(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162583
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】通信制御装置、通信制御方法及び通信制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 41/0826 20220101AFI20241114BHJP
H04L 47/26 20220101ALI20241114BHJP
【FI】
H04L41/0826
H04L47/26
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078234
(22)【出願日】2023-05-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直樹
【テーマコード(参考)】
5K030
【Fターム(参考)】
5K030GA20
5K030HA08
5K030HC01
5K030HC13
5K030LC01
5K030MB09
(57)【要約】
【課題】オンプレミス環境側の設定により、クラウド環境におけるアウトバンドデータ転送の費用が予算を超えないように制御可能にする。
【解決手段】通信制御装置10は、接続元装置からクラウドサーバ40に送信されるリクエスト通信の通信量とクラウドサーバ40から接続元装置に送信されるレスポンス通信の通信量との比率と、レスポンス通信の通信量の目標値とから、対象期間におけるリクエスト通信の通信速度の閾値を計算する。通信制御装置10は、閾値により、対象期間におけるリクエスト通信の通信速度を制限する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続元装置からクラウドサーバに送信されるリクエスト通信の通信量と前記クラウドサーバから前記接続元装置に送信されるレスポンス通信の通信量とを特定するデータ収集部と、
前記データ収集部によって特定された前記リクエスト通信の通信量と前記レスポンス通信の通信量とに基づき前記リクエスト通信の送信量を制御する通信制御部と
を備える通信制御装置。
【請求項2】
前記リクエスト通信の通信量と前記レスポンス通信の通信量との比率と、レスポンス通信の通信量の目標値とから、対象期間における前記リクエスト通信の通信速度の閾値を計算する閾値計算部
を備え、
前記通信制限部は、前記閾値計算部によって計算された前記閾値により、前記対象期間における前記リクエスト通信の通信速度を制限する請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記閾値計算部は、前記対象期間が開始された後の前記リクエスト通信のデータ量と、前記対象期間が開始された後の前記レスポンス通信のデータ量との比率に応じて、前記閾値を補正し、
前記通信制限部は、補正された前記閾値により、前記リクエスト通信の通信速度を制限する
請求項2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記閾値計算部は、前記レスポンス通信の通信量の目標値から計算される前記レスポンス通信の通信速度の目標である目標速度と、前記レスポンス通信の実際の通信速度との差から、前記閾値の補正量を計算することにより、前記閾値を補正する
請求項3に記載の通信制御装置。
【請求項5】
基準期間が分割された複数の分割期間それぞれにおける前記レスポンス通信の通信量の目標値の合計が、前記基準期間における前記レスポンス通信の通信量の制限値を超えないように、前記複数の分割期間それぞれの前記レスポンス通信の通信量の目標値が設定されており、
前記通信制御装置は、さらに、
前記複数の分割期間のうちの前記対象期間に対応する分割期間における前記レスポンス通信の通信量の目標値を、前記対象期間における前記レスポンス通信の通信量の目標値として設定する目標設定部
を備え、
前記閾値計算部は、前記目標設定部によって設定された目標値を用いて前記閾値を計算する
請求項2に記載の通信制御装置。
【請求項6】
前記目標設定部は、前記対象期間が属する基準期間のうち、前記対象期間に対応する分割期間よりも前の分割期間についての目標値と、前記前の分割期間で実際に行われた前記レスポンス通信の通信量との差分により、前記対象期間に対応する分割期間における前記レスポンス通信の通信量の目標値を補正した値を、前記対象期間における前記レスポンス通信の通信量の目標値として設定する
請求項5に記載の通信制御装置。
【請求項7】
前記目標設定部は、前記対象期間が属する基準期間のうち、前記対象期間に対応する分割期間以降の分割期間に、前記差分を分配することにより、前記対象期間に対応する分割期間における前記レスポンス通信の通信量の目標値を補正する
請求項6に記載の通信制御装置。
【請求項8】
前記通信制御装置は、前記リクエスト通信の通信速度を制限する制限モードと、前記リクエスト通信の通信速度を制限せずに前記クラウドサーバのふるまいを検知するふるまい検知モードとを有し、
前記通信制御装置は、さらに、
前記ふるまい検知モードで動作する場合に、前記レスポンス通信の通信量の目標値から計算される前記レスポンス通信の通信速度の目標である目標速度を、前記レスポンス通信の実際の通信速度が超えたか否かを判定する判定部
を備える請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項9】
前記判定部は、前記目標速度を前記実際の通信速度が超えたと判定した場合には、前記レスポンス通信の通信速度が前記目標速度よりも速い状態であることを通知する
請求項8に記載の通信制御装置。
【請求項10】
コンピュータが、接続元装置からクラウドサーバに送信されるリクエスト通信の通信量と前記クラウドサーバから前記接続元装置に送信されるレスポンス通信の通信量とを特定し、
コンピュータが、前記リクエスト通信の通信量と前記レスポンス通信の通信量に基づき前記リクエスト通信の送信量を制御する通信制御方法。
【請求項11】
接続元装置からクラウドサーバに送信されるリクエスト通信の通信量と前記クラウドサーバから前記接続元装置に送信されるレスポンス通信の通信量とを特定するデータ収集処理と、
前記データ収集処理によって特定された前記リクエスト通信の通信量と前記レスポンス通信の通信量とに基づき前記リクエスト通信の送信量を制御する通信制御処理と
を行う通信制御装置としてコンピュータを機能させる通信制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クラウドサーバから送信されるデータ量を基準以下に抑える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、オンプレミス環境とクラウド環境とを併用するハイブリッドクラウド環境においてシステムが構築されるケースが増えてきている。
クラウド環境は、使用量に応じた従量課金制となっている場合が多い。従量課金制では、費用予測が難しい。例えば、システム開発におけるテストを行う場合には、試験フェーズ又は試験項目により使用量が変動するため、費用予測が難しい。一方で、クラウド環境の契約者は、クラウド環境に必要な予算を予め確保しておき、確保した予算を超過しないようにしたいと考えていることが多い。クラウド環境の契約者は、予算を超過しないように注意してクラウド環境を利用しているものの、クラウド環境の設定ミスとオンプレミス環境の設定とアプリ不具合といった原因により、想定外の費用が発生してしまうことがある。
