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特開2024-162578脱共役タンパク2遺伝子発現亢進用医薬組成物及び食品組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162578
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】脱共役タンパク2遺伝子発現亢進用医薬組成物及び食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4015 20060101AFI20241114BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241114BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20241114BHJP
【FI】
A61K31/4015
A61P43/00 107
A23L33/10
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078222
(22)【出願日】2023-05-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】300022526
【氏名又は名称】TOWA CORPORATION 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148792
【弁理士】
【氏名又は名称】三田 大智
(72)【発明者】
【氏名】橋本 顕
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
【Fターム(参考)】
4B018MD18
4B018ME14
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC07
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB22
(57)【要約】
【課題】 脱共役タンパク2遺伝子発現亢進用医薬組成物及び脱共役タンパク2遺伝子発現亢進用食品組成物の提供。
【解決手段】 本発明は5-アセチル-1ベンジルピロリジン-2-オンを有効成分として含有してなる脱共役タンパク2遺伝子発現亢進用医薬組成物及び脱共役タンパク2遺伝子発現亢進用食品組成物に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンを有効成分として含有してなる脱共役タンパク2遺伝子発現亢進用医薬組成物。
【請求項2】
5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンを有効成分として含有してなる脱共役タンパク2遺伝子発現亢進用食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱共役タンパク2(Uncoupling protein 2;以下、単に「UCP2」という。)遺伝子の発現亢進用の医薬組成物及び食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に係る医薬組成物及び食品組成物の有効成分たる5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オン(5-Acetyl-1-benzylpyrrolidin-2-one)は、ピロリジンの5位に位置する炭素にアセチル基がついており、1位に位置する窒素にベンジル基がついており、2位に位置する炭素に酸素の二重結合がついている化合物である。
【0003】
この5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンについては、下記非特許文献1に合成化合物の一例として示唆されているが、存在が示唆されているにすぎず、具体的な属性については何らの開示も示唆もなされていない。
【0004】
また、下記特許文献1乃至5に示すように、本発明者は、既に5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンのPDE5阻害作用、エストラジオール産生促進作用、筋肥大促進作用、キサンチンオキシダーゼ阻害作用及び5-アミノレブリン酸産生促進作用を見出しているが、UCP2遺伝子の発現を亢進する作用については見出していなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】DESKUS、外2名、「SYNTHESIS OF 5S-(1-OXOALKYL AND ARYL)-2-PYRROLIDINONE DERIVATIVES」、SYNTHETIC COMMUNICATIONS、アメリカ合衆国、Marcel Dekker,Inc.、1998年5月、第28巻、第9号、p.1649-1659
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6537689号公報
【特許文献2】特許第6578046号公報
【特許文献3】特許第6962630号公報
【特許文献4】特許第7134541号公報
