1)成分に該当しないものであれば特に限定されず、公知のものから任意に用いればよい。なかでも、脂肪族アミンが好ましく、この中でも特に第2級脂肪族アミンや第3級脂肪族アミンがより好ましい。
脂肪族アミンとは、1つ以上の脂肪族基を有するアミンであり、該脂肪族基は炭素原子数が1~12であることが好ましい。
脂肪族アミンとしては、アンモニアNHの水素原子の少なくとも1つを、炭素原子数12以下のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基で置換したアミン(アルキルアミンもしくはアルキルアルコールアミン)又は環式アミンが挙げられる。
アルキルアミンおよびアルキルアルコールアミンの具体例としては、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、n-ノニルアミン、n-デシルアミン等のモノアルキルアミン;ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジ-n-ヘプチルアミン、ジ-n-オクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジアルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリ-n-ペンチルアミン、トリ-n-ヘキシルアミン、トリ-n-ヘプチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、トリ-n-ノニルアミン、トリ-n-デシルアミン、トリ-n-ドデシルアミン等のトリアルキルアミン;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジ-n-オクタノールアミン、トリ-n-オクタノールアミン等のアルキルアルコールアミンが挙げられる。これらの中でも、炭素原子数5~10のトリアルキルアミンがさらに好ましく、トリ-n-ペンチルアミン又はトリ-n-オクチルアミンが特に好ましい。
【0266】
環式アミンとしては、例えば、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環化合物が挙げられる。該複素環化合物としては、単環式のもの(脂肪族単環式アミン)であっても多環式のもの(脂肪族多環式アミン)であってもよい。
脂肪族単環式アミンとして、具体的には、ピペリジン、ピペラジン等が挙げられる。
脂肪族多環式アミンとしては、炭素原子数が6~10のものが好ましく、具体的には、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、ヘキサメチレンテトラミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0267】
その他の脂肪族アミンとしては、トリス(2-メトキシメトキシエチル)アミン、トリス{2-(2-メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2-(2-メトキシエトキシメトキシ)エチル}アミン、トリス{2-(1-メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2-(1-エトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2-(1-エトキシプロポキシ)エチル}アミン、トリス[2-{2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ}エチル]アミン、トリエタノールアミントリアセテート等が挙げられ、トリエタノールアミントリアセテートが好ましい。
【0268】
また、(D2)成分としては、芳香族アミンを用いてもよい。
芳香族アミンとしては、4-ジメチルアミノピリジン、ピロール、インドール、ピラゾール、イミダゾールまたはこれらの誘導体、トリベンジルアミン、2,6-ジイソプロピルアニリン、N-tert-ブトキシカルボニルピロリジン等が挙げられる。
【0269】
(D2)成分としては、酸拡散制御性(塩基性)の観点から、脂肪族アミンが好ましく、鎖状脂肪族アミンがより好ましく、鎖状アルキルアミンがさらに好ましい。前記鎖状アルキルアミンが有する鎖状アルキル基は、炭素原子数5~10であることが好ましい。中でも、炭素原子数5~10の直鎖状アルキル基を有するジアルキルアミン又はトリアルキルアミンが好ましく、トリアルキルアミンがより好ましい。
【0270】
(D2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
レジスト組成物が(D2)成分を含有する場合、レジスト組成物中、(D2)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、通常、0.005~5質量部の範囲で用いられる。上記範囲とすることにより、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等が向上する。
【0271】
≪有機カルボン酸、並びにリンのオキソ酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(E)≫
本発明の実施形態に係るレジスト組成物には、感度劣化の防止や、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等の向上の目的で、任意の成分として、有機カルボン酸、並びにリンのオキソ酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(E)(以下「(E)成分」という)を含有させることができる。
有機カルボン酸としては、例えば、酢酸、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。
リンのオキソ酸としては、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸等が挙げられ、これらの中でも特にホスホン酸が好ましい。