【0003】
クラウド環境の使用に係る費用としては、コンピューティングと、ストレージと、アウトバウンドデータ転送との3つが主要な課金要素である。アウトバウンドデータ転送については、アウトバンド通信のトラフィック、つまりクラウドサーバから送信されたトラフィックに対して課金される。
【0004】
特許文献1には、通信費用が予算を超えないという条件で想定通信回数を設定しておき、通信回数が想定通信回数を超えそうな場合には、データ送信のルールを更新することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
クラウド環境におけるアウトバンドデータ転送の費用が予算を超えないようにするために、特許文献1に記載された技術を利用することが考えられる。しかし、クラウド環境側でアウトバウンド通信を制限するには、複雑な設定が必要となってしまう。
本開示は、オンプレミス環境側の設定により、クラウド環境におけるアウトバンドデータ転送の費用が予算を超えないように制御可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る通信制御装置は、
接続元装置からクラウドサーバに送信されるリクエスト通信の通信量と前記クラウドサーバから前記接続元装置に送信されるレスポンス通信の通信量とを特定するデータ収集部と、
前記データ収集部によって特定された前記リクエスト通信の通信量と前記レスポンス通信の通信量とに基づき前記リクエスト通信の送信量を制御する通信制御部と
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示では、リクエスト通信の通信量とレスポンス通信の通信量とに基づき、リクエスト通信の通信速度が制限される。これにより、クラウド環境の設定を変更することなく、オンプレミス環境側の設定を変更することにより、クラウド環境におけるアウトバンドデータ転送の費用が予算を超えないように制御可能にできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る通信制御システム100の構成図。
【
図2】実施の形態1に係る通信制御システム100の基本機能の説明図。
【
図3】実施の形態1に係る通信制御装置10の構成図。
【
図4】実施の形態1に係る帯域制御装置20の構成図。
【
図5】実施の形態1に係る通信制御システム100の動作の概要説明図。
【
図6】実施の形態1に係る定義ファイル131の説明図。
【
図7】実施の形態1に係る稼働データ132の説明図。
【
図8】実施の形態1に係る通信制御装置10の処理のフローチャート。
【
図10】実施の形態1に係る閾値の補正処理の説明図。
【
図11】実施の形態2に係る負荷平準のケースの説明図。
【
図12】実施の形態2に係る負荷平準のケースの説明図。
【
図13】実施の形態2に係る負荷平準のケースの説明図。
【
図14】実施の形態2に係る負荷変動のケースの説明図。
【
図15】実施の形態2に係る負荷変動のケースの説明図。
【
図16】実施の形態2に係る負荷変動のケースの説明図。
【
図17】実施の形態3に係る定義ファイル131の説明図。
【
図18】実施の形態3に係る通信制御装置10の処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
***構成の説明***
図1を参照して、実施の形態1に係る通信制御システム100の構成を説明する。
通信制御システム100は、オンプレミス環境200とパブリッククラウド環境300とを併用するハイブリッドクラウド環境において実現される。オンプレミス環境200には、制御用オンプレミス環境210と、システム用オンプレミス環境220とが含まれる。パブリッククラウド環境300は、使用量に応じた従量課金制となっているクラウド環境である。
【0011】
制御用オンプレミス環境210には、通信制御装置10と、1台以上の帯域制御装置20とが設置される。
図1では、帯域制御装置20として、帯域制御装置20Aと帯域制御装置20Bとの2台が設置されている。システム用オンプレミス環境220には、オンプレミスサーバ30が設置される。パブリッククラウド環境300には、クラウドサーバ40が設置される。
【0012】
通信制御装置10は、各帯域制御装置20とLAN等の伝送路を介して接続される。LANは、Local Area Networkの略である。帯域制御装置20Aは、ゲートウェイ装置31を介してオンプレミスサーバ30と接続される。帯域制御装置20Bは、インターネット等のネットワークを介して、利用者によって使用される端末50と接続される。各帯域制御装置20は、専用線又はVPN等の伝送路を介してパブリッククラウド環境300のエンドポイント41に接続され、エンドポイント41を介してクラウドサーバ40に接続される。
【0013】
通信制御装置10は、各帯域制御装置20を制御することにより、クラウドサーバ40のアウトバンド通信の通信量、つまりクラウドサーバ40から送信されるデータの通信量を制御する。実施の形態1では、
図2に示すように、通信制御装置10は、帯域制御装置20Aを制御して、オンプレミスサーバ30からクラウドサーバ40へのリクエスト通信を制限することにより、クラウドサーバ40からオンプレミスサーバ30へのレスポンス通信を制限する。また、通信制御装置10は、帯域制御装置20Bを制御して、端末50からクラウドサーバ40へのリクエスト通信を制限することにより、クラウドサーバ40から端末50へのレスポンス通信を制限する。
ここでは、クラウドサーバ40と通信するオンプレミスサーバ30及び端末50を総称して接続元装置と呼ぶ。つまり、通信制御装置10は、各帯域制御装置20を制御して、接続元装置からクラウドサーバ40へのリクエスト通信を制限することにより、クラウドサーバ40から接続元装置へのレスポンス通信を制限する。
【0014】
図3を参照して、実施の形態1に係る通信制御装置10の構成を説明する。
通信制御装置10は、コンピュータである。
通信制御装置10は、プロセッサ11と、メモリ12と、ストレージ13と、通信インタフェース14とのハードウェアを備える。プロセッサ11は、信号線を介して他のハードウェアと接続され、これら他のハードウェアを制御する。
【0015】
通信制御装置10は、機能構成要素として、定義読込部111と、目標設定部112と、閾値計算部113と、通信制限部114と、データ収集部115と、判定部116とを備える。通信制御装置10の各機能構成要素の機能はソフトウェアにより実現される。
ストレージ13には、通信制御装置10の各機能構成要素の機能を実現するプログラムが格納されている。このプログラムは、プロセッサ11によりメモリ12に読み込まれ、プロセッサ11によって実行される。これにより、通信制御装置10の各機能構成要素の機能が実現される。
【0016】
ストレージ13には、定義ファイル131と、稼働データ132とが記憶される。
【0017】
図4を参照して、実施の形態1に係る帯域制御装置20の構成を説明する。
帯域制御装置20は、コンピュータである。帯域制御装置20は、サーバであってもよいし、ルータ等のネットワーク機器であってもよい。