【特許文献5】特許第7253301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンがUCP2遺伝子を発現亢進する作用を有していることを開示又は示唆する文献はない。なお、UCP2の産生促進は、UCP2遺伝子に起因することが知られている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意研究の結果、5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンがUCP2遺伝子の発現を亢進する作用を有し、ひいてはUCP2を産生促進する作用を有していることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明は、5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンを有効成分として含有してなるUCP2遺伝子発現亢進用医薬組成物またはUCP2遺伝子発現亢進用食品組成物に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のUCP2遺伝子発現亢進用医薬組成物及び食品組成物は、UCP2遺伝子の発現を亢進することによってUCP2の産生を促進し、これにより、活性酸素増大抑制(抗酸化)の効果が期待でき、ひいては、一酸化窒素(NO)産生抑制による抗炎症,メタボリックシンドロームの予防・改善,熱中症の予防,精子運動低下抑制による男性不妊改善等の効果が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンを有効成分として含有するUCP2遺伝子発現亢進用医薬組成物に関する。本発明に係る医薬組成物は、UCP2遺伝子の発現亢進に基づくUCP2産生促進により、活性酸素増大抑制(抗酸化)、ひいては、NO産生抑制による抗炎症,メタボリックシンドロームの予防・改善,熱中症の予防,精子運動低下抑制による男性不妊改善等に貢献する。
【0012】
5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンは、ピロリジンの5位に位置する炭素にアセチル基がついており、1位に位置する窒素にベンジル基がついており、2位に位置する炭素に酸素の二重結合がついている化合物であり、構造式は下記化1のとおりである。また、分子式はC1315NOである。
【0013】
【化1】
【0014】
UCPはミトコンドリアの内膜にあってプロトン輸送体として働き,この電位勾配を消失させることにより電子伝達系とATP(アデノシン三リン酸)合成とを脱共役するタンパクである。現在5つのアイソフォーム(UCP1~5)が存在することが知られており、UCP2はその一つであって、骨格筋をはじめとして、ほぼ全ての組織に存在する。
【0015】
本発明に係る医薬組成物は、このUCP2をコードする遺伝子たるUCP2遺伝子の発現を亢進することによってUCP2の産生を促進して、活性酸素増大抑制(抗酸化)、ひいては、NO産生抑制による抗炎症,メタボリックシンドロームの予防・改善,熱中症の予防,精子運動低下抑制による男性不妊改善等に貢献する。
【0016】
本発明に係る医薬組成物は、医薬品又は医薬部外品として使用することができ、各種の形態とすることができる。これら医薬品又は医薬部外品は、例えば、散剤、丸剤、錠剤(例えば、コーティング錠、糖衣錠、チュワブル錠等)、カプセル剤(例えば、硬若しくは軟ゼラチンカプセル剤等)、顆粒剤、内服液剤(例えば、乳濁剤、懸濁剤、シロップ等)等の経口投与に適した剤形とすることができる。
【0017】
その他、例えば、坐剤等の直腸内投与に適した剤形、例えば、注射剤、輸液等の血管内投与、筋肉内投与、皮下又は皮肉投与等に適した剤形、例えば軟膏、クリーム剤、ゲル剤、又は液剤(点眼液、洗眼液等を含む。)等の局部的又は経皮的投与に適した剤形、すなわち非経口的投与に適した剤形とすることもできるが、好ましくは経口投与である。
【0018】
本発明の医薬組成物を錠剤、顆粒剤,カプセル剤、チュワブル錠の形態で用いる場合には、打錠加工助剤、顆粒加工助剤、カプセル加工助剤等をはじめとして既知の担体が用いられ得る。
【0019】
打錠加工助剤としては、グラニュー糖、上白糖、粉糖、還元麦芽糖水飴粉末、乳糖、ブドウ糖、プルラン、エリスリトール、デンプン、デキストリン等あらゆる糖類、結晶セルロース、アラビアガム、おから等の食物繊維類、トウモロコシタンパク、リン酸カルシウム等の食品カルシウム、食品エキス類、食品乾燥粉末類、天然果汁末類、ショ糖脂肪酸エステル等の界面活性剤、粉末油脂類、グリセリン、脂肪酸エステル等の油脂類、又はチュワブル錠に使用する各種甘味料、各種酸味料、各種香料等の味付け素材、コーティング素材としてのシェラック、トウモロコシタンパク、酵母細胞壁、デンプン、還元麦芽糖水飴、シュガーレス糖衣、マルチトール、グリセリン、ソルビトール、HPMC、HPC等が例示される。ただし、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はない。
【0020】
また、顆粒加工助剤としても、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はないが、グラニュー糖、上白糖、粉糖、還元麦芽糖水飴粉末、乳糖、ブドウ糖、プルラン、エリスリトール、デンプン、デキストリン等あらゆる糖類、結晶セルロース、アラビアガム等の食物繊維類、トウモロコシタンパク、リン酸カルシウム等の食品カルシウム、食品エキス類、食品乾燥粉末類、天然果汁末類等が例示される。
【0021】
また、カプセル加工助剤としても、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はないが、ハードカプセルタイプのカプセルを調製するための、グラニュー糖、上白糖、粉糖、還元麦芽糖水飴粉末、乳糖、ブドウ糖、プルラン、エリスリトール、デンプン、デキストリン等あらゆる糖類、結晶セルロース、アラビアガム等の食物繊維類、トウモロコシタンパク、リン酸カルシウム等の食品カルシウム、食品エキス類、食品乾燥粉末類、天然果汁末類等が、ソフトカプセルタイプのカプセルを調製するための、食品油脂、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル等の内容物粘度調整剤等が、それぞれ例示される。