リンのオキソ酸の誘導体としては、例えば、上記オキソ酸の水素原子を炭化水素基で置換したエステル等が挙げられ、前記炭化水素基としては、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数6~15のアリール基等が挙げられる。
リン酸の誘導体としては、リン酸ジ-n-ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステル等のリン酸エステルなどが挙げられる。
ホスホン酸の誘導体としては、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸-ジ-n-ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステル等のホスホン酸エステルなどが挙げられる。
ホスフィン酸の誘導体としては、ホスフィン酸エステルやフェニルホスフィン酸などが挙げられる。
本発明の実施形態に係るレジスト組成物において、(E)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
レジスト組成物が(E)成分を含有する場合、(E)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、通常、0.01~5質量部の範囲で用いられる。
【0272】
≪フッ素添加剤成分(F)≫
本実施形態におけるレジスト組成物は、疎水性樹脂として、フッ素添加剤成分(以下「(F)成分」という)を含有してもよい。
(F)成分は、レジスト膜に撥水性を付与するために使用され、(A)成分とは別の樹脂として用いられることでリソグラフィー特性を向上させる。
(F)成分としては、例えば、特開2010-002870号公報、特開2010-032994号公報、特開2010-277043号公報、特開2011-13569号公報、特開2011-128226号公報に記載の含フッ素高分子化合物を用いることができる。
(F)成分としてより具体的には、下記一般式(f1-1)で表される構成単位(f1)を有する重合体が挙げられる。この重合体としては、下記式(f1-1)で表される構成単位(f1)のみからなる重合体(ホモポリマー);該構成単位(f1)と前記構成単位(a1)との共重合体;該構成単位(f1)とアクリル酸又はメタクリル酸から誘導される構成単位と前記構成単位(a1)との共重合体であることが好ましい。ここで、該構成単位(f1)と共重合される前記構成単位(a1)としては、1-エチル-1-シクロオクチル(メタ)アクリレートから誘導される構成単位、1-メチル-1-アダマンチル(メタ)アクリレートから誘導される構成単位が好ましい。
【0273】
【化45】
【0274】
[式中、Rは前記と同様であり、Rf102およびRf103はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基を表し、Rf102およびRf103は同じであっても異なっていてもよい。nfは1~5の整数であり、Rf101はフッ素原子を含む有機基である。]
【0275】
式(f1-1)中、α位の炭素原子に結合したRは、前記と同様である。Rとしては、水素原子またはメチル基が好ましい。
式(f1-1)中、Rf102およびRf103のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。Rf102およびRf103の炭素原子数1~5のアルキル基としては、上記Rの炭素原子数1~5のアルキル基と同様のものが挙げられ、メチル基またはエチル基が好ましい。Rf102およびRf103の炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基として、具体的には、炭素原子数1~5のアルキル基の水素原子の一部または全部が、ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。なかでもRf102およびRf103としては、水素原子、フッ素原子、又は炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、水素原子、フッ素原子、メチル基、またはエチル基が好ましい。
式(f1-1)中、nfは1~5の整数であり、1~3の整数が好ましく、1又は2であることがより好ましい。
【0276】
式(f1-1)中、Rf101は、フッ素原子を含む有機基であり、フッ素原子を含む炭化水素基であることが好ましい。
フッ素原子を含む炭化水素基としては、直鎖状、分岐鎖状または環状のいずれであってもよく、炭素原子数は1~20であることが好ましく、炭素原子数1~15であることがより好ましく、炭素原子数1~10が特に好ましい。
また、フッ素原子を含む炭化水素基は、当該炭化水素基における水素原子の25%以上がフッ素化されていることが好ましく、50%以上がフッ素化されていることがより好ましく、60%以上がフッ素化されていることが、浸漬露光時のレジスト膜の疎水性が高まることから特に好ましい。
なかでも、Rf101としては、炭素原子数1~6のフッ素化炭化水素基がより好ましく、トリフルオロメチル基、-CH-CF、-CH-CF-CF、-CH(CF、-CH-CH-CF、-CH-CH-CF-CF-CF-CFが特に好ましい。
【0277】
(F)成分の重量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、1000~50000が好ましく、5000~40000がより好ましく、10000~30000が最も好ましい。この範囲の上限値以下であると、レジストとして用いるのにレジスト用溶剤への充分な溶解性があり、この範囲の下限値以上であると、レジスト膜の撥水性が良好である。
(F)成分の分散度(Mw/Mn)は、1.0~5.0が好ましく、1.0~3.0がより好ましく、1.0~2.5が最も好ましい。
【0278】
本発明の実施形態に係るレジスト組成物において、(F)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
