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特開2024-1625571,2,3-トリアゾール化合物および抗ウイルス剤
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  • 特開-1,2,3-トリアゾール化合物および抗ウイルス剤 図1
  • 特開-1,2,3-トリアゾール化合物および抗ウイルス剤 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162557
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】1,2,3-トリアゾール化合物および抗ウイルス剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 473/34 20060101AFI20241114BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20241114BHJP
   A01N 43/90 20060101ALI20241114BHJP
   A01N 43/707 20060101ALI20241114BHJP
   C07D 403/06 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 31/52 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C07D473/34 321
A01P1/00
A01N43/90 105
A01N43/707
C07D403/06 CSP
A61K31/52
A61K31/506
A61P31/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078168
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100179578
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100195062
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 涼子
(72)【発明者】
【氏名】喜多村 徳昭
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 好隆
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
4H011
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB03
4C063CC42
4C063DD29
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC60
4C086CB07
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB33
4H011AA04
4H011BB09
(57)【要約】
【課題】抗ウイルス剤を提供する。
【解決手段】一般式(1):
【化1】
(式中、Xは、アデニン、チミン、ウラシル、シトシン、グアニンからなる群より選ばれる一種を表し、Rは、置換基で置換された炭素数1以上4以下のアルキル基、または、置換基で置換されたアリール基を表し、置換基は、水酸基、または、水酸基で置換された炭素数1以上4以下のアルキル基である。)
で表される1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】
(式中、Xは、アデニン、チミン、ウラシル、シトシン、グアニンからなる群より選ばれる一種を表し、Rは、置換基で置換された炭素数1以上4以下のアルキル基、または、前記置換基で置換されたアリール基を表し、前記置換基は、水酸基、または、水酸基で置換された炭素数1以上4以下のアルキル基である。)
で表される1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩。
【請求項2】
Xが、アデニンである、
請求項1に記載の1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩。
【請求項3】
Xが、チミン、ウラシル、シトシンからなる群より選ばれる一種である、
請求項1に記載の1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩。
【請求項4】
Rが、前記置換基で置換されたアリール基である、
請求項2に記載の1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩。
【請求項5】
Rが、前記置換基で置換されたフェニル基である、
請求項4に記載の1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩。
【請求項6】
前記置換基が、2以上の水酸基で置換された炭素数2以上3以下のアルキル基である、
請求項4または請求項5に記載の1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩。
【請求項7】
Rが、前記置換基で置換された炭素数1以上2以下のアルキル基である、
請求項2に記載の1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩。
【請求項8】
前記置換基が、水酸基である、
請求項7に記載の1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩。
【請求項9】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩を含む、抗ウイルス剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、1,2,3-トリアゾール化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
抗ウイルス薬として、核酸の構成成分であるヌクレオシド類の構造を一部化学修飾した化合物が用いられることがある。例えば、特許文献1には、眼軟膏剤として製剤化されたアシクロビルについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2004-503485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウイルスは、宿主細胞の外で増殖する細菌とは異なり、増殖のための代謝系の多くを宿主細胞に依存しているため、優れた選択毒性を示す薬物の創出は容易ではない。また、変異によって耐性を獲得したウイルスや新種のウイルスに対応するために、新規薬剤の開発が望まれている。このため、抗ウイルス活性を有する新たな技術が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することができる。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩が提供される。この1,2,3-トリアゾール化合物は、一般式(1)で表される。
【化1】
(式中、Xは、アデニン、チミン、ウラシル、シトシン、グアニンからなる群より選ばれる一種を表し、Rは、置換基で置換された炭素数1以上4以下のアルキル基、または、前記置換基で置換されたアリール基を表し、前記置換基は、水酸基、または、水酸基で置換された炭素数1以上4以下のアルキル基である。)この形態の1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩によれば、抗ウイルス活性を有する。
【0007】
(2)上記(1)に記載の1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩において、Xが、アデニンであってもよい。この形態の1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩によれば、抗ウイルス活性に優れる。
【0008】
(3)上記(1)に記載の1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩において、Xが、チミン、ウラシル、シトシンからなる群より選ばれる一種であってもよい。この形態の1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩によれば、抗ウイルス活性に優れる。
【0009】
(4)上記(2)に記載の1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩において、Rが、前記置換基で置換されたアリール基であってもよい。この形態の1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩によれば、抗ウイルス活性に優れる。