帯域制御装置20は、プロセッサ21と、メモリ22と、ストレージ23と、通信インタフェース24とのハードウェアを備える。プロセッサ21は、信号線を介して他のハードウェアと接続され、これら他のハードウェアを制御する。
【0018】
帯域制御装置20は、機能構成要素として、制御部211と、監視部212とを備える。帯域制御装置20の各機能構成要素の機能はソフトウェアにより実現される。
ストレージ23には、帯域制御装置20の各機能構成要素の機能を実現するプログラムが格納されている。このプログラムは、プロセッサ21によりメモリ22に読み込まれ、プロセッサ21によって実行される。これにより、帯域制御装置20の各機能構成要素の機能が実現される。
【0019】
メモリ22は、接続元装置から受信し、クラウドサーバ40に送信するデータを保存するためのキュー221を実現する。ストレージ23には、設定内容231が記憶される。通信インタフェース24は、接続元装置からデータを受信する受信部Aと、接続元装置にデータを送信する送信部Aと、クラウドサーバ40からデータを受信する受信部Bと、クラウドサーバ40にデータを送信する送信部Bとを実現する。また、通信インタフェース24は、通信制御装置10と通信するマネジメントインタフェースを実現する。
【0020】
プロセッサ11,21は、プロセッシングを行うICである。ICはIntegrated Circuitの略である。プロセッサ11,21は、具体例としては、CPU、DSP、GPUである。CPUは、Central Processing Unitの略である。DSPは、Digital Signal Processorの略である。GPUは、Graphics Processing Unitの略である。
【0021】
メモリ12,22は、データを一時的に記憶する記憶装置である。メモリ12,22は、具体例としては、SRAM、DRAMである。SRAMは、Static Random Access Memoryの略である。DRAMは、Dynamic Random Access Memoryの略である。
【0022】
ストレージ13,23は、データを保管する記憶装置である。ストレージ13,23は、具体例としては、HDDである。HDDは、Hard Disk Driveの略である。また、ストレージ13,23は、SD(登録商標)メモリカード、CompactFlash(登録商標)、NANDフラッシュ、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、Blu-ray(登録商標)ディスク、DVDといった可搬記録媒体であってもよい。SDは、Secure Digitalの略である。DVDは、Digital Versatile Diskの略である。
【0023】
通信インタフェース14,24は、外部の装置と通信するためのインタフェースである。通信インタフェース14,24は、具体例としては、Ethernet(登録商標)、USB、HDMI(登録商標)のポートである。USBは、Universal Serial Busの略である。HDMIは、High-Definition Multimedia Interfaceの略である。
【0024】
図3では、プロセッサ11は、1つだけ示されていた。しかし、プロセッサ11は、複数であってもよく、複数のプロセッサ11が、各機能を実現するプログラムを連携して実行してもよい。同様に、
図4では、プロセッサ21は、1つだけ示されていた。しかし、プロセッサ21は、複数であってもよく、複数のプロセッサ21が、各機能を実現するプログラムを連携して実行してもよい。
【0025】
図1では、オンプレミスサーバ30用の通信と端末50用の通信とに別々の帯域制御装置20が用意された。つまり、通信の用途毎に別の帯域制御装置20が用意された。しかし、1台の帯域制御装置20が複数の通信の用途に対応することも可能である。この場合には、帯域制御装置20は、通信の用途毎にインタフェースを備える必要がある。具体的には、帯域制御装置20は、通信の用途毎に受信部Aと受信部Bと送信部Aと送信部Bとの組を備える必要がある。また、帯域制御装置20は、通信の用途毎にキュー221を備える必要がある。
【0026】
***動作の説明***
図5から
図10を参照して、実施の形態1に係る通信制御システム100の動作を説明する。
実施の形態1に係る通信制御システム100の動作手順は、実施の形態1に係る通信制御方法に相当する。また、実施の形態1に係る通信制御システム100の動作を実現するプログラムは、実施の形態1に係る通信制御プログラムに相当する。
【0027】
図5を参照して、実施の形態1に係る通信制御システム100の動作の概要を説明する。
通信の用途毎に以下の(a)の処理が実行される。
(a)通信制御装置10は、基準期間の予算計画から、基準期間が分割された複数の分割期間それぞれのレスポンス通信の通信量の目標値を定義ファイル131に設定する。ここでは、基準期間は1か月とし、分割期間は1日とする。例えば、通信制御装置10は、4月の予算計画から、4月1日から4月30日までの各日のレスポンス通信の通信量の目標値を定義ファイル131に設定する。
【0028】
対象の日になると通信の用途毎に以下の(b)から(e)の処理が実行される。
(b)通信制御装置10は、リクエスト通信の通信量とレスポンス通信の通信量との比率と、定義ファイル131に設定された対象の日(対象期間)のレスポンス通信の通信量の目標値とから、対象の日におけるリクエスト通信の通信速度の閾値を計算する。
(c)通信制御装置10は、閾値を帯域制御装置20に設定することにより、リクエスト通信の通信速度を制限する。
(d)通信制御装置10は、帯域制御装置20からデータ取得を行い、リクエスト通信及びレスポンス通信のデータ量を特定する。なお、通信制御装置10は、後述するように、リクエスト通信及びレスポンス通信のデータ量を、取得したデータから算出する。
(e)通信制御装置10は、リクエスト通信のデータ量と、レスポンス通信のデータ量との比率に応じて、閾値を補正して、処理を(c)に戻す。
【0029】
図6を参照して、実施の形態1に係る定義ファイル131を説明する。
定義ファイル131は、日付毎に、通信量の目標値と、稼働時間とを含む。
通信量の目標値は、対象の日におけるレスポンス通信の通信量の目標値である。稼働時間は、対象の日におけるシステムの稼働時間である。
通信量の目標値は、月の予算計画から計算される。具体的には、基準期間である1か月に含まれる各日における通信量の目標値の合計が、1か月におけるレスポンス通信の通信量の制限値を超えないように、各日の通信量の目標値が設定される。1か月におけるレスポンス通信の通信量の制限値は、1か月のアウトバウンドデータ転送の予算で通信可能な通信量である。
【0030】
例えば、通信量の目標値は以下のように計算される。
パブリッククラウド環境300の使用料金の予算計画が1月当たり10万円であるとする。ここで、パブリッククラウド環境300の使用に係る費用としては、コンピューティングと、ストレージと、アウトバウンドデータ転送との3つが主要な要素であるとする。そして、コンピューティングには1月当たり5万円、ストレージには1月当たり3万円、3つの主要な要素以外に1月当たり1万円かかるとする。したがって、アウトバウンドデータ転送の予算は残りの1万円になる。