レジスト組成物が(F)成分を含有する場合、(F)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、通常、0.5~10質量部の割合で用いられる。
【0279】
≪有機溶剤成分(S)≫
本発明の実施形態に係るレジスト組成物は、レジスト材料を有機溶剤成分(以下「(S)成分」という)に溶解させて製造することができる。
本発明の実施形態に係るレジスト組成物において、(S)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。なかでも、PGMEA、PGME、γ-ブチロラクトン、EL、シクロヘキサノンが好ましい。
【0280】
また、(S)成分としては、PGMEAと極性溶剤とを混合した混合溶剤も好ましい。その配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよい。
(S)成分としては、PGMEA及びELの中から選ばれる少なくとも1種とγ-ブチロラクトンとの混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者との質量比が、好ましくは70:30~95:5とされる。
(S)成分の使用量は、特に限定されず、基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定される。一般的にはレジスト組成物の固形分濃度が0.1~20質量%、好ましくは0.2~15質量%の範囲内となるように(S)成分は用いられる。
【0281】
本発明の実施形態に係るレジスト組成物には、さらに所望により混和性のある添加剤、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料などを適宜、添加含有させることができる。
【0282】
本発明の実施形態に係るレジスト組成物は、上記レジスト材料を(S)成分に溶解させた後、ポリイミド多孔質膜、ポリアミドイミド多孔質膜等を用いて、不純物等の除去を行ってもよい。例えば、ポリイミド多孔質膜からなるフィルター、ポリアミドイミド多孔質膜からなるフィルター、ポリイミド多孔質膜及びポリアミドイミド多孔質膜からなるフィルター等を用いて、レジスト組成物の濾過を行ってもよい。前記ポリイミド多孔質膜及び前記ポリアミドイミド多孔質膜としては、例えば、特開2016-155121号公報に記載のもの等が例示される。
【0283】
以上説明した本発明の実施形態に係るレジスト組成物は、可塑剤成分(Z)を樹脂成分(A1)100質量部に対して、20質量部以下含有する。
本発明の実施形態に係るレジスト組成物は、可塑剤成分(Z)を含有することによりクラック発生やボイドの発生を抑制できる。また、前記可塑剤成分(Z)の含有量が20質量部以下とすることにより、解像度を良好に保ちつつ、クラック発生やボイドの発生を抑制できる。
本発明の実施形態に係るレジスト組成物では、可塑剤成分(Z)を含有させることで、クラック耐性とボイドの発生の抑制とを両立させることができる。これは、前記レジスト組成物を用いて形成したレジスト膜中に可塑剤成分(Z)が存在することにより、レジスト膜の応力が緩和されるためと推測される。
また、本発明の実施形態に係るレジスト組成物は、基材成分(A)が構成単位(a1)及び構成単位(a2)を有するため、クラック耐性及びボイドの発生の抑制の効果のみならず、感度及び解像性を向上させることができる。
【0284】
(レジストパターン形成方法)
本発明の第2の態様に係るレジストパターン形成方法は、支持体上に、上述した実施形態のレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、及び前記露光後のレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程を有する方法である。
かかるレジストパターン形成方法の一実施形態としては、例えば以下のようにして行うレジストパターン形成方法が挙げられる。
【0285】
まず、上述した実施形態のレジスト組成物を、支持体上にスピンナー等で塗布し、ベーク(ポストアプライベーク(PAB))処理を、例えば80~150℃の温度条件にて40~120秒間、好ましくは60~90秒間施してレジスト膜を形成する。
次に、該レジスト膜に対し、例えば電子線描画装置、ArF露光装置等の露光装置を用いて、所定のパターンが形成されたマスク(マスクパターン)を介した露光またはマスクパターンを介さない電子線の直接照射による描画等による選択的露光を行った後、ベーク(ポストエクスポージャーベーク(PEB))処理を、例えば80~150℃の温度条件にて40~120秒間、好ましくは60~90秒間施す。
次に、前記レジスト膜を現像処理する。現像処理は、アルカリ現像プロセスの場合は、アルカリ現像液を用い、溶剤現像プロセスの場合は、有機溶剤を含有する現像液(有機系現像液)を用いて行う。
【0286】
現像処理後、好ましくはリンス処理を行う。リンス処理は、アルカリ現像プロセスの場合は、純水を用いた水リンスが好ましく、溶剤現像プロセスの場合は、有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。
溶剤現像プロセスの場合、前記現像処理またはリンス処理の後に、パターン上に付着している現像液またはリンス液を、超臨界流体により除去する処理を行ってもよい。
現像処理後またはリンス処理後、乾燥を行う。また、場合によっては、上記現像処理後にベーク処理(ポストベーク)を行ってもよい。
【0287】
支持体としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等が挙げられる。より具体的には、シリコンウェーハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金等が使用可能である。
【0288】
露光に用いる波長は、特に限定されず、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV(極端紫外線)、VUV(真空紫外線)、EB(電子線)、X線、軟X線等の放射線を用いて行うことができる。
【0289】