【0010】
(5)上記(2)または上記(4)に記載の1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩において、Rが、前記置換基で置換されたフェニル基であってもよい。この形態の1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩によれば、抗ウイルス活性により優れる。
【0011】
(6)上記(2)、上記(4)若しくは上記(5)に記載の1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩において、前記置換基が、2以上の水酸基で置換された炭素数2以上3以下のアルキル基であってもよい。この形態の1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩によれば、抗ウイルス活性にさらに優れる。
【0012】
(7)上記(2)に記載の1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩において、Rが、前記置換基で置換された炭素数1以上2以下のアルキル基であってもよい。この形態の1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩によれば、抗ウイルス活性に優れる。
【0013】
(8)上記(7)に記載の1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩において、前記置換基が、水酸基であってもよい。この形態の1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩によれば、抗ウイルス活性により優れる。
【0014】
本開示の他の形態によれば、上記(1)から上記(8)までのいずれか一項に記載の1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩を含む、抗ウイルス剤が提供される。
【0015】
なお、本開示は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、1,2,3-トリアゾール化合物の製造方法、抗ウイルス剤の製造方法、1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩を含む医薬組成物、1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩を含むウイルス感染症の予防薬、1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩を含むウイルス感染症の治療薬、抗ウイルス剤を製造するための1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩の使用、医薬組成物を製造するための1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩の使用、ウイルス感染症の予防方法、ウイルス感染症の治療方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】抗ウイルス活性評価の結果を示す説明図。
図2】細胞毒性評価の結果を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の一実施形態によれば、1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩が提供される。この1,2,3-トリアゾール化合物は、一般式(1)で表される。式中、Xは、アデニン、チミン、ウラシル、シトシン、グアニンからなる群より選ばれる一種を表し、Rは、置換基で置換された炭素数1以上4以下のアルキル基、または、置換基で置換されたアリール基を表し、置換基は、水酸基、または、水酸基で置換された炭素数1以上4以下のアルキル基である。
【0018】
【化1】
【0019】
本開示において、「炭素数1以上4以下のアルキル基」とは、直鎖状であってもよく、分枝鎖状であってもよい。炭素数1以上4以下のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
【0020】
本開示において、「アリール基」とは、1価の芳香族炭化水素基を意味する。アリール基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。ナフチル基としては、例えば、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。アントリル基としては、例えば、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基等が挙げられる。
【0021】
Xは、1,2,3-トリアゾール化合物の合成の観点から、アデニンまたはピリミジン塩基(チミン、ウラシル、シトシン)であることが好ましい。Xがアデニンまたはグアニンである形態では、それぞれ以下の一般式(2)または(3)に示す構造を有することが好ましい。換言すると、プリン塩基を含む1,2,3-トリアゾール化合物は、プリン塩基の9位の炭素にメチル基を介して1,2,3-トリアゾール環が結合した構造を有することが好ましい。なお、一般式(2)および(3)において、Rは、置換基で置換された炭素数1以上4以下のアルキル基、または、置換基で置換されたアリール基を表し、置換基は、水酸基、または、水酸基で置換された炭素数1以上4以下のアルキル基である。
【0022】
【化2】
【0023】
【化3】
【0024】
Xがチミン、ウラシルまたはシトシンである形態では、それぞれ、以下の一般式(4)~(6)に示す構造を有することが好ましい。換言すると、ピリミジン塩基を含む1,2,3-トリアゾール化合物は、ピリミジン塩基の1位の炭素にメチル基を介して1,2,3-トリアゾール環が結合した構造を有することが好ましい。なお、一般式(4)~(6)において、Rは、置換基で置換された炭素数1以上4以下のアルキル基、または、置換基で置換されたアリール基を表し、置換基は、水酸基、または、水酸基で置換された炭素数1以上4以下のアルキル基である。
【0025】
【化4】
【0026】
【化5】
【0027】
【化6】
【0028】
Xがアデニンである形態、すなわち、アデニンを含む1,2,3-トリアゾール化合物において、Rは、標的とする酵素との相互作用および本1,2,3-トリアゾール化合物の合成の観点から、1若しくは2以上の置換基で置換された炭素数1以上2以下のアルキル基、または、1若しくは2以上の置換基で置換されたアリール基であることが好ましい。この形態におけるアリール基としては、標的とする酵素との相互作用の観点から、炭素数6以上14以下のアリール基が好ましく、炭素数6以上10以下のアリール基がより好ましく、フェニル基がさらに好ましい。したがって、Xがアデニンである形態において、Rは、1若しくは2以上の置換基で置換されたフェニル基であることが特に好ましい。
【0029】
アデニンを含む1,2,3-トリアゾール化合物において、「置換基で置換された炭素数1以上4以下のアルキル基」における置換基としては、標的とする酵素との相互作用の観点から、水酸基、または、水酸基で置換された炭素数1以上2以下のアルキル基であることが好ましく、水酸基であることがより好ましい。アデニンを含む1,2,3-トリアゾール化合物において、「置換基で置換されたアリール基」における置換基としては、標的とする酵素との相互作用の観点から、水酸基で置換された炭素数1以上3以下のアルキル基であることが好ましく、2以上の水酸基で置換された炭素数2以上3以下のアルキル基であることがより好ましい。
【0030】
アデニンを含む1,2,3-トリアゾール化合物において、「置換基で置換された炭素数1以上4以下のアルキル基」および「置換基で置換されたアリール基」における上記置換基の数は、標的とする酵素との相互作用の観点から、1以上4以下であることが好ましく、1以上3以下であることがより好ましく、1以上2以下であることがさらに好ましい。置換基の数が2以上の場合、各置換基は同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0031】
アデニンを含む1,2,3-トリアゾール化合物において、「置換基で置換された炭素数1以上4以下のアルキル基」における総炭素数、換言すると、置換基を含めたアルキル基の総炭素数は、標的とする酵素との相互作用の観点から、1以上6以下であることが好ましく、1以上4以下であることがより好ましく、1以上2以下であることがさらに好ましい。
【0032】