アウトバウンドデータ転送の費用が1GB当たり15円であるとする。GBはGiga
Byteの略である。すると、予算1万円の場合には、約667GBのレスポンス通信が可能である。1月のうち20日間だけが営業日であるとする。すると、1日当たり約33GB(=667GB/20日)のレスポンス通信が可能となる。その結果、各日の通信量の目標値は33GBになる。
【0031】
制御する通信の用途が1つの場合には、その日の通信量の目標値をそのまま用いればよい。しかし、
図1等で示したように、制御する通信の用途が2つ以上ある場合には、その日の通信量の目標値を各用途に分配して、各用途の目標値を計算する必要がある。例えば、各用途の過去の通信量の比率に応じてその日の通信量の目標値を各用途に分配することが考えられる。
【0032】
なお、営業日によって営業時間が異なる場合には、営業時間を考慮して各日の通信量の目標値が設定されてもよい。具体的には、営業時間が長い日ほど、通信量の目標値が大きくなるように設定されてもよい。また、過去の運用実績等から特定の日にレスポンス通信の通信量が多くなることが分かっている場合には、その日の目標値が大きくなるように設定されてもよい。
【0033】
図7を参照して、実施の形態1に係る稼働データ132を説明する。
稼働データ132は、接続元装置とクラウドサーバ40との間のトラフィックデータに関するデータである。稼働データ132は、タイムスタンプ毎に、リクエスト通信量と、リクエスト通信速度と、レスポンス通信量と、レスポンス通信速度とを含む。
タイムスタンプは、ここでは1分毎に設定される。リクエスト通信量は、タイムスタンプが示す1分間に実際に行われたリクエスト通信の通信量である。リクエスト通信速度は、タイムスタンプが示す1分間におけるリクエスト通信の通信速度である。レスポンス通信量は、タイムスタンプが示す1分間に実際に行われたレスポンス通信の通信量である。レスポンス通信速度は、タイムスタンプが示す1分間におけるレスポンス通信の通信速度である。
【0034】
リクエスト通信量は、SNMPポーリングにより帯域制御装置20から取得されたリクエスト通信のカウンタ値により特定される。SNMPは、Simple Network
Management Protocolの略である。具体的には、リクエスト通信量は、データ収集部115によって次のように算出される。リクエスト通信量[GB]=「前回取得されたカウンタ値[GB]-今回取得されたカウンタ値[GB]」。
リクエスト通信速度[Gbps]は、「リクエスト通信量[GB]×8[bit]÷60[秒]」によって計算される。Gbpsは、Giga bits per secondの略である。
レスポンス通信量は、SNMPポーリングにより帯域制御装置20から取得されたレスポンス通信のカウンタ値により特定される。具体的には、レスポンス通信量は、データ収集部115によって次のように算出される。レスポンス通信量[GB]=「前回取得されたカウンタ値[GB]-今回取得されたカウンタ値[GB]」。
レスポンス通信速度[Gbps]は、「レスポンス通信量[GB]×8[bit]÷60[秒]」によって計算される。
【0035】
図8を参照して、実施の形態1に係る通信制御装置10の処理を説明する。
図8に示す処理が、制御する通信の用途毎に実行される。ここでは、事前に定義ファイル131が設定されているものとする。また、以下の説明において、対象の日とは処理の実行日を意味する。
【0036】
(ステップS101:定義読込処理)
定義読込部111は、ストレージ13から定義ファイル131を読み込む。
【0037】
(ステップS102:時刻判定処理)
定義読込部111は、現在時刻がシステムの稼働時間に入っているか否かを判定する。定義読込部111は、現在時刻がシステムの稼働時間に入っている場合には、処理をステップS103に進める。定義読込部111は、そうでない場合には、一定時間経過後に再びステップS101の処理を実行する。
【0038】
(ステップS103:目標設定処理)
目標設定部112は、レスポンス通信の通信量の目標値を設定する。そして、目標設定部112は、通信量の目標値からレスポンス通信の通信速度の目標である目標速度を計算する。
具体的には、目標設定部112は、ステップS101で読み出された定義ファイル131から、対象の日の通信量及び稼働時間を取得する。目標設定部112は、取得された通信量を対象の日の通信量の目標値に設定する。目標設定部112は、対象の日の通信量の目標値を稼働時間の秒数で除して、対象の日におけるレスポンス通信の目標速度を計算する。
【0039】
(ステップS104:閾値計算処理)
閾値計算部113は、過去にデータ収集部115によって特定されたリクエスト通信の通信量とレスポンス通信の通信量との比率と、レスポンス通信の通信量の目標値とから、対象の日におけるリクエスト通信の通信速度の閾値を計算する。
具体的には、閾値計算部113は、稼働データ132から、対象の日に対応する過去の日についてのデータを読み出す。ここでは、前月における対象の日と同日を対象の日に対応する過去の日とする。つまり、対象の日が2023年4月1日であれば、対象の日に対応する過去の日は2023年3月1日である。閾値計算部113は、対象の日に対応する過去の日におけるリクエスト通信の通信量とレスポンス通信の通信量との比率(=リクエスト通信の通信量/レスポンス通信)を計算する。
そして、閾値計算部113は、計算された比率と、レスポンス通信の通信量の目標値とに基づき、リクエスト通信の通信量の目標値を計算する。ここでは、閾値計算部113は、レスポンス通信の通信量の目標値に比率を乗じて、リクエスト通信の通信量の目標値を計算する。そして、閾値計算部113は、リクエスト通信の通信量の目標値を、稼働時間の秒数で除して、対象の日におけるリクエスト通信の通信速度の閾値を計算する。なお、閾値計算部113は、対象の日におけるレスポンス通信の目標速度に比率を乗じて、対象の日におけるリクエスト通信の通信速度の閾値を計算してもよい。
【0040】
(ステップS105:更新判定処理)
通信制限部114は、直近のステップS104で計算された閾値が、帯域制御装置20に設定されている閾値と異なるか否かを判定する。通信制限部114は、異なる場合には、処理をステップS106に進める。一方、通信制限部114は、同一の場合には、処理をステップS107に進める。
【0041】
(ステップS106:通信制限処理)
通信制限部114は、ステップS104で計算された閾値を帯域制御装置20に設定することにより、リクエスト通信の通信速度を制限する。
具体的には、通信制限部114は、通信インタフェース14を介して閾値を帯域制御装置20に送信する。すると、帯域制御装置20の制御部211は、マネジメントインタフェースを介して閾値を受信する。制御部211は、閾値を設定内容231に書き込み、閾値に基づきキュー221を遅延制御する。つまり、制御部211は、受信部Aによって接続元装置から受信されたデータを、送信部Bによってクラウドサーバ40に送信させる処理をキュー221によって遅延させる。これにより、接続元装置からクラウドサーバ40へのデータの送信速度が閾値が示す目標速度になるように制御される。
なお、キュー221は、受信部Aによって受信されたデータのパケットがドロップしないように、ある程度の深さを持っているものとする。