レジスト膜の露光方法は、空気や窒素等の不活性ガス中で行う通常の露光(ドライ露光)であってもよく、液浸露光(Liquid Immersion Lithography)であってもよい。
液浸露光は、予めレジスト膜と露光装置の最下位置のレンズ間を、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒(液浸媒体)で満たし、その状態で露光(浸漬露光)を行う露光方法である。
液浸媒体としては、空気の屈折率よりも大きく、かつ、露光されるレジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒が好ましく、例えば、水、フッ素系不活性液体、シリコン系溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
液浸媒体としては、水が好ましく用いられる。
【0290】
アルカリ現像プロセスで現像処理に用いるアルカリ現像液としては、例えば0.1~10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液が挙げられる。
溶剤現像プロセスで現像処理に用いる有機系現像液が含有する有機溶剤としては、(A)成分(露光前の(A)成分)を溶解し得るものであればよく、公知の有機溶剤の中から適宜選択できる。具体的には、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、ニトリル系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
【0291】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、ブタン酸ブチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、酢酸イソアミル、イソ酪酸イソブチル、及び、プロピオン酸ブチルが挙げられる。
【0292】
ニトリル系溶剤としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、バレロニトリル、ブチロニトリル等が挙げられる。
【0293】
有機系現像液には、必要に応じて公知の添加剤を配合できる。該添加剤としては、例えば界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えばイオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。
【0294】
現像処理は、公知の現像方法により実施することが可能であり、例えば現像液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、支持体表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している支持体上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出し続ける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0295】
溶剤現像プロセスで現像処理後のリンス処理に用いるリンス液が含有する有機溶剤としては、例えば前記有機系現像液に用いる有機溶剤として挙げた有機溶剤のうち、レジストパターンを溶解しにくいものを適宜選択して使用できる。通常、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤およびエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の溶剤を使用する。
これらの有機溶剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記以外の有機溶剤や水と混合して用いてもよい。
【0296】
リンス液を用いたリンス処理(洗浄処理)は、公知のリンス方法により実施できる。該リンス処理の方法としては、例えば一定速度で回転している支持体上にリンス液を塗出し続ける方法(回転塗布法)、リンス液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
【0297】
以上説明した本発明の実施形態に係るレジストパターン形成方法によれば、上述したレジスト組成物が用いられているため、高感度化が図れ、且つ解像性、ラフネス等のリソグラフィー特性に優れたレジストパターンを形成することができる。
【0298】
上述した実施形態のレジスト組成物、及び、上述した実施形態のパターン形成方法において使用される各種材料(例えば、レジスト溶剤、現像液、リンス液、反射防止膜形成用組成物、トップコート形成用組成物など)は、金属、ハロゲンを含む金属塩、酸、アルカリ、硫黄原子又はリン原子を含む成分等の不純物を含まないことが好ましい。ここで、金属原子を含む不純物としては、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mn、Mg、Al、Cr、Ni、Zn、Ag、Sn、Pb、Li、またはこれらの塩などを挙げることができる。これら材料に含まれる不純物の含有量としては、200ppb以下が好ましく、1ppb以下がより好ましく、100ppt(parts per trillion)以下が更に好ましく、10ppt以下が特に好ましく、実質的に含まないこと(測定装置の検出限界以下であること)が最も好ましい。
【実施例0299】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0300】
<可塑剤成分(Z)の製造例>
表1に示す化合物を、表1に示すモル比で用いてラジカル重合によりポリマーZ-1~Z-4を合成した。
得られたポリマーポリマーZ-1~Z-4について、13C-NMRにより求められた該高分子化合物の共重合組成比(高分子化合物中の各構成単位の割合(モル比))、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)及び分子量分散度(Mw/Mn)を表1に併記した。