アデニンを含む1,2,3-トリアゾール化合物において、「置換基で置換されたアリール基」における総炭素数、換言すると、置換基を含めたアリール基の総炭素数は、標的とする酵素との相互作用の観点から、6以上14以下であることが好ましく、6以上12以下であることがより好ましく、7以上10以下であることがさらに好ましく、8以上9以下であることが特に好ましい。
【0033】
Xがピリミジン塩基である形態、すなわち、チミン、ウラシルまたはシトシンを含む1,2,3-トリアゾール化合物において、Rは、標的とする酵素との相互作用および本1,2,3-トリアゾール化合物の合成の観点から、1または2以上の置換基で置換された炭素数1以上4以下のアルキル基であることが好ましく、1または2以上の置換基で置換された炭素数1以上2以下のアルキル基であることがより好ましい。チミン、ウラシルまたはシトシンを含む1,2,3-トリアゾール化合物において、「置換基で置換された炭素数1以上4以下のアルキル基」における置換基としては、標的とする酵素との相互作用の観点から、水酸基、または、水酸基で置換された炭素数1以上2以下のアルキル基であることが好ましく、水酸基であることがより好ましい。
【0034】
チミン、ウラシルまたはシトシンを含む1,2,3-トリアゾール化合物において、「置換基で置換された炭素数1以上4以下のアルキル基」における上記置換基の数は、標的とする酵素との相互作用の観点から、1以上4以下であることが好ましく、1以上3以下であることがより好ましく、1以上2以下であることがさらに好ましい。置換基の数が2以上の場合、各置換基は同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。チミン、ウラシルまたはシトシンを含む1,2,3-トリアゾール化合物において、「置換基で置換された炭素数1以上4以下のアルキル基」における総炭素数、換言すると、置換基を含めたアルキル基の総炭素数は、標的とする酵素との相互作用の観点から、1以上6以下であることが好ましく、1以上4以下であることがより好ましく、1以上2以下であることがさらに好ましい。
【0035】
本開示の1,2,3-トリアゾール化合物は、塩の形態であってもよい。塩としては、特に限定されないが、例えば、アミノ基等の塩基性基、水酸基やカルボキシ基等の酸性基における塩が挙げられるが、薬理学的に許容される塩であることが好ましい。
【0036】
塩基性基における塩としては、特に限定されないが、例えば、無機酸との塩や有機酸との塩等が挙げられる。無機酸としては、特に限定されないが、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸等が挙げられる。有機酸としては、特に限定されないが、例えば、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、アスパラギン酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機カルボン酸;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メシチレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等のスルホン酸等が挙げられる。
【0037】
酸性基における塩としては、特に限定されないが、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩;アンモニウム塩;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルピペリジン、4-メチルモルホリン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N-ベンジル-β-フェネチルアミン、1-エフェナミン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン等の含窒素有機塩基との塩等が挙げられる。
【0038】
本開示の1,2,3-トリアゾール化合物には、光学異性体、幾何異性体、互変異性体等の異性体が含まれる。また、本開示の1,2,3-トリアゾール化合物には、水和物や溶媒和物、およびこれらの結晶多形の物質も含まれる。また、本開示の1,2,3-トリアゾール化合物は、上記一般式(1)で示される化合物の薬理学的に許容されるプロドラッグも包含する。本開示において、薬理学的に許容されるプロドラッグとは、加溶媒分解によりまたは生理学的条件下で、アミノ基や水酸基等に変換されうる基を有する化合物を意味する。プロドラッグを形成する基としては、例えば、Prog. Med., 5, 2157-2161(1985)や、「医薬品の開発」(廣川書店、1990年)第7巻 分子設計163-198に記載の基が挙げられる。
【0039】
上記一般式(1)で表される化合物の製造方法について、以下に説明する。上記一般式(1)で表される化合物は、例えば、以下に示す反応工程により合成することができる。より具体的には、上記一般式(2)で表される化合物は、まず、以下に示すように、アデニンの9位にアジドメチル基を導入したアデニン誘導体を作成し、その後、このアデニン誘導体を用いて合成することができる。なお、本明細書において、「室温」とは、通常、約10℃~約35℃を意味する。
【0040】
【化7】
【0041】
(化合物番号1の化合物の合成)
アデニンを蒸留水に懸濁し、水酸化ナトリウムとホルムアルデヒド水溶液とを加えた後に、室温下で撹拌する。析出した固体を水で洗浄し、吸引濾取することにより、化合物番号1の化合物を得ることができる。
【0042】
(化合物番号2の化合物の合成)
化合物番号1の化合物をN,N-ジメチルホルムアミドに懸濁し、塩化チオニルを加えた後に、室温下で撹拌する。氷冷下で水を加えて過剰量の塩化チオニルを分解した後、溶媒を減圧留去する。析出した固体を吸引濾取することにより、化合物番号2の化合物を得ることができる。
【0043】
(化合物番号3の化合物の合成)
化合物番号2の化合物をDMSOに懸濁し、アジ化ナトリウムを加えた後に、約80℃で撹拌する。酢酸エチルで希釈し、飽和食塩水を加えて抽出する。無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去する。析出した固体を吸引濾取することにより、化合物番号3の化合物(アデニン誘導体)を得ることができる。
【0044】
上記一般式(4)で表される化合物は、まず、以下に示すように、チミンの1位にアジドメチル基を導入したチミン誘導体を作成し、その後、このチミン誘導体を用いて合成することができる。
【0045】
【化8】
【0046】
(化合物番号4の化合物の合成)
チミンをピリジンおよびアセトニトリルに懸濁し、氷冷下で塩化ベンゾイルを滴下後、室温下で撹拌する。メタノールを加えて撹拌した後、溶媒を減圧留去する。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、化合物番号4の化合物を得ることができる。
【0047】
(化合物番号5の化合物の合成)
化合物番号4の化合物をホルムアルデヒド水溶液に懸濁し、加熱還流する。室温まで冷却後、冷蔵する。析出した固体をホルムアルデヒド水溶液で洗浄し、吸引濾取することにより、化合物番号5の化合物を得ることができる。
【0048】
(化合物番号6の化合物の合成)
化合物番号5の化合物をN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、氷冷下で塩化チオニルを滴下し、室温下で撹拌する。氷冷下で水を加えた後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和する。クロロホルムで希釈後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて抽出する。飽和食塩水で洗浄し、溶媒を減圧留去する。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、化合物番号6の化合物を得ることができる。
【0049】
(化合物番号7の化合物の合成)
化合物番号6の化合物をアセトンに溶解し、アジ化ナトリウムを加えた後、室温下で撹拌する。不溶物を吸引濾過により除去した後、濾液を減圧濃縮する。残渣を酢酸エチルで希釈後、水を加えて抽出する。飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去する。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、化合物番号7の化合物を得ることができる。
【0050】
(化合物番号8の化合物の合成)
化合物番号7の化合物をメタノールに溶解し、氷冷下でナトリウムメトキシド/メタノール溶液を加えた後、室温下で撹拌する。氷冷下で塩酸を加えて中和後、溶媒を減圧留去する。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、化合物番号8の化合物(チミン誘導体)を得ることができる。