【0042】
(ステップS107:データ収集処理)
データ収集部115は、接続元装置とクラウドサーバ40との間のトラフィックデータを収集する。
具体的には、データ収集部115は、帯域制御装置20に対してSNMPポーリングによりトラフィックデータを収集する。トラフィックデータには、リクエスト通信のデータと、レスポンス通信のデータとが含まれる。収集対象のデータ項目は、帯域制御装置20が疎通したトラフィックデータのバイト数のカウンタ値である。つまり、データ収集部115は、リクエスト通信のバイト数のカウンタ値と、レスポンス通信のバイト数のカウンタ値とを収集する。
【0043】
(ステップS108:データ書込処理)
データ収集部115は、ステップS115で収集されたリクエスト通信のバイト数のカウンタ値と、レスポンス通信のバイト数のカウンタ値とに基づき、稼働データ132にデータを追加する。稼働データ132の各項目の計算方法は、
図7を参照して説明した通りである。
【0044】
(ステップS109:補正判定処理)
判定部116は、ステップS108で書き込まれたリクエスト通信の通信量とレスポンス通信の通信量との比率に基づき、閾値の補正が必要か否かを判定する。判定部116は、閾値の補正が必要な場合には、処理をステップS104に戻して、閾値を補正させる。閾値が補正された場合には、ステップS106で補正された閾値に基づきリクエスト通信の通信速度が制限される。一方、判定部116は、閾値の補正が不要な場合には、処理をステップS110に進める。
閾値の補正が必要か否かの判定方法と、閾値の補正方法とについては後述する。
【0045】
(ステップS110:経過時間判定処理)
判定部116は、ステップS103の処理が実行されてから基準時間経過したか否かを判定する。基準時間は事前に設定された時間である。基準時間は、例えば5分間である。判定部116は、基準時間経過した場合には、処理をステップS111に進める。一方、判定部116は、基準時間経過していない場合には、前回ステップS107の処理を実行してから1分経過後に処理をステップS107に戻し、再びトラフィックデータを収集させる。
【0046】
(ステップS111:稼働時間判定処理)
判定部116は、現在時刻がシステムの稼働時間に入っているか否かを判定する。判定部116は、現在時刻がシステムの稼働時間に入っている場合には、処理をステップS107に戻す。一方、判定部116は、現在時刻がシステムの稼働時間に入っていない場合には、処理を終了する。
【0047】
図9を参照して、実施の形態1に係る補正判定処理(
図8のステップS109)を説明する。
判定部116は、リクエスト通信の通信量と閾値との比較結果と、レスポンス通信の通信量と目標値との比較結果との組合せに応じて、閾値の補正が必要か否かを判定する。
【0048】
具体的には、判定部116は、リクエスト通信の通信量が閾値よりも少ないか、リクエスト通信の通信量が閾値と概ね同じかを判定する。
ここでは、判定部116は、許容幅Δを用いて、リクエスト通信の通信量<(閾値-Δ)の場合に、リクエスト通信の通信量が閾値よりも少ないと判定する。また、判定部116は、リクエスト通信の通信量≧(閾値-Δ)、かつ、リクエスト通信の通信量≦(閾値+Δ)の場合に、リクエスト通信の通信量が閾値と概ね同じと判定する。なお、閾値を用いて通信速度が制限されているため、リクエスト通信の通信量>(閾値+Δ)となることはないという前提である。
【0049】
また、判定部116は、レスポンス通信の通信量が目標値よりも少ないか、レスポンス通信の通信量が目標値と概ね同じか、レスポンス通信の通信量が目標値よりも多いかを判定する。
ここでは、判定部116は、許容幅Δを用いて、レスポンス通信の通信量<(目標値-Δ)の場合に、レスポンス通信の通信量が目標値よりも少ないと判定する。また、判定部116は、レスポンス通信の通信量≧(目標値-Δ)、かつ、レスポンス通信の通信量≦(目標値+Δ)の場合に、レスポンス通信の通信量が目標値と概ね同じと判定する。また、判定部116は、レスポンス通信の通信量>(目標値+Δ)の場合に、レスポンス通信の通信量が目標値よりも多いと判定する。
【0050】
そして、判定部116は、判定結果の6つの組合せのうち、クエスト通信の通信量とレスポンス通信の通信量との比率が変化したと認められる組合せの場合に、閾値の補正が必要と判定する。つまり、判定部116は、以下のケースAからケースDの場合に、閾値の補正が必要と判定する。
ケースA:リクエスト通信の通信量<(閾値-Δ)であり、レスポンス通信の通信量≧(目標値-Δ)、かつ、レスポンス通信の通信量≦(目標値+Δ)である場合。
ケースB:リクエスト通信の通信量<(閾値-Δ)であり、レスポンス通信の通信量>(目標値+Δ)である場合。
ケースC:リクエスト通信の通信量≧(閾値-Δ)、かつ、リクエスト通信の通信量≦(閾値+Δ)であり、レスポンス通信の通信量<(目標値-Δ)である場合。
ケースD:リクエスト通信の通信量≧(閾値-Δ)、かつ、リクエスト通信の通信量≦(閾値+Δ)であり、レスポンス通信の通信量>(目標値+Δ)である場合。
【0051】
ケースB,Dについては、レスポンス通信の通信量が目標値を超過しているため、閾値を下げる必要がある。ケースAについては、現段階ではレスポンス通信の通信量が目標値を超過していないが、リクエスト通信の通信量が増えるとレスポンス通信の通信量が目標値を超過してしまうため、閾値を下げておくことが望ましい。ケースCについては、必要以上にリクエスト通信の通信量を抑えている状態のため、閾値を上げることが望ましい。
閾値計算部113は、ケースB,C,Dの場合には、目標値からレスポンス通信の通信量を減算した値に、係数αを乗じた補正値を現在の閾値に加算して、補正後の閾値を計算する。つまり、補正後の閾値=現在の閾値+α×(目標値-レスポンス通信の通信量)である。これにより、例えば、
図10に示すように、ケースB,Dの場合には、徐々に閾値が下げられ、レスポンス通信の通信量が目標値と概ね同じになるように制御される。
閾値計算部113は、ケースAの場合には、事前に決められた補正値だけ閾値を下げる。事前に決められた補正値は定数であってもよいし、現在の閾値の一定割合のように定められていてもよい。
【0052】
***実施の形態1の効果***
以上のように、実施の形態1に係る通信制御装置10は、リクエスト通信の通信量とレスポンス通信の通信量との比率からリクエスト通信の通信速度の閾値を計算し、閾値によりリクエスト通信の通信速度を制限する。これにより、クラウド環境の設定を変更することなく、オンプレミス環境側の設定により、クラウド環境におけるアウトバンドデータ転送の費用が予算を超えないように制御可能にできる。
【0053】
また、実施の形態1に係る通信制御装置10は、リクエスト通信の通信量とレスポンス通信の通信量とを監視し、閾値を動的に変更する。これにより、必要以上に通信速度を制限することなく、クラウド環境におけるアウトバンドデータ転送の費用が予算を超えないように制御できる。
【0054】
***他の構成***
<変形例1>
実施の形態1では、
図8のステップS103で日毎にレスポンス通信の通信量の目標値及び目標速度が計算された。しかし、時間帯によってシステムで実行している処理が異なるといった理由から、時間帯によって通信速度が変動する場合がある。そこで、目標設定部112は、時間帯毎に通信量の目標値及び目標速度を計算してもよい。