【0301】
【化46】
【0302】
【表1】
【0303】
〔レジスト組成物の調製〕
<レジスト組成物の調製1>
表2~4に示す各成分を固形分濃度が約10.9(質量%)となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート500質量部とプロピレングリコールモノメチルエーテル333質量部との混合溶媒(S-1)と混合して溶解し、各例のレジスト組成物をそれぞれ調製した。
【0304】
<レジスト組成物の調製2>
表2~4に示す各成分を固形分濃度が約16.0(質量%)となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート320質量部とプロピレングリコールモノメチルエーテル213質量部との混合溶媒(S-2)と混合して溶解し、各例のレジスト組成物をそれぞれ調製した。
【0305】
【表2】
【0306】
【表3】
【0307】
【表4】
【0308】
表2~4中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。[ ]内の数値は配合量(質量部)である。固形分濃度は、固形分濃度(質量%)=[((A)成分+(B)成分+(D)成分+(Z)成分)/((A)成分+(B)成分+(D)成分+(Z)成分+(S)成分)]×100により算出した。
【0309】
A1-1:下記化学式A1-1で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は7,100、分散度(Mw/Mn)は1.65。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m/n=40/50/10。
A1-2:下記化学式A1-2で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は7,400、分散度(Mw/Mn)は1.60。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m/n=40/40/20。
A1-3:下記化学式A1-3で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は7,000、分散度(Mw/Mn)は1.62。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m/n=30/50/20。
A1-4:下記化学式A1-4で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は7,200、分散度(Mw/Mn)は1.58。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m/n=30/60/10。
A1-5:下記化学式A1-5で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は8,500、分散度(Mw/Mn)は1.78。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m/n=40/50/10。
A1-6:下記化学式A1-6で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は7,500、分散度(Mw/Mn)は1.65。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m/n=40/50/10。
A1-7:下記化学式A1-7で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は6,800、分散度(Mw/Mn)は1.62。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m=50/50。
A1-8:下記化学式A1-8で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は7,100、分散度(Mw/Mn)は1.60。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m/n=40/50/10。
A1-9:下記化学式A1-9で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は9,000、分散度(Mw/Mn)は1.70。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m/n=40/50/10。
A1-10:下記化学式A1-10で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は8,100、分散度(Mw/Mn)は1.63。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m/n=40/40/20。
A1-11:下記化学式A1-11で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は7,500、分散度(Mw/Mn)は1.65。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m/n=40/40/20。
【0310】
A2-1:下記化学式A2-1で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は8,000、分散度(Mw/Mn)は1.80。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m/n=40/50/10。
A2-2:下記化学式A2-2で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は7,300、分散度(Mw/Mn)は1.62。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m/n=40/50/10。