【0051】
上記一般式(5)で表される化合物は、まず、以下に示すように、ウラシルの1位にアジドメチル基を導入したウラシル誘導体を作成し、その後、このウラシル誘導体を用いて合成することができる。
【0052】
【化9】
【0053】
(化合物番号9の化合物の合成)
ウラシルおよびヨウ化セシウムをアセトニトリルに懸濁し、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミドを加えた後、約80℃で攪拌する。室温まで冷却後、氷冷下でベンジルオキシメチルクロリドを加えて室温下で攪拌する。氷冷下でメタノールを加えた後、溶媒を減圧留去する。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、化合物番号9の化合物を得ることができる。
【0054】
(化合物番号10の化合物の合成)
化合物番号9の化合物をクロロホルムに縣濁し、約50℃に加熱して溶解する。ヨードトリメチルシランを加えた後、加熱還流する。室温まで冷却後、析出した固体を吸引濾取することにより、化合物番号10の化合物を含む混合物を得ることができる。
【0055】
(化合物番号11の化合物の合成)
化合物番号10の化合物を含む混合物をアセトンに懸濁する。氷冷下でアジ化ナトリウムを加えた後、室温下で攪拌する。不溶物を吸引濾過により除去した後、濾液を減圧濃縮する。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、化合物番号11の化合物(ウラシル誘導体)を得ることができる。
【0056】
上記一般式(6)で表される化合物は、以下に示すように、化合物番号11の化合物(ウラシル誘導体)を用いて合成することができる。
【0057】
【化10】
【0058】
(化合物番号12の化合物の合成)
化合物番号11の化合物(ウラシル誘導体)をアセトニトリルに懸濁し、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルホニルクロリド、4-ジメチルアミノピリジンおよびトリエチルアミンを加えた後、室温下で攪拌する。氷冷下でアンモニア水を加えて室温で攪拌する。析出した固体を吸引濾取することにより、化合物番号12の化合物(シトシン誘導体)を得ることができる。また、濾液を減圧濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することによっても、化合物番号12の化合物(シトシン誘導体)を得ることができる。
【0059】
上記一般式(1)において、Xがグアニンであり、グアニンの7位の炭素にメチル基を介して1,2,3-トリアゾール環が結合した構造を有する化合物は、まず、以下に示すように、グアニンの7位にアジドメチル基を導入したグアニン誘導体1を作成し、その後、このグアニン誘導体1を用いて合成することができる。
【0060】
【化11】
【0061】
(化合物番号13の化合物の合成)
2-アミノ-6-クロロプリンをアセトニトリルに懸濁し、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミドを加えた後、加熱還流する。室温まで冷却後、氷冷下でピバロイルオキシメチルアジドとトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルを加えて約70℃で撹拌する。氷冷下でトリメチルアミンを加えた後、溶媒を減圧留去する。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、化合物番号13の化合物を得ることができる。
【0062】
(化合物番号14の化合物の合成)
化合物番号13の化合物を1M塩酸に懸濁し、約80℃で撹拌する。メタノールを加えた後、溶媒を減圧留去する。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、化合物番号14の化合物(グアニン誘導体1)を得ることができる。
【0063】
上記一般式(3)で表される化合物は、まず、以下に示すように、グアニンの9位にアジドメチル基を導入したグアニン誘導体2を作成し、その後、このグアニン誘導体2を用いて合成することができる。
【0064】
【化12】
【0065】
(化合物番号15の化合物の合成)
,9-ジアセチルグアニンおよびジフェニルカルバミルクロリドをピリジンに懸濁し、氷冷下でN,N-ジイソプロピルエチルアミンを滴下し、室温下で撹拌する。氷冷下で水を加えた後、溶媒を減圧留去する。残渣にエタノールおよび水(1:1)を加えて、約95℃で撹拌する。室温まで冷却後、析出した固体を吸引濾取することにより、化合物番号15の化合物を得ることができる。
【0066】
(化合物番号16の化合物の合成)
化合物番号15の化合物を1,2-ジクロロエタンに懸濁し、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミドを加えた後、約80℃で攪拌する。室温まで冷却後、氷冷下でピバロイルオキシメチルアジドとトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルを加えて約80℃で攪拌する。氷冷下でトリメチルアミンを加えた後、溶媒を減圧留去する。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、化合物番号16の化合物を得ることができる。
【0067】
(化合物番号17の化合物の合成)
化合物番号16の化合物をメタノールに縣濁し、アンモニア水を加えた後、室温で攪拌する。不溶物を吸引濾過により除去した後、溶媒を減圧留去する。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、化合物番号17の化合物(グアニン誘導体2)を得ることができる。
【0068】
(1,2,3-トリアゾール化合物の合成)
化合物番号3の化合物(アデニン誘導体)を出発物質として、例えば、以下に示す方法1または方法2により、上記一般式(2)で表される1,2,3-トリアゾール化合物を合成することができる。
【0069】
(方法1)
化合物番号3の化合物(核酸塩基誘導体)をN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、末端アルキンを加える。その後、硫酸銅五水和物水溶液およびアスコルビン酸ナトリウム水溶液を加え、室温下で撹拌する。溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、上記一般式(2)で表される1,2,3-トリアゾール化合物を得ることができる。
【0070】
(方法2)
化合物番号3の化合物(核酸塩基誘導体)、末端アルキン、Cu/HP20、Et3Nの混合物をトルエンに懸濁し、室温下で撹拌する。メタノールを加えた後、不溶物を吸引濾過により除去し、濾液を減圧濃縮する。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、上記一般式(2)で表される1,2,3-トリアゾール化合物を得ることができる。
【0071】
化合物番号8の化合物(チミン誘導体)を出発物質として、例えば上述した方法2において、化合物番号3の化合物に代えて化合物番号8の化合物を用いることにより、上記一般式(4)で表される1,2,3-トリアゾール化合物を合成することができる。
【0072】
化合物番号11の化合物(ウラシル誘導体)を出発物質として、例えば上述した方法2において、化合物番号3の化合物に代えて化合物番号11の化合物を用いることにより、上記一般式(5)で表される1,2,3-トリアゾール化合物を合成することができる。
【0073】
化合物番号12の化合物(シトシン誘導体)を出発物質として、例えば上述した方法2において、化合物番号3の化合物に代えて化合物番号12の化合物を用いることにより、上記一般式(6)で表される1,2,3-トリアゾール化合物を合成することができる。
【0074】
なお、上記各工程で得られた化合物は、反応液のまま次反応に用いられてもよく、粗生成物として回収された後に次反応に用いられてもよい。また、上記各工程では、常法に従って、濃縮、再結晶、蒸留、溶媒抽出、分溜、クロマトグラフィー等によって、反応混合物から化合物が単離・精製されてもよい。
【0075】
本開示の他の形態によれば、1,2,3-トリアゾール化合物またはその塩を含む抗ウイルス剤が提供される。後述の実施例に示されるように、本開示の1,2,3-トリアゾール化合物は、ウイルスに対して抗ウイルス活性を示す。このため、本開示の1,2,3-トリアゾール化合物は、抗ウイルス剤として利用できる。また、後述の実施例に示されるように、本開示の1,2,3-トリアゾール化合物は、宿主細胞に対する毒性が低い。本開示の1,2,3-トリアゾール化合物は、そのまま、または薬理学的に許容される担体等と混合して、医薬組成物として利用できる。この医薬組成物は、ウイルス感染症の予防薬およびウイルス感染症の治療薬として有用である。