【0055】
具体的には、目標設定部112は、以下のように、稼働データ132を用いて時間帯毎の通信速度の変動の仕方を推定し、推定された変動の仕方に基づき時間帯毎に通信量の目標値及び目標速度を計算する。
目標設定部112は、稼働データ132から、対象の日に対応する過去の日についてのデータを読み出す。目標設定部112は、過去の日についてのデータから、過去の日における時間帯毎の通信量の割合を計算する。時間帯毎とは、例えば、1時間毎である。そして、目標設定部112は、時間帯毎の通信量の割合に従い、対象の日の通信量を各時間帯に分配する。これにより、各時間帯についての通信量の目標値が計算される。目標設定部112は、各時間帯について、その時間帯の通信量の目標値を時間帯の秒数で除して、その時間帯についてのレスポンス通信の目標速度を計算する。
【0056】
同様に、実施の形態1では、
図8のステップS104で対象の日に対応する過去の日のリクエスト通信の通信量とレスポンス通信の通信量との比率に基づき閾値が計算された。しかし、閾値計算部113は、過去の日の現在の時刻に対応する時間帯におけるリクエスト通信の通信量とレスポンス通信の通信量との比率に基づき閾値を計算してもよい。
【0057】
時間帯毎に通信量の目標値及び目標速度が計算される場合には、
図8のステップS111で判定部116は、現在時刻がシステムの稼働時間に入っている場合には、処理をステップS103に戻す。これにより、時間帯が次の時間帯になった場合に、次の時間帯の通信量の目標値が設定されるようになる。
【0058】
<変形例2>
実施の形態1では、各機能構成要素がソフトウェアで実現された。しかし、変形例2として、各機能構成要素はハードウェアで実現されてもよい。この変形例2について、実施の形態1と異なる点を説明する。
【0059】
各機能構成要素がハードウェアで実現される場合には、通信制御装置10は、プロセッサ11とメモリ12とストレージ13とに代えて、電子回路を備える。電子回路は、各機能構成要素と、メモリ12と、ストレージ13との機能とを実現する専用の回路である。
【0060】
電子回路としては、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ロジックIC、GA、ASIC、FPGAが想定される。GAは、Gate Arrayの略である。ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略である。FPGAは、Field-Programmable Gate Arrayの略である。
各機能構成要素を1つの電子回路で実現してもよいし、各機能構成要素を複数の電子回路に分散させて実現してもよい。
【0061】
<変形例3>
変形例3として、一部の各機能構成要素がハードウェアで実現され、他の各機能構成要素がソフトウェアで実現されてもよい。
【0062】
プロセッサ11とメモリ12とストレージ13と電子回路とを処理回路という。つまり、各機能構成要素の機能は、処理回路により実現される。
【0063】
実施の形態2.
実施の形態2は、対象の日よりも前の日における目標値とレスポンス通信の通信量の実績値との差分を、対象の日以降に使用できるように、対象の日以降の目標値を計算する点が実施の形態1と異なる。実施の形態2では、この異なる点を説明し、同一の点については説明を省略する。
【0064】
***動作の説明***
図11から
図16を参照して、実施の形態2に係る通信制御システム100の動作を説明する。
実施の形態2に係る通信制御システム100の動作手順は、実施の形態2に係る通信制御方法に相当する。また、実施の形態2に係る通信制御システム100の動作を実現するプログラムは、実施の形態2に係る通信制御プログラムに相当する。
【0065】
図8のステップS103の処理が実施の形態1と異なる。ステップS103の処理として、各日の通信量が概ね同一になる負荷平準のケースと、日によって通信量が異なる負荷変動のケースとがある。
いずれのケースについても、目標設定部112は、対象の日が属する月のうち、対象の日よりも前の日についての目標値と、対象の日よりも前の日で実際に行われたレスポンス通信の通信量との差分を計算する。そして、目標設定部112は、対象の日におけるレスポンス通信の通信量の目標値を差分により補正した値を、対象の日におけるレスポンス通信の通信量の目標値として設定する。
【0066】
図11から
図13を参照して、実施の形態2に係る負荷平準のケースを説明する。
図11に示すように、月初の時点では、目標設定部112は、各日に同一の目標値を設定する。そのため、目標値の累積値は、月末に向かって線形に増加していく。
図12に示すように、1日目のレスポンス通信の通信量が目標値よりも差分d1だけ少なかったとする。この場合には、目標設定部112は、差分d1を2日目以降に均等に分配して、月初に設定した目標値をd1/(M-1)だけ増加させる。ここで、Mは、月の日数である。
図13に示すように、i=2,...,N-1の各i日目についてもレスポンス通信の通信量が目標値よりも差分diだけ少なかったとする。この場合には、目標設定部112は、i=1,...,N-1の各整数iについての差分diの合計をN日目以降に均等に分配して、月初に設定した目標値を(Σdi)/(M-1)だけ増加させる。
【0067】
図14から
図16を参照して、実施の形態2に係る負荷変動のケースを説明する。
図14に示すように、月初の時点で、目標設定部112は、日に応じて異なる目標値を設定する。そのため、目標値の累積値は、月末に向かって不規則に増加していく。
図15に示すように、1日目のレスポンス通信の通信量が目標値よりも差分d1だけ少なかったとする。この場合には、目標設定部112は、月初の時点で設定された各日の目標値に応じた割合で、差分d1を2日目以降に分配する。この場合には、2日目以降の日dについては、月初に設定した目標値を(d1/(M-1))×pdだけ増加する。ここでのpdは、2日目以降の日の目標値の合計に対する日dについての目標値の割合である。
図16に示すように、i=2,...,N-1の各i日目についてもレスポンス通信の通信量が目標値よりも差分diだけ少なかったとする。この場合には、目標設定部112は、月初の時点で設定された各日の目標値に応じた割合で、i=1,...,N-1の各整数iについての差分diの合計をN日目以降に分配して、月初に設定した目標値を((Σdi)/(M-1))×pdだけ増加させる。ここでのpdは、N日目以降の日の目標値の合計に対する日dについての目標値の割合である。
【0068】
なお、負荷変動のケースの場合にも、負荷平準のケースの場合と同様に、目標設定部112は、差分diの合計をN日目以降に均等に分配して、月初に設定した目標値をΣdi/(M-1)だけ増加させてもよい。
【0069】
***実施の形態2の効果***
以上のように、実施の形態2に係る通信制御装置10は、対象の日よりも前の日における目標値とレスポンス通信の通信量の実績値との差分を、対象の日以降に使用できるように、対象の日以降の目標値を計算する。これにより、必要以上に通信速度を制限することなく、クラウド環境におけるアウトバンドデータ転送の費用が予算を超えないように制御できる。
【0070】
実施の形態3.