【0022】
錠剤は、通常、打錠機を使用して調製され得るが、錠剤に味付け素材をブレンドしてチュワブル錠にしたり、錠剤表面を、自動コーティング機、噴霧顆粒機、又は手掛けパンを用いてコーティングしたりしてもよい。顆粒剤の成形には、噴霧顆粒機タイプ、練りだし(押し出し)タイプ、又は高速撹拌顆粒機タイプの各種顆粒機が使用され得る。カプセル剤の調製には、カプセル助剤を混合してカプセル充填機(ハードタイプ及びソフトタイプ)が使用され得る。
【0023】
また、本発明は、5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンを有効成分として含有してなるUCP2遺伝子発現亢進用食品組成物に関する。本発明に係る食品組成物は、UCP2遺伝子発現亢進に基づくUCP2産生促進によって、活性酸素増大抑制(抗酸化)、ひいては、NO産生抑制による抗炎症,メタボリックシンドロームの予防・改善,熱中症の予防,精子運動低下抑制による男性不妊改善等の効果が期待できる。
【0024】
本発明のUCP2遺伝子発現亢進用食品組成物は、食品、飲料又は動物用飼料として、例えば、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、美容食品又は栄養補助食品(サプリメント)として使用することができる。これら食品、飲料及び動物用飼料は、例えば、アイスクリーム、ゼリー、あめ、チョコレート、及びチューインガム等の既知の食品形態、お茶及びジュース等の飲料水としての形態であってもよい。また、液剤、粉剤、粒剤、カプセル剤又は錠剤等の形態であってもよい。
【0025】
本発明に係るUCP2遺伝子発現亢進用医薬組成物及びUCP2遺伝子発現亢進用食品組成物の摂取量は、特に制限されないが、使用者若しくは患者等の摂取者又は摂取動物の年齢、体重又は症状等や剤形に応じて適宜選択することができる。また、摂取期間は、摂取者又は摂取動物の年齢、症状に応じて任意に定めることができる。
【実施例0026】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0027】
〈DNAマイクロアレイによるUCP2遺伝子の発現量の測定〉
本試験では、ヒト肝臓由来細胞 Hep G2を5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オン存在下で培養した後、DNAマイクロアレイ解析を実施し、UCP2遺伝子発現亢進作用があるか否かを確認した。
【0028】
〈肝臓由来細胞〉
ヒト肝癌株 Hep G2
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所より入手。
【0029】
〈検体の調製〉
1)5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オン10 mg にDMSO を100 μL 加え溶解し,DMSO で被験物質の濃度が50 mMとなるよう段階希釈した。
2)さらに細胞培養用培地で被験物質の濃度が50 μMとなるよう希釈した。
【0030】
〈方法〉
〈Hep G2細胞の調製〉
1)Hep G2 細胞を2×105 cell/mL の細胞濃度で6 cm dish に5 mLずつ播種した。
2)播種24 時間後に接着を確認し、細胞培養用培地を除去後、新たに被験物質(最終濃度50 μM)含有の細胞培養用培地を各5 mLずつ添加した。
3)添加後24 時間培養し、細胞培養用培地を抜いて接着細胞をPBS で洗浄後、得られた細胞を下述のRNA 抽出→DNA マイクロアレイ解析に用いた。
【0031】
〈RNA 抽出〉
1)上述の細胞調製で得られた細胞から、RNAiso plus を用いてRNA を抽出し、RNeasy MinElute Cleanup Kitで精製した。
【0032】
〈DNA マイクロアレイ解析〉
1)RNA サンプルをLow Input Quick Amp Labeling Kit (Agilent) を用いてcDNA の合成、Cy3 ラベル化cRNA 合成と精製を行った。
2)Gene Expression Hybridization Kit (Agilent) を用い、それぞれのラベル化cRNA をフラグメンテーションし,Whole Human Genome Microarray Ver2.0 (Agilent) にアプライ、65℃で17 時間ハイブリダイゼーションした。
3)Gene Expression Wash Buffer 1 及び2 (Agilent) を用い、アレイスライドを洗浄した。
4)マイクロアレイスキャナー (GenePix 4000B,Molecular Devices) でスキャンしたアレイ画像を、アレイ解析ソフトウェアGenePix Pro (Molecular Devices) で数値化した。蛍光強度値をノーマライズし、コントロールに対して被験物質添加群のRatioを算出した。
【0033】
〈結果〉
UCP2遺伝子はヒト肝臓由来細胞株(HepG2)において5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オン共存下では発現が1.54倍亢進した。よって、5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンはUCP2遺伝子発現を亢進することでUCP2の産生を促進すると考えられる。