【0076】
適用されるウイルスの種としては、特に限定されないが、例えば、DNAウイルスやRNAウイルスが挙げられる。
【0077】
本開示において、DNAウイルスには、2本鎖DNAウイルスおよび1本鎖DNAウイルスが含まれる。2本鎖DNAウイルスとしては、特に限定されないが、例えば、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルス、ポリオーマウイルス、B型肝炎ウイルス等が挙げられる。ヘルペスウイルスとしては、特に限定されないが、例えば、αヘルペスウイルス亜科、βヘルペスウイルス亜科、γヘルペスウイルス亜科に属するウイルス等が挙げられる。αヘルペスウイルス亜科に属するウイルスとしては、特に限定されないが、例えば、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、水痘帯状疱疹ウイルス等が挙げられる。βヘルペスウイルス亜科に属するウイルスとしては、特に限定されないが、例えば、サイトメガロウイルス、ヒトヘルペスウイルス6、ヒトヘルペスウイルス7等が挙げられる。γヘルペスウイルス亜科に属するウイルスとしては、特に限定されないが、例えば、EBウイルス、ヒトヘルペスウイルス8等が挙げられる。ポックスウイルスとしては、特に限定されないが、例えば、ワクチニアウイルス、伝染性軟属腫ウイルス等が挙げられる。1本鎖DNAウイルスとしては、特に限定されないが、例えば、パルボウイルスが挙げられる。
【0078】
本開示において、RNAウイルスには、1本鎖RNAウイルス、2本鎖RNAウイルス、およびRNA-DNAウイルスが含まれる。1本鎖RNAウイルスとしては、特に限定されないが、例えば、プラス鎖RNAウイルス、マイナス鎖RNAウイルス等が挙げられる。プラス鎖RNAウイルスとしては、特に限定されないが、例えば、トガウイルス、フラビウイルス、コロナウイルス等が挙げられる。トガウイルスとしては、特に限定されないが、例えば、シンドビスウイルス、風疹ウイルス等が挙げられる。フラビウイルスとしては、特に限定されないが、例えば、日本脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、C型肝炎ウイルス等が挙げられる。マイナス鎖RNAウイルスとしては、特に限定されないが、例えば、ラブドウイルス、フィロウイルス、パラミキソウイルス、オルソミキソウイルス、ブニヤウイルス、アレナウイルス等が挙げられる。ラブドウイルスとしては、特に限定されないが、例えば、狂犬病ウイルス、水疱性口内炎ウイルス等が挙げられる。フィロウイルスとしては、特に限定されないが、例えば、エボラウイルス、マルブルグウイルス等が挙げられる。パラミキソウイルスとしては、特に限定されないが、例えば、センダイウイルス、はしかウイルス、RSウイルス、おたふくかぜウイルス等が挙げられる。オルソミキソウイルスとしては、特に限定されないが、例えば、インフルエンザウイルスが挙げられる。ブニヤウイルスとしては、特に限定されないが、例えば、腎症候性出血熱ウイルスが挙げられる。アレナウイルスとしては、特に限定されないが、例えば、リンパ性脈絡髄膜炎ウイルスが挙げられる。2本鎖RNAウイルスとしては、特に限定されないが、例えば、レオウイルスが挙げられる。RNA-DNAウイルスとしては、特に限定されないが、例えば、レトロウイルスが挙げられる。
【0079】
適用されるウイルス種としては、DNAウイルスであることが好ましく、2本鎖DNAウイルスであることがより好ましく、ヘルペスウイルスであることがさらに好ましく、αヘルペスウイルス亜科またはβヘルペスウイルス亜科に属するウイルスであることが特に好ましい。アデニンを含む1,2,3-トリアゾール化合物は、αヘルペスウイルス亜科に属するウイルスに対して、特に好適に用いられ得る。チミン、ウラシルまたはシトシンを含む1,2,3-トリアゾール化合物は、βヘルペスウイルス亜科に属するウイルスに対して、特に好適に用いられ得る。
【0080】
本開示において「抗ウイルス活性」とは、ウイルスが感染した細胞(宿主細胞)において、当該ウイルスを消滅させるまたはその増殖を抑制する活性を意味し、例えば、宿主細胞におけるウイルス複製を抑制する活性が挙げられる。本開示の1,2,3-トリアゾール化合物が、抗ウイルス活性を有するメカニズムは定かではない。しかしながら、推定メカニズムとしては、三リン酸体の形で阻害作用を発揮することが挙げられる。より具体的には、ウイルスが増殖する際に発現されるチミジンキナーゼや細胞由来のリン酸化酵素によって三リン酸化され、この三リン酸体がウイルス遺伝子合成を阻害することにより抗ウイルス活性を発揮すると推定される。すなわち、チミジンキナーゼ等によって三リン酸化された構造が、ウイルスDNAポリメラーゼやRNAポリメラーゼ等の酵素の基質であるヌクレオシド三リン酸(dNTP)の構造と似ているため、dNTPの代わりにDNAポリメラーゼやRNAポリメラーゼに取り込まれて、これらの酵素の働きが阻害されることが推定される。上記の三リン酸体がウイルスDNA鎖やRNA鎖に結合すると、ウイルスDNA鎖やRNA鎖の伸長は停止する。なお、DNAポリメラーゼ阻害薬やRNAポリメラーゼ阻害薬が効果を発揮するためには、ウイルス感染細胞内でウイルス由来チミジンキナーゼによってリン酸化させる必要がある。このため、本開示の1,2,3-トリアゾール化合物を含む抗ウイルス剤は、ウイルス非感染細胞に対して影響を与えにくいと考えられる。
【0081】
本開示の1,2,3-トリアゾール化合物を含む抗ウイルス剤は、公知の製剤学的方法によって製剤化されていてもよい。本開示の1,2,3-トリアゾール化合物を含む抗ウイルス剤は、例えば、カプセル剤、錠剤、丸剤、液剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、フィルムコーティング剤、ペレット剤、トローチ剤、舌下剤、咀嚼剤、バッカル剤、ペースト剤、シロップ剤、懸濁剤、エリキシル剤、乳剤、塗布剤、軟膏剤、硬膏剤、パップ剤、経皮吸収型製剤、ローション剤、吸引剤、エアゾール剤、注射剤、坐剤等として、経口的または非経口的に使用されてもよい。
【0082】
本開示の1,2,3-トリアゾール化合物を含む抗ウイルス剤の製剤化においては、薬理学的に許容される担体、媒体、添加剤等と適宜組み合わされてもよい。担体としては、特に限定されないが、例えば、乳糖、カオリン、ショ糖、結晶セルロース、コーンスターチ、タルク、寒天、ペクチン、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、レシチン、塩化ナトリウム等の固体状担体や、グリセリン、落花生油、ポリビニルピロリドン、オリーブ油、エタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、水等の液状担体等が挙げられる。媒体としては、特に限定されないが、例えば、滅菌水、生理食塩水、植物油、溶剤等が挙げられる。添加剤としては、特に限定されないが、例えば、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、芳香剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤、希釈剤、等張化剤、無痛化剤、増量剤、崩壊剤、緩衝剤、コーティング剤、滑沢剤、着色剤、甘味剤、粘稠剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤等が挙げられる。医薬製剤中における1,2,3-トリアゾール化合物の含有量は、特に限定されないが、例えば、製剤全体の約0.01質量%~約100質量%であってもよい。
【0083】
本開示の1,2,3-トリアゾール化合物を含む抗ウイルス剤は、他の抗ウイルス剤や医薬組成物と組み合わされたキットの形態であってもよい。また、本開示の1,2,3-トリアゾール化合物を含む抗ウイルス剤は、他の抗ウイルス剤や医薬組成物と併用されてもよい。また、本開示の1,2,3-トリアゾール化合物を含む抗ウイルス剤や医薬組成物を用いた抗ウイルス療法は、免疫療法等の他の療法と併用されてもよい。
【0084】
本開示の1,2,3-トリアゾール化合物を含む抗ウイルス剤や医薬組成物の好ましい投与形態としては、特に限定されないが、例えば、経口投与または非経口投与、より具体的には、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、皮内投与、気道内投与、直腸投与および筋肉内投与、輸液による投与等が挙げられる。
【0085】