実施の形態3は、通信速度の制限をせずに、クラウドサーバ40のふるまいを検知するふるまい検知モードを有する点が実施の形態1,2と異なる。実施の形態3では、この異なる点を説明し、同一の点については説明を省略する。
【0071】
***動作の説明***
図17及び
図18を参照して、実施の形態3に係る通信制御システム100の動作を説明する。
実施の形態3に係る通信制御システム100の動作手順は、実施の形態3に係る通信制御方法に相当する。また、実施の形態3に係る通信制御システム100の動作を実現するプログラムは、実施の形態3に係る通信制御プログラムに相当する。
【0072】
通信制御装置10は、リクエスト通信の通信速度を制限する制限モードと、クラウドサーバ40のふるまいを検知するふるまい検知モードとを有する。制限モードは、実施の形態1,2で説明したように、閾値によりリクエスト通信の通信速度を制限する処理を実行するモードである。
【0073】
図17を参照して、実施の形態3に係る定義ファイル131を説明する。
定義ファイル131は、日付毎に、通信量の目標値及び稼働時間に加え、制御モードを含む。制御モードは、制限モード又はふるまい検知モードを示す。つまり、日によって、制限モードで稼働させるか、ふるまい検知モードで稼働させるかが設定される。
【0074】
図18を参照して、実施の形態3に係る通信制御装置10の処理を説明する。
ステップS201からステップS202の処理は、
図8のステップS101からステップS102の処理と同じである。ステップS204からステップS212の処理は、
図8のステップS103からステップS111の処理と同じである。ステップS213の処理は、
図8のステップS103の処理と同じである。ステップS214からステップS215の処理は、
図8のステップS107からステップS108の処理と同じである。
【0075】
(ステップS203:モード判定処理)
定義読込部111は、現在の日の制御モードが制限モードであるか、ふるまい検知モードであるかを判定する。定義読込部111は、制限モードである場合には、処理をステップS204に進める。一方、定義読込部111は、ふるまい検知モードである場合には、処理をステップS213に進める。
【0076】
(ステップS216:超過判定処理)
判定部116は、レスポンス通信の通信速度が目標速度よりも速いか否かを判定する。判定部116は、レスポンス通信の通信速度が目標速度よりも速い場合には、処理をステップS217に進める。一方、判定部116は、レスポンス通信の通信速度が目標速度以下の場合には、処理をステップS218に進める。
【0077】
(ステップS217:通知処理)
判定部116は、レスポンス通信の通信速度が目標速度よりも速い状態であることを通信制御装置10の管理者に通知する。
【0078】
(ステップS218:経過時間判定処理)
判定部116は、ステップS213の処理が実行されてから基準時間経過したか否かを判定する。基準時間は事前に設定された時間である。基準時間は、例えば5分間である。判定部116は、基準時間経過した場合には、処理をステップS219に進める。一方、判定部116は、基準時間経過していない場合には、前回ステップS214の処理を実行してから1分経過後に処理をステップS214に戻し、再びトラフィックデータを収集させる。
【0079】
(ステップS219:稼働時間判定処理)
判定部116は、現在時刻がシステムの稼働時間に入っているか否かを判定する。判定部116は、現在時刻がシステムの稼働時間に入っている場合には、処理をステップS214に戻す。一方、判定部116は、現在時刻がシステムの稼働時間に入っていない場合には、処理を終了する。
【0080】
なお、以上の説明における「部」を、「回路」、「工程」、「手順」、「処理」又は「処理回路」に読み替えてもよい。
【0081】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
接続元装置からクラウドサーバに送信されるリクエスト通信の通信量と前記クラウドサーバから前記接続元装置に送信されるレスポンス通信の通信量とを特定するデータ収集部と、
前記データ収集部によって特定された前記リクエスト通信の通信量と前記レスポンス通信の通信量とに基づき前記リクエスト通信の送信量を制御する通信制御部と
を備える通信制御装置。
(付記2)
前記リクエスト通信の通信量と前記レスポンス通信の通信量との比率と、レスポンス通信の通信量の目標値とから、前記対象期間における前記リクエスト通信の通信速度の閾値を計算する閾値計算部
を備え、
前記通信制限部は、前記閾値計算部によって計算された前記閾値により、前記対象期間における前記リクエスト通信の通信速度を制限する付記1に記載の通信制御装置。
(付記3)
前記閾値計算部は、前記対象期間が開始された後の前記リクエスト通信のデータ量と、前記対象期間が開始された後の前記レスポンス通信のデータ量との比率に応じて、前記閾値を補正し、
前記帯域制限部は、補正された前記閾値により、前記リクエスト通信の通信速度を制限する
付記2に記載の通信制御装置。
(付記4)
前記閾値計算部は、前記レスポンス通信の通信量の目標値から計算される前記レスポンス通信の通信速度の目標である目標速度と、前記レスポンス通信の実際の通信速度との差から、前記閾値の補正量を計算することにより、前記閾値を補正する
付記3に記載の通信制御装置。
(付記5)
基準期間が分割された複数の分割期間それぞれにおける前記レスポンス通信の通信量の目標値の合計が、前記基準期間における前記レスポンス通信の通信量の制限値を超えないように、前記複数の分割期間それぞれの前記レスポンス通信の通信量の目標値が設定されており、
前記通信制御装置は、さらに、
前記複数の分割期間のうちの前記対象期間に対応する分割期間における前記レスポンス通信の通信量の目標値を、前記対象期間における前記レスポンス通信の通信量の目標値として設定する目標設定部
を備え、
前記閾値計算部は、前記目標設定部によって設定された目標値を用いて前記閾値を計算する
付記2から4までのいずれか1項に記載の通信制御装置。
(付記6)
前記目標設定部は、前記対象期間が属する基準期間のうち、前記対象期間に対応する分割期間よりも前の分割期間についての目標値と、前記前の分割期間で実際に行われた前記レスポンス通信の通信量との差分により、前記対象期間に対応する分割期間における前記レスポンス通信の通信量の目標値を補正した値を、前記対象期間における前記レスポンス通信の通信量の目標値として設定する
付記5に記載の通信制御装置。
(付記7)
前記目標設定部は、前記対象期間が属する基準期間のうち、前記対象期間に対応する分割期間以降の分割期間に、前記差分を分配することにより、前記対象期間に対応する分割期間における前記レスポンス通信の通信量の目標値を補正する
付記6に記載の通信制御装置。
(付記8)
前記通信制御装置は、前記リクエスト通信の通信速度を制限する制限モードと、前記リクエスト通信の通信速度を制限せずに前記クラウドサーバのふるまいを検知するふるまい検知モードとを有し、
前記通信制御装置は、さらに、
前記ふるまい検知モードで動作する場合に、前記レスポンス通信の通信量の目標値から計算される前記レスポンス通信の通信速度の目標である目標速度を、前記レスポンス通信の実際の通信速度が超えたか否かを判定する判定部