A2-3:下記化学式A2-3で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は8,000、分散度(Mw/Mn)は1.83。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m=60/40。
A2-4:下記化学式A2-4で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は8.000、分散度(Mw/Mn)は2.60。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m/n/o/p/q=26/34/12/18/7/3。
【0311】
【化47】
【0312】
【化48】
【0313】
【化49】
【0314】
【化50】
【0315】
B-1:下記化学式B-1で表される化合物からなる酸発生剤。
B-2:下記化学式B-2で表される化合物からなる酸発生剤。
B-3:下記化学式B-3で表される化合物からなる酸発生剤。
【0316】
【化51】
【0317】
D-1:下記化学式D-1で表される化合物からなる含窒素有機化合物。
D-2:下記化学式D-2で表される化合物からなる含窒素有機化合物。
D-3:下記化学式D-3で表される化合物からなるイオン性化合物。
【0318】
【化52】
【0319】
Z-1~Z-4:前記ポリマーZ-1~Z-4。
【0320】
〔評価1(リソグラフィ評価)〕
<レジストパターンの形成>
12インチのシリコンウェーハ上に、有機系反射防止膜組成物「ARC29A」(ブリューワサイエンス社製)を、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で205℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚85nmの有機系反射防止膜を形成した。
反射防止膜上に上記<レジスト組成物の調製1>で調製したレジスト組成物をスピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、110℃で60秒間のプレベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、膜厚500nmのレジスト膜を形成した。
ArF露光装置NSR-S308F[ニコン社製;NA(開口数)=0.75, Conventional, Sigma0.6 ]により、フォトマスク(6%ハーフトーン)を介して、ArFエキシマレーザー(193nm)を選択的に照射した。その後、100℃で60秒間のPEB処理を行った。 次いで、23℃にて2.38質量%のTMAH水溶液(商品名:NMD-3、東京応化工業株式会社製)で15秒間のアルカリ現像を行い、その後、純水を用いて15秒間の水リンスを行い、振り切り乾燥を行った。その結果、いずれの例においてもスペース寸法140nm、ピッチ1650nm(マスクサイズ150nm)の孤立スペースパターンがそれぞれ形成された。
【0321】
<レジストパターンの評価>
[感度(最適露光量)]
前記孤立スペースパターンが形成される最適露光量(mJ/cm)を求め感度として表2~4に記載した。
[解像性の評価]
前記<レジストパターンの形成>により形成された孤立スペースパターンにおいて、測長SEM(走査電子顕微鏡、加速電圧500V、商品名:CG4100、日立ハイテクノロジーズ社製)により、マスクサイズを小さくさせていった際のスペース幅を測定し、そのスペースパターンが解像しない状態になる寸前のスペース寸法を解像力(限界解像力)として表2~4に示した。この値が小さいほど高解像力である事を示す。
【0322】
〔評価2(クラック・ボイド評価)〕
<レジストパターンの形成>
90℃で36秒間のヘキサメチルシラサザン(HMDS)処理を行った12インチのシリコンウェーハ上に、上記<レジスト組成物の調製2>で調製したレジスト組成物をスピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、110℃で60秒間のプレベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、膜厚1200nmのレジスト膜を形成した。
ArF露光装置NSR-S308F[ニコン社製;NA(開口数)=0.75, Conventional,Sigma0.6]により、フォトマスク(6%ハーフトーン)を介して、ArFエキシマレーザー(193nm)を選択的に照射した。その後、100℃で60秒間のPEB処理を行った。 次いで、23℃にて2.38質量%のTMAH水溶液(商品名:NMD-3、東京応化工業株式会社製)で15秒間のアルカリ現像を行い、その後、純水を用いて15秒間の水リンスを行い、振り切り乾燥を行った。その結果、いずれの例においてもホール寸法400nm、ピッチ800nm(マスクサイズ420nm)のコンタクトホールパターン(以下CHパターンという)がそれぞれ形成された。
【0323】
<レジストパターンの評価>
[クラックの評価]
前記<レジストパターンの形成>により形成されたパターンの周辺にある大面積部分の長方形の角部分を、測長SEM(走査電子顕微鏡、加速電圧500V、商品名:CG4100、日立ハイテクノロジーズ社製)により観察し、クラックの有無をカウントし表2~4に示した。
【0324】
評価基準
◎:クラックが0個
〇:クラックが1~5個
△:クラックが6~20個
×:クラックが21個以上
【0325】
[ボイドの評価]
前記<レジストパターンの形成>で形成したCHパターンの断面形状を、測長SEM(走査型電子顕微鏡、加圧電圧8kV、商品名:SU-8000、日立ハイテクノロジー社製)により観察し、パターン中のレジスト部に発生するボイド(空孔)の数をカウントし表2~4に示した。
【0326】
評価基準
◎:ボイドが0個
〇:ボイドが1~5個
△:ボイドが6~20個
×:ボイドが21個以上
【0327】
表2~4に示す結果から、実施例1~24のレジスト組成物は、解像性が良好で、クラックの発生が抑制され、かつ、ボイドの発生が抑制されていることが確認された。