本開示の1,2,3-トリアゾール化合物を含む抗ウイルス剤を投与する場合、その投与量は、対象の年齢、体重、症状、健康状態、重篤状態、薬物に対する忍容性、投与形態等に応じて、適宜選択されてもよい。本開示の1,2,3-トリアゾール化合物を含む抗ウイルス剤の1日当たりの投与量は、例えば、有効成分である1,2,3-トリアゾール化合物の量として、0.001~2000mg/kg体重、好ましくは0.01~1000mg/kg体重、より好ましくは、0.1~500mg/kg体重であり、1回または複数回に分けて対象に投与されてもよい。例えば、対象が成人である場合、1回あたり10mg~2000mgを1日1~7回、好ましくは1回あたり100mg~1000mgを1日3~5回、経口投与してもよい。上記投与量や投与形態等に基づいて、ウイルス感染症の予防方法およびウイルス感染症の治療方法が提供される。
【0086】
本開示の1,2,3-トリアゾール化合物を含む抗ウイルス剤は、ヒトを対象として使用することができるが、例えば、サル、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウシ、ブタ等、ヒト以外の動物も対象とすることができる。
【実施例0087】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0088】
1.アデニン誘導体の合成
以下の方法により、アデニン誘導体を合成した。
【0089】
【化13】
【0090】
アデニン(4.06g,32.2mmol)を蒸留水(132mL)に懸濁し、水酸化ナトリウム(258mg,6.44mmol)を加えた後、37%ホルムアルデヒド水溶液(2.60mL,51.5mmol)を加えて室温下で2.5時間撹拌した。析出した固体を水で洗浄し、吸引濾取することにより、化合物番号1の化合物(3.48g,65%)を無色固体として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.15 (s, 1H, H-8), 8.15 (s, 1H, H-2), 7.19 (s, 2H, NH2), 6.73 (t, J = 6.7 Hz, 1H, OH), 5.48 (d, J = 6.7 Hz, 2H, CH2); 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 156.0, 152.6, 149.1, 140.7, 118.6, 65.6; HRMS (ESI) Calcd for C6H8N5O [M+H]+: 166.0729. Found: 166.0731.
【0091】
化合物番号1の化合物(832mg,5.03mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(40mL)に懸濁し、氷冷下で塩化チオニル(980μL,15.0mmol)を滴下後、室温下で24時間撹拌した。氷冷下で水を加えて過剰量の塩化チオニルを分解した後、溶媒を減圧留去した。析出した固体を吸引濾取することにより、化合物番号2の化合物(894mg,97%)を無色固体として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.4 (d, J = 1.2 Hz, 1H, NH), 9.92 (d, J = 1.2 Hz, 1H, NH), 8.73 (s, 1H, H-8), 8.68 (s, 1H, H-2), 6.29 (s, 2H, CH2); 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 151.3, 148.2, 147.0, 143.2, 118.6, 50.2; HRMS (ESI) Calcd for C6H7ClN5 [M+H]+: 184.0390. Found: 184.0383.
【0092】
化合物番号2の化合物(918mg,5.0mmol)をDMSO(15mL)に懸濁し、アジ化ナトリウム(982mg,15.0mmol)を加えた後、80℃で24時間撹拌した。酢酸エチルで希釈し、飽和食塩水を加えて抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。析出した固体を吸引濾取することにより、化合物番号3の化合物(アデニン誘導体)(314mg,33%)を無色固体として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.27 (s, 1H, H-8), 8.18 (s, 1H, H-2), 7.34 (s, 2H, NH2), 5.66 (s, 2H, CH2); 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 156.1, 153.1, 149.5, 140.5, 118.6, 57.0; HRMS (ESI) Calcd for C6H7N8 [M+H]+: 191.0794. Found: 191.0784.
【0093】
2.チミン誘導体の合成
以下の方法により、チミン誘導体を合成した。
【0094】
【化14】
【0095】
チミン(3.79g,30.1mmol)をピリジン(10.8mL)とアセトニトリル(32.4mL)に懸濁し、氷冷下で塩化ベンゾイル(7.3mL,62.8mmol)を滴下後、室温下で48時間撹拌した。メタノール(10mL)を加えて2時間撹拌した後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1~0:1)にて精製し、化合物番号4の化合物(6.46g,93%)を無色固体として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ = 11.36 (s, 1H, NH), 7.93 (d, J = 8.0 Hz, 2H. H-Ph), 7.77 (t, J = 8.0 Hz, 1H, H-Ph), 7.59 (t, J = 8.0 Hz, 2H, H-Ph), 7.53 (d, J = 1.0 Hz, 1H, H-6), 1.81 (d, J = 1.0 Hz, 3H, CH3).
【0096】
化合物番号4の化合物(2.30g,10.0mmol)を37%ホルムアルデヒド水溶液(20mL)に懸濁し、3時間加熱還流した。室温まで冷却後、冷蔵庫に24時間放置した。析出した固体を3%ホルムアルデヒド水溶液で洗浄し、吸引濾取することにより、化合物番号5の化合物(1.86g,71%)を無色固体として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.92 (d, J = 8.0 Hz, 2H, H-Ph), 7.80-7.75 (m, 2H, H-6, H-Ph), 7.60 (t, J = 8.0 Hz, 2H, H-Ph), 6.76 (t, J = 8.0 Hz, 1H, OH), 5.07 (d, J = 8.0 Hz, 2H, CH2), 1.85 (d, J = 1.2 Hz, 3H, CH3); 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 169.8, 163.0, 149.2, 141.5, 135.5, 131.2, 130.3, 129.3, 108.7, 70.6, 11.8; HRMS (ESI) Calcd for C13H12N2NaO4 [M+Na]+: 283.0695. Found: 283.0693.
【0097】
化合物番号5の化合物(267mg,1.02mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(10mL)に溶解し、氷冷下で塩化チオニル(210μL,2.89mmol)を滴下し、室温下で3時間撹拌した。氷冷下で水を加えた後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和した。クロロホルムで希釈後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて抽出した。飽和食塩水で洗浄し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)にて精製し、化合物番号6の化合物(253mg,89%)を無色固体として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.97-7.95 (m, 3H, H-6, H-Ph), 7.80 (t, J = 7.8 Hz, 1H, H-Ph), 7.62 (t, J = 7.8 Hz, 2H, H-Ph), 5.72 (s, 2H, CH2), 1.86 (d, J = 1.2 Hz, 3H, CH3); 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 169.9, 163.0, 149.3, 141.5, 135.5, 131.2, 130.3, 129.6, 108.7, 70.5, 11.8; HRMS (ESI) Calcd for C13H11ClN2NaO3 [M+Na]+: 301.0356. Found: 301.0354.