を備える付記1から7までのいずれか1項に記載の通信制御装置。
(付記9)
前記判定部は、前記目標速度を前記実際の通信速度が超えたと判定した場合には、前記レスポンス通信の通信速度が前記目標速度よりも速い状態であることを通知する
付記8に記載の通信制御装置。
(付記10)
コンピュータが、接続元装置からクラウドサーバに送信されるリクエスト通信の通信量と前記クラウドサーバから前記接続元装置に送信されるレスポンス通信の通信量とを特定し、
コンピュータが、前記リクエスト通信の通信量と前記レスポンス通信の通信量に基づき前記リクエスト通信の送信量を制御する通信制御方法。
(付記11)
接続元装置からクラウドサーバに送信されるリクエスト通信の通信量と前記クラウドサーバから前記接続元装置に送信されるレスポンス通信の通信量とを特定するデータ収集処理と、
前記データ収集処理によって特定された前記リクエスト通信の通信量と前記レスポンス通信の通信量とに基づき前記リクエスト通信の送信量を制御する通信制御処理と
を行う通信制御装置としてコンピュータを機能させる通信制御プログラム。
【0082】
以上、本開示の実施の形態及び変形例について説明した。これらの実施の形態及び変形例のうち、いくつかを組み合わせて実施してもよい。また、いずれか1つ又はいくつかを部分的に実施してもよい。なお、本開示は、以上の実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
100 通信制御システム、200 オンプレミス環境、210 制御用オンプレミス環境、220 システム用オンプレミス環境、300 パブリッククラウド環境、10 通信制御装置、11 プロセッサ、12 メモリ、13 ストレージ、14 通信インタフェース、111 定義読込部、112 目標設定部、113 閾値計算部、114 通信制限部、115 データ収集部、116 判定部、131 定義ファイル、132 稼働データ、20 帯域制御装置、21 プロセッサ、22 メモリ、23 ストレージ、24 通信インタフェース、211 制御部、212 監視部、221 キュー、231 設定内容、30 オンプレミスサーバ、31 ゲートウェイ装置、40 クラウドサーバ、41 エンドポイント、50 端末。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続元装置からクラウドサーバに送信されるリクエスト通信の通信量と前記クラウドサーバから前記接続元装置に送信されるレスポンス通信の通信量とを特定するデータ収集部と、
前記データ収集部によって特定された前記リクエスト通信の通信量と前記レスポンス通信の通信量との比率に基づき設定された閾値により、前記リクエスト通信の送信量を制御する通信制限部と
を備える通信制御装置。
【請求項2】
前記リクエスト通信の通信量と前記レスポンス通信の通信量との比率と、レスポンス通信の通信量の目標値とから、対象期間における前記リクエスト通信の通信速度の前記閾値を計算する閾値計算部
を備え、
前記通信制限部は、前記閾値計算部によって計算された前記閾値により、前記対象期間における前記リクエスト通信の通信速度を制限する請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記閾値計算部は、前記対象期間が開始された後の前記リクエスト通信のデータ量と、前記対象期間が開始された後の前記レスポンス通信のデータ量との比率に応じて、前記閾値を補正し、
前記通信制限部は、補正された前記閾値により、前記リクエスト通信の通信速度を制限する
請求項2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記閾値計算部は、前記レスポンス通信の通信量の目標値から計算される前記レスポンス通信の通信速度の目標である目標速度と、前記レスポンス通信の実際の通信速度との差から、前記閾値の補正量を計算することにより、前記閾値を補正する
請求項3に記載の通信制御装置。
【請求項5】
基準期間が分割された複数の分割期間それぞれにおける前記レスポンス通信の通信量の目標値の合計が、前記基準期間における前記レスポンス通信の通信量の制限値を超えないように、前記複数の分割期間それぞれの前記レスポンス通信の通信量の目標値が設定されており、
前記通信制御装置は、さらに、
前記複数の分割期間のうちの前記対象期間に対応する分割期間における前記レスポンス通信の通信量の目標値を、前記対象期間における前記レスポンス通信の通信量の目標値として設定する目標設定部
を備え、
前記閾値計算部は、前記目標設定部によって設定された目標値を用いて前記閾値を計算する
請求項2に記載の通信制御装置。
【請求項6】
前記目標設定部は、前記対象期間が属する基準期間のうち、前記対象期間に対応する分割期間よりも前の分割期間についての目標値と、前記前の分割期間で実際に行われた前記レスポンス通信の通信量との差分により、前記対象期間に対応する分割期間における前記レスポンス通信の通信量の目標値を補正した値を、前記対象期間における前記レスポンス通信の通信量の目標値として設定する
請求項5に記載の通信制御装置。
【請求項7】
前記目標設定部は、前記対象期間が属する基準期間のうち、前記対象期間に対応する分割期間以降の分割期間に、前記差分を分配することにより、前記対象期間に対応する分割期間における前記レスポンス通信の通信量の目標値を補正する
請求項6に記載の通信制御装置。
【請求項8】
前記通信制御装置は、前記リクエスト通信の通信速度を制限する制限モードと、前記リクエスト通信の通信速度を制限せずに前記クラウドサーバのふるまいを検知するふるまい検知モードとを有し、
前記通信制御装置は、さらに、
前記ふるまい検知モードで動作する場合に、前記レスポンス通信の通信量の目標値から計算される前記レスポンス通信の通信速度の目標である目標速度を、前記レスポンス通信の実際の通信速度が超えたか否かを判定する判定部
を備える請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項9】
前記判定部は、前記目標速度を前記実際の通信速度が超えたと判定した場合には、前記レスポンス通信の通信速度が前記目標速度よりも速い状態であることを通知する
請求項8に記載の通信制御装置。
【請求項10】
コンピュータが、接続元装置からクラウドサーバに送信されるリクエスト通信の通信量と前記クラウドサーバから前記接続元装置に送信されるレスポンス通信の通信量とを特定し、
コンピュータが、前記リクエスト通信の通信量と前記レスポンス通信の通信量との比率に基づき設定された閾値により、前記リクエスト通信の送信量を制御する通信制御方法。
【請求項11】
接続元装置からクラウドサーバに送信されるリクエスト通信の通信量と前記クラウドサーバから前記接続元装置に送信されるレスポンス通信の通信量とを特定するデータ収集処理と、
前記データ収集処理によって特定された前記リクエスト通信の通信量と前記レスポンス通信の通信量との比率に基づき設定された閾値により、前記リクエスト通信の送信量を制御する通信制限処理と
を行う通信制御装置としてコンピュータを機能させる通信制御プログラム。