【0098】
化合物番号6の化合物(164mg,0.59mmol)をアセトン(6mL)に溶解し、アジ化ナトリウム(77.1mg,1.18mmol)を加えた後、室温下で24時間撹拌した。不溶物を吸引濾過により除去した後、濾液を減圧濃縮した。残渣を酢酸エチルで希釈後、水を加えて抽出した。飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)にて精製し、化合物7の化合物(166mg,99%)を無色固体として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.98 (d, J = 7.7 Hz, 2H, H-Ph), 7.88 (d, J = 1.2 Hz, 1H, H-6), 7.79 (t, J = 7.7 Hz, 1H, H-Ph), 7.60 (t, J = 7.7 Hz, 2H, H-Ph), 5.21 (s, 2H, CH2), 1.84 (d, J = 1.2 Hz, 3H, CH3); 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 169.9, 163.0, 149.3, 141.5, 135.5, 131.2, 130.3, 129.6, 108.7, 70.5, 11.8; HRMS (ESI) Calcd for C13H11N5NaO3 [M+Na]+: 308.0760. Found: 308.0750.
【0099】
化合物番号7の化合物(298mg,1.04mmol)をメタノール(10.4mL)に溶解し、氷冷下で28%ナトリウムメトキシド/メタノール溶液(38.6μL,20.8mmol)を加えた後、室温下で18時間撹拌した。氷冷下で1M塩酸を加えて中和後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)にて精製し、化合物番号8の化合物(162mg,86%)を無色固体として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.5 (s, 1H, NH), 7.61 (d, J = 1.2 Hz, 1H, H-6), 5.12 (s, 2H, CH2), 1.75 (d, J = 1.2 Hz, 3H, CH3); 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 164.2, 151.2, 140.2, 109.6, 62.1, 11.9; HRMS (ESI) Calcd for C6H6N5O2 [M-H]-: 180.0521. Found: 180.0520.
【0100】
3.ウラシル誘導体の合成
以下の方法により、ウラシル誘導体を合成した。
【0101】
【化15】
【0102】
ウラシル(560mg,5.0mmol)とヨウ化セシウム(1.30g,5.0mmol)をアセトニトリル(5.0mL)に懸濁し、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(2.5mL,10.0mmol)を加えた後、80℃で1時間攪拌した。室温まで冷却後、氷冷下でベンジルオキシメチルクロリド(755μL,5.5mmol)を加えて室温下で14時間攪拌した。氷冷下でメタノールを加えた後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1~1:2)にて精製し、化合物番号9の化合物(966mg,83%)を無色固体として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.32 (s, 1H, NH), 7.71 (d, J = 7.8 Hz, 1H, H-6), 7.33-7.29 (m, 5H, H-Ph), 5.59 (d, J = 7.8 Hz, 1H, H-5), 5.16 (s, 2H, OCH2N), 4.55 (s, 2H, OCH2Ph); 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 163.7, 151.1, 144.9, 137.5, 128.3, 127.7, 127.6, 101.7, 76.2, 70.3; HRMS (ESI) Calcd for C12H11N2O3 [M-H]-: 231.0770. Found: 231.0752.
【0103】
化合物番号9の化合物(929mg,4.0mmol)をクロロホルム(10mL)に縣濁し、50℃に加熱して溶解した。ヨードトリメチルシラン(2.3mL,17.0mmol)を加えた後、20時間加熱還流した。室温まで冷却後、析出した固体を吸引濾取することにより、化合物番号10の化合物を含む混合物(955mg)を得た。本混合物を精製することなく、そのまま次の工程に用いた。
【0104】
化合物番号10の化合物を含む混合物(951mg)をアセトン(18mL)に懸濁した。氷冷下でアジ化ナトリウム(735mg,11.0mmol)を加えた後、室温下で6時間攪拌した。不溶物を吸引濾過により除去した後、濾液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1~1:2)にて精製し、化合物番号11の化合物(575mg,86%,over2steps)を無色固体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.49 (s, NH), 7.72 (d, J = 8.2 Hz, 1H, H-6), 5.63 (d, J = 8.2 Hz, 1H, H-5), 5.15 (s, 2H, CH2); 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 163.6, 151.2, 144.7, 102.0, 62.3; HRMS (ESI) Calcd for C5H4N5O2 [M-H]-: 166.0365. Found: 166.0365.
【0105】
4.シトシン誘導体の合成
以下の方法により、シトシン誘導体を合成した。
【0106】
【化16】
【0107】
化合物番号11の化合物(334mg,2.0mmol)をアセトニトリル(10mL)に懸濁し、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルホニルクロリド(1.21g,4.0mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(536mg,4.0mmol)、トリエチルアミン(555μL,4.0mmol)を加えた後、室温下で1時間攪拌した。氷冷下でアンモニア水(5.0mL)を加えて室温で19時間攪拌した。析出した固体を吸引濾取することにより、化合物番号12の化合物(67.9mg,20%)を無色固体として得た。また、濾液を減圧濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=8:1)にて精製し、化合物番号12の化合物(209mg,63%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.62 (d, J = 7.4 Hz, 1H, H-6), 7.32 (s, 1H, NH), 7.27 (s, 1H, NH), 5.69 (d, J = 7.4 Hz, 1H, H-5), 5.07 (s, 2H, CH2).
【0108】
5. 1,2,3-トリアゾール化合物の合成
得られたアデニン誘導体、チミン誘導体、ウラシル誘導体、シトシン誘導体を用いて、以下の方法により、1,2,3-トリアゾール化合物を合成した。
【0109】
(実施例1)
アデニン誘導体(47.6mg,250μmol)、末端アルキンとしてのプロパルギルアルコール(275μmol)、1%Cu/HP20(16.0mg,2.5μmol)、トリエチルアミン(38μL,275μmol)の混合物をトルエン(250μL)に懸濁し、室温下で撹拌した。メタノールを加えた後、不溶物を吸引濾過により除去し、濾液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール)にて精製し、下記式(7)で示される実施例1の1,2,3-トリアゾール化合物(以下、「9mA」とも呼ぶ)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.40 (s, 1H), 8.20 (s, 1H), 8.18 (s, 1H), 7.36 (s, 2H), 6.75 (s, 2H), 5.19-5.17 (m, 1H), 4.47 (d, J = 5.5 Hz, 2H).
【0110】
【化17】
【0111】
(実施例2)
アデニン誘導体(951mg,5.0mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(3.4mL)に溶解し、末端アルキンとしての(S)-1-(4-エチニルフェニル)エタン-1,2-ジオール(892mg,5.5mmol)を加えた。40mM硫酸銅五水和物水溶液(10mL)、100mMアスコルビン酸ナトリウム水溶液(4mL)を加えた後、室温下で撹拌した。溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール)にて精製し、下記式(8)で示される実施例2の1,2,3-トリアゾール化合物(以下、「9SMA」とも呼ぶ)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.75 (s, 1H), 8.46 (s, 1H), 8.20 (s, 1H), 7.76 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.38 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.37 (s, 1H), 6.82 (s, 2H), 5.28 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 4.74 (t, J = 5.6 Hz, 1H), 4.56-4.52 (m, 1H), 3.42 (t, J = 5.6 Hz, 1H).
【0112】
【化18】
【0113】
(実施例3)
アデニン誘導体(951mg,5.0mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(3.4mL)に溶解し、末端アルキンとしての(R)-1-(4-エチニルフェニル)エタン-1,2-ジオール(892mg,5.5mmol)を加えた。40mM硫酸銅五水和物水溶液(10mL)、100mMアスコルビン酸ナトリウム水溶液(4mL)を加えた後、室温下で撹拌した。溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール)にて精製し、下記式(9)で示される実施例3の1,2,3-トリアゾール化合物(以下、「9RMA」とも呼ぶ)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.75 (s, 1H), 8.46 (s, 1H), 8.20 (s, 1H), 7.76 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.38 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.37 (s, 1H), 6.82 (s, 2H), 5.28 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 4.74 (t, J = 5.6 Hz, 1H), 4.56-4.52 (m, 1H), 3.42 (t, J = 5.6 Hz, 1H).
【0114】
【化19】
【0115】
(実施例4)
アデニン誘導体に代えてチミン誘導体を用いた以外は、実施例1と同様な方法によって、下記式(10)で示される実施例4の1,2,3-トリアゾール化合物(以下、「1mT」とも呼ぶ)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.51 (s, 1H), 8.02 (s, 1H), 7.78 (d, J = 0.6 Hz, 1H), 6.18 (s, 2H), 5.21 (t, J = 5.7 Hz, 1H), 4.50 (d, J = 5.7 Hz, 2H), 1.76 (d, J = 0.6 Hz, 3H).
【0116】
【化20】
【0117】
(実施例5)
アデニン誘導体に代えてウラシル誘導体を用いた以外は、実施例1と同様な方法によって、下記式(11)で示される実施例5の1,2,3-トリアゾール化合物(以下、「1mU」とも呼ぶ)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.50 (s, 1H), 8.03 (s, 1H), 7.90 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 6.22 (s, 2H), 5.67 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 5.21 (t, J = 5.7 Hz, 1H), 4.50 (d, J = 5.7 Hz, 2H).
【0118】
【化21】
【0119】
(実施例6)
アデニン誘導体に代えてシトシン誘導体を用いた以外は、実施例1と同様な方法によって、下記式(12)で示される実施例6の1,2,3-トリアゾール化合物(以下、「1mC」とも呼ぶ)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.99 (s, 1H), 7.82 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.35 (s, 1H), 7.30 (s, 1H), 6.16 (s, 2H), 5.72 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 5.18 (t, J = 5.9 Hz, 1H), 4.49 (d, J = 5.9 Hz, 2H).
【0120】
【化22】
【0121】
6.実験
1mU、9mA、9SMA、9RMAを用いて、単純ヘルペスウイルスに対する抗ウイルス活性評価を行った。また、細胞毒性評価もあわせて行った。
【0122】
(1)抗ウイルス活性評価の方法
アフリカミドリザルの腎臓由来のVero細胞を、感染前日に、6ウェルプレートにセミコンフルエントに播種した。5%仔ウシ血清入りDMEM培地を用いて、37℃、5%CO存在下で細胞を培養した。感染30分前に、ウェルに、1,2,3-トリアゾール化合物のDMSO溶液をそれぞれ添加した。添加濃度は、100μM、10μM、1μMとした。コントロールとして、1,2,3-トリアゾール化合物に代えて、DMSO溶液を同様に添加した。その後、単純ヘルペスウイルス1型HSV-1(F株)をVero細胞に感染させ、37℃で72時間培養を行った。感染72時間後に細胞をホルマリンで固定して、クリスタルバイオレット染色を実施した。各ウェルにおけるプラークを観察し、カウントした。コントロールと比較して、プラークがどのくらい減少したかに基づいて、抗ウイルス活性を評価した。
【0123】
(2)抗ウイルス活性評価の結果
図1は、抗ウイルス活性評価の結果を示す説明図である。図1において、縦軸は、カウントされたプラーク数を示している。実験で用いた1,2,3-トリアゾール化合物は、いずれも、コントロールとしてのDMSOよりもプラーク数が少なく、ウイルスの増殖が抑制されることがわかった。このため、1,2,3-トリアゾール化合物が、抗ウイルス活性を有することが示された。
【0124】
(3)細胞毒性評価の方法
アフリカミドリザルの腎臓由来のVero細胞を、阻害剤添加の前日に、1×10Cells/ウェルで96ウェルプレートに播種した。5%仔ウシ血清入りDMEM培地を用いて、37℃、5%CO存在下で細胞を培養した。当日に、ウェルに、1,2,3-トリアゾール化合物のDMSO溶液をそれぞれ添加した。添加濃度は、100μMおよび10μMとした。コントロールとして、1,2,3-トリアゾール化合物に代えて、DMSO溶液を同様に添加した。37℃で24時間培養を行った。なお、n数は5とした。培養24時間後に、プロメガ社製のCellTiter 96 AQueous One Solution Reagentキット(MTSアッセイ:生細胞の比色定量分析)を用いて、生細胞数を比較した。コントロールの生細胞数を1とした場合における生細胞数の相対値を求めた。
【0125】
(4)細胞毒性評価の結果
図2は、細胞毒性評価の結果を示す説明図である。図2において、縦軸は、生細胞数の相対値を示している。実験で用いた1,2,3-トリアゾール化合物において、明らかに細胞増殖を阻害するものはなかった。抗ウイルス活性評価および細胞毒性評価の結果から、1,2,3-トリアゾール化合物は、抗ウイルス活性を有し、且つ、細胞毒性が低いことが認められた。
【0126】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
図1
図2